説明

テープ巻き付け装置、及びテープ巻き付け方法

【課題】管の外周に弛まないように効率的かつ均一にテープを巻き付ける。
【解決手段】マンドレル16の挿入された管18を回転面盤の挿通口20に挿入し、管18の外周面に3個のテープボビン26から引き出したテープ24を係止し、管18を軸方向に移動させつつ回転面盤14を回転させることで、管18の外周面にテープ24を螺旋状に順次巻き付ける。3本のテープ24を周方向に等間隔に配置し、同じテンションとすることで、3本のテープ24のテンションTが偏ることなくバランスして作用するため、該テンションTによってマンドレル16が撓むことは無く、高速かつ高率的にテープ24の巻き付けを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の外周にテープを螺旋状に巻き付けるテープ巻き付け装置、及びテープ巻き付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧を要するゴムホース、所謂高圧ホースを生産する方法として、金属製マンドレル上に未加硫の内管ゴムを押し出し、その上に補強テープを巻きつける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−296607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テープを巻き付ける方法は、例えば、図3に示すように、テープボビン26を取り付けた回転面盤14を矢印A方向に回転させて、矢印L方向に移動するマンドレル16を挿入した管18の外周にテープ24をスパイラル状に巻き付けて行くが、1本のテープ24を管18に巻き付ける方式では、管18に巻き付けるときのテープ24のテンションTを上げようとしたとき、このテープ24のテンションTにより、金属製のマンドレル16が撓む。
【0005】
マンドレル16の撓む方向は、テープ24のテンションTが掛かる方向であり、このテンションTによりマンドレル16は径方向に引っ張られ撓むので、外部から見るとマンドレル16がつれ回りしている様に見える。マンドレル16の撓みは、マンドレル16が細いほど大きくなる。したがって、呼び径10mm程度、即ち、外径10mm程度の細いマンドレル16で生産する管18は、低テンションでしかテープ24を巻き付けられない。
【0006】
低いテンションTでテープ24を巻き付けると、巻き付けたテープ24に弛みが生じる問題がある。特に、部分的に弛みが生じたりした場合、ホースの耐圧性能に問題が発生し、ホースの品質面で好ましくない。
また、このマンドレル16のつれ回りが発生すると、順調にマンドレル16を軸方向に送れなくなるという事象も起こるので、生産速度も上げられない問題がある。
したがって、従来技術では、マンドレル16が多少つれ回りしても問題ないくらいのゆっくりした速度でしかホースを生産することが出来なかった。
【0007】
また、回転面盤14にテープボビン26が1個しかない場合には、テープボビン26、及びテープ24の存在によって回転バランスが取れなくなる。回転のアンバランスを錘等によって修正しても、テープボビン26に巻かれたテープ24が次第に消費されて行くと、自ずから回転バランスは狂ってくる。故に、この回転バランスの面からも、従来技術では、回転スピードを上げられなかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、管の外周に弛まないように、効率的かつ均一にテープを巻き付けることを可能としたテープ巻き付け装置、及びテープ巻き付け方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、マンドレルの挿入された管の外周にテープを螺旋状に巻き付けるテープ巻き付け装置であって、回転可能に設けられ、前記管を挿通させる挿通口を軸心に有する回転面盤と、前記回転面盤に設けられ、前記管に供給する前記テープを巻き付けたテープボビンを回転可能に支持する複数のテープ供給手段と、を備え、前記複数のテープ供給手段は、前記回転面盤の軸心回りに等間隔に配置され、各々の前記テープボビンから巻き出された複数の前記テープが前記管に巻き付けられる。
【0010】
次に、請求項1に記載のテープ巻き付け装置の作用を説明する。
マンドレルの挿入された管を回転面盤の挿通口に挿入し、管の外周面に各テープボビンから引き出したテープを係止し、管を軸方向に移動させつつ回転面盤を回転させることで、管の外周面にテープが螺旋状に巻き付けられる。
