説明

テープカセットとテープ印字装置

【課題】印字媒体であるテープの排出ずれを抑えたテープカセットとテープ印字装置を提供すること。
【解決手段】テープ印字装置のカセット装着部にテープカセット1A,1Bが装着された際に、テープ印字装置のカセット装着部の底面106に突設されている支持受け用部材131がテープカセット1A,1Bの支持受け面31A,31Bに対して下方向から突き当たる。これによって、テープカセット1A,1Bのアーム部51A,51Bの先端部分に設けられている排出口52A,52Bの位置が固定され、印字時には、そのように位置が下方向から固定された排出口52A,52Bから印字媒体であるテープ3A,3Bが排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル作成に使用されるテープカセットとテープ印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、テープ印字装置に装着されるテープカセットには、例えば、下記特許文献1に記載されているような「アーム通路」が設けられている。
【0003】
そして、テープカセットを装着したテープ印字装置が印字状態になると、「アーム通路」の先端部分からは、テープカセット内のテープ(印字媒体)がテープ印字装置の印字ヘッドに向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−37575号公報(第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、「アーム通路」は、テープカセットがテープ印字装置に装着された場合には、片持ち梁のような状態になっている。従って、テープカセットがテープ印字装置に正しく装着されていても、「アーム通路」の変形具合によっては、「アーム通路」の先端部分から排出されたテープ(印字媒体)に位置ずれが生じ、印字精度などの品質に影響を与えることがあった。
【0006】
特に、テープカセットは、テープ(印字媒体)を収納するために、2分割成形された上下のカセットケースを接合することによって製造されることから、その製造過程から生じた反りなどによって、「アーム通路」が当初から多少変形している可能性が全くない訳ではない。
【0007】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、印字媒体であるテープの排出ずれを抑えたテープカセットとテープ印字装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、カセット装着部に印字ヘッドを備えたテープ印字装置に着脱自在なテープカセットであって、カセットケース本体と、前記カセットケース本体内に収納される、印字媒体であるテープと、前記カセットケース本体の側面又は底面に設けられた複数の位置決め部と、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着された場合に前記印字ヘッドが挿入される空間であって、前記カセットケース本体を上下方向に貫通し、且つ、当該テープカセットの前面に沿って伸びるヘッド挿入部と、前記カセットケース本体の側面に突設されるとともに前記ヘッド挿入部に向けて開口する排出口を先端部分に有し、前記テープを前記排出口から前記ヘッド挿入部に向けて排出するアーム部と、を有し、テープ印字装置のカセット装着部に突設された複数の位置決め用部材が前記複数の位置決め部に対してそれぞれ下方向から突き当たることによって、前記テープ印字装置のカセット装着部に装着され、前記アーム部が片持ち梁状態となるテープカセットにおいて、前記アーム部の先端部分の側面に設けられた支持受け面を備え、前記テープ印字装置のカセット装着部に装着された際に、前記テープ印字装置のカセット装着部に突設された支持受け用部材が前記支持受け面に対して下方向から突き当たることによって、前記アーム部の先端部分に設けられた前記排出口の位置が固定されること、を特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のテープカセットであって、前記アーム部の先端部分の側面において平面視で前記支持受け面と重なる位置に設けられた押下受け面を備え、前記テープ印字装置のカセット装着部に装着された際に、前記テープ印字装置の蓋部に突設された押下受け用部材が前記押下受け面に対して上方向から突き当たることによって、前記アーム部の先端部分に設けられた前記排出口の位置が固定されること、を特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載するテープカセットであって、当該テープカセットには前記カセットケース本体に収納される前記テープの幅に応じて前記カセットケース本体の上下方向高さの異なる複数種類のテープカセットがあり、前記支持受け面と前記テープの上下方向中心位置との距離である第1距離は、前記カセットケース本体の上下方向高さにかかわらず一定であること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載するテープカセットであって、前記押下受け面と前記テープの上下方向中心位置との距離である第2距離は、前記カセットケース本体の上下方向高さにかかわらず一定であり、前記第1距離と前記第2距離とは等しいこと、を特