説明

ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法

【課題】大幅な設備改造を要することなく、既設備のマイナーな改造で足り、薬液を付与したティシュペーパー製品と薬液を付与しないティシュペーパー製品との切り換えが容易である生産性に優れたティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の一次原反ロールJRから繰り出される一次連続シートS11、S12をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする積層工程(51)と、積層連続シートS2に対して薬液を塗布する薬液塗布工程(53)と、積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程(55)と、スリットされた各積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り工程(56)と、を有するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチスタンド式インターフォルダに供するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーの箱詰め製品は、一般的に、インターフォルダ(折り畳み設備)によって複数の連続するティシュペーパーを折り畳みながら積み重ね、所定の長さに切断するなどしてティシュペーパー束を得、このティシュペーパー束を収納箱(ティシュカートン)内に収納することによって製造される。
【0003】
このようなインターフォルダの例として、下記特許文献1、2に開示されるようなマルチスタンド式インターフォルダや、下記特許文献3、4に開示されるようなロータリー式インターフォルダなどが知られている。
【0004】
マルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法の従来例としては、次のようなものがある。すなわち、抄紙設備において薄葉紙を抄造して巻き取ることで一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、この一次原反ロールをプライマシンにセットし、複数の一次原反ロールから繰り出した一次連続シートを重ね合わせて巻き取ると共にスリット(幅方向にティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅に分割)し、複数のプライからなる二次原反ロールを製造する。
プライマシンで製造された二次原反ロールは、プライマシンから取り出された後、必要な数だけマルチスタンド式インターフォルダにセットされる。次いで、二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。
このようなマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法は、他の折り畳み設備を用いた製造方法に比べて、多数(通常80〜100基)の折畳み機構を有しているため生産性が高いという利点を有している。
【0005】
ところで、近年では、ティシュペーパー製品に保湿剤や香料などの薬液(通常「ローション薬液」とも呼ばれる)を塗布されたものの需要が拡大しており、例えば下記特許文献5〜7に開示されるような製造方法や設備が種々提案されている。このようなローション薬液を含有させたティシュペーパー製品は、主にロータリー式インターフォルダで製造されるのが一般的であった(例えば下記特許文献5)。しかし、ロータリー式インターフォルダは、加工方向と垂直方向に折畳みと裁断を同時に行なうため、生産性が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許4052048号公報(特公昭55−1215号公報)
【特許文献2】特開2006−240750号公報
【特許文献3】特開昭61−37668号公報
【特許文献4】特開平5−124770号公報
【特許文献5】特開2004−322034号公報
【特許文献6】特表2008−525103号公報
【特許文献7】特開2008−264564号公報
【特許文献8】特開2007−24565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者等は、薬液が付与されたティシュペーパー製品を、ロータリー式インターフォルダに比して生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法で製造することを考えた。
しかし、マルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法で製造する場合、プライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは別に薬液付与工程を設けると、原反の移送の手間や多大な設備コストがかかってしまうという問題がある。また、薬液付与工程をマルチスタンド式インターフォルダ内に設けると、薬液を付与するティシュペーパー製品を製造するラインと、薬液を付与しないティシュペーパー製品を製造するラインとを別々に設ける必要があった。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、マルチスタンド式インターフォルダで利用されるティシュペーパー製品用二次原反ロールを製造するにあたり、大幅な設備改造を要することなく、既設備のマイナーな改造で足り、しかも、単一のマルチスタンド式インターフォルダを使用するものの、薬液を付与したティシュペーパー製品と薬液を付与しないティシュペーパー製品との切り換えが容易である生産性に優れたティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法を提供することにある。
他方、紙粉の混入が抑制され、もって安定して薬液を付与できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段及びそれらの作用効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層工程と、
積層連続シートに対して薬液を付与する薬液塗布工程と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを同時に形成する巻取り工程とを有し、
薬液塗布工程がインクジェット形式によって薬液を噴射する工程であり、積層連続シートの各表面に対しインクジェット形式によって薬液を噴射してそれぞれ薬液を付与することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
薬液塗布工程とスリット工程との間に、受けロールとコロとの間で積層連続シートを挟んで、積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状の接合部分を形成する接合工程を設け、
前記薬液塗布工程が、それぞれインクジェット形式によって薬液を噴射する少なくとも2つの薬液付与部により薬液を付与する工程とされ、一方の薬液付与部が前記コロと接するシートの側に位置し、他方の薬液付与部が他のシートの側に位置していて、一方の薬液付与部の塗布量を他方の薬液付与部の塗布量より少なくすることを特徴とする請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
前記薬液塗布工程においてインクジェット形式とされて薬液が噴射されるインクジェットヘッドが用いられ、
このインクジェットヘッドが、
複数のノズル孔を並べて設けているノズル板と、
ノズル孔から射出する為の薬液を一時的に貯める流体室と、
この流体室を挟んでノズル板と対向する部分に配置された振動板と、
この振動板に当接して流体室に配置される圧電素子と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る製造方法におけるスリット工程でティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるよう製造されたティシュペーパー製品用二次原反ロールは、この後段でマルチスタンド式インターフォルダに多数セットされる。次いで、マルチスタンド式インターフォルダにセットされた二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。