【0011】
複数のテープ供給手段は、各々のテープボビンから巻き出されたテープを管に連結しているため、管の外周面には複数本のテープが同時に巻き付けられることとなり、1本のテープを巻き付ける場合に比較して、短時間で効率的にテープの巻き付けを行うことができる。
【0012】
また、テープを巻き付ける際にはテープにテンションが作用するが、複数のテープ供給手段(テープボビン)が回転面盤の軸心回りに等間隔に配置されているため、マンドレルの挿入された管に対して、複数のテープのテンションが径方向に偏ることなくバランスして作用するため、テープのテンションによってマンドレルが撓むことが抑えられ、マンドレルのつれ回りが生じなくなるので、従来よりも速い速度で回転面盤を回転させることが可能となり、テープの巻き付け速度を従来よりも速めることができる。
【0013】
また、一つのテープボビンでは、マンドレルが撓むためテープのテンションを上げることができなかったが、本発明では、管に対して複数のテープのテンションがバランスして作用するため、複数のテープに対して同じ割合でテンションを上げれば、複数のテープのテンションは常にバランスするため、マンドレルの径に関係なく、テープのテンションを上げることができ、細いマンドレルであっても、マンドレルを撓ませることなくテープのテンションを上げることができ、径の細い管であっても外周面に弛まない様にテープを巻き付けることができる。
【0014】
さらに、管へのテープの巻き付けに伴ってテープボビンに巻き付けられていたテープの量が減少し、テープボビンの重量も徐々に軽くなるが、複数のテープ供給手段(テープボビン)が軸心回りに等間隔に配置されており、複数のテープボビンの重量もテープの消費に伴って同じ割合で減少するので、テープの減少による回転面盤の回転バランスが変化することも無く、回転バランスの悪化によって回転面盤の回転速度を上げられなくなる、といった従来の問題も解消される。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテープ巻き付け装置において、複数の前記テープ供給手段は、各々テープのテンションを調整するテンション調整装置を備えている。
【0016】
次に、請求項2に記載のテープ巻き付け装置の作用を説明する。
請求項2に記載のテープ巻き付け装置では、テンション調整装置により、テープのテンションを所望の値に調整することができる。
また、各テープのテンションを調整可能としているので、テンションのバランスを取る事が容易になる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のテープ巻き付け装置において、前記テープ供給手段は、前記回転面盤に3個設けられている。
【0018】
次に、請求項3に記載のテープ巻き付け装置の作用を説明する。
テープ供給手段を回転面盤に3個設け、軸芯回りに等間隔で3本のテープを巻き付けた方が、2本のテープを巻き付ける場合に比較して、安定性が向上する。
【0019】
請求項4に記載の発明は、マンドレルの挿入された管の外周にテープを螺旋状に巻き付けるテープ巻き付け方法であって、軸方向に搬送される管の外周面に対して、複数本の前記テープを前記管の軸心回りに等間隔で回転させながら供給すると共に、複数本の前記テープのテンションを同一に設定して螺旋状に巻き付ける。
【0020】
請求項4に記載のテープ巻き付け方法では、軸方向に搬送される管の外周面に対して、複数本のテープを管の軸心回りに等間隔で回転させながら供給することで、管の外周には、複数本のテープが同時に螺旋状に巻き付けられる。この様に、管の外周面には複数本のテープが同時に巻き付けられるので、1本のテープを巻き付ける場合に比較して、短時間で効率的にテープの巻き付けを行うことができる。
【0021】
また、複数本のテープは、管の軸心回りに等間隔で、かつテンションが同一に設定された状態で管に巻き付けられるので、複数のテープのテンションが径方向に偏ることなくバランスして作用するため、テープのテンションによってマンドレルが撓むことが抑えられ、マンドレルのつれ回りが生じなくなる。したがって、従来よりもテープの巻き付け速度を速めることができる。
【0022】
