説明

ツリープロテクタ

【課題】苗木および林地植栽木の育成時、成長を促進するとともに、鹿、兎、ネズミ等の獣害を防止するため、苗木に被せて使用するツリープロテクタに関し、工場における製造,組立の作業工程が少なく、再利用可能なツリープロテクタを提供する。
【解決手段】透明または半透明の樹脂製シートからなるプロテクタ本体11の両側縁部に係合突部12を千鳥状にそれぞれ配置するとともに、前記係合突部12の基部に係止用切り欠き部13を設けたツリープロテクタ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗木および林地植栽木の育成時に、成長を促進するとともに、鹿、兎、ネズミ等の獣害を防止するため、苗木に被せて使用するツリープロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ツリープロテクタとしては、例えば、透明又は半透明の樹脂製シートを、断面4角形以上の偶数角形の筒状体とし、該筒状体の少なくとも一方の開口端縁部の各辺毎に係止片を有する折返片を設け、該折返片を内方に折り返して前記係止片を側面に形成した切欠部に係止したことを特徴とする多角形折り畳み式ツリープロテクタがある(特許文献1参照)。
【0003】
前記ツリープロテクタでは、筒状体に形成するために樹脂製シートの側縁部に設けた糊代片を、接着剤あるいは熱溶着で反対側の側縁部に貼着して一体化していた。そして、折り畳んだ状態の複数枚の前記ツリープロテクタを積層して梱包し、山間部の現場まで運搬していた。さらに、現場で折り畳んだツリープロテクタを筒状体に組み立て、植栽した苗木に上から被せた後、地面に立設した2本の支持棒に締結紐を介して固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3009585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ツリープロテクタでは、接着剤あるいは熱溶着で樹脂製シートの両側縁部を貼着一体化する必要があり、工場における製造,組立の作業工程が多く、生産コストが高い。
また、例えば、使用開始から5年経過して苗木が十分に成長し、前記ツリープロテクタを外す必要が生じた場合に、前記ツリープロテクタを縦に切断して外す必要があり、再利用できないという問題点があった。
本発明は前記問題点に鑑み、工場における作業工程が少なく、再利用可能なツリープロテクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るツリープロテクタは、前記課題を解決すべく、透明または半透明の樹脂製シートからなるプロテクタ本体の両側縁部に係合突部を千鳥状にそれぞれ配置するとともに、前記係合突部の基部に係止用切り欠き部を設けた構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製シートから係合突部を備えたプロテクタ本体を切り出すとともに、前記係合突部の基部に係止用切り欠き部を設けるだけでよいので、工場における作業工程が少なく、製造コストを低減できる。
また、現場において係合突部の基部に設けた係止用切り欠き部を相互に係止して筒状に形成できるので、現場における組立作業が容易である。
さらに、係合突部の基部に係止用切り欠き部を設けてあるので、係止状態が確実になるとともに、応力集中が生じにくくなり、耐久性が向上する。
そして、苗木が十分に成長した場合には、係止用切り欠き部相互の係止状態を解除し、プロテクタ本体を展開して外すことにより、前記ツリープロテクタを再利用できる。
【0008】
本発明の実施形態としては、係止用切り欠き部が直径3ないし8mmの円弧形状であってもよい。
本実施形態によれば、係合突部が相互に係合しやすく、外れにくいツリープロテクタが得られる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、係止用切り欠き部の中心が、プロテクタ本体の外周縁部と係合突部の外周縁部との交点よりも奥側に配置されていてもよい。
本実施形態によれば、プロテクタ本体の係合が容易になるとともに、外れにくいツリープロテクタが得られる。
【0010】
本発明の異なる実施形態としては、係止用切り欠き部の中心が、プロテクタ本体の外周縁部と係合突部の外周縁との交点よりも、前記係止用切り欠き部の直径の15%ないし25%だけ奥側に配置されていてもよい。
本実施形態によれば、プロテクタ本体の係合が容易になるとともに、外れにくいツリープロテクタが得られる。
【0011】
本発明の新たな実施形態としては、プロテクタ本体の外表面に、複数本の折り曲げ用切り欠き溝を長手方向に沿って平行に所定のピッチで並設しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記折り曲げ用切り欠き溝に沿ってプロテクタ本体を折り曲げることにより角柱形状のツリープロテクタが得られる。
【0012】
本発明の他の実施形態としては、プロテクタ本体に設けた折り曲げ用切り欠き溝を間にして設けた対の固定孔を、異なる高さ位置に配置しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記固定孔に挿通した締結紐を傾いた状態で支持棒に締結できるので、締結力の分力によってプロテクタ本体が偏平になりにくい。
【0013】
本発明の別の実施形態としては、係合突部を相互に係合して形成した筒状のプロテクタ本体の外周面に、少なくとも1つの保持リングを嵌合してもよい。
本実施形態によれば、筒状のプロテクタ本体の強度が向上するとともに、前記保持リングを介して筒状の前記プロテクタ本体を支持棒に締結紐で固定できる。
【0014】
本発明の異なる実施形態としては、保持リングの上下端面のいずれか一方に、少なくとも1つの係合用突起を突設しておいてもよく、また、保持リングが連続する波形形状の環状体であってもよい。
