説明

チョップドストランド及び繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料

【課題】 ポリアセタール樹脂に対し、高い補強効果をもたらすチョップドストランド及び繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】 ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、ポリウレタン樹脂、及びアミノシラン系カップリング剤とを含む集束剤を用い、チョップドストランドの全量に対し、該集束剤の固形分が0.1〜1.0質量%付着しているチョップドストランドは、ポリアセタール樹脂の補強効果が高い。また、該チョップドストランドを補強材として用いた繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料は、機械強度に優れたポリアセタール樹脂成形品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械強度に優れたポリアセタール樹脂成形品を得るためのチョップドストランド及び繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械強度、電気特性、化学特性に優れており、エレクトロニクス、自動車、OA機器、機械、家電製品等多方面で利用されている。
【0003】
一般的に熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる樹脂成形品は、ガラス繊維をはじめとするチョップドストランド等を補強材として用い、該補強材を樹脂と混練することで機械強度を向上させている。しかしながら、ポリアセタール樹脂は、化学的に不活性であるため、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリエチレンテレフタレート樹脂等に比べ、ガラス繊維をはじめとする補強材を配合しても、目立った補強効果が得られにくいという問題点がある。
【0004】
上記問題を解決するために、例えば特許文献1では、キシリレンジイソシネートを主とするウレタン樹脂、シランカップリング剤、カチオン系潤滑剤、及び亜リン酸を含む集束剤を付与したガラス繊維束について開示されており、該ガラス繊維束を補強材として用いることで、ポリアセタール樹脂成形材料の機械強度を向上させている。
【0005】
また、下記特許文献2では、4官能性エポキシ樹脂エマルジョンと、シラン系カップリング剤と、カチオン系潤滑剤と、酢酸とを含むガラス繊維用集束剤について開示されており、該集束剤で集束されたガラス繊維束を補強材として用いることでポリアセタール樹脂成形材料の機械強度を向上させている。
【特許文献1】特開2000−335942号公報
【特許文献2】特開昭60−221343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、集束剤に含まれるカチオン系潤滑剤を水溶化させ、均質なものとするため、集束剤に酢酸を用いている。そのため、該集束剤をガラス繊維に付与した際、ガラス繊維の表面に酢酸が残存することがある。この残存した酢酸がポリアセタール樹脂を分解してしまい、ポリアセタール樹脂成形材料の機械強度の向上を阻害してしまう。
【0007】
また、上記特許文献2では、ポリアセタール樹脂の分解を抑制することでポリアセタール樹脂成形品の機械強度向上を図っており、カチオン系潤滑剤を水溶化させて均質な集束剤とするため、pH調整剤として亜リン酸を用いている。しかしながら、ポリアセタール樹脂自体が化学的に不活性であるため、ポリアセタール樹脂とガラス繊維との接着性は良好とはいえず、充分な機械強度を得ることができない。
【0008】
よって、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ポリアセタール樹脂成形品の機械強度を向上させることのできるチョップドストランド及び繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリアセタール樹脂自体が化学的に不活性であるため、ガラス繊維でポリアセタール樹脂を補強した際、ガラス繊維とポリアセタール樹脂とが接着不良になりやすく、これがポリアセタール樹脂の補強効果に影響を及ぼしていると考えた。
【0010】
そこで、ポリアセタール樹脂とガラス繊維との接着性を向上させることに注目し、集束剤に含有させる成分のうちポリアセタール樹脂を適度に分解して活性化させる成分について鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明のチョップドストランドは、集束剤として、ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、ポリウレタン樹脂、及びアミノシラン系カップリング剤とを含み、前記集束剤の固形分がチョップドストランドの全量に対し0.1〜1.0質量%付着していることを特徴とする。
【0012】
上記集束剤を用いたチョップドストランドは、ポリアセタール樹脂を適度に分解させ、その分解物と、チョップドストランドに付与した集束剤とが再度反応するため、該チョップドストランドとポリアセタール樹脂との界面接着性を極めて良好なものとすることができる。よって、本発明のチョップドストランドはポリアセタール樹脂の補強効果が極めて高い。
【0013】
また、本発明の集束剤は、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対し、ハロゲン化アンモニウムの固形分が0.3〜3質量部、ポリウレタン樹脂の固形分が10〜100質量部、及びアミノシラン系カップリング剤の固形分が5〜50質量部であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の集束剤には、蛍光増白剤を含むことが好ましい。これによれば、チョップドストランドの黄変を防止でき、色調を良好なものとすることができる。
