説明

テトラサイクリン化合物の11a,12−誘導体

11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物が記載される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、内容全体が参照として本明細書に組み入れられる、2005年2月4日付けで出願した米国仮特許出願第60/650,031号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
テトラサイクリン系抗生物質の開発は、世界の多くの地域から収集した土壌標本を、殺菌および/または静菌組成物を産生することができる微生物の有無に関して系統的にスクリーニングした直接の産物であった。これらの新規化合物の最初のものは、1948年にクロルテトラサイクリンの名前で紹介された。2年後、オキシテトラサイクリンが利用できるようになった。これらの化合物の化学構造の解明によって、それらが類似であることが確認され、1952年にこのグループの第三のメンバー、すなわちテトラサイクリンが産生される分析的基礎となった。初期のテトラサイクリンには存在した環結合メチル基が存在しない新しいファミリーのテトラサイクリン化合物は、1957年に調製され、1967年に販売されるようになり、1972年にはミノサイクリンが用いられるようになった。
【0003】
最近、多様な治療条件および投与経路で有効な新規テトラサイクリン抗生物質組成物を開発するために研究努力が集中して行われている。最初に導入されたテトラサイクリン化合物と同等またはそれより有効であることが証明される可能性がある新規テトラサイクリン誘導体も同様に研究されている。例として、米国特許第2,980,584号(特許文献1);同第2,990,331号(特許文献2);同第3,062,717号(特許文献3);同第3,165,531号(特許文献4);同第3,454,697号(特許文献5);同第3,557,280号(特許文献6):同第3,674,859号(特許文献7);同第3,957,980号(特許文献8);同第4,018,889号(特許文献9);同第4,024,272号(特許文献10);および同第4,126,680号(特許文献11)が含まれる。これらの特許は、薬学的に活性なテトラサイクリンおよびテトラサイクリン誘導体組成物の範囲の代表的なものである。
【0004】
歴史的に、その最初の開発および導入後まもなく、テトラサイクリンは、リケッチア;多くのグラム陽性菌およびグラム陰性菌;ならびに鼠径リンパ肉芽腫、封入体性結膜炎およびオウム病の起因菌に対して薬理学的に非常に有効であることが判明した。したがって、テトラサイクリンは、「広域スペクトル」抗生物質として知られるようになった。その後、そのインビトロ抗菌活性、実験的感染症における有効性および薬理学的特性が確立されて、テトラサイクリンは一つのクラスとして、治療目的に広く用いられるようになった。しかし、主要なおよび少数の病気および疾患にテトラサイクリンをこのように幅広く使用したことから、共生および病原性の双方(例えば、肺炎球菌(pneumococci)とサルモネラ)の非常に感受性の高い細菌種においてもこれらの抗生物質に対する耐性が直ちに出現した。テトラサイクリン耐性菌の出現によって、選択される抗生物質としてのテトラサイクリンとテトラサイクリン類似体組成物の使用は全般的に減少した。
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,980,584号
【特許文献2】米国特許第2,990,331号
【特許文献3】米国特許第3,062,717号
【特許文献4】米国特許第3,165,531号
【特許文献5】米国特許第3,454,697号
【特許文献6】米国特許第3,557,280号
【特許文献7】米国特許第3,674,859号
【特許文献8】米国特許第3,957,980号
【特許文献9】米国特許第4,018,889号
【特許文献10】米国特許第4,024,272号
【特許文献11】米国特許第4,126,680号
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
1つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、12-デヒドロテトラサイクリン化合物に関する。さらなる態様において、本発明は、式(I)のテトラサイクリン化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグおよび鏡像異性体に関する:

式中、
R1は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アミド、アルキルアミノ、アミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、複素環、ヒドロキシ、またはハロゲンであり、任意でR2に結合して環を形成してもよく;
R2は水素、アルキル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、チオール、シアノ、ニトロ、アシル、ホルミル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、複素環、または非存在であり、任意でR1に結合して環を形成してもよく;
R2'、R2''、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R3、R10およびR12はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、またはプロドラッグ部分であり;
R4およびR4'はそれぞれ独立して、NR4aR4b、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、または水素であり;
R5およびR5'はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、またはアリールカルボニルオキシであり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
R7は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR7C)0〜1C(=W')WR7aであり;
R8は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR8C)0〜1C(=E')ER8aであり;
R9は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR9C)0〜1C(=Z')ZR9aであり;
R7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R7f、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R8f、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、およびR9fはそれぞれ独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R13は水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
EはCR8dR8e、S、NR8bまたはOであり;
E'はO、NR8f、またはSであり;
QはR1'およびR2が非存在である場合には二重結合であり、QはR1'およびR2がそれぞれ独立して、水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ホルミル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、または複素環である場合には単結合であり;
WはCR7dR7e、S、NR7bまたはOであり;
W'はO、NR7f、またはSであり;
XはCHC(R13Y'Y)、C=CR13Y、CR6'R6、S、NR6、またはOであり;
Y'およびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
ZはCR9dR9e、S、NR9bまたはOであり;
Z'はO、S、またはNR9fである。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも部分的には、式(II)のテトラサイクリン化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステルおよび鏡像異性体に関する:

式中、
R1は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アミド、アルキルアミノ、アミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、複素環、ヒドロキシ、またはハロゲンであり;
R2'、R2''、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R3、R10およびR12はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、またはプロドラッグ部分であり;
R4はNR4aR4b、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、または水素であり;
R5およびR5'はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、またはアリールカルボニルオキシであり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
R7は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR7C)0〜1C(=W')WR7aであり;
R8は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR8C)0〜1C(=E')ER8aであり;
R9は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR9C)0〜1C(=Z')ZR9aであり;
R7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R7f、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R8f、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、およびR9fはそれぞれ独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R13は水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
EはCR8dR8e、S、NR8bまたはOであり;
E'はO、NR8f、またはSであり;
WはCR7dR7e、S、NR7bまたはOであり;
W'はO、NR7f、またはSであり;
XはCHC(R13Y'Y)、C=CR13Y、CR6'R6、S、NR6、またはOであり;
Y'およびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
ZはCR9dR9e、S、NR9bまたはOであり;
Z'はO、S、またはNR9fである。
【0008】
本発明は同様に、例えば、被験体においてテトラサイクリン応答性状態を治療する方法を含む。この方法は、本発明のテトラサイクリン化合物(例えば、本明細書に記述される式I、II、またはそれ以外のいずれか1つの化合物)の有効量を被験体に投与する段階を含む。
【0009】
本発明は同様に、少なくとも一つには、本発明のテトラサイクリン化合物(例えば、本明細書に記述される式I、II、またはそれ以外のいずれか1つの化合物)の有効量と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0010】
本発明は同様に、少なくとも一つには、デヒドロテトラサイクリン化合物を合成する方法に関する。この方法は、テトラサイクリン化合物を還元剤の有効量と接触させて12-ヒドロキシテトラサイクリン化合物を形成させる段階;および12-ヒドロキシテトラサイクリン化合物を脱水剤と接触させて、デヒドロテトラサイクリン化合物を形成させる段階を含む。
【0011】
本発明は同様に、少なくとも一つには、デヒドロテトラサイクリン化合物をC11a-C12開裂テトラサイクリン化合物が形成されるような、開裂試薬と接触させる段階により、C11a-C12開裂テトラサイクリン化合物を合成する方法に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、置換テトラサイクリン化合物が形成されるように、デヒドロテトラサイクリン化合物を反応剤と接触させる段階により、置換テトラサイクリン化合物を合成する方法に関する。
【0013】
発明の詳細な説明
1. デヒドロテトラサイクリン化合物
本発明は、少なくとも部分的には、テトラサイクリンの新規11a位および/または12位誘導体、ならびに11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物を製造する方法に関する。
【0014】
「テトラサイクリン化合物」という用語は、テトラサイクリンと同様の環構造を有する多くの化合物を含む。テトラサイクリン化合物の例としては、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ケロカルジン(chelocardin)、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、サンサイクリン、メタサイクリン、アピサイクリン、クロモサイクリン、ガメサイクリン(guamecycline)、メグルサイクリン(meglucycline)、メフィルサイクリン(mepylcycline)、ペニメピサイクリン(penimepicycline)、ピパサイクリン(pipacycline)、エタモサイクリン(etamocycline)、およびペニモサイクリン(penimocycline)が挙げられる。類似の4環構造を含むその他の誘導体および類似体も含まれる。この用語には4-デジメチルアミノ誘導体が含まれる。表1は、テトラサイクリンおよびいくつかの公知のテトラサイクリン誘導体を表す。テトラサイクリン化合物は、任意の位置で非置換であっても、または例えば環の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12aもしくは13位でさらに置換されてもよい。表1に示される各テトラサイクリン化合物のC12位を矢印で指し示す。
【0015】
【表1】

【0016】
本発明の方法を使用して修飾され得るその他のテトラサイクリン化合物は、6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;テトラサイクリノ-ピラゾール;7-クロロ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;4-ヒドロキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;12α-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;5-ヒドロキシ-6α-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;4-デジメチルアミノ-12α-デオキシ無水テトラサイクリン;7-ジメチルアミノ-6-デメチル-6-デオキシ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;テトラサイクリノニトリル;4-オキソ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン4,6-ヘミケタール;4-オキソ-11a Cl-4-デジメチルアミノテトラサイクリン-4,6-ヘミケタール;5a,6-無水-4-ヒドラゾン-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;4-ヒドロキシイミノ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;4-ヒドロキシイミノ-4-デジメチルアミノ 5a,6-無水テトラサイクリン;4-アミノ-4-デジメチルアミノ-5a,6-無水テトラサイクリン;4-メチルアミノ-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;4-ヒドラゾノ-11a-クロロ-6-デオキシ-6-デメチル-6-メチレン-4-デジメチルアミノテトラサイクリン;テトラサイクリン四級アンモニウム化合物;無水テトラサイクリンベタイン;4-ヒドロキシ-6-メチルプレテトラミド(pretetramides);4-ケトテトラサイクリン;5-ケトテトラサイクリン;5a,11aデヒドロテトラサイクリン;11a Cl-6,12ヘミケタールテトラサイクリン;11a Cl-6-メチレンテトラサイクリン;6,13ジオールテトラサイクリン;6-ベンジルチオメチレンテトラサイクリン;7,11a-ジクロロ-6-フルオロ-メチル-6-デオキシテトラサイクリン;6-フルオロ(α)-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン;6-フルオロ(β)-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン;6-αアセトキシ-6-デメチルテトラサイクリン;6-βアセトキシ-6-デメチルテトラサイクリン;7,13-エピチオテトラサイクリン;オキシテトラサイクリン;テトラサイクリンの11aハロゲン;テトラサイクリンの12aホルミルおよびその他のエステル;テトラサイクリンの5,12aエステル;テトラサイクリンの10,12a-ジエステル;12-a-デオキシ無水テトラサイクリン;6-デメチル-12a-デオキシ-7-クロロ無水テトラサイクリン;B-ノルテトラサイクリン;7-メトキシ-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン;6-デメチル-6-デオキシ-5a-エピテトラサイクリン;8-ヒドロキシ-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン;モナルデン(monardene);クロモサイクリン;5aメチル-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン;6-オキサテトラサイクリン、ならびに6チアテトラサイクリンを含むが、これらに限定されない。本発明のデヒドロテトラサイクリン化合物を生成するために使用され得る、他のテトラサイクリン化合物の例は、それぞれ本明細書に参照として組み入れられる、刊行された米国特許出願公開第20040002481号および同第20050282787号に記載されたものを含む。
【0017】
「12-デヒドロテトラサイクリン化合物」または「12位テトラサイクリン誘導体」という用語は、C12位にヒドロキシ以外の置換基および/または11a位に置換基を含んだテトラサイクリン化合物を含む。ある態様において、デヒドロテトラサイクリン化合物は、デヒドロテトラサイクリン(例えば、R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがメチルであり、R4'、R5、およびR5'が水素であり、およびXがCR6R6'であり、ここでR6はメチルでありかつR6'はヒドロキシである);デヒドロドキシサイクリン(例えば、R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがメチルであり、R5がヒドロキシルであり、R4'およびR5'が水素であり、およびXがCR6R6'であり、ここでR6はメチルでありかつR6'は水素である);デヒドロミノサイクリン(R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがメチルであり;R4'、R5'、およびR5が水素であり、およびXがCR6R6'であり、ここでR6およびR6'は水素原子であり、かつR7はジメチルアミノである);または、デヒドロサンサイクリン(R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがメチルであり;R4'、R5'、およびR5が水素であり、およびXがCR6R6'であり、ここでR6およびR6'は水素原子である)。1つの態様において、R4およびR4'はそれぞれ、水素またはカルボニル基の酸素である。用語は、式(I)および(II)の化合物を含む。
【0018】

