テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料及びその製造方法
【課題】発光強度が高いテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3で、Mはアルカリ土類金属で、且つx=0.005〜0.5である。また、本発明のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法は、以下のようなステップを含む。化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備し、化学量論比とは、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比10%〜30%過量であり、混合、焼成予備処理後に冷却させ、研磨、焙焼、冷却した後、発光材料を得る。
【解決手段】本発明のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3で、Mはアルカリ土類金属で、且つx=0.005〜0.5である。また、本発明のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法は、以下のようなステップを含む。化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備し、化学量論比とは、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比10%〜30%過量であり、混合、焼成予備処理後に冷却させ、研磨、焙焼、冷却した後、発光材料を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料分野に関し、特に真空紫外線によって励起されるテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ(PDP)は、常用のCRTディスプレイ及びLCDディスプレイに比べて、視角が広く、面積が大きく、応答が速く、且つ色再現性に優れるという利点があるため、壁掛TVのような大型ディスプレイに適用される。しかも、水銀を含まない無水銀蛍光ランプは、人体に害になる水銀を含んでいないため、市販の高圧水銀ランプ及び低圧水銀ランプに比べて、環境保護に有利である。PDPの表示において、回路及び発光材料という重要技術があるが、回路設計の改善に随って、発光材料の選択がPDPの表示においてより重要な技術になった。従って、PDP及び無水銀ランプ用の三原色蛍光粉末の研究が課題としている。現在、広く使用されている三原色蛍光粉末としては、赤色粉末Y2O3:Eu3+、(Y, Gd)BO3:Eu3+、緑色粉末Zn2SiO4:Mn2+、BaAl12O19:Mn2+、及び青色粉末BaMgAl10O17:Eu2+等がある。しかし、市販の緑色粉末Zn2SiO4:Mn2+は、Mn2+のスピン禁止遷移(4T1→6A1)の発射によって、残光時間が長過ぎるので、動的画像の表示に不利であり、TVディスプレイに適用されていない。Mn2+のドープ濃度を増加することで、残光時間を短縮することができるが、発光材料の発光強度が低下する。よって、高効率且つ短い残光時間の新型緑色発光材料の開発は、特に重要である。
【0003】
近年、ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)を基質とする発光材料において、前記基質を単結晶として希土をドープして発光材料に対するレーザ特性を研究することが多いが、真空紫外線励起方面の研究は少ない。そして、Mn2+の残光時間の長い特性に比べて、Tb3+は、緑光発射(540nm〜545nm)の特徴を持っており、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くなり、ヒステリシス効果(Hysteresis)が克服される。
【0004】
従って、残光時間が長いという欠点を克服し、演色及び緑色照明の要求に満足するために、PDP又は無水銀ランプに適用される新型の緑色発光材料の開発は、必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、発光強度が高く、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、その一般式がM3Gd1−xTbx(BO3)3であり、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5である。前記アルカリ土類金属Mは、Ca、Sr、Baの中から選ばれる少なくとも一種である。
【0007】
また、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法は、化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備し、前記化学量論比とは、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ここで、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜30%過量であり、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5であるステップと、各々の前記化合物を混合するステップと、前記混合された混合物に対して焼成予備処理を行い、冷却させるステップと、前記焼成された焼成物を取出して研磨し、研磨された産物を還元雰囲気中で焙焼し、冷却した後、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料を得るステップと、を含む。
【0008】
また、本発明に係る製造方法において、前記アルカリ土類金属イオンを源とする化合物は、アルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記Gd3+及びTb3+を源とする化合物は、対応する希土類金属の、酸化物又は硝酸塩である。
【0009】
また、本発明に係る製造方法において、各々の前記化合物を混合する際に、溶融助剤と共に均一に混合する。
【0010】
また、本発明に係る製造方法において、前記溶融助剤は、ホウ酸、弗化バリウムの中から選ばれる少なくとも一種である。
【0011】
また、本発明に係る製造方法において、前記焼成予備処理の温度は、200℃〜700℃であり、前記焼成予備処理の時間は、2時間〜7時間である。
【0012】
また、本発明に係る製造方法において、前記焙焼処理の温度は、900℃〜1100℃であり、前記焙焼処理の時間は、3時間〜24時間である。
【0013】
また、本発明に係る製造方法において、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%過量〜20%過量である。
【0014】
また、本発明に係る製造方法において、前記還元雰囲気は、窒素と水素との混合気体、水素、又は一酸化炭素である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料において、基質M3Gd1-XTbX(BO3)3は、150〜175nmの真空紫外線(VUV)に対して強吸収能力を有し、且つ吸収したエネルギーをGd3+イオンに伝達する。Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+がエネルギーを吸収した後、f−f遷移輻射によって緑色の光子が発射され、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達過程において、Tb3+の発光強度が向上される。本発明に係る発光材料と従来技術に比べて、以下の利点がある。(1)ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)においてGd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。(2)Mn2+の残光時間が長い特性に比べて、Tb3+は特徴的な緑光発射(540〜545nm)を有し、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くなり、ヒステリシス効果が克服される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の励起スペクトル図であり、モニタリング波長は543nmである。
【図2】本発明の実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料及び市販のBaAl12O19:Mn2+発光材料の発射スペクトル図であり、励起波長は172nmである。
