説明

テンション測定装置及び糸巻取装置

【課題】 風綿の付着、堆積に起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができるテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置を提供する。
【解決手段】 テンションセンサ6は、糸道に沿って走行する糸Yのテンションを測定するテンション測定装置である。テンションセンサ6は、ベース20と、ベース20に取り付けられ、糸Yの接触によって変形させられる変形部30と、ベース20において変形部30が取り付けられた空間Sに向けてエアーを吹くブロー機構70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸道に沿って走行する糸のテンションを測定するテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給糸ボビンからパッケージに糸を巻き取る糸巻取装置が知られている。このような糸巻取装置には、テンション付与部によって付与された糸のテンションを測定するために、テンション測定装置が搭載される場合がある。例えば、特許文献1には、走行する糸が接触する糸ガイドと、糸ガイドを支持する支持体と、支持体が取り付けられた弾性板と、弾性板が取り付けられた内ケースと、内ケースを収容する外ケースと、内ケースと外ケースとの間に充填された樹脂層と、を備えるテンションセンサが記載されている。このテンションセンサにおいては、弾性板の歪に基づいて糸のテンションが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−38722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のテンションセンサでは、糸から発生した風綿が糸ガイド等に付着、堆積し、その結果、糸と糸ガイドとの接触状態が変化して糸のテンションの測定精度が劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、風綿の付着、堆積に起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができるテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテンション測定装置は、糸道に沿って走行する糸のテンションを測定するテンション測定装置であって、ベースと、ベースに取り付けられ、糸の接触によって変形させられる変形部と、ベースにおいて変形部が配置された空間に向けてエアーを吹くブロー機構と、を備える。
【0007】
このテンション測定装置では、変形部が配置された空間内の風綿をブロー機構から吹かれたエアーにより除去することができる。従って、風綿の付着、堆積に起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0008】
また、ブロー機構は、ベースに設けられたエアー流路を有してもよい。この構成によれば、部品点数を減少させて構成の簡易化や省スペース化を図ることができる。
【0009】
また、ベースは、一方の側に変形部が取り付けられた側壁部と、側壁部から一方の側に延在する上壁部と、側壁部から一方の側に延在する下壁部と、を有し、ブロー機構は、上壁部に設けられ、下側にエアーを噴射する第1噴射孔と、変形部に対して下側に位置するように側壁部に設けられ、一方の側にエアーを噴射する第2噴射孔と、を有してもよい。この構成によれば、空間内の風綿を効率良く除去することができる。
【0010】
また、テンション測定装置は、変形部において糸が接触する接触部を露出させた状態で、変形部を覆うカバー体を更に備えてもよい。この構成によれば、変形部における接触部以外の部分に風綿が付着、堆積するのを抑制することができる。
【0011】
また、テンション測定装置は、変形部と第1噴射孔との間に配置され、糸を接触部に案内するガイド板を更に備えてもよい。この構成によれば、第1噴射孔から噴射されたエアーがガイド板によって分散されて接触部に直接的に吹き付けられることが防止されるので、カバーと変形部との隙間からカバー内に風綿が侵入するのを抑制することができる。
【0012】
また、テンション測定装置は、上壁部に設けられ、糸と接触する上側ヤーンガイドと、下壁部に設けられ、糸と接触する下側ヤーンガイドと、を更に備えてもよい。この構成によれば、落下して下側ヤーンガイドに付着、堆積し易い風綿を、第2噴射孔から噴射されるエアーにより除去することができる。
【0013】
また、ブロー機構は、糸が切断された場合にエアーを吹いてもよい。或いは、ブロー機構は、所定時間毎にエアーを吹いてもよい。これらの構成によれば、エアーを吹くタイミングを必要最小限に抑制することができる。
【0014】
本発明の糸巻取装置は、上述した本発明のテンション測定装置と、糸を巻き取る巻取部と、を備える。この糸巻取装置によれば、上述したように糸のテンションを精度良く測定することができるテンション測定装置を備えているので、所定テンションでの糸の巻取りを実現することができる。
【0015】
