説明

チーズ様食品及びその製造方法

【課題】プロセスチーズに比べ低価格に供給が可能である、原料ナチュラルチーズを全体の20〜60重量%配合したチーズフードあるいは乳等を主要原料とする食品であって、良好なチーズ風味と良好な糸引き性を付与したチーズ様食品の提供。
【解決手段】原料ナチュラルチーズの熟度指標を15%以下とすることで、原料ナチュラルチーズを全体の20〜60重量%配合したチーズフードあるいは乳等を主要原料とする食品であっても良好なチーズ風味と良好な糸引き性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱時に良好な糸引き性を有するチーズ様食品及びその製造方法に関する。なお、本発明のチーズ様食品とは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)における「チーズフード」及び「乳等を主要原料とする食品」(以下、乳主原と略す)である。本発明のチーズ様食品は、乳等省令で定められたナチュラルチーズ、プロセスチーズの規格の範疇ではないが、良好なチーズ風味を有し、なおかつ、加熱時に良好な糸引き性を有するという特徴がある。
【背景技術】
【0002】
昨今、乳製品の価格は世界的に高騰を続けており、ナチュラルチーズの価格についても近年稀に見る高騰を続けている。輸入チーズの大半は、そのままシュレッド加工して、宅配ピザや冷凍グラタン等に使用されるケースが多く、輸入チーズの価格高騰の影響を強く受けることが懸念されている。このような状況の下、ナチュラルチーズの配合量を減らしたチーズフードや、乳主原といった規格のチーズ様食品の需要が非常に高まっている。しかし、後述するとおり、チーズフードや乳主原規格のチーズ様食品においては、ナチュラルチーズやプロセスチーズといった、いわゆるチーズ規格の食品に比較すると、風味や物性などの機能面で十分代替が可能とはいえない状況である。このため、チーズ規格の食品の代替として、より低価格で、なおかつナチュラルチーズと同等、あるいは同等以上の風味や機能を持ったチーズ様食品の開発は切迫した問題となっている。
【0003】
チーズフードや乳主原といったチーズ様食品としては、原料ナチュラルチーズの配合割合を低減させ、その低減させた部分を食用油脂や、乳タンパク質、大豆タンパク質等の他のタンパク質で補ったものが一般に上市されている。特に、近年の技術革新により新たに種々の乳タンパク質素材が開発、改良されており、より風味が良く、利用性の高い乳タンパク質素材を利用したチーズ様食品が提案されている。例えば、脱脂乳を限外濾過濃縮(UF濃縮)等で濃縮し、噴霧乾燥してなる、乳糖含量の少ない乳タンパク質高含有粉末(MPC)を使用するチーズ様食品の製造法(特許文献1)が挙げられ、これは、上記乳タンパク質高含有粉末を主原料とし、溶融塩と乳化剤を併用することで、良好なテクスチャーを付与したものである。
【0004】
一方、チーズの持つ機能性として、俗に「チーズらしさ」と言われる特徴の1つとして、加熱時の糸引き性が挙げられる。良好な糸引き性を有するチーズとしては、ナチュラルチーズでは「モツァレラチーズ」、プロセスチーズでは「とろけるタイプ」の商品群が代表的なものとして挙げられる。これらは、ピザ、グラタン等の食品群におけるトッピングとして用いられ、風味面はもちろんのことながら、熱々のチーズが適度なオイルオフを生じながら糸を引くという態様が、これらの食品の「美味しさ」に少なからず寄与していると考えられ、糸引き性はチーズの商品価値を高める重要な機能の1つとして位置付けられている。このため、プロセスチーズにおいて糸引き性を付与する技術については、過去より種々の方法が開発されており、その開発技術を取り入れた多くの商品が市場に並んでいる。
【0005】
この「チーズの糸引き性」については、乳タンパク質特有のカゼイン構造が大きく寄与していると考えられている。すなわち、レンネット反応が生じたカゼインの規則的な結合が存在することにより、チーズが糸引き性を有することになる。このため、プロセスチーズにおいて糸引き性を付与するためには、特に糸引き性に優れたモツァレラチーズを主原料とすることや、熟度指標の低い原料ナチュラルチーズを利用すること、ないしはレンネット反応を施したカゼイン素材であるレンネットカゼインを利用すること等で、カゼインの規則的な結合をプロセスチーズに持たせることが必要となる。
【0006】
