説明

チル成形のための方法およびデバイス

【課題】鋳鉄を鋳造するためのデバイスを提供する。
【解決手段】デバイスは、外壁206、208、210および内壁212、213、220を有する金属チル鋳型100を備える。内壁は、鋳型300と接触している。このデバイスは、さらに、加圧手段400およびチル鋳型冷却手段500を備え、加圧手段400は、チル鋳型の外壁206、208、210に可変圧量を付与し、チル鋳型によって囲まれた溶融材料の容量変化を制御するためにあり、チル冷却手段500は、このチル鋳型の内壁212、213、220を可変冷却するためにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、鋳鉄をチル成形するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
成形材料または生砂の硬化層でライニングされた固定金属鋳型(stationaly metal mould)での鋳造による鋳鉄部品の製造に関する方法およびデバイスが、SE−C−506508(これは、参考として本明細書中に援用される)に示されている。管状金属鋳型が使用され、これによって、この鋳型内の上方が開いた管状の空間は、絶縁発砲材料を使用してライニングされる。鋳型およびライニング(lining)の冷却効果によって、ライニングの下端から上側に向けて、最後に固化する鉄の上部に存在するフィーダー容量まで、正面に指向性の固化が与えられるような方法で、溶融した鋳鉄を上側から充填する。
【0003】
記載の方法およびデバイスは、均一な厚みおよび比較的薄い壁を有する鋳造部品(例えば、シリンダーライニング)において秀逸な結果を与えるが、変化する断面およびより複雑な形状を有する部品の鋳造には不適切であり、ここでの冷却速度は、種々の鋳造部品間で非常に大きく変化する。良好な延性手段と組み合わされた改善された力学特性に対する要求は、力学特性を改善するために従来的に使用されている合金材料が使用できないことを意味する。なぜなら、ワーカビリティーが、高カーバイド含有量のために減少し、そして鋳造がその収縮傾向に起因して困難となるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の開示)
従って、本発明の一般的な目的は、変化する断面積および比較的複雑な形状を有する鋳鉄部品のチル成形(chill moulding)ための方法およびデバイスを提供することであり、ここで、鋳造材料の力学的特性は、添加される合金材料によってのみ制御されず、かつ制限されない。
【0005】
本発明に従う鋳造方法の更なる目的は、主にパーライトの転移温度範囲(pearlite transformation range)により、鋳造物の冷却速度に影響を与える増加した可能性を提供することであり、これによって、力学特性をさらに高く向上することが可能となる。増加した冷却速度は、また、生産性(すなわち、単位時間および生産単位当たりの多数の鋳造部品)を増加させる。
【0006】
さらに本発明の更なる目的は、高レベルの環境要件(例えば、汚染物質の低放出、低減したエネルギーの使用、きれいな作業環境、鋳型材料または砂(sand)の減少した使用量、成形材料または砂を堆積するために対応して減少した必要性を伴う鋳造物に対して計算された各重量単位、および付与エネルギーの有意に改善された回収)を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、これらの目的は、鋳鉄を鋳造するためのデバイスによって達成され、このデバイスは、外壁および内壁を有するチル鋳型(mould)を備え、この鋳型において、内壁は鋳型と接触しており、このデバイスがさらに、加圧手段およびチル鋳型冷却手段を備えることを特徴とし、加圧手段は鋳型の外壁に可変圧力を付与するためにあり、そしてチル鋳型冷却手段は金属チル鋳型の内壁を可変冷却するためにある。したがって、本発明は以下を提供する。
(1) 鋳鉄を鋳造するためのデバイスであって、該デバイスは外壁(206、208、210)および内壁(212、213、220)を有する金属チル鋳型(100)を備え、該内壁は鋳型(300)に接触しており、該デバイスがさらに、加圧手段(400)およびチル鋳型冷却手段(500)を備え、該加圧手段は該チル鋳型の該外壁(206、208、210)に可変圧力を付与するためにあり、該チル冷却手段は該チル鋳型の該内壁(212、213、220)を可変冷却するためにある、デバイス。
(2) 項目1に記載のデバイスであり、前記加圧手段(400)が、前記チル鋳型の前記外壁(206、208、210)に作用するように配置された油圧プレスまたは空気圧プレスを備えるデバイス。
(3) 項目1または2に記載のデバイスであって、前記チル鋳型冷却手段(500)が、前記チル鋳型(100)に配置された数個の冷却サーキット(520)、クーラントコンテナ(530)、熱変換器(540)およびクーラントポンプ(550)を備え、これらによって、該クーラントポンプが、クーラント導管(510)を通してクーラントを循環させ、該クーラント導管(510)が、該クーラント導管(520)を互いに接続し、かつ該クーラントコンテナ(530)、該熱変換器(540)および該クーラントポンプ(550)と接続している、デバイス。