また、1本のテープでは、マンドレルが撓むためテープのテンションを上げることができなかったが、本発明では、管に対して複数のテープのテンションがバランスして作用するため、複数のテープに対して同じ割合でテンションを上げれば、複数のテープのテンションは常にバランスするため、マンドレルの径に関係なく、テープのテンションを上げることができ、細いマンドレルであっても、マンドレルを撓ませることなくテープのテンションを上げることができ、径の細い管であっても外周面に弛まない様にテープを巻き付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明のテープ巻き付け装置によれば、管の外周に弛まないように効率的かつ均一にテープを巻き付けることができる、という優れた効果を有する。
また、本発明のテープ巻き付け方法によれば、管の外周に弛まないように効率的かつ均一にテープを巻き付けることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係るテープ巻き付け装置の正面図であり、(B)は図1(A)に示すテープ巻き付け装置の側面図である。
【図2】(A)は支持軸の断面図であり、(B)は制御系のブロック図である。
【図3】(A)は従来のテープ巻き付け装置の正面図であり、(B)は図2(A)に示す従来のテープ巻き付け装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係るテープ巻き付け装置10を図1、及び図2にしたがって説明する。
図1に示すように、テープ巻き付け装置10は、設置面に固定されるフレーム12に、回転面盤14の軸部14Aが回転可能に支持されている。
回転面盤14の軸心には、後述するマンドレル16の挿入された管18を挿通させるための挿通孔20が形成されている。
【0026】
回転面盤14の片面には、複数本、本実施形態では3本の支持軸22が、軸心を中心に周方向に等間隔(即ち、120°間隔)に配置されている。なお、支持軸22は、図1(B)に示すように、回転面盤14の軸芯に対して傾斜している。
回転面盤14の軸部14Aは、ベルト、ギヤ等を介してモータ(図示せず)からの回転力が伝達されるようになっている。
これらの支持軸22には、テープ24の巻き付けられたテープボビン26が回転自在に支持されている。
【0027】
図2(A)に示すように、支持軸22には、テンション調整装置としてのヒステリシスブレーキ(電磁ブレーキ)22Aが内蔵されている。ヒステリシスブレーキ22Aの軸22Aaにはボビン取付軸30が固定されており、このボビン取付軸30にテープボビン26が着脱可能に固定されるようになっている。なお、ボビン取付軸30の端部には、テープボビン26の抜け止め用のネジ32が取り付けられている。
ヒステリシスブレーキ22Aによってテープボビン26の回転にブレーキを掛けることが可能となっている。
【0028】
図2(B)に示すように、各ヒステリシスブレーキ22Aは、制御装置28に接続されて励磁電流が制御されるようになっており、制御装置28は、各ヒステリシスブレーキ22Aが常に一定のブレーキ力を出すように各ヒステリシスブレーキ22Aを制御可能としている。
【0029】
(作用)
次に、本実施形態のテープ巻き付け装置10を用いて、未加硫ゴムからなる管18の外周面にテープ24を巻き付ける方法を説明する。
管18は、例えば、テープ24を外周面に巻き付けた後、ワイヤー等の補強コードをテープの上に巻き付け、さらにその上に、外皮となる未加硫ゴムを被覆して加硫を行い、補強入りの高圧ホースとなるものである。
図1に示すように、その管18の内部には、マンドレル16が挿入されている。
【0030】
テープ24は、例えば、ナイロン等の合成樹脂からなるものであり、軟らかく、塑性変形してしまう未加硫ゴムの外周面にコードを巻き付ける際に、コードが未加硫ゴムの中にめり込まないようにするためのものである。
【0031】
先ず最初に、マンドレル16の挿入された管18を回転面盤の挿通孔20に挿入し、管18の外周面に各テープボビン26から引き出したテープ24を係止する。
次に、管18を軸方向(本実施形態では図面矢印L方向)に移動させつつ回転面盤14を回転(矢印A方向)させることで、管18の外周面にテープ24が螺旋状に順次巻き付けられて行く。
【0032】
管18の外周面には、3本のテープ24が同時に巻き付けられるので、1本のテープを巻き付ける従来方法に比較して、短時間で効率的にテープ24の巻き付けを行うことができる。
このとき、制御装置28によって各ヒステリシスブレーキ22Aのブレーキ力が同じになるように各ヒステリシスブレーキ22Aの制御を行う。なお、テープ24のテンションTは、テープ24の種類、管18の径、柔らかさ等を考慮して、事前に決定しておく。
