説明

テープ型使い捨ておむつ

【課題】開口部を肛門の位置に合わせやすく、良好な装着感を有し、着用者から取り外す際に排泄物等が体に付着し難く、また、着用者から取り外した使用済みおむつを廃棄のために移動する際に、排泄物等がおむつの外側に漏れ難く、介護者及び着用者の負担を軽減することが可能なテープ型使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】吸収体22と、トップシート18と、バックシート20と、スキンコンタクトシート24と、尿便分離壁48と、を備え、前身頃2の端部にカバーシート50が配設されており、前身頃の端縁から後身頃の端縁までの長さLに対する、カバーシート50の一端部の端縁から他端部の端縁までの長さLの割合が50〜100%であり、カバーシートの他端部50bの上面側にフック材72が配設されており、カバーシートの他端部50bの下面側に粘着部材74が配設されているテープ型使い捨ておむつ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着感が良く、使用後の廃棄処分が容易なテープ型使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、尿や便などの排泄物を吸収する乳幼児用或いは高齢者・障害者用のおむつとして、吸収体と、吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えた使い捨ておむつ(例えば、テープ型おむつ、パンツ型おむつ、尿便パッド等)が汎用されている。
【0003】
これらの使い捨ておむつのうち、テープ型おむつとしては、例えば図7に示すような構成を有するものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。図7に示すテープ型使い捨ておむつ100は、前身頃2、股下部4及び後身頃6の各部から構成されている。そして、吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の上面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の下面を被覆するように配置されたバックシート20と、後身頃6の左右の各側縁から延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ10と、を備えている。このようなテープ型使い捨ておむつ100は、止着テープ10によっておむつの前身頃2と後身頃6とを相互に固定することで、着用者に容易に装着させることができるという利点を有している。
【0004】
これらの使い捨ておむつを用いた場合、着用者の排泄物はトップシートの液透過性の部分を透過して吸収体に吸収されるとともに、通常、液不透過性の材料で構成されるバックシートによって外部への漏洩が防止され、排泄物をおむつ内部に保持することができる。
【0005】
一方、特許文献3には、着用者の排泄した尿と便を分離して吸収・保持させるべく、便通過用開口部を有するスキンコンタクトシートをトップシートの上に配置したタイプのパンツ型使い捨ておむつが開示されており、また、このようなスキンコンタクトシートをテープ型使い捨ておむつにも適用可能であることが開示されている。
【0006】
このようなテープ型使い捨ておむつをはじめとする使い捨ておむつは、乳幼児用のみならず、高齢者・障害者用、即ち、成人用のおむつとしても利用されている。なお、使用後(着用者が排泄した後)のおむつは、着用者から取り外して廃棄される。
【0007】
【特許文献1】特開2004−141532号公報
【特許文献2】特開2004−24307号公報
【特許文献3】特許第3919023号公報(第15頁、段落0095)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
着用者から取り外した使い捨ておむつは、その内部(トップシート上)に排泄物が存在している。このため、着用者から取り外した使用済みおむつを廃棄のために移動する際に、排泄物がおむつの外側に漏れてしまう場合があった。排泄物がおむつの外側に漏れてしまうと、着用者や介護者の衣服、或いは寝具等に排泄物が付着してしまうため、その後の洗濯や清掃の手間がかかり、介護者及び着用者の両方ともに大きな負担になるという問題があった。
【0009】
便通過用開口部を有するスキンコンタクトシートをトップシートの上に配置したテープ型使い捨ておむつを使用する場合でも、着用者の体型や肛門の位置等が微妙に相違するため、排泄された便が便通過用開口部を正確に通過せずにスキンコンタクトシート上に留まってしまうことがある。便がスキンコンタクトシート上に留まってしまったような場合には、着用者から取り外した使用済みおむつを廃棄のために移動する際に、排泄物がおむつの外側に漏れる可能性がある。
【0010】
また、排泄物が多量であったり、着用者の陰部を洗浄するために洗浄剤や湯等を用いたりした場合には、排泄物や洗浄後の湯等がおむつの外側に漏れる可能性が高まるため、改善する必要性があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、開口部を肛門の位置に合わせやすく、良好な装着感を有し、着用者から取り外す際に排泄物等が体に付着し難く、また、着用者から取り外した使用済みおむつを廃棄のために移動する際に、排泄物等がおむつの外側に漏れ難く、介護者及び着用者の負担を軽減することが可能なテープ型使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定のカバーシートを、その一端部で前身頃の端部に配設することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、以下に示すテープ型使い捨ておむつが提供される。
【0014】
[1]前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成されているとともに、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の上面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の下面を被覆するように配置されたバックシートと、便通過用開口部が形成され、前記トップシートの上部に配置されたスキンコンタクトシートと、前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間の空間に配置され、前記空間を前記前身頃の側と前記後身頃の側とに仕切る尿便分離壁と、を備え、前記前身頃の端部に、カバーシートがその一端部で配設されており、前記前身頃の端縁から前記後身頃の端縁までの長さに対する、前記カバーシートの、前記一端部の端縁から前記一端部と対向する他端部の端縁までの長さの割合が、50〜100%であり、前記カバーシートの前記他端部の上面側に、前記後身頃を構成する前記トップシート又は前記コンタクトシートと係合可能な第一の係合部を有するとともに、前記カバーシートの前記他端部の下面側に、前記バックシートと係合可能な第二の係合部を有するテープ型使い捨ておむつ。