(4) 項目1〜3に記載のデバイスであって、前記鋳型の壁(330)は、所望の熱転移速度が得られるように選択された厚みを有し、鋳造材料の所望の力学的特性を達成する、デバイス。
(5) 項目1〜4に記載のデバイスであって、前記鋳型(300)が硬化成形材料または生砂から製造される、デバイス。
(6) 鉄鋳造物を製造するための方法であって、金属チル鋳型(100)は溶融鋳鉄で充填され、該鋳型(100)は外壁(206、208、210)および内壁(212、213、220)を備え、該内壁が鋳型(300)と接触しており、加圧手段(400)が該金属チル鋳型の外壁(206、208、210)に可変圧力を付与し、そしてチル鋳型冷却手段(500)が該チル鋳型の内壁(212、213、220)を鋳造物の冷却中に可変冷却する、方法。
(7) 項目6に記載の方法であって、前記鋳型(300)は、硬化成形材料または生砂から製造される、方法。
(8) 項目6または7に記載の方法であって、前記加圧手段(400)が、前記チル鋳型の外壁(206、208、210)に作用するように配置された油圧プレスまたは空気圧プレスを備える、方法。
(9) 項目6〜8に記載の方法であって、前記チル鋳型冷却手段(500)が、前記チル鋳型(100)に配置された数個の冷却サーキット(520)、クーラントコンテナ(530)、熱変換器(540)およびクーラントポンプ(550)を備え、これらによって、該クーラントポンプが、クーラント導管(510)を通してクーラントを循環させ、該クーラント導管(510)が、該クーラント導管(520)を互いに接続し、かつ該クーラントコンテナ(530)、該熱変換器(540)および該クーラントポンプ(550)と接続している、デバイス。
(10) 項目6〜9に記載の方法であって、前記鋳型(300)の壁(330)は、鋳造物の所望の冷却速度が達成されるように選択された厚みを有する、方法。
【0008】
鋳型の壁厚は、鋳造部品の要求される力学特性のための所望の熱転移の速度が達成されるように選択される。鋳型は、好ましくは、成形材料または生砂(green sand)から製造される。
【0009】
さらに、上記の加圧手段が、金属チル鋳型の外壁に作用する油圧プレス(hydraulic press)、空気圧プレス(pneumatic press)を備えることが利点である。
【0010】
上記チル鋳型冷却手段は、好ましくは、上記金属チル鋳型に配置された多数の冷却サーキット、クーラントコンテナ、熱交換器およびクーラントポンプを備え、これらによって、上記クーラントポンプは、上記冷却サーキットと上記クーラントコンテナ、上記熱交換器および上記クーランとポンプと接続するクーラント導管を通してクーラントを循環する。
【0011】
これらの目的は、本発明に従って、本発明に従う鋳鉄部品を製造するための方法によって達成され、この方法によって、金属チル鋳型(外壁および内壁を有し、ここで内壁は鋳型と接触している)は、溶融鋳鉄で充填される。この方法は、加圧手段が可変圧力を上記金属チル鋳型の外壁に付与し得ること、およびチル鋳型冷却手段が、鋳造物の冷却中に上記金属チル鋳型の内壁を可変的に冷却し得ることを特徴とする。
【0012】
上記鋳型は、好ましくは、硬化成形材料また生砂から製造される。この鋳型の壁厚は、要求される冷却速度を達成するように選択される。
【0013】
この鋳造方法によって、低C−当量(low C−equivalent)を有する材料、ならびに、相当より高い撓み強さ、疲労強さ、および弾性率(これらの全てが良好な力学特性を与える)を有する鋳造物を得るために使用される、高レベルのカーバイド安定化合金材料(carbide stabilising alloying material)を含む材料の鋳造が可能となる。
【0014】
低C−当量を有する材料の鋳造ならびに、中程度の量のカーバイド安定化合金材料、現実的にカーバイドを含有せずに良好な機械加工性を有する丈夫な材料の添加によって得られ得る。
【0015】
この鋳造方法は、また、鋳造物に、従来の生砂鋳造に相当する、より低い寸法散乱(dimentional scatter)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照することで上記により詳細に記載される。
【図1】図1は、本発明に従う、鋳鉄のチル鋳型鋳造のためのデバイスの概略断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明を実施するための形態)
図1は、本発明に従う鋳鉄のチル鋳型鋳造のためのデバイス100を示す。このデバイスは、剛性厚壁金属チル鋳型100を備え、この鋳型は側部エレメント200、上部エレメント205および底部エレメント207を備える。側部エレメント200の各々は外壁210および内壁220を有し、外壁210は、溶融鋳鉄が注がれる鋳型キャビティ150と離れて面し、そして内壁220は鋳型300と面している。上部エレメント205には対応する外側部206および内側部212を備える。同様に、底部エレメント207は、外側部208および内側部213を有する。鋳型壁330の厚みは所望の熱転移速度が得られるように選択される。成形材料、壁厚、圧力および温度によって、この熱転移速度が制御され、これによって、薄壁は高い冷却速度を与え、そして厚壁は低い冷却速度を与える。