説明

チューブおよびカテーテル

【課題】 肉厚の異なる部位を含ませ、これによってチューブの断面積を増加させ、破断荷重等を向上させたチューブを提供する。
【解決手段】 アウターチューブ11は、肉厚の比較的厚い部位13Kと、肉厚の比較的薄い部位13Nとを、一体的に集めて形成されることで、一定の肉厚ではなく、変化した肉厚を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブおよびカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、体内脈管に挿入され、体内外における流体の送達、または、体内脈管に形成された狭窄部の拡張に広く使用される。そのため、例えば、カテーテルは、体内の複雑で、細い脈管内を移動する。すると、カテーテルは、柔軟性と強度とを兼ね備えたシャフトチューブを含まなくてはならない。
【0003】
シャフトチューブの破断強度は、シャフトチューブ自身の断面積に依存する。そのため、シャフトチューブにて、外径が拡大される、または、内径が縮小されることで、肉厚が増すと、シャフトチューブの断面積が増加し好ましい。
【0004】
しかしながら、シャフトチューブにて、外径が過度に拡大されると、輪郭(プロファイル)が大きくなるため、シャフトチューブの柔軟性が損なわれる。さらに、生体への低侵襲性が考慮されるならば、シャフトチューブの外径は小径でなくてはならない。また、シャフトチューブの内径が拡大すると、流体を送達させるために要するルーメンが維持しにくくなる。
【0005】
ところで、特許文献1に記載のカテーテルは、自身に含まれる内側部材と外側部材とを係合させるために、内側部材の外面および外側部材の内面において、例えば、一方面が他方面に係合する隆起を含む。そして、このカテーテルでは、内側部材と外側部材とが係り合いつつも、流体経路を維持し、シャフトチューブに亘る力の伝達を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−528901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1でのシャフトチューブは、内側部材と外側部材との係り合いを前提にしており、単独部材での破断荷重については記載されていない。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、肉厚の異なる部位を含ませ、これによってチューブの断面積を増加させ、破断荷重等を向上させたチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
処置用のカテーテルは、内腔を有するチューブを含む。そして、このチューブでは、内腔を囲む壁部は、肉厚を異にする部位の集まりで形成される。
【0010】
また、チューブの軸方向に交差する断面において、壁部の内壁面で示される線は、変曲点を含むと好ましい。
【0011】
また、肉厚を異にする部位同士のうち、一方の部位が、他方の部位で形成される壁部の内壁面に対して、隆起となると好ましい。
【0012】
また、チューブの軸方向に交差する断面において、隆起が、少なくとも1つ以上含まれると好ましい。
【0013】
また、隆起の幅長は、チューブの軸方向において、一定または変化すると好ましい。
【0014】
また、隆起の隆起長は、チューブの軸方向において、一定または変化すると好ましい。
【0015】
また、隆起は、軸方向における少なくとも一部分に亘ると好ましい。
【0016】
また、隆起が先細りすると好ましい。
【0017】
また、チューブの軸方向に交差する断面において、先細りした隆起で示される線は、曲線および直線の少なくとも一方を含むと好ましい。
【0018】
また、先細りする隆起は、多角柱状、半円筒状、多角錐状、円錐状、多角錐台状、または円錐台状を含んだ形状であると好ましい。
【0019】
また、以上のチューブを含む病変処置用のカテーテルも本発明である。なお、カテーテルは、バルーンカテーテル、またはステントデリバリーカテーテルであると好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のチューブは、肉厚の異なる部位を含むことで、断面積を増加させられる。これにより、チューブのプロファイルが変わることなく、破断荷重等を増加させられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は、アウターチューブの斜視図である。
【図2】は、アウターチューブの横断面図である。
【図3】は、アウターチューブの横断面図である。
【図4】は、アウターチューブの斜視図である。
