チーズ用結着防止剤及びチーズ含有食品

【課題】チーズ用結着防止剤を提供すること。
【解決手段】酸処理澱粉又は酸化澱粉を主成分とするチーズ用結着防止剤、これをチーズ表面に付着して成る小片チーズ集団、この小片チーズ集団を含有する食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ用結着防止剤に関し、特に小片化したチーズ集団におけるチーズ間の結着防止剤、該結着防止剤を付着させた小片チーズ集団及び該小片チーズ集団を含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されているシュレッドチーズは、使い易さを考慮してブロック状のナチュラルチーズを短冊状に切断したものであり、そのサイズは長さ20〜30mm、幅2〜8mm、厚さ0.5〜1.5mm程度の雑多なサイズとなっている。しかし、このような形状のチーズでは厚さに比べてチーズ表面の面積が大きくなり、そのためチーズ片相互間の接触面積が大きくなり、しかも、厚さがないため弾力性に乏しく、チーズ同志の結着(ブロッキング)を生ずることになる。また、保存中にナチュラルチーズは酵素によって、タンパク質が分解されチーズの組織が柔らかくなるので、ブロッキングし易い。更に、高水分及び高脂肪のチーズでは物性が柔らかいため、より一層ブロッキングを生ずることになる。このようなブロッキングしたシュレッドチーズは、外観が劣り、また使いにくいのでその商品価値を著しく低下させるものである。
【0003】
従来、ブロッキングを防止するために、ナチュラルシュレッドチーズを凍結して硬化させ、使用時のサラサラ性を付与している。しかし、凍結されたナチュラルシュレッドチーズは、解凍すると遊離水が出て結露し、製品の価値を著しく低下させるため、使用時は常に凍結状態としておく必要があり、優れたブロッキング防止手段ということはできなかった。
この問題を解決する手段として、特許文献1には、小片チーズに水不溶性食物繊維粉末、特に粉末セルロースを添加してチーズ相互間の接触面積を小さくしてなる結着を防止したシュレッドチーズ、又は小片チーズにジェランガム粉末及び/又はカードラン粉末を添加してチーズ相互間の接触面積を小さくしてなる結着を防止したシュレッドチーズが開示されている。
しかしながら、これらの粉末はチーズの結着防止剤として必ずしも満足できるものではない。例えばセルロース粉末を添加したチーズ小片には、セルロース由来のザラツキ感があり、これをピザ等にトッピングした場合、チーズ本来の食感を損なうという欠点がある。
【0004】
また、特許文献2には、全面もしくは一部の面に付着抑制材を付着させてあるか又は全面もしくは一部の面を付着抑制材で被覆してある粒状チーズの集合物からなる飼料用チーズが開示され、付着抑制材として糖類、穀類、油粕、乳製品、ミネラル類、でんぷん類、タンパク質、ヌカ類の中の1種又は2種以上を用いることが開示されている。
しかしながら、これらの付着抑制剤にも問題点がある。例えば、通常の澱粉類を表面に付着させたチーズ片をトッピングしてピザを調製した場合、澱粉の糊化、膨潤により粘性が増加し、チーズ本来の食感を損なうという問題が生じる。
従って、これらの欠点を克服した、食感を損なうことのない、新たなチーズ用結着防止剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−95921
【特許文献2】特開平11−56234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、チーズ用結着防止剤を提供することである。
本発明の他の目的は、チーズ相互の結着が防止された小片チーズ集団、これを含有する食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、意外にも、加工澱粉が、従来の結着防止剤、付着防止剤の欠点を補い、ナチュラルチーズの種類、形状、熟度及び保存方法にかかわらず、保存中のチーズのブロッキングを防止することができることを見出し、本発明に到達した。
本発明は下記に示すチーズ用結着防止剤、これをチーズ表面に付着して成る小片チーズ集団、及びこれを含有する食品を提供するものである。
1.加工澱粉を主成分とするチーズ用結着防止剤。
2.加工澱粉が、酸処理澱粉、酸化澱粉、架橋澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種である上記1記載のチーズ用結着防止剤。
3.加工澱粉が酸処理澱粉又は酸化澱粉である上記2記載のチーズ用結着防止剤。
4.上記1〜3のいずれか1項記載のチーズ用結着防止剤の少なくとも一種をチーズ表面に付着して成る、チーズ相互の結着が防止された小片チーズ集団。