【0015】
[2]前記カバーシートは、撥水性の織布又は不織布からなるものである前記[1]に記載のテープ型使い捨ておむつ。
【0016】
[3]前記後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前記前身頃と前記後身頃を固定可能な止着テープを更に備えた前記[1]又は[2]に記載のテープ型使い捨ておむつ。
【0017】
[4]前記カバーシートを、前記前身頃と前記後身頃を固定した前記止着テープの上に配置させるとともに、前記第二の係合部と前記バックシートを係合させ、固定した状態で着用されるものである前記[3]に記載のテープ型使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0018】
本発明のテープ型使い捨ておむつは、開口部を肛門の位置に合わせやすく、良好な装着感を有し、着用者から取り外す際に排泄物等が体に付着し難く、また、着用者から取り外した使用済みおむつを廃棄のために移動する際に、排泄物等がおむつの外側に漏れ難く、介護者及び着用者の負担を軽減することが可能であるといった効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
本発明のテープ型使い捨ておむつは、前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成されているとともに、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の上面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、吸収体の下面を被覆するように配置されたバックシートと、を備えたものである。また、便通過用開口部が形成され、トップシートの上部に配置されたスキンコンタクトシートと、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間に配置され、この空間を前身頃の側と後身頃の側とに仕切る尿便分離壁と、を更に備えている。
【0021】
そして、このテープ型使い捨ておむつは、前身頃の端部に、カバーシートがその一端部で配設されており、前身頃の端縁から後身頃の端縁までの長さ(L)に対する、カバーシートの、一端部の端縁から一端部と対向する他端部の端縁までの長さ(L)の割合が、50〜100%のものである。このため、おむつを着用者から取り外した後は、トップシート上、及び場合によってはスキンコンタクトシート上の排泄物等が存在する箇所を、このカバーシートで覆うことができる。
【0022】
更に、カバーシートの他端部の上面側には、後身頃を構成するトップシート又はコンタクトシートと係合可能な第一の係合部を有している。このため、トップシート上等の排泄物等が存在する箇所をカバーシートで覆った状態で、この第一の係合部を後身頃のトップシート又はコンタクトシートに係合させてカバーシートを固定することができる。従って、着用者から取り外す際に排泄物等が体に付着し難く、また、取り外した使用済みおむつを廃棄のために移動する際に、排泄物等がおむつの外側に漏れ難くなる。更に、トップシート上等の排泄物等が存在する箇所をカバーシートで覆うとともに、カバーシートを固定した状態で、使い捨ておむつを折り畳んで(或いは丸めて)廃棄することが可能である。このため、排泄物等がおむつの外側に漏れる可能性が極めて低い状態のまま使い捨ておむつを廃棄することができるため、介護者及び着用者の負担を軽減することが可能である。また、カバーシートの他端部の下面側には、バックシートと係合可能な第二の係合部を有している。このため、装着時に、前身頃と後身頃を固定した止着テープの上にカバーシートを配置させるとともに、第二の係合部とバックシートを係合させ、固定した状態で使用することができる。従って、衣服を全て脱がずとも着脱が可能であり、着用したままで、おむつの上げ下げを容易に行うことができ、開口部を肛門の位置に合わせやすいという効果がある。以下、本発明のテープ型使い捨ておむつの詳細について、例を挙げて説明する。
【0023】
[1]テープ型使い捨ておむつ:
図1は、本発明のテープ型使い捨ておむつの一実施形態を示す概略正面図である。なお、図1においては、テープ型使い捨ておむつ1を展開し、トップシート18側から見た状態を示している。本実施形態のテープ型使い捨ておむつ1は、前身頃2、股下部4及び後身頃6の各部から構成されており、吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の上面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の下面を被覆するように配置されたバックシート20と、後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ10とを備えたものである。また、吸収体22の両側縁には、トップシート18とバックシート20によってサイドフラップ8が形成されている。
【0024】
なお、「前身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分をいい、「股下部」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の股下を覆う部分をいう。更に、「後身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分をいう。
【0025】
また、本実施形態のテープ型使い捨ておむつ1は、トップシート18の上部に配置され、便を通過させ得る開口部28である便通過用開口部28aが形成されたスキンコンタクトシート24と、スキンコンタクトシート24とトップシート18との間の空間46に配置され、この空間46を前身頃2側と後身頃6側とに仕切る尿便分離壁48と、を更に備えたものである。
【0026】
[1−1]カバーシート:
図1に示すように、カバーシート50は、その一端部(カバーシートの一端部50a)で、前身頃2の端部に配設されている。図1においては、カバーシートの一端部50aが、前身頃2の端部を構成するトップシート18の上面に配設された状態を示しているが、カバーシートの一端部50aは、バックシート20の下面に配設されていてもよく、或いはこれらの間に配設されていてもよい。
【0027】
前身頃2の端縁から後身頃6の端縁までの長さLに対する、カバーシートの一端部50aの端縁から一端部と対向する他端部(カバーシートの他端部50b)の端縁までの長さLの割合は、50〜100%であり、好ましくは70〜100%、更に好ましくは80〜100%である。この割合を上記の数値範囲内とすると、トップシート18上、或いはスキンコンタクトシート24上の排泄物等が存在する箇所をカバーシート50で十分に覆うことが可能となり、排泄物等のおむつの外側への漏洩を効果的に防止することができる。
【0028】
