説明

チャイルドシートアンカー及び車両用シート

【課題】軽量化及び低コスト化を図ることができるチャイルドシートアンカー及び車両用シートを得る。
【解決手段】本車両用リヤシートを構成するロアアンカー10では、板金によって形成された本体部10Aがラゲッジフロアパネルに固定される。この本体部10Aには、上記板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状に形成されたパイプ状部10Bの軸線方向両端部が一体に連続している。このパイプ状部10Bは、ISOFIXの規格に対応して外径寸法がφ6±0.1mmの範囲内に設定されており、ISOFIX対応のチャイルドシートに設けられたコネクターと連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドシートを車両用シートに取り付けるためのチャイルドシートアンカー及び該チャイルドシートアンカーを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートにチャイルドシートを固定する方式の国際標準規格であるISOFIX(以下、単に「ISOFIX」と称する)に対応したチャイルドシートの固定構造が示されている。このチャイルドシート固定構造では、チャイルドシートに設けられたアンカレッジ(コネクター)を連結するためのロアアンカーが、アンカーバー(ワイヤ)と、該ワイヤに溶接された平板状の基板(補強ブラケット)とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−12552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ISOFIXの規格では、ロアアンカーにおけるワイヤの外径寸法がφ6±0.1mmに指定されている。このため、ワイヤのみでは強度が不足するような場合には、上記特許文献1に示されたロアアンカーのように、ワイヤに補強ブラケットを溶接することが行われている。
【0005】
しかしながら、補強ブラケットが追加されることにより、溶接点数が増えてコスト高になると共に、質量及び部品点数(材料費)が増加する等の問題が生じる。
【0006】
さらに、ISOFIX対応のチャイルドシートには、トップテザーベルトに取り付けられたテザーフックが、リヤシートバックの背面側でトップテザーアンカーに連結(係止)されるタイプのものがある。このようなトップテザーアンカーには、可倒式のリヤシートバックフレームを構成する板金製のパネルに溶接されるものがあるが、トップテザーアンカーを構成するワイヤがパネルに直に溶接されると、強度不足や溶接安定性に欠ける等の問題が生じる可能性がある。このため、板厚が厚い補強プレートにワイヤを溶接した後で、当該補強プレートをパネルに溶接することが行われている。このような構成においても、補強プレートが追加されることにより、上述したロアアンカーと同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、軽量化及び低コスト化を図ることができるチャイルドシートアンカー及び車両用シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係るチャイルドシートアンカーは、板金によって形成され、車両用シート又は車体側に固定される本体部と、前記板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状に形成され、開口した両端部が前記本体部に一体に連続すると共に、ISOFIX対応のチャイルドシートに設けられたコネクター又はテザーフックが連結されるパイプ状部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載のチャイルドシートアンカーでは、板金によって形成された本体部が車両用シート又は車体側に固定される。この本体部には、上記板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状に形成されたパイプ状部の両端部が一体に連続しており、当該パイプ状部には、ISOFIX対応のチャイルドシートに設けられたコネクター又はテザーフックが連結される。
【0010】
つまり、このチャイルドシートアンカーでは、上述のパイプ状部が、背景技術の欄で説明したワイヤの代替とされるので、ワイヤを省略することができる。これにより、軽量化を図ることができる。しかも、ワイヤの材料費及びワイヤの成形・溶接工程が不要になるので、低コスト化を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明に係るチャイルドシートアンカーは、請求項1に記載のチャイルドシートアンカーにおいて、前記板金には、貫通孔が形成され、前記パイプ状部は、前記板金における前記貫通孔の孔縁部が曲げ加工されることにより形成された内側部と、前記板金における前記内側部よりも外縁側が曲げ加工されることにより形成された外側部と、によって構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載のチャイルドシートアンカーでは、当該チャイルドシートアンカーを構成する板金が貫通孔の孔縁部において曲げ加工されることにより内側部が形成されており、当該内側部よりも外縁側で上記板金が曲げ加工されることにより外側部が形成されている。