説明

チューブ容器

【目的】耐ストレスクラック性、引裂強度、ヒートシール性に優れたチューブ容器を提供する。
【解決手段】 密度が905〜925kg/m、MFRが1.0〜10g/10分、Mw/Mnが4以下、示差走査型熱量計により200℃で5分間溶融し、その後冷却速度10℃/分で30℃まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で昇温させた際に観測される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とがTm<−1.8×SCB+138で示される関係を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、密度が910〜930kg/m、MFRが0.1〜10g/10分である高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)とからなり、(A)/(B)(重量比)が5/95〜45/55であるポリエチレン樹脂組成物からなるチューブ容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器に関するものであり、更に詳しくは、耐ストレスクラック性(以下、ESCRと記す。)および引裂強度に優れ、かつヒートシール性に優れたチューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンドクリーム、ヘアジェル、化粧クリームなどの化粧品用チューブ;シャンプー、リンス、洗剤などの日用品用チューブ;マヨネーズ、醤油、わさびなどの食品用チューブなどのチューブ容器は、一般に押出成形法を用いて製造されている。これらのチューブ容器は例えば高圧法低密度ポリエチレンの単層、あるいはガスバリア層を設けた多層で形成されている。これらのチューブ容器には、絞り出し時の柔軟性と復元性、内容物の膨張による容器強度(引裂強度)、内容物の浸透によるESCR、チューブの末端を閉鎖するためのヒートシール性が必要である。
【0003】
そこで、適度の柔軟性がありヒートシール性も良好であるため、高圧法低密度ポリエチレンが従来から好適に用いられていたが、該高圧法低密度ポリエチレンはESCRが低いために内容物によっては容器の液もれを招く、使用に適さない内容物がある、強度が低いために内容物の膨張により破損事故を招く、などの課題を有していた。
【0004】
そして、この課題を克服する方法として、メタロセン系直鎖状ポリエチレンを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンとエチレン・α−オレフィン共重合体とからなる組成物を押出ラミネート材料のヒールシート材等に使用することが知られているが(例えば、特許文献2参照。)、チューブ容器として使用することは知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−49820号公報
【特許文献2】特開平9−59440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に提案されている方法においては、メタロセン系直鎖状ポリエチレンは腰が強過ぎることから、絞り出し時の柔軟性と復元性に劣るという課題を残している。従来の高圧法低密度ポリエチレンと同様の柔軟性と復元性を兼ね備えた上で、ESCRに優れ引裂強度が高く、かつヒートシール性に優れたチューブ容器の出現が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは上記課題に関し鋭意検討した結果、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体及び特定の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記す。)からなるチューブ容器が、柔軟性と復元性を兼ね備えた上でESCRに優れ、引裂強度が高く、かつヒートシール性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、(a)密度が905〜925kg/mの範囲であり、(b)190℃,21.18Nの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜10g/10分の範囲であり、(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が4以下であり、(d)示差走査型熱量計により200℃で5分間溶融し、その後冷却速度10℃/分で30℃まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で昇温させた際に観測される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが下記(1)式で示される関係を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
Tm<−1.8×SCB+138 (1)