上記の理由から、原料ナチュラルチーズの使用量を低減したチーズ様食品においては、糸引き性を付与することは非常に困難が伴う。例えば、特許文献1の技術では、加熱時の糸引き性に言及する記載はないが、MPC、植物油脂(動物油脂の場合も有り)を主原料としており、通常、MPCにはレンネット反応によるカゼインの規則的な結合を保持していないことから、糸引き性は無いものと推測され、また、実施例に記載される態様においては、実際に糸引き性を有するものではないことが確認されている。
【0007】
このような糸引き性を付与するという課題を解決するために、長年にわたり種々の検討がなされてきた。例えば、原料としてナチュラルチーズをほとんど使用しないチーズ様食品については、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼイネート等のカゼイン素材を主原料とし、植物油脂を添加しながら、チーズ様食品を製造する方法が挙げられるが、これらの方法によって製造されたチーズ様食品は、特徴的なカゼイン臭があり、特に風味面で満足度の高いものが得られていないのが現状である。
【0008】
また、特許文献1のようなMPCを主原料として用いながら、加熱時の糸引き性を発現させる方法としては、MPCを3〜20重量%の濃度となるように水に分散溶解し、食用油脂、その他副原料を添加、均質化した還元乳に、乳酸菌スターター、凝乳酵素を反応させ、調製したグリーンチーズを使用する方法が知られている(特許文献2)。この方法は、通常、MPCが持っていない構造であるレンネット反応によるカゼインの規則的な結合を、MPC還元乳に凝乳酵素を添加、反応させることで形成させ、グリーンチーズを製造するものである。この方法によれば、MPC還元グリーンチーズを少なくとも20重量%配合することによって、良好な加熱時の糸引き性を有するプロセスチーズを得ることが可能である。
【0009】
しかし、これはMPCを使用し、加熱時の糸引き性を有するプロセスチーズを得る技術ではあるが、MPCから製造したナチュラルチーズを原料としてプロセスチーズを製造するものであり、MPC利用技術として工程的に簡便ではない。また、「チーズフード」または「乳主原」規格における糸引き性の付与については全く言及されていない。
【0010】
このように、チーズの代替となるようなチーズ様食品についてはさまざまな検討がなされてはいるが、風味と糸引き性の両面で満足のいく製品は得られていないのが現状である。
【特許文献1】特許第3485705号公報
【特許文献2】特許第3999431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術を鑑みてなされたものであり、プロセスチーズよりも原料ナチュラルチーズの使用量を低減した、低価格での供給が可能な「チーズフード」または「乳主原」であって、良好なチーズ風味と良好な糸引き性を有するチーズ様食品を提供することを課題とする。また、本発明は、上記チーズ様食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、原料ナチュラルチーズを20〜60重量%配合した「チーズフード」または「乳主原」であって、原料ナチュラルチーズの熟度指標が15%以下であることを特徴とするチーズ様食品が、加熱時に良好な糸引き性を有し、風味的にも機能的にも「チーズらしさ」を兼ね備えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、原料ナチュラルチーズを全体の20〜60重量%配合した「チーズフード」または「乳主原」であって、加熱時の糸引き性が100mm以上であることを特徴とするチーズ様食品である。また、本発明は、原料ナチュラルチーズを全体の20〜60重量%配合した「チーズフード」または「乳主原」であって、加熱時の糸引き性が100mm以上であることを特徴とするチーズ様食品であり、原料ナチュラルチーズの熟度指標が15%以下としたことを特徴とするチーズ様食品である。また、本発明は、原料ナチュラルチーズを全体の20〜60重量%配合した「チーズフード」または「乳主原」であって、加熱時の糸引き性が100mm以上であることを特徴とするチーズ様食品であり、原料ナチュラルチーズの熟度指標が15%以下とし、副原料として少なくとも乳タンパク質および食用油脂を添加することを特徴とするチーズ様食品である。また、本発明は、原料ナチュラルチーズの配合量を全体の20〜60重量%とした「チーズフード」または「乳主原」であって、その原料ナチュラルチーズの熟度指標を15%以下とし、副原料として少なくとも乳タンパク質、食用油脂を添加し、加熱混合することを特徴とするチーズ様食品の製造方法である。
【0014】
なお、本発明における加熱時の糸引き性は、以下の方法で評価した。
(加熱時の糸引き性)