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項3に記載のテープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドとを有し、前記テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、前記テープカセットが前記カセット装着部に装着され、前記テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、前記カセット装着部に突設された支持受け用部材を備え、前記テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、前記テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たることによって、前記テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、請求項2又は請求項4に記載のテープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドと、前記カセット装着部を覆う開閉可能な蓋部と、を有し、前記テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、前記テープカセットが前記カセット装着部に装着され、前記テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、前記カセット装着部に突設された支持受け用部材と、前記蓋部に突設された押下受け用部材と、を備え、前記テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、前記テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たるとともに、前記テープカセットの押下受け面に対して前記押下受け用部材が上方向から突き当たることによって、前記テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、請求項1又は請求項3に記載のテープカセットと、当該テープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドと、を有し、当該テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着され、当該テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、前記カセット装着部に突設された支持受け用部材を備え、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、当該テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たることによって、当該テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とする。
【0015】
また、請求項8に係る発明は、請求項2又は請求項4に記載のテープカセットと、当該テープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドと、前記カセット装着部を覆う開閉可能な蓋部と、を有し、当該テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着され、当該テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、前記カセット装着部に突設された支持受け用部材と、前記蓋部に突設された押下受け用部材と、を備え、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、当該テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たるとともに、当該テープカセットの押下受け面に対して前記押下受け用部材が上方向から突き当たることによって、当該テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
すなわち、本発明のテープカセットとテープ印字装置では、テープ印字装置のカセット装着部にテープカセットが装着された際に、テープ印字装置のカセット装着部に突設されている支持受け用部材がテープカセットの支持受け面に対して下方向から突き当たることによって、テープカセットのアーム部の先端部分に設けられている排出口の位置が固定され、そのように位置が下方向から固定された排出口から印字媒体であるテープが排出されるので、印字媒体であるテープの排出ずれを抑えることができる。
【0017】
この点、テープ印字装置のカセット装着部にテープカセットが装着された際には、印字媒体であるテープは、テープカセットのヘッド挿入部に挿入されているテープ印字装置の印字ヘッドに向けて排出されることから、その排出ずれが抑えられることによって、印字精度の向上に資することができる。
【0018】