【図3】本発明の実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料と比較例1に係るSr3Y0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の発射スペクトル図であり、励起波長は172nmである。
【図4】本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例及び図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、その一般式がM3Gd1−xTbx(BO3)3である。ここで、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5である。
【0019】
前記テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、M3Gd1−xTbx(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)を基質とし、ドープした発光イオンはTb3+である。その発光原理は、前記基質が真空紫外線(VUV)に対して強吸収能力を有し、且つ吸収したエネルギーが前記Tb3+イオンに伝達され、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達過程が存在し、Tb3+がエネルギーを吸収した後、f−f遷移輻射によって緑色の光子が発射され、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達過程において、Tb3+の発光強度が向上する。
【0020】
図1に示したように、150nm〜200nmの真空紫外線周波帯にある強吸収ピークは、基質吸収ピークである。実施例1に係る発光材料は、真空紫外線周波帯内で強吸収能力を有し、エネルギーをGd3+に効果的に伝達し、且つ最終的にGd−Tbのエネルギー伝達が実現され、Tb3+の543nmでの発光強度が向上する。
【0021】
図2に示したように、曲線1は、本発明に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3が172nmの励起波長での発光スペクトルであり、曲線2は、市販のBaAl12O19:Mn2+が172nmの励起波長での発光スペクトルである。前記Sr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3の543nm付近の発射強度は、市販のBaAl12O19:Mn2+の525nm付近の発射強度よりも顕著に高い。543nmの励起波長で、本実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3の発射強度は、市販のBaAl12O19:Mn2+の1.8倍である。本実施例1における発光材料の発光効率が高く、残光時間が短く、ヒステリシス効果を克服する。ホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料にドープされたテルビウムは、少なくとも以下の利点がある。(1)ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)においてGd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。(2)Mn2+の残光時間が長いという特性に比べて、Tb3+は、特徴的な緑光発射(540nm〜545nm)を有し、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くなり、ヒステリシス効果が克服される。
【0022】
図4は、本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法のフローチャートである。その製造方法は、以下のようなステップを含む。
【0023】
ステップS01では、化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備する。前記化学量論比とは、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ここで、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜30%過量であり、Mはアルカリ土類金属であり、前記アルカリ土類金属Mは、Ca、Sr、及びBaの中から選ばれる少なくとも一種であり、且つx=0.005〜0.5である。前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜20%過量であることが好ましい。
【0024】
ステップS02では、各々の前記化合物を混合する。
【0025】
ステップS03では、混合された混合物に対して焼成予備処理を行い、冷却させる。
【0026】
ステップS04では、前記焼成された焼成物を取出して研磨し、研磨された産物を還元雰囲気中で焙焼し、冷却した後、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料を得る。
【0027】
ステップS01において、前記アルカリ土類金属イオンを源とする化合物は、アルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、硝酸塩、及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、ホウ酸、及び酸化ホウ素の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記Gd3+及びTb3+を源とする化合物は、対応する希土類金属の、酸化物又は硝酸塩である。
【0028】
ステップS02において、各々の前記化合物を混合する際に、少量の溶融助剤と共に均一に混合し、前記溶融助剤は、ホウ酸、弗化バリウムの中から選ばれる少なくとも一種である。
【0029】
ステップS03において、焼成予備処理の温度は、200℃〜700℃であり、その時間は、2時間〜7時間であり、且つ室温まで冷却させる。
【0030】
ステップS04において、高温箱式炉内で、900℃〜1100℃で3時間〜24時間焙焼処理した後、自然冷却させる。前記還元雰囲気は、窒素と水素との混合気体、水素、又は一酸化炭素等である。
【0031】
以下、複数の実施例を挙げてテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の異なる組成及びその製造方法について説明する。
【0032】
(実施例1)
2.2145gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.7703gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0666gのホウ酸(H3BO3)(得た産物中におけるホウ素のモル当量に基づいて15%過量で計算して得ること、以下も同じ)、0.1402gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438g弗化バリウム(BaF2)(得た産物とのモル比の5%で秤量すること、以下も同じ)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して500℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気(H2 5%)中で、1000℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3緑色蛍光発光材料を得た。該製造方法において、弗化バリウムは、溶融助剤であるが、結晶格子内に進入しなくて、最終産物であるSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3緑色蛍光発光材料の構造及び組成に影響を与えない。
【0033】
(実施例2)
3.9201gの硝酸バリウム(Ba(NO3)3)、0.9017gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.2057gホウ酸(H3BO3)(過量15%)、0.0047gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して200℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気(H2 5%)中で、900℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ba3Gd0.995Tb0.005(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0034】