【図5】は、アウターチューブの斜視図である。
【図6】は、アウターチューブの横断面図である。
【図7】は、アウターチューブの横断面図である。
【図8】は、数値実施例の結果をまとめた表である。
【図9】は、アウターチューブの横断面図である。
【図10】は、アウターチューブの横断面図である。
【図11】は、高速交換型のバルーンカテーテルの側面図である。
【図12】は、オーバー・ザ・ワイヤー型のバルーンカテーテルの側面図である。
【図13】は、高速交換型のバルーンステントデリバリーカテーテルの側面図である。
【図14】は、オーバー・ザ・ワイヤー型のステントデリバリーバルーンカテーテルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0023】
〈カテーテルについて〉
以下に、カテーテルについて説明する。カテーテルの一例としては、図11に示すような高速交換型のバルーンカテーテル49、または、図12に示すようなオーバー・ザ・ワイヤー型のバルーンカテーテル49が挙げられる。このようなバルーンカテーテル49は、例えば、アウターチューブ11の先端側にバルーン51を取り付け、このバルーン51に圧力流体を流すためのルーメンを備え、さらには、ガイドワイヤを通すためのルーメンを含む(なお、ガイドワイヤを通すチューブをインナーチューブ21、このインナーチューブ21を囲むチューブをアウターチューブ11と称する)。
【0024】
なお、カテーテル49は、バルーンカテーテル49に限定されるものではない。例えば、図13に示すように、バルーン51にステント52を被せた高速交換型のステントデリバリーカテーテル49、または、図14に示すように、バルーン51にステント52を被せたオーバー・ザ・ワイヤー型のステントデリバリーカテーテル49が、カテーテル49の一例として挙げられる。
【0025】
要は、例えば、体内における血管、食道、気管、尿道、または、胆管等の脈管に挿入され、体内外の流体の送達、または、管内を拡張し体腔を維持するために使用されるカテーテル49であれば、特に限定はされない(なお、このようなカテーテル49を、病変等の処置用カテーテル49と称する)。
【0026】
なお、図11〜図14において、部材番号41はハブ41を示し、部材番号42はマニホールド42を示す(カテーテル49において、ハブ41またはマニホールド42の位置する側を近位端側、この近位端側に対して反対側を遠位端側と称する)。また、カテーテル49には、接続チューブが含まれる場合、部材番号31が接続チューブ31を示す。
【0027】
〈アウターチューブについて〉
図1は、カテーテル49に含まれるアウターチューブ[チューブ]11を示す斜視図である。なお、図1におけるアウターチューブ11の断面部分を拡大した図が、図2の断面図となる{なお、この断面は、アウターチューブ11(ひいてはカテーテル49)の長手方向となる軸方向に対して、垂直等の交差した断面(横断面)である}。
【0028】
これらの図1および図2に示すように、アウターチューブ11は、内腔(中空)12を含む管である。そして、この内腔12を囲む部分である壁部13は、一定の肉厚で形成されていない。すなわち、壁部13は、肉厚を異にする部位の集まりで形成される。
【0029】
詳説すると、例えば、図1および図2に示されるようなアウターチューブ11の場合、肉厚の比較的厚い部位13K(肉厚K1を有する部分)と、肉厚の比較的薄い部位13N(肉厚N1を有する部分)とが、一体的に集まることで、一定の肉厚ではなく、変化した肉厚を有するアウターチューブ11が完成する。
【0030】
具体的には、肉厚を異にする部位同士である部位13Kおよび部位13Nのうち、一方の部位である部位13Kが、他方の部位である部位13Nで形成される壁部13の内壁面14Aに対して、隆起15となる{なお、この隆起(突起)15は、アウターチューブ11の軸方向における全域に亘る}。
【0031】
このようになっていると、輪郭上(プロファイル上)、アウターチューブ11は、円筒状となる。しかし、アウターチューブ11の内部である壁部13の内壁面14Aには、隆起15が生じるので、アウターチューブ11における内腔12の面形状は、曲面のみで形成されない(なお、隆起15の形状は、マイクロデジタルハイスコープにより観察でき、隆起15の寸法は、マイクロデジタルハイスコープによる画像を計測することにより確認できる)。
【0032】
すなわち、このような図1および図2に示されるアウターチューブ11であると、アウターチューブ11の軸方向に交差する断面において、壁部13の内壁面14Aで示される線は、変曲点を含むことになる。
【0033】