式中、
R1は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アミド、アルキルアミノ、アミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、複素環、ヒドロキシ、またはハロゲンであり、任意でR2に結合して環を形成してもよく;
R2は水素、アルキル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、チオール、シアノ、ニトロ、アシル、ホルミル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、複素環、または非存在であり、任意でR1に結合して環を形成してもよく;
R2'、R2''、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R3、R10およびR12はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、またはプロドラッグ部分であり;
R4およびR4'はそれぞれ独立して、NR4aR4b、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、または水素であり;
R5およびR5'はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、またはアリールカルボニルオキシであり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
R7は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR7C)0〜1C(=W')WR7aであり;
R8は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR8C)0〜1C(=E')ER8aであり;
R9は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR9C)0〜1C(=Z')ZR9aであり;
R7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R7f、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R8f、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、およびR9fはそれぞれ独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R13は水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
EはCR8dR8e、S、NR8bまたはOであり;
E'はO、NR8f、またはSであり;
QはR1'およびR2が非存在である場合には二重結合であり、QはR1'およびR2がそれぞれ独立して、水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ホルミル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、または複素環である場合には単結合であり;
WはCR7dR7e、S、NR7bまたはOであり;
W'はO、NR7f、またはSであり;
XはCHC(R13Y'Y)、C=CR13Y、CR6'R6、S、NR6、またはOであり;
Y'およびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
ZはCR9dR9e、S、NR9bまたはOであり;
Z'はO、S、またはNR9fである、
式(I)、ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【0019】
別の態様において、本発明は、式(II)のテトラサイクリン化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステルおよび鏡像異性体に関する:

式中、
R1は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アミド、アルキルアミノ、アミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、複素環、ヒドロキシ、またはハロゲンであり;
R2'、R2''、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R3、R10およびR12はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、またはプロドラッグ部分であり;
R4はNR4aR4b、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、または水素であり;
R5およびR5'はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、またはアリールカルボニルオキシであり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
R7は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR7C)0〜1C(=W')WR7aであり;
R8は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR8C)0〜1C(=E')ER8aであり;
R9は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR9C)0〜1C(=Z')ZR9aであり;
R7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R7f、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R8f、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、およびR9fはそれぞれ独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R13は水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
EはCR8dR8e、S、NR8bまたはOであり;
E'はO、NR8f、またはSであり;
WはCR7dR7e、S、NR7bまたはOであり;
W'はO、NR7f、またはSであり;
XはCHC(R13Y'Y)、C=CR13Y、CR6'R6、S、NR6、またはOであり;
Y'およびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
ZはCR9dR9e、S、NR9bまたはOであり;
Z'はO、S、またはNR9fである。
【0020】
別の態様において、式IまたIIのテトラサイクリン化合物は、R2'、R3、R10、R11、およびR12がそれぞれ水素またはプロドラッグ部分であり;R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキルであり;XがCR6R6'であり;ならびにR2''、R4'、R5、R5'、R6、およびR6'がそれぞれ水素である、12-デヒドロサンサイクリン化合物である。
【0021】
別の態様において、式IまたはIIのテトラサイクリン化合物は、R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキルであり;R5およびR5'が水素であり、ならびにXがCR6R6'であり、ここでR6はメチルであり、かつR6'はヒドロキシである、12-デヒドロテトラサイクリン化合物である。
【0022】
別の態様において、式IまたはIIのテトラサイクリン化合物は、R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキル(例えば、メチル)であり;R5がヒドロキシルであり;XがCR6R6'であり;R6がメチルであり;ならびにR5'およびR6'が水素である、12-デヒドロドキシサイクリン化合物である。
【0023】
別の態様において、式IまたはIIのテトラサイクリン化合物は、R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキル(例えば、メチル)であり;XがCR6R6'であり;R5、R5'、R6およびR6'が水素原子であり、ならびにR7がジメチルアミノである、12-デヒドロミノサイクリン化合物である。
【0024】
ある態様において、本発明は、R1が水素、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、ヒドロキシ、チオール、アミノ、シアノ、アシル、アルコキシ、カルボキシル、アミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、アルキルアミノ、またはテトラサイクリン化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にするその他任意の置換基である、式IまたはIIのテトラサイクリン化合物に関する。
【0025】
別の態様において、本発明は、Qが単結合である式Iのテトラサイクリン化合物に関する。Qが単結合である場合、本発明は、R2が水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、または本発明の化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にするその他任意の置換基である、テトラサイクリン化合物に関する。一つの特定の態様において、本発明は、Qが単結合であり、R1、R1'、およびR2がそれぞれ独立して水素である化合物に関する。別の態様において、本発明は、Qが二重結合である式Iのテトラサイクリン化合物に関する。別の態様において、本発明は、R1およびR2が結合して環を形成しているテトラサイクリン化合物に関する。一つの態様において、R1およびR2は結合して、エポキシド、ラクタム、ラクトン、カルボン酸環、複素環、またはその他の環構造を形成する。一つの態様において、R1およびR2は結合して、3、4、5、6、7、8、または9員環を形成する。
【0026】
さらなる態様において、R9は水素である。別の態様において、R9は置換または非置換アリール(例えば、置換もしくは非置換炭素環、例えば、フェニルもしくはナフチル;または置換もしくは非置換ヘテロアリール)である。R9は同様に、置換もしくは非置換アルケニルまたは置換もしくは非置換アルキニルであってもよい。R9は同様に、複素環またはアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルオキシカルボニルであってもよく、あるいは別の方法で置換されたカルボニル、アシル、アセチル、またはホルミル部分を含んでもよい。
【0027】
別のさらなる態様において、R9は置換または非置換アルキルである。さらなる態様において、R9はアミノアルキル、例えば、アミノメチルである。さらなる態様において、アミノアルキルは、化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にする任意の置換基でさらに置換される。さらなる態様において、アミノアルキル置換基はアルキルアミノメチルである。
【0028】
別の態様において、R9は置換または非置換アミノ、例えば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノなどである。別の態様において、R9はアミドである。さらに別の態様において、R9はシアノ、ハロゲン(例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素など)、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、またはテトラサイクリン化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にするその他任意の置換基である。別の態様において、R9は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第03/079984号;国際公開公報第03/075857号;国際公開公報第02/04406号;または国際公開公報第01/74761号に記述されているR9部分である。
【0029】
さらなる態様において、R7は水素である。別の態様において、R7は置換または非置換アリール(例えば、置換もしくは非置換炭素環、例えば、フェニルもしくはナフチル;または置換もしくは非置換ヘテロアリール)である。R7は同様に、置換もしくは非置換アルケニルまたは置換もしくは非置換アルキニルであってもよい。R7は同様に、複素環またはアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルオキシカルボニルであってもよく、あるいは別の方法で置換されたカルボニル、アシル、アセチル、またはホルミル部分を含んでもよい。
【0030】
別のさらなる態様において、R7は置換または非置換アルキルである。さらなる態様において、R7はアミノアルキル、例えば、アミノメチルである。さらなる態様において、アミノアルキルは、化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にする任意の置換基でさらに置換される。さらなる態様において、アミノアルキル置換基はアルキルアミノメチルである。
【0031】
別の態様において、R7は置換または非置換アミノ、例えば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノなどである。別の態様において、R7はアミドである。さらに別の態様において、R7はシアノ、ハロゲン(例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素など)、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、またはテトラサイクリン化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にするその他任意の置換基である。別の態様において、R7は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第02/04407号、国際公開公報第01/74761号、国際公開公報第03/079984号、または国際公開公報第03/075857号に記述されている7位部分である。
【0032】
さらなる態様において、R8は水素である。別の態様において、R8は置換または非置換アリール(例えば、置換もしくは非置換炭素環、例えば、フェニルもしくはナフチル;または置換もしくは非置換ヘテロアリール)である。R8は同様に、置換もしくは非置換アルケニルまたは置換もしくは非置換アルキニルであってもよい。R8は同様に、複素環またはアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルオキシカルボニルであってもよく、あるいは別の方法で置換されたカルボニル、アシル、アセチル、またはホルミル部分を含んでもよい。
【0033】
別のさらなる態様において、R8は置換または非置換アルキルである。さらなる態様において、R8はアミノアルキル、例えば、アミノメチルである。さらなる態様において、アミノアルキルは、化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にする任意の置換基でさらに置換される。さらなる態様において、アミノアルキル置換基はアルキルアミノメチルである。
【0034】
別の態様において、R8は置換または非置換アミノ、例えば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノなどである。別の態様において、R8はアミドである。さらに別の態様において、R8はシアノ、ハロゲン(例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素など)、ニトロ、ヒドロキシル、アルコキシ、またはテトラサイクリン化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にするその他任意の置換基である。別の態様において、R8は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第02/12170号、国際公開公報第02/04404号、または国際公開公報第03/079984号に記述されているR8部分である。
【0035】
別の態様において、R3、R10、およびR12はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アシル、アリール、またはアリールアルキルである。その他のR3、R10、およびR12部分は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/619,653号に記述されている。R2'およびR2''部分のその他の例は、米国公開出願第20040002481号に記述されている。
【0036】
一つの態様において、テトラサイクリン化合物は、下記式の12-デヒドロドキシサイクリン化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、もしくはプロドラッグである。