カバーシートの他端部50bの上面側には、フック材72が配設されている。このフック材72は、後身頃6の端部の上面(トップシート18或いはスキンコンタクトシート24)と係合可能な第一の係合部として機能する部分である。図6は、カバーシートの使用方法の一例を示す説明図である。図6に示すように、着用者から取り外したテープ型使い捨ておむつ1を廃棄する、或いは廃棄する場所へと移す際には、先ず、トップシート18上、及びスキンコンタクトシート24上の排泄物等が存在する箇所をカバーシート50で覆うように、カバーシートの他端部50bを後身頃6の側へと引き寄せる。次いで、後身頃6を構成するトップシート18(或いはスキンコンタクトシート24)と、フック材72とを係合させて、カバーシート50を固定させればよい。これにより、使い捨ておむつを折り畳んで(或いは丸めて)廃棄したり、廃棄する場所へと内容物を漏洩させることなく移したりすることができる。
【0029】
カバーシートの他端部5bの上面側に配設される第一の係合部は、後身頃6の端部の上面(トップシート18或いはスキンコンタクトシート24)と係合可能なものであればよい。このため、図1に示すようなフック材72以外にも、例えば、接着(粘着)剤を用いて形成された接着(粘着)部等であってもよい。
【0030】
カバーシート50の長さLは、テープ型使い捨ておむつ1の本体(カバーシート50以外の部分)のサイズにもよるが、子供用の場合、通常250〜500mmであり、好ましくは300〜500mmである。一方、大人用の場合、カバーシート50の長さLは、通常500〜1000mmであり、好ましくは700〜1000mmである。また、カバーシート50の幅Wについても、カバーシート50以外の部分のサイズにもよるが、子供用の場合、通常100〜150mmであり、好ましくは120〜150mmである。一方、大人用の場合、カバーシート50の幅Wは、通常200〜250mmであり、好ましくは220〜250mmである。
【0031】
カバーシート50を構成する材料は、少なくとも、トップシート18上の排泄物、洗浄剤、湯等の外部への漏洩を防止可能な材料であればよい。カバーシート50を構成する材料の具体例としては、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム、或いはポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる撥水性の織布・不織布等を挙げることができる。なお、これらの材料の複数を組み合わせてもよい。
【0032】
カバーシートは、トップシートやバックシートとは別体のシートによって構成されるものに限定されることはない。例えば、カバーシートは、トップシート(又はバックシート)の端部から一体的に延出されたものであってもよい。このように、トップシートやバックシートと一体的なシート材によってカバーシートを構成する場合には、テープ型使い捨ておむつの製造時にカバーシートを構成する材料となるシート材を配置する手間を省略することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0033】
カバーシートの他端部50bの下面側には、粘着部材74が配設されている。この粘着部材74は、バックシートと係合可能な第二の係合部として機能する部分である。図3及び図4は、本発明のテープ型使い捨ておむつの使用状態の一例を示す図面であり、図3は、前身頃の側から見た概略斜視図、図4は、後身頃の側から見た概略斜視図である。図3及び図4に示すように、本実施形態のテープ型使い捨ておむつ1を着用する場合には、先ず、後身頃6の左右の各側縁から延出するように配置された止着テープ10を使用し、これらを止着領域12上に止着することで前身頃2と後身頃6を固定する。次いで、止着領域12上の止着テープ10を覆うようにカバーシート50を配置するとともに、カバーシートの他端部50bを、股下部4を経て後身頃6側にまわす。そして、粘着部材74によって、カバーシートの他端部50bを後身頃6の下面(オムツの外表面)を構成するバックシート6に係合させればよい。なお、カバーシート50の長さによっては、カバーシートの他端部50bを、股下部4の下面(オムツの外表面)を構成するバックシート6に係合させる場合もある。更に、図5に示すように、カバーシート50を折り返して二つ折りにし、フック材72によって、カバーシート50に係合させることも可能である。この使用状態は、カバーシート50を後身頃の側に回す手間が省けることからより好ましい使用状態であるといえる。
【0034】
カバーシートの他端部5bの下面側に配設される第二の係合部は、バックシートと係合可能なものであればよい。このため、図1に示すような粘着部材74以外にも、例えば、フック材等であってもよい。なお、第二の係合部をフック材で構成する場合には、このフック材と係合させる箇所に、ループ材等を配設した係合領域を形成することも好ましい。
【0035】
[1−2]スキンコンタクトシート:
スキンコンタクトシートは、着用者の肌とトップシートとを離隔するための部材であり、トップシートの上部に配置され、便を通過させ得る開口部である便通過用開口部が形成されたシート状の部材である。このスキンコンタクトシートを備えることによって、着用者の肌には、まずスキンコンタクトシートが接触するため、スキンコンタクトシートの下部に配置されるトップシートは着用者の肌と直接接触し難くなる。即ち、着用者の肌とトップシートとが離隔されることになる。
【0036】
スキンコンタクトシートを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂からなる不織布、メッシュシート、フィルム等を用いることができる。なかでも、肌触りが良好である点において、不織布を用いることが好ましい。これらの材料は、液透過性であっても、液不透過性であっても、撥水性であってもよい。但し、長時間着用した際にもさらっとした触感(ドライ性)を維持することができるという点において、撥水性の材料(撥水性の不織布等)であることが好ましい。
【0037】
スキンコンタクトシートには、着用者の排泄した便を通過させ得る便通過用開口部が形成されている必要がある。このような構造とすることによって、着用者の排泄した便がスキンコンタクトシートを通過してトップシート上に落下することになり、便と着用者の肌とが直接接触する機会を大幅に減少させることが可能となる。
【0038】
開口部は便を通過させ得る形状である限り、その形状について特に制限はない。即ち、便を通過させ得る「開口部」には、円形開口部、楕円形開口部、菱形開口部等のいわゆる開口部(孔)の他、直線状スリット、十字状スリット、3本以上のスリットを交差させた星型スリット等のスリットも含まれる。なかでも、おむつの前後方向(長手方向)を長軸方向とする楕円形開口部、或いは星型スリットが好ましい。
【0039】
例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24のおむつの股下部4に相当する部分に、便通過用開口部28aとして、おむつの前後方向に長く、その6つの角がラウンド形状である略六角形状の開口部を形成した例である。なお、孔やスリットのサイズについては、「便を通過させる」という機能を考慮した上で適宜決定すればよい。
【0040】