そして、このようなアウターチューブ11であると、一定の肉厚(例えば、薄いほうの部位13Nの肉厚N1のみ)を有する壁部で形成されたチューブに比べて、強度が増す上、軸方向に対する伝達力、および剛性も増す。
【0034】
例えば、多様な肉厚を有するアウターチューブ11の破断強度は、一定の肉厚のみを有するアウターチューブの破断強度に比べて、強くなる。なぜなら、アウターチューブ11の破断強度に対しては、壁部13の肉厚のうち、厚い部分の寄与が大きいためである。
【0035】
その一方で、隆起15を含むアウターチューブ11の柔軟性は、一定の肉厚のみを有するアウターチューブの柔軟性に比べて大差はない。例えば、多様な肉厚を有するアウターチューブ11の曲げ剛性は、一定の肉厚のみを有するアウターチューブの曲げ剛性に比べて、大差はない。なぜなら、アウターチューブ11の柔軟性に対しては、壁部13の肉厚のうち、薄い部分の寄与が大きいためである。
【0036】
なお、例えば、図2に示すように、アウターチューブ11の軸方向に交差する断面において、隆起15が4つ含まれるが、これに限定されるわけではない。すなわち、隆起15の個数は、1〜3個であってもよいし、図3に示すように、5個以上であってもよい。要は、少なくとも1つの隆起15があるだけで、アウターチューブ11の肉厚に多様性が生じるためである。
【0037】
また隆起15の幅長(幅長W1)は、隆起15の全長(アウターチューブ11の軸方向全域に亘る隆起15の長さ)において、一定であってもよいし、図4に示されるように、異なっていてもよい。すなわち、図4に示されるように、幅長W1と、幅長W1とは異なる幅長W11とを含む隆起15が、アウターチューブ11に含まれていても構わない(なお、幅長の種類は、2種類に限らず、3種類以上の他種類であってもよい)。また、図4に示すように、隆起15の側面が曲面で形成されることで、幅長が連続的に変化していてもよい(一点鎖線丸部分を参照)。
【0038】
また、図4に示されるように、隆起15の隆起長(隆起長D1)は、隆起15の全長において、一定であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、図4に示されるように、隆起長D1と、隆起長D1とは異なる隆起長D11とを含む隆起15が、アウターチューブ11に含まれていても構わない(なお、隆起長の種類は、2種類に限らず、3種類以上の他種類であってもよい)。また、図4に示すように、隆起15の天面が曲面で形成されることで、隆起長が連続的に変化していてもよい(二点鎖線丸部分を参照)。
【0039】
また、図4に示すように、隆起15は、アウターチューブ11の軸方向全域に亘っている必要はなく、図5に示すように隆起15は、一部分にのみ亘っていてもよい(なお、アウターチューブ11の軸方向での一部分に亘る隆起15は、幅長および隆起長の少なくとも一方を変化させてもよいことはいうまでもない)。
【0040】
このように、アウターチューブ11の全長における一部分の範囲だけに、隆起15があるだけでも、アウターチューブ11の強度等が、一定の肉厚を有するアウターチューブの強度等に比べて向上するためである(要は、隆起15は、アウターチューブ11の軸方向における少なくとも一部分に亘ればよい)。
【0041】
また、隆起15の形状は、図2および図3に示すような多角柱状を含んだ形状に限定されない。例えば、図6および図7に示すように、隆起15は先細りした形状であってもよい。
【0042】
例えば、隆起15は、半円筒状を含む形状になっていてもよい。詳説すると、図6に示すように、アウターチューブ11の軸方向に交差する断面において、先細りした隆起15で示される線が、曲線を含むことで(具体的には、断面図で、隆起15の天面を示す線が曲線を含むことで)、先細りした半円筒状の隆起15が形成されてもよい。
【0043】
また、隆起15は、多角錐状を含む形状になっていてもよい。詳説すると、図7に示すように、アウターチューブ11の軸方向に交差する断面において、先細りした隆起15で示される線が、傾斜した直線を含むことで(要は、断面図で、隆起15の側面を示す線同士が、近づくように傾くことで)、先細りした多角錐状の隆起15が形成されてもよい。
【0044】
なお、隆起15は、多角柱状、半円筒状、または多角錐状を含む形状に限定されず、例えば、円錐状、多角錐台状、または円錐台状を含む形状であっても構わない。
【0045】
また、アウターチューブ11の材料は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、または、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0046】
