説明

テレビ受信チューナ

【課題】 平面的な大きさと高さ寸法を抑えた小型薄型化を実現できると共に放熱効果も高いテレビ受信チューナテレビ受信チューナを提供すること。
【解決手段】 テレビ受信チューナ11は、内層および外層にグラウンド層14aを有する多層配線基板14と、多層配線基板14の下面(マザーボード10との対向面)にICパッケージ12a等の高周波用半導体を実装して回路構成されたチューナ部12と、多層配線基板14の上面に中間周波用半導体を実装して回路構成された復調部13と、多層配線基板14の上面で復調部13の周囲に配置された金属製のシールド板15と、多層配線基板14の下面の外縁部に亘って列設された複数の端子16とを備えており、シールド板15は復調部13と同等の高さに設定されている。このシールド板15には凹溝部15cを介してリブ状の凸部15bが形成されており、この凹溝部15cが多層配線基板14上でグラウンド層14aに半田付けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテレビ受信チューナに係り、特に、携帯電話等の小型電子機器に内蔵可能な小型で薄型のテレビ受信チューナに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送を受信するためのテレビ受信チューナは、主に、高周波用半導体を基板に実装して回路構成されたチューナ部と、中間周波用半導体を基板に実装して回路構成された復調部とからなり、これらチューナ部と復調部を同一基板上に隣接して配設することによってテレビ受信チューナのコンパクト化を図るという技術が従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、同一基板上にチューナ部と復調部を並設するという構成を採用した場合、テレビ受信チューナ全体の平面的な大きさを十分に小さくすることができないため、携帯電話等の小型電子機器に内蔵可能な超小型のテレビ受信チューナを実現することは困難であった。
【0003】
そこで最近、図5に示すように、テレビ受信チューナ1のチューナ部2と復調部3を多層配線基板4の表裏両面に振り分けて配設することにより、平面的な大きさを極力抑えるという小型化対策が検討されている。すなわち、図5に示すテレビ受信チューナ1は、内層および外層にグラウンド層4aを有する多層配線基板4と、多層配線基板4の上面にICパッケージ2a等の高周波用半導体を実装して回路構成されたチューナ部2と、このチューナ部2の全体を覆う金属板製のシールドカバー5と、多層配線基板4の下面に中間周波用半導体を実装して回路構成された復調部3と、チューナ部2や復調部3から多層配線基板4の下面に導出された複数の端子6とによって概略構成されている。
【0004】
このように概略構成されたテレビ受信チューナ1は、マザーボード(母基板)10上の接続ランドに対応する端子6を半田付けすることによって、このマザーボード10上の所定位置に実装され、各端子6を介してチューナ部2や復調部3が図示せぬ外部回路と電気信号の授受を行うようになっている。また、ノイズの影響を受けやすいチューナ部2をシールドカバー5で覆うことによって、外来波によるノイズがチューナ部2に悪影響を及ぼさないように配慮されている。
【特許文献1】特開平6−334554号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す従来のテレビ受信チューナ1は、全体の平面的な大きさをかなり小さくすることはできるものの、全体の高さ寸法が若干大きくなってしまうため、薄型化(低背化)という点で改善の余地があった。例えば、昨今の多機能かつ小型薄型の携帯電話へ内蔵することを想定した場合、このテレビ受信チューナ1は平面的な大きさをクリアできても高さ寸法が大き過ぎてしまうため、マザーボード10上に所要の配置スペースを確保することは現実的には困難であった。具体的には、図5に示すテレビ受信チューナ1において、シールドカバー5の板厚は約0.15mm、シールドカバー5とチューナ部2との間に必要なクリアランスは0.15mm以上、チューナ部2の高さ寸法は約0.6mm、多層配線基板4の板厚は約0.5mm、端子6の高さ寸法は約0.4mmなので、全体の高さ寸法は1.8mm以上となってしまう。しかるに、昨今の携帯電話に内蔵するためには全体の高さ寸法が1.5mm以下のテレビ受信チューナが強く要望されている。
【0006】
