説明

テニスボール保管用加圧ケース

【課題】 テニスボールの空気圧の低下を防ぎ、テニスボールの使用寿命を延ばすことを可能とするテニスボール用保存容器を提供する。
【解決手段】ボールとケース内壁との間の残存空間を最小化することで、ボールより漏出した気体により、ケース内部の気圧が高まる効果が顕著なものとなるように構成されたものであり、また、この為、ケース閉止時の僅かな圧縮ストロークでも効果的にケースの内圧を上昇させることができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスボールの空気圧の低下を防止するのに使用される、テニスボール保管用ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬式テニスに用いられるプレッシャーボールは、ゴム製中空球体であるコアに1.8気圧前後の圧力気体が封入されており、球体の表面にメルトンと呼ばれるフェルトが貼着され形成されている。このプレッシャーボールは、ゴムの特性により大気圧下で長時間放置すると、少しずつ内部の気圧が低下してしまい、望ましい反発力が得られなくなる。その為、プレッシャーボールは製造後直ぐに加圧容器に封入されて、開封されるまで高圧状態下で保持し、ボールの内圧が減圧するのを防いでいる。
【0003】
上記の加圧容器を開栓して、ボールを取り出すと、その後は徐々にボールの内圧は低下していき十分な反発力が得られなくなり、一般的には、10日程度の放置で試合に使用するのに適さなくなり、1ヶ月程度で練習にも使えなくなってしまう。
【0004】
ボールの減圧に対する解決策として、繰り返し利用が可能なテニスボール用の加圧容器が用いられる場合があった。これは、例えば、円筒状容器をストロークの長い螺合構造として、蓋部分を回してねじ込むことで円筒容器の容積を縮減させて容器内部の気圧を高め、ボールの内圧との差を減らすことでボールの減圧を防ぐというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テニスボールの使用頻度があまり高くない場合、テニスボールの表面のフェルトが摩耗していないにもかかわらず、ボールの空気圧が低下して使用するのに適さないことが良くあり、そのような場合にはテニスボールを廃棄するしかないため、非常に経済性が悪く、エコロジーの観点からも望ましいものではなかった。本発明は、プレッシャーボールを保管するための、繰り返し利用が可能な加圧ケースに関するものであり、現在用いられている加圧型容器に比べて、格段にシンプルな構造となり、寸法形状もコンパクトに製作可能で、また安全性も高まるという効果が有る。更に、使用時に、ケースを圧縮する為のストロークの長いねじ込み操作が不要になるので、取り扱いが簡便になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ボールとケース内壁との間の残存空間を最小化することで、ボールより漏出した気体により、ケース内部の気圧が高まる効果が顕著なものとなるように構成されたものであり、また、この為、ケース閉止時の僅かな圧縮ストロークでも効果的にケースの内圧を上昇させることができるように構成したものである。
【0007】
即ち、本発明のテニスボール保管用加圧ケースは、半球型の凹みを持つ複数のケース体より構成され、この凹み部分を対向させた状態では内部空間が球形に形成され、その寸法がテニスボールの規格寸法と同程度となるものであり、対向するケースは、開閉可能に形成され、閉じた状態では、少なくとも該球形空間の気密性が保たれるように、ケースの間にパッキンが位置するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加圧ケースを用いることで、ボールの使用可能期間が大幅に伸びる。
この為、空気圧さえあれば、十分に使えるテニスボールを破棄せざるを得ないという無駄を無くすことができ、経済性、エコロジーの観点から社会的に有効な効果を持つ。
従来の長いねじ込みストロークを要した加圧式容器に比べて、非常にシンプルな構造となり、軽量、コンパクトに形成することが可能で、コストダウンにも繋がる。また、圧縮空気の総量が少ないので、万が一、ケースが破裂した際の危険性も低く、容器自体の強度を高める必要も少ない。従来の加圧ケースに比べて利用が容易なので普及が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のケースの一例を示す断面図
【図2】本発明のケースの一例を示す断面図
【図3】本発明のケースの一例を示す斜視図
【図4】本発明ケースに用いる場合の有る硬質ボールを示す断面図
【図5】本発明のケースのパッキン部分の一例を示す断面図
【図6】本発明のケースのパッキン部分の一例を示す断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の具体的な実施例について、図面に基づき説明する。
図1に示された本発明ケースは、半球型の凹部1を持つ二つのケース4aと4bより構成され、各ケースの凹部1の外周に配置された、ねじ溝部分3aと3bが螺合することで一体化し、パッキン2aと2bが夫々圧迫されて、球形の内部空間を気密状態に保つことができるものである。
