説明

テープカセット

【課題】排出口近傍の上ケースと下ケースとの間に浮きが発生することを抑制して、良好な印字品質を維持することが可能なテープカセットを提供する。
【解決手段】半円溝38には、係合部78が設けられ、上ケース311と下ケース312とが係合されている。また、アーム前面35における排出口341の近傍には接離部86が設けられている。そして、接離部86において、上接離部86Aと下接離部86Bとが接離可能に接触している。アーム部34に対して上下方向の力が加えられた場合、接離部86において、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間する。しかし、係合部78において上ケース311と下ケース312との係合が保持される。このため、上接離部86Aと下接離部86Bとは、再び正常に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ印字装置に着脱自在なテープカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ印字装置のカセット装着部に着脱されるテープカセットが知られている。例えば、特許文献1に記載のテープカセットでは、被印字テープに印字が行われる開口部に向けて被印字テープを排出する排出口が設けられている。また、上ケースにおける、排出口の近傍、且つテープカセットの前面には、係止片が設けられている。また、下ケースにおける、排出口近傍、且つテープカセットの前面には、係止孔が設けられている。そして、係止片と係止孔とが弾性的に係合されることで、下ケースと上ケースとが係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−103131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
良好な印字品質を維持するためには、被印字テープが、排出口から適切に排出される必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のテープカセットでは、テープカセットが落下した場合などの衝撃などによって、排出口近傍の係止孔と係止片との係合が解除され、排出口近傍の上ケースと下ケースとの間に浮き等が発生するおそれがあった。この浮き等が発生することによって、被印字テープが、排出口から適切に排出されず、印字品質が悪化するおそれがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、排出口近傍の上ケースと下ケースとの間に浮きが発生することを抑制して、良好な印字品質を維持することが可能なテープカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るテープカセットは、上面、底面、前面、および一対の側面を有し、前記上面を有する上ケースと、前記下面を有する下ケースとからなるカセットケースと、前記カセットケース内に収納された、印字媒体であるテープと、前記前面の一部を含み、前記テープを、所定の搬送経路のうち前記前面と平行に延びる部分に沿って排出口に向けて案内するアーム部と、前記アーム部における前記テープの搬送方向上流側の端部近傍に設けられ、前記上ケースと前記下ケースとを係合する係合部と、前記排出口近傍において、前記上ケースと前記下ケースとが接離可能に接触するように構成された部分である接離部とを備えている。
【0007】
つまり、係合部が設けられているため、テープカセットに衝撃等が加えられた場合でも、上ケースと下ケースとの係合が保持される。また、衝撃等によって接離部における上ケースと下ケースとが離間した場合でも、係合部によって上ケースと下ケースとの係合が保持されるため、接離部における上ケースと下ケースとが再び適切に接触する。このため、上ケースと下ケースとの間に浮き等が発生することを抑制することができる。よって、アーム部におけるテープ搬送経路が適切に維持され、排出口から適切にテープが排出される。このため、印字品質を良好に保つことができる。
【0008】
前記テープカセットにおいて、前記接離部は、前記下ケースおよび前記上ケースのいずれか一方に設けられた孔部と、前記下ケースおよび前記上ケースの他方に設けられ、前記孔部に挿脱可能な凸部とを備えてもよい。この場合において、上ケースと下ケースとが係合される場合には、凸部が孔部に案内され、接離部が適切に位置決めされる。このため、上ケースと下ケースとがテープに不適切に接触してテープを傷つけることを防止することができる。
【0009】
前記テープカセットにおいて、前記係合部は、前記下ケースおよび前記上ケースのいずれか一方の前記前面に設けられ、ケースの外部と内部を連通する開口部と、前記下ケースおよび前記上ケースの他方に設けられ、前記開口部と係合する突起を有する係合片とを備えてもよい。この場合、開口部と係合片とによって上ケースと下ケースとが係合される。このため、テープカセットに、衝撃等が加えられ、下ケースと上ケースとが離れる方向に力が加わった場合でも、上ケースと下ケースとが離れるおそれは低い。
【0010】
前記テープカセットにおいて、前記アーム部における前記テープ搬送方向上流側の前記端部に連接して形成され上下方向に貫通した凹部をさらに備え、前記開口部は、前記下ケース及び前記上ケースのいずれか一方の前記凹部に設けられ、前記係合片は、前記下ケース及び前記上ケースの他方に設けられていてもよい。この場合、凹部は、平面と比べて撓みに対する強度が高いので、係合部による上ケースと下ケースとの係合が解除されるおそれがさらに低くなる。
【0011】
前記テープカセットにおいて、前記接離部は、前記カセットケースの上下方向中心位置近傍に設けられていてもよい。この場合、排出口近傍の上ケースと下ケースとの上下方向における高さが、上ケースと下ケースとで略同一になる。つまり、上下方向の厚みが上ケースと下ケースとで略同一となる。このため、排出口近傍の上ケースと下ケースにおける上下方向の厚みが小さくなりすぎることがない。このため、排出口近傍の上ケースと下ケースとが撓みすぎることがない。
【0012】
前記テープカセットは、前記下ケースの前記アーム部を構成する部分において、前記排出口に対して前記テープの搬送方向上流側に設けられ、前記テープのテープ幅方向への移動を規制する下側規制部をさらに備えてもよい。この場合、下側規制部によって、テープのテープ幅方向への移動が制限されるので、テープの搬送精度が向上する。
【0013】
前記テープカセットは、前記上ケースの前記アーム部を構成する部分において、前記排出口に対して前記搬送方向上流側に設けられ、前記テープのテープ幅方向への移動を規制する上側規制部をさらに備えてもよい。この場合、上側規制部によって、テープのテープ幅方向への移動が制限されるので、テープの搬送精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カセットカバー6が閉じられた状態にあるテープ印字装置1の上方からの斜視図である。