また、図5に示すテレビ受信チューナ1では、シールドカバー5がチューナ部2の全体を覆っているため、熱源であるICパッケージ2aから発生する熱を効率良く外部へ放出することができず、放熱が不十分であるという問題があった。
【0007】
さらに、図5に示すテレビ受信チューナ1では、多層配線基板4の表裏両面に配設される電子部品の数が極端に異なり、チューナ部2側(上面)に比して復調部3側(下面)は電子部品が実装されていない空きスペースが広いため、多層配線基板4に反りが生じて信頼性を損なう虞があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、平面的な大きさと高さ寸法を抑えた小型薄型化を実現できると共に放熱効果も高いテレビ受信チューナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明のテレビ受信チューナでは、内層および外層にグラウンド層を有する多層配線基板と、この多層配線基板の表面に中間周波用半導体を実装して回路構成された復調部と、前記多層配線基板の表面に前記復調部を包囲するように搭載されて前記グラウンド層に接続された金属製のシールド板と、前記多層配線基板の裏面に高周波用半導体を実装して回路構成されたチューナ部と、前記多層配線基板の裏面の外縁部に亘って列設されてマザーボードに接続される端子群とを備え、前記多層配線基板上における前記シールド板の高さ寸法が前記復調部の高さ寸法と略同等に設定されていると共に、前記端子群が前記グラウンド層に接続されている構成とした。
【0010】
このように構成されたテレビ受信チューナは、マザーボード上において多層配線基板の裏面(下面)側にチューナ部が配設されており、このチューナ部が端子群によって包囲されていると共に、多層配線基板の表面(上面)側にシールド板が配置されているので、これら端子群とシールド板および多層配線基板のグラウンド層とによってチューナ部が覆われた状態になって良好なシールド効果を期待できる。また、このテレビ受信チューナは、多層配線基板の表裏両面に復調部とチューナ部を振り分けて配設しているため、平面的な大きさが抑制されている。しかも、このテレビ受信チューナの全体の高さ寸法は、略同等に設定されているシールド板や復調部の高さ寸法と、多層配線基板の板厚と、チューナ部の高さよりも若干大きい程度の端子の高さ寸法とを加算した値になるため、全体の高さ寸法を大幅に抑えることが容易である。さらにまた、このテレビ受信チューナは、熱源である高周波用半導体から発生する熱をグラウンド層を介してシールド板から効率良く外部へ放出することができるため、放熱効果も高い。
【0011】
上記の構成において、前記シールド板に凹溝部を介してリブ状の凸部が形成されており、前記凹溝部が前記多層配線基板上で前記グラウンド層に接続されていることが好ましく、このような構成を採用すると、シールド板の表面積が増大するため、放熱効果が一層高めることができる。しかも、リブ状の凸部によって機械的強度の高められたシールド板が復調部の周囲に配置され、隣接する凸部間に位置する凹溝部が多層配線基板の表面に固定されるので、この多層配線基板は表裏両面にバランス良く部品が配設されることになり、該基板の反りを防止することができる。
【0012】
また、上記の構成において、前記高周波用半導体と前記マザーボードとの間に熱伝導性の高い樹脂材料(例えばシリコン樹脂)からなる緩衝材を介設しておくと、この緩衝材によって高周波用半導体を機械的衝撃から保護することができると共に、この緩衝材に高周波用半導体の熱が伝導するため、放熱効果を一層高めることができて好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のテレビ受信チューナは、マザーボード上において多層配線基板の裏面側に配設されたチューナ部が端子群によって包囲されていると共に、多層配線基板の表面側の復調部の周囲にシールド板が配置されているので、これら端子群とシールド板および多層配線基板のグラウンド層とによってチューナ部が覆われた状態になって良好なシールド効果を期待できる。また、このテレビ受信チューナは、多層配線基板の表裏両面に復調部とチューナ部を振り分けて配設しているため平面的な大きさが抑制されていると共に、多層配線基板の上方に必要な高さが復調部やシールド板を配置可能な程度で良いため、全体の高さ寸法を大幅に抑えることが容易であり、小型薄型化が実現できる。また、このテレビ受信チューナは、熱源である高周波用半導体から発生する熱をグラウンド層を介してシールド板から効率良く外部へ放出することができるため放熱効果も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るテレビ受信チューナを模式的に示す断面図、図2は該テレビ受信チューナの平面図、図3は該テレビ受信チューナの底面図、図4は該テレビ受信チューナに備えられるシールド板の凹凸形状を示す部分斜視図である。