【0011】
図2に示した本発明ケースは、両側に半球型の凹部1を持つミドルケース5a、5bと、片側にのみ半球型の凹部1を持つエンドケース4a、4bにより形成されている。これらのケースは、図1の例と同様に、互いに螺合することで一体化し、パッキン2bにより気密性が保持される構造である。ミドルケースの両側のねじ溝3a、3bは、図のようにオスねじとメスねじとして対に形成されていることで、複数のミドルケースを連続して連結することが可能になる。また、端部となるエンドケース4a、4bには、凹部1の外周にオスねじ3aまたは、メスねじ3bが形成されミドルケースと螺合自在となっている。
【0012】
図3に示した本発明ケースは、半球型の凹部1が二箇所に形成された、二つの半割り型ケース6a、6bが軸7により、開閉可能に軸着され、バックル8a、8bを閉じることにより、これら半割り型ケースが密着して、内部の球形空間が気密状態となる。パッキンは半球型凹部の外周に隣接した2cの位置や、ケースの外周を閉じる2dの位置であっても良い。或いは、パッキンが平滑面9全体を覆うようなシートであっても良い。尚パッキンが2dの位置である場合は、二つの球形空間が、平滑面9で繋がっていることになるため、後述の説明のように本ケースが所定の機能を発揮するには、テニスボール(または、ダミーボール10)を2個収納しておく必要が有る。
【0013】
図3の例では、ケース6a、6bの一辺どうしが軸着され、一体化した構造を示しているが、ケースは、完全に分割されるものであっても良く、例えば、ケースの複数個所をバックルで閉じることで、図3の例と同様に密閉空間を形成することができる。
【0014】
この他、例えば4個の半球型の凹部を持つ下部ケースに、2個の半球型の凹部を持つ上部ケース二つが、異なる回転軸7を介して軸着され、ケースが閉じた状態で、4個の球形密閉空間が形成されるように構成する等、ケースの形状や接続の構成は、様々に考えられる。また、ケースの材質についても、剛性を有し、気密性を維持するものであれば、特に限定されるものではない。
【0015】
図3に示した本発明ケースのパッキンが、2dの位置だった場合、たとえ僅かな空隙であっても、平滑面9を介して、凹み部分1a、1bは繋がっていると考えられる。本ケースに収納すべきテニスボールが1個しかない場合、気密容器内には、ボール1個分の残存空間が余ってしまい、本ケースは所定の機能を果たさなくなってしまう。図4は、このような際に本発明ケースの機能を果たす為に用いるダミーボール10であり、テニスボールと略同寸法で、硬質の気密外殻構造を有した球体として形成される。本ダミーボールを用いることで、テニスボールが1個しかない場合でも、減圧防止効果が発揮される。ダミーボールの素材は、特にこれを限定せず、例えば、硬質の独立発泡体であったり、外殻構造だけの樹脂であったり、硬質の連続発泡体の表面に気密層を形成したものであったりしても良い。
【0016】
次に、本発明における具体的なパッキンの例と作用を説明する。
図1と図2で示した例では、二つのケースが閉じられることで、パッキンが単純に押圧されて気密性が維持される例を示している。特に、図1の例では、ネジ溝を挟んだ2箇所のパッキン2a、2bにより、ケース内部の気密性が保たれる構造である。
【0017】
図5は、二つのケースが閉じられた際に、押圧力を受けたパッキン2eが、押圧方向に容易に変形するような断面形状及び素材で形成されている例である。
【0018】
図6は、二つのケースが閉じられる際に、パッキン2fが対向するケースの側面を密着しながら滑るように形成されている例である。
【0019】
本発明のケースにおいて、パッキンの形状や構造及び素材は、特にこれを限定するものではなく、一般的に用いられる手法で、ケース内部の気密性が保たれるように形成されていればよい。
【0020】
次に、本発明のケースを用いた場合の、減圧防止効果を具体的に説明する。
代表的なプレッシャータイプテニスボールの構造寸法を測定してみると、外径66ミリ メルトン層の厚み2.8mm ゴム球の厚み3.2mm ゴム球の内径54mmであった。尚、ボール内圧を1.8気圧、メルトン部分の空隙率を50%と仮定して以下計算する。
【0021】
実施例1
図1に示した例のケースで、ケース内径を66ミリとして、ケース閉止時にパッキンが密着開始後0.5mmのストロークで押圧変形する場合について考えると、
ゴム球内空間体積 82500 mm3
ゴム球体積 115400 mm3
ボール体積 150500mm3
直径66mm 幅0.5mmである縮減ストローク容積 1700 mm3
ケース内容積(ストローク前) 150500+1700=152200 mm3
ケース内容積(ストローク後) 150500 mm3
ゴム体積 32900 mm3
メルトン実質体積 17600 mm3
0.5mmの加圧ストロークにより得られる、ケース内部の圧力上昇は、
150500+1700/150500=1.01
ボールが入っていない状態では1.01気圧となる。
一方、ボールが入っている状態では、