【図2】カセットカバー6が開けられた状態にあるテープ印字装置1の上方からの斜視図である。
【図3】プラテンホルダ12が待機位置にある場合の、ラミネートタイプのテープカセット30が装着されたカセット装着部8の平面図である。
【図4】プラテンホルダ12が印字位置にある場合の、ラミネートタイプのテープカセット30が装着されたカセット装着部8の平面図である。
【図5】テープカセット30の斜視図である。
【図6】カセットケース31の分解斜視図である。
【図7】下ケース312の平面図である。
【図8】上ケース311の底面図である。
【図9】上ケース311と下ケース312とが係合される途中の状態を説明するためのテープカセット30の正面図である。
【図10】上ケース311と下ケース312とが係合された状態を説明するためのテープカセット30の正面図である。
【図11】上ケース311と下ケース312とが係合される途中の状態における係合アーム80と係合孔79とを説明するためのテープカセット30の縦断面図である。
【図12】上ケース311と下ケース312とが係合された状態における係合アーム80と係合孔79とを説明するためのテープカセット30の縦断面図である。
【図13】接離部86において、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間した状態を説明するためのテープカセット30の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、単なる説明例である。
【0016】
本実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について、図面を参照して以下に詳述する。本実施形態の説明では、図1の左下側をテープ印字装置1の前側とし、図1の右上側をテープ印字装置1の後側とし、図1の右下側をテープ印字装置1の右側とし、図1の左上側をテープ印字装置1の左側とする。また、図5の下側をテープカセット30の前側とし、図5の上側をテープカセット30の後側とし、図5の右側をテープカセット30の右側とし、図5の左側をテープカセット30の左側とする。
【0017】
なお、以下の説明で使用される図3および図4において、カセット装着部8の周囲を形成する壁が図示されている場合、これらの図はあくまでも模式図であるため、図中に示す壁は、実際よりも厚く描かれている。また、図3および図4において、カセット装着部8に装着された状態で図示されているテープカセット30は、上ケース311が取り外された状態のものである。
【0018】
はじめに、本実施形態に係るテープ印字装置1の概略構成について説明する。テープ印字装置1は、1台で感熱タイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ、感熱ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能な汎用のテープ印字装置である。本実施形態では、印字面にラミネートが施されたラミネートテープを作成する例を例示する。
【0019】
図1および図2に示すように、テープ印字装置1は、平面視長方形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2の前側には、文字、記号、および数字等の文字キーや、種々の機能キー等を含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、入力した文字や記号を表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30(図5参照)の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。また、本体カバー2の左側面後方には、印字済みのテープを外部に排出するための排出スリット111が設けられており、カセットカバー6の左側面には、カセットカバー6を閉じた状態で排出スリット111を外部に露出させる排出窓112が形成されている。カセットカバー6の前面略中央には、その下面から下方に突出する鉤状の係止ロック411が設けられている。本体カバー2には、係止ロック411に対応する位置にロック孔412が設けられており、カセットカバー6が閉じられると係止ロック411がロック孔412に嵌め込まれて係止されることで、カセットカバー6の自然開放が防止される。
【0020】
次に、図2〜図4を参照して、カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部構造について説明する。図2に示すように、カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部には、テープカセット30(図5参照)が着脱自在な領域であるカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8は、テープカセット30が装着された場合に、カセットケース31の底面302(図5参照)の形状と略対応するように凹設されている。
【0021】
カセット装着部8には、テープカセット30からテープを引き出して搬送する搬送機構や、テープの表面に文字等を印字する印字機構等が設けられている。図2〜図4に示すように、カセット装着部8には、リボンスプール42から引き出されて文字等の印刷に使用された後のインクリボン60を巻取るためのリボン巻取軸95が立設されている。リボン巻取軸95の左前方には、正面視で略矩形状のヘッドホルダ74が立設されている。ヘッドホルダ74の左方には、印字済テープ50を送り駆動するためのテープ駆動軸100が立設されている。
【0022】
図3および図4に示すように、ヘッドホルダ74の前面には、フィルムテープ59に文字等を印字するサーマルヘッド10が取り付けられている。また、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が軸支部121を中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、サーマルヘッド10に相対して接離可能に設けられたプラテンローラ15と、テープ駆動軸100が嵌挿されるテープ駆動ローラ46に相対して接離可能に設けられた可動搬送ローラ14とが共に回転可能に軸支されている。
【0023】