また、糸巻取装置は、糸道に沿ってテンション測定装置の上流側に配置され、糸に所定テンションを付与するテンション付与部を更に備えてもよい。この構成によれば、精度良く測定された糸のテンションに基づいてテンション付与部をフィードバック制御することができるため、所定テンションでの糸の巻取りをより確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、風綿の付着、堆積に起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができるテンション測定装置、及びそのようなテンション測定装置を備える糸巻取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の糸巻取装置である巻取ユニットの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態のテンション測定装置であるテンションセンサの縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿ってのテンションセンサの断面図である。
【図4】図2のテンションセンサの一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示されるように、巻取ユニット(糸巻取装置)1は、給糸ボビンBからパッケージPに糸Yを巻き取る装置である。給糸ボビンBは、前工程の精紡機で形成され、例えば、トレーにセットされた状態で精紡機から搬送される。なお、複数の巻取ユニット1が並設されることで自動ワインダが構成されている。
【0020】
巻取ユニット1には、ボビン支持部2、糸解舒補助装置3、プレクリアラ4、ゲート式テンサ(テンション付与部)5、テンションセンサ(テンション測定装置)6、下糸捕捉装置7、スプライサ8、カッター9、ヤーンクリアラ11、上糸捕捉装置12及び巻取部13が、糸Yの走行経路(すなわち、糸道)に沿って上流側(ここでは、下側)から順に設けられている。これらの各構成は、機台14に取り付けられている。また、巻取ユニット1には、巻取ユニット1の各構成を制御する制御部15、及び巻取ユニット1の動作状況等を表示するディスプレイ(表示部)16が設けられている。制御部15は、自動ワインダの全体を制御する制御装置との間で、ワインディング動作に関する種々の情報を送受信する。
【0021】
ボビン支持部2は、給糸ボビンBを直立させた状態で支持する。糸解舒補助装置3は、給糸ボビンBの上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビンBから解舒された糸Yのバルーンを制御する。ゲート式テンサ5は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付与する。テンションセンサ6は、糸道に沿って走行する糸Yのテンションを測定する装置である。制御部15は、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションに基づいて、走行する糸Yに所定テンションが付与されるようにゲート式テンサ5をフィードバック制御する。
【0022】
プレクリアラ4は、糸道を挟んで所定間隔で配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を予め規制する。ヤーンクリアラ11は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠点を検出する。カッター9は、プレクリアラ4によって糸欠点の通過が規制されたとき、或いはヤーンクリアラ11によって糸欠点が検出されたときに、糸Yを切断する。スプライサ8は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時に、給糸ボビンB側の糸端とパッケージP側の糸端とを継ぐ。
【0023】
下糸捕捉装置7は、軸線αを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口7aが設けられている。吸引口7aは、スプライサ8の上部とプレクリアラ4の下部との間で回動する。上糸捕捉装置12は、軸線βを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口12aが設けられている。吸引口12aは、スプライサ8の下部と巻取部13との間で回動する。これにより、下糸捕捉装置7は、下方向に回動して吸引口7aで給糸ボビンB側の糸端を吸引し、その後、上方向に回動して給糸ボビンB側の糸端をスプライサ8に引き渡す。一方、上糸捕捉装置12は、上方向に回動して吸引口12aでパッケージP側の糸端を吸引し、その後、下方向に回動してパッケージP側の糸端をスプライサ8に引き渡す。
【0024】
巻取部13は、給糸ボビンBから解舒された糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する。巻取部13は、ドラム溝17aが形成された巻取ドラム17、及びパッケージPを回転可能に支持するクレードル18を有している。クレードル18は、パッケージPの表面を巻取ドラム17の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取部13は、モータで巻取ドラム17を駆動回転させてパッケージPを従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸YをパッケージPに巻き取っていく。
