テープ印刷装置
【課題】連続運転時のDCモータの発熱による巻線抵抗値の上昇等によってDCモータの回転数が変動しても、高精度の定長印刷が可能なテープ印刷装置を提供する。
【解決手段】連続運転時のDCモータ2の発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によって、DCモータ2のテープ印字中における定速走行時の回転速度が変動しても、このDCモータ2の回転量を検出するフォトセンサ49bのパルス数が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)に達する毎に、印字周期代数Tが補正される。そして、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を行う(S6〜S11)。
【解決手段】連続運転時のDCモータ2の発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によって、DCモータ2のテープ印字中における定速走行時の回転速度が変動しても、このDCモータ2の回転量を検出するフォトセンサ49bのパルス数が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)に達する毎に、印字周期代数Tが補正される。そして、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を行う(S6〜S11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のテープを搬送しつつ該テープにサーマルヘッドによって印字するテープ印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、DCモータを駆動源とするテープ搬送機構により長尺状のテープを搬送しつつ該テープにサーマルヘッドによって印字するテープ印刷装置に関して種々提案されている。
例えば、印字媒体にドットパターンで印字する印字ヘッドと、その印字ヘッドまたは前記印字媒体を相対的に移動させるための送り機構と、前記印字ヘッドおよび前記送り機構を制御する制御手段とを備えたものであり、更に、前記送り機構の駆動源に、回転角度を検出せずに、一定の回転数で回転するように制御されるDCモータを備え、制御手段がこのDCモータの起動直後の回転の安定していない時は、印字を禁止し、回転数が一定値に安定した時に、一定の周波数で印字するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
そして、このような構成により、印字ヘッドまたは印字媒体を相対的に移動させるための送り機構の駆動モータに安価で、エネルギー効率のよいDCモータを用いることができる為に、低消費電力でかつ低価格なドットプリンタを実現できる。
【特許文献1】特開平6−155809号公報(段落(0008)〜(0021)、図2〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の構成を用いたテープ印刷装置においては、DCモータの回転速度は、制御ICと可変抵抗の抵抗値等で予め決定される構成のため、連続運転時のDCモータの発熱によって巻線抵抗値が上昇した場合には、該DCモータの回転速度が変動して高精度の定長印刷が困難になるという問題があった。また、テープ種別による負荷変動によってもDCモータの回転数が変化するため、精度の良い定長印刷が困難になるという問題がある。
このため、DCモータの回転量をエンコーダで検出し、DCモータが一定量回転する毎にサーマルヘッドによる印字駆動を行うことが考えられるが、この場合には、ユーザがDCモータの一定回転量に対応するテープの搬送長さを補正できないため、印字長さを微調整するテープ長補正を行うことができないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、連続運転時のDCモータの発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によってDCモータの回転数が変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正することにより印字品質の高い高精度の定長印刷が可能となるテープ印刷装置を提供することを目的とする。また、ユーザがサーマルヘッドの印字周期を補正して印字長さを微調整するテープ長補正を行うことができるテープ印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係るテープ印刷装置は、長尺状のテープを搬送するテープ搬送機構と、前記テープ搬送機構を介して搬送されたテープにドットパターンにより文字等の印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを駆動制御する印字制御手段と、を備えたテープ印刷装置において、前記テープ搬送機構は、駆動源であるDCモータと、前記DCモータの回転量が所定回転量に達する駆動時間を繰り返し検出する検出手段と、初期印字周期を予め記憶する第1記憶手段と、前記検出手段によって検出される駆動時間に基づいて補正印字周期を算出する補正印字周期算出手段と、を備え、前記印字制御手段は、前記初期印字周期と、前記補正印字周期算出手段によって算出された補正印字周期に従ってサーマルヘッドを駆動制御することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係るテープ印刷装置は、請求項1に記載のテープ印刷装置において、前記テープの種類を検出する種類検出手段と、前記テープの各種類に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ種類補正値を予め記憶する第2記憶手段と、を備え、前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記種類検出手段によって検出したテープ種類に対応するテープ種類補正値に基づいて前記初期印字周期を補正することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係るテープ印刷装置は、請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置において、前記DCモータの回転量に対応するテープの搬送長さを補正する複数種類の搬送長さ補正値と前記各搬送長さ補正値に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ長補正値とを記憶する第3記憶手段と、前記複数種類の搬送長さ補正値から一の搬送長さ補正値を特定する特定手段と、を備え、前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記特定手段によって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値に基づいて前記初期印字周期を補正し、前記補正印字周期算出手段は、該テープ長補正値に基づいて前記補正印字周期を補正することを特徴とする。
【0008】
更に、請求項4に係るテープ印刷装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置において、印字周期の最短時間を記憶する第4記憶手段を備え、前記補正印字周期算出手段は、前記補正印字周期が前記最短時間未満の場合には、該補正印字周期を該最短時間に更に補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るテープ印刷装置では、テープ搬送機構の駆動源であるDCモータの回転量が所定回転量に達する駆動時間を繰り返し検出し、この順次検出される駆動時間に基づいて補正印字周期を算出する。即ち、各駆動時間におけるDCモータの回転速度に適合する補正印字周期を算出する。そして、この順次算出される補正印字周期に従ってサーマルヘッドが駆動制御される。
これにより、連続運転時のDCモータの発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によって、DCモータのテープ印字中における定速走行時の回転速度が変動しても、このDCモータの回転量が所定回転量に達する毎に、サーマルヘッドの印字周期が順次補正されるため、DCモータの回転速度が変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正して印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
また、エンコーダによってDCモータの回転量を測定する場合には、DCモータの回転量が所定回転量(例えば、4回転乃至5回転である。)に達する駆動時間(例えば、100msec程度の駆動時間である。)を繰り返し検出すればよいため、エンコーダの解像度を低くすることが可能となり、制御回路の負担の軽減化及び製造コストの削減化を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に係るテープ印刷装置では、DCモータの駆動の開始前に、種類検出手段によって検出したテープ種類に対応するテープ種類補正値に基づいてサーマルヘッドの初期印字周期が補正されるため、種類の異なるテープに交換してDCモータの回転数が変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
【0011】
また、請求項3に係るテープ印刷装置では、DCモータの駆動の開始前に、特定手段によって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値に基づいてサーマルヘッドの初期印字周期が補正され、また、このテープ長補正値に基づいて各補正印字周期も補正される。これにより、ユーザが搬送長さ補正値を特定することによって、サーマルヘッドの初期印字周期と各補正印字周期とが自動的に補正されるため、プラテンローラの摩耗などによりDCモータの回転量に対応するテープの搬送長さが変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
【0012】
更に、請求項4に係るテープ印刷装置では、補正印字周期が印字周期の最短時間未満の場合には、この補正印字周期が最短時間に更に補正される。これにより、サーマルヘッドによって印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間を確保することができるため、極端な補正によってドット抜けを起こし、印字結果が判読できなくなる等の問題を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るテープ印刷装置について、具体化した一実施例に基づいて図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施例に係るテープ印刷装置の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。
図1に示すように、本実施例に係るテープ印刷装置1は、その上面に文書データからなるテキストを作成するための文字入力キー3A、テキスト等の印字を指令する印刷キー3B、後述の搬送長さ補正値を入力するための長さ補正キー3F、及び、改行指令や各種処理の実行、選択を指令するリターンキー3R、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する液晶ディスプレイ(LCD)6上でカーソルを上下、左右に移動させるカーソルキー3C等を設けたキーボード3を有している。また、テープ印刷装置1の内部には、以下で説明するテープ収納カセット30(図2参照)を着脱自在に装着することができると共に、テープ駆動印刷機構10及びテープを切断するためのカッター17(共に図2参照)が含まれており、テープ収納カセット30から引き出されて印刷されたテープはカッター17で切断された後に、テープ印刷装置1の左側面部に設けられた排出口5から排出される。また、図1には描かれていないものの、テープ印刷装置1の右側面部には、パーソナルコンピュータなどの外部機器78との有線または無線接続を行うための接続インターフェイス67(共に図4参照)が設けられている。
【0014】