【0037】
「アルキル」という用語には、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、t-ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族が含まれる。アルキルという用語にはさらに、炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素の代わりに酸素、窒素、硫黄、またはリン原子をさらに含みうるアルキル基が含まれる。特定の態様において、直鎖または分岐鎖アルキルはその骨格に炭素原子6個またはそれ未満を有し(例えば、直鎖の場合C1-C6、分岐鎖の場合C3-C6)、より好ましくは4個またはそれ未満を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に炭素原子3〜8個を有し、より好ましくは環構造に炭素5または6個を有する。用語C1-C6には、炭素原子1〜6個を含むアルキル基が含まれる。
【0038】
さらに、アルキルという用語には、「非置換アルキル」と「置換アルキル」の双方が含まれ、後者は炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素上の水素の代わりに置換基を有するアルキル部分を意味する。そのような置換基には、例えばアルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が含まれうる。シクロアルキルはさらに、例えば上記の置換基によって置換することができる。「アルキルアリール」または「アリールアルキル」部分は、アリールによって置換したアルキルである(例えば、フェニルメチル(ベンジル))。「アルキル」という用語にはまた、天然および非天然のアミノ酸の側鎖が含まれる。
【0039】
「アリール」という用語には、ヘテロ原子0〜4個を含んでもよい5-および6-員環の単環式芳香族基を含む基、例えばベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等が含まれる。さらに、「アリール」という用語には、多環式アリール基、例えば、三環式、二環式、例えばナフタレン、ベンズオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキソフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフスリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンが含まれる。環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリール複素環」「複素環」、または「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」とも呼ばれる。芳香環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分によって一つまたは複数の環の位置で置換することができる。アリール基は、多環(例えばテトラリン)を形成するために、芳香族でない脂環式または複素環に融合または架橋することができる。
【0040】
「アルケニル」という用語には、上記のアルキルと長さおよび可能性がある置換が類似であるが、少なくとも一つの二重結合を含む不飽和脂環式基が含まれる。
【0041】
例えば、「アルケニル」という用語には、直鎖アルケニル基(例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル、またはアルケニル置換シクロアルケニル基およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基が含まれる。アルケニルという用語には、さらに、炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素の代わりに酸素、窒素、硫黄、またはリン原子を含むアルケニル基が含まれる。特定の態様において、直鎖または分岐鎖アルケニル基は、その骨格に炭素原子6個またはそれ未満を有する(例えば、直鎖の場合C2-C6、分岐鎖の場合C3-C6)。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造に炭素原子3〜8個を有してもよく、より好ましくは環構造に炭素5または6個を有する。C2-C6という用語には、炭素原子2〜6個を含むアルケニル基が含まれる。
【0042】
さらに、アルケニルという用語には、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の双方が含まれ、後者は炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素原子上の水素の代わりに置換基を有するアルケニル部分を意味する。そのような置換基は例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分となりうる。
【0043】
「アルキニル」という用語には、長さおよび可能性がある置換が上記のアルキルと類似であるが、少なくとも一つの三重結合を含む不飽和脂肪族基が含まれる。
【0044】
例えば、「アルキニル」という用語には、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分岐鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基が含まれる。アルキニルという用語にはさらに、炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素の代わりに酸素、窒素、硫黄、またはリン原子を含むアルキニル基が含まれる。特定の態様において、直鎖または分岐鎖アルキニル基は、その骨格に炭素原子6個またはそれ未満を有する(例えば、直鎖の場合C2-C6、分岐鎖の場合C3-C6)。C2-C6という用語には、炭素原子2〜6個を含むアルキニル基が含まれる。
【0045】
さらに、アルキニルという用語には、「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の双方が含まれ、後者は炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素上の水素の代わりに置換基を有するアルキニル基を意味する。そのような置換基には、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が含まれうる。
【0046】
炭素数が明記されていなければ、本明細書において用いる「低級アルキル」は、先に定義したアルキル基であるがその骨格構造に炭素原子1〜5個を有する基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば炭素原子2〜5個の鎖長を有する。
【0047】
「アシル」という用語には、アシルラジカル(CH3CO-)またはカルボニル基を含む化合物および部分が含まれる。これには置換アシル部分が含まれる。「置換アシル」という用語には、一つまたは複数の水素原子がアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分によって置換されているアシル基が含まれる。
【0048】
「アシルアミノ」という用語には、アシル部分がアミノ基に結合している部分が含まれる。例えば、この用語には、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基が含まれる。
【0049】
「アロイル」という用語には、カルボニル基に結合したアリールまたはヘテロ芳香族部分を有する化合物および部分が含まれる。アロイル基の例として、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシ等が含まれる。
【0050】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」という用語には、炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素の代わりに酸素、窒素、または硫黄原子をさらに含む、上記のアルキル基が含まれる。
【0051】
「アルコキシ」という用語には、酸素原子に共有結合した置換および非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基が含まれる。アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が含まれる。置換アルコキシ基の例として、ハロゲン化アルコキシ基が含まれる。アルコキシ基は、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分のような基によって置換することができる。ハロゲン置換アルコキシ基の例として、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等が含まれる。
【0052】
「アミン」または「アミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも一つの炭素またはヘテロ原子に共有結合している化合物が含まれる。「アルキルアミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも一つのさらなるアルキル基に結合している基および化合物を含む。「ジアルキルアミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも二つのさらなるアルキル基に結合している基が含まれる。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語には、窒素原子がそれぞれ、少なくとも一つまたは二つのアリール基に結合している基が含まれる。「アルキルアリールアミノ」「アルキルアミノアリール」、または「アリールアミノアルキル」という用語には、少なくとも一つのアルキル基および少なくとも一つのアリール基に結合しているアミノ基が含まれる。「アルカミノアルキル」または「アルキルアミノアルキル」という用語は、アルキル基にも結合している窒素原子に結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を意味する。
【0053】
「アミド(amide)」または「アミノカルボニル」という用語には、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物または部分が含まれる。この用語には、カルボニル基に結合したアミノ基に結合したアルキル、アルケニル、アリール、またはアルキニル基を含む「アルカミノカルボニル」または「アルキルアミノカルボニル」基が含まれる。これには、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合したアミノ基に結合したアリールまたはヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボニル基が含まれる。「アルキルアミノカルボニル」、「アルケニルアミノカルボニル」、「アルキニルアミノカルボニル」、「アリールアミノカルボニル」「アルキルカルボニルアミノ」、「アルケニルカルボニルアミノ」、「アルキニルカルボニルアミノ」および「アリールカルボニルアミノ」は、「アミド」という用語に含まれる。アミドにはまた、ウレア基(アミノカルボニルアミノ)およびカルバメート(オキシカルボニルアミノ)が含まれる。
【0054】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語には、二重結合によって酸素原子に結合した炭素を含む化合物および部分が含まれる。カルボニルはさらに、本発明の化合物がその意図される機能を行うことができる如何なる部分によっても置換されうる。例えば、カルボニル部分は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アミノ等によって置換してもよい。カルボニルを含む部分の例として、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等が含まれる。
【0055】
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語には、二重結合によって硫黄原子に結合した炭素を含む化合物および部分が含まれる。
【0056】
「エーテル」という用語には、異なる二つの炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物または部分が含まれる。例えば、この用語には、別のアルキル基と共有結合した酸素原子に共有結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を意味する「アルコキシアルキル」が含まれる。
【0057】
「エステル」という用語には、カルボニル基の炭素に結合した酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含む化合物および部分が含まれる。「エステル」という用語には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等のようなアルコキシカルボニル基が含まれる。アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は上記の定義の通りである。
【0058】
「チオエーテル」という用語には、異なる二つの炭素またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含む化合物および部分が含まれる。チオエーテルの例として、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニル、およびアルクチオアルキニルが含まれるが、これらに限定されるものではない。「アルクチオアルキル」という用語には、アルキル基に結合した硫黄原子に結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を有する化合物が含まれる。同様に、「アルクチオアルケニル」および「アルクチオアルキニル」という用語は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基がアルキニル基に共有結合した硫黄原子に結合している化合物または部分を意味する。
【0059】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語には、-OHまたは-O-を有する基が含まれる。
【0060】
「ハロゲン」という用語には、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等が含まれる。「過ハロゲン化」という用語は一般的に、全ての水素がハロゲン原子に置換されている部分を意味する。
【0061】
「ポリシクリル」または「多環式ラジカル」という用語は、二つまたはそれ以上の炭素が二つの隣接する環と共通している、例えば環が「融合環」である二つまたはそれ以上の環状環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリル)を意味する。非隣接原子に結合している環は「架橋」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミド、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分によって置換することができる。
【0062】
「ヘテロ原子」という用語には、炭素または水素以外の如何なる元素の原子も含まれる。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄、およびリンである。
【0063】
「プロドラッグ部分」という用語には、インビボで代謝されうる部分およびインビボで都合よくエステル化されたあるいはそうでなければ保護されたままでありうる部分が含まれる。好ましくは、プロドラッグ部分は、インビボでエステラーゼまたは別の代謝によってヒドロキシル基または別の都合のよい基に代謝される。プロドラッグおよびその使用例は当業者に周知である(例えば、バージ(Berge)ら、(1977)、「薬学的な塩(Pharmaceutical Salts)」、J. Pharm. Sci. 66:1〜19)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離および精製のあいだにインサイチューで、またはその遊離の酸の形の精製化合物またはヒドロキシルを適したエステル化剤と個々に反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による処置によってエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例として、置換および非置換の分岐または非分岐低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ-低級アルキル-アミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、置換(例えば、メチル、ハロ、またはメトキシ置換基による)アリールおよびアリール-低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ-低級アルキルアミド、およびヒドロキシアミドが含まれる。
【0064】
本発明のテトラサイクリン化合物のいくつかの構造には、不斉炭素原子が含まれることが注目される。したがって、そうでないことを明記している場合を除き、そのような非対称性に由来する異性体(例えば、全てのエナンチオマーおよびジアステレオマー)が本発明の範囲に含まれる。そのような異性体は、古典的な分離技術および立体化学的に制御された合成によって実質的に純粋に得ることができる。さらに、本出願において考察した構造、別の化合物および部分には同様に、その全ての互変異性体が含まれる。
【0065】
2. 11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物を合成する方法
テトラサイクリン化合物を11a位および12位で誘導体化する方法は、C12ヒドロキシル基を生成するC1ケト-エノラートの還元を介した化学修飾を通じて発見された。スキーム1に示されるとおり、このヒドロキシル基を脱水して、反応性α,β-不飽和カルボニル官能基を有するC11a-C12デヒドロテトラサイクリンを生成させる。

【0066】
一つの態様において、本発明は11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物を合成する方法に関する。この方法は、テトラサイクリン化合物を還元剤の有効量と接触させて11a,12-ヒドロキシテトラサイクリン化合物を形成させる段階、および11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物が形成されるように、11a,12-ヒドロキシテトラサイクリン化合物を脱水剤と接触させる段階を含む。
【0067】
「還元剤」という用語は、C12ケト-エノラートをヒドロキシル基に還元できる作用物質を含む。還元剤の例はComprehensive Organic Transformations (「COT」) 第2版、Larock, 304, 305に記述されている。一つの態様において、還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。
【0068】
脱水剤も当技術分野において公知である。脱水剤の例は、参照として本明細書に組み入れられるComprehensive Organic Transformations (「COT」) 第2版、Larock, 304, 305に記述されている。一つの態様において、脱水剤は酸、例えば、トリフルオロ酢酸および/または加熱である。
【0069】
一つの態様において、テトラサイクリン化合物は、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、またはサンサイクリンである。別の態様において、テトラサイクリン化合物は、例えば、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第03/079983号、国際公開公報第02/12170号、国際公開公報第02/04407号、国際公開公報第02.04406号、国際公開公報第02/04405号、国際公開公報第02/04404号、国際公開公報第01/74761号、国際公開公報第03/079984号、国際公開公報第03/075857号、国際公開公報第03/057169号、国際公開公報第02/072545号、国際公開公報第02/072506号、米国特許出願第10/619,653号、米国特許出願第09/895,857号;米国特許出願第09/895,812号;米国特許第5,326,759号;米国特許第5,328,902号;米国特許第5,495,031号;米国特許第5,495,018号;米国特許第5,495,030号;米国特許第5,495,032号;米国特許第5,512,553号;米国特許第5,675,030号;米国特許第5,843,925号;米国特許第5,886,175号;米国特許第6,165,999号;米国特許第3,239,499号;国際公開公報第95/22529号;米国特許第5,064,821号;米国特許第5,589,470号;米国特許第5,811,412号;米国出願公開第20040002481号;または米国出願公開第20050282787号に記述されているテトラサイクリン化合物である。
【0070】
本発明のさまざまなテトラサイクリン化合物は、本発明の方法を用いて合成することができる。本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、求核試薬などの様々な反応剤をデヒドロテトラサイクリンと反応させて、本発明のテトラサイクリン化合物を生成させることにより合成することができる。本発明の方法を用いて合成できる置換テトラサイクリンのいくつかの例としては、スキーム2に示されるとおり、R1位にC12-炭素-炭素、C12-炭素-窒素およびC12-炭素-酸素またはC12-炭素-ヘテロ原子結合を有する化合物が挙げられる。

【0071】
スキーム2において、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、およびR1gはそれぞれ独立して、水素、アルキル、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、カルボニル、アシル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アミド、ニトロ、または本発明のテトラサイクリン化合物がその対象とする機能を果たすのを可能にできる、本明細書に記述されるその他任意の置換基である。
【0072】
本発明のテトラサイクリン化合物は、当技術分野において公知の方法および反応剤を用いてα,β-不飽和ケトンと反応させることにより合成することができる。例えば、アニオン、カルバニオンおよびアルカリ金属は、さまざまなR1置換基を有する本発明のテトラサイクリン化合物を生ずるように反応する反応剤である(スキーム3)。さまざまなR1置換基を持った本発明の化合物を合成するために使用できるその他の反応剤としては、錯体化リガンドを有するまたは有していないアルカリ金属アセチリド、リチウムジアルキル銅酸化物、リチウムジアリール銅酸化物が挙げられる。R1置換基を有するテトラサイクリン化合物は、アニオン、例えば、ケトン、アルデヒドおよび同様のものから生じたアニオンなどの反応剤を用いて形成させることもできる。反応剤としては、グリニャール試薬や有機リチウム試薬やイリド試薬などの有機金属試薬(COT、351-401、スキーム3)も挙げられる。