【0025】
次に、上述したテンションセンサ6について、より詳細に説明する。テンションセンサ6では、糸道に沿って上流側が下側、その反対側が上側となっている。なお、以下の説明では、便宜上、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yが導入出される側を前側、その反対側を後側という。
【0026】
図2及び図3に示されるように、テンションセンサ6は、金属により一体的に形成されたベース20を備えている。ベース20は、側壁部21、上壁部22及び下壁部23を有している。側壁部21は、上下方向に沿って立設されている。上壁部22は、側壁部21の上端部における後側の部分から水平方向に沿って一方の側(糸道側)に延在している。下壁部23は、側壁部21の下端部における後側の部分から水平方向に沿って一方の側に延在している。糸道は、側壁部21の一方の側において上下方向に沿って延在している。上壁部22は、糸道の手前で終端しており、下壁部23は、糸道が通る切欠き23aを有している。切欠き23aは、前側に開口している。
【0027】
ベース20は、更に、後壁部24、縦壁部25及び横壁部26を有している。後壁部24は、側壁部21の後端部における上側の部分から一方の側に延在している。縦壁部25は、側壁部21に対して他方の側において上下方向に沿って延在している。横壁部26は、縦壁部25の下端部から前側に延在しており、側壁部21の下端部に接続されている。
【0028】
側壁部21における一方の側の側面21aには、糸Yの接触によって変形させられる変形部30が、上壁部22と下壁部23との間に位置するように取り付けられている。つまり、変形部30は、側壁部21、上壁部22、下壁部23及び後壁部24により囲まれた空間Sに配置されている。変形部30は、金属により一体的に形成されたロードセル部31及びロッド部34を有し、より詳細には、次のように構成されている。
【0029】
すなわち、側壁部21の側面21aの上下方向略中央部には、ロードセル部31の前端部(一端部)31aがボルト32によって取り付けられている。ロードセル部31は、前後方向に沿って延在する直方体状に形成されており、その側面には、歪ゲージ33が例えば印刷等によって設けられている。ロードセル部31の後端部(他端部)31bには、ロッド部34の後端部(他端部)34bが接続されている。ロッド部34は、前後方向に沿って延在する円柱状(ただし、後端部34bは直方体状)に形成されており、その前端部(一端部)34aには、糸Yに対して他方の側(側壁部21側)から接触する接触部36が設けられている。接触部36は、糸Yとの摩擦抵抗が低く且つ摩耗の少ないセラミック等の材料により円筒状に形成されており、その周面には、糸Yが安定して接触するように溝36aが設けられている。
【0030】
ベース20の上壁部22の一方の側の端部には、糸Yに対して他方の側から接触する上側ヤーンガイド51が取り付けられている。上側ヤーンガイド51とテンションセンサ6の外側の空間との間には、遮蔽するものが介在しないようにされている。一方、ベース20の下壁部23の切欠き23aには、糸Yに対して他方の側から接触する下側ヤーンガイド52が取り付けられている。上側ヤーンガイド51及び下側ヤーンガイド52は、糸Yとの摩擦抵抗が低く且つ摩耗の少ないセラミック等の材料により板状に形成されている。これにより、糸道に沿って走行する糸Yが、ロッド部34の接触部36、上側ヤーンガイド51及び下側ヤーンガイド52の三箇所に接触して所定角度で屈曲し、糸Yのテンションに応じて、ロッド部34を介してロードセル部31に歪を生じさせる。そして、ロードセル部31に歪が生じると、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号が歪ゲージ33から出力される。
【0031】
ベース20の横壁部26の上面26aには、変形部30の変形に基づいて糸Yのテンションを電気信号として検出する検出部40が取り付けられている。検出部40は、ケーシング41及び回路基板43を有し、より詳細には、次のように構成されている。
【0032】
すなわち、横壁部26の上面26aには、ベース20に対して他方の側に並設されたケーシング41の取付部41aがボルト42によって取り付けられている。ケーシング41は、樹脂により直方体箱状に形成されている。ケーシング41には、糸Yのテンションを電気信号として検出するためにその電気信号を処理する回路基板43が収容されている。回路基板43は、配線44を介して歪ゲージ33と電気的に接続されており、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号を歪ゲージ33から取得し、その電気信号に基づいて糸Yのテンションを電気信号として出力する。
【0033】