5.上記4記載の小片チーズ集団を含有する食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の結着防止剤は、チーズの種類、形状、熟度及び保存方法に関わりなく、保存中のシュレッドチーズのブロッキングを防止することができる。しかも加熱調理後の食感を損なうことがないので、トッピングに適したシュレッドチーズ(小片状チーズ)を提供することができる。
本発明の結着防止剤は、小片相互間の結着の防止を必要とする各種のチーズ又はチーズ含有食品に適用できる。すなわち、ナチュラルチーズやプロセスチーズのみならず、チーズを含有するチーズ様食品にも、これがチーズ小片相互間の結着の防止を必要とする限り、適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の結着防止剤は、小片相互間の結着の防止を必要とするナチュラルチーズ、プロセスチーズ、これらチーズを含有するチーズ様食品の小片(以下、この明細書においてこれらの小片を「シュレッドチーズ」という)の小片相互間の結着の防止に適用できる。
本発明のシュレッドチーズの一般的な製法を、ナチュラルチーズを原料とした場合について例示すると次のとおりである。
ナチュラルチーズを1種又は2種以上配合し、これにクエン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウム等の融解塩を添加又は添加せず加熱溶融し、この時必要であればカゼイン、植物油脂、脱脂粉乳、大豆蛋白等を添加し、プロセスチーズもしくはチーズ様食品を得る。得られた乳化物をブロック状に充填・冷却し、その後、一定の形状に切断し、成型してシュレッドチーズを得る。
【0010】
本発明における結着防止剤とは、チーズ小片間の相互の結着(ブロッキングともいう)を防止する食材であり、本発明においては結着防止剤として加工澱粉を使用する。加工澱粉は個々の小片チーズ表面を覆い、チーズ小片相互間の接触面積を小さくするとともにチーズの水分を吸収することなく、チーズ表面を常にサラサラした状態に保ち、チーズ小片相互の結着を防止することができる。
本発明の結着防止剤の結着防止効果は、目視又はブロッキング率の測定によって評価することが出来る。ブロッキング率は、結着チーズの質量を全チーズの質量で除して100を乗じた値(%)として表示される。
【0011】
本発明に使用する加工澱粉としては、酸化澱粉、酸処理澱粉、架橋澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
本発明に使用する加工澱粉の原料澱粉は特に限定されない。天然の澱粉の他、交雑育種、転座、逆位、形質変換、又はそれらの変形を含む、あらゆる他の遺伝子工学または染色体工学の方法を含む標準的育種技術により得られた植物に由来する澱粉も本発明に使用する原料澱粉に適している。さらに、人工的突然変異、および既知の標準的な突然変異育種方法により生産することが可能な上述の属の組成物の変異により成長した植物に由来する澱粉も、本発明に使用する原料澱粉に適している。さらに、これらの澱粉を湿式、乾式、ふるい等により選別して原料澱粉に用いることもできる。本発明に使用する原料澱粉として、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
澱粉の代表的な供給源は、穀類、塊茎、根、豆果および果物である。天然源の具体例としては、トウモロコシ(コーン)、エンドウ、ジャガイモ(馬鈴薯)、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、米、サゴ、アマランス、タピオカ、クズウコン、カンナ、モロコシおよびそれらのワキシーまたは高アミロース品種が挙げられる。本明細書において用いられる「ワキシー」という用語は、少なくとも約95質量%のアミロペクチンを含有する澱粉を含むことを意味し、「高アミロース」という用語は、少なくとも約40質量%のアミロースを含有する澱粉を含むことを意味する。
【0013】
本発明の澱粉の加工処理には、従来の加工処理方法が適用できる。
例えば、酸処理澱粉は、澱粉粒を酸性水溶液に浸漬し、糊化温度以下で半日から数日間放置し、中和、水洗、乾燥することによって調製することができる。
また、酸化澱粉は、澱粉又は酸化澱粉以外の加工澱粉のアルカリ性けん濁液に、例えば、次亜塩素酸ナトリウムを添加して酸化処理することにより調製することができる。
エーテル化澱粉、例えば、ヒドロキシプロピル澱粉(PO澱粉)は、エーテル化剤として酸化プロピレンを反応させることにより調製することができる。
エステル化澱粉、例えば、酢酸澱粉(アセチル澱粉ともいう)は、エステル化剤として無水酢酸又は酢酸ビニールモノマーを澱粉と反応させることにより調製することができる。