なお、スキンコンタクトシートには、便通過用開口部より前身頃側に、尿通過用の開口部が形成されていてもよい。即ち、スキンコンタクトシートには、開口部として便通過用開口部及び尿通過用開口部が形成されていることが好ましい。
【0041】
尿通過用開口部を形成することによって、その開口部を通過させて着用者の排泄した尿をスキンコンタクトシートとトップシートの間の空間に確実に流入させることが可能となり、スキンコンタクトシートを伝って尿が拡散し、おむつの脚周り開口部等からの横漏れを生ずる事態を有効に防止することができる。例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24に、おむつの前後方向に長く、その6つの角がラウンド形状であり、おむつ前方側の角が鈍角に形成された略六角形状の尿通過用開口部28bを更に形成した例である。この例では、便通過用開口部28aはおむつの股下部4に相当する部分に形成され、尿通過用開口部28bは便通過用開口部28aよりも前身頃2側の部分に形成されている。
【0042】
開口部にはその外縁に開口部伸縮材を配置することが好ましい。開口部伸縮材を配置すると、スキンコンタクトシートに張力がかかるので、スキンコンタクトシートにコシを持たせることができる。従って、スキンコンタクトシートがへたってトップシート側に落ち込む事態を防止することができ、スキンコンタクトシートを着用者の肌に接触し易くさせるという利点がある。また、開口部伸縮材を配置すると、スキンコンタクトシートを収縮させ、トップシート、吸収体、バックシートは下側(外装部材側)に向かって撓ませる力を作用させることができる。従って、スキンコンタクトシートをトップシートから浮かせた状態を維持することができ、スキンコンタクトシートとトップシートとを確実に離隔させることが可能となる。更に、スキンコンタクトシートが収縮することによって、スキンコンタクトシートやトップシートと尿便分離壁となる通気撥水性シートとの間に空隙があった場合でもその空隙を埋めることができる。従って、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間を確実に仕切ることが可能となる。
【0043】
開口部伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0044】
開口部伸縮材の配置パターンは、前記効果を発揮し得るパターンである限り特に制限はないが、開口部に確実に伸縮力を作用させるため、開口部伸縮材が開口部の周縁を取り囲むようなパターンに配置されていることが好ましい。例えば、開口部の周縁を取り囲むように、円形、楕円形、菱形等のパターンで開口部伸縮材を配置すればよい。
【0045】
また、開口部伸縮材として2本の開口部伸縮材を用い、その2本の開口部伸縮材が開口部の前後の少なくとも1点で交差し、開口部の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置されていることも好ましい形態の一つである。このようなパターンで開口部伸縮材を配置すると、開口部伸縮材をおむつの前後方向に向かって連続的に配置することが可能となるため、使い捨ておむつの連続的な製造が容易になるという利点があり好ましい。
【0046】
例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、開口部伸縮材30として2本の開口部伸縮材30a,30bを用い、その2本の開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28aと尿通過用開口部28bの間の点Pで交差し、便通過用開口部28aと尿通過用開口部28bの周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置した例である。このようなパターンで開口部伸縮材30a,30bを配置すると、吸収性本体14が長手方向に向かって連続して配置されたような吸収性本体連続体を容易に製造することが可能となる。
【0047】
開口部伸縮材は、スキンコンタクトシートに対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0048】
開口部伸縮材は、開口部に十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、開口部伸縮材が天然ゴムや合成ゴムである場合には、100〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、開口部に十分な伸縮力を作用させ、かつ、開口部が必要以上に縮小されるのを防止することができる。
【0049】
[1−3]尿便分離壁:
尿便分離壁は、着用者の排泄した尿と便とを隔離するための部材であり、通気撥水性シートによって構成され、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間に配置される。この尿便分離壁を備えることによって、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間が尿便分離壁を境にして前身頃側と後身頃側とに仕切られ、前身頃側の空間に尿が、後身頃側の空間に便が誘導される。また、この尿便分離壁は、通気撥水性シートで構成されているので、シートを透過して前身頃側に誘導された尿が後身頃側に染み出すこともない。従って、尿と便とが混ざり合うことを有効に防止することができ、尿と便が混ざり合ってしまうことに起因するおむつかぶれの発生が効果的に抑制される。
【0050】
尿便分離壁は、通気撥水性シートによって構成されていることが好ましい。通気撥水性シートは液体の透過性が低いため、尿や軟便が尿便分離壁から染み出して尿と便とが混ざり合ってしまう事態を有効に防止することが可能となる。
【0051】
通気撥水性シートの構成材料としては、スパンボンドやカードエンボス等の不織布を用いてもよいが、耐水圧が高いという理由から、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)、SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)等の不織布を用いることが好ましい。
【0052】
この通気撥水性シートは、その一端をスキンコンタクトシートに接合するとともに、その他端をトップシートの表面まで垂下させることによって、尿便分離壁を形成することができる。このように通気撥水性シートの一端をスキンコンタクトシートに接合することによって、尿便分離壁上部の空間を通過して尿や便が移動することを防止することができる。また、通気撥水性シートの他端については、トップシートに接合されていることが好ましい。通気撥水性シートの他端をトップシートに接合することによって、尿便分離壁が位置ずれすることなく強固に固定されるため、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間が前身頃側と後身頃側とに確実に仕切られる。
【0053】