チーズ様食品15gを直径65mmのシャーレに採取し、500Wの電子レンジで30秒加熱した後、2mm規格のL字型六角レンチの短辺(16mm)がシャーレの底につくように溶融しているチーズ様食品の中央部に入れて10cm/秒の速度で引き上げたときに、切断するまでにチーズ様食品が伸びた長さを測定した。この測定を5回繰り返した際の平均値を糸引き性とし、100mm以上を糸引き性が良好であるものとする。
また、熟度指標は以下の式で計算する。
(熟度指標)
熟度指標(%)=(可溶性窒素量/全窒素量)×100
【0015】
本発明では、低価格なチーズ様食品の提供が前提であることから、原料ナチュラルチーズの配合割合を全体の20〜60重量%とした「チーズフード」または「乳主原」を対象としている。配合割合が20%より少ない場合には、良好なチーズ風味を付与することができず、また60%よりも多い場合には、プロセスチーズよりも低価格なチーズ様食品の提供という目的に対する効果が低下することになる。通常、チーズとして求められる組織、物性を作るためには、それ相応の乳タンパク質量が必要となる。つまり、脂肪部分に関しては、植物油脂やその他の食用油脂への代替が比較的簡単に可能であるが、タンパク質部分においては、乳タンパク質、特にカゼイン独特の機能によって様々なチーズ物性が形成されることから、脂肪部分のように簡単に代替できないのが一般的である。過去より、例えば大豆タンパク質や小麦タンパク質、もしくは澱粉など、他の物質による代替が種々検討され、チーズらしい硬さ、弾力性、熱溶融性、耐熱性等、使用目的に合わせた機能を得るために、単独での使用や、組合せでの使用が試されている。
【0016】
一方、チーズの糸引き性については、ナチュラルチーズ製造時の乳タンパク質特有のカゼイン構造が大きく寄与していると考えられており、レンネット反応が生じたカゼインの規則的な結合により、チーズに繊維性、糸引き性を付与することが可能である。このため、プロセスチーズに糸引き性を付与するためには、特に糸引き性に優れたモツァレラチーズを主原料とすることや、熟度指標の低い原料ナチュラルチーズを利用すること、ないしはレンネット反応を施したカゼイン素材であるレンネットカゼインを利用すること等で、カゼインの規則的な結合をプロセスチーズに持たせることが必要となる。
【0017】
通常、プロセスチーズに糸引き性を付与するためには、上記の乳タンパク質の構造をできるだけ残したまま乳化することが必要と考えられるため、溶融能力の低い溶融塩、例えばクエン酸ナトリウムやモノリン酸ナトリウムを少量添加し乳化することが一般的である。特に糸引き性を有するプロセスチーズの場合、次工程として、シュレッド、ダイス加工等の二次加工処理が想定されるため、製品として二次加工に必要な十分な硬さ、すなわち二次加工適性を持たせることが好ましい。
【0018】
このためプロセスチーズを製造する際には、乳化時に直接蒸気による水分(ドレイン)が数重量%〜十数重量%、その他、いろいろな副原料が添加されたとしても、最終製品では、原料ナチュラルチーズとして少なくとも80重量%以上配合されることが一般的である。原料ナチュラルチーズを80重量%以上配合することで、もともとのチーズ組織を十分に維持したまま乳化されることとなるため、最終製品として、十分な硬さを付与できる。
【0019】
一方、レンネットカゼインやその他の乳タンパク質素材を主原料とし、原料ナチュラルチーズをほとんど使用しない配合においても、チーズらしい硬さを付与することが好ましい。乳タンパク質素材中のカゼインを十分に溶融し、チーズ組織形成するところまで寄与するためには、ある程度の溶融能力を持った溶融塩、例えばジリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、もしくは上記記載の溶融能力の低い溶融塩を大量添加することが必要である。しかし、これらの処方を施すと、チーズとしての硬さは確保できるが、チーズの機能である糸引き性を付与するために必要である規則的な結合を持ったカゼイン構造まで壊してしまうこととなり、十分な糸引き性を持たせることが困難となるという問題が生じる。また、上記処方により乳化すると、チーズの乳化を促進することとなり、加熱時に適度なオイルオフを生じなくなったり、表面に皮を張ることとなってしまい、結果として糸引き性を阻害してしまうこととなる。
【0020】
そこで本発明では、対象を原料ナチュラルチーズを20〜60重量%配合するチーズ様食品とし、原料ナチュラルチーズの熟度指標を15%以下とすることで、加熱後に良好な糸引き性を有するチーズ様食品を得るに至った。このチーズ様食品において、食用油脂と、食用油脂を十分乳化できるだけの乳タンパク質を添加することが「チーズらしさ」を発揮させる上で好ましい。
【0021】