図2及び図4に示されるように、ベース20の上側には、側壁部21の上端面21b及び上壁部22の上面22aに亘るように、ガイド板53が配置されている。ガイド板53は、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yを上側ヤーンガイド51に案内する。ガイド板53は、側壁部21の上端面21bにボルト54によって固定されている。ガイド板53と上壁部22との間、及びガイド板53と上側ヤーンガイド51との間には、僅かな隙間が設けられている。
【0034】
一方、ベース20の下側には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yを下側ヤーンガイド52に案内するガイド板55が配置されている。ガイド板55は、巻取ユニット1の機台14側に設けられた台座14aに取り付けられている。テンションセンサ6は、ベース20の横壁部26の下面26bに台座14aがボルト56(図3参照)によって取り付けられることで、台座14aに支持されている。
【0035】
図3及び図4に示されるように、ベース20の側壁部21の前端面21cには、樹脂により形成されたカバー61がボルト62によって取り付けられている。カバー61は、ベース20の上壁部22と下壁部23との間において変形部30を覆っている。カバー61には、糸Yを支持するロッド部34の前端部34aを突出させる凹部61aが形成されている。凹部61aの底面には、粘着性を有する円環状の弾性部材63が僅かな隙間を介してロッド部34を包囲するように配置されている。この状態で、凹部61aには、樹脂により形成された包囲部材64が嵌められている。これにより、変形部30を覆うカバー61内に風綿が侵入して糸Yのテンションの測定精度が劣化するのを防止することができる。包囲部材64は、ロッド部34の接触部36を露出させた状態で、ロッド部34の前端部34aを覆っている。以上の包囲部材64及びカバー61によってカバー体60が構成されている。カバー体60は、変形部30において糸Yが接触する接触部36を露出させた状態で、変形部30を覆っている。
【0036】
カバー61及び包囲部材64には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをロッド部34の接触部36に案内するガイド板57(図2参照)が取り付けられている。ガイド板57には、糸道が通る切欠き57aが設けられている。
【0037】
図2に示されるように、ベース20には、ブロー機構70が設けられている。ブロー機構70は、主に空間Sに向けてエアーを吹くものである。ブロー機構70は、第1エアー流路71、第2エアー流路72、及び第3エアー流路73を有している。
【0038】
第1エアー流路71は、上下方向に沿って延在するように縦壁部25内に形成されている。第1エアー流路71の上端部71aは、縦壁部25の上面を貫通しないように、縦壁部25の上面の手前で終端している。第1エアー流路71の下端部71bは、縦壁部25の下面を貫通しており、ケーシング41を介して巻取ユニット1のエアー供給源(不図示)に接続されている。
【0039】
第2エアー流路72は、第1エアー流路71の上端部71aから一方の側に延在するように、縦壁部25の上端部、側壁部21の上端部及び上壁部22に形成されている。第2エアー流路72における一方の側の端部72bは、上壁部22の側面を貫通しないように、上壁部22の側面の手前で終端している。第2エアー流路72の一方の側の端部72bには、下側に開口した第1エアー噴射孔(第1噴射孔)74と、上側に開口した第3エアー噴射孔(第3噴射孔)75とが設けられている。第1エアー噴射孔74は、上壁部22の下面22bに開口している。つまり、第1エアー噴射孔74と変形部30との間にガイド板57が配置されている。第3エアー噴射孔75は、上壁部22の上面22aに開口している。
【0040】
第3エアー流路73は、第1エアー流路71の下端部71bから分岐して一方の側に延在するように、側壁部21の下端部内に形成されている。第3エアー流路73の端部には、一方の側に向けて開口した第2エアー噴射孔(第2噴射孔)76が設けられている。第2エアー噴射孔76は、側面21aに配置されており、変形部30に対して下側に位置し、且つ下側ヤーンガイド52に対して上側に位置している。第2エアー噴射孔76とテンションセンサ6の外側の空間との間には、遮蔽するものが介在しないようにされている。
【0041】
ブロー機構70がエアーを吹くタイミングは、制御部15によって制御される。例えば、ブロー機構70は、糸欠点検出時や糸切れ時等、糸Yが切断された場合にエアーを吹くように制御される。或いは、ブロー機構70は、所定時間毎(例えば3分毎)にエアーを吹くように制御されてもよい。
【0042】
このような構成のテンションセンサ6では、糸道に沿って走行する糸Yが、ロッド部34の接触部36、上側ヤーンガイド51、及び下側ヤーンガイド52の三箇所に接触して所定角度で屈曲し、糸Yのテンションに応じて、ロッド部34を介してロードセル部31に歪を生じさせる。そして、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号が歪ゲージ33から出力されると、回路基板43が、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号に基づいて、糸Yのテンションを電気信号として出力する。このように、テンションセンサ6では、変形部30がロードセル部31及びロッド部34によって構成されているため、ロードセル部31の歪に基づいて糸Yのテンションを電気信号として容易に且つ確実に検出することができる。