【0015】
そして、本発明の集束剤に含まれる蛍光増白剤は、ポリアクリル酸の固形分量100質量部に対し0.3〜3質量部であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の集束剤に用いるポリウレタン樹脂は、キシリレンジイソシネートを主成分とするイソシアネート成分と、ポリ(ε‐カプロラクトン)ジオールを主成分とするポリオール成分とで構成されていることが好ましい。
【0017】
更に、本発明においては、ハロゲン化アンモニウムとして臭化アンモニウムを用いることが好ましい。
【0018】
一方、本発明の繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料は、上記のようにして調整されたチョップドストランドがポリアセタール樹脂に5〜70質量%含有していることを特徴とする。
【0019】
本発明のチョップドストランドを用いた繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料は、機械強度に優れたポリアセタール樹脂成形品を提供することができる。また、ガラス含有率が上記範囲内であれば、コストと機械強度の両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料用チョップドストランドは、ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、ポリウレタン樹脂、及びアミノシラン系カップリング剤を含む集束剤の固形分が、該チョップドストランドの全量に対し、0.1〜1.0質量%付着しており、特にポリアセタール樹脂に対し高い補強効果をもたらすことができる。
【0021】
そして、本発明のチョップドストランドを用いた繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料は、機械強度に優れたポリアセタール樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明におけるチョップストランドの集束剤は、ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、ポリウレタン樹脂、及びアミノシラン系カップリング剤とを含んでいる。
【0023】
本発明の集束剤に用いるポリアクリル酸は、アクリル酸の重合体、又はアクリル酸と1種類以上の単量体との共重合体、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0024】
ポリアクリル酸は、ポリアセタール樹脂を適度に分解させるが、この分解物とポリアクリル酸とが更に反応すると推測され、チョップドストランドの集束剤と、ポリアセタール樹脂との界面接着が良好となるので、ポリアセタール樹脂の高い補強効果が期待できる。
【0025】
そして、上記アクリル酸との共重合物の製造に使用される単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が好ましく用いられる。なお、これらの単量体は2種類以上併用してもよい。
【0026】
本発明の集束剤に用いるハロゲン化アンモニウムは、繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料の機械強度を向上させるものであり、好ましい具体例として塩化アンモニウム、臭化アンモニウムが挙げられるが、臭化アンモニウムを用いることがより好ましい。前記ハロゲン化アンモニウムは、ポリアセタール樹脂を適度に分解させる働きを有し、ポリアクリル酸と併用することで、繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料の機械強度を相乗的に向上させることができる。
【0027】
そして、集束剤に含まれるハロゲン化アンモニウムは、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対して、ハロゲン化アンモニウムの固形分が0.3〜3質量部であることが好ましく、0.5〜 2質量部であることがより好ましい。集束剤に含まれるハロゲン化アンモニウムの固形分量が0.3質量部未満であると、チョップドストランドをポリアセタール樹脂の補強材として用いた際、充分な補強効果が得られず、また、3質量部を超えると、結果として得られる成形品を加熱処理した場合、ガス発生量が多くなるため好ましくない。
【0028】
本発明の集束剤に用いるアミノシラン系カップリング剤は、従来ガラス繊維の表面処理に用いられるアミノシラン系カップリング剤が使用でき、好ましくはモノアミノシラン系又はジアミノシラン系であり、特に色調の点から、モノアミノシランがより好ましい。
【0029】
好ましい具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N'−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。尚、これらカップリング剤は2種類以上を併用してもよい。
【0030】
そして、集束剤に含まれるアミノシラン系カップリング剤の含有量は、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対し、アミノシラン系カップリング剤の固形分が5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは、固形分が10〜30質量部である。集束剤に含まれるアミノシラン系カップリング剤の固形分が5質量部より未満であると、チョップドストランドをポリアセタール樹脂の補強材として用いた際、充分な補強効果が得られず、また、50質量部より大きいとチョップドストランドの色調が黄変するため好ましくない。
【0031】