(e)密度が910〜930kg/mの範囲であり、(f)190℃,21.18Nの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜10g/10分の範囲であるLDPE(B)とからなり、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)/LDPE(B)(重量比)が5/95〜45/55であるポリエチレン組成物からなるチューブ容器に関するものである。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、密度が905〜925kg/mの範囲であり、190℃,21.18Nの荷重下で測定したメルトフローレート(以下、単にMFRと記す。)が1.0〜10g/10分の範囲であり、重量平均分子量(以下、Mwと記す。)と数平均分子量(以下、Mnと記す。)の比(以下、Mw/Mnと記す。)が4以下であり、示差走査型熱量計により200℃で5分間溶融し、その後冷却速度10℃/分で30℃まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で昇温させた際に観測される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(以下、単にTmと記す。)と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(以下、SCBと記す。)とが上記(1)式で示される関係を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0012】
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が925kg/mを越える場合、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化度が高くなり、得られるチューブ容器のヒートシール性が低下する。一方、密度が905kg/m未満である場合、得られるチューブ容器が柔らかくなり過ぎ復元性に劣るものとなる。
【0013】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが1.0g/10分未満である場合、得られるポリエチレン樹脂組成物の溶融せん断粘度が高くなり、加工時の押出機への負荷が大きくなるとともにドローダウン性も悪くなり、成形加工性に劣るものとなる。一方、MFRが10g/10分より大きい場合、得られるポリエチレン樹脂組成物の溶融張力が小さくなるため賦形性が悪くなる。また、分子量が小さいことからチューブ容器とした際の機械的強度が低下する。
【0014】
エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnが4を越える場合、低分子量成分が増大しポリエチレン樹脂組成物がべたついたものとなり、チューブ容器とした際には印刷不良を招く可能性の高いものとなる。
【0015】
エチレン・α−オレフィン共重合体のTmとSCBとの関係が上記(1)式の関係から外れる場合、低分子量成分が増大しポリエチレン樹脂組成物がべたついたものとなり、チューブ容器とした際には印刷不良を招く可能性の高いものとなる。また、ヒートシール時の最高到達強度に達するヒートシール温度が高くなり、容器の生産効率も劣るものとなる。
【0016】
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)としては、上記特性を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体であれば如何なるものでも良く、その製造方法等に特に制限はなく、その中でも直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと記す。)と同一の密度においても、従来のLLDPEより低い温度で最高到達ヒートシール強度に達する、等のヒートシール特性に優れることから重合触媒としてメタロセン触媒を用い製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0017】
該メタロセン触媒とは、主成分としてメタロセン化合物(以下、単に成分(a)と記す。)からなる重合用触媒であり、該成分(a)としては、例えばシクロペンタジエニル基、置換基を有するシクロペンタジエニル基(置換シクロペンタジエニル基)、インデニル基、置換インデニル基から選ばれる1種類の基と、フルオレニル基、置換フルオレニル基から選ばれる1種類の基が、架橋基により架橋された配位子を有する周期表第4族の遷移金属化合物等を挙げることができ、その代表例として、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−メチル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロル体および上記メタロセン化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体等を例示することができる。
【0018】
さらに、本発明において用いられるメタロセン触媒としては下記のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
成分(a)と下記一般式(2)
AlR (2)
(式中、Rは各々独立して水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で表される有機アルミニウム化合物(以下、単に成分(b)と記す。)からなる触媒、さらに水を含んでなる触媒、
成分(a)と下記一般式(3)
【0020】
【化1】

および/または下記一般式(4)
【0021】
【化2】

(式中、Rは各々独立して水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、pは2〜50の整数である。)
で表されるアルミノキサン(以下、単に成分(c)と記す。)からなる触媒、さらに成分(b)を含んでなる触媒、
成分(a)と下記一般式(5)
[Ry−1H][MAr] (5)