【0043】
そして、本実施形態のテンションセンサ6では、制御部15からの指令に基づき、エアー供給源から所定のタイミングで第1エアー流路71にエアーが供給される。第1エアー流路71に供給されたエアーの一部は、第2エアー流路72を通過する。第2エアー流路72を通過したエアーは、第1エアー噴射孔74から空間S内に向けて下側に噴射されると共に、第3エアー噴射孔75から上壁部22とガイド板53との隙間を通って上側ヤーンガイド51周りに噴射される。
【0044】
第1エアー噴射孔74から空間S内に噴射されたエアーは、ガイド板57に向けて吹き付けられ、ガイド板57により分散される。ガイド板57により分散されたエアーは、ガイド板57の切欠き57a等からガイド板57の下方に回りこみ、接触部36の周囲を通過して、空間Sの下部に至る。これにより、空間S内に浮遊する風綿や、接触部36、カバー61及び包囲部材64等に付着、堆積した風綿は、第1エアー噴射孔74から噴射されたエアーにより除去される。また、上述のように、上側ヤーンガイド51とテンションセンサ6との間には遮蔽するものが介在しないため、上側ヤーンガイド51に付着、堆積した風綿は、第3エアー噴射孔75から噴射されたエアーにより、テンションセンサ6の外側の空間に排出される。
【0045】
第1エアー流路71に供給されたエアーの他部は、第3エアー流路73を通過して、第2エアー噴射孔76から一方の側に噴射される。上述のように、第2エアー噴射孔76とテンションセンサ6の外側の空間との間には遮蔽するものが介在しないため、空間Sの下部の風綿は、第2エアー噴射孔76から噴射されたエアーにより、テンションセンサ6の外側の空間に排出される。また、下側ヤーンガイド52は、下壁部23の切欠き23aに設けられているため、テンションセンサ6の外側の空間には直接接しておらず、落下した風綿が付着、堆積しやすい。これに対し、本実施形態のテンションセンサ6では、下側ヤーンガイド52に対して、第2エアー噴射孔76から直接エアーが噴射されるので、下側ヤーンガイド52に付着、堆積した風綿は、第2エアー噴射孔76から噴射されたエアーにより、テンションセンサ6の外側の空間に排出される。
【0046】
以上、本実施形態に係るテンションセンサ6では、変形部30が配置された空間S内の風綿をブロー機構70から吹かれたエアーにより除去することができる。従って、風綿の付着、堆積に起因する糸のテンションの測定精度の劣化を抑制することができる。
【0047】
特に、テンションセンサ6では、上述のように、接触部36、上側ヤーンガイド51及び下側ヤーンガイド52に付着、堆積した風綿がブロー機構70から吹かれたエアーにより良好に除去されるため、接触部36、上側ヤーンガイド51及び下側ヤーンガイド52における摩擦係数や屈曲角度等の接触状態が良好に保たれる。
【0048】
また、テンションセンサ6では、ブロー機構70は、ベース20に設けられた第1エアー流路71、第2エアー流路72及び第3エアー流路73を有するため、部品点数を減少させて構成の簡易化や省スペース化を図ることができる。
【0049】
また、テンションセンサ6では、ベース20は、一方の側に変形部30が取り付けられた側壁部21と、側壁部21から一方の側に延在する上壁部22と、側壁部21から一方の側に延在する下壁部23とを有し、ブロー機構70は、上壁部22に設けられ、下側にエアーを噴射する第1エアー噴射孔74と、変形部30に対して下側に位置するように側壁部21に設けられ、一方の側にエアーを噴射する第2エアー噴射孔76とを有するため、上述のように、第1エアー噴射孔74から噴射されたエアーにより、空間S内に浮遊する風綿や、接触部36、カバー61及び包囲部材64等に付着、堆積した風綿を除去し、第2エアー噴射孔76から噴射されたエアーにより空間Sの下部の風綿をテンションセンサ6の外側の空間に排出できるため、空間S内の風綿を効率良く除去することができる。
【0050】
また、テンションセンサ6は、変形部30において糸が接触する接触部36を露出させた状態で、変形部を覆うカバー61及び包囲部材64を更に備えるため、変形部30における接触部36以外の部分に風綿が付着、堆積するのを抑制することができる。
【0051】
また、テンションセンサ6は、変形部30と第1エアー噴射孔74との間に配置され、糸を接触部36に案内するガイド板57を更に備えるため、第1エアー噴射孔74から噴射されたエアーがガイド板57によって分散されて接触部36に直接的に吹き付けられることが防止されるので、カバー61及び包囲部材64と、変形部30との隙間からカバー61及び包囲部材64内に風綿が侵入するのを抑制することができる。
【0052】
また、テンションセンサ6は、上壁部22に設けられ、糸Yと接触する上側ヤーンガイド51と、下壁部23に設けられ、糸Yと接触する下側ヤーンガイド52と、を更に備えるため、落下して下側ヤーンガイド52に付着、堆積し易い風綿を、第2エアー噴射孔76から噴射されるエアーにより除去することができる。