そして、これらの内側部及び外側部が組み合わされることにより、パイプ状のパイプ状部が構成されている。このように、パイプ状部が内側部及び外側部に分けて曲げ加工(プレス加工等)されるため、パイプ状部を形成するための曲げ加工を容易なものにすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るチャイルドシートアンカーは、請求項1又は請求項2に記載のチャイルドシートアンカーにおいて、前記板金における前記貫通孔の孔縁部が、前記内側部とは異なる部位で曲げ加工されることにより、前記本体部の厚さ方向一側へ突出した補強部が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載のチャイルドシートアンカーでは、当該チャイルドシートアンカーを構成する板金に形成された貫通孔の孔縁部が、パイプ状部の内側部とは異なる部位で曲げ加工されている。これにより、本体部の板厚方向一側へ突出した補強部が設けられているので、本体部の剛性を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、シート本体と、前記シート本体にISOFIX対応のチャイルドシートを取り付けるために、前記シート本体又は車体側に取り付けられた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のチャイルドシートアンカーと、を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の車両用シートでは、シート本体にISOFIX対応のチャイルドシートを取り付けるためのチャイルドシートアンカーが、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のチャイルドシートアンカーとされている。これにより、チャイルドシートアンカーの軽量化及び低コスト化を図ることができるので、結果として車両用シートの軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記シート本体のシートバックフレームは、板金製のパネルを有し、前記チャイルドシートアンカーは、前記本体部が前記パネルに溶接されたトップテザーアンカーとされ、前記チャイルドシートに設けられたテザーフックが前記トップテザーアンカーの前記パイプ状部に連結されることを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の車両用シートでは、トップテザーアンカーを構成する板金の一部がパイプ状に曲げ加工されることによりパイプ状部が形成されており、当該パイプ状部には、ISOFIX対応のチャイルドシートに設けられたテザーフックが連結される。上記板金の残部からなる本体部が、リヤシートバックフレームのパネルに溶接される。これにより、パネルに対するトップテザーアンカーの取付強度を十分に確保することができると共に、溶接安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係るチャイルドシートアンカー及び車両用シートでは、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用リヤシート及びチャイルドシートを示す斜視図である。
【図2】(A)は本発明の実施形態に係るロアアンカーの構成を示す斜視図であり、(B)は(A)のX−X線に沿った切断面を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るロアアンカーにチャイルドシートのコネクターを連結する際の状況を説明するための側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用リヤシートのリヤシートバックを車両後方側から見た状態で示す斜視図である。
【図5】図4に示されるリヤシートバックの骨格を構成するリヤシートバックフレームを車両前方側から見た状態で示す斜視図である。