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示しないリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が図3に示す待機位置に向けて移動する。図3に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間する方向に移動するので、テープカセット30をカセット装着部8に着脱することができる。なお、プラテンホルダ12は、図示しない巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
【0024】
一方、カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が図4に示す印字位置に向けて移動する。図4に示す印字位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接する方向に移動する。そして、カセット装着部8にテープカセット30が装着されていれば、プラテンローラ15がフィルムテープ59とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14が両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを介してテープ駆動ローラ46を押圧する。これによって、図4に示す印字位置では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を使用して印字を行うことが可能となる。なお、両面粘着テープ58、フィルムテープ59およびインクリボン60の詳細は、後述する。
【0025】
また、図3および図4に示すように、テープカセット30のテープ排出部49からテープ印字装置1の排出スリット111(図2参照)までの間には、印字済テープ50が搬送される搬送経路が設けられている。この搬送経路には、印字済テープ50を所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と、固定刃18に対向して前後方向(図3に示す上下方向)に移動可能に支持された移動刃19とで構成されている。なお、移動刃19は、カッターモータ(図示せず)によって前後方向に移動される。
【0026】
次に、図3〜図6を参照して、本実施形態に係るテープカセット30の構造について説明する。本実施形態のテープカセット30は、感熱タイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ、感熱ラミネートタイプ等、各種のテープカセットとして利用可能な汎用のテープカセットをラミネートタイプ用のテープカセットとして使用している例である。
【0027】
図5に示すように、テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面302を含む下ケース312と、カセットケース31の上面301を含み、下ケース312の上部に固定される上ケース311とで構成される。以下では、底面302から上面301までの距離を、テープカセット30またはカセットケース31の高さ寸法という。
【0028】
カセットケース31は、テープカセット30のテープ種類(例えば、テープ幅や印字態様など)にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された角部32Aを有する。角部32Aは、平面視で直角をなすように外側方向に突出している。ただし、平面視で左下の角部32Aでは、テープ排出部49が角に設けられているために、直角はなしていない。
【0029】
カセットケース31には、後述する第一テープスプール40、第二テープスプール41、リボンスプール42およびリボン巻取スプール44(図3および図4参照)を回転可能に支持する支持孔65、66、67、68が設けられている。なお、図5では、上ケース311の支持孔65、66、67、68のみが図示されているが、下ケース312にも、対応する支持孔65、66、67、68が設けられている。
【0030】
図3および図4に示すように、カセットケース31内には、第一テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第二テープスプール41に巻回された透明なフィルムテープ59、および、リボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが収納されている。両面粘着テープ58は一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。
【0031】
両面粘着テープ58の剥離紙を外側に向けて巻回した第一テープスプール40は、カセットケース31内の左側後部において、前述の支持孔65を介して回転可能に配置されている。フィルムテープ59が巻回された第二テープスプール41は、カセットケース31内の右側後部において、前述の支持孔66を介して回転可能に配置されている。リボンスプール42に巻回されたインクリボン60は、カセットケース31内の右側前部において、前述の支持孔67を介して回転可能に配置されている。
【0032】
カセットケース31内における第一テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボンスプール42からインクリボン60を引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取るリボン巻取スプール44が、前述の支持孔68を介して回転可能に配置されている。なお、リボン巻取スプール44の下部には、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するためのクラッチバネ(図示せず)が取り付けられている。
【0033】
図5に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で略半円状をなす溝部である半円溝38が、カセットケース31の高さ方向(つまり、上面301から底面302)に亘って設けられている。半円溝38を構成する部分のうち、上ケース311に形成された溝部を上半円溝38A、下ケース312に形成された溝部を下半円溝38Bという。半円溝38は上半円溝38Aと下半円溝38Bとから構成されている。半円溝38は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、プラテンホルダ12の軸支部121(図3参照)がカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。
【0034】