本発明では、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法における積層連続シートに対して薬液を付与するようになっている。このため、プライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは別に薬液塗布工程を設ける場合と比較して、設備コストを低く抑えることができると共に、製造工程を削減できることから製造時の効率化につながる。また、薬液を付与しないティシュペーパー製品を製造する場合は、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造工程から薬液塗布工程を省略するだけで良いため、設備の切り替えが容易にできる。
【0013】
本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、薬液塗布工程は、積層工程の後であって、且つ、スリット工程の前に行われることが好ましい。というのは、薬液塗布工程が積層工程の前であると、それぞれの一次連続シートに対して薬液を付与するための設備を設けなければならず、他方、スリット工程の後であると、スリット工程によって複数に分割された積層連続シートに対して薬液を付与するため、スリット部から薬液が漏れロールが汚れ、断紙の原因となる。薬液塗布工程が積層工程とスリット工程との間で行われるようになっていると、スリット工程によって分割されていない積層連続シートのみに薬液を付与するための設備を用意すれば良く、薬液のロスが少なく、断紙がなく操業が安定するからである。
【0014】
この際、本請求項では、薬液塗布工程がインクジェット形式によって薬液を噴射する工程であり、これに伴って、積層連続シートの各表面に対し、インクジェット形式によって薬液を噴射してそれぞれ薬液を付与することになる。従って、インクジェット形式によれば、非接触且つ均一に塗布できるので、グラビア印刷のように金属ロールを用いた場合やスプレー方式で塗布する場合よりも、積層連続シートにシワが入り難くなり、かつ、幅方向で均一に塗布することが可能となる。
【0015】
本発明では、薬液塗布工程に際して、インクジェット形式によって薬液を積層連続シートに噴射することで、積層連続シートの幅方向や流れ方向に沿って塗布量を安定させることができる。また、加工速度が高速であっても塗布量が安定していることによって、衛生用薄葉紙に部分的に弱い部分を作ることを回避させ、高速塗布および加工が可能になる。
【0016】
他方、グラビア印刷等の印刷方式による薬液塗布は紙に版を接触させるロール転写であり、薬液の物性が温度変化や紙粉混入、あるいはせん断力により変化することで、流れ方向や幅方向に塗布量のばらつきが生じる。またスプレー塗布についてもノズルから扇状に薬液粒子を噴射するため、複数のノズルを用いて均一に塗布する工夫を行なうが、幅方向で十分な均一性を得ることは難しい。これら流れ方向、幅方向での塗布量のばらつきに伴い、流れ方向、幅方向で紙の伸びが違ってくることから、巻きずれや原反不良等の発生が考えられる。印刷方式やスプレー塗布では、このような巻きずれや原反不良等を改善するための調整は、その塗布方式の原理から基本的に限界がある。
これに対し、電子制御でノズルから噴射する粒子を1個単位で噴射する、噴射しないをコントロールできるインクジェット方式では、幅方向、流れ方向での塗布量調整が容易かつ瞬時に行なうことが可能であり、印刷方式やスプレー塗布より有利となる。
さらに、塗布前の二次原反の品質に応じて、塗布後の品質が流れ方向、幅方向に均一になるように、プライ原反ロール毎、あるいはプライロール薬液塗布の途中であっても調整が可能であり、より均一な製品品質を得ることが可能である。
【0017】
また、請求項2では、積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状の接合部分を形成する接合工程が、薬液塗布工程とスリット工程との間に存在しているが、この接合工程を実施するに際しては、受けロールとコロとの間で積層連続シートを挟んで、積層連続シートを接合している。
尚、積層連続シートに対して層間剥離を防止する為の接合工程としては、圧着や接着等の手段であっても良いが、接合工程を例えば積層連続シートに対してライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程としても良い。このようなコンタクトエンボス工程が、薬液塗布工程とスリット工程との間に存在している場合、このコンタクトエンボス工程を実施するに際しては、受けロールとコロとの間で積層連続シートを挟んで、コンタクトエンボスを施すことになる。
【0018】
ここで、接合工程の一例のコンタクトエンボス工程を薬液塗布工程の前で行なうと、積層連続シートにおけるコンタクトエンボスが施された部分と施されていない部分とが形成された状態で薬液が付与される。このため薬液の付与量にムラが生じて、薬液が多く付与された部分と少なく付与された部分の伸び率に違いが生じ、ティシュペーパー製品のしわとなり見栄えが悪くなる。
また、コンタクトエンボス工程がスリット工程後であると、製品幅にスリットの入った積層連続シートに対してコンタクトエンボスを付与することとなるため、連続する製品幅の積層シートの端部に2箇所(2ライン)のコンタクトエンボスがなされることになる結果として、スリットしないライン全幅でのコンタクトエンボス加工と比較し断紙しやすくなる。
【0019】
他方、前述のように薬液塗布工程がインクジェット形式によって薬液を噴射する工程とされているが、この薬液塗布工程においては、例えばコンタクトエンボス工程である接合工程で用いられるコロと対向する側であるコロと接するシートの塗布量をコロと非対向とされる他のシートの塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートの両面からそれぞれ積層連続シートに対して薬液を付与している。そして、スリット工程においてスリットされた各積層連続シートを上記のコロと対向した側を外周側として同軸で巻取り工程において巻取ることで、ティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを同時に形成している。
【0020】
従って、巻取り工程で用いられる巻き取りドラムの外周側になる面の塗布量をドラム内周側になる面の塗布量より少なくすることで、巻き取り時に蛇行なく二次原反ロールを巻き取ることができる。つまり、巻き取り時に用いられる2つのワインディングドラムに接する面への塗布量が少なくなることから、この部分が抵抗となることで、2つのワインディングドラムとの間で滑り難くなって、蛇行なく巻き取りドラムに高速で巻け、スリット後の二次原反ロールとなる衛生用薄葉紙製品が巻きズレを起こして、使えなくなる問題を回避できるようになる。
この一方、例えば接合の一種であるコンタクトエンボス加工用のコロと対向する積層連続シートの面側の塗布量をコロと非対向とされる他の面側の塗布量に対して少なくすることで、薬液塗布工程後のコンタクトエンボス加工の際にも、紙が破れにくくなる利点がある。
また、インクジェット方式を用いた場合には、エンボスコロと接する塗布面のスリット及びコンタクトエンボスを施す幅方向の部分について薬液塗布量を相対的に少なくして、薬液を塗布することも可能である。この場合、スリット及びコンタクトエンボス加工を施す部分で、塗布後の紙の紙力低下を少なくし、また薬液がスリッターおよびエンボスコロへ逆転写することがないように塗布量を調整することが可能なため、高速加工適性に優れるというメリットがある。
【0021】
上記に伴い、この後に二次原反ロールとなってマルチスタンド式インターフォルダで加工される間(8時間以上)に、二次原反ロールの内側面に塗布された薬液とされるローション剤が二次原反ロールの外周面に転移し、両外側面は均一な表面性が得られて、表裏差のない均一なティシュー品質が得られるようになる。さらに、スリット工程前の幅広い積層連続シートに薬液を付与することになるので、積層連続シートの幅方向の塗布量が均一であり、ローション剤の飛散が少なく歩留が高くなる。
【0022】
以上より、本発明に係る衛生用薄葉紙製品用二次原反ロールの製造方法によれば、紙力の低い家庭紙で高速かつ均一に薬液塗布し、例えばコンタクトエンボスによる破れや断紙、原反の巻きズレを防止し安定して操業できることになる。
【0023】
他方、請求項3では、薬液塗布工程においてインクジェット形式とされて薬液が噴射されるインクジェットヘッドが用いられている。そして、このインクジェットヘッドにおいては、電圧が加えられるのに伴い、圧電素子が振動板を変形することで、流体室内に一時的に貯められている薬液が、ノズル板の複数のノズル孔から噴射されるように、動作する。