(150500-115400-17600)+1700/(150500-115400-17600)=1.1
1.1気圧となる。
【0022】
この状態で長期間保管した場合、ボール内の気体が容器内空間に漏れ出す。
この際、平衡状態となる気圧を計算すると、
ケース内の総気体が1気圧の時の体積
82500×1.8+17600×1.1=148500+19300=167800
ケース内で、気体が占める事のできる体積
82500+17600=100100
ゴム球の内外で気圧が平均化されたとすると、167800/100100=1.676
つまり、1.8気圧の内圧のボールを本発明ケース内に保管した場合、ボールの内圧とケースの内圧は約1.68気圧で平衡し、ボールの内圧はこれよりも低下することは無い。
尚、例えば2度目の使用で1.6気圧になったボールを、再び本ケースに収納した場合、同様に計算すると、1.51気圧よりも低下することは無い。
【0023】
実施例2
図3に示した例のケースでパッキンが2cの位置に設けられた図6のタイプであり、ケース内径を66ミリとして、ケース閉止時にパッキンが密着開始後3mmのストロークで押圧変形する場合について考えると、
ゴム球内空間体積 82500 mm3
ゴム球体積 115400 mm3
ボール体積 150500mm3
直径66mm 幅3mmである縮減ストローク容積 10300 mm3
ケース内容積(ストローク前) 150500+10300=160800 mm3
ケース内容積(ストローク後) 150500 mm3
ゴム体積 32900 mm3
メルトン実質体積 17600 mm3
3mmの加圧ストロークにより得られる、ケース内部の圧力上昇は、
ボールが入っていない状態では
150500+10300/150500=1.068)
約1.07気圧となる。
ボールが入っている状態では、
{ (150500-115400-17600)+10300}/(150500-115400-17600)=1.5835
約1.58気圧となる。
【0024】
この状態で長期間保管した場合、ボール内の気体が容器内空間に漏れ出す。
この際の平衡状態となる気圧を計算すると。
ケース内の総気体が1気圧の時の体積
82500×1.8+17600×1.58=176300
ケース内で、気体が占める事のできる体積
82500+17600=100100
ゴム球の内外で気圧が平均化されたとすると、176300/100100=1.761
つまり、1.8気圧の内圧のボールを本発明ケース内に保管した場合、ボールの内圧とケースの内圧は約1.76気圧で平衡し、ボールの内圧はこれよりも低下することは無い。
尚、例えば2度目の使用で1.6気圧になったボールを、再び本ケースに収納した場合、同様に計算すると1.59気圧よりも低下することは無い。
【0025】
以上、説明の通り、本発明のテニスボール保管用加圧ケースでは、従来のような長いストロークの圧縮密閉構造を必要とせず、ケース内の圧力を高めることができる。
即ち、ボールとケースの間の残存空間を最小化することで、ボールより漏出した気体により、ケース内部の気圧が高まる効果が顕著なものになるように構成されたものであり、また、この為、ケース閉止時の僅かな圧縮ストロークでも効果的にケースの内圧を上昇させることができるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 半球型凹部
2 パッキン
3 ネジ部分
4 エンドケース
5 ミドルケース
6 半割り型ケース
7 軸
8 バックル
9 平滑面
10 ダミーボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球型の凹みを持つ複数のケース体より構成され、この凹み部分を対向させた状態では内部空間が球形に形成され、その寸法がテニスボールの規格寸法と同程度となるものであり、対向するケースは開閉可能に形成され、閉じた状態では少なくとも該球形空間の気密性が保たれるように、ケースの間にパッキンが位置するように構成されていることを特徴とするテニスボール保管用加圧ケース。
【請求項2】
ケース体が、螺合構造で密閉可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載のテニスボール保管用加圧ケース。
【請求項3】
ケース体にバックル部分が構成され、バックル操作によりケース体が密閉可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載のテニスボール保管用加圧ケース。
【請求項4】
テニスボールと略同寸法で、少なくとも表面が気密性を有した硬質の球体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−116441(P2011−116441A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277705(P2009−277705)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(391004517)
【Fターム(参考)】