半円溝38には、係合部78が設けられている。係合部78は、上ケース311と下ケース312とが係合される部分である。係合部78は、下ケース312に設けられた係合孔79と、上ケース311に設けられた、係合爪80A(図6参照)を有する係合アーム80とを備えているが、詳細は後述する。
【0035】
図5に示すように、カセットケース31の前面のうち、半円溝38から左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37とで規定される、テープカセット30の右側から左方に延びる部位をアーム部34という。
【0036】
アーム前面35を構成する部分のうち、上ケース311に形成された部分を上アーム前面351といい、下ケース312に形成された部分を下アーム前面352という。また、アーム背面37を構成する部分のうち、上ケース311に形成された部分を上アーム背面371(図6参照)といい、下ケース312に形成された部分を下アーム背面372(図6参照)という。
【0037】
また、アーム前面35の左端部をアーム先端部85という。つまり、アーム先端部85は、排出口341に隣接する部分である。アーム先端部85を形成する部分のうち、上ケース311に形成された部分を上先端部85Aといい、下ケース312に形成された部分を下先端部85Bという。より詳細には、下先端部85Bは、下アーム前面352において、後述する金型逃がし孔850の左側部分である。また、上先端部85Aは、上アーム前面において、下ケースの下先端部85Bの上側の部分である。
【0038】
図3および図4に示すように、アーム部34内には、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内されている。アーム先端部85は後方へ向かって屈曲しており、アーム先端部85とアーム背面37の先端により、排出口341が形成されている。排出口341で重合された状態となったフィルムテープ59とインクリボン60とは、後述する開口部77に向けて排出される。
【0039】
アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とによって囲まれた、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面に設けられた開口である開口部77によってテープカセット30の前面で外部とつながっている。ヘッド挿入部39には、テープ印字装置1のサーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入される。開口部77では、アーム部34の排出口341から排出されたフィルムテープ59の一面が前方に露出され、且つその他面が後方のサーマルヘッド10に対向する。本実施形態では、フィルムテープ59の他面がインクリボン60を挟んでサーマルヘッド10に対向している。そして、開口部77では、サーマルヘッド10によるフィルムテープ59への印字が、インクリボン60を使用して行われる。
【0040】
図3および図4に示すように、アーム部34の排出口341からテープ排出部49までのフィルムテープ59およびインクリボン60の搬送方向において、ヘッド挿入部39の下流側にはテープ駆動ローラ46が回転可能に軸支されている。テープ駆動ローラ46は、その内部に挿嵌されるテープ駆動軸100によって回転駆動される。そして、テープ駆動ローラ46と、テープ駆動ローラ46に対向するプラテンホルダ12の可動搬送ローラ14とが協働して、第二テープスプール41からフィルムテープ59を引き出すとともに、第一テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出し、フィルムテープ59の印字面にガイドして接着させる。
【0041】
図3〜図5に示すように、テープ駆動ローラ46の上流側には、上下一対の規制部材361、362が設けられている。規制部材361、362の基部は、サーマルヘッド10の下流側にて、印字後のフィルムテープ59を上下方向(テープ幅方向)に規制してテープ排出部49に向かって案内するとともに、フィルムテープ59と両面粘着テープ58との間に位置ズレを生じることなく適正に接着させる。規制部材361、362の近傍には、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン60をフィルムテープ59から離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内するための案内壁47が立設されている。案内壁47とリボン巻取スプール44との間には、案内壁47に沿って案内される使用済みのインクリボン60と、第一テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止するための第二分離壁48が立設されている。
【0042】
テープ印字装置1における印字実行時には、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって、第二テープスプール41からフィルムテープ59を引き出す。また、リボン巻取軸95を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59は、リボンスプール42の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。さらに、フィルムテープ59はその表面にインクリボン60が重合された状態で排出口341からヘッド挿入部39に供給され、テープ印字装置1のサーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。
【0043】
そして、サーマルヘッド10によって、フィルムテープ59の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、使用済みのインクリボン60は案内壁47にて印字済みのフィルムテープ59から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。一方、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第一テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。この両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間にガイドされて巻き込まれながら、印字済みのフィルムテープ59の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みのフィルムテープ59(つまり、印字済テープ50)は、さらにテープ排出部49に向かって搬送され、テープ排出部49から排出された後、カット機構17によって切断される。
【0044】