また、図2に示すように、テープ印刷装置1内のカセット収納部フレーム11には、テープ収納カセット30が着脱自在に装着されている。テープ収納カセット30内には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明な表層テープ31が巻装されたテープスプール32と、インクリボン33が巻装されたリボン供給スプール34と、使用済みのインクリボン33を巻き取る巻取りスプール35と、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に剥離テープが貼り合わされた二重テープ36が剥離テープを外側にして巻装された基材供給スプール37と、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させるための接合ローラ39とがそれぞれ回転自在に設けられている。
【0015】
また、図2及び図3に示すように、カセット収納部フレーム11には、軸20aを中心にして揺動可能となるようにアーム20が取り付けられている。アーム20の先端には、共にゴムなどの可撓性部材を表面に有するプラテンローラ21及び送りローラ22が回動自在に取り付けられている。アーム20が最も時計回りに揺動した位置では、プラテンローラ21が表層テープ31及びインクリボン33を介して後述するプレート12に配置されたサーマルヘッド13と圧接し、送りローラ22が表層テープ31及び二重テープ36を介して接合ローラ39と圧接する。
また、カセット収納部フレーム11からはプレート12が立設している。プレート12のプラテンローラ21側には、多数の発熱素子が図2の紙面垂直方向に1列に配列されたサーマルヘッド13が配置されている。プレート12は、テープ収納カセット30が所定位置に装着されたときに、テープ収納カセット30の凹部14にはめ込まれる。また、図3に示すように、カセット収納部フレーム11からは、リボン巻取りローラ15及び接合ローラ駆動ローラ16が立設している。テープ収納カセット30が所定位置に装着されると、リボン巻取りローラ15及び接合ローラ駆動ローラ16はそれぞれ巻取りスプール35及び接合ローラ39内に挿入される。
【0016】
また、カセット収納部フレーム11にはテープ走行用のDCモータ2が取り付けられている。DCモータ2の出力軸41から取り出された回転駆動力は、カセット収納部フレーム11に沿って互いに噛み合うように配置された円板状のギア42、43、44、45、46、47、48並びにプラテンローラ21及び送りローラ22とそれぞれ直列に配置された円板状のギア24、25を介して、リボン巻取りローラ15、接合ローラ駆動ローラ16、プラテンローラ21及び送りローラ22にそれぞれ伝えられる。
【0017】
そのため、DCモータ2に電力が供給されて出力軸41が回転すると、それに応じて巻取りスプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21及び送りローラ22が回転し、これらの回転によって生じる駆動力によってテープ収納カセット30内の表層テープ31、インクリボン33及び二重テープ36が巻き解かれつつ下流側へと搬送される。表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド13との間を通過する。これらがプラテンローラ21とサーマルヘッド13とによって挟まれた状態で搬送されつつ、サーマルヘッド13に配列された多数の発熱素子に選択的かつ間欠的に通電が行われることにより、表層テープ31にインクリボン33のインクがドット単位で転写されてそこに所望のドット画像が鏡像で形成される。また、サーマルヘッド13を通過したインクリボン33がリボン巻取りローラ15によって巻き取られた後、表層テープ31は二重テープ36と重ねられて送りローラ22と接合ローラ39との間を通過する。これによって、ドット印刷済みの表層テープ31はその印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされる。
【0018】
この表層テープ31と二重テープ36とが重ね合わされた積層テープ38は、表層テープ31の印刷面とは反対側から印刷画像の正像を見ることができるものであって、送りローラ22のさらに下流側に配置されたカッター17によって切断されてから排出口5から排出される。カッター17は、固定刃17aに対して回動刃17bが回動して切断対象物を剪断する鋏形式であり、回動刃17bはカッター用のDCモータ72(図4参照)によって支点を中心に往復揺動することにより積層テープ38を切断する。切断された積層テープ38は、剥離テープを剥がすことにより任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして用いることができる。
【0019】
また、図3に示すように、DCモータ2には、その回転量を検出するためのセンサであるエンコーダ49が取り付けられている。エンコーダ49は、円周方向に一定間隔で形成されたスリット(本実施例では、9個のスリットが形成されている。)を有し且つDCモータ2の出力軸41が回転軸となるようにこれに接続された回転円板49aと、この回転円板49aの両側に発光素子及び受光素子が対向配置されたフォトセンサ49bとを有している。フォトセンサ49bの発光素子から出射された光線は、回転円板49aの回転に応じて、スリット間で遮蔽されるか或いはスリットを通過して受光素子に到達する。
なお、図3に示したフォトセンサ49bを用いる代わりに、1つの2相フォトセンサを用いてDCモータ2の正転・逆転の検出を行うことも可能である。
【0020】
ここで、テープ収納カセット30内に収納されるテープとしては、印字テープの表面が透明フィルムで保護される「ラミネートタイプ」(図2参照)、印字テープの表面が保護フィルムで覆われない「レセプタータイプ」、印字テープの表面が保護フィルムで覆われないでキャラクタや模様がデザインされている「レタリングタイプ」、印字テープが布製である「布タイプ」の4種類のタイプがある。また、各タイプのテープに対して、テープ幅を3.5mm、6mm、9mm、12mm、18mm、24mmとする6種類が準備されている。
【0021】
そして、図2に示すように、テープ収納カセット30の上面部と底面部の角部には、収納されるテープのタイプやテープ幅のいずれかを検知するために、7個の各センサ孔K1〜K7の有・無を組み合わせたテープ特定部30Aが設けられている。また、カセット収納部フレーム11のこのテープ特定部30Aに対向する底面部には、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成されて各センサ孔K1〜K7の有・無を検出するカセットセンサ7(図4参照)が設けられている。即ち、このカセットセンサ7は、テープ特定部30Aを構成する各センサ孔K1〜K7の有・無の組合せにより、例えば、テープ収納カセット30に収納されるテープが、テープ幅が9mmでラミネートタイプのときには「1011111」のカセット信号を出力し、またテープ幅が9mmでレセプタータイプのときには「1100111」のカセット信号を出力するとともに、テープ収納カセット30が装着されていないときには、「0000000」のカセット信号を出力する。尚、「1」はON信号、「0」はOFF信号を表している。
【0022】
次に、テープ印刷装置1の制御構成について、図4及び図5に基づいて説明する。テープ印刷装置1内には制御基板(図示せず)が配置されており、この制御基板上には、CPU61、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66、タイマ67、3つのドライバ回路68、69、70が配置されている。各種演算を行うと共に信号の入出力を管理するCPU61は、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66、タイマ67、各ドライバ回路68〜70と接続されていると共に、液晶ディスプレイ(LCD)6、カセットセンサ7、フォトセンサ49b、キーボード3及び接続インターフェイス67にも接続されている。
【0023】
CG−ROM62は、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶するキャラクタージェネレータ用メモリである。また、EEPROM63には、後述のテープ種類補正テーブル81やテープ長補正テーブル82等が格納されている。また、ROM64には、テープ印刷装置1を動作させるための後述の各種のプログラム、サーマルヘッドを印字駆動する「初期印字周期」やこの初期印字周期に対応するDCモータ2の「基準回転量」、サーマルヘッド13によって印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間である「最短時間」(本実施例では、約10m秒である。)などの各種データが格納されている。また、RAM66は、DCモータ2の回転量が所定回転量に達するまでのクロック信号をカウントする回転補正周期カウンタ等が設けられ、キーボード3から入力されたデータや外部機器78から接続インターフェイス67を介して取り込まれたデータ、及び、CPU61での演算結果などを一時的に記憶する。また、タイマ67は、後述のようにクロック信号に基づいて初期化されてからの経過時間を計測する(図9のS7参照)。
【0024】
また、CPU61には、サーマルヘッド13での印刷を制御する印刷制御部61aと、DCモータ2をON・OFF制御するテープモータ制御部61bと、DCモータ72を制御するカッターモータ制御部61cと、エンコーダ49のフォトセンサ49bの出力信号からDCモータ2の回転パルスの数をカウントするパルスカウンタ61dとが含まれている。また、ドライバ回路68は、タイマ67で生成されたクロック信号を参照して、後述のように補正された印字周期で印刷制御部61aからの制御信号に基づいてサーマルヘッド13に駆動信号を供給する。また、ドライバ回路69は、カッターモータ制御部61cからの制御信号に基づいてDCモータ72に駆動信号を供給する。また、ドライバ回路70は、テープモータ制御部61bからの制御信号に基づいてDCモータ2を駆動する。
【0025】
また、図5に示すように、DCモータ2を駆動制御するドライバ回路70には、CPU61からのON・OFF信号によってDCモータ2への電力供給をオンオフするスイッチングトランジスタ72と、DCモータ2を定速回転制御する電子ガバナ回路73とが設けられている。この電子ガバナ回路73は、抵抗Rの電流に基づいて、DCモータ2の逆起電力が一定になるように比例電流制御を行う。そして、電力供給の開始からある程度の時間がたつと、電源電圧の大きさにかかわらず、DCモータ2は負荷に対応した一定の回転数で回転するようになる。そして、DCモータ2の所定回転量(本実施例では、4回転である。)が、エンコーダ49を介して所定パルス数(本実施例では、36パルスである。)をカウントすることによって検出される。
尚、この電子ガバナ回路73は、例えばLA5528N(メーカ:三洋電機株式会社)等の制御ICである。
【0026】
また、サーマルヘッド13は、DCモータ2の定速走行時に、後述のようにテープ収納カセット30に収納されたテープ種類等に対応して初期印字周期(T0)を補正した印字周期で駆動され、その後、DCモータ2の所定回転量毎に、該所定回転量に達する駆動時間に基づいて順次補正された補正印字周期で駆動される。そのため、ROM64には、サーマルヘッド13の印字駆動開始時の基準印字周期である初期印字周期(T0)のデータが格納されている。このように、DCモータ2の定速走行時にサーマルヘッド13が補正された印字周期で駆動されるようにすることにより、DCモータ2が大きな回転数で定速走行する場合であってもサーマルヘッド13の駆動休止期間に行われる印刷データのデータ処理時間(例えば、アウトラインフォントデータからビットマップデータへの展開、文字装飾、縦横変換)を十分に確保することができるようになり、印刷ミスが生じるなど印刷品質が劣化してしまうことがなくなる。
他方、サーマルヘッド13は、DCモータ2の定速走行時以外(つまり、DCモータ2への電力供給が中断されてからDCモータ2が停止するまで、及び、DCモータ2への電力供給が再開されてからDCモータ2が定速走行を開始するまで)には、原則として、エンコーダ49のフォトセンサ49bの出力信号に基づいて停止される。このように定速走行時以外にはサーマルヘッド13を停止することにより、印刷ドットの位置ずれを高い精度で防止し、歪みの無い印字を実現できる。
【0027】
次に、EEPROM63に予め格納されるテープ種類補正テーブル81について図6に基づいて説明する。
図6に示すように、テープ種類補正テーブル81は、テープ収納カセット30に収納されたテープの種類を表す「テープ種類」と、この「テープ種類」に対応してサーマルヘッド13を印字駆動する初期印字周期(T0)に積算して補正する補正値を表す「テープ種類補正値」とから構成されている。