(実施例3)
2.9600gの炭酸バリウム(BaCO3)、2.1434gの硝酸ガドリニウム(Gd(NO3)3・6H2O)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.0467gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して700℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1100℃で10時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ba3Gd0.95Tb0.05(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0035】
(実施例4)
1.1114gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、0.6344gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.2804gの酸化テルビウム(Tb4O7)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して600℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1000℃で24時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ca3Gd0.7Tb0.3(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0036】
(実施例5)
2.1407gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.0370gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、0.7703gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.1402gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して700℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気体(H2 5%)中で、1000℃で12時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr2.9Ca0.1Gd0.85Tb0.15(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0037】
(実施例6)
2.0669gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.0370gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、0.0987gの炭酸バリウム(BaCO3)、0.4531gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0666gホウ酸(H3BO3)(過量15%)、0.4673gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して700℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、H2気体中で、1000℃で24時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr2.8Ca0.1Ba0.1Gd0.5Tb0.5(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0038】
(比較例1)
2.2145gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.4695gの酸化イットリウム(Y2O3)、1.0666gホウ酸(H3BO3)(過量15%)、0.1402gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して500℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気体(H2 5%)中で、1000℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr3Y0.85Tb0.15(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0039】
(比較例2)
1.5013gの炭酸バリウム(BaCO3)、0.7738gの酸化ランタン(La2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.0467gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して500℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1100℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ba3La0.95Tb0.05(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0040】
(比較例3)
1.5013gの炭酸カルシウム(CaCO3)、0.7250gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、0.0815gの酸化ランタン(La2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.0934gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して600℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1000℃で10時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ca3Gd0.8La0.1Tb0.1(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0041】
図3に示したように、実施例におけるホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)において、Gd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。一方、比較例において、ホウ酸塩M3Ln(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba、Ln=La、Yなど)においてLn3+〜Tb3+との間にエネルギー伝達が存在せず、M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)と比べると、真空紫外線の励起下で、Tb3+をドープしたM3Ln(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba、Ln=La、Y等)の発光強度が低い。図3において、曲線3は、励起波長172nmでのSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の発射スペクトルであり、曲線4は、励起波長172nmでのSr3Y0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の発射スペクトルである。
【0042】
前記Tb3+をドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料において、基質M3Gd1-XTbX(BO3)3は、150nm〜175nmの真空紫外線(VUV)に対して強吸収能力を有し、且つ吸収したエネルギーをGd3+イオンに伝達し、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の発光強度が向上される。