鋳型300は、従来の方法、あるいはエアスクイズコアマシン、コア形成マシンによって、またはマニュアルマニファクチュアによって、硬化、絶縁成形材料を使用して、適切な公知の有機または無機結合剤あるいは生砂を使用して生成される。この成形は、鋳型キャビティー150を形成するテンプレートを使用して実施される。鋳型壁厚330は従来の手段によって生成されるか、あるいは、コアボックスまたは鋳型ブロックの高さによって生成される。鋳型330は、好ましくは、第一鋳型部品310および第二鋳型部品320を備える。鋳型部品310はおよび320は、コアが組み立てられた後に接着剤またはボルト接続手段によって取り付けられ、コアが要求される。鋳型300はチル鋳型100に配置され、この鋳型に、チル鋳型100の側部エレメント200、上部エレメント205および底部エレメント207が、1つ以上の加圧手段400を加圧することによって鋳型300の周囲に近づけられる。溶融材料は、鋳型キャビティ150に接続された入口ポート160を通して鋳型に注がれる。入り口ポートは、従来の方法によって製造される。
【0018】
このようにして、チル鋳型の側部エレメント200、上部エレメント205および底部エレメント207に、チル鋳型に接続して配置された加圧手段400を使用して可変圧力を付与することが可能となる。加圧手段400は、好ましくは、油圧プレスまたは空気圧プレスを備え、それぞれチル鋳型の外壁206、208および210に作用するように配置される。チル鋳型100における溶融材料の固化中に、容量減少(例えば、オーステナイトの形成中)および増加(例えば、グラファイトの形成中)が、種々の相転移中に生じる。容量におけるこれらの変化は、要因(例えば、溶融材料間のサイズにおける関係、鋳型およびコア、もしあれば、ならびに、基本材料(basic material)の化学組成物、接種、精錬処理など)に依存してより大きく、またはより小さくなる。チル鋳型の外壁206、208および210のそれぞれに付与される圧力を制御することを可能とすることで、鋳型またはコアに力を付与することなく、または収縮間隙率を生じることなく残渣の溶融材料を増加容量の領域から減少容量のへと転移させる力を部分的に制御することも可能となる。
【0019】
本発明に従うデバイスにはまた、チル鋳型冷却手段500によって可変冷却が提供され、それぞれチル鋳型の内壁212、213および220に作用する。チル鋳型冷却手段500は、チル鋳型の側部エレメント200、上部エレメント205および底部エレメント207内に、またはこれらの上に配置された、数個、好ましくは6個の冷却サーキット520を備える。チル鋳型冷却手段500は、好ましくは、水などのクーラントが保存されるクーラントコンテナ530、このクーラントから熱を回収するための熱変換器540、およびクーラントサーキット520の内外にクーラント導管を通してクーラントを循環させるためのクーラントポンプ550を備える。
【0020】
鋳型キャビティ150は、全鋳造プロセス間にチル鋳型100においてクーラントによって冷却される。冷却速度は、鋳型壁330の熱転移速度、チル鋳型、鋳型キャビティ150の内壁220の熱転移速度、およびクーラントの温度によって制御される。この熱転移は、また、加圧手段400の加圧によっても影響を受ける。冷却速度は、全冷却プロセル中に、パーライト転移が完了するまで制御され、鋳造物のための所望の力学特性を達成する;高い冷却速度は高い強度を与える。パーライト転移相(pearlite transformation phase)を介する冷却速度は、鋳造物の温度がパーライト転移の温度を超える場合、チル鋳型を開放することによって増加され得る。次いで生じる空冷によって、冷却速度が増加され、これによって、さらに高い強度がさらに与える。対して、冷却速度はまた、鋳造物の温度がオーステナイトの範囲である場合、チル鋳型を開放することによっても減少され得る。解放後直ちに、この鋳造物は、絶縁媒体内に浸漬され、絶縁媒体によって覆われ、そして、この状態を鋳造物の温度がパーライト転移温度未満に低下するまで維持される。この方法はまた、鋳造部品への応力を減少させるために使用され得るが、次いで鋳造物は、鋳鉄の場合、その温度が200℃未満となるまで絶縁媒体中で維持されなければならない。チル鋳型の開放は、所望の材料特性に依存して、パーライト転移相の前後で実施され得る。
【0021】
本発明は、図に示された実形態または上記の実施形態に制限されないが、添付の特許請求の範囲内で改変され得る、例えば、2個よりも多くの鋳型部品で鋳型を構成すること(例えば、3つまたは4つの部品を使用して1つの鋳型単位を組み立てること)が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2009−233751(P2009−233751A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115051(P2009−115051)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2000−580783(P2000−580783)の分割
【原出願日】平成11年11月5日(1999.11.5)
【出願人】(500208841)ボルボ ラストワグナー アーベー (2)