【図6】(A)は本発明の実施形態に係るトップテザーアンカーの構成を示す斜視図であり、(B)は(A)のY−Y線に沿った切断面を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るトップテザーアンカーの比較例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜図7を用いて、本発明の実施形態に係るチャイルドシートアンカーとしてのロアアンカー10及びトップテザーアンカー12並びに本発明の実施形態に係る車両用シートとしてのリヤシート14について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印Wは、それぞれリヤシート14の前方向、上方向、幅方向を示している。また、本実施形態では、リヤシート14の前方向、上方向、幅方向は、このリヤシート14が搭載された車両の前方向、上方向、幅方向と一致している。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態に係るリヤシート14は、シート本体15を備えている。このシート本体15は、リヤシートクッション16と、分割可倒式に構成された左右一対のリヤシートバック18とを備えている。リヤシートクッション16は、車体のリヤフロアパネルの上面に取り付けられており、左右一対のリヤシートバック18は、リヤシートクッション16の後端側から上方側へ立設されている。このリヤシート14は、ISOFIX(国際標準規格)に対応したチャイルドシート20を取り付けるための複数(ここでは4つ)のロアアンカー10を備えている。これらのロアアンカー10は、リヤシートクッション16の後方で且つリヤシートバック18の下方に配置されている。
【0023】
図2(A)に示されるように、ロアアンカー10は、板金がプレス加工されることにより平面視略矩形状に形成された本体部10Aを備えている。本体部10Aには、当該本体部10Aの厚さ方向一側(裏面側)へ膨出した固定部10A1が設けられており、当該固定部10A1においてロアアンカー10が車体のラゲッジフロアパネル22に固定されている。具体的には、固定部10A1の中央部に形成されたボルト孔24に挿通されたボルト28(図3参照)が、ラゲッジフロアパネル22側に設けられた固定ブラケット30を貫通すると共に、当該固定ブラケット30に溶接された図示しないウェルドナットに螺合している。これにより、ロアアンカー10が表面を車両上方に向け且つ先端を車両前方(リヤシートクッション16側)に向けた状態でラゲッジフロアパネル22に固定されている。
【0024】
また、固定部10A1よりもロアアンカー10の先端側には、長円形の貫通孔32が形成されている。この貫通孔32は、ロアアンカー10を構成する板金を板厚方向に貫通しており、長手方向がロアアンカー10の幅方向に沿う状態で配置されている。
【0025】
さらに、貫通孔32と本体部10Aの先端との間には、長尺な丸パイプ状(円筒状)に形成されたパイプ状部10Bが設けられている。このパイプ状部10Bは、ロアアンカー10を構成する板金の一部がパイプ状に曲げ加工されることにより形成されたものであり、長手方向(軸線方向)がロアアンカー10の幅方向に沿う状態で配置されている。このパイプ状部10Bは、開口した両端部が本体部10Aに一体に連続している。つまり、ロアアンカー10を構成する板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状部10Bが形成されると共に、当該パイプ状部10Bの両端部と一体に連続した前記板金の残部によって本体部10Aが形成されている。
【0026】
上述のパイプ状部10Bは、内側部10B1と外側部10B2とによって構成されている。内側部10B1は、ロアアンカー10(板金)における貫通孔32の孔縁部のうち、ロアアンカー10の先端側に配置された部位が、プレス成形によってロアアンカー10の裏面側へ曲げ加工されることにより断面半円状(断面円弧状)に形成されている。また、外側部10B2は、ロアアンカー10における内側部10B1よりも先端側(外縁側)の部位が、プレス成形によってロアアンカー10の裏面側へ曲げ加工されることにより断面半円状(断面円弧状)に形成されている。
【0027】
図2(B)に示されるように、内側部10B1及び外側部10B2は、湾曲方向一端部が一体に連続すると共に、湾曲方向他端部が互いに付き合わされており、これにより、パイプ状のパイプ状部10Bが形成されている。このパイプ状部10Bは、ロアアンカー10の先端部においてロアアンカー10の幅方向に延在しており、図3に示されるように、リヤシートクッション16とリヤシートバック18との間に形成された隙間に配置されている。このパイプ状部10Bの外径寸法は、φ6±0.1mmの範囲内に設定されている。
【0028】
なお、図2(A)に示されるように、内側部10B1は、貫通孔32の長手方向両端側へ向かうに従い徐々に高さ寸法(ロアアンカー10の裏面側への突出量)が減少しており、貫通孔32の長手方向両端付近において消滅している。このように、内側部10B1の突出量が徐々に減少することにより、貫通孔32の孔縁部に不要な角部が形成されることが防止されている。これにより、不要な応力集中が防止される。
【0029】
また、外側部10B2は、ロアアンカー10の幅方向両端側へ向かうに従い徐々に高さ寸法(ロアアンカー10の裏面側への突出量)が減少しており、本体部10Aの幅方向両端部に形成された側壁部10A2、10A3に連続している。これらの側壁部10A2、10A3は、ロアアンカー10(本体部10A)の裏面側へ突出しており、ロアアンカー10の長手方向に延在している。側壁部10A2、10A3の先端側は、ロアアンカー10の幅方向外側へ湾曲しており、これらの側壁部10A2、10A3によってロアアンカー10の曲げ剛性が向上している。