以上より、圧電素子に電圧を加えることによって、確実に薬液が積層連続シートに噴射されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図2】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、正面から見た状態を示している。
【図3】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、側面から見た状態を示している。
【図4】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、正面から見た状態を示している。
【図5】折り畳まれたティシュペーパーの縦断面図である。
【図6】(a)ティシュペーパー束を収納箱に収納している様子を示す図である。(b)収納箱に収納されたティシュペーパーの取出す様子を示す一部破断図である。
【図7】折り板に関する部位の要部拡大斜視図である。
【図8】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図9】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図10】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図11】二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図12】図11で示す薬液塗布手段周辺の要部拡大図である。
【図13】図11で示す薬液塗布手段の内の一方の薬液塗布部を示す斜視拡大図である。
【図14】図11で示す薬液塗布手段の内の一方の薬液塗布部の内部を示す拡大断面図である。
【図15】コンタクトエンボス手段によって積層連続シートにコンタクトエンボスを付与している様子を示す図である。
【図16】積層連続シート(ティシュペーパー)の構造を示す模式図である。(A)薬液塗布前のMD方向断面図、(B)薬液浸透工程前の上面図、(C)I−I矢視図。
【図17】積層連続シート(ティシュペーパー)の表面凹凸構造を示す模式図である。(A)薬液塗布前、(B)薬液塗布後。
【図18】薬液浸透工程を示す模式図である。
【図19】ティシュペーパーのMMD値の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態を説明する。なお、図中の矢印HDは水平方向を、矢印LDは上下方向を示している。
〔一次原反ロールの製造方法〕
一次原反ロールの製造方法の一例を、図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、ワイヤーパートを経た湿紙Wがボトムフェルト111に載せられて移送され、その後、トップフェルト110及びボトムフェルト111に挟持されたまま、トップロール112とボトムロール113の間を通過し搾水される。その後、搾水された湿紙Wは、トップフェルト110に載せられた状態で、タッチロール116を介してヤンキードライヤー115の表面に付着させられる。そして、湿紙Wは、ヤンキードライヤー115によって乾燥され、ドクターブレード117により引き剥がされた後、巻き取られることで一次原反ロールJRとされる。
この抄紙に際しては、例えば、分散剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、接着剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、染料、などの適宜の薬品を添加することができる。
なお、本一次原反ロールの製造方法においては、ドクターブレード117により引き剥がされた後でカレンダー手段118によって平滑化処理を施すこともできる。
【0026】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備〕
図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1(プライマシンX1)は、上述の製造方法などで製造された一次原反ロールJRを、少なくとも2つ以上セット可能とされており、これらの一次原反ロールJRから繰り出した一次連続シート(図示例ではS11、S12)を、その連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とするプライ手段51を有している。
【0027】
プライ手段51の後段には、プライ手段51から流れてくる積層連続シートS2に対して薬液を塗布する一対の薬液塗布手段53が設けられており、これらの薬液塗布手段53の後段には、並設された複数のカッターから成り、薬液塗布手段53から移送されてきた積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット手段55が配置されている。そして、スリット手段55の後段には、スリット手段55によってスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り手段56が設けられている。ここで、この巻取り手段56は、スリットされた各積層連続シートS2を二次原反ロールRに案内するための2つのワインディングドラム56Aを有していて、これら2つのワインディングドラム56Aが二次原反ロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内している。
【0028】
(カレンダー手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2をカレンダー処理するカレンダー手段52を一つ以上設けることもできる。
カレンダー手段52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーの事である。
カレンダー手段52の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、一つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。
二つ以上のカレンダー手段52を設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設することができ、また、これらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると、抱き角度を小さくなるため加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。なお、ここで言う抱き角度とはロールの軸中心から見てシートが接している間(軸と直行する断面の円弧の一部)の角度を意味している(以下同じ)。
カレンダー処理条件におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるティシュペーパーの品質すなわち紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
また、カレンダー手段52の設置位置は特に限定されないが、プライ手段51の後段であって且つ薬液塗布手段53の前段や、薬液塗布手段53の後段であって且つコンタクトエンボス手段54の前段とすることができる。
【0029】
(薬液塗布手段)
本実施形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法においては、薬液を積層連続シートS2の両面に塗布する場合、両面の合計の薬液塗布量は、1.5〜5.0g/m2とされ、好ましくは2.0〜4.5g/m2とされ、より好ましくは2.5〜4.0g/m2とされる。5.0g/m2超過であると、紙力低下や伸びなどにより断紙したり、ワインディングドラムで巻き取りの際に巻きズレを起こしたり、また品質的にべたつき感が過ぎる場合も出てくる。1.5g/m2未満であると滑らかさやしっとり感など未塗布品との品質差を感じられなくなってしまう。
なお、両塗布面への塗布量に差がある場合、塗布後にプライ原反で保管されてから折り加工されるまでの時間(8時間以上)に、両塗布面は接していることから、次第に両者の薬液量は均等化していき表裏差は小さくなる。
【0030】
薬液を積層連続シートS2の片面のみに塗布する場合、薬液の塗布面は、積層連続シートS2における二次原反ロールRの外側に位置する方の面(一次連続シートS11側の面)への塗布がよい。こうすると製品での表裏差はあるものの、巻きずれを起こしにくい。この場合、塗布量は1.5〜5.0g/m2とされ、好ましくは2.0〜4.5g/m2とされ、より好ましくは2.5〜4.0g/m2とされる。