本発明の集束剤に用いるポリウレタン樹脂は、チョップドストランドの集束性を向上させるものであり、高分子ポリオール、有機ジイソシアネート、更に必要により鎖伸長剤及び/又は架橋剤とから形成される従来既知のものが好ましく使用でき、エマルジョンやディスパージョン等の水分散状にして用いることが好ましい。
【0032】
上記高分子ポリオールの好ましい具体例としては、例えば、i)ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール、ポリ(ε‐カプロラクトン)ジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリエステルポリオール、ii)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0033】
また、有機ジイソシアネートの好ましい具体例としては、例えば、i)2,4'−もしくは4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジベンジルジイソシアネート、1.3−もしくは1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート、ii)エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、iii)イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられ、これらの2種類以上を併用してもよい。
【0034】
鎖伸長剤及び/又は架橋剤としては、数平均分子量が60〜500の活性水素含有化合物が好ましく、例えばi) エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2−ビス(4,4'−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコールや、 ペンタエリスリト―ル、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビト―ル、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリト−ル、グルコ−ス、フルクト−ス、ショ糖等の4〜8価のアルコ―ル等の多価アルコール類、ii) ピロガロ―ル、カテコール、ヒドロキノン等の多価フェノ―ル類、iii) ビスフェノ―ルA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノ―ル類、iv) エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン類、v) イソホロンジアミン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ポリアミン類、vi) 4,4'−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン類、vii) キシリレンジアミン等の芳香脂環族ポリアミン類、viii)ヒドラジンもしくはその誘導体等のポリアミンが挙げられる。
【0035】
本発明において、ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、上記に挙げた高分子ポリオール類のなかでも、ポリ(ε‐カプロラクトン)ジオールが好ましく、また、イソシアネート成分としては、上記に挙げた有機ジイソシアネートのなかでも、XDIを用いることが好ましい。そして、ポリカプロラクトンジオールとXDIとで構成されたポリウレタン樹脂を用いたチョップドストランドは、集束性が極めて高いためより好ましい。
【0036】
そして、集束剤に含まれるポリウレタン樹脂は、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対し、ポリウレタン樹脂の固形分は10〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは、20〜80質量部である。ポリウレタン樹脂の固形分が10質量部より小さいとチョップドストランドの集束性が不充分なものとなり、また、100質量部を超えても集束性の向上はさほど得られず、ポリアセタール樹脂の補強効果が低下するため好ましくない。
【0037】
本発明の集束剤には、更に蛍光増白剤を加えることが好ましく、それによって、チョップドストランド及び繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料の黄変を防止し、色調を整えることができる。
【0038】
本発明で用いることのできる蛍光増白剤としては、ベンゾオキサゾール系、トリアゾール系、クマリン系、ピラゾリン系、スチリル系、ナフタルイミド系が挙げられ、ベンゾオキサゾール系、又はトリアゾール系が特に好ましい。
【0039】
そして、蛍光増白剤の含有量は、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対して蛍光増白剤の固形分が0.3〜3質量部であることが好ましい。蛍光増白剤の固形分が0.3質量部未満であると、チョップドストランド及び繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料の色調改良効果が充分得られない。また3質量部を超えると、経済的に好ましくない他、青味がかってしまうため好ましくない。
【0040】
本発明の集束剤には、上記成分の他に更に界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤を含んでもよい。
【0041】
界面活性剤としては、ノニオン系の界面活性剤が好ましく、例えば、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドコポリマー、合成アルコール系、天然アルコール系、脂肪酸エステル系、ジスチレン化フェノール系等が挙げられる。