【0073】
使用できるその他の反応剤としては、エノール-エステル(COT, 1485-1487)およびエノールシラン(COT, 1488-1505)反応で使われるものが挙げられる。その他の反応剤としては水和剤が挙げられる。水和を利用して、R1ヒドロキシル基を導入することができる(COT, 991-995)。R1がヒドロキシルである本発明のテトラサイクリン化合物は、ヒドロホウ素化、その後アルコールへの酸化によっても形成させることができる(COT, 1005-1008)。置換カルボニルをR1位に有するテトラサイクリン化合物は、カルボニル化によって合成することができる(COT, 1009-1011, 1690-1693)。
【0074】
アルキルおよびその他の置換基をR1位に有する本発明のテトラサイクリン化合物は、さまざまな反応剤を用い、フリーラジカル、MichaelおよびMichael様付加反応、ならびに有機ホウ素反応を介して合成することができる。その他の可能な反応剤としては、本発明のさまざまなテトラサイクリン化合物を合成するために使用できる触媒であって、アルミニウム、ガリウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、スチルビン(stilbine)、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、亜鉛、水銀、およびその他を含む触媒が挙げられる(COT, 1560-1616)。R1がシアノである本発明のテトラサイクリン化合物は同様に、反応剤を用いて形成させることができる(COT, 1705-1706)。R1がエステルである本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、エステル付加を利用して合成することができる(COT, 1724-1725)。R1がニトリル基を含む本発明のテトラサイクリン化合物は、反応剤としてニトリル付加試薬(COT, 1800-1801)を用いて合成することができる。R1がホルミルまたはその他のカルボニル基であるテトラサイクリン化合物は、反応剤としてヒドロホルミル化試薬(COT, 1363-1380)を用いて合成することができる。
【0075】
R1がアミドである本発明のテトラサイクリン化合物は、アミド抱合(COT, 1701)を介して合成することができる。

【0076】
本発明のテトラサイクリン化合物は、R1が第1級、第2級、または第3級アミンである化合物を含む。反応剤の例としては、第1級および第2級アミンが挙げられる。アミンは当技術分野において公知の技術を用いて形成させることができる(COT, 761-778)。アミノR1置換基を有する本発明のテトラサイクリン化合物は同様に、プロドラッグ形成反応剤とのその反応性に基づいて、プロドラッグを形成させるのに使われてもよい。
【0077】
Qが二重結合であり、R1がアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールである式Iのテトラサイクリン化合物は、例えば、スキーム5に示されるように共役付加反応剤を用いて合成することができる(COT, 1806-1841)。

【0078】
R2がアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、金属アニオン試薬(スキーム6)などの様々な反応剤を用いて、およびエノンのアルキル化(COT, 1546-1557)により合成することができる。

【0079】
R2がヒドロキシまたはカルボニル基であるテトラサイクリン化合物は、不斉ヒドロホウ素化(COT, 1008)を利用して合成されてもよい。
【0080】
本発明のテトラサイクリン化合物は同様に、接触水素化、選択的水素化、エナンチオ選択的水素化、ヒドロホウ素化-プロトン分解、共役還元、還元二量化(COT 第2版、Larock, pg 7-29)、およびカップリング反応(COT, 81)を介した還元などの反応を利用して形成されてもよい。
【0081】
Qが単結合である本発明のその他のテトラサイクリン化合物は、有機ケイ素試薬(COT, 108)、有機ジルコニウム試薬(COT, 114)、有機ニッケル試薬(COT, 116-117)、および有機水銀(COT, 124)試薬などの様々な反応剤を用いて合成することができる。
【0082】
R1およびR2がハロゲンである本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、ハロゲン付加反応(COT, 629-647)により形成させることができる。R1がアルキルでありR2がハロゲンである本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、ハロアルキル化反応(COT, 647-653)により形成させることができる。R1およびR2がヒドロキシルである本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、シス水素化(COT, 996-1001)およびトランス水素化(COT, 1001-1003)により合成することができる。
【0083】
R1およびR2がカルボン酸塩、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アセチル、ヒドロキシルなどである本発明のテトラサイクリン化合物は、例えば、加溶媒水銀化(solvomercuration)および脱水銀化(COT, 1629-1632)反応(スキーム7)を利用して合成することができる。

【0084】
さらなる態様において、本発明は、デヒドロテトラサイクリン化合物をC11a-C12開裂テトラサイクリン化合物が形成されるような、開裂試薬と接触させる段階により、C11a-C12開裂テトラサイクリン化合物を合成する方法に関する。C11a-C12開裂テトラサイクリン化合物の例としては、式IIの化合物が挙げられる。開裂およびオゾン分解試薬はCOT 1210-1215および1630-1634に記述されている。
【0085】
R1およびR2が結合されて環を形成している本発明のテトラサイクリン化合物は、スキーム8に示されるように、アルケンを反応させてラクトンまたはラクタム(COT, 1876-1904)などの複素環を形成させることにより合成することができる。R1およびR2が結合されてエポキシドを形成している本発明のテトラサイクリン化合物も含まれる(COT, 915-927)。

【0086】
本発明のテトラサイクリン化合物は同様に、R1およびR2が結合されて3員(COT, 135)またはそれ以上の員(COT, 136-186)の環を形成している化合物を含む。R1およびR2が結合されて環を形成している本発明のテトラサイクリン化合物は同様に、Diels-Alder反応(COT 537)、ならびにその他の環化反応、ケトンとの反応(COT, 1340-1345)、環付加反応(COT, 1345-1362)および関連する反応(COT, 537-560)を介して合成することができる。本発明の化合物を合成するために利用できるその他の環形成反応としては、hν、またはオキセタンおよびより大きな員環を形成するホウ素試薬を用いたアルケン付加が挙げられる(COT, 913-914, スキーム6)。

【0087】
本発明のテトラサイクリン化合物は同様に、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの位置に置換基を有するテトラサイクリン化合物を含む。例えば、スキーム10では、11a,12-デヒドロドキシサイクリンがR9位でアミノ官能基によって置換されている。この化合物は炎症モデルにおいて活性を保持している。スキーム10は11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物のその9位での誘導体化を示す。

【0088】
本発明のテトラサイクリン化合物はまた、非芳香族二重結合(例えば、Q)を水素化剤に接触させている化合物も含む(スキーム11)。適した水素化剤は、例えば、適切な触媒と組み合わせた水素、ホウ化水素試薬、水素化アルミニウム試薬および水素化物塩(COT, 5-17)を含む。