【0043】
本発明に係る発光材料と従来技術に比べて、以下の利点がある。(1)ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)においてGd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。(2)Mn2+の残光時間が長い特性に比べて、Tb3+は、特徴的な緑光発射(540〜545nm)を有し、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くになり、ヒステリシス効果が克服される。
【0044】
上記テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法において、焼成及び焙焼処理ことで発光材料が得られるため、製造工程が簡単し、コストが低く、且つ応用範囲が広い展望がある。
【0045】
上記の説明は、本発明の好適な実施例に関するものであり、本発明はそれに限定されず、本発明の主旨範囲内にある様々な修正や等価変換や変更などは、全て本発明の保護範囲内のものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料分野に関し、特に真空紫外線によって励起されるテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ(PDP)は、常用のCRTディスプレイ及びLCDディスプレイに比べて、視角が広く、面積が大きく、応答が速く、且つ色再現性に優れるという利点があるため、壁掛TVのような大型ディスプレイに適用される。しかも、水銀を含まない無水銀蛍光ランプは、人体に害になる水銀を含んでいないため、市販の高圧水銀ランプ及び低圧水銀ランプに比べて、環境保護に有利である。PDPの表示において、回路及び発光材料という重要技術があるが、回路設計の改善に随って、発光材料の選択がPDPの表示においてより重要な技術になった。従って、PDP及び無水銀ランプ用の三原色蛍光粉末の研究が課題としている。現在、広く使用されている三原色蛍光粉末としては、赤色粉末Y2O3:Eu3+、(Y, Gd)BO3:Eu3+、緑色粉末Zn2SiO4:Mn2+、BaAl12O19:Mn2+、及び青色粉末BaMgAl10O17:Eu2+等がある。しかし、市販の緑色粉末Zn2SiO4:Mn2+は、Mn2+のスピン禁止遷移(4T1→6A1)の発射によって、残光時間が長過ぎるので、動的画像の表示に不利であり、TVディスプレイに適用されていない。Mn2+のドープ濃度を増加することで、残光時間を短縮することができるが、発光材料の発光強度が低下する。よって、高効率且つ短い残光時間の新型緑色発光材料の開発は、特に重要である。
【0003】
近年、ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)を基質とする発光材料において、前記基質を単結晶として希土をドープして発光材料に対するレーザ特性を研究することが多いが、真空紫外線励起方面の研究は少ない。そして、Mn2+の残光時間の長い特性に比べて、Tb3+は、緑光発射(540nm〜545nm)の特徴を持っており、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くなり、ヒステリシス効果(Hysteresis)が克服される。
【0004】
従って、残光時間が長いという欠点を克服し、演色及び緑色照明の要求に満足するために、PDP又は無水銀ランプに適用される新型の緑色発光材料の開発は、必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、発光強度が高く、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、その一般式がM3Gd1−xTbx(BO3)3であり、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5である。前記アルカリ土類金属Mは、Ca、Sr、Baの中から選ばれる少なくとも一種である。
【0007】
また、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法は、化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備し、前記化学量論比とは、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ここで、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜30%過量であり、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5であるステップと、各々の前記化合物を混合するステップと、前記混合された混合物に対して焼成予備処理を行い、冷却させるステップと、前記焼成された焼成物を取出して研磨し、研磨された産物を還元雰囲気中で焙焼し、冷却した後、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料を得るステップと、を含む。
【0008】
また、本発明に係る製造方法において、前記アルカリ土類金属イオンを源とする化合物は、アルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記Gd3+及びTb3+を源とする化合物は、対応する希土類金属の、酸化物又は硝酸塩である。
【0009】
また、本発明に係る製造方法において、各々の前記化合物を混合する際に、溶融助剤と共に均一に混合する。
【0010】
また、本発明に係る製造方法において、前記溶融助剤は、ホウ酸、弗化バリウムの中から選ばれる少なくとも一種である。
【0011】
また、本発明に係る製造方法において、前記焼成予備処理の温度は、200℃〜700℃であり、前記焼成予備処理の時間は、2時間〜7時間である。
【0012】
また、本発明に係る製造方法において、前記焙焼処理の温度は、900℃〜1100℃であり、前記焙焼処理の時間は、3時間〜24時間である。
【0013】
また、本発明に係る製造方法において、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%過量〜20%過量である。
【0014】
また、本発明に係る製造方法において、前記還元雰囲気は、窒素と水素との混合気体、水素、又は一酸化炭素である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料において、基質M3Gd1-XTbX(BO3)3は、150〜175nmの真空紫外線(VUV)に対して強吸収能力を有し、且つ吸収したエネルギーをGd3+イオンに伝達する。Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+がエネルギーを吸収した後、f−f遷移輻射によって緑色の光子が発射され、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達過程において、Tb3+の発光強度が向上される。本発明に係る発光材料と従来技術に比べて、以下の利点がある。(1)ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)においてGd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。(2)Mn2+の残光時間が長い特性に比べて、Tb3+は特徴的な緑光発射(540〜545nm)を有し、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くなり、ヒステリシス効果が克服される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の励起スペクトル図であり、モニタリング波長は543nmである。
【図2】本発明の実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料及び市販のBaAl12O19:Mn2+発光材料の発射スペクトル図であり、励起波長は172nmである。
【図3】本発明の実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料と比較例1に係るSr3Y0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の発射スペクトル図であり、励起波長は172nmである。