【0053】
また、テンションセンサ6では、ブロー機構70は、糸欠点検出時や糸切れ時等、糸が切断された場合にエアーを吹くように制御される。或いは、テンションセンサ6では、ブロー機構70は、所定時間毎にエアーを吹くように制御される。従って、エアーを吹くタイミングを必要最小限に抑制することができ、エアーが糸のテンションの測定に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態の巻取ユニット1は、テンションセンサ6と、糸を巻き取る巻取部13とを備えており、上述したようにテンションセンサ6により糸のテンションを精度良く測定することができるので、所定テンションでの糸の巻取りを実現することができる。
【0055】
また、巻取ユニット1では、テンションセンサ6によって精度良く測定された糸Yのテンションに基づいてゲート式テンサ5をフィードバック制御することができるため、所定テンションでの糸Yの巻取りを確実に実現することができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、糸道に沿ってテンションセンサ6の上流側が下側、その反対側が上側となっているが、これが逆になっていてもよい。
【0057】
また、ゲート式テンサ5に代えて、いわゆるディスク式テンサ等、糸道に沿って走行する糸Yに所定テンションを付与することができる他のテンション付与部を適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…巻取ユニット(糸巻取装置)、5…ゲート式テンサ(テンション付与部)、6…テンションセンサ(テンション測定装置)、13…巻取部、20…ベース、21…側壁部、22…上壁部、23…下壁部、30…変形部、36…接触部、51…上側ヤーンガイド、52…下側ヤーンガイド、57…ガイド板、60…カバー体、70…ブロー機構、74…第1エアー噴射孔(第1噴射孔)、76…第2エアー噴射孔(第2噴射孔)、Y…糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸道に沿って走行する糸のテンションを測定するテンション測定装置であって、
ベースと、
前記ベースに取り付けられ、前記糸の接触によって変形させられる変形部と、
前記ベースにおいて前記変形部が配置された空間に向けてエアーを吹くブロー機構と、を備えることを特徴とするテンション測定装置。
【請求項2】
前記ブロー機構は、
前記ベースに設けられたエアー流路を有することを特徴とする請求項1に記載のテンション測定装置。
【請求項3】
前記ベースは、
一方の側に前記変形部が取り付けられた側壁部と、
前記側壁部から前記一方の側に延在する上壁部と、
前記側壁部から前記一方の側に延在する下壁部と、を有し、
前記ブロー機構は、
前記上壁部に設けられ、下側にエアーを噴射する第1噴射孔と、
前記変形部に対して下側に位置するように前記側壁部に設けられ、前記一方の側にエアーを噴射する第2噴射孔と、を有することを特徴とする請求項2に記載のテンション測定装置。
【請求項4】
前記変形部において前記糸が接触する接触部を露出させた状態で、前記変形部を覆うカバー体を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のテンション測定装置。
【請求項5】
前記変形部と前記第1噴射孔との間に配置され、前記糸を前記接触部に案内するガイド板を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のテンション測定装置。
【請求項6】
前記上壁部に設けられ、前記糸と接触する上側ヤーンガイドと、
前記下壁部に設けられ、前記糸と接触する下側ヤーンガイドと、を更に備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のテンション測定装置。
【請求項7】
前記ブロー機構は、前記糸が切断された場合にエアーを吹くことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のテンション測定装置。
【請求項8】
前記ブロー機構は、所定時間毎にエアーを吹くことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のテンション測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のテンション測定装置と、
前記糸を巻き取る巻取部と、を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項10】
前記糸道に沿って前記テンション測定装置の上流側に配置され、前記糸に所定テンションを付与するテンション付与部を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68485(P2013−68485A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206523(P2011−206523)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】