【0028】
また、「テープ種類」には、各テープのタイプとテープ幅3.5mm〜24mmとの12種類の組み合わせが予め格納されている。例えば、「テープ種類」が「3.5mm、レセプタ」は、テープ幅が3.5mmでテープのタイプが「レセプタータイプ」の場合を表している。また、「テープ種類」が「6mm、ラミネート」は、テープ幅が6mmでテープのタイプが「ラミネートタイプ」の場合を表している。
また、「テープ種類補正値」には、「テープ種類」の「3.5mm、レセプタ」、「6mm、レセプタ」、「9mm、レセプタ」等の5種類に対して、それぞれ「1」の数値が予め格納されている。また、「テープ種類補正値」には、「テープ種類」の「6mm、ラミネート」、「9mm、ラミネート」、「12mm、ラミネート」等の7種類に対して、それぞれ「0.985」の数値が予め格納されている。即ち、「テープ種類」の「6mm、ラミネート」、「9mm、ラミネート」、「12mm、ラミネート」等の7種類の初期印字周期は、後述のようにサーマルヘッド13の初期印字周期が少し短い時間になるように補正される(図10参照)。
【0029】
次に、EEPROM63に予め格納されるテープ長補正テーブル82について図7に基づいて説明する。
図7に示すように、テープ長補正テーブル82は、プラテンローラ21の摩耗等によってDCモータ2の回転量に対するテープ搬送長さが変動した場合に、ユーザが選択して変更することができるテープ搬送長さの補正量を表す「搬送長さ補正値」と、この「搬送長さ補正値」に対応してサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)に積算して補正する補正値を表す「テープ長補正値」とから構成されている。
また、「搬送長さ補正値」には、テープ搬送長さを約3%増加することを表す「+3」と、テープ搬送長さを約2%増加することを表す「+2」と、テープ搬送長さを約1%増加することを表す「+1」と、テープ搬送長さを変更しないことを表す「0」と、テープ搬送長さを約1%減少させることを表す「−1」とが予め格納されている。
また、「テープ長補正値」には、「搬送長さ補正値」の「+3」に対して「1.03」、「搬送長さ補正値」の「+2」に対して「1.02」、「搬送長さ補正値」の「+1」に対して「1.01」、「搬送長さ補正値」の「0」に対して「1」、「搬送長さ補正値」の「−1」に対して「0.99」が予め格納されている。従って、後述のようにユーザが選択した「搬送長さ補正値」に対応してサーマルヘッド13の印字周期が補正される(図10参照)。
【0030】
ここで、ユーザが「搬送長さ補正値」を選択する操作について図8に基づいて説明する。
図8に示すように、ユーザがキーボード3の長さ補正キー3Fを押下した場合には、液晶ディスプレイ(LCD)6に、先ず、「搬送長さ補正値」の「0」を選択する旨を表す「長さ補正:0」が表示される。そして、ユーザがリターンキー3Rを押下すると、「搬送長さ補正値」として「0」がEEPROM63に格納されると共に、液晶ディスプレイ6は、文字入力モードに戻る。
一方、ユーザが長さ補正キー3Fを繰り返し押下した場合には、液晶ディスプレイ6に、「搬送長さ補正値」の「+1」を選択する旨を表す「長さ補正:+1」、「搬送長さ補正値」の「+2」を選択する旨を表す「長さ補正:+2」、「搬送長さ補正値」の「+3」を選択する旨を表す「長さ補正:+3」、「搬送長さ補正値」の「−1」を選択する旨を表す「長さ補正:−1」が長さ補正キー3Fを押下する毎に順次表示され、更に長さ補正キー3Fを押下すると、「搬送長さ補正値」の「0」を選択する旨を表す「長さ補正:0」の表示に戻る。そして、いずれかの表示の際に、ユーザがリターンキー3Rを押下すると、液晶ディスプレイ6の表示に対応する「搬送長さ補正値」として「+1」、「+2」、「+3」、「−1」、「0」のうちのいずれかがEEPROM63に格納されると共に、液晶ディスプレイ6は、文字入力モードに戻る。尚、工場出荷時には、「搬送長さ補正値」として「0」がEEPROM63に格納されている。
【0031】
次に、このように構成されたテープ印刷装置1のテープに文字データ等を印刷する印刷制御処理について図9乃至図12に基づいて説明する。
図9に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1において、テープ印刷装置1のCPU61は、キーボード3の印刷キー3Bが押下された場合には、ROM64からサーマルヘッド13を印字駆動する初期印字周期(T0)(本実施例では、T0=14.1msecで、フォトセンサ49bの約5パルスに相当する。)を読み出し、印字周期代数Tにこの初期印字周期(T0)を代入してRAM66に記憶する。
そして、S2において、CPU61は、カセットセンサ7を介してテープ収納カセット30に収納されているテープのタイプとテープ幅とを特定し、EEPROM63に格納されているテープ種類補正テーブル81の「テープ種類」として、該当する「テープ種類」に対応する「テープ種類補正値」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「テープ種類補正値」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0032】
例えば、CPU61は、カセットセンサ7から「1011111」のカセット信号が入力されている場合には、テープ収納カセット30に収納されているテープのテープ幅が9mmでラミネートタイプであると特定し、テープ種類補正テーブル81の「テープ種類」の「9mm、ラミネート」に対応する「テープ種類補正値」の「0.985」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「0.985」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
また、CPU61は、カセットセンサ7から「1100111」のカセット信号が入力されている場合には、テープ収納カセット30に収納されているテープのテープ幅が9mmでレセプタータイプであると特定し、テープ種類補正テーブル81の「テープ種類」の「9mm、レセプター」に対応する「テープ種類補正値」の「1」を読み出す。そして、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「1」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0033】
続いて、S3において、CPU61は、後述の「印字周期補正処理」のサブ処理(図10参照)を実行する。
そして、S4において、CPU61は、CPU61は、スイッチングトランジスタ72をオンにしてDCモータ2への電力供給を開始する。これにより、電子ガバナ回路73は、DCモータ2の逆起電力が、一定値となるようにDCモータ2を比例電流制御する。
また、S5において、CPU61は、フォトセンサ49bからのパルス周期を検出して加速領域が終了して定速回転数になるのを待つ。尚、DCモータ2を起動してから一定時間待つようにしてもよい。
【0034】
そして、S6において、DCモータ2の回転速度が一定になるタイミングで、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を開始する。これにより、表層テープ31上には、印字周期(T)の間に搬送されるテープ搬送距離に相当するドット間隔によりドットパターン印刷がされる。尚、後述のように、この印字周期代数Tは、フォトセンサ49bから入力されるパルス数が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)に達する毎に補正されるため、CPU61は、印字周期代数Tが補正される毎に、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を行う。
また、S7において、CPU61は、回転補正周期タイマとしてのタイマ67を初期化後、即ち、タイマ67の計測時間TMを読み出し、該計測時間TMに「0」を代入して再度タイマ67に格納後、タイマ67による時間の計測を開始して、DCモータ2の回転量が所定回転量(本実施例では、4回転で、フォトセンサ49bの36パルスである。)に達するまでの時間の計測を開始する。
【0035】
そして、S8において、CPU61は、後述の「パルスカウント処理」のサブ処理(図11参照)を実行する。
続いて、S9において、CPU61は、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数に達した時におけるタイマ67の計測時間TMを読み出し、RAM66に記憶する。そして、CPU61は、再度、RAM66から計測時間TMを読み出すと共に、ROM64から初期印字周期(T0)に相当する基準回転量である基準エンコーダパルス数(本実施例では、初期印字周期(T0)は14.1msecで、基準エンコーダパルス数は5パルスである。)と、制御パルス数(本実施例では、フォトセンサ49bの36パルスで、DCモータ2の4回転に相当する。)とを読み出し、この計測時間TMに基準エンコーダパルス数の制御パルス数に対する割合を積算して「補正印字周期」を算出する。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tにこの「補正印字周期」の値を代入して、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0036】
その後、S10において、CPU61は、上記S3の「印字周期補正処理」のサブ処理(図10参照)を実行する。
続いて、S11において、CPU61は、サーマルヘッド13への通電を停止するか否か、即ち、RAM66に記憶された印刷データが全て印刷されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、RAM66に記憶された印刷データが全て印刷されていない場合には(S11:NO)、CPU61は、再度、S7以降の処理を実行する。
一方、RAM66に記憶された印刷データが全て印刷された場合には(S11:YES)、S12において、CPU61は、サーマルヘッド13の駆動を停止する。
続いて、S13において、CPU61は、スイッチングトランジスタ72をオフにしてDCモータ2への電力供給をOFFにして、当該処理を終了する。
【0037】
次に、上記S3及びS10において実行する「印字周期補正処理」のサブ処理について図10に基づいて説明する。
図10に示すように、S21において、CPU61は、EEPROM63に記憶されている「搬送長さ補正値」を読み出し、EEPROM63に格納されているテープ長補正テーブル82の「搬送長さ補正値」として、この「搬送長さ補正値」に対応する「テープ長補正値」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「テープ長補正値」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0038】
例えば、CPU61は、EEPROM63から読み出した「搬送長さ補正値」が「0」の場合には、EEPROM63に格納されているテープ長補正テーブル82の「搬送長さ補正値」の「0」に対応する「テープ長補正値」の「1」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「1」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
また、CPU61は、EEPROM63から読み出した「搬送長さ補正値」が「+1」の場合には、EEPROM63に格納されているテープ長補正テーブル82の「搬送長さ補正値」の「+1」に対応する「テープ長補正値」の「1.01」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「1.01」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0039】
続いて、S22において、CPU61は、ROM64から印字周期の「最短時間」、即ち、サーマルヘッド13による印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間である「最短時間」のデータ「10m秒」を読み出すと共に、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tが10m秒未満か否かを判定する判定処理を実行する。