【図4】本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例及び図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、その一般式がM3Gd1−xTbx(BO3)3である。ここで、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5である。
【0019】
前記テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料は、M3Gd1−xTbx(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)を基質とし、ドープした発光イオンはTb3+である。その発光原理は、前記基質が真空紫外線(VUV)に対して強吸収能力を有し、且つ吸収したエネルギーが前記Tb3+イオンに伝達され、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達過程が存在し、Tb3+がエネルギーを吸収した後、f−f遷移輻射によって緑色の光子が発射され、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達過程において、Tb3+の発光強度が向上する。
【0020】
図1に示したように、150nm〜200nmの真空紫外線周波帯にある強吸収ピークは、基質吸収ピークである。実施例1に係る発光材料は、真空紫外線周波帯内で強吸収能力を有し、エネルギーをGd3+に効果的に伝達し、且つ最終的にGd−Tbのエネルギー伝達が実現され、Tb3+の543nmでの発光強度が向上する。
【0021】
図2に示したように、曲線1は、本発明に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3が172nmの励起波長での発光スペクトルであり、曲線2は、市販のBaAl12O19:Mn2+が172nmの励起波長での発光スペクトルである。前記Sr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3の543nm付近の発射強度は、市販のBaAl12O19:Mn2+の525nm付近の発射強度よりも顕著に高い。543nmの励起波長で、本実施例1に係るSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3の発射強度は、市販のBaAl12O19:Mn2+の1.8倍である。本実施例1における発光材料の発光効率が高く、残光時間が短く、ヒステリシス効果を克服する。ホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料にドープされたテルビウムは、少なくとも以下の利点がある。(1)ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)においてGd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。(2)Mn2+の残光時間が長いという特性に比べて、Tb3+は、特徴的な緑光発射(540nm〜545nm)を有し、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くなり、ヒステリシス効果が克服される。
【0022】
図4は、本発明に係るテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法のフローチャートである。その製造方法は、以下のようなステップを含む。
【0023】
ステップS01では、化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備する。前記化学量論比とは、一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ここで、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜30%過量であり、Mはアルカリ土類金属であり、前記アルカリ土類金属Mは、Ca、Sr、及びBaの中から選ばれる少なくとも一種であり、且つx=0.005〜0.5である。前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜20%過量であることが好ましい。
【0024】
ステップS02では、各々の前記化合物を混合する。
【0025】
ステップS03では、混合された混合物に対して焼成予備処理を行い、冷却させる。
【0026】
ステップS04では、前記焼成された焼成物を取出して研磨し、研磨された産物を還元雰囲気中で焙焼し、冷却した後、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料を得る。
【0027】
ステップS01において、前記アルカリ土類金属イオンを源とする化合物は、アルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、硝酸塩、及び炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、ホウ酸、及び酸化ホウ素の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記Gd3+及びTb3+を源とする化合物は、対応する希土類金属の、酸化物又は硝酸塩である。
【0028】
ステップS02において、各々の前記化合物を混合する際に、少量の溶融助剤と共に均一に混合し、前記溶融助剤は、ホウ酸、弗化バリウムの中から選ばれる少なくとも一種である。
【0029】
ステップS03において、焼成予備処理の温度は、200℃〜700℃であり、その時間は、2時間〜7時間であり、且つ室温まで冷却させる。
【0030】
ステップS04において、高温箱式炉内で、900℃〜1100℃で3時間〜24時間焙焼処理した後、自然冷却させる。前記還元雰囲気は、窒素と水素との混合気体、水素、又は一酸化炭素等である。
【0031】
以下、複数の実施例を挙げてテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の異なる組成及びその製造方法について説明する。
【0032】
(実施例1)
2.2145gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.7703gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0666gのホウ酸(H3BO3)(得た産物中におけるホウ素のモル当量に基づいて15%過量で計算して得ること、以下も同じ)、0.1402gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438g弗化バリウム(BaF2)(得た産物とのモル比の5%で秤量すること、以下も同じ)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して500℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気(H2 5%)中で、1000℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3緑色蛍光発光材料を得た。該製造方法において、弗化バリウムは、溶融助剤であるが、結晶格子内に進入しなくて、最終産物であるSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3緑色蛍光発光材料の構造及び組成に影響を与えない。
【0033】
(実施例2)
3.9201gの硝酸バリウム(Ba(NO3)3)、0.9017gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.2057gホウ酸(H3BO3)(過量15%)、0.0047gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して200℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気(H2 5%)中で、900℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ba3Gd0.995Tb0.005(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0034】
(実施例3)
