説明

テラヘルツ電磁波に対する透過フィルタ

【課題】 粉末材料を圧粉成形し長波長透過型テラヘルツ電磁波フィルタを作製する手法を提供すること。
【解決手段】 テラヘルツ電磁波は数〜数十マイクロメートルの粒径を有する粉末物質により散乱される。したがって散乱を利用することで電磁波の透過フィルタを作製することが可能である。また2種類以上の粉末を混合することでカットオフ波長より長波長領域におけるテラヘルツ電磁波の透過率を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波に対する透過フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波の応用にはその電磁波の周波数(波長)に対応した光学素子が必要である。そのひとつである透過フィルタは、例えば高次回折光のカットや不要な波長成分の除去といった目的のために使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
実験で使用するためには必要とするカットオフ波長を有する透過フィルタやある波長の電磁波に対して実験者の必要とする透過率を示すフィルタを作製しなければならない。しかし、テラヘルツ周波数を有する電磁波はその波長が数十〜数百マイクロメートルであり、ナノレベルの加工精度を光リソグラフィーによるパターニングにはサイズが大きく、サブミリレベルの加工技術である光造形法にとっては逆にサイズが小さい。テラヘルツ電磁波の波長に対応する3次元加工技術は開発が進んでおらず、透過フィルタのカットオフ波長や透過率をテラヘルツ周波数において任意に制御することは困難である。
【0004】
本発明は、テラヘルツ電磁波の波長と同程度の粒径を有する粉末材料を用い長波長透過型テラヘルツ電磁波フィルタを作製する手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため請求項1に記載の電磁波の透過フィルタは、粉末材料に対する電磁波の散乱を利用して粉末粒子の粒径程度のカットオフ波長を有する透過フィルタを提供する。また2種類以上の粉末を混合することでカットオフ波長より長波長領域における電磁波の透過率を制御することができる。
【0006】
請求項2に記載の電磁波の透過フィルタは高分子材料で作製される。高分子材料は金属に比べ屈折率が小さく、フィルタ界面での電磁波の反射が少ない。そのため高い透過率を有するフィルタの作製が可能となる。
【0007】
請求項3に記載の電磁波の透過フィルタはポリエチレン粉末で作製される。このフィルタは特にテラヘルツ周波数領域で有効である。これはポリエチレンがテラヘルツ周波数領域において大きな吸収を示さないためである。
【0008】
請求項4に記載の発明では、圧粉成形する際にフィルタをくさび形とする。これによりフィルタ内部でのテラヘルツ電磁波の干渉を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、粉末材料を圧粉成形したフィルタを用いることで、材料に使用した粉末物質の粒径程度のカットオフ波長を有する電磁波の透過フィルタを作製することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0010】
以下、本電磁波の透過フィルタにおける実施形態を述べる。ただし本発明はこれらのみに制限されることはない。実施例1におけるフィルタは数〜数十マイクロメートルの粒径を有するポリエチレン粉末300mgを1トンの加重をかけて圧粉成形したものである。このフィルタには圧粉成形の際2°のウェッジ角を設けてある。図1は、このフィルタのカットオフ波長(透過率が5%になる波長)である。使用したポリエチレン粉末の平均粒径は5、41、108マイクロメートルの3種類である。それぞれのスペクトルにおけるカットオフ波長はそれぞれなし、55マイクロメートル、94マイクロメートルである。フィルタのカットオフ波長は材料に使用した粉末の影響を受けている。電磁波の波長が粒径より長い領域では散乱強度が波長の4乗に反比例するレイリー散乱により透過率が変化している。電磁波の波長が粒径より短い領域では散乱強度が波長によらないミー散乱、非選択的散乱を起こしテラヘルツ電磁波は透過されない。また図2はそれぞれのフィルタの2.5THzにおける透過率である.粒径が増加するとともに透過率が減少する.
【0011】
実施例2におけるフィルタは平均粒径41マイクロメートルのポリエチレン粉末と平均粒径31マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレン粉末の混合粉末を圧粉成形したフィルタである。図3はそのフィルタの3.5THzにおける透過率である。2種類の粉末の混合比を変化させることで、テラヘルツ周波数領域における電磁波の透過率が変化することが示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 実施例1において作製したフィルタのカットオフ波長である。
【図2】 実施例1において作製したフィルタの2.5THzにおける透過率である。
【図3】 実施例2において作製したフィルタの3.5THzにおける透過率である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の粉末物質を混合、圧粉成形することで作製されるテラヘルツ電磁波に対する透過フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末物質が特に高分子材料であることを特徴とするテラヘルツ電磁波に対する透過フィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の高分子材料が特に数〜数十マイクロメートルの粒径を有する粉末であることを特徴とするテラヘルツ電磁波に対する透過フィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の高分子材料が特にポリエチレン粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末またはポリスチレン粉末であることを特徴とするテラヘルツ電磁波に対する透過フィルタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の電磁波の透過フィルタがくさび形の形状を有していることを特徴とするテラヘルツ電磁波に対する透過フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−306692(P2008−306692A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180326(P2007−180326)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(591172504)
【Fターム(参考)】