(式中、[Ry−1H]はカチオンであり、Mは周期表の第15族または第16族から選ばれる元素であり、Rは炭素数1〜30の炭化水素基であり、Rは各々独立して水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基であり、yはMが第15族元素の時y=3であり、Mが第16族元素の時y=2であり、[MAr]はアニオンであり、Mはホウ素、アルミニウムまたはガリウムであり、Arは各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表されるプロトン酸塩(以下、単に成分(d)と記す。)、下記一般式(6)
[C][MAr] (6)
(式中、Cはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンであり、Mはホウ素、アルミニウムまたはガリウムであり、Arは各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表されるルイス酸塩(以下に、単に成分(e)と記す。)または下記一般式(7)
[M][MAr] (7)
(式中、Mは周期表の第1族、第8族、第9族、第10族または第11族の金属の陽イオンであり、Lはルイス塩基またはシクロペンタジエニル基であり、zは0≦z≦2であり、Mはホウ素、アルミニウムまたはガリウムであり、Arは各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される金属塩(以下、単に成分(f)と記す。)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒、さらに成分(b)および/または成分(c)を含んでなる触媒、
成分(a)と下記一般式(8)
Ar (8)
(式中、Mはホウ素、アルミニウムまたはガリウムであり、Arは各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表されるルイス酸(以下、単に成分(g)と記す。)からなる触媒、さらに成分(b)および/または成分(c)を含んでなる触媒、
成分(a)と成分(g)と成分(d)、成分(e)、成分(f)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒、さらに成分(b)および/または成分(c)を含んでなる触媒、
成分(a)と粘土鉱物(以下、単に成分(h)と記す。)からなる触媒、さらに成分(b)を含んでなる触媒、
特開平7−224106号公報、特開平9−59310号公報、特開平10−231312号公報、特開平10−231313号公報等に例示される成分(a)と有機化合物で処理された粘土鉱物(以下、単に成分(i)と記す。)からなる触媒、さらに成分(b)を含んでなる触媒が挙げられる。
【0022】
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体に用いるα−オレフィンとしては、一般式
R−CH=CH
(式中、Rは炭素数1以上のアルキル基である。)
で表されるものである。その例として、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、オクタデセン等が挙げられる。中でも、得られるポリエチレン樹脂組成物を容器、特にチューブ状円筒容器とした際の引張強度、引裂強度、衝撃強度、ヒートシール強度等に優れることから、炭素数5〜10のα−オレフィンが好ましく、特に1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。
【0023】
該エチレン・α−オレフィン共重合体は、これらα−オレフィンの少なくとも1種をエチレンと共重合することにより得られ、具体的には、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン三元共重合体等が挙げられる。
【0024】
本発明に用いるLDPE(B)は、密度が910〜930kg/mの範囲であり、MFRが0.1〜10g/10分の範囲であるLDPEである。
【0025】
ここで、密度が910kg/m未満のLDPEである場合、チューブ容器は柔らかくなり復元性に劣るものとなる。一方、密度が930kg/mより大きいLDPEを入手することは困難である。
【0026】
また、MFRが0.1g/10分より小さいLDPEである場合、溶融せん断粘度が高くなりポリエチレン樹脂組成物を成形加工する際の押出機への負荷が大きくなるとともにドローダウン性も悪くなり成形加工性の劣るものとなる。一方、10g/10分より大きいLDPEである場合、溶融張力が小さくなるためチューブ容器とする際の賦形性が悪くなり、分子量が小さくなることからチューブ容器の機械的強度が低下する。
【0027】
このようなLDPEは、一般に高圧法ラジカル重合法として知られている通常の重合方法により得ることが可能であり、例えば(商品名)ペトロセンシリーズ(東ソー(株)製)として市販品として入手することも可能である。
【0028】
本発明に用いるポリエチレン樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)/LDPE(B)(重量比)=5/95〜45/55の範囲からなるものである。さらに好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体(A)/LDPE(B)(重量比)=10/90〜40/60の範囲からなるものである。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)/LDPE(B)=5/95を下回る場合、得られるチューブ容器はESCRや引裂強度に劣るものとなる。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)/LDPE(B)=45/55を上回る場合、ポリエチレン樹脂組成物を調整する際の押出機への負荷が高くなると共に、成形加工性にも劣るものとなる。