加えて、本発明のテープカセットとテープ印字装置では、テープ印字装置のカセット装着部にテープカセットが装着された際に、テープ印字装置の蓋部に突設されている押下受け用部材がテープカセットの押下受け面に対して上方向から突き当たることによって、テープカセットのアーム部の先端部分に設けられている排出口の位置が固定され、そのように位置が上方向からも固定された排出口から印字媒体であるテープが排出されるので、印字媒体であるテープの排出ずれを一層抑えることができ、もって、印字精度の向上に一層資することができる。
【0019】
また、本発明のテープカセットとテープ印字装置では、テープカセットの支持受け面とテープカセットのテープの上下方向中心位置との距離である第1距離が、カセットケース本体の上下方向高さ(テープの幅/テープカセットの種類)にかかわらず一定であれば、テープ印字装置のカセット装着部にテープカセットが装着された際には、カセットケース本体の上下方向高さ(テープの幅/テープカセットの種類)がいずれであっても、テープ印字装置のカセット装着部に突設されている支持受け用部材がテープカセットの支持受け面に対して下方向から突き当たり、テープカセットのアーム部の先端部分に設けられている排出口の位置が下方向から固定される。
【0020】
加えて、本発明のテープカセットとテープ印字装置では、テープカセットの押下受け面とテープカセットのテープの上下方向中心位置との距離である第2距離が、カセットケース本体の上下方向高さ(テープの幅/テープカセットの種類)にかかわらず一定で、第1距離と第2距離とが等しければ、テープ印字装置のカセット装着部にテープカセットが装着された際には、カセットケース本体の上下方向高さ(テープの幅/テープカセットの種類)がいずれであっても、テープ印字装置の蓋部に突設されている押下受け用部材がテープカセットの押下受け面に対して上方向から突き当たり、テープカセットのアーム部の先端部分に設けられている排出口の位置が上方向からも固定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】テープ印字装置の本体を示した平面図である。
【図2】テープ印字装置を示した斜視図である。
【図3】テープ印字装置の蓋部とテープカセットとを示した斜視図である。
【図4】テープカセットを示した平面図である。
【図5】テープカセットの支持受け面と押下受け面に対し、テープ印字装置の支持受け用部材と押下受け用部材とが当接した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図2は、テープ印字装置101を示した斜視図である。テープ印字装置101は、ラベルを作成する装置であって、本体102と、蓋部103とを有する。蓋部103は、本体102に対して回動自在に設けられている。
【0023】
図1は、テープ印字装置101の本体102を示した平面図である。本体102には、底面106を有するカセット装着部105が設けられている。その底面106には、「位置決め用部材」に相当する4本の位置決めピン111,112,113,114が設けられ、リボン巻取軸115やテープ駆動カム116が設けられ、印字ヘッド121を搭載したヘッドホルダ122が設けられている。
【0024】
さらに、支持受け用部材131がカセット装着部105の底面106に突設されている。支持受け用部材131は、断面が略L字の細長い突起物である。
【0025】
図3は、テープ印字装置101の蓋部103とテープカセット1とを示した斜視図である。蓋部103の裏面104には、押下受け用部材141が突設されている。押下受け用部材141は、断面が略L字の細長い突起物である。
【0026】
テープカセット1は、テープ印字装置101のカセット装着部105において、着けたり外したりすることが自在なように装着されることが可能である。図4は、テープカセット1を示した平面図である。図4(a)は、テープカセット1の上面を示した平面図である。テープカセット1の上面は、テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、テープ印字装置101の蓋部103の裏面104に対向する。図4(b)は、テープカセット1の下面を示した平面図である。テープカセット1の下面は、テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、カセット装着部105の底面106に対向する。
【0027】
すなわち、ここでは、テープ印字装置101のカセット装着部105に装着されたテープカセット1を基準として、テープ印字装置101の蓋部103が有する裏面104の方向を上方向とし、テープ印字装置101のカセット装着部105が有する底面106の方向を下方向とする。
【0028】
テープカセット1は、カセットケース本体2を有する。カセットケース本体2の側面には、「位置決め部」に相当するピン受け面11,13が設けられている。カセットケース本体2の下面には、「位置決め部」に相当するピン孔12,14が設けられている。さらに、カセットケース本体2には、支持孔71,72が設けられている。
【0029】
テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、以下のようにして、テープカセット1の位置決めがなされる。すなわち、テープカセット1の側面に設けられているピン受け面11,13に対して、テープ印字装置101のカセット装着部105の底面106に設けられている位置決めピン111,113が当接する。テープカセット1の下面に設けられているピン孔12,14に対して、テープ印字装置101のカセット装着部105の底面106に設けられている位置決めピン112,114が挿嵌され当接する。さらに、テープカセット1の支持孔71,72に対して、テープ印字装置101のカセット装着部105の底面106に設けられているリボン巻取軸115とテープ駆動カム116が挿入される。