【0015】
図1〜図3に示すテレビ受信チューナ11は、マザーボード(母基板)10上に実装した状態で携帯電話に内蔵されるものであり、多層配線基板14の下面(裏面)と上面(表面)にそれぞれチューナ部12と復調部13を振り分けて配設することによって平面的な大きさを極力抑えるという小型化を図っている。また、このテレビ受信チューナ11は、多層配線基板14の上面側の復調部13の周囲に凹凸形状のシールド板15を配設することによってシールド効果と放熱効果を高めていると共に、このシールド板15を復調部13と同等の高さ寸法に設定することによって全体の高さ寸法を極力抑えるという薄型化(低背化)を図っている。
【0016】
すなわち、このテレビ受信チューナ11は、内層および外層にグラウンド層14aを有する多層配線基板14と、多層配線基板14の下面(マザーボード10との対向面)にICパッケージ12a等の高周波用半導体を実装して回路構成されたチューナ部12と、多層配線基板14の上面に中間周波用半導体を実装して回路構成された復調部13と、復調部13を露出させる開口15aを除いて多層配線基板14の上面を覆うように配置されたシールド板15と、多層配線基板14の下面の外縁部に亘って列設された複数の端子16とによって概略構成されている。ただし、多層配線基板14とチューナ部12および復調部13については、図5に示す従来例と基本的な構造の差異はない。
【0017】
シールド板15は金属薄板をプレス加工して図4に示すような凹凸形状にフォーミングしたものであり、図2に示すように、シールド板15の中央部には復調部13を露出させるための開口15aが形成されている。また、シールド板15には開口15aを包囲するように一対のリブ状の凸部15bが形成されており、図1に示すように、これら凸部15b間に形成された凹溝部15cの底面は多層配線基板14上でグラウンド層14aに半田付けされている。なお、このシールド板15の高さ寸法(凸部15bの突出量)は復調部13の高さ寸法と同等に設定されており、本実施形態例の場合、復調部13とシールド板15の高さ寸法は約0.3mmに設定されている。
【0018】
図3に示すように、端子16はフリップチップ実装できるように球形のバンプ電極となっており、これら端子16群は多層配線基板14の下面外縁部に所定の間隔を存して枠状に列設されている。そして、各端子16をマザーボード10上の対応する接続ランドに半田付けすることによって、このマザーボード10上にテレビ受信チューナ11が実装され、所定の端子16を介してチューナ部12や復調部13が図示せぬ外部回路と電気信号の授受を行うようになっている。なお、多層配線基板14はマザーボード10上で端子16群に支えられるので、本実施形態例の場合、各端子16の高さ寸法はチューナ部12の高さ寸法(約0.6mm)よりも若干大きい約0.65mmに設定されている。
【0019】
また、このテレビ受信チューナ11には、チューナ部12のICパッケージ12aとマザーボード10との間の間隙に熱伝導性の高いシリコン樹脂等からなる緩衝材17が介在させてある。つまり、ICパッケージ12aが多層配線基板14と緩衝材17との間に挟持された状態になっている。
【0020】
このように本実施形態例に係るテレビ受信チューナ11では、マザーボード10上において多層配線基板14の下面側にチューナ部12が配設されており、このチューナ部12が端子16群によって包囲されていると共に、多層配線基板14の上面側がシールド板15によって広く覆われているので、これら端子16群とシールド板15および多層配線基板14のグラウンド層14aとによってチューナ部12が覆われた状態になっている。それゆえ、このテレビ受信チューナ11はチューナ部12に対するシールド効果が高く、外来波によるノイズがチューナ部12に悪影響を及ぼしにくくなっている。
【0021】
