説明

テープ用剥離剤

【課題】実用上問題のない剥離性および残留接着性を併せ有すると共に、より安価な剥離剤の提供。
【解決手段】下記式(1)
【化1】


(式中、n、mはそれぞれ1以上の整数で、mは5〜19の整数を、nは、所望とする分子量を有するに十分な整数を、Rは、H、又はフェニルを示す。)、又は、下記一般式(2)
【化2】


(式中、mは5〜19の整数を、xとyは、所望とする分子量を有するに十分な整数を示す。)で表される無水マレイン酸とスチレン、又はエチレンとの共重合体と炭素数6〜20の直鎖1級アルキルアミンの反応付加物からなるテープ用剥離剤により達成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧性粘着テープ、粘着シートなど、さらに詳しくはプラスチックフィルムなどを基材とする感圧性粘着テープや粘着シート用のテープ用剥離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧性粘着テープ又は粘着シートには、非使用状態では、粘着層は、離型剤を含む保護シートで、保護されている。剥離剤は、シリコーン系剥離剤と非シリコーン系剥離剤とに大別される。シリコーン系剥離剤の場合には、剥離性、残留接着性、耐熱性などの特性が極めて優れているが、高価であり、使用場面が限定される。また、高温での熱セットが必要であるため、基材が熱可塑性プラスチックなどの場合には、使用できない。
【0003】
一方、非シリコーン系剥離剤としては、長鎖アルキルペンダント型ポリマーなどが知られている(例えば、特許文献1)。この剥離剤の場合には、背面剥離剤の溶剤溶液を支持体に塗布後、乾燥するだけで剥離性が得られるため、耐熱性が低い支持体(例えば、熱可塑性プラスチックなど)に対しても剥離処理が簡単に行える。しかし、この長鎖アルキルペンダント型ポリマーは、比較的高価であり、より安価な感圧性粘着テープ又は粘着シートを提供するという点では、必ずしも、市場のニーズを満足するには至っていないという問題がある。
【特許文献1】特公昭60−30355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、実用上問題のない剥離性および残留接着性を併せ有すると共に、より安価な剥離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)
【化1】

(式中、n、mはそれぞれ1以上の整数で、mは5〜19の整数を、nは、所望とする分子量を有するに十分な整数を、Rは、H、CH3又はフェニルを、又、R1はH又はCH3を示す。)、又は、下記一般式(2)
【化2】

(式中、mは5〜19の整数を、xとyは、所望とする分子量を有するに十分な整数を示す。)で表される無水マレイン酸とスチレン、又はエチレンとの共重合体と炭素数6〜20の直鎖1級アルキルアミンの反応付加物が、実用上十分使用可能な剥離性と残留接着性を有し、より安価なテープ用剥離剤を提供できることを見いだして、本発明を完成させたものである。
【0006】
すなわち、本発明の剥離剤は、上記一般式(1)
【化3】

(式中、n、mはそれぞれ1以上の整数で、mは5〜19の整数を、nは、所望とする分子量を有するに十分な整数を、Rは、H、CH3又はフェニルを、又、R1はH又はCH3を示す。)又は、下記一般式(2)
【化4】