2.9600gの炭酸バリウム(BaCO3)、2.1434gの硝酸ガドリニウム(Gd(NO3)3・6H2O)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.0467gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して700℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1100℃で10時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ba3Gd0.95Tb0.05(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0035】
(実施例4)
1.1114gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、0.6344gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.2804gの酸化テルビウム(Tb4O7)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して600℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1000℃で24時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ca3Gd0.7Tb0.3(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0036】
(実施例5)
2.1407gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.0370gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、0.7703gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.1402gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して700℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気体(H2 5%)中で、1000℃で12時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr2.9Ca0.1Gd0.85Tb0.15(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0037】
(実施例6)
2.0669gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.0370gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、0.0987gの炭酸バリウム(BaCO3)、0.4531gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、1.0666gホウ酸(H3BO3)(過量15%)、0.4673gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して700℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、H2気体中で、1000℃で24時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr2.8Ca0.1Ba0.1Gd0.5Tb0.5(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0038】
(比較例1)
2.2145gの炭酸ストロンチウム(SrCO3)、0.4695gの酸化イットリウム(Y2O3)、1.0666gホウ酸(H3BO3)(過量15%)、0.1402gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して500℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、N2とH2との混合気体(H2 5%)中で、1000℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Sr3Y0.85Tb0.15(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0039】
(比較例2)
1.5013gの炭酸バリウム(BaCO3)、0.7738gの酸化ランタン(La2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.0467gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して500℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1100℃で5時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ba3La0.95Tb0.05(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0040】
(比較例3)
1.5013gの炭酸カルシウム(CaCO3)、0.7250gの酸化ガドリニウム(Gd2O3)、0.0815gの酸化ランタン(La2O3)、1.0202gホウ酸(H3BO3)(過量10%)、0.0934gの酸化テルビウム(Tb4O7)、0.0438gの弗化バリウム(BaF2)(5%)をめのう乳鉢内で十分に研磨した後、研磨された混合物を鋼玉るつぼ内に投入して600℃で2時間予め焼成した後、室温まで冷却させ、前記焼成物を取出して再び十分に研磨する。最後に、一酸化炭素の還元雰囲気中で、1000℃で10時間焙焼処理を行い、冷却し、研磨した後、Ca3Gd0.8La0.1Tb0.1(BO3)3緑色発光材料を得た。
【0041】
図3に示したように、実施例におけるホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)において、Gd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。一方、比較例において、ホウ酸塩M3Ln(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba、Ln=La、Yなど)においてLn3+〜Tb3+との間にエネルギー伝達が存在せず、M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)と比べると、真空紫外線の励起下で、Tb3+をドープしたM3Ln(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba、Ln=La、Y等)の発光強度が低い。図3において、曲線3は、励起波長172nmでのSr3Gd0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の発射スペクトルであり、曲線4は、励起波長172nmでのSr3Y0.85Tb0.15(BO3)3発光材料の発射スペクトルである。
【0042】
前記Tb3+をドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料において、基質M3Gd1-XTbX(BO3)3は、150nm〜175nmの真空紫外線(VUV)に対して強吸収能力を有し、且つ吸収したエネルギーをGd3+イオンに伝達し、Gd3+ 6PJエネルギー準位とTb3+との間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の発光強度が向上される。
【0043】
本発明に係る発光材料と従来技術に比べて、以下の利点がある。(1)ホウ酸ガドリニウム塩M3Gd(BO3)3(M=Ca、Sr、Ba)においてGd3+を主構造として、Gd3+−Tb3+の間にエネルギー伝達が存在し、Tb3+の緑光発射強度の向上に有利である。(2)Mn2+の残光時間が長い特性に比べて、Tb3+は、特徴的な緑光発射(540〜545nm)を有し、且つそのスピン結合がスピン禁止遷移をシールドするので、残光時間が短くになり、ヒステリシス効果が克服される。
【0044】
上記テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法において、焼成及び焙焼処理ことで発光材料が得られるため、製造工程が簡単し、コストが低く、且つ応用範囲が広い展望がある。