【0033】
複数の支持軸22(テープボビン26)が軸心回りに等間隔に配置され、マンドレル16の挿入された管18に対して、3本のテープ24のテンションTが偏ることなくバランスして作用するため、該テンションTによってマンドレル16が撓むことは無く、従来技術で問題となっていたマンドレル16のつれ回りが生じることは無く、高速で回転面盤14を回転させて高速で高率的にテープ24の巻き付けを行うことができる。
【0034】
また、各テープ24のテンションTを上げても各テープ24のテンションTがバランスするので、マンドレル16の径が細い場合であっても、マンドレル16を撓ませることが無く、管18が細い場合であっても、必要なテンションTをテープ24に作用させて管18の外周面に弛まない様にテープ24を巻き付けることができる。
【0035】
また、テープボビン26に巻き付けられていたテープ24の量が減少しても、回転面盤14の回転バランスが変化しないので、回転バランスの悪化によって回転面盤14の回転速度を上げられなくなる、といった従来の問題も生じない。
【0036】
なお、本実施形態のテープ巻き付け装置10では、テンション調整装置としてのヒステリシスブレーキ22A、及び制御装置28を設けているので、制御装置28によってヒステリシスブレーキ22Aを制御することで、テープ24のテンションTを所望の値に調整することができる。
また、制御装置28により各テープ24のテンションTを調整可能としているので、テンションTのバランスを取る事が容易になる。
【0037】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、回転面盤14に3つのテープボビン26を支持する例を示したが、テープボビン26は少なくとも2個支持されれば良く、テープボビン26を4個以上支持するようにしても良い。
上記実施形態では、テープボビン26の回転にブレーキを掛けるためにヒステリシスブレーキを用いたが、本発明はヒステリシスブレーキに限らず、他の方式のブレーキを用いても良い。
【0038】
本実施形態では、1台のテープ巻き付け装置10を用いて管18に対して右巻きでテープ24を巻き付けているが、テープ巻き付け装置10を直列に複数台配置し、右巻き用のテープ巻き付け装置10、左巻き用のテープ巻き付け装置10を交互に配置しても良い。なお、連続生産する場合には、テープ巻き付け装置10を偶数台並べることになる。
【符号の説明】
【0039】
10 テープ巻き付け装置
14 回転面盤
16 マンドレル
18 管
20 挿通孔
22A ヒステリシスブレーキ(テンション調整装置)
24 テープ
26 テープボビン(テープ供給手段)
28 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルの挿入された管の外周にテープを螺旋状に巻き付けるテープ巻き付け装置であって、
回転可能に設けられ、前記管を挿通させる挿通口を軸心に有する回転面盤と、
前記回転面盤に設けられ、前記管に供給する前記テープを巻き付けたテープボビンを回転可能に支持する複数のテープ供給手段と、
を備え、
前記複数のテープ供給手段は、前記回転面盤の軸心回りに等間隔に配置され、各々の前記テープボビンから巻き出された複数の前記テープが前記管に巻き付けられる、テープ巻き付け装置。
【請求項2】
複数の前記テープ供給手段は、各々テープのテンションを調整するテンション調整装置を備えている、請求項1に記載のテープ巻き付け装置。
【請求項3】
前記テープ供給手段は、前記回転面盤に3個設けられている、請求項1または請求項2に記載のテープ巻き付け装置。
【請求項4】
マンドレルの挿入された管の外周にテープを螺旋状に巻き付けるテープ巻き付け方法であって、
軸方向に搬送される管の外周面に対して、複数本の前記テープを前記管の軸心回りに等間隔で回転させながら供給すると共に、複数本の前記テープのテンションを同一に設定して螺旋状に巻き付ける、テープ巻き付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−264630(P2010−264630A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116698(P2009−116698)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】