なお、本実施形態では、汎用カセットをラミネートタイプに構成したテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1にて使用している。それによって、テープ印字装置1は1台で感熱タイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ、感熱ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能であり、1台毎に異なるテープ印字装置を用いる必要がない。
【0045】
次に、下ケース312におけるアーム部34を構成する部分の詳細について、図6および図7を参照して説明する。図6および図7に示すように、下ケース312のアーム部34構成部分は、前述の下アーム前面352および下アーム背面372と、その間に設けられた第一分離壁33とを含む。下アーム前面352において、左端部の屈曲部の右側には、金型逃がし孔850が設けられている。金型逃がし孔850は、下アーム前面352の上部から正面視縦長長方形状に切り欠かれた部位であり、下ケース312に上ケース311が接合されると、アーム前面35に貫通孔を形成する(図5参照)。
【0046】
第一分離壁33は、アーム部34の3つの壁面のうちで最も高く形成されており、その高さは、カセットケース31に収納されるテープの幅より僅かに大きい。下アーム前面352のうち、金型逃がし孔850の左側部分である下先端部85Bは第一分離壁33の略半分の高さを有し、金型逃がし孔850の右側部分は第一分離壁33の三分の二程度の高さを有する。下アーム背面372は、第一分離壁33より僅かに低く、インクリボン60の幅とほぼ同一の高さを有する。また、第一分離壁33の平面視円柱状の右端部は、アーム部34のほぼ中央に位置する。第一分離壁33の左端は、下ケース312の前後方向において、下アーム前面352に設けられた金型逃がし孔850に対向する位置にある。金型逃がし孔850は、下ケース312を成形する際に使用される金型の逃がし孔である。
【0047】
図7に示すように、フィルムテープ59の搬送経路は、下アーム前面352と第一分離壁33との間に形成されている。一方、インクリボン60の搬送経路は、第一分離壁33と下アーム背面372との間に形成されている。そこで、これらの搬送経路上には、テープやインクリボン60の幅方向(カセットケース31の上下方向)の移動を規制する規制片が設けられている。
【0048】
まず、フィルムテープ59の搬送経路に関しては、第一分離壁33の左端部および右端部の下端部に、それぞれ、フィルムテープ59の下方向への移動を規制する第一テープ下規制部381B、382Bが設けられている。第一テープ下規制部381B、382Bは、それぞれ、底面302から上方へ僅かに突出しており、前方に向かって下アーム前面352まで延びている。さらに、第一分離壁33の左端部の上端には、フィルムテープ59の上方向への移動を規制する分離壁規制部383が設けられている。分離壁規制部383は、第一分離壁33の上端から前方に向かって突出する突出片である。第一テープ下規制部381B、382Bと、分離壁規制部383との上下方向の距離は、フィルムテープ59の幅と同一である。
【0049】
一方、インクリボン60の搬送経路に関しては、第一分離壁33の左端部および右端部の下端部に、それぞれ、インクリボン60の下方向への移動を規制する第一リボン下規制部386B、387Bが設けられている。第一リボン下規制部386B、387Bは、それぞれ、底面302から上方へ僅かに突出している。第一リボン下規制部386Bは、第一分離壁33の左端部から左斜め後方に向かって下アーム背面372の左端部まで延びている。第一リボン下規制部387Bは、第一分離壁33の右端部から後方に向かって下アーム背面372まで延びている。
【0050】
第一テープ下規制部381B、382Bの突出端の上下方向の位置は、フィルムテープ59の幅に応じて設定されている。第一リボン下規制部386B、387Bの突出端の上下方向の位置は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。
【0051】
第一テープ下規制部381B、382Bによって、フィルムテープ59の下方向への移動が規制され、第一リボン下規制部386B、387Bによって、インクリボン60の下方向への移動が規制される。このため、フィルムテープ59およびインクリボン60の搬送精度が向上する。アーム部34は、サーマルヘッド10(図3参照)によって印字が行われる位置(開口部77)の上流側近傍にあるため、アーム部34内のテープおよびインクリボン60の搬送精度を向上することにより、印字精度も向上する。
【0052】
次に、上ケース311におけるアーム部34を構成する部分の詳細について、図6および図8を参照して説明する。図6および図8に示すように、上ケース311のアーム部34構成部分は、下ケース312の下アーム前面352および下アーム背面372にそれぞれ対応する上アーム前面351および上アーム背面371を含む。よって、上アーム前面351の方が、上アーム背面371よりも高さが大きい。上面301には、下ケース312のアーム部34内に設けられた第一分離壁33に対応する位置に、第一分離壁33の平面視形状と同一形状の嵌合孔331が設けられている。上ケース311と下ケース312とが接合されると、第一分離壁33は嵌合孔331に嵌合する。
【0053】
上ケース311のアーム部34を構成する部分では、テープの搬送経路は、上アーム前面351と嵌合孔331との間にある。一方、インクリボン60の搬送経路は、嵌合孔331と上アーム背面371との間にある。そこで、これらの搬送経路上に、下ケース312と同様、テープやインクリボン60の上方向への移動を規制する規制片が設けられている。
【0054】
まず、テープの搬送経路に関しては、嵌合孔331の左端部の右側に第一テープ上規制部381Aが設けられている。また、嵌合孔331の右端部に接して、第一テープ上規制部382Aが設けられている。第一テープ上規制部381A、382Aは、それぞれ、上面301から下方へ僅かに突出している。第一テープ上規制部381Aは、上アーム前面351から後方に向かって嵌合孔331の手前まで延びており、第一テープ上規制部382Aは、上アーム前面351から後方に向かって嵌合孔331まで延びている。第一テープ上規制部381A、382Aは、それぞれ、フィルムテープ59の上方向への移動を規制する。
【0055】