【0031】
また、積層連続シートS2を構成する各一次連続シートのクレープ率に差異を設ける場合、クレープ率の高い方の一次連続シート側(図示例では一次連続シートS11側)により多くの薬液を塗布することも提案される。例えば、図11及び図16に示される例においては、2つの薬液塗布手段53のうち、一次連続シートS11に直接薬液を塗布する薬液塗布手段53Bの方が、他方の薬液塗布手段53Aよりも多くの薬液を塗布するものとする。この場合、両面の薬液塗布量の比は、100:0〜60:40、好ましくは75:25〜60:40とする。
【0032】
図16(A)は薬液塗布前の2プライに積層された積層連続シートS2の断面図である(MD方向に平行に切断した断面図)。2プライに積層された積層連続シートS2の両面に薬液を塗布するにあたり、両面の薬液量に差異を設け、図中においては一次連続シートS11の側に薬液を多く塗布する。薬液塗布後、積層連続シートS2が伸長しきる前に、コンタクトエンボスCEにより積層を一体化し、スリット手段55により製品幅にカットする(図16(B))。その後、積層連続シートS2を巻取り手段56で巻き取り、薬液を浸透させるため静置される。薬液塗布手段53で薬液を塗布された積層連続シートS2を構成する一次連続シートS11、S12は主にMD方向に伸長する。その際、より多くの薬液が塗布された一次連続シートS11が他方の一次連続シートS12より伸長率が大きくなるが、一次連続シートS11、S12はコンタクトエンボスCEで相互に固定されているため、より伸長した一次連続シートS11の表面にシワが生じる(図16(C))。積層する積層連続シートS2のクレープ率にも差異を設け、一次連続シートS11にクレープ率の高い原紙を使用すると、より一次連続シートS11と一次連続シートS12との伸長率に差異を生じさせることができる。
【0033】
クレープはヤンキードライヤー115にて原紙を乾燥後、ドクターブレード117によりヤンキードライヤー115から剥がした後、ドライヤースピードと巻取りスピードの差異によって形成される。このクレープはヤンキードライヤー115への紙の貼り付きにより形状を調整するが、この貼り付きに若干のばらつきがあることや、繊維原料が均等に分布していないことから、ミクロ的な視野で見ると立体的にクレープ形状には若干のバラツキが存在する。このバラツキはクレープ率が大きくなるほど顕著になる。
【0034】
このクレープのバラツキに伴い、薬液を塗布した際の伸びにもバラツキが生じ、これが3次元的に細かな波打ちとして形成される。この波うちは原反シーズニング時には張力が働くため顕在化しないが、製品に加工し断裁した後に復元し顕在化する。シートへの薬液の塗布量が多いほど、クレープが大きいほどクレープ形状の変化、シートの波打ちは大きく、逆にシートへの薬液の塗布量が少ないほど、クレープが小さいほどクレープ形状の変化、シートの波打ちは小さい。このため、塗布量だけでなく、クレープ率を変えることによって、嵩高効果を相乗させることができる。
【0035】
また品質について、クレープ率の異なる一次連続シートS11、S12を積層して製品化した場合、薬液塗布を行わなければ、製品であるティシュペーパーは、両面でバルク感の異なるものとなる(図17(A))。しかし、より表面の凹凸の大きな(クレープ率の高い)一次連続シートS11により多くの薬液を塗布することにより、一次連続シートS11は一次連続シートS12よりも高い伸び率で伸長するが、コンタクトエンボスによりMD方向と平行に固定されているため(図示せず)、一次連続シートS11は波打ち、積層シートの嵩が増加する。(図17(B))。
【0036】
薬液塗布量に差異を設けることにより、製品の両面で肌触り、使用感が異なることが懸念されるが、二次原反ロールRを次の工程(折り加工等)へ供する前にロールの状態で静置することにより、薬液塗布量の異なる一次連続シートS11、S12の表面が互いに相対した状態で保たれるため(薬液浸透工程、図18)、連続シート間の薬液成分が少しずつ転移し(図中グレー矢印)、その差異はシーズニング中に次第に軽減される。なお、図18中の白抜き矢印は薬液成分の浸透方向を示す。
【0037】
本発明の薬液塗布手段53の種類には、インクジェット形式の印刷方式を用いることができる。本ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法において、薬液塗布手段53としてインクジェット形式を用いる場合、加工速度は100〜1000m/分とし、好ましくは350〜950m/分、特に好ましくは450〜950m/分とする。100m/分未満であると生産性が低く、1000m/分超過であると、塗布ムラが生じ、薬液が飛散し易くなる。
【0038】
本ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法において、薬液塗布手段53としてインクジェット形式を用いる場合、加工速度は100〜1100m/分とし、好ましくは350〜1050m/分、特に好ましくは450〜1000m/分とする。100m/分未満であると生産性が低く、他方、1100m/分以上であると、塗布ムラが多く生じ、薬液の飛散量が多くなってしまう。
つまり、インクジェット形式は、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができる。
【0039】
インクジェット形式の印刷方式を用いた薬液塗布手段53は、単数或いは複数設置することができ、複数設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設しても良く、水平方向を含めたこれらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると抱き角度を小さくすることができるため、加工速度を高速とすることができ、上下方向に並設すると水平方向における設置スペースを小さくすることができる。
インクジェットヘッドと紙との間隙は、インクジェット粒子が到達でき、かつ紙とヘッドが接触しない範囲であればよいが、高速操業とした場合には、紙の走行方向に沿って流れる気流がインクジェット粒子の紙への到達を妨害することを考慮し、その間隙を数mm〜30mm程度に設定することが適当である。
【0040】
薬液塗布手段53の前後に配置される手段(図11の例ではカレンダー手段52及びコンタクトエンボス手段54)は、相互に近接して配置することが好ましい。そうすることによって、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合には、積層連続シートS2を薬液塗布手段53の前段から後段に直接移送し、薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を通すだけでよくなるため、薬液塗布の有無を容易に切り替えることが可能となる。例えば、図11に示すティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1では、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図11において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に直接移送し、薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0041】
<インクジェット形式の実施形態>
ここでは、インクジェット形式による印刷の一例を説明する。
図11及び図12に示すように、本形態では、インクジェット形式とされる一方の薬液塗布部53Aが、後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。この薬液塗布部53Aは薬液の入っているタンク61Aを有していて、このタンク61Aが薬液を噴射し得るインクジェットヘッド62Aに配管を介して接続された構造とされている。これに伴って、このタンク61Aから供給ポンプ(図示しない)によりインクジェットヘッド62Aに薬液を供給するようになっている。
【0042】
図13に示すように、このインクジェットヘッド62Aの被塗布材である積層連続シートS2と対向する部分には、この積層連続シートS2の幅分に少なくとも対応する形で、複数のノズル孔64を直線的に並んで設けているノズル板63Aが配置された構造になっている。