【0045】
上記の説明は、本発明の好適な実施例に関するものであり、本発明はそれに限定されず、本発明の主旨範囲内にある様々な修正や等価変換や変更などは、全て本発明の保護範囲内のものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料であって、
前記緑色発光材料の一般式は、M3Gd1−xTbx(BO3)3である、
(ここで、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5である)
ことを特徴とするテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属Mは、Ca、Sr及びBaの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のテルビウムをドープしたリン酸塩緑色発光材料。
【請求項3】
化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備し、前記化学量論比とは、前記一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ここで、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜30%過量であり、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5であるステップS01と、
各々の前記化合物を混合するステップS02と、
前記混合された混合物に対して焼成予備処理を行い、冷却させるステップS03と、
前記冷却された焼成物を研磨し、焙焼研磨された産物を還元雰囲気中で焙焼し、冷却した後、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料を得るステップS04と、
を含む、ことを特徴とするテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属イオンを源とする化合物は、アルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記Gd3+及びTb3+を源とする化合物は、対応する希土類金属の、酸化物又は硝酸塩である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項5】
各々の前記化合物を混合する際に、溶融助剤と共に均一に混合することを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項6】
前記溶融助剤は、ホウ酸、及び弗化バリウムの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS03における前記焼成予備処理の温度は、200℃〜700℃であり、前記焼成予備処理の時間は、2時間〜7時間である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS04における前記焙焼処理の温度は、900℃〜1100℃であり、前記焙焼処理の時間は、3時間〜24時間である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項9】
前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、モル比で10%〜20%過量である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項10】
前記還元雰囲気は、窒素と水素との混合気体、水素、又は一酸化炭素である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項1】
テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料であって、
前記緑色発光材料の一般式は、M3Gd1−xTbx(BO3)3である、
(ここで、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5である)
ことを特徴とするテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属Mは、Ca、Sr及びBaの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のテルビウムをドープしたリン酸塩緑色発光材料。
【請求項3】
化学量論比に基づいて、アルカリ土類金属イオンを源とする化合物、ホウ酸基イオンを源とする化合物、Gd3+とTb3+を源とする化合物を準備し、前記化学量論比とは、前記一般式M3Gd1−xTbx(BO3)3における相応する元素のモル比を指し、ここで、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物はモル比で10%〜30%過量であり、Mはアルカリ土類金属であり、且つx=0.005〜0.5であるステップS01と、
各々の前記化合物を混合するステップS02と、
前記混合された混合物に対して焼成予備処理を行い、冷却させるステップS03と、
前記冷却された焼成物を研磨し、焙焼研磨された産物を還元雰囲気中で焙焼し、冷却した後、テルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料を得るステップS04と、
を含む、ことを特徴とするテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属イオンを源とする化合物は、アルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、ホウ酸、酸化ホウ素の中から選ばれる少なくとも一種であり、前記Gd3+及びTb3+を源とする化合物は、対応する希土類金属の、酸化物又は硝酸塩である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項5】
各々の前記化合物を混合する際に、溶融助剤と共に均一に混合することを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項6】
前記溶融助剤は、ホウ酸、及び弗化バリウムの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS03における前記焼成予備処理の温度は、200℃〜700℃であり、前記焼成予備処理の時間は、2時間〜7時間である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS04における前記焙焼処理の温度は、900℃〜1100℃であり、前記焙焼処理の時間は、3時間〜24時間である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項9】
前記ホウ酸基イオンを源とする化合物は、モル比で10%〜20%過量である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【請求項10】
前記還元雰囲気は、窒素と水素との混合気体、水素、又は一酸化炭素である、ことを特徴とする請求項3に記載のテルビウムをドープしたホウ酸ガドリニウム塩緑色発光材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2013−520535(P2013−520535A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554192(P2012−554192)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070776
【国際公開番号】WO2011/103721
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511215230)オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070776
【国際公開番号】WO2011/103721
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511215230)オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
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