一方、インクリボン60の搬送経路に関しては、嵌合孔331の左端部および右端部に接して、それぞれ、インクリボン60の上方向への移動を規制する第一リボン上規制部386A、387Aが設けられている。第一リボン上規制部386A、387Aは、それぞれ、上面301から下方へ僅かに突出している。第一リボン上規制部386Aは、嵌合孔331の左端部から左斜め後方に向かって上アーム背面371の左端部まで延びている。第一リボン上規制部387Aは、嵌合孔331の右端部から左斜め後方に向かって上アーム背面371まで延びている。
【0056】
第一テープ上規制部381A、382Aの突出端の上下方向の位置は、テープの幅に応じて設定されている。第一リボン上規制部386A、387Aの突出端の上下方向の位置は、インクリボン60の幅に応じて設定されている。
【0057】
第一テープ上規制部381A、382Aによって、フィルムテープ59の上方向への移動が規制され、第一リボン上規制部386A、387Aによって、インクリボン60の上方向への移動が規制される。このため、フィルムテープ59およびインクリボン60の搬送精度が向上する。よって、印字精度も向上する。
【0058】
このように、本実施形態では、下ケース312に加えて上ケース311にも規制部を設けたことにより、テープおよびインクリボン60は上下方向への移動が規制されるので、搬送精度、ひいては印字精度はさらに向上する。
【0059】
次に、図5および図6を参照して、アーム先端部85と接離部86とについて説明する。前述したように、アーム先端部85は、上アーム前面351に設けられた上先端部85Aと、下アーム前面352に設けられた下先端部85Bとから構成されている。
【0060】
図5に示すように、上先端部85Aの下端と下先端部85Bの上端とは、テープカセット30の高さ方向における略中央で接触している。ここで、上先端部85Aの下端を上接離部86Aという。また、下先端部85Bの上端を下接離部86Bという。詳細は後述するが、テープカセット30は、上接離部86Aと下接離部86Bとが接離可能に接触するように構成されている。上接離部86Aと下接離部86Bとによって構成される接離可能な部分を接離部86という。
【0061】
図6に示すように、下先端部85Bには、上下方向に亘って先端孔部87が設けられている。先端孔部87は、テープカセット30の底面302に貫通する孔であり、平面視で円形に形成されている。なお、先端孔部87は、テープカセット30の底面302に貫通しない凹状の孔に形成してもよい。先端孔部87の上部は、上端の開口径が最大となるように徐々に広くなっている。このため、先端孔部87に後述する凸部89を容易に挿入することが可能である。
【0062】
また、図6に示すように、上ケース311には、上接離部86Aから下方に向けて凸設された凸部89が設けられている。凸部89は、略円柱状であり、凸部89の径は、先端孔部87の径より小さく形成されている。また、凸部89は、上下方向における中央よりやや上側から、先端に向かって徐々に径が小さくなるように形成されている。つまり、凸部89の下部は、先端が細くなるように形成されている。このため、先端孔部87に凸部89を容易に挿入することが可能である。
【0063】
次に、上ケース311と下ケース312とが接合される場合において、凸部89が先端孔部87に挿入され、接離部86が形成される過程について、図9および図10を参照して説明する。下ケース312と上ケース311とが接合される場合には、図9に示すように、まず、凸部89の下部が先端孔部87に挿入される。前述したように、凸部89の径は、先端孔部87の径より小さい。また、凸部89の下部は、先端が細くなるように形成されている。また、先端孔部87の上端は、開口部分が広く形成されている。このため、凸部89の下部が、スムーズに先端孔部87内に案内される。
【0064】
そして、凸部89が先端孔部87にさらに挿入されると、図10に示すように、上接離部86Aと下接離部86Bとが接触する。これによって、凸部89の先端孔部87への挿入が終了される。このとき、凸部89の径は、先端孔部87の径より小さいので、アーム先端部85において、上ケース311と下ケース312とが固定されない。つまり、凸部89は、先端孔部87に挿脱可能である。これによって、接離部86において上接離部86Aと下接離部86Bとが接離可能に接触する。
【0065】
次に、図6および図9を参照して、係合アーム80の構造について説明する。図6および図9に示すように、上ケース311の上半円溝38Aの左部の上端から下端にかけて、平面視で凹状に形成された窪み部84が設けられている。窪み部84の凹み部分の深さは、下ケース312の下半円溝38Bを形成する壁の厚みと略同一である。窪み部84の下端から下側には、先端部に係合爪80Aを備えた係合アーム80が突出して設けられている。係合アーム80は、略角柱状の形状をしており、その下端部からテープカセット30の右斜め前方に向かって、係合爪80Aが突出している。これによって、係合アーム80は、係合爪80Aと一体として鉤状に形成されている。また、係合アーム80は、テープカセット30における斜め前後方向の可撓性を有する。このため、係合アーム80は、係合アーム80の背面の方向に撓むことができる。
【0066】
また、下ケース312の下半円溝38Bにおける左部の上端よりやや下側には、係合孔79が設けられている。係合孔79は、正面視で左右方向に長い矩形状の貫通した孔である。係合孔79には、上ケース311の係合アーム80に設けられた係合爪80Aが係合される。これによって、下ケース312と上ケース311とが係合される。なお、係合孔79は、正面視で係合爪80Aより大きな孔である。
【0067】
次に、図11および図12を参照して、上ケース311と下ケース312とが接合される場合における、係合孔79と係合爪80Aとの係合について説明する。前述したように、係合アーム80は、係合アーム80の背面の方向(図11では右方向)に撓むことができるように形成されている。図11に示すように、下ケース312と上ケース311とが係合される場合には、係合爪80Aの前端部が下半円溝38Bの背面に当接しながら、下方向に移動する。このとき、係合爪80Aの前端部が、下半円溝38Bの背面によって、係合アーム80の背面の方向に押圧されるため、係合アーム80は、係合アーム80の背面の方向に撓む。また、下半円溝38Bは、係合爪80Aの前端部によってテープカセット30の右前方向(図11では左方向)に押圧されるため、右前方向に撓む。
【0068】
そして、係合爪80Aが、係合孔79の位置に到達すると、図12に示すように、係合爪80Aが係合孔79に入り込み、下ケース312と上ケース311とが係合される。これによって、係合部78が形成される。つまり、係合部78は、アーム部34におけるテープの搬送方向上流側の端部の近傍に形成される。このとき係合アーム80と下半円溝38Bとは撓んでいない。また、このとき、係合爪80Aは、係合孔79の上面と当接している。例えば、テープカセット30に衝撃が加えられた場合でも、係合爪80Aと係合孔79の上面とが当接しているため、上ケース311と下ケース312とが上下方向に離れてしまうことを防止することができる。