(式中、mは5〜19の整数を、xとyは、所望とする分子量を有するに十分な整数を示す。)で表される無水マレイン酸とスチレン、又はエチレンとの共重合体と炭素数6〜20の直鎖1級アルキルアミンの反応付加物、をその有効成分として含むテープ用剥離剤である。なお、この無水マレイン酸とスチレン、又はエチレンとの共重合体と炭素数6〜20の直鎖1級アルキルアミンの反応付加物は、その数平均分子量が2,000〜700,000であるものが好適に使用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るテープ用剥離剤は、テープに適用したときに、剥離に際しては、あまり、大きな剥離力を必要とすることなく剥離が出来るが、剥離させたテープは、依然として十分な残存粘着力を有しているので、繰り返し使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用されるテープ用剥離剤は、例えば、分子量が10,000〜100,000程度のエチレン/無水マレイン酸共重合体、或いは、分子量が300,000〜1,000,000程度のスチレン/無水マレイン酸共重合体に所望量の炭素数6〜20の直鎖一級アルキルアミン、例えば、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−ヘキサデカニルアミン、ステアリルアミン等と反応させ、その反応付加物を得ることにより調製すればよい。反応溶媒、反応温度、反応時間などの反応条件は、この種の付加物を製造するに使用される条件を採用すればよい。
【0009】
なお、本発明の剥離剤は、適当な溶剤、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系の溶媒や、ドデシルアルコールなどの高級アルコール系溶剤、石油系溶剤、などに、溶解又は分散させて使用する。上記一般式(1)又は(2)で表される付加物の量が、0.1質量%〜25質量%となるような範囲で溶解又は分散させて使用すればよい。かくして調製した剥離材溶液又は分散液を、紙、プラスチック、金属などのフィルムからなる基材に、乾燥重量で、0.05〜1g/m2となるように塗布し、60℃〜100℃程度で加熱乾燥することにより、所望とする剥離材処理基材が得られる。
【0010】
本発明の剥離剤は、剥離性、残留接着性において、実用上十分な性能を示すため、長期間の使用条件でも、感圧性粘着テープ又は粘着シート用の剥離剤としても十分に使用可能である。
【0011】
本発明に係る剥離剤を、感圧性粘着テープ又は粘着シート用の剥離剤として用いる場合には、ロールコーター、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、リップコーターなどを用いて、溶剤に溶解又は分散させて調製した処理溶液を、感圧性粘着テープ又は粘着シートの背面(粘着剤と接触する面)や保護シートの所定面に塗布すればよい。
【0012】
本発明に係る剥離剤は、剥離剤として使用する場合において、感圧性粘着テープ又は粘着シートの基材としては、特に制限は無く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなどのプラスチックフィルム、セロハンなど、各種紙類、例えば、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙など、又は紙にプラスチックフィルムが積層された積層フィルム、布などを用いることができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
(付加物の製造例1)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却コンデンサーを備えた200ml4つ口付きフラスコに、ポリ(エチレン/無水マレイン酸)20gとトルエン60gを加え、110℃に加熱した。加熱後、ステアリルアミン35gを含むトルエン溶液90mlを30分かけて、滴下した。滴下終了後、温度120℃に上げ、加熱しながら、4時間還流させた。次いで、反応液の温度を60℃まで冷却し、冷却した液を300mlのメタノール中に注いだ。得られた固形物を濾取し、50℃減圧下で乾燥させて、目的物を得た。製造された付加物は、数平均分子量が10,000〜50,000で、融点が60℃〜90℃のものであった。
【0015】
(付加物の製造例2)
ステアリルアミン25gを含むトルエン溶液70mlを用いたこと及び7時間還流させたことを除いては、製造例1と同様にして付加物を製造した。次いで、反応液の温度を60℃まで冷却し、冷却した液を300mlのメタノール中に注いだ。得られた付加物は、数平均分子量が300,000〜500,000であった。
【0016】
(実施例1)
製造例1で得た、数平均分子量が30000のポリ(エチレン/無水マレイン酸)とステアリルアミンとの付加物をトルエン溶液に溶解させ、1質量%の付加物を含むトルエン溶液を調製した。この溶液を、大きさが20cm(長さ)×25mm(幅)の、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、固形物量換算で0.05g/m2となるように、ロールコーターを用いて塗布し、30秒間乾燥処理し、剥離テープを調製した。
【0017】
(剥離強度試験)
実施例1で調製した剥離テープの表面に、25mm幅のゴム系粘着テープ(積水化学製No.600)を自重2kgのゴムローラーを用いて圧着させて、22℃で24時間放置して、試験片を作製した。この試験片を用いて、「剥離強度試験」と「残留粘着力試験」を実施した。試験は、JISZ0237(粘着テープ・粘着シート試験法)に準じて行った。その結果は、以下の表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1より、本発明に係る剥離剤は、実用上十分な剥離強度、残留接着力を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る剥離剤は、実用上十分な剥離性、残留接着性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、n、mはそれぞれ1以上の整数で、mは5〜19の整数を、nは、所望とする分子量を有するに十分な整数を、Rは、H、CH3又はフェニルを、又、R1はH又はCH3を示す。)、又は、下記式(2)
【化2】

(式中、mは5〜19の整数を、xとyは、所望とする分子量を有するに十分な整数を示す。)で表される無水マレイン酸とスチレン、又はエチレンとの共重合体と炭素数6〜20の直鎖1級アルキルアミンの反応付加物からなるテープ用剥離剤。
【請求項2】
無水マレイン酸とスチレン、又はエチレンとの共重合体と炭素数6〜20の直鎖1級アルキルアミンの反応付加物の数平均分子量が、2,000〜700,000である請求項1記載のテープ用剥離剤。

【公開番号】特開2006−328323(P2006−328323A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157972(P2005−157972)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000195616)精工化学株式会社 (28)
【Fターム(参考)】