そして、このような樹脂が、例えば、金型を用いた押し出し成型によって、チューブ状のアウターチューブ11へと変化する。このような押し出し成型であれば、容易に、肉厚を異にしたアウターチューブ11が形成される。
【0047】
また、アウターチューブ11の壁部13の肉厚を変化させるために、アウターチューブ11の外側に、そのアウターチューブ11の材料と同じ材料、または別の材料が取り付けられても構わない。なお、アウターチューブ11に対する別部材の接続には、例えば、接着剤を用いた接着、または、熱溶融による熱溶着が用いられる。
【0048】
〈接続チューブについて〉
接続チューブ31の材料は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、または、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0049】
なお、接続チューブ31として、操作性を向上させるために、さらに大きな剛性が必要な場合、近位端側(ハブ41等に近い側)に金属チューブが接続されてもよい。この金属チューブは、ステンレスまたはその他金属であればよく、その外側に抗血栓性のコーティングがされてもよい。
【0050】
〈インナーチューブについて〉
インナーチューブ21の材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、または、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0051】
このインナーチューブ21の内側(内腔)は、ガイドワイヤルーメンとなる。そのため、ガイドワイヤの摺動性を考慮すると、ポリエチレン、中でも高密度ポリエチレンで、インナーチューブ21が形成されていると好ましい。
【0052】
また、インナーチューブ21は多層構造を有してもよい。このような多層構造のインナーチューブ21の場合、ガイドワイヤの摺動性確保のために、最内層が高密度ポリエチレンで形成され、最外層がバルーン51またはアウターチューブ11に対する接着あるいは融着可能な材料で形成されても構わない。
【0053】
さらに好ましくは、インナーチューブ21のほぼ全域が、単層構造で形成され、バルーン51およびアウターチューブ11に対して接続される部分のみが、多層構造で形成されても構わない。
【0054】
なお、ガイドワイヤの摺動性をより高めるため、インナーチューブ21の内面に、シリコンまたはポリテトラフルオロエチレン等の潤滑性コーティングが施されても構わない。
【0055】
〈バルーンについて〉
バルーン51の材料は、特に限定されず、ポリオレフィン、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、または、ポリウレタンエラストマーが挙げられる(詳説すると、バルーン51の材料は、二軸延伸可能な材料であれば好ましい)。
【0056】
なお、バルーン51がステント52を十分に拡張しなくてはならない場合、そのバルーン51の材料は、比較的高い耐圧強度を有しつつ、薄肉で柔軟性を有する材料であると好ましい。例えば、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、または、ポリアミドエラストマーが、バルーン51の材料として挙げられる。
【0057】
〈種々部材同士の接続について〉
アウターチューブ11、接続チューブ31、インナーチューブ21、および、バルーン51の少なくとも2つの部材同士の接続の仕方に関しては、特に限定されない。例えば、接着剤による接着、または、熱による融着といった接続の仕方が挙げられる。
【0058】
また、接着剤に関する組成および化学構造、並びに、接着剤の硬化形式は、特に限定されない。なお、接着剤に関する組成および化学構造の点からは、ウレタン型、シリコン型、エポキシ型、シアノアクリレート型等の接着剤が好ましい。また、接着剤の硬化形式の点からは、2液混合型、UV硬化型、吸水硬化型、加熱硬化型、または放射線硬化型等の接着剤が好ましい。
【0059】
〈ハブまたはマニホールドについて〉
ハブまたはマニホールドを形成する材料は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリアリレート、スチレン−ブタジエンコポリマー、または、ポリオレフィンが挙げられる。
【0060】
〈カテーテルの種類毎の詳細について〉
オーバー・ザ・ワイヤー型のバルーンカテーテル49では、遠位端側のアウターチューブ11に、バルーン51が取り付けられる。そして、バルーン51とアウターチューブ11との内部に、ガイドワイヤルーメンを含むインナーチューブ21が配置される(なお、インナーチューブ21は、アウターチューブ11の全長方向の全域に亘って配置される)。