【0029】
また、本発明に用いるポリエチレン樹脂組成物においては、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)及びLDPE(B)は、それぞれ1種類または2種類以上の混合物を用いることができる。
【0030】
本発明に用いるポリエチレン樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)、LDPE(B)を従来公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいはこのような方法で得られた混合物をさらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒することによって得ることができる。
【0031】
また、本発明に用いるポリエチレン樹脂組成物は、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、充填材、顔料等を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0032】
本発明に用いるポリエチレン樹脂組成物で成形加工を行った成形品はESCR、引裂強度に優れることから各種容器、特にチューブ容器として用いることができ、さらにチューブ容器は、ハンドクリーム、ヘアジェル、化粧クリームなどの化粧品用チューブ;シャンプー、リンス、洗剤等の日用品用チューブ;マヨネーズ、醤油、わさび等の食品用チューブ等の容器として用いることもできる。そして、チューブ容器に賦形する方法としては、押出成形法によって賦形を行うことができる。
【0033】
本発明のチューブ容器の厚みには特に制限はなく、一般的には柔軟性および復元性との兼合いと容器強度や経済性などの観点から0.3〜0.8mmの範囲であるチューブ容器とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のチューブ容器は、ESCRおよび引裂強度が優れ、かつヒートシール性にも優れる。このチューブ容器は、ESCRが優れることから製造時、保管時、輸送時、使用時の内容物の漏れ、染み出しなどの事故が防止できるばかりでなく、引裂強度が高いことから内容物の膨張による破損事故が防止できるとともに薄肉化、軽量化が可能となり、経済的にも有用である。またヒートシール性が良好であるため従来のヒートシール設備をそのまま用いることができて経済的である。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例および比較例に用いたエチレン・α−オレフィン共重合体、LDPE及び得られたチューブ容器の諸物性は、下記の方法により測定した。
【0037】
<密度>
JIS K 7112(1980年)に従い、100℃の沸騰水中に1時間浸した後に室温で放冷したものを、23℃に保った密度勾配管にて測定した。
【0038】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K 7210(1995年)に従い、190℃,21.18Nの荷重下で測定した。
【0039】
<融点>
示差走査型熱量計(パーキンエルマー(株)製、商品名DSC−7)を用いて測定した。装置内で試料を200℃で5分間溶融させた後、10℃/分で30℃まで冷却したものについて、再度10℃/分で昇温させた時に得られる吸熱曲線の最大ピーク位置の温度を融点とした。
【0040】
<Mw/Mn比>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)により得られた溶出曲線より標準ポリスチレン換算によるMn及びMwを求め、それよりMw/Mnを求めた。
【0041】
測定器 :ウォーターズ社製GPC (型式)150C
カラム :(商品名)TSK gelGMHHR−H(S)(東ソー(株製))
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン
試料濃度:0.1wt%
測定温度:140℃
流量 :1.0ml/分
<短鎖分岐数(SCB)>
分子鎖中の短鎖分岐数(SCB)は、フーリエ変換型赤外吸収スペクトル装置(パーキンエルマー(株)製、商品名FT−IRスペクトロメーター1760X)を用いて、1378cm−1に位置するメチル基の変角振動に対応する吸収バンドの強度から求めた。
【0042】
<ESCR>
ASTM D1693に準拠して、3mm肉厚のプレス成形板から38×13×3mmの試験片を打抜き、100℃の沸騰水中で1時間浸した後に23℃で24時間状態調整を行った。試験片に規定のノッチを入れ、ホルダーに設置した後、(商品名)ノニオンNS210(日本油脂製)の10%溶液中へ浸漬し、クラックの発生する迄の時間を測定した。
【0043】
<エルメンドルフ引裂強度(MD、TD)>
JIS K 7128−3(直角引裂法)(1998年)に基づいて測定した。試料は押出成形によって得られたチューブ(肉厚0.5mm)を展開し、流れ方向(MD)と直交方向(TD)に試験片を打抜き、測定した。
【0044】
<ヒートシール強度>
試料は押出成形によって得られたチューブ(肉厚0.5mm)を100mmの長さに切断し、片端を閉鎖しヒートシール試験に供した。ヒートシールの方法は、ヒートシールテスター(テスター産業(株)製、商品名TP−701)を用いて、末端から5mm幅の領域をシール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間2秒間でヒートシールすることにより行い、そのシール部の剥離強度は、プッシュプルスケール(イマダ製作所製、商品名FB−30)を用いて、15mm幅の短冊状に切り取ったシール部を引っ張って剥離した時の荷重を測定した。