【0030】
テープカセット1には、ヘッド挿入部21が設けられている。ヘッド挿入部21は、テープカセット1の前面(図4では、図面の下側側面)に沿って伸びており、カセットケース本体2を上下方向に貫通している。テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、ヘッド挿入部21において、テープ印字装置101のヘッドホルダ122が挿入され、ヘッドホルダ122に搭載の印字ヘッド121が介在する。
【0031】
テープカセット1は、カセットケース本体2の側面(図4では、図面の下側側面)に突設されたアーム部51を有する。アーム部51は、テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、カセット装着部105の底面106と離間し、それに加え、カセット装着部105の位置決めピン111,112,113,114のいずれとも当接しないことから、片持ち梁の状態になっている(下記図5参照)。
【0032】
アーム部51の先端部分には、ヘッド挿入部21に向けて開口する排出口52が設けられている。一方、テープカセット1は、カセットケース本体2の中に、印字媒体であるテープ3が収納されている。そして、テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、印字時になると、テープ3は、アーム部51の排出口52からヘッド挿入部21に排出され、ヘッド挿入部21に介在する印字ヘッド121に送られる。
【0033】
尚、テープカセット1のカセットケース本体2は、印字媒体であるテープ3を収納するために、上下方向に2分割して成形された上下のカセットケース4,5を接合することによって製造される。
【0034】
また、テープカセット1では、アーム部51の先端部分の側面において、構成する3つの面が垂直関係にあるコーナー溝が所定深さで形成されることによって、支持受け面31が設けられている。それに加え、アーム部51の先端部分の側面において、構成する3つの面が垂直関係にあるコーナー溝が所定深さで形成されることによって、押下受け面41が設けられている。支持受け面31と押下受け面41は、平面視で重なる位置にある。さらに、支持受け面31を設けるために形成されたコーナー溝と押下受け面41を設けるために形成されたコーナー溝についても、それらが平面視で重なる位置にある。
【0035】
そして、テープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着された際には、テープカセット1の支持受け面31に対し、カセット装着部105の底面106に突設されている支持受け用部材131が当接する。さらに、テープ印字装置101の蓋部103が閉じられると、テープカセット1の押下受け面41に対し、蓋部103の裏面104に突設されている押下受け用部材141が当接する(図3参照)。
【0036】
図5は、テープカセット1の支持受け面31と押下受け面41に対し、テープ印字装置101の支持受け用部材131と押下受け用部材141とが当接した状態を示した図である。テープ印字装置101のカセット装着部105には、テープ3の幅が異なる複数種類のテープカセット1を装着されることが可能である。図5の左側にはテープ幅12mmであるテープカセット1の場合を示しており、図5の右側にはテープ幅24mmであるテープカセット1の場合を示している。尚、図5では、左側のテープカセット1のみに関する符号には「A」を添付し、右側のテープカセット1のみに関する符号には「B」を添付している。
【0037】
上述したように、図5の左側に示したテープカセット1Aは、テープ幅TAが12mmである。図5の右側に示したテープカセット1Bは、テープ幅TBが24mmである。従って、図5の左側に示したテープカセット1Aのカセットケース本体2Aの上下方向高さHAと図5の右側に示したテープカセット1Bのカセットケース本体2Bの上下方向高さHBは異なるものになっている。
【0038】
図5の左側に示したテープカセット1Aでは、テープ3Aの上下方向中心位置を示す中心線61から支持受け面31Aまでの距離は第1距離MAである。図5の右側に示したテープカセット1Bでは、テープ3Bの上下方向中心位置を示す中心線61から支持受け面31Bまでの距離は第1距離MBである。そして、図5の左側に示したテープカセット1Aの第1距離MAと図5の右側に示したテープカセット1Bの第1距離MBとは等しくされる。このように、テープ3の幅が異なるいずれの種類のテープカセット1においても、テープ3の上下方向中心位置を示す中心線61から支持受け面31までの距離は第1距離として等しく一定にされる。これにより、テープ3の幅が異なるいずれの種類のテープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着されても、テープカセット1の支持受け面31に対し、テープ印字装置101の支持受け用部材131が当接することになる。
【0039】