例えば、図2に示す使いテープ型捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24を構成するライナーシート24bの表面(下面)に、尿便分離壁48を構成する通気撥水性シート52の一端を接合し、その他端をトップシート18の表面まで垂下させた上で、トップシート18の表面(上面)に接合した例である。
【0054】
通気撥水性シートの一端(スキンコンタクトシート側の接合部)と他端(トップシート側の接合部)との距離を長くとることによって、尿便分離壁の起立高を高くとることができ、スキンコンタクトシートとトップシートとを確実に離間させることが可能となる。この場合、通気撥水性シートは、その一端と他端との間で1回ないし複数回折り畳まれていることが好ましい。このような構成とすると、尿便分離壁に上下方向に伸縮可能な折り畳み部を形成することができる。
【0055】
通気撥水性シートを折り畳む方法としては、通気撥水性シートを側面側から見た断面がZ字状(折り畳み2回)、M字状(折り畳み3回)、蛇腹状(折り畳み多数回)となるように折り畳む方法等を挙げることができる。例えば、図2に示すテープ型使い捨ておむつ1は、通気撥水性シート52が断面Z字状となるように折り畳まれた上で(この折り方を「Z折り」ともいう)、通気撥水性シート52の一端がスキンコンタクトシート24に、他端がトップシート18に接合された例である。この例では、通気撥水性シート52の一端54、他端56以外の部分(例えば、折り畳み部)については、スキンコンタクトシート24やトップシート18に対して非接合の状態となっている。
【0056】
スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間は、前身頃側と後身頃側とに仕切られていればよく、空間が完全に区分されていることを要しない。例えば、尿便分離壁の左右両側に空隙があり、空間が前身頃側と後身頃側との間で連通している場合であっても、着用者の排泄した尿と便とを混ざり難くする効果があり、本発明の範囲に含まれる。即ち、おむつの着用時には吸収体が断面U字状となるように変形するため、実用上、便や尿がこの空隙を通過することはなく、また、通常、排泄された尿は速やかに吸収体に吸収されるため、未吸収の尿が前記空隙を通過して後身頃側の空間に流入する可能性は殆どないからである。
【0057】
なお、通気撥水性シートの折り畳み部によって、便通過用開口部や尿通過用開口部の直下のトップシート表面が被覆されていてもよい。通気撥水性シートの折り畳み部はトップシートに接合されておらず自由に動き得るため、既に説明したような、尿の吸収体への吸収が阻害され、尿漏れの原因となるといった問題は生じ難いからである。
【0058】
一方、通気撥水性シートによってトップシートの表面の一部が被覆されていることも好ましい。このような構成とすると、前身頃側の空間からトップシートを透過した尿が吸収体に吸収されることなく後身頃側に移動し、トップシートの表面から染み出したような場合にも尿と便が直接接触する事態を防止することができるという利点がある。
【0059】
尿便分離壁は、股下部に配置することが好ましく、着用者の会陰部に当接し得る部分に配置することが更に好ましい。このような部分に尿便分離壁を配置することにより、着用者が排泄した尿と便を確実に分離することが可能となる。
【0060】
スキンコンタクトシートに便通過用開口部と尿通過用開口部という2つの開口部を形成した場合には、尿便分離壁を便通過用開口部と尿通過用開口部との間に配置することが好ましい。このような位置に尿便分離壁を配置することにより、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間を便通過用開口部に連通する空間と尿通過用開口部に連通する空間とに仕切ることができ、着用者が排泄した尿と便を、より確実に分離することが可能となる。
【0061】
なお、尿便分離壁を構成する通気撥水性シートの長さは特に限定されるものではなく、尿便分離壁の高さ(スキンコンタクトシートとトップシートとの間隔)、折り畳み部の大きさ、接合位置等を考慮して所望の長さのものを用いればよい。
【0062】
[1−4]吸収体:
吸収体は、着用者の尿や体液を吸収し、保持するための部材である。吸収体は、着用者の尿や体液を吸収し保持する必要から、吸収性材料によって構成される。
【0063】
吸収体を構成する吸収性材料としては、使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に通常使用される従来公知の吸収性材料、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す)、親水性シート等を挙げることができる。フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることが好ましい。
【0064】
これらの吸収性材料は、通常、単層、又は複層のマット状として用いられる。この際、上述した吸収性材料のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部程度のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプの各マット中に均一に混合されていてもよいし、複層のフラッフパルプの層間に層状に配置されていてもよい。
【0065】
通常、吸収体は、トップシートとバックシートの間に挟み込まれ、その周縁部が封着されることによって、トップシートとバックシートとの間に介装される。従って、吸収体の周縁部にはトップシートとバックシートの間に吸収体が介装されていないサイドフラップが形成されることになる。吸収体は少なくとも股下部に介装され、この吸収体が前身頃や後身頃にまで及んでいてもよい。勿論、本発明の吸収性物品は、上記したサイドフラップが形成されていないものであってもよい。
【0066】
吸収体は、その全体が親水性シートによって包み込まれていることが好ましい。このような構成は、吸収体からSAPが漏洩することを防止し、吸収体に形状安定性を付与することができるという利点がある。
【0067】
吸収体の形状については特に制限はないが、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品において使用される形状、例えば、矩形状、砂時計型、ひょうたん型、T字型等を挙げることができる。
【0068】
図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、吸収体22として、前身頃2や後身頃6に相当する部分が幅広な砂時計型の吸収体を用いた例である。
【0069】
なお、吸収体には、その上面側に(例えば、吸収体とトップシートとの間に)、尿や体液等の液体を拡散させるためのシート(セカンドシート)を付帯的に配置してもよい。このセカンドシートを付設すると、排尿量が多い場合や複数回の排尿により吸収体に多くの尿が吸収された状態で排尿があった場合などでも、尿や体液等の吸収速度が低下し難く、吸収速度の低下による尿や体液等の漏れを防止することが可能となる。
【0070】