本発明では、原料ナチュラルチーズの熟度指標を15%以下とすることが最も重要である。原料ナチュラルチーズとしては、通常、プロセスチーズ、チーズフード、乳等を主要原料とするチーズ様食品の製造に使用されるゴーダチーズ、チェダーチーズ、モツァレラチーズ等を例示することができ、これらの熟度指標を15%以下となるよう、調整すればよい。本発明では特に、良好な糸引き性を有する硬質又は半硬質で低熟度のナチュラルチーズを用いることが好ましい。なお、熟度指標の調整は、例えば熟度指標を10%に調整する場合、熟度指標12%と8%のナチュラルチーズを等量混合したり、熟度指標24%と8%のナチュラルチーズをそれぞれ12.5重量%と87.5重量%の割合で混合すれば良い。
【0022】
本発明に用いる乳タンパク質としては、乳中に含まれているカゼインを濃縮又は乾燥したもの、ホエータンパク質を濃縮又は乾燥したものが挙げられる。例えば、カゼイン類としては、酸カゼイン、カゼイネート、レンネットカゼイン等、ホエータンパク質としては、チーズホエー、それらを濃縮したもの、それらを乾燥したホエー粉等が挙げられる。また、膜技術により濃縮、乾燥されたMPC(乳タンパク質濃縮物)、MF-MPC(ミセル性カゼイン)、WPC(ホエータンパク質濃縮物)といった素材についても、問題なく使用できる。
【0023】
本発明に用いられる食用油脂としては、大豆白絞油、菜種白絞油、パーム油等の植物性油脂類、魚油、牛脂、乳脂等の動物性油脂類、それらを水素添加、エステル交換等の加工処理を施した食用精製加工油脂類、等が挙げられるが、食品に用いられる油脂類として、一般に使用できるものであれば何でも良い。これらを単独使用、必要であれば2種類以上を混合し使用することも可能である。
【0024】
本発明で用いる溶融塩としては、イオン交換作用があり、解膠作用の弱いクエン酸塩類又はモノリン酸塩類を単独ないしは併用で少量使用する、もしくは溶融塩を全く使用しない配合が好ましい。これは、溶融塩の解膠作用は糸引き性において重要であるレンネット反応が生じたカゼインの規則的な結合を破壊する方向に作用するためである。よって、最終製品として十分な糸引き性を発現することが可能な配合であれば、ポリリン酸塩類(ジリン酸塩類も含む)を使用することも可能であり、特に溶融塩の種類に制限は無いが、この場合はごく微量配合することとなる。上記溶融塩の併用に加えて、さらには予めそれらを配合した溶融塩も使用することもできる。
【0025】
本発明で使用可能な溶融能力の弱いモノリン酸塩類とは、構造上、リンを1つ持つものである。通常、チーズ類製造に使用されるモノリン酸塩であれば、特に限定はしない。また、本発明に使用される溶融能力の強いポリリン酸塩類とは、一般的にポリリン酸塩、メタリン酸塩と呼ばれる、構造上、リンを2つ以上持つものや、ジリン酸塩、ピロリン酸塩と呼ばれる、構造上、リンを2つ持つものも包含するものとする。通常、チーズ類製造に使用されるポリリン酸塩であれば、特に限定はしない。さらに、本発明におけるクエン酸塩類とは、例えばクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。通常、チーズ類の製造に使用されるクエン酸塩であれば、特に限定はしない。また、これ以外に、一般的にチーズ類調製に使用される例えば酒石酸塩等の溶融塩の使用も、本発明の特徴である加熱時の良好な糸引き性を阻害しない範囲で使用可能である。
【0026】
本発明に用いられる副原料としては、ローカストビンガムやグアガム等の安定剤、レシチンやショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、澱粉、加工澱粉、ゼラチン、寒天等の食品類、糖質類、香辛料、香料等々、プロセスチーズ、チーズフード、乳等を主要原料とするチーズ様食品、それぞれのグレードにおいて使用可能なものを、それぞれの目的に応じた形で選択できる。例えば物性調整、風味調整等である。もちろん使用しても良いし、使用しなくても良い。
【0027】
本発明における乳化処理は、通常、プロセスチーズ、チーズフード、乳主原の乳化に用いられる乳化剤や安定剤を適宜使用して、乳化機、例えば低速、及び高速せん断乳化釜等を用いて、50〜1500rpmの低速から高速で撹拌することが好ましいが、特に限定されるものではない。上記配合、上記工程を経た後、通常のプロセスチーズ類と同様に十分に冷却し、本発明のチーズ様食品を得る。
【0028】