架橋澱粉としては、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉等が挙げられ、リン酸架橋澱粉は、例えば架橋剤として1質量部のオキシ塩化リンを100質量部の原料澱粉に作用させることにより調製することができる。
特に好ましい加工澱粉としては、酸処理澱粉及び酸化澱粉を挙げることができる。
【0014】
本発明のチーズ用結着防止剤は、加工澱粉、特に好ましくは酸化澱粉を主体とするが、必要に応じてそれ以外の成分を添加してもよく、例えば、ジェランガム、カードラン等のガム類、セルロース等の不溶性食物繊維、酸化防止剤、保存料及び調味料を添加することが出来る。本発明のチーズ用結着防止剤中の加工澱粉の比率は、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
本発明の結着防止剤は、粉末状又は顆粒状であり、その粒径は好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは1〜50μmである。
また、その水分含有量は好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。この範囲外では、結着防止効果が低下する傾向がある。
本発明の結着防止剤の使用量は、チーズ質量に対して好ましくは1.0〜2.5質量%(以下、%はすべて質量%を示す)、より好ましくは1.5〜2.5質量%、さらに好適には1.5〜2.0%を用い、これを小片チーズに添加、混合するとよい。1.0%未満では結着防止効果が弱く、2.5%を超えると結着防止効果は優れているものの、食感の低下及びザラツキ等による外観の低下がおこることがある。
【0015】
本発明の結着防止剤は、シュレッドチーズの流通保存温度の10℃以下でも粉末状態を維持するので流通の段階においてもチーズから水分を吸収することなく、又、チーズからの油分の染み出しを防止する、いわゆるオイルオフ効果を有し、チーズ表面をサラサラした状態に保ち、チーズ相互の結着を防止することができる。
すなわち、本発明の結着防止剤を付着させたチーズ小片集団は、プラスチック容器等に入れて冷凍あるいは冷蔵保存することができ、保存中に結着することがなく、冷凍庫あるいは冷蔵庫から出して揉み解すことで容易に分散させることが出来る。これをピザ等の食品にトッピングし、電子レンジ等で加熱調理すれば、チーズ本来の食感を損ねることのないチーズ含有食品を製造することが出来る。
本発明のチーズ含有食品は特に限定されないが、例えば、ピザ、パン類、スパゲッティ、焼そば、お好み焼き、スナックフード等が挙げられる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、実施例によって本発明が限定されるものではない。
実施例1(結着防止に及ぼす澱粉の加工の影響)
市販のプロセスチーズを長さ10mm×高さ2mm×幅5mmのサイズに裁断してシュレッドチーズとした。シュレッドチーズに市販のタピオカ由来の澱粉又は加工澱粉を2質量%添加して均一に混合し、その200gをポリエチレン袋に密封し、5〜6℃の冷蔵庫に2週間保存した。これを取り出して目視による結着防止効果、加熱前後の食感、オイルオフ効果及び外観を10人のパネラーにより評価した。
なお、試作澱粉は、原料澱粉(50g)の水けん濁液(65ml)に有効塩素濃度として8mg/mlの次亜塩素酸ナトリウムを加え、pH7−8、30℃で2時間作用させて酸化した後、無水酢酸(2.5g)を加え、30℃で1時間作用させて調製した。
【0017】
各評価の基準は以下のとおりである。
結着防止効果
×:不良 大部分のチーズ片同士が結合して団子状になる。
△:やや不良 部分的に団子状になるが、その割合は50%未満である。
○:良 団子状になる割合はわずかであり、簡単にほぐせる。
◎:優良 チーズ片同士の結合が全くおこらず、サラサラしている。
加熱前後の食感
×:不良 澱粉特有の粘性があり、べとつき感が顕著である。
△:やや不良 ややべとつき感がある。
○:良 べとつき感が殆んど感じられない。
◎:優良 チーズ本来の食感を有する。
【0018】
オイルオフ
×:不良 チーズ表面に油分が滲出し、容器に付着する。
△:やや不良 チーズ表面に油分がわずかに滲出する。
○:良 油分の滲出はほとんど認められない。
◎:優良 油分の滲出は全く認められず、サラサラしている。
外観
×:不良 チーズ片同士が団子状に結合し、分散していない。
△:やや不良 ある程度分散するが、団子状の塊が混在する。
○:良 ほとんど分散している。
◎:優良 完全に分散し、サラサラしている。
【0019】
表1