セカンドシートを構成する材料としては、親水性で液透過性の材料、例えば、織布、不織布、多孔性プラスチック、フラッフパルプ等を挙げることができる。これらの構成素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、レーヨン、パルプ、或いはこれらの複合繊維等を挙げることができる。パルプとしては、カーリーセルロースファイバー等のけん縮繊維を好適に用いることができる。
【0071】
[1−5]トップシート:
トップシートは、吸収体の上面(おむつの装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。トップシートは、その下面側に配置された吸収体に、着用者の尿等を吸収させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。通常、少なくとも吸収体の上面近傍については、着用者の尿や体液を透過させ得る液透過性の材料によって構成される。少なくとも一部が液透過性材料により構成されている限り、必ずしもトップシート全体が液透過性材料で構成されている必要はない。
【0072】
トップシートを構成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。不織布の種類についても特に制限はなく、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス、スパンボンド等の各種製法によって製造された従来公知の不織布を好適に用いることができる。
【0073】
トップシートは単一のシート材によって構成されていてもよいが、複数のシート材によって構成されていてもよい。例えば、吸収体の上面部分に配置されるトップシートと、サイドフラップの部分に配置されるトップシートとを異なるシートによって構成する形態もよく利用される。図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、おむつの中央部には液透過性材料からなるセンターシート18aを配置し、おむつのサイドフラップ部分には液の透過に対して抵抗性を示す通気撥水性材料からなるサイドシート18bを配置した例である。通気撥水性シートとしては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布であってもよいが、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シートが更に好ましい。なお、本発明のテープ型使い捨ておむつにおいては、このような通気撥水性シートを延出して、上述したカバーシートの一部を形成してもよい。
【0074】
[1−6]バックシート:
バックシートは、吸収体の下面(おむつの装着時において着用者の着衣側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。その配置方法については特に制限はないが、例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1のように、おむつの外形と一致するように、バックシート20を配置する構成を採用することができる。但し、必ずしもこのような構成を採用する必要はなく、吸収体で吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の存在する部分に液不透過性材料からなるバックシートを配置してもよい。
【0075】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。なかでも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0076】
なお、バックシートには、その外表面側(下面側)にシート材を貼り合わせてもよい。このシート材は、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0077】
シート材を構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。なお、本発明のテープ型使い捨ておむつにおいては、このバックシートを構成する液不透過性からなるシートやシート材を延出して、上述したカバーシートを形成してもよい。
【0078】
[1−7]止着テープ:
本実施形態のテープ型使い捨ておむつは、後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前身頃と後身頃とを固定するための止着テープを備えている。
【0079】
止着テープのファスニング部材としては、粘着剤により固定を行う粘着ファスナーであってもよいが、機械的な結合により固定を行うメカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。メカニカルファスナーは、止着力が高いことに加え、複数回の脱着を行っても止着力が低下することがないという利点がある。
【0080】
例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、ファスニング部材として、メカニカルファスナー44を用いた例である。このような止着テープの先端近傍には、フック材が付設される。一方、前身頃には、この止着テープを止め付けることが可能なように、例えば、ループ材からなるフロントパッチが付設されていることが好ましい。
【0081】
止着テープの数については特に制限はないが、例えば、成人用のテープ型おむつの場合、後身頃の左右の各側縁に、止着テープが2個ずつ配置されていることが好ましい。例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、後身頃6の左右の各側縁6a,6bに、止着テープ10が2個ずつ配置されたものである。このように、止着テープが2個ずつ配置されたテープ型使い捨ておむつは、1個ずつ配置されたものと比較して、着用者の体型、具体的には、ウエスト周り、脚周りの寸法に合わせてテープ位置、締め付け具合を調節できるという点で優れている。
【0082】
[1−8]立体ギャザー:
本発明のテープ型使い捨ておむつは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するため、立体ギャザーを有してもよい。立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。このような立体ギャザーを形成することにより、センターシートの上を尿が拡散してしまった場合でも、立体ギャザーが防波堤となり、おむつの脚周り開口部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0083】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に使用される構成を採用することができる。例えば、通気撥水性シートの一部に伸縮材(立体ギャザー伸縮材)を配置し、その立体ギャザー伸縮材によってシート材にギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。
【0084】