なお本発明のチーズ様食品の形状については、一般にプロセスチーズで用いられている方法と同様の方法で、シュレッド状をはじめ、スライス状、ブロック状、ダイス状等、任意の形状に成形することが可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、良好なチーズ風味を有し、かつ、加熱後に良好な糸引き性を有するチーズ様食品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、実施例を示しながら、本発明を具体的に説明する。
【0031】
〔実施例1〕
熟度指標10%のゴーダチーズ5kgを原料ナチュラルチーズとして用い粉砕した。乳タンパク質としてWPC(ホエータンパク質濃縮物、タンパク質含量80重量%)100g、食用油脂として精製パーム油2kgを高速せん段乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g、pH調整剤として無水クエン酸10g、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル40g、乳化を安定にし二次加工適性を付与するための安定剤としてローカストビンガム40g、塩分調整として食塩100gを添加した後、最終の水分含量が43重量%となるように水を添加し、1000rpmで80℃まで加熱撹拌した。加熱したチーズ様食品については、400gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、目的のチーズ様食品を得た。得られたチーズ様食品をシュレッダーでシュレッド加工し、シュレッドタイプのチーズ様食品(実施例1−1)を得た。また、原料ナチュラルチーズとして熟度指標15%のゴーダチーズを用い、同様に乳化、シュレッドし、シュレッドタイプのチーズ様食品(実施例1−2)を得た。
【0032】
〔比較例1〕
実施例1の原料ナチュラルチーズとして熟度指標20%のゴーダチーズ5kgを用い、実施例1と同様に乳化、シュレッドし、シュレッドタイプのチーズ様食品を得た。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1の原料ナチュラルチーズを3kg(実施例2−1)、2kg(実施例2−2)とし、減量したナチュラルチーズ部分を、酸カゼイン30重量%、精製パーム油30重量%、水40重量%で置き換えた。以下、同様に乳化、シュレッドし、シュレッドタイプのチーズ様食品を得た。
【0034】
〔比較例2〕
実施例1の原料ナチュラルチーズを1kgとし、減量したナチュラルチーズ部分を、酸カゼイン30重量%、精製パーム油30重量%、水40重量%で置き換えた。以下、同様に乳化、シュレッドし、シュレッドタイプのチーズ様食品を得た。
【0035】
〔比較例3〕
熟度指標20%のゴーダチーズ2kgを原料ナチュラルチーズとして用い粉砕した。乳タンパク質としてMPC(乳タンパク質濃縮物、タンパク質含量80重量%)2kg、食用油脂として大豆硬化油2kgを高速せん段乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ピロリン酸ナトリウム100g、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル50g、塩分調整として食塩100gを添加した後、最終の水分含量が43重量%となるように水を添加し、750rpmで80℃まで加熱撹拌した。加熱したチーズ様食品については、400gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、チーズ様食品を得た。得られたチーズ様食品をシュレッダーでシュレッド加工し、シュレッドタイプのチーズ様食品を得た。
【0036】
〔試験例1〕
実施例1、2、比較例1、2、3で得られたチーズ様食品の加熱時の糸引き性について、以下の方法で試験を行った。
(加熱時の糸引き性)
チーズ15gを直径65mmのシャーレに採取し、500Wの電子レンジ(松下電器産業社製:NE-S1A)で30秒加熱した後、2mm規格のL字型六角レンチの短辺(16mm)がシャーレの底につくように溶融しているチーズ様食品の中央部に入れて10cm/秒の速度で引き上げたときに、切断するまでにチーズ様食品が伸びた長さを測定した。この測定を5回行い、その平均値が100mm以上のものを糸引き性が良好であるとした。その結果を表1に示す。なお、表1では糸引き性と風味について、特に良好なものを◎、良好なものを○、良好でないものを×として3段階で評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
〔実施例3〕