【0045】
(エチレン・α−オレフィン共重合体)
実施例および比較例に使用したエチレン・α−オレフィン共重合体は、以下の方法で製造あるいは市販品を用いた。なお、製造の際の重合操作、反応および溶媒精製は、すべて不活性ガス雰囲気下で行った。また、反応に用いた溶媒等は、すべて予め公知の方法で精製、乾燥、脱酸素を行ったものを用いた。さらに、反応に用いた化合物は、公知の方法により合成、同定したものを用いた。
【0046】
合成例1(エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)の調整)
<重合触媒の調製>
窒素雰囲気下の20リットルステンレス容器に、ヘプタン3.3リットル、トリイソプロピルアルミニウムのヘプタン溶液をアルミニウム原子当たり2.5mol(3.6リットル)およびジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドをジルコニウム原子当たり10mmol加えて1時間攪拌した。そこへN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをホウ素原子当り11mmol加えて12時間攪拌した。得られた懸濁系に脂肪族系飽和炭化水素溶媒(IPソルベント2835(出光石油化学社製))を8.7リットル加えることにより、触媒を調製した(ジルコニウム濃度0.64mmol/L)。
【0047】
<重合>
槽型反応器を用いて重合を行った。エチレン、1−ヘキセンおよびエタンを連続的に反応器内に圧入して、全圧を90MPaに、1−ヘキセン濃度を27.0mol%になるように設定し、反応器を1500rpmで撹拌した。そして、触媒を反応器の供給口より連続的に供給して、平均温度が160℃に保たれるように重合を行った。その結果、密度920kg/m、MFR2.0g/10分、Tm112℃、Mw/Mn=2.5、SCB=9.4個/1000Cのエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下、エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)と記す)を得た。
【0048】
上記の方法により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A1)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名IRGANOX1010)0.05重量部、リン系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名IRGANOX168)0.05重量部、ステアリン酸カルシウム(淡南化学(株)製、商品名ステアリン酸カルシウム)0.05重量部を添加し、単軸押出機(プラコー(株)製、型式PDA−50)により、180℃、60rpmで溶融押出してペレット化した。
【0049】
合成例2(エチレン・α−オレフィン共重合体(A2)の調整)
重合時の1−ヘキセン濃度を40.0mol%に変更した以外は、合成例1と同様にして重合を行った。その結果、密度910kg/m、MFR4.0g/10分、Tm104℃、Mw/Mn=2.5、SCB=15.8個/1000Cのエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下、エチレンα−オレフィン共重合体(A2)と記す。)を得た。既エチレン・α−オレフィン共重合体(A2)は、合成例1と同様な方法でペレット化した。
【0050】
【表1】

実施例1
合成例1により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(東ソー(株)製、商品名ペトロセン180R;密度922kg/m、MFR2.0g/10分、Tm110℃、Mw/Mn=4.8)(以下、LDPE(B1)と記す。)(重量比)=25/75でタンブラーブレンダーで混合し、さらに一軸押出機で溶融混練した後、造粒することによりポリエチレン樹脂組成物ペレットを得た。このポリエチレン樹脂組成物のESCRは33hr(F50)であった。
得られたポリエチレン樹脂組成物をチューブ押出機(GMエンジニアリング社製、押出機シリンダー径60mmφ、ダイス径50mm、リップクリアランス1.2mm)を用い、押出機、ダイの設定温度を160℃とし、引取速度を3m/min、容器厚みを0.5mmとした成形条件でチューブ容器とした。
【0051】
得られたチューブ容器は、エルメンドルフ引裂強度(MD)が128N/mm、ヒートシール強度が57N/15mmであった。ESCRが良好であり、かつ引裂強度およびヒートシール強度に優れたチューブ容器が得られた。
【0052】
実施例2
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(B1)(重量比)=25/75をエチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(東ソー(株)製、商品名ペトロセン360;密度919kg/m、MFR1.6g/10分、Tm108℃、Mw/Mn=8.4)(以下、LDPE(B2)と記す。)(重量比)=10/90とした以外は、実施例1と同様の方法によりチューブ容器を得た。
【0053】