【0069】
次に、図10および図13を参照して、テープカセット30に衝撃等が加えられ、アーム部34に対してテープカセット30の上下方向の力が加えられた場合について述べる。図10は、上接離部86Aと下接離部86Bとが接触している状態を表している。以下の説明では、図10に示すテープカセット30の状態を「正常状態」という。アーム部34に対して、テープカセット30の上下方向の力が加えられた場合、図10に示す正常状態から、図13に示すように、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間した状態に変化する。以下の説明では、図13に示すテープカセットの状態を「離間状態」という。
【0070】
図10および図13に示すように、アーム先端部85において、上ケース311と下ケース312とは固定されていない。このため、接離部86において、上接離部86Aと下接離部86Bとが接離可能に接触している。また、係合部78において、上ケース311と下ケース312とが上下方向に離れてしまうことを防止している。
【0071】
このため、アーム部34に対して上下方向の力が加えられた場合、図13に示すように、係合部78では上ケース311と下ケース312との係合が保持され、係合部78から左側のアーム部34では、上ケース311と下ケース312とが上下方向に撓む。これによって、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間する。
【0072】
しかし、係合部78で上ケース311と下ケース312との係合が保持されているため、離間した上接離部86Aと下接離部86Bとは、上ケース311と下ケース312との復元力によって再び接触し、図10に示すような正常状態に戻る。つまり、テープカセット30に衝撃等が加えられた場合において、アーム部34に対して上下方向の力が加えられた場合でも、アーム先端部85は正常な状態に復元される。
【0073】
また、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間された場合(図13参照)でも、第一テープ下規制部381B、382B、分離壁規制部383、第一リボン下規制部386B、387B、第一テープ上規制部381A、382A、および第一リボン上規制部386A、387Aによって、フィルムテープ59とインクリボン60との位置がある程度規制される。このため、フィルムテープ59とインクリボン60の位置が、大きく移動することがなく、図10に示す正常状態に戻った場合に、フィルムテープ59とインクリボン60との位置が変わることがない。つまり、図10に示す正常状態に戻った場合に、第一テープ下規制部381B、382B、分離壁規制部383、第一リボン下規制部386B、387B、第一テープ上規制部381A、382A、および第一リボン上規制部386A、387Aによって、フィルムテープ59およびインクリボン60の上下方向位置が、再び適切に保持される。このため、フィルムテープ59およびインクリボン60が適切に搬送され、印字品質を良好に保つことができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、テープカセット30に衝撃等が加えられた場合において、アーム部34に対して上下方向の力が加えられた場合でも、アーム先端部85は再び正常状態に復元される。
【0075】
フィルムテープ59に文字等が印字される場合には、排出口341から送出されたフィルムテープ59とインクリボン60とが、プラテンローラ15によって、サーマルヘッド10に対して押圧される(図4参照)。そして、サーマルヘッド10とインクリボン60とによって、フィルムテープ59に文字が印字される。このため、印字品質を維持するためには、フィルムテープ59が排出口341から適切に排出される必要がある。しかし、例えば、テープカセット30に衝撃等が加えられ、アーム先端部85における下ケース312と上ケース311との間が浮いたり、下ケース312と上ケース311とが離れたりした場合には、フィルムテープ59が排出口341から適切に排出されず、印字品質が悪化するおそれがある。
【0076】
本実施形態では、接離部86において、上接離部86Aと下接離部86Bとが接離可能に接触しているため、テープカセット30に強い衝撃等が加えられた場合に、図13に示すように、一旦、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間する。そして、その後、再び図10に示す正常状態に戻る。このため、フィルムテープ59とインクリボン60とが排出口341から適切に排出され、印字品質を良好に保つことができる。
【0077】
また、本実施形態では、係合部78は、半円溝38に設けられている。半円溝38は、平面であるアーム前面35に比べて撓みに対する強度が高い。つまり、排出口341の近傍、且つアーム前面35に係合部が設けられた場合に比べて高い強度で、上ケース311と下ケース312とを係合することができる。このため、テープカセット30に衝撃が加えられた場合に係合孔79と係合爪80Aとの係合が解除されるおそれが低い。このため、係合部78によって、上ケース311と下ケース312との係合を保持することができる。よって、図13に示すように、接離部86において上接離部86Aと下接離部86Bとが離間した場合でも、係合部78によって上ケース311と下ケース312との係合が保持され、テープカセット30は再び図10に示す正常状態に復元される。つまり、上ケースと下ケースとの間に浮き等は発生しない。このため、フィルムテープ59とインクリボン60とが排出口341から適切に排出され、印字品質を良好に保つことができる。
【0078】
また、本実施形態では、上ケース311に凸部89が設けられ、下ケース312に先端孔部87が設けられている。上ケース311と下ケース312とが接合される際には、凸部89が先端孔部87に挿入される。そして、凸部89と先端孔部87とによって、アーム先端部85における上ケース311と下ケース312とが適切に案内される。このため、上ケース311と下ケース312とが接合される際に、上先端部85Aと下先端部85Bとが、フィルムテープ59やインクリボン60に不適切に接触するのを防止することができる。よって、フィルムテープ59とインクリボン60とを傷つけることがなく、傷によって印字品質が悪化することを防止することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上アーム前面351における上先端部85Aより右側の部分の高さは、下アーム前面352における下先端部85Bより右側の部分の高さより小さい(図5参照)。このため、上アーム前面351の方が、下アーム前面352より撓みやすい。しかし、本実施形態では、接離部86がカセットケース31の上下方向おける中央位置近傍に設けられている。このため、上先端部85Aの高さは、上先端部85Aの右側の部分の高さより高くなっている。つまり、接離部86が上下方向における中央位置近傍に設けられていることで、上先端部85Aの上下方向の厚みが小さくなりすぎることを防止している。このため、アーム先端部85に対して上下方向の力が加えられた場合に、アーム部34における上ケース311が、上方向に撓みすぎることを防止することができる。