熟度指標10%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い粉砕した。乳タンパク質としてMPC(乳タンパク質濃縮物、タンパク質含量80重量%)150g、食用油脂として大豆白絞油2.5kgをケトル乳化釜に投入し、これに溶融塩としてモノリン酸ナトリウム50g、pH調整剤として無水クエン酸10g、乳化を安定にし二次加工適性を付与するために安定剤としてローカストビンガム50g、日持ち向上剤として酢酸ナトリウム50g、塩分調整として食塩100gを添加した後、最終の水分含量が43重量%となるように水を添加し、100rpmで80℃まで加熱撹拌した。加熱したチーズ様食品については、400gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、目的のチーズ様食品を得た。得られたチーズ様食品をシュレッダーでシュレッド加工し、シュレッドタイプのチーズ様食品を得た。加熱時の糸引き性を試験例1同様に評価すると、230mmとなり、比較的良好な糸引き性が得られた。
【0039】
〔実施例4〕
乳タンパク質として酸カゼイン700g、WPC(ホエータンパク質濃縮物、タンパク質含量80重量%)300g、水1.5kgに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g、pH調整剤としてクエン酸30gをケトル乳化機に投入し、先に一度80℃まで加熱撹拌した。中上げを実施し、熟度指標10%のゴーダチーズ2kgを原料ナチュラルチーズとして用い粉砕したもの、食用油脂として大豆白絞油2.5kg、乳化剤として大豆レシチン40g、乳化を安定にし二次加工適性を付与するために安定剤としてグアガム50g、日持ち向上剤として酢酸ナトリウム50g、塩分調整として食塩120gを添加した後、最終の水分含量が44重量%となるように水を添加し、100rpmで80℃まで加熱撹拌した。加熱したチーズ様食品については、400gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、目的のチーズ様食品を得た。得られたチーズ様食品をシュレッダーでシュレッド加工し、シュレッドタイプのチーズ様食品を得た。加熱時の糸引き性を試験例1同様に評価すると、180mmであり、良好な糸引き性が得られた。
【0040】
〔実施例5〕
実施例1−1および実施例2−1に記載した配合・工程を経て製造したチーズ様食品をダイス状に加工し、ダイス状のチーズ用食品を得た。加熱時の糸引き性を試験例1同様に評価したところ、それぞれ500mm、190mmであり、良好な糸引き性を有することが確認できた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ナチュラルチーズの配合量が全体の20〜60重量%の「チーズフード」または「乳等を主要原料とする食品」であって、加熱時の糸引き性が100mm以上であることを特徴とするチーズ様食品。
【請求項2】
原料ナチュラルチーズの配合量が全体の20〜60重量%の「チーズフード」または「乳等を主要原料とする食品」であって、下記試験方法による加熱時の糸引き性が100mm以上であることを特徴とするチーズ様食品。
(加熱時の糸引き性)
チーズ様食品15gを直径65mmのシャーレに採取し、500Wの電子レンジで30秒加熱した後、2mm規格のL字型六角レンチの短辺(16mm)がシャーレの底につくように溶融しているチーズ様食品の中央部に入れて10cm/秒の速度で引き上げたときに、切断するまでにチーズ様食品が伸びた長さを測定する。この測定を5回繰り返し、測定値の平均値を糸引き性とする。
【請求項3】
配合した原料ナチュラルチーズの全体で、下式で表される熟度指標が15%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のチーズ様食品。
熟度指標(%)=(可溶性窒素/全窒素量)×100
【請求項4】
副原料として乳タンパク質および食用油脂を添加することを特徴とする請求項1〜3記載のチーズ様食品。
【請求項5】
乳タンパク質を少なくとも0.5重量%添加することを特徴とする請求項4記載のチーズ様食品。
【請求項6】
食用油脂を少なくとも10重量%添加することを特徴とする請求項4または5記載のチーズ様食品。
【請求項7】
さらに安定剤を配合したことを特徴とする請求項1〜6記載のチーズ様食品。
【請求項8】
原料ナチュラルチーズの配合量を全体の20〜60重量%とした「チーズフード」または「乳等を主要原料とする食品」であって、その原料ナチュラルチーズの熟度指標を15%以下とするとともに、副原料として少なくとも乳タンパク質および食用油脂を添加し、加熱混合することを特徴とする請求項1〜7記載のチーズ様食品の製造方法。