図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、トップシート18やバックシート20とは全く別個のシート材を、センターシート18aの両側縁部に貼り合わせ、起立線から立体的に起立可能な構造とすることにより、1対の立体ギャザー26a,26bを形成した例である。この例では、シート材の端部(立体ギャザー26a,26bの上端縁に相当する側の端部)を折り返し、その折り返し部分に立体ギャザー伸縮材36a,36bを挟み込むように配置している。
【0085】
この立体ギャザーは、股下部からの漏れを防止するため、少なくとも股下部に形成されていればよいが、前身頃や後身頃に形成されていてもよい。例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、おむつの長手方向に沿って、股下部4から前身頃2と後身頃6の双方にかけて連続的に、一対の立体ギャザー26(26a,26b)が形成された例を示すものである。また、立体ギャザーは、少なくとも一対形成する必要があるが、二対以上形成してもよい。
【0086】
立体ギャザーはおむつの内側に向かって傾倒する内倒しギャザーであってもよいし、おむつの外側に向かって傾倒する外倒しギャザーであってもよい。また、高さ方向の一部に、曲げ部や折り返し部を形成した立体ギャザー(C折りギャザーやZ折りギャザー等)とすることもできる。例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、立体ギャザー26(26a,26b)を内倒しギャザーとした例である。
【0087】
[1−9]各種伸縮材:
テープ型使い捨ておむつには、脚周り伸縮材を配置し、ウエスト周り伸縮材を配置することが好ましい。
【0088】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。また、脚周り伸縮材を配置すると、おむつを交換する際に吸収体の両側で脚周り伸縮材が収縮するため、股下部近傍が椀状に変形し、凹部が形成される。このため、尿や体液がその凹部に溜まり、尿や体液をこぼすことなく、容易におむつの交換を行うことができる。
【0089】
例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、おむつの長手方向に沿って、直線的に二本の脚周り伸縮材40を配置してレグギャザーを形成した例である。この脚周り伸縮材40は、糸ゴムによって構成されている。但し、脚周り伸縮材は、必ずしも直線的に配置する必要はなく、例えば、おむつの脚周り開口部のカーブに沿って曲線的に配置してもよい。
【0090】
脚周り伸縮材は、例えば、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1のように、立体ギャザー26の起立線より外側の部分に、脚周り伸縮材40が形成されていることが好ましい。このような構成とすると、立体ギャザーの十分な防漏効果を確保しつつ、股下部の装用感・装着感を向上させることができる。
【0091】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0092】
なお、図1に示すテープ型使い捨ておむつ1は、後身頃6の端縁に沿って帯状のウエスト周り伸縮材42を配置した例である。この帯状のウエスト周り伸縮材42は、ウレタンフォーム等の伸縮性フォームによって構成されている。図示の例では、後身頃(背側)のみにウエスト周り伸縮材42を配置しているが、前身頃(腹側)にウエスト周り伸縮材を配置してもよい。
【0093】
これらの伸縮材については、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0094】
伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0095】
伸縮材は、十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、伸縮材が天然ゴムや合成ゴムである場合には、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させることが可能となる。
【0096】
前記のような伸縮材は、おむつの他の構成部材に対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0097】
[2]テープ型使い捨ておむつの製造方法:
次に、本発明のテープ型使い捨ておむつの製造方法について、図1及び図2に示すテープ型使い捨ておむつ1を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0098】
[2−2]:スキンコンタクトシートの製造:
ライナーシート24bの上面に、2本の開口部伸縮材30a,30bを所定のパターンに配置しつつ、アッパーシート24aを貼り合わせる。この際、2本の開口部伸縮材30a,30bは、後に形成される便通過用開口部28a及び尿通過用開口部28bの間の点Pで交差し、便通過用開口部28aと尿通過用開口部28bの周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置する。
【0099】
次いで、貼り合わされたライナーシート24bとアッパーシート24aに、便通過用開口部28a及び尿通過用開口部28bを形成する。こうすることによって、2本の開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28aと尿通過用開口部28bの間の点Pで交差し、便通過用開口部28aと尿通過用開口部28bの周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置された2層構造のスキンコンタクトシート24を得ることができる。
【0100】
更に、Z折りされた通気撥水性シート52(後に尿便分離壁48となる)の一端54を、ライナーシート24bの表面(下面)であり、便通過用開口部28aと尿通過用開口部28bの間の位置に貼り付けて接合し、固定する。こうすることにより、後に尿便分離壁48となる通気撥水性シート52が付設されたスキンコンタクトシート24を得ることができる。この際、通気撥水性シートはZ折りのものに限らず、複数回折り畳んだ構造のものを用いてもよい。この固定は、ホットメルト接着剤等の接着剤による接着や、ヒートシール、超音波シール、エンボスロール等による加熱接着、加圧接着等、使い捨ておむつを製造する際に用いられる従来公知の接合法により行うことができる。図2に示すテープ型使い捨ておむつ1は、通気撥水性シート52の一端54をホットメルト接着剤によってライナーシート24bの表面(下面)に貼り付け、接合・固定した例である。
【0101】
[2−2]テープ型使い捨ておむつの製造:
バックシート20の材料となる長尺のシート材(バックシート材)の表面に、親水性シートに包まれた吸収体22及び脚周り伸縮材40を載置し、更にその表面に、トップシート18の材料となる長尺のシート材(トップシート材)を載置する。この際、トップシート材は、センターシート18aに相当するトップシート材と、サイドシート18bに相当するトップシート材の2種類が使用される。サイドシート18bに相当するシート材には折り返し部分を設けることによって、立体ギャザー26が形成されている。