そして、印字周期代数Tが10m秒未満の場合には(S22:YES)、CPU61は、S23の処理に移行する。S23において、CPU61は、再度RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに10m秒を代入して、RAM66に記憶後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
一方、印字周期代数Tが10m秒以上の場合には(S22:NO)、CPU61は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
【0040】
次に、上記S8において実行する「パルスカウント処理」のサブ処理について図11に基づいて説明する。
図11に示すように、S31において、CPU61は、パルスカウンタ61dを初期化する。
そして、S32において、CPU61は、フォトセンサ49bを介して入力されるパルスを検出し、パルスを検出するとパルスカウンタ61dのカウント値を読み出して、該カウント値に「1」加算して、再度、パルスカウンタ61dに記憶する。
続いて、S33において、CPU61は、パルスカウンタ61dのカウント値を読み出すと共に、ROM64から制御パルス数を読み出して、該カウント値が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)以上になったか否かを判定する判定処理を実行する。そして、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数未満の場合には(S33:NO)、CPU61は、再度、S32以降の処理を実行する。
一方、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数以上の場合、即ち、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数に達した場合には(S33:YES)、CPU61は、当該サブ処理を終了してメインフローチャートに戻る。
【0041】
次に、上記印刷制御処理(S1〜S13)を実行して印字周期をDCモータ2の4回転毎に順次補正制御した場合と、印字周期をDCモータ2の4回転毎に順次補正しない無制御の場合とにおけるテープ搬送誤差が生じない理想印字長との差の一例を図12に示す。
尚、サーマルヘッド13の初期印字周期(T0)は、14.1msecである。また、エンコーダ49の回転円板49aに形成されたスリット数は9スリットで、フォトセンサ49bは、9パルス/回転のパルス信号を出力する。従って、サーマルヘッド13の印字周期は、フォトセンサ49bの36パルス(制御パルス数)毎に補正される。また、DCモータ2の定速時の基準回転速度は、14.1×9÷5=25.38msecで1回転する回転速度である。また、DCモータ2の定速回転時に、テープはフォトセンサ49bの36パルス毎に約1mm搬送される。また、DCモータ2は、定速回転時に、フォトセンサ49bの1パルス毎に0.004%の回転速度誤差が生じる。
【0042】
図12に示すように、上記印刷制御処理(S1〜S13)を実行して印字周期をDCモータ2の4回転毎に順次補正制御した場合には、理想印字長との差は、補正時誤差曲線85のように変化し、テープを約80mm搬送すると約0.0026mmの誤差が生じている。
一方、上記印刷制御処理(S1〜S13)において、上記S7〜S10の処理を実行しない場合、即ち、印字周期をDCモータ2の4回転毎に補正制御しない場合には、理想印字長との差は、無制御時誤差曲線86のように変化し、テープを約80mm搬送すると約0.11mmの誤差が生じている。
【0043】
ここで、ドライバ回路70、DCモータ2、各ギア42〜48、24、25、プラテンローラ21、送りローラ22は、テープ搬送機構を構成する。また、CPU61、EEPROM63、ROM64、RAM66は、印字制御手段を構成する。また、CPU61、ROM64、RAM66、タイマ67は、検出手段を構成する。また、ROM64は、第1記憶手段、第4記憶手段として機能する。また、CPU61、ROM64、RAM66は、補正印字周期算出手段を構成する。また、カセットセンサ7は、種類検出手段として機能する。また、EEPROM63は、第2記憶手段、第3記憶手段として機能する。また、長さ補正キー3F、リターンキー3D、液晶ディスプレイ6は、特定手段を構成する。
【0044】
したがって、本実施例に係るテープ印刷装置1では、連続運転時のDCモータ2の発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によって、DCモータ2のテープ印字中における定速走行時の回転速度が変動しても、このDCモータ2の回転量を検出するフォトセンサ49bのパルス数が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)に達する毎に、印字周期代数Tが補正される(S9)。
これにより、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を行うため、DCモータ2の回転数が変動しても、サーマルヘッド13の印字周期(T)を順次補正して印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
また、エンコーダ49によってDCモータ2の回転量を測定する場合には、DCモータ2の回転量が所定回転量(例えば、4回転乃至5回転である。)に達する駆動時間(例えば、100msec程度の駆動時間である。)に相当する制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)を繰り返し検出すればよいため、エンコーダ49の解像度を低くすることが可能となり、制御回路の負担の軽減化及び製造コストの削減化を図ることができる。また、この制御パルス数の繰り返し検出は、時間をずらして同時並行的に行ってもよく、この場合は、さらに滑らかな印字周期(T)の補正が可能となる。
【0045】
また、DCモータ2の駆動の開始前に、カセットセンサ7によって検出したテープの種類に対応するテープ種類補正値がサーマルヘッド7の初期印字周期(T0)に積算されて補正され、印字周期代数TとしてRAM66に記憶される(S2)。このため、テープの種類が異なるテープ収納カセット30に交換してDCモータ2の回転数が変動しても、サーマルヘッド13の印字周期(T)を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
また、DCモータ2の駆動の開始前に、長さ補正キー3F及びリターンキー3Dによって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値が初期印字周期(T0)が代入された印字周期代数Tに積算されて補正され(S3)、また、このテープ長補正値が補正印字周期が代入された印字周期代数Tに積算されて補正される(S10)。これにより、ユーザが搬送長さ補正値を特定することによって、印字周期代数Tが、サーマルヘッド13の印字開始時、及びが制御パルス数毎に自動的に補正されるため、プラテンローラ21の摩耗などによりDCモータ2の回転量に対応するテープの搬送長さが変動しても、サーマルヘッド13の印字周期を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
更に、印字周期代数Tが、印字周期の「最短時間」、即ち、サーマルヘッド13による印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間である「最短時間」のデータ「10m秒」未満になった場合には(S22:YES)、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに10m秒を代入して、RAM66に記憶される(S23)。このため、サーマルヘッド13によって印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間(本実施例では、10m秒である。)を確保することができるため、DCモータ2の極端な回転変動等による印字周期の補正によって、印字ドットが乱れることを防止でき、更に印字品質の高い印刷を行うことが可能となる。
【0046】
尚、本発明は前記実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施例に係るテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示すテープ印刷装置の内部に配置されたテープ駆動印刷機構及びテープ収納カセットの構造を説明するための平面図である。
【図3】図2のテープ駆動印刷機構をテープ収納カセットがない状態において矢印A方向から見た側面図である。
【図4】図1に示すテープ印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示すテープ印刷装置のテープ駆動用DCモータのドライバ回路を模式的に示す図である。
【図6】図1に示すテープ印刷装置のEEPROMに予め格納されるテープ種類補正テーブルの一例を示す図である。
【図7】図1に示すテープ印刷装置のEEPROMに予め格納されるテープ長補正テーブルの一例を示す図である。
【図8】図1に示すテープ印刷装置の長さ補正キーを押下した場合に、液晶ディスプレイの表示の一例を示す図である。
【図9】図1に示すテープ印刷装置の印刷制御処理を示すメインフローチャートである。
【図10】図9に示す印字周期補正処理のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図11】図9に示すパルスカウント処理のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図12】図9に示す印刷制御処理を実行して印字周期をDCモータの所定回転量毎に順次補正制御した場合と、印字周期をDCモータの所定回転量毎に順次補正しない無制御の場合とにおけるテープ搬送誤差が生じない理想印字長との差の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 テープ印刷装置
2 DCモータ
3 キーボード
3F 長さ補正キー
6 液晶ディスプレイ
13 サーマルヘッド
30 テープ収納カセット
31 表層テープ
49 エンコーダ
49a 回転円板
49b フォトセンサ
61 CPU
61d パルスカウンタ
63 EEPROM
64 ROM
66 RAM
67 タイマ
49 ドライバ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のテープを搬送しつつ該テープにサーマルヘッドによって印字するテープ印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、DCモータを駆動源とするテープ搬送機構により長尺状のテープを搬送しつつ該テープにサーマルヘッドによって印字するテープ印刷装置に関して種々提案されている。
例えば、印字媒体にドットパターンで印字する印字ヘッドと、その印字ヘッドまたは前記印字媒体を相対的に移動させるための送り機構と、前記印字ヘッドおよび前記送り機構を制御する制御手段とを備えたものであり、更に、前記送り機構の駆動源に、回転角度を検出せずに、一定の回転数で回転するように制御されるDCモータを備え、制御手段がこのDCモータの起動直後の回転の安定していない時は、印字を禁止し、回転数が一定値に安定した時に、一定の周波数で印字するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
そして、このような構成により、印字ヘッドまたは印字媒体を相対的に移動させるための送り機構の駆動モータに安価で、エネルギー効率のよいDCモータを用いることができる為に、低消費電力でかつ低価格なドットプリンタを実現できる。
【特許文献1】特開平6−155809号公報(段落(0008)〜(0021)、図2〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の構成を用いたテープ印刷装置においては、DCモータの回転速度は、制御ICと可変抵抗の抵抗値等で予め決定される構成のため、連続運転時のDCモータの発熱によって巻線抵抗値が上昇した場合には、該DCモータの回転速度が変動して高精度の定長印刷が困難になるという問題があった。また、テープ種別による負荷変動によってもDCモータの回転数が変化するため、精度の良い定長印刷が困難になるという問題がある。