さらに、図5の左側に示したテープカセット1Aでは、テープ3Aの上下方向中心位置を示す中心線61から押下受け面41Aまでの距離は第2距離NAである。図5の右側に示したテープカセット1Bでは、テープ3Bの上下方向中心位置を示す中心線61から押下受け面41Bまでの距離は第2距離NBである。そして、図5の左側に示したテープカセット1Aの第2距離NAと図5の右側に示したテープカセット1Bの第2距離NBとは等しくされる。このように、テープ3の幅が異なるいずれの種類のテープカセット1においても、テープ3の上下方向中心位置を示す中心線61から押下受け面41までの距離は第2距離として等しく一定にされる。これにより、テープ3の幅が異なるいずれの種類のテープカセット1がテープ印字装置101のカセット装着部105に装着されても、テープ印字装置101の蓋部103が閉じれば、テープカセット1の押下受け面41に対し、蓋部103の押下受け用部材141が当接することになる。
【0040】
尚、図5の左側に示したテープカセット1Aでは、テープ3Aの上下方向中心位置を示す中心線61からピン受け面11Aまでの距離は第1距離MAと同じである。図5の右側に示したテープカセット1Bでは、テープ3Bの上下方向中心位置を示す中心線61からピン受け面11Bまでの距離は第1距離MBと同じである。そして、上述したように、図5の左側に示したテープカセット1Aの第1距離MAと図5の右側に示したテープカセット1Bの第1距離MBとは等しい。このようにして、テープ3の幅が異なるいずれの種類のテープカセット1においても、テープ3の上下方向中心位置を示す中心線61からピン受け面11までの距離は第1距離と等しく一定にされる。この点は、テープカセット1のピン受け面13やピン孔12,14についても同様である。これによって、テープ印字装置101のカセット装着部105では、テープ3の幅が異なるいずれの種類のテープカセット1を装着させることが可能となる。
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るテープカセット1とテープ印字装置101では、テープ印字装置101のカセット装着部105にテープカセット1が装着された際に、テープ印字装置101のカセット装着部105の底面106に突設されている支持受け用部材131がテープカセット1の支持受け面31に対して下方向から突き当たる。これによって、テープカセット1のアーム部51の先端部分に設けられている排出口52の位置が固定され、印字時には、そのように位置が下方向から固定された排出口52から印字媒体であるテープ3が排出されるので、印字媒体であるテープ3の排出ずれを抑えることができる(図5参照)。
【0042】
この点、テープ印字装置101のカセット装着部105にテープカセット1が装着された際には、印字媒体であるテープ3は、テープカセット1のヘッド挿入部21に挿入されているテープ印字装置101の印字ヘッド121に向けて排出される。よって、その排出ずれが抑えられることによって、印字精度の向上に資することができる。
【0043】
尚、本実施の形態に係るテープカセット1のカセットケース本体2は、印字媒体であるテープ3を収納するために、上下方向に2分割して成形された上下のカセットケース4,5を接合することによって製造される。従って、その製造過程から生じた反りなどによって、アーム部51が当初から多少変形している可能性が全くない訳でもない。しかしながら、テープカセット1のアーム部51の先端部分に設けられている排出口52の位置は、テープ印字装置101のカセット装着部105にテープカセット1が装着された際には、上述したようにして矯正的に固定されることから、テープカセット1のアーム部51が反りなどによって多少変形していている程度なら、その変形が印字精度に影響を与えることはない。
【0044】
加えて、本実施の形態に係るテープカセット1とテープ印字装置101では、テープ印字装置101のカセット装着部105にテープカセット1が装着された際に、テープ印字装置101の蓋部103に突設されている押下受け用部材141がテープカセット1の押下受け面41に対して上方向から突き当たる。これによって、テープカセット1のアーム部51の先端部分に設けられている排出口52の位置が固定され、そのように位置が上方向からも固定された排出口52から印字媒体であるテープ3が排出されるので、印字媒体であるテープ3の排出ずれを一層抑えることができ、もって、印字精度の向上に一層資することができる(図3,図5参照)。
【0045】
また、本実施の形態に係るテープカセット1とテープ印字装置101では、テープカセット1の支持受け面31とテープカセット1のテープ3の上下方向中心位置を示す中心線61との距離である第1距離が、カセットケース本体2の上下方向高さ(テープ3の幅/テープカセット1の種類)にかかわらず一定である。従って、テープ印字装置101のカセット装着部105にテープカセット1が装着された際には、カセットケース本体2の上下方向高さ(テープ3の幅/テープカセット1の種類)がいずれであっても、テープ印字装置101のカセット装着部105に突設されている支持受け用部材131がテープカセット1の支持受け面31に対して下方向から突き当たり、テープカセット1のアーム部51の先端部分に設けられている排出口52の位置が下方向から固定される。
【0046】