【0042】
潤滑剤としては、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩等を含有できる。脂肪酸アミドとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物が使用できる。また、第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウム塩等を併用できる。
【0043】
帯電防止剤としては、塩化リチウムやヨウ化カリウム等の無機塩や、アンモニウムクロライド型やアンモニウムエトサルフェート型等の4級アンモニウム塩が好ましく用いることができる。
【0044】
本発明で使用する集束剤は、上記ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、アミノシラン系カップリング剤及びポリウレタン樹脂と、必要に応じて蛍光増白剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤等の助剤を、例えば、水性媒体中で混合することにより容易に調製できる。
【0045】
そして、集束剤は、ガラス繊維と集束剤との合計100質量部に対し、固形分が0.1〜1.0質量%となるよう付与することが好ましく、0.2〜0.5質量%となるように付与することがより好ましい。付与量が0.1質量%未満であると集束性に劣る他、ポリアセタール樹脂の補強効果がさほど得られず、また、1.0質量%を超えると加熱時のガス発生が多くなるため好ましくない。
【0046】
本発明において、チョップドスランドを製造する方法については特に限定は無く、従来公知の様々な方法を使用することができる。
【0047】
例えば、溶融したガラスをブッシングの底部に取り付けた多数のノズルより引き出し、このガラス繊維にアプリケーターまたはスプレーで集束剤を塗布し、ガラス繊維束を好ましくは1.5〜13mmに切断する。その際、ガラス繊維束を一度巻き取ってから切断しても良く、巻き取らずそのまま切断しても良い。
【0048】
次いで、ガラス繊維束切断物の乾燥工程に移るが、乾燥工程前に再度集束剤を塗布しても良い。乾燥温度及び乾燥時間は任意で特に限定はないが、ガラス繊維束の集束性を損なわせず乾燥工程を効率的に実施するため、乾燥温度を120〜220℃、乾燥時間を10秒〜10分間とすることが好ましい。
【0049】
上記のようにして本発明のチョップドストランドが得られる。
【0050】
また、上記のチョップドストランドを、溶融したポリアセタール樹脂に含浸させることで繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料が得られる。
【0051】
本発明において、ポリアセタール樹脂としては特に限定はなく、例えば、単独重合体のポリオキシメチレン、トリオキサンとエチレンオキシドから得られるホルムアルデヒド−エチレンオキシド共重合体、ポリウレタン含有ポリアセタール、又はエラストマー含有ポリアセタール等の変性ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0052】
また、本発明において繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の様々な方法を用いることができる。
【0053】
例えば、スクリュー押出機より溶融されたポリアセタール樹脂を可塑化させつつ、これに対して上記チョップドストランドを供給して溶融混練させる。溶融混練物を線状の繊維強化ポリアセタール樹脂体に成形し、次いで、これをペレタイザー等で切断することで繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料を得られる。また、射出成形機を用いた公知の方法により繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料を得ることもできる。
【0054】
そして、繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料のガラス含有率は、5〜70質量%が好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料のガラス含有率が5質量%未満では機械強度に乏しく実用性に適さず、また、70質量%を超えると製造コストが高くなるため好ましくない。
【実施例】
【0055】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、これらの実施例は本発明の実施態様を具体的に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
〔チョップドストランドの作製〕
平均径10μmのガラス繊維を3,000本集束させ、表1に示す原料を用い、表2に示す配合割合(質量部)で調整した製造例1〜11の集束剤を付与し、3mmに切断して、実施例1〜8、及び比較例1〜3のチョップドストランドを得た。






【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
〔ポリアセタール樹脂成形品の作製〕
ポリアセタールコポリマー(MFR45)に、実施例1〜8、比較例1〜3のチョップドストランドを添加し、スクリュー径35mmの2軸押出機を用い、成形温度220℃でガラス含有率25質量%の繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料を得た。
【0060】
次いで、型締め荷重75t、シリンダー温度190〜210℃、金型80℃で成形し、ペレット状のポリアセタール樹脂成形品を得た。
【0061】
〔チョップドストランド及び、ポリアセタール樹脂成形品の性能評価〕
<毛羽量測定>