【0061】
高速交換型のバルーンカテーテル49では、バルーン51の近位端側に、第1の接続チューブ31の遠位端側が接続され、バルーン51および第1の接続チューブ31の内部には、ガイドワイヤルーメンを有するインナーチューブ21が配置される。さらに、インナーチューブ21の遠位端側とバルーン51の遠位端側とが接着され、第1の接続チューブ31の近位端側とアウターチューブ11の遠位端とが接続され、アウターチューブ11の近位端側と第2の接続チューブ31の遠位端側とが接続される。なお、カテーテル49の長手方向において、アウターチューブ11と第1・第2の接続チューブ31との順番は、特に限定されない。
【0062】
ステントデリバリーカテーテル49では、ステント52(例えば、体腔開在用ステント52)は、バルーン拡張型ステント52であれば好ましい。そして、ステント52の材料は、特に限定されず、例えば、SUS316L等のステンレス、または、コバルトクロム合金が挙げられる。なお、ステント52のデザイン等も、何ら限定されるものではない。
【0063】
また、ステント52は、バルーン51を被うように配置される。詳説すると、例えば、折畳まれた何枚かのバルーン51は、カテーテル49の軸方向を中心にして、インナーチューブ21に沿って巻き付けられる。そして、このバルーン51を被うように、ステント52が配置される。
【0064】
なお、バルーン51の巻き付け方は、多々考えられる。例えば、バルーン51が2枚以上であれば、折畳んだバルーン51が、同じ回転方向に巻き付ける巻き付け方(Sラップ)が挙げられる。また、バルーン51が2枚以上であれば、折畳んだバルーン51が、それぞれ逆向きに巻き付ける巻き付け方(Cラップ)も挙げられる(ただし、バルーン51が3枚以上であれば、同じ向きに巻き付ける巻き付け方が多用される)。
【0065】
また、2枚以上のバルーン51が折畳まれ、そのバルーン51が、カテーテル49の軸方向を中心として巻き付けられた場合、ステント52の取り付けられる(縮径される)位置は、バルーン51における直管部分上に配置されると好ましい。
【0066】
〈親水性コーティングについて〉
カテーテル49の外面には、血管内またはガイドカテーテル内への挿入を容易にするために、親水性のコーティングが施されると好ましい。
【0067】
また、カテーテル49の血液と接触するシャフトチューブの少なくとも一部に、血液に接触した場合に、潤滑性を呈する親水性のコーティングが施されると好ましい。
【0068】
なお、親水性のコーティングの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、または、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーが挙げられる。また、コーティングの仕方も、特に限定されない。
【0069】
なお、ステントデリバリーカテーテル49では、バルーン51の表面に、親水性コーティングが施されていると、ステント52が脱落しやすくなる。そのため、バルーン51の表面には、親水性コーティングが施されないと好ましい。また、バルーン51上の親水性コーティングだけを除去し、そのバルーン51に対して、ウレタンまたはゴム等の摩擦係数の高い材料層を被覆させることで、ステント52がバルーン51から脱落させないようにしてもよい。
【実施例】
【0070】
上述してきた内容に関する一例を、具体的に示す。ただし、これに限定されるものではない。
【0071】
(実施例1[EX1])
図7に示すような、内部に4つの隆起(突起)15を有するアウターチューブ11が、ポリアミドエラストマー(商品名:PEBAX7233SA01、アルケマ社製)を用いた押出成型によって形成される。
【0072】
そして、このアウターチューブ11が円周方向に沿うように切断され、マイクロデジタルハイスコープにより、形状観察される。その結果は、このアウターチューブ11は、内径は0.58mm、外径は0.71mm、隆起15の幅W1は0.10mm(ただし平均値)、隆起15の隆起長D1は0.12mm(ただし平均値)であった。なお、下記の比較例におけるアウターチューブの断面積に比べて、実施例1のアウターチューブ11の断面積は、およそ120%である。
【0073】
(比較例[CEX])
何らの隆起を含まないアウターチューブを比較例とする。この比較例となるアウターチューブは、ポリアミドエラストマー(商品名:PEBAX7233SA01、アルケマ社製)を用いた押出成型によって形成される。なお、この比較例のアウターチューブにおける内径は0.58mm、外径は0.71mm、である。