そして、図14に示すように、このインクジェットヘッド62A内には、噴射ユニット65が各ノズル孔に対応して複数配置されている。つまり、この噴射ユニット65は、ノズル孔64から射出する為の薬液を一時的に貯める流体室66と、この流体室66を挟んでノズル板63と対向する部分に配置された振動板67と、この振動板67に当接して流体室66外に配置され且つピエゾ素子等により形成される圧電素子68とにより、構成されている。
【0043】
尚、振動板67は、例えばステンレス鋼等の金属製の板材により形成されていて、圧電素子68からの振動を流体室66に伝達し易い構造なっている。また、圧電素子68には、配線を介して図示しない制御装置が接続されていて、この制御装置から所定の間隔で圧電素子68に電圧が付与されるようになっている。
【0044】
従って、タンク61Aからインクジェットヘッド62Aに供給された薬液は、各ノズル孔64に対応して存在する流体室66内に送り込まれるようになっていて、必要に応じて制御装置が圧電素子68に電圧を加えることで、各ノズル孔64から一斉に薬液が噴射されることになり、これに伴い、積層連続シートS2の一方の面における幅分全体に亘って薬液が塗布されことになる。
【0045】
この一方、図11及び図12に示すように、本形態では、同じくインクジェット形式とされる他方の薬液塗布部53Bが、後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。この薬液塗布部53Bは薬液の入っているタンク61Bを有していて、このタンク61Bが薬液を噴射し得るインクジェットヘッド62Bに配管を介して接続された構造とされている。これに伴って、このタンク61Bから供給ポンプ(図示しない)によりインクジェットヘッド62Bに薬液を供給するようになっている。
【0046】
このインクジェットヘッド62Bの被塗布材である積層連続シートS2と対向する部分には、この積層連続シートS2の幅分に少なくとも対応する形で、複数のノズル孔64を直線的に並んで設けているノズル板63Bが、上記と同様に配置された構造になっている。そして、このインクジェットヘッド62B内には、前述の噴射ユニット65と同様な構造の噴射ユニットが各ノズル孔64に対応して複数配置されている。
従って、タンク61Bからインクジェットヘッド62Bに供給された薬液は、前述と同様に各ノズル孔54から一斉に噴射されることで、積層連続シートS2の他方の面における幅分全体に亘って、この薬液が塗布されことになる。
【0047】
以上より、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0048】
ここで、前述のように、両面の合計塗布量を1.5〜5g/m2とし、さらに、プライ原反ロールである二次原反ロールRの外周面の塗布量を、二次原反ロールRの内周面の塗布量より少なくする場合、紙の両面に対するローション剤の合計塗布量の内、二次原反ロールRの外周面への塗布量は、全体の20%以上で50%未満が良いが、具体的な値は、二次原反ロールRの滑りと品質のバランス、シートの厚みやローション剤の浸透性、転移性により最適条件が異なるので、上記の範囲で変化する。
【0049】
従って、本形態によれば、インクジェット形式による印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上とし、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされるローション剤を後述の範囲の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0050】
尚、上記実施形態では、インクジェット形式として、オンデマンド方式でピエゾ素子を採用した構造とされているが、サーマルジェット型を採用しても良い。更に、オンデマンド方式の替りに連続して噴射可能なコンティニュアス方式の噴射装置を採用しても良い。
【0051】
(薬液)
塗布する薬液について、粘度は高速加工を行う観点から40℃で1〜700mPa・sとする。より好ましくは50〜400mPa・s(40℃)とする。薬液の成分はポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬品を0.01〜22%含むものとする。
ポリオールはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
また機能性薬剤として香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0052】
(コンタクトエンボス手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボスを付与するコンタクトエンボス手段54を設けることができる。
ここで、コンタクトエンボス手段54は、図15に示すように、金属ロール又は弾性ロールである受けロール54Bと表面に細かい凸部54Cを有する金属製で硬質のコロ54Aとが所定の圧力を有して相互に外周面同士を当接しつつ、それぞれ回転可能に設置されている。そして、積層連続シートS2におけるティシュペーパー製品の幅方向中央に該当する部分に対して、左右各2つずつ存在する凸部54Cと、受けロール54Bとの間で積層連続シートS2を挟みつつ搬送することで、積層連続シートS2に対して、積層連続シートS2の連続方向に沿って層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスCEを施すようになっている。
尚、このコンタクトエンボスCEを施すコロ54Aと対向した側の面を外周側として前述の巻取り手段56が、積層連続シートS2を巻取ることになる。
【0053】
このようにコンタクトエンボスCEを付与することによって、複数の一次連続シート(図示例ではS11、S12)を積層して成る積層連続シートS2の層間剥離を防止する。なお、コンタクトエンボスCEは、ティシュペーパー製品の端部が層間剥離し難くなるように、ティシュペーパー製品の幅方向両側部に位置するよう、形成されることが好ましい。
なお、コンタクトエンボス手段54の設置箇所は特に限定されないが、薬液付与手段53の後段であって且つスリット手段55の前段や、カレンダー手段52の後段であって且つ薬液付与手段53の前段とすることが考えられる。つまり、カレンダー手段52の後段であって且つスリット手段55の前段の何れかの箇所で有ればよいことになる。
【0054】
コンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスCEを付与する場合、積層連続シートS2に対して薬液を塗布した後、0.3〜2.5秒、好ましくは0.3〜1.0秒以内にコンタクトエンボスCEを付与することも提案される。0.3秒未満であると薬液が原紙に十分吸収されないため、受けロール54Bやコロ54Aに薬液が付着して断紙したり、受けロール54Bやコロ54Aに汚れが付着したりする。2.5秒を超えると、薬液を塗布した積層連続シートS2が伸びきるため、その後工程シワが生じにくくなり、嵩高なティシュペーパー製品を得づらくなる。また、積層連続シートS2が伸びきるとドロー変動に対応できる伸びが無くなり、また吸湿、吸水により引張強度が低下しているため、断紙し易くなり操業性が落ちるという問題もある。
【0055】
また、この接合工程において、本実施形態ではコロとして表面に細かい凸部54Cを有した金属製で硬質のコロ54Aを用いたが、積層連続シートS2に対して層間剥離を防止するライン状の接合部分が形成できればよく、例えばコロ54Aの替りに、表面に細かい針状の部材を有したローラをコロとすることもできる。
さらに、接合する為の手段としては上記例に限定されず、凸部の先端形状が、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状のものをコロとして用いても良く、凸部の先端形状が、細長い線状、細く斜めに伸びる線状等のものをコロとして用いても良い。
他方、凸部の配列としては等間隔が考えられるが、千鳥状としたり、等間隔としなくとも良く、また、凸部を1列に配置してコンタクトエンボスを連続して付与する他に、凸部を2列以上の複数列配置することも考えられる。そして、コンタクトエンボスを緊密に複数列付与するように凸部が配置された群を複数並べて、複数のコンタクトエンボス群を付与するようにしても良い。尚、接合工程としては、上記のように機械的に圧力を加えて接合する他に、超音波等の他の手段により接合しても良い。
【0056】
(一次連続シート)
一次連続シートS11、S12の原料パルプは、特に限定されず、ティシュペーパー製品の用途に応じて適宜の原料パルプを選択して使用することができる。原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0057】