【0030】
ここで、上記構成のロアアンカー10は、チャイルドシート20の下端部に設けられた左右一対のコネクター36(図1及び図3参照)に対応しており、一台のチャイルドシート20に対して車両幅方向に隣り合う一対一組のロアアンカー10が使用される。これら一対一組のロアアンカー10は、車両幅方向に所定の間隔(左右一対のコネクター36の間隔と同程度の間隔)を隔てて配置されている。
【0031】
左右一対のコネクター36は、略角棒状に形成されており、チャイルドシート20の下端部から当該チャイルドシート20の後方側へ突出している。図3に示されるように、各コネクター36の先端部(後端部)には、チャイルドシート20の前後方向に沿った切込み38が形成されており、チャイルドシート20がリヤシート14に取り付けられる際には、上述の切込み38にロアアンカー10のパイプ状部10Bが挿入される。なお、図3において、符号40が付された部材は、コネクター36をロアアンカー10側へ案内するガイド部材である。
【0032】
切込み38の閉止端側(奥側)には、コネクター36の本体部分に回動可能に支持されたラッチ42が設けられている。このラッチ42は、切込み38に挿入されたパイプ状部10Bによって押されることにより、図示しないバネの付勢力に抗して回動する。そして、パイプ状部10Bが切込み38の一番奥に達すると、上記バネの付勢力によってラッチ42が元の位置に復帰する。この状態では、ラッチ42がパイプ状部10Bに引っ掛かることにより、コネクター36がパイプ状部10B(ロアアンカー10)に連結される。これにより、チャイルドシート20の下端部がロアアンカー10を介してラゲッジフロアパネル22に固定(係止)される。なお、上述のラッチ42は、各コネクター36の基端側に設けられたリリースボタン44が操作されることにより、パイプ状部10Bに対する引っ掛かりを解除される。
【0033】
一方、上述のチャイルドシート20は、所謂トップテザータイプのものであり、図1及び図4に示されるように、当該チャイルドシート20の上端側をリヤシート14に固定するためのトップテザーベルト46を備えている。このトップテザーベルト46には、テザーフック48が取り付けられている。このテザーフック48は、リヤシートバック18の骨格を構成するリヤシートバックフレーム50(図5参照)に固定されたトップテザーアンカー12に対応している。
【0034】
リヤシートバックフレーム50は、板金によって形成されたパネル52と、強度部材としてのパイプ54と、数種のブラケットにより構成されている。パネル52は、板厚方向がリヤシートバック18の前後方向に沿う状態で配置されており、リヤシートバック18の前後方向から見て当該リヤシートバック18と相似形に形成されている。一方、パイプ54は、パネル52の前面側に配置されており、パネル52の外周部に沿った枠状に形成されている。このパイプ54は、パネル52に接合されており、これにより、パネル52を背もたれ部材としている。このパネル52の上部には、トップテザーアンカー12が固定されている。
【0035】
図6(A)に示されるように、トップテザーアンカー12は、板金がプレス加工されることにより平面視略五角形状に形成された本体部12Aを備えている。本体部12Aの中央部には、トップテザーアンカー12を構成する板金を板厚方向に貫通した貫通孔56が形成されている。この貫通孔56は、トップテザーアンカー12の先端側に配置された部位が略矩形状に形成されると共に、トップテザーアンカー12の基端側に配置された部位が略三角形状に形成されており、全体として矢印形に形成されている。
【0036】
さらに、上述の貫通孔56とトップテザーアンカー12の先端との間には、長尺な丸パイプ状(円筒状)に形成されたパイプ状部12Bが設けられている。このパイプ状部12Bは、トップテザーアンカー12を構成する板金の一部がパイプ状に曲げ加工されることにより形成されたものであり、長手方向(軸線方向)がトップテザーアンカー12の幅方向に沿う状態で配置されている。このパイプ状部12Bは、開口した両端部が本体部12Aに一体に連続している。つまり、トップテザーアンカー12を構成する板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状部12Bが形成されると共に、当該パイプ状部12Bの両端部と一体に連続した前記板金の残部によって本体部12Aが形成されている。
【0037】
上述のパイプ状部12Bは、内側部12B1と外側部12B2によって構成されている。内側部12B1は、トップテザーアンカー12における貫通孔56の孔縁部のうち、トップテザーアンカー12の先端側に配置された部位が、プレス成形によってトップテザーアンカー12の表面側へ曲げ加工されることにより断面半円状(断面円弧状)に形成されている。また、外側部12B2は、トップテザーアンカー12における内側部12B1よりも先端側の部位が、プレス成形によってトップテザーアンカー12の表面側へ曲げ加工されることにより断面半円状(断面円弧状)に形成されている。