このため、DCモータの回転量をエンコーダで検出し、DCモータが一定量回転する毎にサーマルヘッドによる印字駆動を行うことが考えられるが、この場合には、ユーザがDCモータの一定回転量に対応するテープの搬送長さを補正できないため、印字長さを微調整するテープ長補正を行うことができないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、連続運転時のDCモータの発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によってDCモータの回転数が変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正することにより印字品質の高い高精度の定長印刷が可能となるテープ印刷装置を提供することを目的とする。また、ユーザがサーマルヘッドの印字周期を補正して印字長さを微調整するテープ長補正を行うことができるテープ印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係るテープ印刷装置は、長尺状のテープを搬送するテープ搬送機構と、前記テープ搬送機構を介して搬送されたテープにドットパターンにより文字等の印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを駆動制御する印字制御手段と、を備えたテープ印刷装置において、前記テープ搬送機構は、駆動源であるDCモータと、前記DCモータの回転量が所定回転量に達する駆動時間を繰り返し検出する検出手段と、初期印字周期を予め記憶する第1記憶手段と、前記検出手段によって検出される駆動時間に基づいて補正印字周期を算出する補正印字周期算出手段と、を備え、前記印字制御手段は、前記初期印字周期と、前記補正印字周期算出手段によって算出された補正印字周期に従ってサーマルヘッドを駆動制御することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係るテープ印刷装置は、請求項1に記載のテープ印刷装置において、前記テープの種類を検出する種類検出手段と、前記テープの各種類に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ種類補正値を予め記憶する第2記憶手段と、を備え、前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記種類検出手段によって検出したテープ種類に対応するテープ種類補正値に基づいて前記初期印字周期を補正することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係るテープ印刷装置は、請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置において、前記DCモータの回転量に対応するテープの搬送長さを補正する複数種類の搬送長さ補正値と前記各搬送長さ補正値に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ長補正値とを記憶する第3記憶手段と、前記複数種類の搬送長さ補正値から一の搬送長さ補正値を特定する特定手段と、を備え、前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記特定手段によって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値に基づいて前記初期印字周期を補正し、前記補正印字周期算出手段は、該テープ長補正値に基づいて前記補正印字周期を補正することを特徴とする。
【0008】
更に、請求項4に係るテープ印刷装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置において、印字周期の最短時間を記憶する第4記憶手段を備え、前記補正印字周期算出手段は、前記補正印字周期が前記最短時間未満の場合には、該補正印字周期を該最短時間に更に補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るテープ印刷装置では、テープ搬送機構の駆動源であるDCモータの回転量が所定回転量に達する駆動時間を繰り返し検出し、この順次検出される駆動時間に基づいて補正印字周期を算出する。即ち、各駆動時間におけるDCモータの回転速度に適合する補正印字周期を算出する。そして、この順次算出される補正印字周期に従ってサーマルヘッドが駆動制御される。
これにより、連続運転時のDCモータの発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によって、DCモータのテープ印字中における定速走行時の回転速度が変動しても、このDCモータの回転量が所定回転量に達する毎に、サーマルヘッドの印字周期が順次補正されるため、DCモータの回転速度が変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正して印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
また、エンコーダによってDCモータの回転量を測定する場合には、DCモータの回転量が所定回転量(例えば、4回転乃至5回転である。)に達する駆動時間(例えば、100msec程度の駆動時間である。)を繰り返し検出すればよいため、エンコーダの解像度を低くすることが可能となり、制御回路の負担の軽減化及び製造コストの削減化を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に係るテープ印刷装置では、DCモータの駆動の開始前に、種類検出手段によって検出したテープ種類に対応するテープ種類補正値に基づいてサーマルヘッドの初期印字周期が補正されるため、種類の異なるテープに交換してDCモータの回転数が変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
【0011】
また、請求項3に係るテープ印刷装置では、DCモータの駆動の開始前に、特定手段によって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値に基づいてサーマルヘッドの初期印字周期が補正され、また、このテープ長補正値に基づいて各補正印字周期も補正される。これにより、ユーザが搬送長さ補正値を特定することによって、サーマルヘッドの初期印字周期と各補正印字周期とが自動的に補正されるため、プラテンローラの摩耗などによりDCモータの回転量に対応するテープの搬送長さが変動しても、サーマルヘッドの印字周期を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
【0012】
更に、請求項4に係るテープ印刷装置では、補正印字周期が印字周期の最短時間未満の場合には、この補正印字周期が最短時間に更に補正される。これにより、サーマルヘッドによって印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間を確保することができるため、極端な補正によってドット抜けを起こし、印字結果が判読できなくなる等の問題を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るテープ印刷装置について、具体化した一実施例に基づいて図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施例に係るテープ印刷装置の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。
図1に示すように、本実施例に係るテープ印刷装置1は、その上面に文書データからなるテキストを作成するための文字入力キー3A、テキスト等の印字を指令する印刷キー3B、後述の搬送長さ補正値を入力するための長さ補正キー3F、及び、改行指令や各種処理の実行、選択を指令するリターンキー3R、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する液晶ディスプレイ(LCD)6上でカーソルを上下、左右に移動させるカーソルキー3C等を設けたキーボード3を有している。また、テープ印刷装置1の内部には、以下で説明するテープ収納カセット30(図2参照)を着脱自在に装着することができると共に、テープ駆動印刷機構10及びテープを切断するためのカッター17(共に図2参照)が含まれており、テープ収納カセット30から引き出されて印刷されたテープはカッター17で切断された後に、テープ印刷装置1の左側面部に設けられた排出口5から排出される。また、図1には描かれていないものの、テープ印刷装置1の右側面部には、パーソナルコンピュータなどの外部機器78との有線または無線接続を行うための接続インターフェイス67(共に図4参照)が設けられている。
【0014】
また、図2に示すように、テープ印刷装置1内のカセット収納部フレーム11には、テープ収納カセット30が着脱自在に装着されている。テープ収納カセット30内には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明な表層テープ31が巻装されたテープスプール32と、インクリボン33が巻装されたリボン供給スプール34と、使用済みのインクリボン33を巻き取る巻取りスプール35と、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に剥離テープが貼り合わされた二重テープ36が剥離テープを外側にして巻装された基材供給スプール37と、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させるための接合ローラ39とがそれぞれ回転自在に設けられている。
【0015】
また、図2及び図3に示すように、カセット収納部フレーム11には、軸20aを中心にして揺動可能となるようにアーム20が取り付けられている。アーム20の先端には、共にゴムなどの可撓性部材を表面に有するプラテンローラ21及び送りローラ22が回動自在に取り付けられている。アーム20が最も時計回りに揺動した位置では、プラテンローラ21が表層テープ31及びインクリボン33を介して後述するプレート12に配置されたサーマルヘッド13と圧接し、送りローラ22が表層テープ31及び二重テープ36を介して接合ローラ39と圧接する。
また、カセット収納部フレーム11からはプレート12が立設している。プレート12のプラテンローラ21側には、多数の発熱素子が図2の紙面垂直方向に1列に配列されたサーマルヘッド13が配置されている。プレート12は、テープ収納カセット30が所定位置に装着されたときに、テープ収納カセット30の凹部14にはめ込まれる。また、図3に示すように、カセット収納部フレーム11からは、リボン巻取りローラ15及び接合ローラ駆動ローラ16が立設している。テープ収納カセット30が所定位置に装着されると、リボン巻取りローラ15及び接合ローラ駆動ローラ16はそれぞれ巻取りスプール35及び接合ローラ39内に挿入される。
【0016】
また、カセット収納部フレーム11にはテープ走行用のDCモータ2が取り付けられている。DCモータ2の出力軸41から取り出された回転駆動力は、カセット収納部フレーム11に沿って互いに噛み合うように配置された円板状のギア42、43、44、45、46、47、48並びにプラテンローラ21及び送りローラ22とそれぞれ直列に配置された円板状のギア24、25を介して、リボン巻取りローラ15、接合ローラ駆動ローラ16、プラテンローラ21及び送りローラ22にそれぞれ伝えられる。
【0017】
そのため、DCモータ2に電力が供給されて出力軸41が回転すると、それに応じて巻取りスプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21及び送りローラ22が回転し、これらの回転によって生じる駆動力によってテープ収納カセット30内の表層テープ31、インクリボン33及び二重テープ36が巻き解かれつつ下流側へと搬送される。表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド13との間を通過する。これらがプラテンローラ21とサーマルヘッド13とによって挟まれた状態で搬送されつつ、サーマルヘッド13に配列された多数の発熱素子に選択的かつ間欠的に通電が行われることにより、表層テープ31にインクリボン33のインクがドット単位で転写されてそこに所望のドット画像が鏡像で形成される。また、サーマルヘッド13を通過したインクリボン33がリボン巻取りローラ15によって巻き取られた後、表層テープ31は二重テープ36と重ねられて送りローラ22と接合ローラ39との間を通過する。これによって、ドット印刷済みの表層テープ31はその印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされる。