特に、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合の配合割合(JIS P 8120)としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0058】
一次連続シートS11、S12は、JIS P 8124による坪量が、10〜25g/m2とされ、好ましくは12〜20g/m2とされ、より好ましくは13〜16g/m2とされる。坪量が10g/m2未満であると、柔らかさの点においては好ましいが、適正な強度を確保することができなくなる。他方、坪量が25g/m2を超えると、硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。
また、紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は1プライで80〜250μm、好ましくは100〜200μm、より好ましくは130〜180μmとされる。
【0059】
一次連続シートS11、S12は、クレープ率が10〜30%であるのが好ましく、12〜25%であるのがより好ましく、13〜20%であるのが特に好ましい。クレープ率が10%未満であると、加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないティシュペーパー製品となる。他方、クレープ率が30%超過であると、加工時のシートの張力コントロールが難しく断紙しがちとなり、また、製造後にはシワが発生して見栄えの悪いティシュペーパー製品となる。
【0060】
一次連続シートS11、S12は、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)の縦方向が、2プライで200〜700cN/25mm、好ましくは250〜600cN/25mm、特に好ましくは300〜600cN/25mmとされ、他方、横方向が、2プライで100〜300cN/25mm、好ましくは130〜270cN/25mm、特に好ましくは150〜250cN/25mmとされる。原紙の乾燥引張強度が低すぎると、製造時及び使用時の断紙や伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0061】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、乾燥紙力増強剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する等の手法を適宜組み合わせることができる。
【0062】
乾燥紙力剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。また、乾燥紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0063】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法〕
次に、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法の一例を説明する。本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は、例えば、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1を用いて行うことができる。
図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対の薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
【0064】
なお、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法では、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1と同様に、積層工程の後段であって且つ薬液塗布工程の前段に、積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理する平滑化工程を設けることもできる。また、薬液塗布工程の後段であって且つスリット工程の前段に、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54で層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を設けることもできる。
【0065】
本実施形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法においては、加工速度は100〜1100m/分とされ、好ましくは350〜1050m/分とされ、より好ましくは450〜1000m/分とされる。100m/分未満だと生産性が低く、他方、1100m/分超過であると、積層連続シートS2の断紙する頻度が高くなり、薬液塗布工程はインクジェット形式の薬液塗布部53A、53Bからの薬液の噴射による塗布が不安定になりがちとなるため、塗布ムラが生じる可能性がある。
【0066】
〔マルチスタンド式インターフォルダ〕
上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法で製造された二次原反ロールRは、マルチスタンド式インターフォルダに多数セットされ、セットされた二次原反ロールRから二次連続シートを繰り出して折り畳むと共に積層することによってティシュペーパー束が製造される。以下では、そのマルチスタンド式インターフォルダの一例について説明する。
【0067】
図2及び図3に、マルチスタンド式インターフォルダの一例を示した。図中の符号2は、マルチスタンド式インターフォルダ1の図示しない二次原反ロール支持部にセットされた二次原反ロールR,R…を示している。この二次原反ロールR,R…は、必要数が図示平面と直交する方向(図2における水平方向、図3における紙面前後方向)に横並びにセットされている。各二次原反ロールRは、上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法でティシュペーパー製品幅にスリットが入れられており、ティシュペーパー製品の複数倍幅、図示例では2倍幅で巻き取られ、セットされている。
【0068】
二次原反ロールRから巻き出された連続する帯状の二次連続シート3A及び3Bは、ガイドローラG1、G1等のガイド手段に案内されて折畳機構部20へ送り込まれる。また、折畳機構部20には、図4に示すように、折板P,P…が必要数並設されてなる折板群21が備えられている。各折板Pに対しては、一対の連続する二次連続シート3A又は3Bを案内するガイドローラG2,G2やガイド丸棒部材G3,G3が、それぞれ適所に備えられている。さらに、折板P,P…の下方には、折り畳みながら積み重ねられた積層帯30を受けて搬送するコンベア22が備えられている。
【0069】
この種の折板P,P…を用いた折畳機構は、例えば、米国特許4052048号特許明細書等によって公知の機構である。この種の折畳機構は、図5に示すように、各連続する二次連続シート3A,3B…を、Z字状に折り畳みながら、かつ隣接する連続する二次連続シート3A,3B…の側端部相互を掛け合わせながら積み重ねる。
【0070】
図7〜図10に、折畳機構部20の特に折板Pに関する部位を、詳しく示した。本折畳機構部20においては、各折板Pに対して、一対の連続する二次連続シート3A及び3Bが案内される。この際、連続する二次連続シート3A及び3Bは、ガイド丸棒部材G3,G3によって、側端部相互が重ならないように位置をずらされながら案内される。
【0071】
折板Pに案内された時点で下側に重なっている連続する二次連続シートを第1の連続する二次連続シート3Aとし、上側に重なっている連続する二次連続シートを第2の連続する二次連続シート3Bとすると、これら連続する二次連続シート3A及び3Bは、図5及び図8に示すように、第1の連続する二次連続シート3Aの第2の連続する二次連続シート3Bと重なっていない側端部e1が、折板Pの側板P1によって、第2の連続する二次連続シート3Bの上側に折り返されるとともに、図5及び図9に示すように、第2の連続する二次連続シート3Bの第1の連続する二次連続シート3Aと重なっていない側端部e2が、折板PのスリットP2から折板P下に引き込まれるようにして下側に折り返される。この際、図5及び図10に示すように、上流の折板Pにおいて折り畳みながら積み重ねられた連続する二次連続シート3Aの側端部e3(e1)が、折板PのスリットP2から第2の連続する二次連続シート3Bの折り返し部分間に案内される。このようにして、各連続する二次連続シート3A,3B…は、Z字状に折り畳まれるとともに、隣接する連続する二次連続シート3A及び3Bの側端部相互が掛け合わされ、したがって、製品使用時において、最上位のティシュペーパーを引き出すと、次のティシュペーパーの側端部が引き出されることになる。