加えて、本実施の形態に係るテープカセット1とテープ印字装置101では、テープカセット1の押下受け面41とテープカセット1のテープ3の上下方向中心位置を示す中心線61との距離である第2距離が、カセットケース本体2の上下方向高さ(テープ3の幅/テープカセット1の種類)にかかわらず一定である。また、第1距離と第2距離とが等しい。従って、テープ印字装置101のカセット装着部105にテープカセット1が装着された際には、カセットケース本体2の上下方向高さ(テープ3の幅/テープカセット1の種類)がいずれであっても、テープ印字装置101の蓋部103に突設されている押下受け用部材141がテープカセット1の押下受け面41に対して上方向から突き当たり、テープカセット1のアーム部51の先端部分に設けられている排出口52の位置が上方向からも固定される。
【0047】
また、本実施の形態に係るテープカセット1とテープ印字装置101では、テープ印字装置101のカセット装着部105に突設されている支持受け用部材131がテープカセット1の支持受け面31に対して下方向から突き当たると、支持受け面31を設けるために形成されたコーナー溝に対して、断面が略L字の支持受け用部材131が密接する。さらに、テープ印字装置101のカセット装着部105に突設されている押下受け用部材141がテープカセット1の押下受け面41に対して上方向から突き当たると、押下受け面41を設けるために形成されたコーナー溝に対して、断面が略L字の押下受け用部材141が密接する。これにより、テープカセット1のアーム部51の先端部分に設けられている排出口52の位置が横方向(上下方向と垂直関係にある平面(テープ印字装置101のカセット装着部105の底面106))からも固定される。
【0048】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態に係るテープカセット1は、印字がなされたフィルムテープに粘着テープが裏貼される「ラミネートテープ」用のものであってもよいし、テープ状のレセプタシートとテープ状のセパレータシートとが粘着剤により貼り付けられた「ノンラミネートテープ」用のものであってもよい。いずれのタイプであっても、テープ3の排出ずれが抑えられることによって、テープ同士の貼り付けのずれも抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、印字媒体であるテープが排出する排出口の装着位置を矯正する技術に適用し得る。
【符号の説明】
【0050】
1 テープカセット
2 カセットケース本体
3 テープ(印字媒体)
11,13 ピン受け面(位置決め部)
12,14 ピン孔(位置決め部)
21 ヘッド挿入部
31 支持受け面
41 押下受け面
51 アーム部
52 排出口
61 テープの上下方向中心位置を示す中心線
101 テープ印字装置
103 蓋部
105 カセット装着部
111,112,113,114 位置決めピン(位置決め用部材)
121 印字ヘッド
131 支持受け用部材
141 押下受け用部材
MA,MB 第1距離
NA,NB 第2距離
TA,TB テープ幅
HA,HB カセットケース本体の上下方向高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセット装着部に印字ヘッドを備えたテープ印字装置に着脱自在なテープカセットであって、カセットケース本体と、前記カセットケース本体内に収納される、印字媒体であるテープと、前記カセットケース本体の側面又は底面に設けられた複数の位置決め部と、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着された場合に前記印字ヘッドが挿入される空間であって、前記カセットケース本体を上下方向に貫通し、且つ、当該テープカセットの前面に沿って伸びるヘッド挿入部と、前記カセットケース本体の側面に突設されるとともに前記ヘッド挿入部に向けて開口する排出口を先端部分に有し、前記テープを前記排出口から前記ヘッド挿入部に向けて排出するアーム部と、を有し、テープ印字装置のカセット装着部に突設された複数の位置決め用部材が前記複数の位置決め部に対してそれぞれ下方向から突き当たることによって、前記テープ印字装置のカセット装着部に装着され、前記アーム部が片持ち梁状態となるテープカセットにおいて、
前記アーム部の先端部分の側面に設けられた支持受け面を備え、
前記テープ印字装置のカセット装着部に装着された際に、前記テープ印字装置のカセット装着部に突設された支持受け用部材が前記支持受け面に対して下方向から突き当たることによって、前記アーム部の先端部分に設けられた前記排出口の位置が固定されること、を特徴とするテープカセット。
【請求項2】
請求項1に記載のテープカセットであって、
前記アーム部の先端部分の側面において平面視で前記支持受け面と重なる位置に設けられた押下受け面を備え、
前記テープ印字装置のカセット装着部に装着された際に、前記テープ印字装置の蓋部に突設された押下受け用部材が前記押下受け面に対して上方向から突き当たることによって、前記アーム部の先端部分に設けられた前記排出口の位置が固定されること、を特徴とするテープカセット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するテープカセットであって、
当該テープカセットには前記カセットケース本体に収納される前記テープの幅に応じて前記カセットケース本体の上下方向高さの異なる複数種類のテープカセットがあり、