【0074】
(引張試験)
試験片間距離が10mmとなるように、アウターチューブの両端がチャックされる。引張試験機によって、アウターチューブ11が引っ張られる。なお、試験速度は、200mm/minである。この試験により、アウターチューブ11が破断するときの荷重(破断荷重[N])が測定される。
【0075】
(三点曲げ試験)
アウターチューブ11の下部が2点支持される(支点間距離:12mm)。そして、アウターチューブ11の上部から、1点が押込まれ(試験速度:50mm/min)、1mm押込み時の荷重(曲げ剛性[N])が測定される。
【0076】
(評価結果)
評価結果は、図8に示す表の通りである。そして、この結果から、内側に隆起15を含むアウターチューブ11(実施例1)の破断荷重は、全く隆起を含まないアウターチューブ(比較例)の破断強度に比べて、向上した。しかしながら、実施例1のアウターチューブ11の曲げ剛性は、比較例のアウターチューブの曲げ剛性と、同等であった。
【0077】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0078】
例えば、隆起15は、線状であっても点状であっても構わない。また、図9および図10に示すように、壁部13の壁面(内壁面14A・外壁面14B)に対して、隆起15が形成されないアウターチューブ11であっても構わない。
【0079】
詳説すると、アウターチューブ11の断面(縦断面および横断面の少なくとも一方の断面)において、基準となる肉厚を含む部位13Nに対して、異なる肉厚の部位13K(基準部位13Nの肉厚よりも厚い肉厚を有する部位13K)が、少なくとも1つ以上含まれるアウターチューブ11であっても構わない。
【0080】
このようなアウターチューブ11であっても、肉厚の差異に起因する上述してきた作用効果が奏ずる。
【符号の説明】
【0081】
11 アウターチューブ[チューブ]
12 内腔
13 壁部
14A 内壁面
14B 外壁面
15 隆起
21 インナーチューブ
31 接続チューブ
41 ハブ
42 マニホールド
49 カテーテル
51 バルーン
52 ステント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病変処置用のカテーテルに含まれた、内腔を有するチューブにあって、
上記内腔を囲む壁部は、肉厚を異にする部位の集まりで形成されるチューブ。
【請求項2】
チューブの軸方向に交差する断面において、上記壁部の内壁面で示される線は、変曲点を含む請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
上記肉厚を異にする部位同士のうち、一方の部位が、他方の部位で形成される上記壁部の内壁面に対して、隆起となる請求項1または2に記載のチューブ。
【請求項4】
チューブの軸方向に交差する断面において、上記隆起が、少なくとも1つ以上含まれる請求項3に記載のチューブ。
【請求項5】
上記隆起の幅長は、チューブの軸方向において、一定または変化する請求項3または4のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項6】
上記隆起の隆起長は、チューブの軸方向において、一定または変化する請求項3〜5のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項7】
上記隆起は、上記軸方向における少なくとも一部分に亘る請求項3〜6のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項8】
上記隆起が先細りする請求項3〜7のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項9】
チューブの軸方向に交差する断面において、先細りした上記隆起で示される線は、曲線および直線の少なくとも一方を含む請求項8に記載のチューブ。
【請求項10】
先細りする上記隆起は、多角柱状、半円筒状、多角錐状、円錐状、多角錐台状、または円錐台状を含んだ形状である請求項8または9に記載のチューブ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のチューブを含む病変処置用のカテーテル。
【請求項12】
バルーンカテーテル、またはステントデリバリーカテーテルである請求項11に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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