【0018】
この表層テープ31と二重テープ36とが重ね合わされた積層テープ38は、表層テープ31の印刷面とは反対側から印刷画像の正像を見ることができるものであって、送りローラ22のさらに下流側に配置されたカッター17によって切断されてから排出口5から排出される。カッター17は、固定刃17aに対して回動刃17bが回動して切断対象物を剪断する鋏形式であり、回動刃17bはカッター用のDCモータ72(図4参照)によって支点を中心に往復揺動することにより積層テープ38を切断する。切断された積層テープ38は、剥離テープを剥がすことにより任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして用いることができる。
【0019】
また、図3に示すように、DCモータ2には、その回転量を検出するためのセンサであるエンコーダ49が取り付けられている。エンコーダ49は、円周方向に一定間隔で形成されたスリット(本実施例では、9個のスリットが形成されている。)を有し且つDCモータ2の出力軸41が回転軸となるようにこれに接続された回転円板49aと、この回転円板49aの両側に発光素子及び受光素子が対向配置されたフォトセンサ49bとを有している。フォトセンサ49bの発光素子から出射された光線は、回転円板49aの回転に応じて、スリット間で遮蔽されるか或いはスリットを通過して受光素子に到達する。
なお、図3に示したフォトセンサ49bを用いる代わりに、1つの2相フォトセンサを用いてDCモータ2の正転・逆転の検出を行うことも可能である。
【0020】
ここで、テープ収納カセット30内に収納されるテープとしては、印字テープの表面が透明フィルムで保護される「ラミネートタイプ」(図2参照)、印字テープの表面が保護フィルムで覆われない「レセプタータイプ」、印字テープの表面が保護フィルムで覆われないでキャラクタや模様がデザインされている「レタリングタイプ」、印字テープが布製である「布タイプ」の4種類のタイプがある。また、各タイプのテープに対して、テープ幅を3.5mm、6mm、9mm、12mm、18mm、24mmとする6種類が準備されている。
【0021】
そして、図2に示すように、テープ収納カセット30の上面部と底面部の角部には、収納されるテープのタイプやテープ幅のいずれかを検知するために、7個の各センサ孔K1〜K7の有・無を組み合わせたテープ特定部30Aが設けられている。また、カセット収納部フレーム11のこのテープ特定部30Aに対向する底面部には、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成されて各センサ孔K1〜K7の有・無を検出するカセットセンサ7(図4参照)が設けられている。即ち、このカセットセンサ7は、テープ特定部30Aを構成する各センサ孔K1〜K7の有・無の組合せにより、例えば、テープ収納カセット30に収納されるテープが、テープ幅が9mmでラミネートタイプのときには「1011111」のカセット信号を出力し、またテープ幅が9mmでレセプタータイプのときには「1100111」のカセット信号を出力するとともに、テープ収納カセット30が装着されていないときには、「0000000」のカセット信号を出力する。尚、「1」はON信号、「0」はOFF信号を表している。
【0022】
次に、テープ印刷装置1の制御構成について、図4及び図5に基づいて説明する。テープ印刷装置1内には制御基板(図示せず)が配置されており、この制御基板上には、CPU61、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66、タイマ67、3つのドライバ回路68、69、70が配置されている。各種演算を行うと共に信号の入出力を管理するCPU61は、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66、タイマ67、各ドライバ回路68〜70と接続されていると共に、液晶ディスプレイ(LCD)6、カセットセンサ7、フォトセンサ49b、キーボード3及び接続インターフェイス67にも接続されている。
【0023】
CG−ROM62は、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶するキャラクタージェネレータ用メモリである。また、EEPROM63には、後述のテープ種類補正テーブル81やテープ長補正テーブル82等が格納されている。また、ROM64には、テープ印刷装置1を動作させるための後述の各種のプログラム、サーマルヘッドを印字駆動する「初期印字周期」やこの初期印字周期に対応するDCモータ2の「基準回転量」、サーマルヘッド13によって印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間である「最短時間」(本実施例では、約10m秒である。)などの各種データが格納されている。また、RAM66は、DCモータ2の回転量が所定回転量に達するまでのクロック信号をカウントする回転補正周期カウンタ等が設けられ、キーボード3から入力されたデータや外部機器78から接続インターフェイス67を介して取り込まれたデータ、及び、CPU61での演算結果などを一時的に記憶する。また、タイマ67は、後述のようにクロック信号に基づいて初期化されてからの経過時間を計測する(図9のS7参照)。
【0024】
また、CPU61には、サーマルヘッド13での印刷を制御する印刷制御部61aと、DCモータ2をON・OFF制御するテープモータ制御部61bと、DCモータ72を制御するカッターモータ制御部61cと、エンコーダ49のフォトセンサ49bの出力信号からDCモータ2の回転パルスの数をカウントするパルスカウンタ61dとが含まれている。また、ドライバ回路68は、タイマ67で生成されたクロック信号を参照して、後述のように補正された印字周期で印刷制御部61aからの制御信号に基づいてサーマルヘッド13に駆動信号を供給する。また、ドライバ回路69は、カッターモータ制御部61cからの制御信号に基づいてDCモータ72に駆動信号を供給する。また、ドライバ回路70は、テープモータ制御部61bからの制御信号に基づいてDCモータ2を駆動する。
【0025】
また、図5に示すように、DCモータ2を駆動制御するドライバ回路70には、CPU61からのON・OFF信号によってDCモータ2への電力供給をオンオフするスイッチングトランジスタ72と、DCモータ2を定速回転制御する電子ガバナ回路73とが設けられている。この電子ガバナ回路73は、抵抗Rの電流に基づいて、DCモータ2の逆起電力が一定になるように比例電流制御を行う。そして、電力供給の開始からある程度の時間がたつと、電源電圧の大きさにかかわらず、DCモータ2は負荷に対応した一定の回転数で回転するようになる。そして、DCモータ2の所定回転量(本実施例では、4回転である。)が、エンコーダ49を介して所定パルス数(本実施例では、36パルスである。)をカウントすることによって検出される。
尚、この電子ガバナ回路73は、例えばLA5528N(メーカ:三洋電機株式会社)等の制御ICである。
【0026】
また、サーマルヘッド13は、DCモータ2の定速走行時に、後述のようにテープ収納カセット30に収納されたテープ種類等に対応して初期印字周期(T0)を補正した印字周期で駆動され、その後、DCモータ2の所定回転量毎に、該所定回転量に達する駆動時間に基づいて順次補正された補正印字周期で駆動される。そのため、ROM64には、サーマルヘッド13の印字駆動開始時の基準印字周期である初期印字周期(T0)のデータが格納されている。このように、DCモータ2の定速走行時にサーマルヘッド13が補正された印字周期で駆動されるようにすることにより、DCモータ2が大きな回転数で定速走行する場合であってもサーマルヘッド13の駆動休止期間に行われる印刷データのデータ処理時間(例えば、アウトラインフォントデータからビットマップデータへの展開、文字装飾、縦横変換)を十分に確保することができるようになり、印刷ミスが生じるなど印刷品質が劣化してしまうことがなくなる。
他方、サーマルヘッド13は、DCモータ2の定速走行時以外(つまり、DCモータ2への電力供給が中断されてからDCモータ2が停止するまで、及び、DCモータ2への電力供給が再開されてからDCモータ2が定速走行を開始するまで)には、原則として、エンコーダ49のフォトセンサ49bの出力信号に基づいて停止される。このように定速走行時以外にはサーマルヘッド13を停止することにより、印刷ドットの位置ずれを高い精度で防止し、歪みの無い印字を実現できる。
【0027】
次に、EEPROM63に予め格納されるテープ種類補正テーブル81について図6に基づいて説明する。
図6に示すように、テープ種類補正テーブル81は、テープ収納カセット30に収納されたテープの種類を表す「テープ種類」と、この「テープ種類」に対応してサーマルヘッド13を印字駆動する初期印字周期(T0)に積算して補正する補正値を表す「テープ種類補正値」とから構成されている。
【0028】
また、「テープ種類」には、各テープのタイプとテープ幅3.5mm〜24mmとの12種類の組み合わせが予め格納されている。例えば、「テープ種類」が「3.5mm、レセプタ」は、テープ幅が3.5mmでテープのタイプが「レセプタータイプ」の場合を表している。また、「テープ種類」が「6mm、ラミネート」は、テープ幅が6mmでテープのタイプが「ラミネートタイプ」の場合を表している。
また、「テープ種類補正値」には、「テープ種類」の「3.5mm、レセプタ」、「6mm、レセプタ」、「9mm、レセプタ」等の5種類に対して、それぞれ「1」の数値が予め格納されている。また、「テープ種類補正値」には、「テープ種類」の「6mm、ラミネート」、「9mm、ラミネート」、「12mm、ラミネート」等の7種類に対して、それぞれ「0.985」の数値が予め格納されている。即ち、「テープ種類」の「6mm、ラミネート」、「9mm、ラミネート」、「12mm、ラミネート」等の7種類の初期印字周期は、後述のようにサーマルヘッド13の初期印字周期が少し短い時間になるように補正される(図10参照)。
【0029】
次に、EEPROM63に予め格納されるテープ長補正テーブル82について図7に基づいて説明する。
図7に示すように、テープ長補正テーブル82は、プラテンローラ21の摩耗等によってDCモータ2の回転量に対するテープ搬送長さが変動した場合に、ユーザが選択して変更することができるテープ搬送長さの補正量を表す「搬送長さ補正値」と、この「搬送長さ補正値」に対応してサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)に積算して補正する補正値を表す「テープ長補正値」とから構成されている。
また、「搬送長さ補正値」には、テープ搬送長さを約3%増加することを表す「+3」と、テープ搬送長さを約2%増加することを表す「+2」と、テープ搬送長さを約1%増加することを表す「+1」と、テープ搬送長さを変更しないことを表す「0」と、テープ搬送長さを約1%減少させることを表す「−1」とが予め格納されている。
また、「テープ長補正値」には、「搬送長さ補正値」の「+3」に対して「1.03」、「搬送長さ補正値」の「+2」に対して「1.02」、「搬送長さ補正値」の「+1」に対して「1.01」、「搬送長さ補正値」の「0」に対して「1」、「搬送長さ補正値」の「−1」に対して「0.99」が予め格納されている。従って、後述のようにユーザが選択した「搬送長さ補正値」に対応してサーマルヘッド13の印字周期が補正される(図10参照)。
【0030】
ここで、ユーザが「搬送長さ補正値」を選択する操作について図8に基づいて説明する。
図8に示すように、ユーザがキーボード3の長さ補正キー3Fを押下した場合には、液晶ディスプレイ(LCD)6に、先ず、「搬送長さ補正値」の「0」を選択する旨を表す「長さ補正:0」が表示される。そして、ユーザがリターンキー3Rを押下すると、「搬送長さ補正値」として「0」がEEPROM63に格納されると共に、液晶ディスプレイ6は、文字入力モードに戻る。