【0089】
本発明のデヒドロテトラサイクリン化合物の一部分を合成するために部分的に利用できる反応の例としては、例えば、全て参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第03/079983号、国際公開公報第02/12170号、国際公開公報第02/04407号、国際公開公報第02.04406号、国際公開公報第02/04405号、国際公開公報第02/04404号、国際公開公報第01/74761号、国際公開公報第03/079984号、国際公開公報第03/075857号、国際公開公報第03/057169号、国際公開公報第02/072545号、国際公開公報第02/072506号、米国特許出願第10/619,653号、米国特許出願第09/895,857号;米国特許出願第09/895,812号;米国特許第5,326,759号;米国特許第5,328,902号;米国特許第5,495,031号;米国特許第5,495,018号;米国特許第5,495,030号;米国特許第5,495,032号;米国特許第5,512,553号;米国特許第5,675,030号;米国特許第5,843,925号;米国特許第5,886,175号;米国特許第6,165,999号;米国特許第3,239,499号;国際公開公報第95/22529号;米国特許第5,064,821号;米国特許第5,589,470号;米国特許出願公開第2005/0282787;および米国特許第5,811,412号に記述されているものが挙げられる。ある態様において、本発明は同様に、上記の参考文献のそれぞれに開示されているテトラサイクリン化合物のそれぞれの11a,12-デヒドロ誘導体に関する。
【0090】
別の態様において、本発明は、本明細書に記述される方法により合成されるテトラサイクリン化合物に関する。
【0091】
3. デヒドロテトラサイクリン化合物を使用するための方法
本発明はまた、テトラサイクリン応答性状態が治療されるように、本発明のテトラサイクリン化合物(例えば、式I、II、またはその他明細書に記載された化合物)の有効量を被験体に投与することによって、被験体におけるテトラサイクリン応答性状態を治療する方法にも関する。
【0092】
「治療」という用語は、治癒、ならびに、例えばテトラサイクリン応答性状態などの状態、疾病、または疾患の、少なくとも一つの症状の改善を含む。
【0093】
「テトラサイクリン化合物応答性状態」または、「テトラサイクリン応答性状態」は、本発明のテトラサイクリン化合物、たとえば式I、II、またはその他明細書に記載されたテトラサイクリン化合物を投与することにより、治療、予防、またはそうでなければ改善することができる状態を含む。テトラサイクリン化合物応答性状態は、細菌、ウイルス、寄生虫、および真菌の感染(その他のテトラサイクリン化合物に耐性であるものを含む)、癌(たとえば、前立腺、胸部、大腸、肺黒色腫、およびリンパ癌、ならびに米国特許第6,100,248号に記載されたものを含む(これらに限定されない)不必要な細胞の増殖によって特徴づけられるその他の障害)、関節炎、骨粗鬆症、糖尿病、ならびにテトラサイクリン化合物が活性であることが見出されるその他の状態(例えば、米国特許第5,789,395号;第5,834,450号;第6,277,061号、および第5,532,227号を参照されたい(これらのそれぞれは、参照として本明細書に明確に組み入れられる))を含む。本発明の化合物は、下痢、尿路感染症、皮膚および皮膚構造の感染、耳、鼻端および咽喉の感染、創傷感染、乳腺炎などの重要な哺乳類および獣医学の疾患を予防または制御するために使用されることができる。加えて、本発明のテトラサイクリン化合物を使用して新生物を治療するための方法も、含まれる(van der Bozertら、Cancer Res.、48:6686-6690(1988))。さらなる態様において、テトラサイクリン応答性状態は、細菌感染ではない。別の態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、本質的に非抗菌性である。例えば、本発明の非抗菌性テトラサイクリン化合物は、約4μg/mlを上回るMIC値を有しうる(当技術分野で公知のアッセイ法及び/または実施例2に記載のアッセイ法により測定)。テトラサイクリン応答性状態はまた、抗酸化剤の投与により治療可能な状態でありうる。
【0094】
また、テトラサイクリン化合物応答性状態は、炎症性のプロセス関連状態(IPAS)を含む。「炎症性のプロセス関連状態」という用語は、炎症または炎症性の因子(たとえば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、酸化窒素(NO)、TNF、インターロイキン、血漿タンパク質、細胞の防御系、サイトカイン、脂質代謝産物、プロテアーゼ、毒性のラジカル、接着分子、その他)に関与するか、または異常な量、たとえば被験体に有益なように変化させるのに有利でありうる量で存在する領域に存在する状態を含む。炎症性のプロセスは、損傷に対する生組織の反応である。炎症の原因は、物理的損傷、化学物質、微生物、組織ネクローシス、癌、またはその他の薬剤によるものであってもよい。急性の炎症は、持続が短く、ほんの数日だけ続く。しかし、より長く持続する場合、これは慢性の炎症と称してもよい。
【0095】
IPAFは、炎症性の疾患を含む。炎症性の疾患は、一般に熱、発赤、膨潤、疼痛、および機能喪失によって特徴づけられる。炎症性の疾患の原因の例は、微生物の感染(たとえば、細菌性の、および真菌性の感染)、物理的因子(たとえば、熱傷、照射、および傷害)、化学的薬剤(たとえば、毒素および腐食薬物質)、組織ネクローシス、および様々なタイプの免疫反応を含むが、これらに限定されない。
【0096】
炎症性の疾患の例は、骨関節炎、リウマチ様関節炎、急性および慢性の感染(ジフテリアおよび百日咳を含む細菌性のおよび真菌性のもの);急性および慢性の気管支炎、座瘡;静脈洞炎、ならびに鼻風邪を含むその他の呼吸器感染;急性および慢性の胃腸炎および大腸炎;急性および慢性の膀胱炎および尿道炎;急性および慢性の皮膚炎;急性および慢性の結膜炎;急性および慢性の漿膜炎(心外膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎および腱炎);尿毒症性心膜炎;急性および慢性の胆嚢炎;急性および慢性の膣炎;急性および慢性のブドウ膜炎;薬物反応;昆虫刺症;熱傷(熱的な、化学的な、電気的なもの);ならびに日焼けを含むが、これらに限定されない。
【0097】
テトラサイクリン化合物応答性状態はまた、NOに関連した状態を含む。「NOに関連した状態」という用語は、一酸化窒素(NO)または誘導性の一酸化窒素シンターゼ(iNOS)に関与または関連した状態を含む。NOに関連した状態は、異常な量のNOおよび/またはiNOSによって特徴づけられる状態を含む。好ましくは、NOに関連した状態は、本発明のテトラサイクリン化合物、たとえば、式I、II、またはその他明細書に記載された化合物を投与することによって治療することができる。米国特許第6,231,894号;第6,015,804号;第5,919,774号;および第5,789,395号に記載された障害、疾患、および状態も、NOが関連した状態に含まれる。これらの特許のそれぞれの全ての内容は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0098】
NOに関連した状態のその他の例は、マラリア、老化、糖尿、血管発作、神経変性疾患(たとえば、アルツハイマー病およびハンチントン病)、心臓病(たとえば、梗塞形成後の再灌流に関連した傷害)、若年型糖尿病、炎症性疾患、骨関節炎、リウマチ様関節炎、急性、再発性、および慢性の感染症(細菌性の、ウイルス性の、および真菌性のもの);急性および慢性の気管支炎、静脈洞炎、ならびに鼻風邪を含む呼吸器感染;急性および慢性の胃腸炎および大腸炎;急性および慢性の膀胱炎および尿道炎;急性および慢性の皮膚炎;急性および慢性の結膜炎;急性および慢性の漿膜炎(心外膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎、および腱炎);尿毒症性心膜炎;急性および慢性の胆嚢炎;嚢胞性線維症;急性および慢性の膣炎;急性および慢性のブドウ膜炎;薬物反応;昆虫刺症;熱傷(熱的な、化学的な、電気的なもの);ならびに日焼けを含むが、これらに限定されない。
【0099】
また、「炎症性プロセス関連状態」という用語は、1つの態様において、マトリックスメタロプロテイナーゼに関連した状態(MMPAS)を含む。MMPASは、異常な量のMMPまたはMMP活性によって特徴づけられる状態を含む。また、これらには、本発明の化合物、たとえば式I、II、またはその他明細書に記載されたテトラサイクリン化合物を使用して治療されうるテトラサイクリン化合物応答性状態を含む。
【0100】
マトリックスメタロプロテイナーゼに関連した状態(「MMPAS」)の例は、動脈硬化、角膜の潰瘍形成、気腫、骨関節炎、多発性硬化症(Liedtkeら、Ann. Neurol. 1998、44:35-46;Chandlerら、J. Neuroimmunol. 1997、72:155-71)、骨肉腫、骨髄炎、気管支拡張症、慢性肺閉塞性疾患、皮膚および目の疾病、歯周炎、骨粗鬆症、リウマチ様関節炎、潰瘍性大腸炎、炎症性疾患、腫瘍増殖、および浸潤(Stetler-Stevensonら、Annu. Rev. Cell Biol. 1993、9:541-73;Tryggvasonら、Biochim. Biophys. Acta 1987、907:191-217;Liら、Mol. Carcinog. 1998、22:84-89)、転移、急性肺傷害、脳卒中、虚血、糖尿、大動脈または血管の動脈瘤、皮膚組織創傷、ドライアイ、骨および軟骨の分解(Greenwaldら、Bone 1998、22:33-38;Ryanら、Curr. Op. Rheumatol. 1996、8;238-247)を含むが、これらに限定されない。その他のMMPASは、米国特許第5,459,135号;第5,321,017号;第5,308,839号;第5,258,371号;第4,935,412号;第4,704,383号;第4,666,897号、およびRE第34,656号に記載されたものを含み、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0101】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、癌である。本発明のテトラサイクリン化合物が治療するために有用でありうる癌の例は、全ての固体腫瘍、すなわち癌腫、たとえば腺癌および肉腫を含む。腺癌は、腺組織に由来するか、または腫瘍細胞が認識できる腺構造を形成する癌腫である。肉腫は、その細胞が原繊維または同種体様の胚性結合組織に包埋されている腫瘍を広く含む。本発明の方法を使用して治療してもよい癌腫の例は、前立腺癌、胸部、卵巣、精巣、肺、大腸、および胸部の癌腫を含むが、これらに限定されない。本発明の方法は、これらの腫瘍タイプの治療に限定されず、あらゆる器官系に由来するどのような固体腫瘍にも及ぶ。治療可能な癌の例は、大腸癌、膀胱癌、乳癌、黒色腫、卵巣悪性腫瘍、前立腺癌、肺癌、およびその他の様々な癌も含むが、これらに限定されない。また、本発明の方法は、たとえば前立腺、胸部、腎臓、卵巣、精巣、および大腸のものなどの腺癌における癌の増殖の阻害を引き起こす。
【0102】
ある態様において、本発明のテトラサイクリン応答性状態は、癌である。本発明は、癌細胞増殖の阻害が起こるように、すなわち、細胞の増殖、侵襲性、転移、または腫瘍発生率が減少する、遅くなる、もしくは停止するように、テトラサイクリン化合物の有効量を投与することにより、癌に罹患しているか、または罹患する危険のある被験体を治療するための方法に関する。阻害は、炎症性のプロセスの阻害、炎症性のプロセスのダウンレギュレーション、いくつかのその他の機構、または機構の組み合わせから生じてもよい。または、テトラサイクリン化合物は、癌再発を予防するために、たとえば外科的切除もしくは放射線療法後の残留する癌を治療するために有用であってもよい。本発明に従って有用なテトラサイクリン化合物は、これらが、その他の癌治療と組み合わせて実質的に非毒性であるので、特に有利である。さらなる態様において、さらなる態様において、本発明の化合物は、化学療法剤および放射線療法(これらに限定されない)などの標準的な癌治療法と組み合わせて投与してもよい。
【0103】
1つの態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、抗酸化剤である。「抗酸化剤」という用語は、フリーラジカル分子などの不安定な分子により引き起こされる障害から細胞を保護する可能性がある化合物を意味する。フリーラジカル部分は、例えば、老化、癌、心疾患などを引き起こす組織の酸化をもたらす。特定のいかなる理論にとらわれることなしに、抗酸化剤は、フリーラジカルが組織中に見られる感受性生体分子の酸化を妨げるおよび/またはフリーラジカルの生成を減らす可能性がある。
【0104】
また、神経疾患を含むテトラサイクリン化合物応答性状態の例は、アルツハイマー病、アルツハイマー病(ピック病など)に関連した痴呆、パーキンソン病、およびその他のレビ散在性小体疾患、脱髄関連障害、老人性痴呆、ハンチントン病、ジルドラトゥーレット症候群、多発性硬化症(例えば、再発寛解型(relapsing and remitting)多発性硬化症、一次進行性多発性硬化症、および二次進行性多発性硬化症を含むがこれらに限定されない)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性核上性麻痺、癲癇、およびクロイツフェルト-ヤコブ病などの精神神経性ならびに神経変性疾患の両方;高血圧および睡眠障害などの自律神経機能疾患、ならびにうつ病、精神分裂症、分裂情動性疾患、コルサコフ精神病、躁病、不安症疾患、または恐怖症疾患などの精神神経性疾患;学習障害または記憶障害、たとえば健忘症もしくは加齢に関連した記憶喪失、注意欠陥障害、情緒異常疾患、主要な抑うつ性疾患、躁病、強迫神経障害、精神賦活性物質の使用による疾患、不安症、恐怖症、恐慌性障害、ならびに二極性情動障害、たとえば重篤な二極性感情(気分)疾患(BP-1)、二極性感情神経疾患、たとえば片頭痛および肥満症を含むが、これらに限定されない。さらなる神経疾患は、たとえば精神障害(DSM)であり、アメリカ精神医学連合の診断上および統計学的マニュアルに一覧を示したものを含み、最新のバージョンのものは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0105】
1つの態様において、テトラサイクリン応答性状態は、脱髄関連障害である。「脱髄関連障害」という用語は、脱髄に関連する、脱髄により引き起こされる、または脱髄をもたらす障害を含む。脱髄は、多発性硬化症の症状の原因である主要な基礎的要素である。脱髄は、軸索と呼ばれるニューロンの伸長を覆う絶縁かつ保護脂質タンパク質、ミエリンの破壊的な除去である。多発性硬化症の再発の間に、通常は有髄ニューロン束を含んでいる中枢神経系中の白質斑が炎症を起こし、そのミエリンを失う。脱髄斑は病巣として公知である。
【0106】
理論にとらわることないが、身体自身の免疫系が少なくとも部分的に原因であると考えられている。T細胞と呼ばれる、後天性免疫系細胞が、病巣部位に存在していることは公知である。マクロファージ(およびあるいはマスト細胞とも)と呼ばれる他の免疫系細胞もまた、障害の一因となる。
【0107】
ミエリンは、中枢神経系の希突起膠細胞により産生される。1つの希突起膠細胞はいくつかの軸索に対するミエリンを産生し、1つの軸索はそのミエリンを産生するいくつかの希突起膠細胞を有する。多発性硬化症において、ミエリンだけでなく、希突起膠細胞および軸索それ自体でさえも破壊される。
【0108】
軸索は、神経インパルス-活動電位を伝達するために、電気化学的機構を使用する。これは、神経周囲の半透膜を透過するためにナトリウムイオンおよびカリウムイオンを必要とする。ミエリンは、この電気化学的経路を絶縁しかつ覆うだけでなく、それを能動的に補助すると考えられる。軸索が脱髄した場合、それらは正常な有髄細胞より10倍遅く神経インパルスを伝達する。
【0109】
「脱髄関連障害」という用語は、多発性硬化症、橋中央ミエリン融解、白質萎縮症、急性播種性脳脊髄炎、進行性多病巣性白質脳障害、亜急性硬化性汎脳炎、およびニューロンの脱髄により引き起こされるまたはそれを特徴とする他の障害を含む。
【0110】
「多発性硬化症」という用語は、多発性硬化症の全ての形態を含む。それは、再発寛解型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、および二次進行型多発性硬化症を含む。
【0111】
別の治療的薬剤または治療「と組み合わせる」という用語は、テトラサイクリン化合物を別の薬剤または治療とともに同時投与すること、最初のテトラサイクリン化合物に続いて別の薬剤または治療を投与すること、および最初の別の薬剤または治療に続いてテトラサイクリン化合物を投与することを含む。別の薬剤は、当該分野において既知である、IPASおよび別のテトラサイクリン応答性状態の症状を治療する、予防する、または減少するどのような薬剤であってもよい。さらに、他方の薬剤は、テトラサイクリン化合物の投与と組み合わせて投与されるときに、患者に対して有益などのような薬剤であってもよい。1つの態様において、本発明の方法によって治療される癌は、米国特許第6,100,248号;第5,843,925号;第5,837,696号;または第5,668,122号に記載されているものを含み、これらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0112】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、糖尿病、たとえば若年型糖尿病、真正糖尿病、タイプI糖尿病、またはタイプII糖尿病である。さらなる態様において、タンパク質グリコシル化は、テトラサイクリン化合物の投与による影響を受けない。別の態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、インシュリン療法(しかし、これに限定されない)などの標準的な糖尿病患者の治療法と組み合わせて投与される。さらなる態様において、IPASは、米国特許第5,929,055号;および第5,532,227号に記載された疾患を含み、参照によりこれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0113】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、骨質量疾患である。骨質量疾患は、被験体の骨が、骨形成、修復、またはリモデリングが有利である疾患および状態である疾患を含む。たとえば、骨質量疾患は、骨粗鬆症(たとえば、骨強度および密度の減少)、骨折、外科的手順に関連した骨形成(たとえば、顔の再構成)、骨形成不全症(もろい骨の疾患)、低アルカリフォスファターゼ症、パジェット病、線維性骨異形成症、大理石骨病、骨髄腫骨疾患、および原発性上皮小体機能亢進症に関連するものなどの骨におけるカルシウムの欠乏を含む。骨質量疾患は、骨の形成、修復、またはリモデリングが被験体に有利である全ての状態、ならびに本発明のテトラサイクリン化合物で治療することができる被験体の骨または骨格系と関連したその他の全ての疾患を含む。さらなる態様において、骨質量疾患は、米国特許第5,459,135号;第5,231,017号;第5,998,390号;第5,770,588号;RE第34,656号;第5,308,839号;第4,925,833号;第3,304,227号;および第4,666,897号に記載されたものを含み、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0114】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、急性の肺傷害である。急性の肺傷害は、急性呼吸不全症候群(ARDS)、ポスト-ポンプ症候群(PPS)、および外傷を含む。外傷は、外因性の薬剤またはイベントによって引き起こされる生組織に対するあらゆる傷害を含む。外傷の例としては、挫滅傷害、硬い表面との接触、または切断もしくはその他の肺損傷を含むが、これらに限定されない。
【0115】
また、本発明は、本発明の置換テトラサイクリン化合物を投与することによって急性の肺傷害を治療するための方法に関する。
【0116】
また、本発明のテトラサイクリン応答性状態は、慢性肺疾患を含む。本発明は、本明細書において記載されたものなどのテトラサイクリン化合物を投与することによって慢性肺疾患を治療するための方法に関する。本方法は、慢性肺疾患が治療されるように、被験体にテトラサイクリン化合物の有効量を投与する段階を含む。慢性肺疾患の例は、喘息、嚢胞性繊維症、および気腫を含むが、これらに限定されない。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、米国特許第5,977,091号;第6,043,231号;第5,523,297号;および第5,773,430号に記載されたものなどの急性および/または慢性の肺疾患を治療するために使用され、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0117】
さらに別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、虚血、脳卒中、または虚血性脳卒中である。また、本発明は、本発明のテトラサイクリン化合物の有効量を投与することにより、虚血、脳卒中、または虚血性脳卒中を治療するための方法に関する。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、米国特許第6,231,894号;第5,773,430号;第5,919,775号、または第5,789,395号に記載された疾患を治療するために使用され、参照として本明細書に組み入れられる。
【0118】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、皮膚創傷である。本方法は、少なくとも部分的には、急性の外傷傷害(たとえば、切断、熱傷、掻爬、その他)に対する上皮化された組織(たとえば、皮膚、粘膜)の治癒反応を改善するための方法に関する。本方法は、本発明のテトラサイクリン化合物(これは、抗菌活性を有していてもよく、または有していなくてもよい)を使用して、急性の創傷を治癒するように上皮化された組織の能力を改善する段階を含んでもよい。本方法は、治癒組織のコラーゲン蓄積速度を増大させうる。また、本方法は、MMPのコラーゲン分解活性および/またはゲラチン融解活性を減少させることにより、上皮化された組織のタンパク分解活性を減少させてもよい。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、皮膚の表面に(たとえば、局所的に)投与される。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、皮膚創傷、およびたとえば、米国特許第5,827,840号;第4,704,383号;第4,935,412号;第5,258,371号;第5,308,8391号;第5,459,135号;第5,532,227号;および第6,015,804号に記載されたものなどのその別のものを治療するために使用され、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0119】
さらに別の態様において、テトラサイクリン化合物応答性状態は、被験体(たとえば、大動脈のもしくは血管の動脈瘤その他を有するか、またはリスクを有する被験体)の血管組織における大動脈のまたは血管の動脈瘤である。テトラサイクリン化合物は、血管の動脈瘤の大きさを減少させることに有効であってもよく、または動脈瘤が予防されるように、動脈瘤の発症前に被験体に投与されてもよい。1つの態様において、血管組織は、動脈、たとえば大動脈、たとえば腹大動脈である。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、米国特許第6,043,225号および第5,834,449号に記載された疾患を治療するために使用され、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0120】