得られたチューブ容器は、ESCRが15hr(F50)、エルメンドルフ引裂強度(MD)が109N/mm、ヒートシール強度が56N/15mmを示した。ESCRが良好であり、かつ引裂強度およびヒートシール強度に優れたチューブ容器が得られた。
【0054】
実施例3
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(B1)(重量比)=25/75をエチレン・α−オレフィン共重合体(A2)/LDPE(B1)(重量比)=40/60とした以外は、実施例1と同様の方法によりチューブ容器を得た。
【0055】
得られたチューブ容器は、ESCRが100hr以上(F50)、エルメンドルフ引裂強度(MD)が143N/mm、ヒートシール強度が65N/15mmを示した。ESCRが良好であり、かつ引裂強度およびヒートシール強度に優れたチューブ容器が得られた。
【0056】
比較例1
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(B1)(重量比)=25/75をLDPE(B1)単独とした以外は、実施例1と同様の方法によりチューブ容器を得た。
【0057】
得られたチューブ容器は、ESCRが1hr(F50)、エルメンドルフ引裂強度(MD)が100N/mm、ヒートシール強度が56N/15mmを示した。しかし、ESCRが極端に低く内容物によっては容器として使用できないものがあった。
【0058】
比較例2
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(B1)(重量比)=25/75をLDPE(B2)単独とした以外は、実施例1と同様の方法によりチューブ容器を得た。
【0059】
得られたチューブ容器は、ESCRが8hr(F50)、エルメンドルフ引裂強度(MD)が94N/mm、ヒートシール強度が52N/15mmを示した。しかし、引裂強度が低いものであった。
【0060】
比較例3
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(B1)(重量比)=25/75をエチレン・α−オレフィン共重合体(東ソー(株)製、エチレン−1−ヘキセン共重合体(商品名:ニポロンZ ZF230);密度920kg/m、MFR2.0g/10分、Tm123℃、Mw/Mn=4.1、SCB=12.7個/1000C)/LDPE(B1)(重量比)=25/75とした以外は、実施例1と同様の方法によりチューブ容器を得た。
【0061】
得られたチューブ容器は、ESCRが25hr(F50)、エルメンドルフ引裂強度(MD)が120N/mm、ヒートシール強度が0N/15mm(部分的に未融着)を示し、チューブ容器が融着できないことから、使用できないものであった。
【0062】
比較例4
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)/LDPE(B1)(重量比)=25/75をエチレン・α−オレフィン共重合体(宇部興産(株)製、エチレン−1−ヘキセン共重合体(商品名:UMERIT 2040FC);密度919kg/m、MFR3.7g/10分、Tm121℃、Mw/Mn=3.3、SCB=11個/1000C)/LDPE(B1)(重量比)=25/75とした以外は、実施例1と同様の方法によりチューブ容器を得た。
【0063】
得られたチューブ容器は、ESCRが30hr(F50)、エルメンドルフ引裂強度(MD)が125N/mm、ヒートシール強度が0N/15mm(部分的に未融着)を示し、チューブ容器が融着できないことから、使用できないものであった。
【0064】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)密度が905〜925kg/mの範囲であり、(b)190℃,21.18Nの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1.0〜10g/10分の範囲であり、(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が4以下であり、(d)示差走査型熱量計により200℃で5分間溶融し、その後冷却速度10℃/分で30℃まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で昇温させた際に観測される吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが下記(1)式で示される関係を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
Tm<−1.8×SCB+138 (1)
(e)密度が910〜930kg/mの範囲であり、(f)190℃,21.18Nの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜10g/10分の範囲である高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)とからなり、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)/高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)(重量比)が5/95〜45/55であるポリエチレン樹脂組成物からなるチューブ容器。

【公開番号】特開2006−111331(P2006−111331A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302815(P2004−302815)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】