一方、ユーザが長さ補正キー3Fを繰り返し押下した場合には、液晶ディスプレイ6に、「搬送長さ補正値」の「+1」を選択する旨を表す「長さ補正:+1」、「搬送長さ補正値」の「+2」を選択する旨を表す「長さ補正:+2」、「搬送長さ補正値」の「+3」を選択する旨を表す「長さ補正:+3」、「搬送長さ補正値」の「−1」を選択する旨を表す「長さ補正:−1」が長さ補正キー3Fを押下する毎に順次表示され、更に長さ補正キー3Fを押下すると、「搬送長さ補正値」の「0」を選択する旨を表す「長さ補正:0」の表示に戻る。そして、いずれかの表示の際に、ユーザがリターンキー3Rを押下すると、液晶ディスプレイ6の表示に対応する「搬送長さ補正値」として「+1」、「+2」、「+3」、「−1」、「0」のうちのいずれかがEEPROM63に格納されると共に、液晶ディスプレイ6は、文字入力モードに戻る。尚、工場出荷時には、「搬送長さ補正値」として「0」がEEPROM63に格納されている。
【0031】
次に、このように構成されたテープ印刷装置1のテープに文字データ等を印刷する印刷制御処理について図9乃至図12に基づいて説明する。
図9に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1において、テープ印刷装置1のCPU61は、キーボード3の印刷キー3Bが押下された場合には、ROM64からサーマルヘッド13を印字駆動する初期印字周期(T0)(本実施例では、T0=14.1msecで、フォトセンサ49bの約5パルスに相当する。)を読み出し、印字周期代数Tにこの初期印字周期(T0)を代入してRAM66に記憶する。
そして、S2において、CPU61は、カセットセンサ7を介してテープ収納カセット30に収納されているテープのタイプとテープ幅とを特定し、EEPROM63に格納されているテープ種類補正テーブル81の「テープ種類」として、該当する「テープ種類」に対応する「テープ種類補正値」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「テープ種類補正値」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0032】
例えば、CPU61は、カセットセンサ7から「1011111」のカセット信号が入力されている場合には、テープ収納カセット30に収納されているテープのテープ幅が9mmでラミネートタイプであると特定し、テープ種類補正テーブル81の「テープ種類」の「9mm、ラミネート」に対応する「テープ種類補正値」の「0.985」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「0.985」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
また、CPU61は、カセットセンサ7から「1100111」のカセット信号が入力されている場合には、テープ収納カセット30に収納されているテープのテープ幅が9mmでレセプタータイプであると特定し、テープ種類補正テーブル81の「テープ種類」の「9mm、レセプター」に対応する「テープ種類補正値」の「1」を読み出す。そして、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「1」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0033】
続いて、S3において、CPU61は、後述の「印字周期補正処理」のサブ処理(図10参照)を実行する。
そして、S4において、CPU61は、CPU61は、スイッチングトランジスタ72をオンにしてDCモータ2への電力供給を開始する。これにより、電子ガバナ回路73は、DCモータ2の逆起電力が、一定値となるようにDCモータ2を比例電流制御する。
また、S5において、CPU61は、フォトセンサ49bからのパルス周期を検出して加速領域が終了して定速回転数になるのを待つ。尚、DCモータ2を起動してから一定時間待つようにしてもよい。
【0034】
そして、S6において、DCモータ2の回転速度が一定になるタイミングで、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を開始する。これにより、表層テープ31上には、印字周期(T)の間に搬送されるテープ搬送距離に相当するドット間隔によりドットパターン印刷がされる。尚、後述のように、この印字周期代数Tは、フォトセンサ49bから入力されるパルス数が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)に達する毎に補正されるため、CPU61は、印字周期代数Tが補正される毎に、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を行う。
また、S7において、CPU61は、回転補正周期タイマとしてのタイマ67を初期化後、即ち、タイマ67の計測時間TMを読み出し、該計測時間TMに「0」を代入して再度タイマ67に格納後、タイマ67による時間の計測を開始して、DCモータ2の回転量が所定回転量(本実施例では、4回転で、フォトセンサ49bの36パルスである。)に達するまでの時間の計測を開始する。
【0035】
そして、S8において、CPU61は、後述の「パルスカウント処理」のサブ処理(図11参照)を実行する。
続いて、S9において、CPU61は、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数に達した時におけるタイマ67の計測時間TMを読み出し、RAM66に記憶する。そして、CPU61は、再度、RAM66から計測時間TMを読み出すと共に、ROM64から初期印字周期(T0)に相当する基準回転量である基準エンコーダパルス数(本実施例では、初期印字周期(T0)は14.1msecで、基準エンコーダパルス数は5パルスである。)と、制御パルス数(本実施例では、フォトセンサ49bの36パルスで、DCモータ2の4回転に相当する。)とを読み出し、この計測時間TMに基準エンコーダパルス数の制御パルス数に対する割合を積算して「補正印字周期」を算出する。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tにこの「補正印字周期」の値を代入して、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0036】
その後、S10において、CPU61は、上記S3の「印字周期補正処理」のサブ処理(図10参照)を実行する。
続いて、S11において、CPU61は、サーマルヘッド13への通電を停止するか否か、即ち、RAM66に記憶された印刷データが全て印刷されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、RAM66に記憶された印刷データが全て印刷されていない場合には(S11:NO)、CPU61は、再度、S7以降の処理を実行する。
一方、RAM66に記憶された印刷データが全て印刷された場合には(S11:YES)、S12において、CPU61は、サーマルヘッド13の駆動を停止する。
続いて、S13において、CPU61は、スイッチングトランジスタ72をオフにしてDCモータ2への電力供給をOFFにして、当該処理を終了する。
【0037】
次に、上記S3及びS10において実行する「印字周期補正処理」のサブ処理について図10に基づいて説明する。
図10に示すように、S21において、CPU61は、EEPROM63に記憶されている「搬送長さ補正値」を読み出し、EEPROM63に格納されているテープ長補正テーブル82の「搬送長さ補正値」として、この「搬送長さ補正値」に対応する「テープ長補正値」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「テープ長補正値」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0038】
例えば、CPU61は、EEPROM63から読み出した「搬送長さ補正値」が「0」の場合には、EEPROM63に格納されているテープ長補正テーブル82の「搬送長さ補正値」の「0」に対応する「テープ長補正値」の「1」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「1」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
また、CPU61は、EEPROM63から読み出した「搬送長さ補正値」が「+1」の場合には、EEPROM63に格納されているテープ長補正テーブル82の「搬送長さ補正値」の「+1」に対応する「テープ長補正値」の「1.01」を読み出す。そして、CPU61は、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに「1.01」を積算した値を、再度、印字周期代数TとしてRAM66に記憶する。
【0039】
続いて、S22において、CPU61は、ROM64から印字周期の「最短時間」、即ち、サーマルヘッド13による印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間である「最短時間」のデータ「10m秒」を読み出すと共に、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tが10m秒未満か否かを判定する判定処理を実行する。
そして、印字周期代数Tが10m秒未満の場合には(S22:YES)、CPU61は、S23の処理に移行する。S23において、CPU61は、再度RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに10m秒を代入して、RAM66に記憶後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
一方、印字周期代数Tが10m秒以上の場合には(S22:NO)、CPU61は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
【0040】
次に、上記S8において実行する「パルスカウント処理」のサブ処理について図11に基づいて説明する。
図11に示すように、S31において、CPU61は、パルスカウンタ61dを初期化する。
そして、S32において、CPU61は、フォトセンサ49bを介して入力されるパルスを検出し、パルスを検出するとパルスカウンタ61dのカウント値を読み出して、該カウント値に「1」加算して、再度、パルスカウンタ61dに記憶する。
続いて、S33において、CPU61は、パルスカウンタ61dのカウント値を読み出すと共に、ROM64から制御パルス数を読み出して、該カウント値が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)以上になったか否かを判定する判定処理を実行する。そして、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数未満の場合には(S33:NO)、CPU61は、再度、S32以降の処理を実行する。
一方、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数以上の場合、即ち、パルスカウンタ61dのカウント値が制御パルス数に達した場合には(S33:YES)、CPU61は、当該サブ処理を終了してメインフローチャートに戻る。
【0041】
次に、上記印刷制御処理(S1〜S13)を実行して印字周期をDCモータ2の4回転毎に順次補正制御した場合と、印字周期をDCモータ2の4回転毎に順次補正しない無制御の場合とにおけるテープ搬送誤差が生じない理想印字長との差の一例を図12に示す。
尚、サーマルヘッド13の初期印字周期(T0)は、14.1msecである。また、エンコーダ49の回転円板49aに形成されたスリット数は9スリットで、フォトセンサ49bは、9パルス/回転のパルス信号を出力する。従って、サーマルヘッド13の印字周期は、フォトセンサ49bの36パルス(制御パルス数)毎に補正される。また、DCモータ2の定速時の基準回転速度は、14.1×9÷5=25.38msecで1回転する回転速度である。また、DCモータ2の定速回転時に、テープはフォトセンサ49bの36パルス毎に約1mm搬送される。また、DCモータ2は、定速回転時に、フォトセンサ49bの1パルス毎に0.004%の回転速度誤差が生じる。
【0042】
図12に示すように、上記印刷制御処理(S1〜S13)を実行して印字周期をDCモータ2の4回転毎に順次補正制御した場合には、理想印字長との差は、補正時誤差曲線85のように変化し、テープを約80mm搬送すると約0.0026mmの誤差が生じている。
一方、上記印刷制御処理(S1〜S13)において、上記S7〜S10の処理を実行しない場合、即ち、印字周期をDCモータ2の4回転毎に補正制御しない場合には、理想印字長との差は、無制御時誤差曲線86のように変化し、テープを約80mm搬送すると約0.11mmの誤差が生じている。