また、このテレビ受信チューナ11では、平面的な大きさを抑制するために多層配線基板14の表裏両面に復調部13とチューナ部12を振り分けて配設しているが、図5に示す従来例と異なり多層配線基板14の上面側に復調部13を配設しているため、多層配線基板14の上方に必要とされる高さが復調部13とシールド板15を配置可能な僅かなスペースで済み、よって全体の高さ寸法が大幅に低減されている。具体的には、このテレビ受信チューナ11の全体の高さ寸法は、復調部13やシールド板15の高さ寸法(約0.3mm)と、多層配線基板14の板厚(約0.5mm)と、端子16の高さ寸法(約0.65mm)とを加算した値(約1.45mm)になっており、昨今の携帯電話に内蔵するために必要とされる1.5mm以下の高さ寸法が実現されている。
【0022】
また、このテレビ受信チューナ11では、ICパッケージ12a等の高周波用半導体から発生する熱がグラウンド層14aを介してシールド板15へ伝導されるが、このシールド板15は凹凸形状に成形されて表面積の大きなヒートシンクとして機能するため、極めて良好な放熱効果が期待できる。しかも、シールド板15はリブ状の凸部15bによって機械的強度が高められており、このように機械的強度に富むシールド板15が復調部の周囲に配置された状態で、隣接する凸部15b間に位置する凹溝部15cが多層配線基板14の上面に固定されているので、この多層配線基板14は表裏両面にバランス良く部品が配設されることになって反りの発生が未然に防止されている。
【0023】
また、このテレビ受信チューナ11では、ICパッケージ12aとマザーボード10との間にシリコン樹脂等からなる緩衝材17が介在させてあるので、この緩衝材17によってICパッケージ12aを機械的衝撃から保護することができて信頼性が高まっている。しかも、熱源であるICパッケージ12aから発生した熱の一部を緩衝材17に伝導させて放出させることができるため、この緩衝材17は放熱効果の向上にも寄与している。
【0024】
なお、上記実施形態例では、本発明によるテレビ受信チューナを携帯電話に内蔵した場合について説明したが、携帯電話以外の小型電子機器に内蔵した場合でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態例に係るテレビ受信チューナを模式的に示す断面図である。
【図2】該テレビ受信チューナの平面図である。
【図3】該テレビ受信チューナの底面図である。
【図4】該テレビ受信チューナに備えられるシールド板の凹凸形状を示す部分斜視図である。
【図5】従来例に係るテレビ受信チューナを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 マザーボード(母基板)
11 テレビ受信チューナ
12 チューナ部
12a ICパッケージ
13 復調部
14 多層配線基板
14a グラウンド層
15 シールド板
15a 開口
15b 凸部
15c 凹溝部
16 端子
17 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層および外層にグラウンド層を有する多層配線基板と、この多層配線基板の表面に中間周波用半導体を実装して回路構成された復調部と、前記多層配線基板の表面に前記復調部を包囲するように搭載されて前記グラウンド層に接続された金属製のシールド板と、前記多層配線基板の裏面に高周波用半導体を実装して回路構成されたチューナ部と、前記多層配線基板の裏面の外縁部に亘って列設されてマザーボードに接続される端子群とを備え、
前記多層配線基板上における前記シールド板の高さ寸法が前記復調部の高さ寸法と略同等に設定されていると共に、前記端子群が前記グラウンド層に接続されていることを特徴とするテレビ受信チューナ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記シールド板に凹溝部を介してリブ状の凸部が形成されており、前記凹溝部が前記多層配線基板上で前記グラウンド層に接続されていることを特徴とするテレビ受信チューナ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記高周波用半導体と前記マザーボードとの間に熱伝導性の高い樹脂材料からなる緩衝材が介設されていることを特徴とするテレビ受信チューナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−229447(P2006−229447A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39235(P2005−39235)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】