【0038】
図6(B)に示されるように、内側部12B1及び外側部12B2は、湾曲方向一端部が一体に連続すると共に、湾曲方向他端部が互いに付き合わされており、これにより、パイプ状のパイプ状部12Bが形成されている。このパイプ状部12Bは、トップテザーアンカー12の先端部においてトップテザーアンカー12の幅方向に延在している。なお、本実施形態では、上述の如くパイプ状部12Bの形状が丸パイプ状(中空パイプ状)に形成されているが、これに限らず、パイプ状部12Bの形状は、プレス成形可能な閉断面状であればよく、適宜変更することができる。例えば、パイプ状部12Bの断面形状が角形に形成された構成(パイプ状部12Bが角パイプ状に形成された構成)にしてもよいし、パイプ状部12Bの断面形状が楕円形に形成された構成にしてもよい。
【0039】
また、トップテザーアンカー12の本体部12Aには、左右一対の補強部12A1、12A2が設けられている。これらの補強部12A1、12A2は、貫通孔56の孔縁部のうち、トップテザーアンカー12の先端側における幅方向両端側に配置された部位が、プレス成形によって曲げ加工されることにより断面半円状に形成されている。これらの補強部12A1、12A2は、内側部12B1に一体に連続しており、本体部12A(トップテザーアンカー12)の表面側へ突出している。これらの補強部12A1、12A2によって本体部12Aの曲げ剛性が向上している。
【0040】
ここで、上述のトップテザーアンカー12は、本体部12Aの裏面がリヤシートバックフレーム50のパネル52に当接し、且つパイプ状部12Bがパネル52の上端側を向いた状態で、本体部12Aの複数箇所がスポット溶接によりパネル52に溶接(固定)されている。パイプ状部12Bは、車両幅方向に沿う状態で配置されており、パネル52に形成された貫通孔58を介してリヤシートバック18の後面側へ露出している。このパイプ状部12Bの露出部分には、前述したテザーフック48が連結される。
【0041】
テザーフック48は、板金が断面略J字状に曲げ加工されたフック本体62と、平板状の板金からなり、基端側がフック本体62の基端側にカシメられたロック部60とを備えている。このロック部60は、先端部がフック本体62の先端部に当接している。このテザーフック48がトップテザーアンカー12に連結される際には、ロック部60がパイプ状部12Bに押し付けられて弾性変形し、ロック部60とフック本体62との間にパイプ状部12Bが挿入される。その後、ロック部60が弾性復帰することにより、パイプ状部12Bからのテザーフック48の脱落が阻止され、チャイルドシート20の上端側がトップテザーベルト46及びテザーフック48を介してトップテザーアンカー12すなわちリヤシートバックフレーム50に連結(係止)される。
【0042】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係るロアアンカー10では、板金によって形成された本体部10Aがラゲッジフロアパネルに固定されている。この本体部10Aには、上記板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状に形成されたパイプ状部10Bの両端部が一体に連続している。このパイプ状部10Bは、ISOFIXの規格に対応して外径寸法がφ6±0.1mmの範囲内に設定されており、ISOFIX対応のチャイルドシートに設けられたコネクターと連結される。
【0044】
つまり、このロアアンカー10では、パイプ状部10Bが背景技術の欄で説明したワイヤの代替とされている。これにより、ワイヤを省略することができるので、質量の軽量化を図ることができる。しかも、部品点数が削減され、ワイヤの材料費が低減されると共に、ワイヤの曲げ加工・溶接等の加工費が不要になるので、低コスト化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、トップテザーアンカー12を構成する板金の一部がパイプ状にプレス加工されることによりパイプ状部12Bが形成されており、当該パイプ状部12Bには、ISOFIX対応のチャイルドシート20に設けられたテザーフック48が連結される。しかも、トップテザーアンカー12を構成する板金の残部からなる本体部12Aが、リヤシートバックフレーム50のパネル52に溶接されるので、パネル52に対するトップテザーアンカー12の取付強度を十分に確保することができると共に、溶接安定性を向上させることができる。
【0046】
つまり、背景技術の欄で説明したように、トップテザーアンカーを構成するワイヤがパネルに直にアーク溶接されると、強度不足や溶接安定性に欠ける等の問題が生じる可能性があるが、本実施形態では、平板状の本体部12Aがパネル52にスポット溶接されるため、上述の如き問題を解消することができる。
【0047】