本実施形態によれば、係合用突起あるいは波形形状の環状体に締結紐を係止することにより、保持リングの位置ずれを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは本発明に係るツリープロテクタの第1実施形態を示す斜視図、図1Bは図1Aの部分拡大斜視図である。
【図2】図1Aで図示した第1実施形態を背面側から見た斜視図である。
【図3】図1Aで図示したツリープロテクタを展開した状態を示す正面図である。
【図4】図4Aは図3で図示したツリープロテクタのIV−IV線拡大図、図4Bは図4Aの部分拡大図である。
【図5】本発明に係るツリープロテクタの第2実施形態の展開した状態を示す正面図である。
【図6】本発明に係るツリープロテクタの第3実施形態の展開した状態を示す部分拡大正面図である。
【図7】本発明に係るツリープロテクタの第4実施形態の展開した状態を示す正面図である。
【図8】本発明に係るツリープロテクタの第5実施形態を示す斜視図である。
【図9】図9A,9Bは図8で示した保持リングの平面図,正面図である。
【図10】図10A,10Bは本発明に係るツリープロテクタに使用される保持リングの他の実施形態を示す平面図,正面図である。
【図11】図11A,11Bは本発明に係るツリープロテクタに使用される保持リングの別の実施形態を示す平面図,正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るツリープロテクタの実施形態を図1ないし図10の添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係るツリープロテクタ10は、図1ないし図4に示すように、透明あるいは半透明の長尺な樹脂製シート11からなる平面6角形の筒状体であり、そのプロテクタ本体11の両側縁部に沿って係合突部12を千鳥状に配置するとともに、前記係合突部12の両側基部に係止用円弧状切り欠き部13をそれぞれ設けてある。
【0017】
前記プロテクタ本体11には、厚さ0.2mmないし1.5mm、好ましくは0.3mmないし0.7mmのPP(ポリプロピレン)あるいはPE(ポリエチレン)の樹脂製シートの表面に長手方向に沿って6本の折り曲げ用切り欠き溝14を所定のピッチで平行に設けてある。前記折り曲げ用切り欠き溝14を設けることによって、現場における折り曲げ作業が容易かつ正確になり、作業効率が良い。なお、前記プロテクタ本体11は、植物の生長に役立つ光の波長だけを透過する充填剤を添加しておいてもよい。
【0018】
本実施形態では、平面6角形のツリープロテクタ10を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、平面3角形、4角形、5角形、8角形であってもよい。また、折り曲げ用切り欠き溝を設けずに、平面円形となるように形成してもよい。さらに、必要に応じて通気孔を設けておいてもよい。
【0019】
さらに、前記プロテクタ本体11は折り曲げ用切り欠き溝14を間にして対となるように固定孔15を設けてある。前記固定孔15は同一高さに設けてあるので、結線作業が容易になるという利点がある。なお、固定孔15を設ける位置,個数は必要に応じて適宜、選択できることは勿論である。
【0020】
前記係止用円弧状切り欠き部13の中心16は、図4Bに示すように、前記プロテクタ本体11の外周縁部と係合突部12の外周縁部との交点よりも奥側にずらして設けてある。そして、前記係止用円弧状切り欠き部13の直径は3mmないし8mmが好ましい。直径3mm未満であると、係合突部12が外れやすいからであり、直径8mmを越えると、係合箇所がずれやすくなり、係合突部12,12が相互に外れやすくなるからである。
また、係止用円弧状切り欠き部13の直径が3mmないし8mmである場合には、その中心16を前記係合部12の基部から直径の15%ないし25%だけ奥側にずらして配置することが好ましい。15%未満であると、開口部が大きくなり、係合突部12が外れやすくなるからであり、25%を越えると、係合しにくくなり、組み付け作業に手間がかかるからである。
【0021】
本実施形態では、係合突部12,12が相互に係合しても、平坦面を形成している。このため、相互に係合している係合突部12,12に曲げモーメントが連続して作用することがないので、耐久性に優れ、寿命が長いという利点がある。
【0022】
次に、本実施形態の現場における組立,使用方法について説明する。
まず、プロテクタ本体11を折り曲げ用切り欠き溝14に沿って内側に折り曲げて折り癖を付ける。そして、前記プロテクタ本体11の両側縁部に設けた係合突部12,12を相互に組み付けるとともに、前記係合部12の基部に設けた係止用円弧状切り欠き部13を相互に係止することにより、平面6角形の筒状のツリープロテクタ10を形成する。
一方、地面に植え付けた苗木(図示せず)に前記ツリープロテクタ10を被せ、苗木の外周を包囲する。そして、図1および図2に示すように、前記ツリープロテクタ10の両側に支持棒20,20を打ち込んだ後、対の固定孔15に締結紐21を挿通するとともに、前記支持棒20に縛り付けて前記ツリープロテクタ10を固定する。
【0023】
そして、鹿等の獣害を受けずに順調に時間が経過し、苗木が十分に成長した場合に、前記締結紐21を切断するとともに、係合突部12,12の係合を外してツリープロテクタ10を展開し、取り外す。ついで、支持棒20,20引き抜き、前記ツリープロテクタ10と共に再利用する。
【0024】
第2実施形態は、図5に示すように、対の固定孔15を同一高さに設ける場合に限らず、設ける位置を上下にずらすように配置した場合である。
本実施形態によれば、ツリープロテクタ10の高さの異なる固定孔15,15に締結紐21を通して支持棒20に固定することにより、締結紐21の締結力の分力によってツリープロテクタ10が偏平になりにくいという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0025】
第3実施形態は、図6に示すように、係合突部12を半楕円形状とした場合である。