細菌感染は、多種多様なグラム陽性およびグラム陰性菌によって引き起こされうる。本発明の化合物は、その別のテトラサイクリン化合物に耐性である生物体に対して、抗生物質として有用でありうる。本発明のテトラサイクリン化合物の抗生の活性は、実施例2において、またはWaitz, J. A.、National Commission for Clinical Laboratory Standards、Document M7-A2、第10巻、第8号、pp. 13-20、第二版、Villanova、PA(1990)に記載されているインビトロの標準的なブロース希釈法を使用して決定してもよい。一つの態様において、テトラサイクリン化合物は非抗菌性である(例えば、実施例2に記載するように、約8μg/mLを超えるMICを示す)。
【0121】
また、テトラサイクリン化合物は、たとえば、リケッチア多くのグラム陽性菌およびグラム陰性菌などのテトラサイクリン化合物;および鼠径リンパ肉芽腫、封入体結膜炎、オウム病に応答性の薬剤によって伝統的に治療される感染を治療するために使用されてもよい。テトラサイクリン化合物は、たとえば、肺炎菌(K. pneumoniae,)、サルモネラ菌(Salmonella)、E. ヒラエ(E. hirae)、A. バウマニー(A. baumanii)、B. カタルハリス(B. catarrhalis)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、緑膿菌(P. aeruginosa)、E. フェシウム(E. faecium)、大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、またはE. フェカリス(E. faecalis)の感染を治療するために使用されてもよい。1つの態様において、テトラサイクリン化合物は、その別のテトラサイクリン系抗生物質化合物に耐性である細菌感染を治療するために使用される。本発明のテトラサイクリン化合物は、薬学的に許容される担体と共に投与されてもよい。本発明のテトラサイクリン化合物を使用して、それぞれその全体が参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第03/005971号、国際公開公報第02/085303号、国際公開公報第02/072022号、国際公開公報第02/072031号、国際公開公報第01/52858号、および米国特許出願第10/692764号に記述されている真菌疾患、ウイルス疾患、寄生虫疾患、およびその他の疾患を治療してもよい。
【0122】
別の態様において、テトラサイクリン応答性状態は、RNAの調節によって治療される疾患である。
【0123】
「RNAの調節により治療可能な疾患」または「DTMR」という用語は、RNAの機能、構造、量、ならびに/または所望とされるよりも低いもしくは高いRNAの他の活性によって引き起こされるかまたはそれらに関連するウイルス疾患、神経変性疾患およびその他の疾患であって、かつ本明細書に記述される化合物により治療可能な疾患を含む。DTMRの例としては、ウイルス疾患(例えば、レトロウイルス疾患(例えば、HIVなど))、ヒトライノウイルスRNAおよびタンパク質により引き起こされる疾患、VEEウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部X病(eastern X disease)、西ナイルウイルス、モモの斑点細菌病(bacterial spot of peach)、ラクダ痘ウイルス、ジャガイモ葉巻ウイルス、柑橘類苗木の難治病(stubborn disease)および伝染性斑入り、大腸菌ファージMS2に感染した大腸菌(Escherichia coli)でのウイルスタンパク質合成、黄斑ウイルス、柑橘類の緑化疾患、わい化病、欧州の植物黄化(European yellows of plants)、封入体結膜炎ウイルス、髄膜肺炎ウイルス、トラコーマウイルス、ブタ疫病ウイルス、オルニトーシスウイルス、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、有蹄動物におけるウイルス性流産、肺炎、ならびに癌が挙げられる。
【0124】
その他の典型的なDTMRとしては、スプライシングにより引き起こされる、またはスプライシングと関係する疾患が挙げられる。例えば、mRNA前駆体のプロセッシングの欠陥と関係する疾患の中には、遺伝子の調節要素中の突然変異による機能の喪失から生じるものもある。そのような突然変異の例はKrawczak et al. (1992) Hum. Genet, 90:41-54;およびNakai et al. (1994) Gene 14:171-177に記述されている。その他のDTMRとしては、トランス活性化因子の変化によって生じた疾患が挙げられる。スプライシングと関係するDTMRの例としてはFTDP-17 (パーキンソン症候群を伴った前頭側頭型痴呆)およびβ-サラセミアに加えて、Philips et al. (2000), Cell. Mol. Life Sci., 57:235-249に記述されているものが挙げられる。
【0125】
スプライシングと関係するある種のDTMRとしては、スプライス部位を破壊するかまたは通常使われるエクソンの近くに新たな潜在部位を作出する点突然変異によって生じるものが挙げられる。そのようなDTMRの例としては、嚢胞性線維症(Friedman et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:36193-36199)、筋ジストロフィー(Wilton et al. (1999) Neuromuscul. Disord. 9:330-338)、および好酸球性疾患(Karras et al., (2000) Mol. Pharamcol. 58:380-387)が挙げられる。
【0126】
その他のDTMRとしては、癌の形成および進行の間にスプライシングパターンを変えうる癌が挙げられる。そのような癌の例としては、白血病、結腸/直腸癌、骨髄性白血病、乳癌、胃癌、急性白血病、多発性骨髄腫、骨髄細胞白血病、肺癌、前立腺癌などが挙げられるが、これらに限定されない。スプライシングと関係するさらなるDTMRは、Stoss et al., (2000), Gene Ther. Mol. Biol. 5:9-30)に論じられている。
【0127】
DTMRの別の例は、テトラサイクリン化合物を用いた癌細胞の治療がRNAの調節、すなわち、第2の薬剤、例えば化学療法薬に対する細胞の感受性を高めるRNAの調節をもたらす癌である。そのようなDTMRはテトラサイクリン化合物と化学療法薬の組合せを用いて治療することができる。典型的な癌としては、テトラサイクリン化合物が細胞によって発現されるBCLの型を調節するものが挙げられる。
【0128】
その他のDTMRとしては、特定のリボザイムが異常な量で存在する疾患が挙げられる。例としては、乳癌、C型肝炎ウイルス(HCV)、肝硬変、および肝細胞癌が挙げられる。
【0129】
化合物の「有効量」という用語は、テトラサイクリン化合物応答性状態を治療するまたは予防するために必要なまたは十分なその量である。有効量は、患者の大きさおよび重量、疾患のタイプ、または特定のテトラサイクリン化合物のような要因に依存して変化し得る。たとえば、テトラサイクリン化合物の選択は、「有効量」を構成するものに影響を及ぼし得る。当業者であれば、前述の因子を研究して、過剰な実験をすることなく、テトラサイクリン化合物の有効量に関する決定を行うことができると考えられる。
【0130】
本発明はまた、微生物感染症および関連疾患に対する治療方法にも関する。方法には、被験体に一つまたは複数のテトラサイクリン化合物の有効量を投与することが含まれる。被験体は、植物、または都合よくは、動物、例えば、哺乳類、例えば、ヒトのいずれかとなりうる。
【0131】
本発明の治療的方法において、本発明の一つまたは複数のテトラサイクリン化合物を単独で被験体に投与してもよく、またはより典型的に、本発明の化合物は、従来の賦形剤、すなわち活性化合物と有害な反応をせず、そのレシピエントに対して有害でない非経口、経口、または別の所望の投与に適した薬学的に許容される有機もしくは無機担体物質と混合した薬学的組成物の一部として投与される。
【0132】
本発明はまた、テトラサイクリン化合物(例えば、式I、IIの、または本明細書に記載された他のテトラサイクリン化合物)および任意で薬学的に許容される担体の治療的有効量を含む薬学的組成物にも関する。
【0133】
「薬学的に許容される担体」という用語には、その意図される機能を行うことができる、例えばテトラサイクリン応答性状態を治療または予防する、テトラサイクリン化合物(複数)と同時投与することができる物質が含まれる。適した薬学的に許容される担体の例として、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、珪酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペトロエスラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が含まれるが、これらに限定されるものではない。薬学的調製物は滅菌して、望ましければ、本発明の活性化合物と有害に反応しない補助剤、例えば潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、着香料、および/または芳香物質等と混合することができる。
【0134】
本質的に塩基性である本発明のテトラサイクリン化合物は、様々な無機および有機酸と多様な塩を形成することができる。本質的に塩基性である本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために用いてもよい酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチネート、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、二酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパルモエート[すなわち、1,1'-メチレン-ビス(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート]塩のような薬学的に許容される陰イオンを含む塩を形成することができる酸である。そのような塩は、被験体、例えば哺乳類に投与するために薬学的に許容されなければならないが、実践においては、反応混合物から薬学的に許容されない塩として本発明のテトラサイクリン化合物をまず単離して、その後アルカリ試薬による処置によって遊離の塩基化合物にしてから、遊離の塩基を薬学的に許容される酸付加塩に変換することがしばしば望ましい。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、水性溶媒において、またはメタノールもしくはエタノールのような適した有機溶媒中で選択した無機または有機酸の実質的に等量によって塩基性化合物を処置することによって容易に調製される。溶媒を注意深く蒸発させると、所望の固体の塩が容易に得られる。前述の実験の項に特に説明していない本発明の別のテトラサイクリン化合物の調製は、当業者に明らかである上記の反応の組み合わせを用いて行うことができる。
【0135】
前述の実験の項に特に記載していない本発明の別のテトラサイクリン化合物の調製は、当業者に明らかである上記の反応の組み合わせを用いて行うことができる。
【0136】
本質的に酸性である本発明のテトラサイクリン化合物は、広く多様な塩基との塩を形成することができる。本質的に酸性である本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的に許容される塩基性の塩を調製するために試薬として用いてもよい化学塩基は、そのような化合物と非毒性の塩基性塩を形成する塩基である。そのような非毒性の塩基性塩には、アルカリ金属陽イオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)、およびアルカリ土類金属陽イオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)、アンモニアまたはN-グルカミン-(メグルミン)のような水溶性アミン溶液、ならびに薬学的に許容される有機アミンの低級アルキルアンモニウムおよびその別の塩基性塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。本質的に酸性である本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、従来の方法によって薬学的に許容される陽イオンによって形成してもよい。このように、これらの塩は、所望の薬学的に許容される陽イオンの水溶液によって本発明のテトラサイクリン化合物を処置して、好ましくは減圧下で、得られた溶液を蒸発乾固させることによって容易に調製してもよい。または、本発明のテトラサイクリン化合物の低級アルキルアルコール溶液を、所望の金属のアルコキシドと混合させて、その後溶液を蒸発乾固させてもよい。
【0137】
前述の実験の項に特に記載していない本発明の別のテトラサイクリン化合物の調製は、当業者に明らかである上記の反応の組み合わせを用いて行うことができる。
【0138】
本発明のテトラサイクリン化合物および薬学的に許容されるその塩は、経口、非経口、または局所経路のいずれかによって投与することができる。一般的に、これらの化合物は、最も好ましくは、治療すべき被験体の体重および状態、ならびに選択した特定の投与経路に応じて、有効な用量で投与される。治療される被験体の種および上記の薬剤に対するその個々の反応と共に、選択した薬学的製剤のタイプならびにそのような投与を行う時点および期間に応じて、容量を変更してもよい。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、被験体、例えば哺乳類におけるテトラサイクリン応答性状態を治療するため、単独でまたは別の既知の組成物と組み合わせて投与してもよい。好ましい哺乳類には、ペット(例えば、ネコ、イヌ、フェレット等)、家畜動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ等)、実験動物(ラット、マウス、サル等)、および霊長類(チンパンジー、ヒト、ゴリラ)が含まれる。既知との組成物と「組み合わせて」という用語には、本発明の組成物と既知の組成物との同時投与、本発明の組成物を先に投与した後、既知の組成物を投与すること、および既知の組成物を先に投与した後本発明の組成物の投与することが含まれると解釈される。テトラサイクリン応答性状態を治療するための技術分野において既知の任意の治療的組成物を本発明の方法において用いることができる。
【0140】
本発明のテトラサイクリン化合物は、単独でまたは薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と組み合わせて、これまでに述べた任意の経路によって投与してもよい。例えば、本発明の新規治療物質は、広く多様な異なる投与剤形において都合よく投与することができる、すなわち、それらは錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、トローチ、硬キャンデー、粉末、スプレー、クリーム、軟膏、坐剤、ゼリー、ゲル、パスタ、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射用溶液、エリキシル剤、シロップ等の形で様々な薬学的に許容される不活性担体と組み合わせてもよい。そのような担体には、固体希釈剤、または増量剤、滅菌水性培地および様々な非毒性の有機溶媒等が含まれる。その上、経口薬学的組成物は、適当な甘味料および/または着香料を加えることができる。一般的に、本発明の治療的に有効な化合物は重量で約5.0%〜約70%の範囲の濃度レベルのような投与剤形で存在する。
【0141】
経口投与の場合、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムおよびグリシンのような様々な賦形剤を含む錠剤を、デンプン(および好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカデンプン)、アルギン酸、および特定の複合シリカのような様々な崩壊剤と共に、ポリビニルピロリドン、ショ糖、ゼラチンおよびアカシアのような造粒結合剤と共に用いてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクのような潤滑剤はしばしば、打錠目的にとって非常に有用である。類似のタイプの固体組成物もまた、ゼラチンカプセルにおける増量剤として用いてもよい;これに関連して好ましい材料にはまた、高分子量ポリエチレングリコールと共に乳糖または乳糖(milk sugar)が含まれる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤が経口投与にとって望ましい場合、活性成分を水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンのような希釈剤、およびその様々な類似の組み合わせと共に、甘味料または着香料、着色物質または色素、および望ましければ、乳化剤および/または懸濁剤と混合してもよい。
【0142】
非経口投与(腹腔内、皮下、静脈内、皮内、または筋肉内注射)の場合、本発明の治療化合物のゴマ油もしくはピーナッツ油溶液または水性プロピレングリコール溶液を用いてもよい。水溶液は必要であれば適当に緩衝能を有しなければならず(好ましくはpH8以上)、液体希釈剤を最初に等張にしなければならない。これらの水溶液は、静脈内注射の目的として適している。油性溶液は、関節内、筋肉内、および皮下注射目的にとって適している。滅菌条件でのこれらの全ての溶液の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術によって容易に行われる。非経口投与の場合、適した調製物の例として、溶液、好ましくは油性または水性溶液と共に懸濁液、乳液、または坐剤を含むインプラントが含まれる。治療化合物は、注射剤に関して一般的に用いられる滅菌生理食塩液、または5%生理食塩液デキストロース溶液のような液体担体に分散されるような多数または単一の用量フォーマットで滅菌型として製剤化してもよい。
【0143】
さらに、同様に、皮膚の炎症状態を治療する場合、本発明の化合物を局所に投与することが可能である。局所投与方法の例として、経皮、口腔内、舌下適用が含まれる。局所適用の場合、治療化合物はふさわしくは、ゲル、軟膏、ローション、またはクリームのような薬理学的に不活性な局所担体に混合することができる。そのような局所担体には、水、グリセロール、アルコール、脂肪アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、または鉱油が含まれる。可能性がある別の局所担体は、流動パラフィン、イソプロピルパルミテート、ポリエチレングリコール、95%エタノール、5%モノラウリン酸ポリオキシエチレン水溶液、5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液等である。さらに、抗酸化剤、湿潤剤、粘度安定化剤等のような材料も望ましければ加えてもよい。
【0144】
腸内適用の場合、特に適しているのは、タルクおよび/または炭化水素担体結合剤等を有する錠剤、ドラジェまたはカプセルであり、担体は好ましくは乳糖、またはコーンスターチ、またはジャガイモデンプン、あるいはその組合せである。甘味媒体を用いる場合には、シロップ、エリキシル等を用いることができる。活性成分が異なるように崩壊するコーティング、例えば、微量封入、多剤コーティング等によって誘導されている徐放性組成物を製剤化することができる。
【0145】
ヒト被験体の治療の他に、本発明の治療方法は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ等のような家畜;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥等のような家禽;ならびにイヌおよびネコのようなペットを治療するために重要な獣医学応用を有するであろう。同様に、本発明の化合物は、植物のような動物以外の被験体を処置するために用いてもよい。
【0146】
所定の治療において用いられる活性化合物の実際の好ましい量は、利用する特定の化合物、処方される特性の組成物、適用様式、特定の投与部位等に従って変化するであろうと認識される。所定の投与プロトコールに関して最適な投与速度は、前述のガイドラインに関して行われた従来の用量決定試験を用いて、当業者によって容易に確認することができる。
【0147】
一般的に、治療のための本発明の化合物は、これまでのテトラサイクリン治療において用いられた用量で被験体に投与することができる。例えば、「医師用添付文書集(Physicians' Desk Reference)」を参照のこと。例えば、本発明の一つまたは複数の化合物の適した有効量は、1日にレシピエントの体重1kgあたり0.01〜100 mg、好ましくは1日にレシピエントの体重1kgあたり0.1〜50 mg、より好ましくは、1日にレシピエントと体重1kgあたり1〜20 mgの範囲であろう。望ましい用量は、ふさわしくは1日1回、あるいは少量に分けて数回(例えば、少量の2〜5回)を1日を通して適当な間隔で、または別の適当なスケジュールで投与する。同様に通常の使用条件でその有効性を一般的に確実にするために、テトラサイクリンの投与に関して、通常の従来の既知の用法注意が守られることが理解される。インビボでヒトおよび動物の治療的治療のために特に用いる場合、医師は従来の既知の禁忌および毒性効果を防止するために全ての分別のある予防措置をとらなければならない。このように、胃腸の不快感および炎症、腎毒性、過敏反応、血液の変化、ならびにアルミニウム、カルシウム、およびマグネシウムイオンの吸収障害のこれまで認識されている有害反応は、従来のように適切に検討しなければならない。
【0148】
さらに、本発明はまた、式I、IIのテトラサイクリン化合物、または本明細書に記載された他の化合物を薬剤の調製に用いることにも関する。薬剤には、薬学的に許容される担体が含まれてもよく、テトラサイクリン化合物は、有効量、例えばテトラサイクリン応答性状態を治療するための有効量である。
【0149】
本発明の例示
本発明の化合物は以下に記述されているように、および/または当業者に公知の文献技術を用いることにより作製されてもよい。
【0150】
実施例1:12-デヒドロドキシサイクリンの合成
トリエチルアミンをドキシサイクリン(1 g, 2.2 mmol)のメタノール15 ml溶液に添加してpHを約9にした。その後、水素化ホウ素ナトリウム426 mg (5当量)を分割的にこの混合物に加えた。得られた反応混合物を室温で数時間撹拌した。分析HPLCならびにLCMS [MS:445 (出発材料の場合)およびMS 447 (生成物の場合)]により、反応をモニターした。溶媒を除去し、残渣を水で希釈した。次いで、この水溶液をn-ブタノール(2×)で抽出した。有機画分を合わせたものを減圧下で蒸発させて、アルコールを得た。この材料をトリフルオロ酢酸20 mlに再溶解し、60℃で数時間加熱した。分析HPLCならびにLCMS [MS:アルコールの場合447および脱水された材料の場合429]により、反応をモニターした。反応の完了時点で、TFAを蒸発させて、残渣をメタノール/水(3:1)の混合物に溶解した。この溶液をろ過し、所望の材料を分取HPLCにより単離した。淡黄色の固形物およそ250 mgが得られた(MS:429)。化学構造をNMRによってさらに特徴づけた。
【0151】
DMF 15 ml中の、1 mmolの12-デヒドロドキシサイクリン・トリフルオロ酢酸塩を、1当量のInCl3の存在下で、4当量のアミンと反応させた。この反応混合物を室温で数時間撹拌した。所望の材料を分取HPLCにより単離した。
【0152】
12-デヒドロドキシサイクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aR)-4-ジメチルアミノ-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS(M+H):429.4)