【0020】
1)酸処理澱粉(松谷化学製、商品名「フードスターチG」)
2)酸化澱粉(松谷化学製、商品名「スタビローズBM」)
3)リン酸架橋澱粉(松谷化学製、商品名「松谷もみじ」)
4)PO澱粉(松谷化学製ヒドロキシプロピル澱粉、商品名「ファリネックスTG600」)
5)アセチル澱粉(松谷化学製、商品名「松谷さくら」)
6)アセチル化酸化澱粉(試作澱粉)
【0021】
表1に示す結果から、いずれの加工澱粉も結着防止効果があるが、加工なしのタピオカ澱粉では調理後の食感が低下するのに対し、加工澱粉、特に酸処理澱粉及び酸化処理澱粉では加熱後の食感が良好に保持されていることがわかった。
【0022】
実施例2(添加濃度の影響)
実施例1で使用した加工澱粉を、添加量を変えてシュレッドチーズに添加し、実施例1と同様の方法で添加濃度の影響を検討した。
A.酸処理澱粉
【0023】
表2

【0024】
B.酸化澱粉
表3

【0025】
C.リン酸架橋澱粉
表4

【0026】
D.PO澱粉
表5

【0027】
E.アセチル澱粉
表6

【0028】
F.アセチル化酸化澱粉
表7

【0029】
表2〜7に示す結果から、いずれの加工澱粉であっても、1.0質量%以上の添加で結着防止効果が認められ、食感、オイルオフ効果、外観においても違和感がないことがわかった。2.5質量%以上の添加では、食感の低下及び表面にわずかのザラツキが認められた。
【0030】
実施例3(原料澱粉の影響)
原料の異なる酸化澱粉をシュレッドチーズに1又は2質量%添加し、実施例1と同様の方法で評価し、原料澱粉の影響を調べた。
【0031】
表8

1)酸化澱粉(松谷化学製、商品名「スタビローズTA−8」)
2)酸化澱粉(松谷化学製、商品名「スタビローズK」)
3)酸化澱粉(松谷化学製、商品名「スタビローズBM」)
4)酸化澱粉(松谷化学製、商品名「スタビローズY」)
5)酸化澱粉(松谷化学製、商品名「とり粉梅SM」)
【0032】
表8に示す結果から、原料が異なる酸化澱粉であっても同様の結着防止効果があり、食感、オイルオフ効果及び外観においても違和感がないことが分かった。
【0033】
実施例4(ブロッキング率の測定)
加工澱粉として、タピオカ由来の酸化澱粉(商品名:スタビローズTA−8)2質量%をシュレッドチーズに添加し、実施例1と同様の保存条件で、2週間保存した後のブロッキング率を測定した。またパネラー(10人)による評価も合わせて示す。
【0034】
表9

表9に示す結果から、酸化澱粉の結着防止効果がブロッキング率の測定によって裏付けられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工澱粉を主成分とするチーズ用結着防止剤。
【請求項2】
加工澱粉が、酸処理澱粉、酸化澱粉、架橋澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載のチーズ用結着防止剤。
【請求項3】
加工澱粉が酸処理澱粉又は酸化澱粉である請求項2記載のチーズ用結着防止剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のチーズ用結着防止剤の少なくとも一種をチーズ表面に付着して成る、チーズ相互の結着が防止された小片チーズ集団。
【請求項5】
請求項4記載の小片チーズ集団を含有する食品。