本実施形態によれば、前記係合突部12の外周が円弧状であるので、組立作業時に係合突部12,12が相互に引っ掛かりにくくなり、組立作業がより一層簡単になるという利点がある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0026】
第4実施形態は、図7に示すように、長さ方向に沿って2分割したプロテクタ本体16,16を組み付けてツリープロテクタ10を形成する場合である。
本実施形態によれば、同一平面形状の巾狭のプロテクタ本体16,16を組み付けてツリープロテクタ10を形成できる。このため、組立前のプロテクタ本体16の床面積が小さくなり、運搬、特に、山間部の現場までの運搬が容易になるという利点がある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0027】
第5実施形態は、図8,9に示すように、前述の折り曲げ用切り欠き溝を設けていないプロテクタ本体11を折り曲げ、係合突部12,12を相互に係合することにより、平面略円形の筒状ツリープロテクタ10を形成する場合である。そして、前記ツリープロテクタ10には円環状の保持リング30を嵌合してある。
前記保持リング30は、前記ツリープロテクタ10を補強するとともに、前記ツリープロテクタ10を、締結紐21を介し、支持棒20,20に固定するためのものである。このため、前記保持リング30の上下端面に台形の係合用突起31,31を所定のピッチでそれぞれ突設してある。
他は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、同一部分には同一番号を附して説明を省略する。
本実施形態によれば、折り曲げ用切り欠き溝を設けないので、生産工数が少なく、生産性の高いツリープロテクタ10が得られるという利点がある。
【0028】
なお、保持リング30は、平面円環状のものに限らず、例えば、平面3角形、4角形、6角形、8角形であってもよく、必要に応じて係合用突起を突設してもよい。
また、前記保持リング30には、少なくとも1つの係合用突起を突設してあればよく、上下に揃えて突設してもよく、あるいは、千鳥状に上下に突設してもよい。
【0029】
さらに、保持リング30は前述の形状に限らず、環状の保持リングであれば、例えば、図10に示すように、狭いピッチで方形の係合用突起31を上下に突設した環状体であってもよく、また、図11に示すように、連続する波形形状の環状体であってもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るツリープロテクタは、図示された前述の実施形態の形状に限らないことは勿論である。特に、係止用切り欠き部は前述の円弧形状に限らず、多角形、例えば、6角形、8角形、12角形等からなる曲線であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10:ツリープロテクタ
11,16:プロテクタ本体
12:係合突部
13:係止用円弧状切り欠き部
14:折り曲げ用切り欠き溝
15:固定孔
20:支持棒
21:締結紐
30:保持リング
31:係合用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明の樹脂製シートからなるプロテクタ本体の両側縁部に係合突部を千鳥状にそれぞれ配置するとともに、前記係合突部の基部に係止用切り欠き部を設けたことを特徴とするツリープロテクタ。
【請求項2】
係止用切り欠き部が直径3ないし8mmの円弧形状であることを特徴とする請求項1に記載のツリープロテクタ。
【請求項3】
係止用切り欠き部の中心が、プロテクタ本体の外周縁部と係合突部の外周縁部との交点よりも奥側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のツリープロテクタ。
【請求項4】
係止用切り欠き部の中心が、プロテクタ本体の外周縁部と係合突部の外周縁との交点よりも、前記係止用切り欠き部の直径の15%ないし25%だけ奥側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のツリープロテクタ。
【請求項5】
プロテクタ本体の外表面に、複数本の折り曲げ用切り欠き溝を長手方向に沿って平行に所定のピッチで並設したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のツリープロテクタ。
【請求項6】
プロテクタ本体に設けた折り曲げ用切り欠き溝を間にして設けた対の固定孔を、異なる高さ位置に配置したことを特徴とする請求項5に記載のツリープロテクタ。
【請求項7】
係合突部を相互に係合して形成した筒状のプロテクタ本体の外周面に、少なくとも1つの保持リングを嵌合したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のツリープロテクタ。
【請求項8】
保持リングの上下端面のいずれか一方に、少なくとも1つの係合用突起を突設したことを特徴とする請求項7に記載のツリープロテクタ。
【請求項9】
保持リングが連続する波形形状の環状体であることを特徴とする請求項7に記載のツリープロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−42720(P2013−42720A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183853(P2011−183853)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(594161884)ハイトカルチャ株式会社 (7)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(500438312)住友林業フォレストサービス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】