前記支持受け面と前記テープの上下方向中心位置との距離である第1距離は、前記カセットケース本体の上下方向高さにかかわらず一定であること、を特徴とするテープカセット。
【請求項4】
請求項3に記載するテープカセットであって、
前記押下受け面と前記テープの上下方向中心位置との距離である第2距離は、前記カセットケース本体の上下方向高さにかかわらず一定であり、前記第1距離と前記第2距離とは等しいこと、を特徴とするテープカセット。
【請求項5】
請求項1又は請求項3に記載のテープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドとを有し、前記テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、前記テープカセットが前記カセット装着部に装着され、前記テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、
前記カセット装着部に突設された支持受け用部材を備え、
前記テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、前記テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たることによって、前記テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とするテープ印字装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項4に記載のテープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドと、前記カセット装着部を覆う開閉可能な蓋部と、を有し、前記テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、前記テープカセットが前記カセット装着部に装着され、前記テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、
前記カセット装着部に突設された支持受け用部材と、
前記蓋部に突設された押下受け用部材と、を備え、
前記テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、前記テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たるとともに、前記テープカセットの押下受け面に対して前記押下受け用部材が上方向から突き当たることによって、前記テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とするテープ印字装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項3に記載のテープカセットと、当該テープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドと、を有し、当該テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着され、当該テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、
前記カセット装着部に突設された支持受け用部材を備え、
当該テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、当該テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たることによって、当該テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とするテープ印字装置。
【請求項8】
請求項2又は請求項4に記載のテープカセットと、当該テープカセットが着脱可能なカセット装着部と、前記カセット装着部に突設された複数の位置決め用部材と、前記カセット装着部に備えられた印字ヘッドと、前記カセット装着部を覆う開閉可能な蓋部と、を有し、当該テープカセットの位置決め部に対して前記位置決め用部材が下方向から突き当たることによって、当該テープカセットが前記カセット装着部に装着され、当該テープカセットのアーム部が片持ち梁状態となるテープ印字装置において、
前記カセット装着部に突設された支持受け用部材と、
前記蓋部に突設された押下受け用部材と、を備え、
当該テープカセットが前記カセット装着部に装着された際に、当該テープカセットの支持受け面に対して前記支持受け用部材が下方向から突き当たるとともに、当該テープカセットの押下受け面に対して前記押下受け用部材が上方向から突き当たることによって、当該テープカセットの前記アーム部の先端部分に設けられた排出口の位置が固定されること、を特徴とするテープ印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46089(P2011−46089A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196305(P2009−196305)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】