また従来は、図7に示されるように、上述の如き問題の解消のために、板厚が厚い補強プレート64をワイヤ66に溶接することが行われていたが、本実施形態では、トップテザーアンカー12が板金のみによって構成されているため、ワイヤ66を省略することができる。これにより、上述したロアアンカー10と同様に、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0048】
しかも、上述のロアアンカー10では、パイプ状部10Bが、断面半円状の内側部10B1及び外側部10B2によって構成されている。したがって、パイプ状部10Bを形成する際には、内側部10B1と外側部10B2とに分けてプレス加工することができるので、パイプ状部10Bを形成するためのプレス加工(曲げ加工)を容易なものにすることができる。同様に、トップテザーアンカー12では、パイプ状部12Bが、断面半円状の内側部12B1及び外側部12B2によって構成されているため、パイプ状部12Bを形成するための曲げ加工を容易なものにすることができる。また、曲げ加工が容易になるため、パイプ状部10B、12Bの寸法精度を向上させることができる。
【0049】
さらに、上述のトップテザーアンカー12では、当該トップテザーアンカー12を構成する板金における貫通孔56の孔縁部が、内側部12B1とは異なる部位で曲げ加工されることにより、本体部12Aの厚さ方向一側へ突出した補強部12A1、12A2が設けられている。これにより、本体部12Aの剛性を向上させることができるので、トップテザーアンカー12を構成する板金の厚さ寸法を低減することができ、結果として軽量化を図ることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、ロアアンカー10及びトップテザーアンカー12の軽量化及び低コスト化を図ることができる。したがって、これらのロアアンカー10及びトップテザーアンカー12を含んで構成されたリヤシート14の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、ロアアンカー10がラゲッジフロアパネル22に設けられた固定ブラケット30に締結固定された構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、ロアアンカー10の固定構造は適宜変更することができる。例えば、ロアアンカー10が車体側の剛性部材に溶接される構成にしてもよい。また、リヤシートバック18の下方に、ISOFIX対応の固定専用バー(車両幅方向に延びる剛性部材)が設けられる場合には、当該固定専用バーにロアアンカー10が溶接又は締結される構成にしてもよい。さらに、ロアアンカー10がリヤシートクッション16のフレームに固定される構成にしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、トップテザーアンカー12が、リヤシートバックフレーム50のパネル12に溶接された構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、トップテザーアンカー12がリヤシートバック18の下方で車体側に直接又は剛性部材を介して固定された構成にしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、トップテザーアンカー12が補強部12A1、12A2を備えた構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、補強部12A1、12A2が省略された構成にしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、パイプ状部10Bが内側部10B1と外側部10B2とから構成され、パイプ状部12Bが内側部12B1と外側部12B2とから構成された場合について説明したが、請求項1に係る発明はこれに限らず、パイプ状部はISOFIXの規格に適応したものであればよく、その構成は適宜変更することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、ロアアンカー10(チャイルドシートアンカー)の内側部10B1及び外側部10B2が断面半円状に形成された構成にしたが、請求項2に係る発明はこれに限らず、ロアアンカー10の内側部及び外側部は、正確に断面半円状ではなくてもよく、組み合わされて断面円形状になるもの(断面円弧状)であればよい。
【0056】
また、上記実施形態において、内側部10B1の湾曲方向他端部と外側部10B2の湾曲方向他端部との付き合わせ部分において両者が噛合結合するように、内側部10B1の湾曲方向他端部及び外側部10B2の湾曲方向他端部に凹凸状の噛合部を形成する構成にしてもよい。このような構成にすることにより、パイプ状部10Bの剛性を向上させることができる。この点は、パイプ状部12Bの内側部12B1及び外側部12B2についても同様である。
【0057】