【0080】
なお、本発明のテープカセット30およびテープ印字装置1は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0081】
例えば、カセットケース31は、上面301および底面302の周縁全体が側面によって囲われている必要はなく、側面の一部(例えば背面)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上面301および底面302を接続するボスが設けられたりしてもよい。
【0082】
また、例えば、凸部89および先端孔部87を設けなくてもよい。凸部89および先端孔部87を設けない場合において、テープカセット30に衝撃が加えられた場合でも、接離部86において、上接離部86Aと下接離部86Bとが離間され、その後正常状態に復元される。
【0083】
また、上ケース311に凸部89が設けられ、下ケース312に先端孔部87が設けられていたが、これに限定されない。例えば、上ケース311に孔部を設け、下ケース312に、上ケース311の孔部に挿脱可能な凸部を設けてもよい。
【0084】
また、上ケース311に係合アーム80が設けられ、下ケース312に係合孔79が設けられていたが、これに限定されない。例えば、上ケース311に係合孔を設け、下ケース312に係合アームを設けてもよい。
【0085】
また、係合部78は、半円溝38の左部に設けられていたが、これに限定されない。例えば、半円溝38の左右方向における中央に設けてもよい。
【0086】
なお、本実施形態では、フィルムテープ59が本発明の「テープ」に相当し、先端孔部87が本発明の「孔部」に相当する。また、係合孔79が本発明の「開口部」に相当する。また、係合爪80Aが本発明の「突起」に相当し、係合アーム80が本発明の「係合片」に相当する。また、第一テープ下規制部381B、382Bが本発明の「下側規制部」に相当し、第一テープ上規制部381A、382Aが本発明の「上側規制部」に相当する。また、半円溝38が本発明の「凹部」に相当する。
【符号の説明】
【0087】
1 テープ印字装置
30 テープカセット
31 カセットケース
34 アーム部
35 アーム前面
36 接離部
38 半円溝
38A 上半円溝
38B 下半円溝
50 印字済テープ
58 両面粘着テープ
59 フィルムテープ
78 係合部
79 係合孔
80 係合アーム
80A 係合爪
85 アーム先端部
85A 上先端部
85B 下先端部
86 接離部
86A 上接離部
86B 下接離部
87 先端孔部
89 凸部
301 上面
302 底面
311 上ケース
312 下ケース
341 排出口
351 上アーム前面
352 下アーム前面
381A 第一テープ上規制部
381B 第一テープ下規制部
382A 第一テープ上規制部
382B 第一テープ下規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、底面、前面、および一対の側面を有し、前記上面を有する上ケースと、前記下面を有する下ケースとからなるカセットケースと、
前記カセットケース内に収納された、印字媒体であるテープと、
前記前面の一部を含み、前記テープを、所定の搬送経路のうち前記前面と平行に延びる部分に沿って排出口に向けて案内するアーム部と、
前記アーム部における前記テープの搬送方向上流側の端部近傍に設けられ、前記上ケースと前記下ケースとを係合する係合部と、
前記排出口近傍において、前記上ケースと前記下ケースとが接離可能に接触するように構成された部分である接離部と
を備えたことを特徴とするテープカセット。
【請求項2】
前記接離部は、
前記下ケースおよび前記上ケースのいずれか一方に設けられた孔部と、
前記下ケースおよび前記上ケースの他方に設けられ、前記孔部に挿脱可能な凸部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のテープカセット。
【請求項3】
前記係合部は、
前記下ケースおよび前記上ケースのいずれか一方の前記前面に設けられ、ケースの外部と内部を連通する開口部と、
前記下ケースおよび前記上ケースの他方に設けられ、前記開口部と係合する突起を有する係合片と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のテープカセット。
【請求項4】
前記アーム部における前記テープ搬送方向上流側の前記端部に連接して形成され上下方向に貫通した凹部をさらに備え、
前記開口部は、前記下ケース及び前記上ケースのいずれか一方の前記凹部に設けられ、
前記係合片は、前記下ケース及び前記上ケースの他方に設けられたことを特徴とする請求項3に記載のテープカセット。
【請求項5】
前記接離部は、
前記カセットケースの上下方向中心位置近傍に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のテープカセット。
【請求項6】
前記下ケースの前記アーム部を構成する部分において、前記排出口に対して前記テープの搬送方向上流側に設けられ、前記テープのテープ幅方向への移動を規制する下側規制部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のテープカセット。
【請求項7】
前記上ケースの前記アーム部を構成する部分において、前記排出口に対して前記搬送方向上流側に設けられ、前記テープのテープ幅方向への移動を規制する上側規制部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のテープカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−56756(P2011−56756A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208343(P2009−208343)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】