12-デヒドロドキシサイクリンa1H、13C化学シフト、および3JH-H結合定数を以下の表2に示す。
【0153】
【表2】

a)メタノール-d4中の化学シフト。「N/O」は「観察されない」を意味する。b)化学シフトは、0 ppmでの内部標準としてTMSを基準とした、ppm単位である。c)差をドキシサイクリンの化学シフトを12-デヒドロドキシサイクリンにおけるその対応する化学シフトから差し引くことにより計算する。d)結合定数はHertz単位である。e)「a」、「b」、「s」、「d」、「t」、および「q」はそれぞれ、「見かけ(apparent)」、「ブロード」、「一重線」、「二重線」、「三重線」、および「四重線」を意味する。
【0154】
類似の方法を使用して合成したその他の化合物には、以下が含まれる。
9-[(2,2-ジメチル-プロピルアミノ)-メチル]-12-デヒドロドキシクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aR)-4-ジメチルアミノ-9-[(2,2-ジメチル-プロピルアミノ)-メチル]-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS(M+H):528.6)


9-アミノ-12-デヒドロドキシクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aR)-9-アミノ-4-ジメチルアミノ-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS(M+H):444.4)


9-ビス-ジメチルアミノ-12-デヒドロドキシクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aR)-4,9-ビス-ジメチルアミノ-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS(M+H):472.5)


12-ブチルアミノ-12-デヒドロドキシサイクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aS)-12-ブチルアミノ-4-ジメチルアミノ-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,11a,12,12a-デカヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS:502.5)


12-メチルアミノ-12-デヒドロドキシサイクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-12-メチルアミノ-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,11a,12,12a-デカヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS:460.2)


12-(2,2-ジメチル-プロピルアミノ)-12-デヒドロドキシサイクリン
(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aS)-4-ジメチルアミノ-12-(2,2-ジメチル-プロピルアミノ)-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,11a,12,12a-デカヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS:516.6)


(4S,4aR,5S,5aR,6R,12aS)-4-ジメチルアミノ-3,5,10,12a-テトラヒドロキシ-6-メチル-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,11a,12,12a-デカヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS:431)


12-デヒドロミノサイクリン
(4S,4aS,5aR,12aR)-4,7-ビス-ジメチルアミノ-3,10,12a-トリヒドロキシ-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロ-ナフタセン-2-カルボン酸アミド(MS:M+H 442.5)