【0043】
ここで、ドライバ回路70、DCモータ2、各ギア42〜48、24、25、プラテンローラ21、送りローラ22は、テープ搬送機構を構成する。また、CPU61、EEPROM63、ROM64、RAM66は、印字制御手段を構成する。また、CPU61、ROM64、RAM66、タイマ67は、検出手段を構成する。また、ROM64は、第1記憶手段、第4記憶手段として機能する。また、CPU61、ROM64、RAM66は、補正印字周期算出手段を構成する。また、カセットセンサ7は、種類検出手段として機能する。また、EEPROM63は、第2記憶手段、第3記憶手段として機能する。また、長さ補正キー3F、リターンキー3D、液晶ディスプレイ6は、特定手段を構成する。
【0044】
したがって、本実施例に係るテープ印刷装置1では、連続運転時のDCモータ2の発熱による巻線抵抗値の上昇やテープ種別による負荷変動等によって、DCモータ2のテープ印字中における定速走行時の回転速度が変動しても、このDCモータ2の回転量を検出するフォトセンサ49bのパルス数が制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)に達する毎に、印字周期代数Tが補正される(S9)。
これにより、この印字周期代数Tをサーマルヘッド13を印字駆動する印字周期(T)とし、サーマルヘッド13を介して印字周期(T)毎に表層テープ31へのライン印刷を行うため、DCモータ2の回転数が変動しても、サーマルヘッド13の印字周期(T)を順次補正して印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
また、エンコーダ49によってDCモータ2の回転量を測定する場合には、DCモータ2の回転量が所定回転量(例えば、4回転乃至5回転である。)に達する駆動時間(例えば、100msec程度の駆動時間である。)に相当する制御パルス数(本実施例では、DCモータ2の4回転に相当する36パルスである。)を繰り返し検出すればよいため、エンコーダ49の解像度を低くすることが可能となり、制御回路の負担の軽減化及び製造コストの削減化を図ることができる。また、この制御パルス数の繰り返し検出は、時間をずらして同時並行的に行ってもよく、この場合は、さらに滑らかな印字周期(T)の補正が可能となる。
【0045】
また、DCモータ2の駆動の開始前に、カセットセンサ7によって検出したテープの種類に対応するテープ種類補正値がサーマルヘッド7の初期印字周期(T0)に積算されて補正され、印字周期代数TとしてRAM66に記憶される(S2)。このため、テープの種類が異なるテープ収納カセット30に交換してDCモータ2の回転数が変動しても、サーマルヘッド13の印字周期(T)を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
また、DCモータ2の駆動の開始前に、長さ補正キー3F及びリターンキー3Dによって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値が初期印字周期(T0)が代入された印字周期代数Tに積算されて補正され(S3)、また、このテープ長補正値が補正印字周期が代入された印字周期代数Tに積算されて補正される(S10)。これにより、ユーザが搬送長さ補正値を特定することによって、印字周期代数Tが、サーマルヘッド13の印字開始時、及びが制御パルス数毎に自動的に補正されるため、プラテンローラ21の摩耗などによりDCモータ2の回転量に対応するテープの搬送長さが変動しても、サーマルヘッド13の印字周期を補正して更に印字品質の高い高精度の定長印刷をすることが可能となる。
更に、印字周期代数Tが、印字周期の「最短時間」、即ち、サーマルヘッド13による印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間である「最短時間」のデータ「10m秒」未満になった場合には(S22:YES)、RAM66から印字周期代数Tを読み出し、この印字周期代数Tに10m秒を代入して、RAM66に記憶される(S23)。このため、サーマルヘッド13によって印字ドットを構成するために必要な最低の印字制御時間(本実施例では、10m秒である。)を確保することができるため、DCモータ2の極端な回転変動等による印字周期の補正によって、印字ドットが乱れることを防止でき、更に印字品質の高い印刷を行うことが可能となる。
【0046】
尚、本発明は前記実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施例に係るテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示すテープ印刷装置の内部に配置されたテープ駆動印刷機構及びテープ収納カセットの構造を説明するための平面図である。
【図3】図2のテープ駆動印刷機構をテープ収納カセットがない状態において矢印A方向から見た側面図である。
【図4】図1に示すテープ印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示すテープ印刷装置のテープ駆動用DCモータのドライバ回路を模式的に示す図である。
【図6】図1に示すテープ印刷装置のEEPROMに予め格納されるテープ種類補正テーブルの一例を示す図である。
【図7】図1に示すテープ印刷装置のEEPROMに予め格納されるテープ長補正テーブルの一例を示す図である。
【図8】図1に示すテープ印刷装置の長さ補正キーを押下した場合に、液晶ディスプレイの表示の一例を示す図である。
【図9】図1に示すテープ印刷装置の印刷制御処理を示すメインフローチャートである。
【図10】図9に示す印字周期補正処理のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図11】図9に示すパルスカウント処理のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図12】図9に示す印刷制御処理を実行して印字周期をDCモータの所定回転量毎に順次補正制御した場合と、印字周期をDCモータの所定回転量毎に順次補正しない無制御の場合とにおけるテープ搬送誤差が生じない理想印字長との差の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 テープ印刷装置
2 DCモータ
3 キーボード
3F 長さ補正キー
6 液晶ディスプレイ
13 サーマルヘッド
30 テープ収納カセット
31 表層テープ
49 エンコーダ
49a 回転円板
49b フォトセンサ
61 CPU
61d パルスカウンタ
63 EEPROM
64 ROM
66 RAM
67 タイマ
49 ドライバ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のテープを搬送するテープ搬送機構と、前記テープ搬送機構を介して搬送されたテープにドットパターンにより文字等の印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを駆動制御する印字制御手段と、を備えたテープ印刷装置において、
前記テープ搬送機構は、駆動源であるDCモータと、
前記DCモータの回転量が所定回転量に達する駆動時間を繰り返し検出する検出手段と、
初期印字周期を予め記憶する第1記憶手段と、
前記検出手段によって検出される駆動時間に基づいて補正印字周期を算出する補正印字周期算出手段と、
を備え、
前記印字制御手段は、前記初期印字周期と、前記補正印字周期算出手段によって算出された補正印字周期に従ってサーマルヘッドを駆動制御することを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】
前記テープの種類を検出する種類検出手段と、
前記テープの各種類に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ種類補正値を予め記憶する第2記憶手段と、
を備え、
前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記種類検出手段によって検出したテープ種類に対応するテープ種類補正値に基づいて前記初期印字周期を補正することを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】
前記DCモータの回転量に対応するテープの搬送長さを補正する複数種類の搬送長さ補正値と前記各搬送長さ補正値に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ長補正値とを記憶する第3記憶手段と、
前記複数種類の搬送長さ補正値から一の搬送長さ補正値を特定する特定手段と、
を備え、
前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記特定手段によって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値に基づいて前記初期印字周期を補正し、前記補正印字周期算出手段は、該テープ長補正値に基づいて前記補正印字周期を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置。
【請求項4】
印字周期の最短時間を記憶する第4記憶手段を備え、
前記補正印字周期算出手段は、前記補正印字周期が前記最短時間未満の場合には、該補正印字周期を該最短時間に更に補正することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置。
【請求項1】
長尺状のテープを搬送するテープ搬送機構と、前記テープ搬送機構を介して搬送されたテープにドットパターンにより文字等の印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを駆動制御する印字制御手段と、を備えたテープ印刷装置において、
前記テープ搬送機構は、駆動源であるDCモータと、
前記DCモータの回転量が所定回転量に達する駆動時間を繰り返し検出する検出手段と、
初期印字周期を予め記憶する第1記憶手段と、
前記検出手段によって検出される駆動時間に基づいて補正印字周期を算出する補正印字周期算出手段と、
を備え、
前記印字制御手段は、前記初期印字周期と、前記補正印字周期算出手段によって算出された補正印字周期に従ってサーマルヘッドを駆動制御することを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】
前記テープの種類を検出する種類検出手段と、
前記テープの各種類に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ種類補正値を予め記憶する第2記憶手段と、
を備え、
前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記種類検出手段によって検出したテープ種類に対応するテープ種類補正値に基づいて前記初期印字周期を補正することを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】
前記DCモータの回転量に対応するテープの搬送長さを補正する複数種類の搬送長さ補正値と前記各搬送長さ補正値に対応して前記サーマルヘッドの印字周期を補正するテープ長補正値とを記憶する第3記憶手段と、
前記複数種類の搬送長さ補正値から一の搬送長さ補正値を特定する特定手段と、
を備え、
前記印字制御手段は、前記DCモータの駆動の開始前に、前記特定手段によって特定された搬送長さ補正値に対応するテープ長補正値に基づいて前記初期印字周期を補正し、前記補正印字周期算出手段は、該テープ長補正値に基づいて前記補正印字周期を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置。
【請求項4】
印字周期の最短時間を記憶する第4記憶手段を備え、
前記補正印字周期算出手段は、前記補正印字周期が前記最短時間未満の場合には、該補正印字周期を該最短時間に更に補正することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−111863(P2007−111863A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302392(P2005−302392)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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