内部に中羽根を設置した容量10リットルのVミキサーにチョップドストランド3kgを投入しミキサー回転数30rpm、中羽根回転数480rpm(ミキサーの回転とは逆方向)にて15分間攪拌する。その後、目開き3.35mmの篩でふるい、篩上に残った毛羽を回収し、毛羽重量を精秤した。毛羽重量が10g以下であればチョップドストランドの集束性が良好であると判断した。
【0062】
<引張り強度測定>
ASTM D−638に準拠した方法で測定し、130MPa以上であれば良好であると判断した。
【0063】
<曲げ強度測定>
ASTM D−790に準拠した方法で測定し、190MPa以上であれば良好であると判断した。
【0064】
<IZOD衝撃強度測定>
1/8インチノッチ付で、ASTM D−256に準拠した方法で測定し、6.5MPa以上であれば良好であると判断した。
【0065】
<色調>
色差計(Σ−90、日本電色社製)を用い、ペレット状体の樹脂成形材料の色調を測定した。色調はb値が1〜5の範囲内であれば、ポリアセタール樹脂が有している色調とほぼ同等であるため、色調が良好であると判断した。
【0066】
<熱減量率>
1.5gに調整したポリアセタール樹脂成形品を230℃で60分間焼成し、熱減量率を求めた。熱減量率が1.5%以下あれば、ガスの発生量は充分抑制できると判断した。
【0067】
実施例1〜8、比較例1〜3のチョップドストランド及び、ポリアセタール樹脂成形品について上記の項目の評価を行い、結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
上記結果より、集束剤にハロゲン化アンモニウムを用いていない比較例1、及びハロゲン化アンモニウムとポリアクリル酸を用いていない比較例3のポリアセタール樹脂成形品は機械強度が劣るものであり、また、ウレタン樹脂を用いていない比較例2のチョップドストランドは集束性の悪いものであった。
【0070】
これに対し、ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、ウレタン樹脂、及びアミノシラン系カップリング剤を含む集束剤を用いた実施例1〜8のチョップドストランドは、集束性に優れ、またそれを用いたポリアセタール樹脂成形品は機械強度に優れたものである。
【0071】
また、固形分換算で0.3〜3質量%の蛍光増白剤を更に含む集束剤を用いた実施例1〜6のポリアセタール樹脂成形品は、黄味がかりや青味がかりを抑えることができ、ポリアセタール樹脂とほぼ同等の色調を備えることができる。
【0072】
そして、ポリウレタン樹脂の含有量が10〜100質量部である実施例1〜5のポリアセタール樹脂成形品はより機械強度に優れるものであり、更には、ハロゲン化アンモニウムの固形分量が0.3〜3質量部である実施例1〜4のポリアセタール樹脂成形品は加熱によるガス発生量を低減することができる。
【0073】
よって、本発明によれば、色調及び集束性に優れ、加熱によるガス発生量の少ないチョップドストランドとすることができ、また、該チョップドストランドを補強材として用いた繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料は、機械強度、及び色調の良いポリアセタール樹脂成形品を提供とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のチョップドストランドは、ポリアセタール樹脂の補強効果が高く、該チョップドストランドを用いた繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料は、機械強度の優れたポリアセタール樹脂成形品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束剤として、ポリアクリル酸、ハロゲン化アンモニウム、ポリウレタン樹脂、及びアミノシラン系カップリング剤とを含み、前記集束剤の固形分がチョップドストランドの全量に対し0.1〜1.0質量%付着していることを特徴とするチョップドストランド。
【請求項2】
前記集束剤は、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対し、ハロゲン化アンモニウムの固形分が0.3〜3質量部、ポリウレタン樹脂の固形分が10〜100質量部、及びアミノシラン系カップリング剤の固形分が5〜50質量部である請求項1に記載のチョップドストランド。
【請求項3】
前記集束剤の成分として更に蛍光増白剤を含む請求項1又は2に記載のチョップドストランド。
【請求項4】
前記集束剤に含まれる蛍光増白剤は、ポリアクリル酸の固形分100質量部に対し0.3〜3質量部である請求項1〜3のいずれか1つに記載のチョップドストランド。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂は、キシリレンジイソシネートを主成分とするイソシアネート成分と、ポリ(ε‐カプロラクトン)ジオールを主成分とするポリオール成分とで構成された請求項1〜4のいずれか1つに記載のチョップドストランド。
【請求項6】
前記ハロゲン化アンモニウムが、臭化アンモニウムである請求項1〜5のいずれか1つに記載のチョップドストランド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のチョップドストランドと、ポリアセタール樹脂とを混練してなるガラス含有率が5〜70質量%である繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料。

【公開番号】特開2006−37267(P2006−37267A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217043(P2004−217043)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000116792)旭ファイバーグラス株式会社 (101)
【Fターム(参考)】