【0155】
実施例2:インビトロ最小阻止濃度(MIC)アッセイ
以下のアッセイを用いて、一般的な細菌に対するテトラサイクリン化合物の有効性を決定した。各化合物2 mgを100μlのDMSOで溶解した。次に、溶液を、最終化合物濃度が200μg/mlとになるように、陽イオン調整ミューラーヒントン培地(CAMHB)に添加した。テトラサイクリン化合物溶液を、容量50μLに希釈して、試験化合物濃度は.098μg/mlとなった。吸光度(OD)決定は、試験株の新鮮な対数期ブロス培養液から行った。希釈は、1×106 CFU/mlの最終細胞密度が得られるように行われた。OD=1では、異なる属の細胞密度はおよそ以下であった。
大腸菌 1×109 CFU/ml
黄色ブドウ球菌 5×108 CFU/ml
腸球菌種 2.5×109 CFU/ml
【0156】
細胞懸濁液50μlをマイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。最終的な細胞密度は約5×105 CFU/mlとなるはずである。これらのプレートを35℃で環気インキュベータ内で約18時間インキュベートする。プレートをマイクロプレートリーダーで読みとり、必要であれば肉眼で検分する。MICは、増殖を阻害するテトラサイクリン化合物の最小濃度として定義された。
【0157】
低い抗菌活性を有することが見出された化合物は、12-デヒドロドキシサイクリン、9-ビス-ジメチルアミノ-12-デヒドロドキシクリン、および9-アミノ-12-デヒドロドキシクリンを含む。
【0158】
実施例3:脱髄関連疾患動物モデル(DRDAM):インビボ実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスモデル
本実施例において、マウスモデルを用いて、テトラサイクリン化合物の脱髄関連疾患を治療する能力を決定した。他の用いられ得るモデルは、Brundula V. et al. Brain 2002 Jun;125(Pt 6):1297-308およびPopovic N. et al Ann Neurol. 2002 Feb;51(2):215-23に記載されている。
【0159】
EAEを誘導するために、6週齢C57BL/6メスマウスに、追加で4 mg/mLの熱殺菌された結核菌を含んでいる200μLのフロイント完全アジュバントで乳化された200 ugのミエリン希突起膠細胞糖タンパク質ペプチド(MOG35〜55)を皮下に注入した。マウスに追加的に、150μL PBSで再懸濁した150 ngの凍結乾燥百日咳毒素を時間0でおよび48時間後もう一度追加的に静脈内(尾静脈)に注入した。本モデルにおいて、マウスは、後ろから前に進行性の進行性麻痺を起こし、症状は10〜12日で最初に現れ、約21日までに重篤な麻痺に進行した。EAEの重症度を以下の基準に従って毎日スコア化した:0、健康;1、ぐったりした尾;2、1または2本の後肢の部分的な麻痺;3、後肢の完全な麻痺;4、完全な後肢麻痺および前肢不全対麻痺;5、瀕死状態。全試験実験は、一群当たり10匹のマウスを有する、賦形剤のみで処置された、またはミノサイクリンで処置されたEAE誘導マウスの対照群を含んだ。処置は、試験の最後まで毎日、50 mg/kgのミノサイクリン、試験テトラサイクリン化合物または賦形剤単独でのIP注入として10日目(疾患の発症)に始めた。12-デヒドロドキシサイクリンおよび12-メチルアミノ-12-デヒドロドキシサイクリンが、ミノサイクリンと同様のまたはより優れた活性を有することが見出された。
【0160】
同等物
当業者は、本明細書に記載の特定の技法に対して、単なる日常的な実験を用いて無数の同等物を認識する、または確認することができるであろう。そのような同等物は、本発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲に含まれると見なされる。本明細書において引用した全ての参考文献、特許、および特許出願の内容は、参照として本明細書に組み入れられる。それらの特許、出願、および別の文書の適当な成分、プロセス、および方法を、本発明およびその態様に関して選択してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のテトラサイクリン化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、および鏡像異性体:

式中、
R1は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アミド、アルキルアミノ、アミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、複素環、ヒドロキシ、またはハロゲンであり、任意でR2に結合して環を形成してもよく;
R2は水素、アルキル、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、チオール、シアノ、ニトロ、アシル、ホルミル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、複素環、または非存在であり、任意でR1に結合して環を形成してもよく;
R2'、R2''、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R3、R10、およびR12はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、またはプロドラッグ部分であり;
R4およびR4'はそれぞれ独立して、NR4aR4b、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、または水素であり;
R5およびR5'はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、またはアリールカルボニルオキシであり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
R7は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR7C)0〜1C(=W')WR7aであり;
R8は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR8C)0〜1C(=E')ER8aであり;
R9は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR9C)0〜1C(=Z')ZR9aであり;
R7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R7f、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R8f、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、およびR9fはそれぞれ独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R13は水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
EはCR8dR8e、S、NR8bまたはOであり;
E'はO、NR8f、またはSであり;
QはR1'およびR2が非存在である場合には二重結合であり、QはR1'およびR2がそれぞれ独立して、水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ホルミル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、または複素環である場合には単結合であり;
WはCR7dR7e、S、NR7bまたはOであり;
W'はO、NR7f、またはSであり;
XはCHC(R13Y'Y)、C=CR13Y、CR6'R6、S、NR6、またはOであり;
Y'およびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
ZはCR9dR9e、S、NR9bまたはOであり;
Z'はO、S、またはNR9fである。
【請求項2】
式(II)のテトラサイクリン化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステルおよび鏡像異性体:

式中、
R1は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アミド、アルキルアミノ、アミノ、アリールアミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、複素環、ヒドロキシ、またはハロゲンであり;
R2'、R2''、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R3、R10およびR12はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、ベンジル、アリールアルキル、またはプロドラッグ部分であり;
R4はNR4aR4b、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、または水素であり;
R5およびR5'はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、またはアリールカルボニルオキシであり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
R7は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR7C)0〜1C(=W')WR7aであり;
R8は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR8C)0〜1C(=E')ER8aであり;
R9は水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アシル、アミノアルキル、複素環、チオニトロソ、または-(CH2)0〜3(NR9C)0〜1C(=Z')ZR9aであり;
R7a、R7b、R7c、R7d、R7e、R7f、R8a、R8b、R8c、R8d、R8e、R8f、R9a、R9b、R9c、R9d、R9e、およびR9fはそれぞれ独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族またはプロドラッグ部分であり;
R13は水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
EはCR8dR8e、S、NR8bまたはOであり;
E'はO、NR8f、またはSであり;
WはCR7dR7e、S、NR7bまたはOであり;
W'はO、NR7f、またはSであり;
XはCHC(R13Y'Y)、C=CR13Y、CR6'R6、S、NR6、またはOであり;
Y'およびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、またはアリールアルキルであり;
ZはCR9dR9e、S、NR9bまたはOであり;
Z'はO、S、またはNR9fである。
【請求項3】
R2'、R3、R10、R11、およびR12がそれぞれ水素またはプロドラッグ部分であり;R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキルであり;XがCR6R6'であり;ならびにR2''、R4'、R5、R5'、R6、およびR6'がそれぞれ水素である、請求項1または2記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項4】
R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキルであり;R5およびR5'が水素であり、ならびにXがCR6R6'であり、ここでR6はメチルでありかつR6'はヒドロキシである、請求項1または2記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項5】
R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキルであり;R5がヒドロキシルであり;XがCR6R6'であり;R6がメチルであり;ならびにR5'およびR6'が水素である、請求項1または2記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項6】
R4がNR4aR4bであり;R4aおよびR4bがそれぞれアルキルであり;XがCR6R6'であり;R5、R5'、R6およびR6'が水素原子であり、ならびにR7がジメチルアミノである、請求項1または2記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項7】
R9が水素である、請求項1〜6のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項8】
R9が置換または非置換アリールである、請求項1〜6のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項9】
R9が置換または非置換フェニルである、請求項8記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項10】
R9が置換または非置換ヘテロアリールである、請求項8記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項11】
R9が置換または非置換アルキルである、請求項1〜6のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項12】
R9がアミノアルキルである、請求項11記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項13】
R9がアミノメチルである、請求項12記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項14】
R9がアルキルアミノメチルである、請求項13記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項15】
R9が置換または非置換アミノである、請求項1〜6のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項16】
R9がニトロまたはハロゲンである、請求項1〜6のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項17】
R7が水素である、請求項1〜16のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項18】
R7が置換または非置換アリールである、請求項1〜16のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項19】
R7が置換または非置換フェニルである、請求項18記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項20】
R7が置換または非置換ヘテロアリールである、請求項19記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項21】
R7が置換または非置換アルキルである、請求項1〜16のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項22】
R7がアミノアルキルである、請求項21記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項23】
R7がアミノメチルである、請求項22記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項24】
R7がアルキルアミノメチルである、請求項23記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項25】
R7が置換または非置換アミノである、請求項1〜16のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項26】
R7がニトロまたはハロゲンである、請求項1〜16のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項27】
R8が水素である、請求項1〜26のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項28】
R8が置換または非置換アリールである、請求項1〜26のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項29】
R8が置換または非置換フェニルである、請求項28記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項30】
R8が置換または非置換ヘテロアリールである、請求項29記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項31】
R8が置換または非置換アルキルである、請求項1〜26のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項32】
R8が置換または非置換アミノである、請求項1〜26のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項33】
R8がニトロまたはハロゲンである、請求項1〜26のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項34】
R3が水素、アルキル、アシル、アリール、またはアリールアルキルである、請求項1〜33のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項35】
R10が水素、アルキル、アシル、アリール、またはアリールアルキルである、請求項1〜34のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項36】
R11が水素、アルキル、アシル、アリール、またはアリールアルキルである、請求項1〜35のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項37】
R12が水素、アルキル、アシル、アリール、またはアリールアルキルである、請求項1〜36のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項38】
R1が水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオール、アルキル、アシル、アルケニル、アルコキシ、カルボキシル、アルキニル、またはアリールである、請求項1〜37のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項39】
Qが単結合である、請求項1または3〜38のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項40】
R1、R1'およびR2がそれぞれ水素である、請求項39記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項41】
Qが二重結合である、請求項1または3〜38のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項42】
R2が水素である、請求項41記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項43】
R1およびR2が結合して環を形成している、請求項1、3〜39、または41のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項44】
テトラサイクリン化合物が以下である、請求項1記載のテトラサイクリン化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、もしくはプロドラッグ:


【請求項45】
テトラサイクリン応答性状態が治療されるように、請求項1〜44のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物の有効量を被験体に投与する段階を含む、被験体におけるテトラサイクリン応答性状態を治療するための方法。
【請求項46】
被験体が哺乳動物である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
被験体がヒトである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
テトラサイクリン応答性状態が炎症と関連する、請求項45記載の方法。
【請求項49】
テトラサイクリン応答性状態が癌である、請求項45記載の方法。
【請求項50】
テトラサイクリン応答性状態が感染体と関連する、請求項45記載の方法。
【請求項51】
感染体が寄生虫、ウイルス、細菌、または真菌である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
テトラサイクリン応答性状態が脱髄関連障害である、請求項45記載の方法。
【請求項53】
テトラサイクリン応答性状態が多発性硬化症である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
多発性硬化症が、再発寛解型(relapsing or remitting)多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、または二次進行型多発性硬化症である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
テトラサイクリン化合物が抗酸化剤である、請求項1〜44のいずれか一項記載のテトラサイクリン化合物。
【請求項56】
テトラサイクリン化合物が請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物である、テトラサイクリン化合物の有効量と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項57】
有効量がテトラサイクリン応答性状態を治療するのに有効である、請求項56記載の薬学的組成物。
【請求項58】
以下の段階を含む、デヒドロテトラサイクリン化合物を合成するための方法:
テトラサイクリン化合物を還元剤の有効量と接触させ、12-ヒドロキシテトラサイクリン化合物を形成する段階、
11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物を形成するように、該12-ヒドロキシテトラサイクリン化合物を脱水剤と接触させる段階。
【請求項59】
テトラサイクリン化合物がテトラサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、またはサンサイクリンである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
C11a,C12開裂テトラサイクリン化合物を形成するように、デヒドロテトラサイクリン化合物を開裂試薬と接触させる段階を含む、C11a,C12開裂テトラサイクリン化合物を合成するための方法。
【請求項61】
置換テトラサイクリン化合物を形成するように、11a,12-デヒドロテトラサイクリン化合物を反応剤と接触させる段階を含む、置換テトラサイクリン化合物を合成するための方法。
【請求項62】
請求項58〜61のいずれか一項記載の方法により合成されるテトラサイクリン化合物。

【公表番号】特表2008−530023(P2008−530023A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554314(P2007−554314)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/004233
【国際公開番号】WO2006/084265
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500127209)パラテック ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】