また、上記実施形態では、トップテザーアンカー12(チャイルドシートアンカー)の本体部12Aが平面視略五角形状に形成され、貫通孔56が略矢印形に形成された構成にしたが、これらの形状は単なる一例であり、請求項1〜5に係る発明はこれらの形状に限定されるものではない。つまり、トップテザーアンカーにおいて本体部(パイプ状部以外の部位)の形状は、周辺の状況が変更されることに対応して適宜変更可能なものである。また、トップテザーアンカーの貫通孔は、テザーフック48のフック本体62を挿入することができ、且つ、挿入されたフック本体62がパイプ状部に引っ掛けられるものであればよく、その形状は適宜変更することができる。例えば、トップテザーアンカーの貫通孔が四角形状に形成された構成にしてもよい。この点は、ロアアンカー10についても同様である。
【0058】
さらに、上記実施形態では、トップテザーアンカー12を構成する板金に貫通孔56が形成された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限るものはない。例えば、貫通孔56の代わりに、トップテザーアンカー12の基端からパイプ状部12Bまで延びる切込みが形成され、本体部12Aが左右に分断された構成にしてもよい。この点は、ロアアンカー10についても同様である。
【0059】
また、上記実施形態では、トップテザーアンカー12の本体部12Aが、リヤシートバックフレーム50のパネル52に溶接された構成にしたが、請求項1〜4に係る発明はこれに限らず、トップテザーアンカー(チャイルドシートアンカー)の本体部が、リヤシートバックフレーム50のパイプ54に、直接又はブラケットを介して取り付けられた構成にしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明が車両用のリヤシート14に対して適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は車両用のフロントシートに対しても適用することができる。
【0061】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 ロアアンカー(チャイルドシートアンカー)
10A 本体部
10B パイプ状部
10B1 内側部
10B2 外側部
12 トップテザーアンカー(チャイルドシートアンカー)
12A 本体部
12A1 補強部
12A2 補強部
12B パイプ状部
12B1 内側部
12B2 外側部
14 車両用リヤシート(車両用シート)
15 シート本体
16 リヤシートクッション
18 リヤシートバック
20 チャイルドシート
22 ラゲッジフロアパネル(車体)
32 貫通孔
36 コネクター
48 テザーフック
50 リヤシートバックフレーム
52 パネル
56 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金によって形成され、車両用シート又は車体側に固定される本体部と、
前記板金の一部が曲げ加工されることによりパイプ状に形成され、開口した両端部が前記本体部に一体に連続すると共に、ISOFIX対応のチャイルドシートに設けられたコネクター又はテザーフックが連結されるパイプ状部と、
を備えたチャイルドシートアンカー。
【請求項2】
前記板金には、貫通孔が形成され、前記パイプ状部は、前記板金における前記貫通孔の孔縁部が曲げ加工されることにより形成された内側部と、前記板金における前記内側部よりも外縁側が曲げ加工されることにより形成された外側部と、によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のチャイルドシートアンカー。
【請求項3】
前記板金における前記貫通孔の孔縁部が、前記内側部とは異なる部位で曲げ加工されることにより、前記本体部の厚さ方向一側へ突出した補強部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のチャイルドシートアンカー。
【請求項4】
シート本体と、
前記シート本体にISOFIX対応のチャイルドシートを取り付けるために、前記シート本体又は車体側に取り付けられた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のチャイルドシートアンカーと、
を備えた車両用シート。
【請求項5】
前記シート本体のシートバックフレームは、板金製のパネルを有し、前記チャイルドシートアンカーは、前記本体部が前記パネルに溶接されたトップテザーアンカーとされ、前記チャイルドシートに設けられたテザーフックが前記トップテザーアンカーの前記パイプ状部に連結されることを特徴とする請求項4に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180047(P2012−180047A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45099(P2011−45099)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】