【0102】
トップシート材のセンターシート18aに相当する部分の表面上に、スキンコンタクトシート24(ライナーシート24b)の前端側、後端側、左右側縁側を各々接合し、固定する。この際、通気撥水性シート52の他端56をトップシート18の表面に貼り付けて接合・固定する(接合部66)。これらの固定は、通気撥水性シートをスキンコンタクトシートに接合するのと同様の接合法により行うことができる。この際、通気撥水性シートを、その両端の接合部の間で1回ないし複数回折り畳んだ構造とすると、尿便分離壁の起立高を高くすることができるので好ましい。図2に示すテープ型使い捨ておむつ1は、通気撥水性シート52をZ折りし、2回折り畳んだ構造とした例である。なお、接合部66の前端部は、おむつの着用時に尿便分離壁48の起立線を形成することになる。以上のようにして、バックシート材、吸収体、トップシート材、尿便分離壁、及びスキンコンタクトシートが配置された、おむつの中間体となる積層体(おむつ連続体)を得ることができる。
【0103】
このようにして得られたおむつ連続体は、おむつの脚周り開口部に相当する部分を円弧状に切り抜いて切除し(Rカット)、脚周り開口部を形成する。次いで、後身頃6の側縁6a,6bに止着テープ10を付設するとともに、前身頃2の端部に、フック材72及び粘着部材74が配設されたカバーシート50を付設する。最後に、おむつ連続体を個々のおむつに切断すれば、テープ型使い捨ておむつ1を得ることができる。
【0104】
なお、カバーシート50を別途配置して付設するのではなく、例えば、必要とするトップシートの全長よりも長い縦長のトップシート材を用い、このトップシート材の端部から一定の長さの部分を、カバーシートを形成するためのシート材として用いることもできる。また、必要とするバックシートの全長よりも長い縦長のバックシート材を用い、このバックシート材の端部から一定の長さの部分を、カバーシートを形成するためのシート材として用いてもよい。
【0105】
上述したような一連の製造工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより使い捨ておむつの連続製造が可能となり、生産性の向上に資する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のテープ型使い捨ておむつは、乳幼児用、或いは介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の使い捨ておむつとして好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のテープ型使い捨ておむつの一実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図1に示すテープ型使い捨ておむつのY−Y概略断面図である。
【図3】本発明のテープ型使い捨ておむつの使用状態の一例を示す、前身頃の側から見た概略斜視図である。
【図4】本発明のテープ型使い捨ておむつの使用状態の一例を示す、後身頃の側から見た概略斜視図である。
【図5】本発明のテープ型使い捨ておむつの使用状態の他の例を示す、前身頃の側から見た概略斜視図である。
【図6】カバーシートの使用方法の一例を示す説明図である。
【図7】従来のテープ型使い捨ておむつの一実施形態を示す、その一部を切り欠いた概略正面図である。
【符号の説明】
【0108】
1,100:テープ型使い捨ておむつ、2:前身頃、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁、8:サイドフラップ、10:止着テープ、12:止着領域、14:吸収性本体、18:トップシート、18a:センターシート、18b:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、24:スキンコンタクトシート、24a:アッパーシート、24b:ライナーシート、26,26a,26b:立体ギャザー、28:開口部、28a:便通過用開口部、28b:尿通過用開口部、30,30a,30b:開口部伸縮材、36,36a,36b:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、44:メカニカルファスナー、46:空間、48:尿便分離壁、50:カバーシート、50a:カバーシートの一端部、50b:カバーシートの他端部、52:通気撥水性シート、54:一端、56:他端、58:折り畳み部、62,66:接合部、72:フック材、74:接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成されているとともに、
吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の上面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の下面を被覆するように配置されたバックシートと、便通過用開口部が形成され、前記トップシートの上部に配置されたスキンコンタクトシートと、前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間の空間に配置され、前記空間を前記前身頃の側と前記後身頃の側とに仕切る尿便分離壁と、を備え、
前記前身頃の端部に、カバーシートがその一端部で配設されており、
前記前身頃の端縁から前記後身頃の端縁までの長さに対する、前記カバーシートの、前記一端部の端縁から前記一端部と対向する他端部の端縁までの長さの割合が、50〜100%であり、
前記カバーシートの前記他端部の上面側に、前記後身頃を構成する前記トップシート又は前記コンタクトシートと係合可能な第一の係合部を有するとともに、
前記カバーシートの前記他端部の下面側に、前記バックシートと係合可能な第二の係合部を有するテープ型使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記カバーシートは、撥水性の織布又は不織布からなるものである請求項1に記載のテープ型使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前記前身頃と前記後身頃を固定可能な止着テープを更に備えた請求項1又は2に記載のテープ型使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記カバーシートを、前記前身頃と前記後身頃を固定した前記止着テープの上に配置させるとともに、前記第二の係合部と前記バックシートを係合させ、固定した状態で着用されるものである請求項3に記載のテープ型使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−291236(P2009−291236A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144605(P2008−144605)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】