【0072】
以上のようにしてマルチスタンド式インターフォルダ1で得られた積層帯30は、図2に示すように、後段の切断手段41において流れ方向FLに所定の間隔をおいて裁断(切断)されてティシュペーパー束30aとされ、図6(a)に示すように、このティシュペーパー束30aは、更に後段設備において収納箱Bに収納される。なお、以上のようなマルチスタンド式インターフォルダ1では、積層帯30の紙の方向は、流れ方向FLに沿って縦方向(MD方向)となっており、流れ方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となっている。このため、積層帯30を所定の長さに切断して得られたティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、図6(a)に示すように、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向に沿って縦方向(MD方向)となり、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となる。
【0073】
図6(b)に、収納箱Bにティシュペーパー束30aを収納して成る製品の一例を示した。収納箱Bの上面にはミシン目Mが設けられており、このミシン目Mで収納箱B上面の一部を破断することにより収納箱Bの上面が開口するようになっている。この開口は中央にスリットを有するフィルムFによって覆われており、このフィルムFに設けられたスリットを介してティシュペーパーTを取出すことができるようになっている。
ところで、前述したように、ティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となるため、図6(b)に示すように、ティシュペーパーTを収納箱Bから引き出す際には、その引き出し方向は、ティシュペーパーTの横方向(CD方向)と沿うようになっている。
【0074】
尚、前述のようにインクジェット形式による印刷方式で薬液を印刷した後、PCMCタイプのインターフォルダで折ることにより、ロータリー式インターホルダーでの印刷に比し、低コストで生産性が高いティシュペーパーを製造できるようになる。他方、上記の実施形態と異なり、インクジェット形式の塗布装置をインターフォルダの直前に配置して、このインクジェット形式の塗布装置により塗布した直後にインターフォルダで重ねて折り加工するようにしても良い。
このようにした場合には、薬液が印刷面に多く、反対面に浸透しないで状態で、折加工することになる結果、紙力低下が少なく破れが発生し難くなる。これに伴い、後工程での操業上の問題が少なくなる。
【0075】
他方、本実施形態のように、インクジェット形式により塗布することで、単に図柄印刷だけでなく、積層連続シートS2に薬液を印刷することになるので、なめらかで柔らかく従来のローションティシュペーパーに比較して、図6におけるCD方向の紙の強度が強いローションティシュペーパーを得ることができる。
【実施例】
【0076】
次に、図11に示されるティシュペーパー製品用二次原反ロールX1の製造方法で製造された二次原反ロールを用いて上記のマルチスタンド式インターフォルダでティシュペーパー製品(実施例)を製造し、比較例と対比した。
【0077】
(表1、表2について)
表1及び表2中の比較例はいずれも市販品であり、比較例1は非保湿系の汎用ティシュペーパー、比較例2、5、6は保湿ティシュペーパー、比較例7、8は非保湿系で米坪、紙厚の高い高級タイプのティシュペーパーである。比較例3は薬液中の油性成分を規定より多くしたティシュペーパー試料、比較例4は薬液中のシリコーン類の含有量を規定より多くしたティシュペーパー試料である。
【0078】
表1及び表2中に示す各パラメーターは、以下のとおりである。
米坪・・・JIS P 8124(1998)に準じて測定した。2プライのティシュー製品の場合、2プライのシートの平均米坪を記載した。
紙厚・・・JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定されるものである(JIS P 8118(1998)に準じる)。
製品密度・・・製品の密度は、JIS P 8111 条件下において調湿させたティシュペーパー製品米坪を2倍した値(C)を、「PEACOCK G型」によるティシュペーパー(2プライ)での紙厚(D)で除した値で、単位をg/cm3、小数点3桁で表す。
乾燥引張強度・・・JIS P 8113(1998)の引張試験方法に準じて測定されるものである。
湿潤引張強度・・・JIS P 8135(1998)に準じて測定されるものである。
伸び率・・・ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG−200N」を用いて測定されるものである。
ソフトネス・・・JIS L1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定されるものである。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmで実施した。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を小数点1桁とし、cN/100mmを単位として表した。
吸水度・・・JIS S−3104で記載された「吸水度」のことで、一定量の水分をティシュー表面で吸水する秒数を測定したものである。ティシューの両表側の面を各々5回測定し、計10回の測定値を平均したものを秒数で表す。
MMD・・・静摩擦係数の平均偏差MMDである。MMDは滑らかさの指標の一つであり、数値が小さいほど滑らかであり、数値が大きいほど滑らかさに劣るとされる。なお、MMD値の測定方法としては、図19(a)に示すように、摩擦子212の接触面を所定方向(図19(a)における右斜め下方向)に20g/cmの張力が付与された測定試料であるティシュペーパー211の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させる。このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定し、その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値をMMD値とした。なお、摩擦子212は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有している。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されている。なお、図19(a)には、摩擦子212を模式的に表し、図19(b)には、図19(a)における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図を示すものとする。
水分率・・・JIS P 8111(1998)に準じて測定されるものである。
【0079】
薬液含有量・・・薬液塗布量とは、JIS P 8111の標準状態におけるティシュペーパーの単位面積に対し含まれる乾燥状態(絶乾)の薬液成分の含有量を示し、具体的には、塗布した薬液中の水分以外の成分の含有量を示すものとする。このティシュペーパーの単位面積とは、プライされたシートを平面に垂直線上にある視点から見た面積であり、プライされた各シート、およびその表裏面の合計面積を意味しない。
薬液含有率・・・薬液塗布率とは、JIS P 8111 条件下において調湿させた所定質量のティシュペーパー製品を分母(A)(g)とし、所定質量のティシュペーパー製品中に含まれる薬液中の水分を除いた質量(B)(g)を分子として、(B)を(A)で除した比率を(%)で表す。(薬液含有率%)=(B)÷(A)×100(%)
【0080】
官能評価・・・実施例1〜4及び比較例1〜4、7、8について、消費者87人を対象に、やわらかさ、なめらかさ、厚み感、しっとり感について下記の基準に基づく官能評価を行った(表1)。また、実施例1〜4及び比較例1、2、5、6について、別途12人を対象とした官能評価を行った(表2)。
なお、評価基準は、薬液が塗布されていない非保湿系の汎用ティシュペーパーの成績をすべて「3」とし、「大変優れている」と感じたものについては「5」、「優れている」と感じたものについては「4」、「基準と同等」と感じたものについては「3」、「劣る」と感じたものについては「2」、「顕著に劣る」と感じたものについては「1」とした。
さらに、薬液塗布ティシュペーパーについては、ベタつき感の有無についても評価を行い、評価基準は、「ベタつき感が少ない」ものを「○」とし、「明らかにベタつき感がある」ものを「×」とした。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
表1及び表2の結果から判るように、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法で製造された二次原反ロールを用いて上記のマルチスタンド式インターフォルダで製造されたティシュペーパー製品は、市販の保湿ティシューと比してCD方向の乾燥引張強度、湿潤引張強度が高い値を示した。またCD方向の湿潤引張強度については、従来の汎用タイプのティシュペーパーより高い値を示した。また、吸水度は薬剤の撥水性成分量の多い比較例3、4や市販の保湿ティシューと比して有意に低く、非保湿ティシューに近い値であった。
官能評価において、本発明に係るティシュペーパーは、従来の保湿ティシューと同等以上のやわらかさ、ふっくら感を有する一方で、保湿ティシューにみられるベタつき感が軽減されていることが分かった。
【0084】
(表3について)
原紙(一次連続シート)及び薬液を下記の条件で製造し、原紙の伸長試験(試験1)、ティシュペーパー製品の性能比較試験(試験2)を実施した。なお、表3中に示す各パラメーターのうち、表1及び表2中に示す各パラメーターと同じものについては説明を省略する。
塗布量・・・塗布量は、操業中にプライ後の薬液を塗布しない場合の各々のシート米坪と、対応する塗布した直後の各々のシート米坪との差異により算出した。
(塗布量g/m2)=(塗布直後の米坪g/m2)−(塗布しない場合の米坪g/m2
両表層の塗布量、もしくは両面の塗布量の合計とは、プライされたティシュペーパーのシートの単位面積当たりの塗布量の合計であり、各シートの塗布量を加算したものとする。
【0085】
<原紙>
原紙を構成するパルプは、NBKP50%、LBKP50%とした。また、プライ加工前の原紙は、坪量が13.5g/m2、厚さが150μm(1プライ)であり、クレープ率19%のものを使用した。
【0086】
<薬液>
薬液は、粘度が300mPa・s(40℃)となるように調製した。
【0087】
<ティシュペーパーの性能比較>
下記の方法により製造したティシュペーパーの実施例及び比較例について、性能試験を実施した。
実施例:前記原紙よりなる連続シートを積層して2層とし、一方の面に1.7g/m2、他方の面に2.3g/m2の薬液を塗布し、コンタクトエンボスを付与した後、巻き取りと24時間の静置を行った。
比較例:オフライン塗布装置により薬液を塗布した後、15時間後に連続シートを重ねて2層とし、コンタクトエンボスを付与した。薬液塗布量は両面で4.0g/m2とした。
実施例及び比較例のティシュペーパーの性能評価及び官能評価の結果を表3に示した。性能評価及び官能評価の方法は以下の通りである。
【0088】
<ウェブ嵩>
ティシュペーパーの束の上に、重さ30g、130mm×250mmの大きさのプラスチック板を載せ、四隅の高さを平均してウェブ嵩とした。
<やわらかさ(ソフトネス)>
ハンドルオメーター法(JIS L 1096E)に準じて測定した。
【0089】
<官能評価>
実施例及び比較例に係るティシュペーパーについて、柔らかさ、厚み感、総合評価に関する官能評価を行った。官能評価は5段階で行い、その判断基準は下記の通りとした。表3に示す官能評価の値は、15人の検査員による官能評価の平均値である。
〈柔らかさ〉
5・・・非常に柔らかい。
4・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な柔らかさより柔らかい。
3・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な柔らかさを有する。
2・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な柔らかさより硬い。
1・・・硬さを感じる。
〈厚み感〉
5・・・顕著な厚みを感じる。
4・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な厚みより厚く感じる。
3・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な厚みである。
2・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な厚みより薄く感じる。
1・・・薄く感じる。
〈総合評価〉
5・・・非常に良好な使用感である。
4・・・良好な使用感である。
3・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な使用感である。
2・・・薬液塗布ティシュペーパーとして期待される平均的な使用感より使用感がやや劣る。
1・・・使用感が悪い。
【0090】
【表3】

【0091】
表3に示した通り、2プライのティシュペーパーである実施例と比較例とを比較すると、米坪はほぼ同様であるにも関わらず、紙厚及びウェブ嵩は実施例が有意に高い値を示した。さらに、実施例の方がより柔軟性を有することが示された。官能性評価においても、やわらかさ、厚み感、総合評価の全てにおいて実施例が比較例を上回る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、マルチスタンド式インターフォルダで用いられるティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造に適用できるものである。
【符号の説明】
【0093】
51・・・プライ手段(積層工程)
52・・・カレンダー手段(平滑化工程)
53・・・薬液塗布手段(薬液塗布工程)
54・・・コンタクトエンボス手段(コンタクトエンボス工程)
55・・・スリット手段(スリット工程)
56・・・巻き取り手段(巻き取り工程)
S11、S12・・・一次連続シート
S2・・・積層連続シート
JR・・・一次原反ロール
R・・・二次原反ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層工程と、
積層連続シートに対して薬液を付与する薬液塗布工程と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを同時に形成する巻取り工程とを有し、
薬液塗布工程がインクジェット形式によって薬液を噴射する工程であり、積層連続シートの各表面に対しインクジェット形式によって薬液を噴射してそれぞれ薬液を付与することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項2】
薬液塗布工程とスリット工程との間に、受けロールとコロとの間で積層連続シートを挟んで、積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状の接合部分を形成する接合工程を設け、
前記薬液塗布工程が、それぞれインクジェット形式によって薬液を噴射する少なくとも2つの薬液付与部により薬液を付与する工程とされ、一方の薬液付与部が前記コロと接するシートの側に位置し、他方の薬液付与部が他のシートの側に位置していて、一方の薬液付与部の塗布量を他方の薬液付与部の塗布量より少なくすることを特徴とする請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項3】
前記薬液塗布工程においてインクジェット形式とされて薬液が噴射されるインクジェットヘッドが用いられ、
このインクジェットヘッドが、
複数のノズル孔を並べて設けているノズル板と、
ノズル孔から射出する為の薬液を一時的に貯める流体室と、
この流体室を挟んでノズル板と対向する部分に配置された振動板と、
この振動板に当接して流体室に配置される圧電素子と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−206070(P2011−206070A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73715(P2010−73715)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】