説明

ディスクストッパー

【課題】ディスクを確実にグリップしてディスクを確実に回転駆動することができ、しかも高温下に長時間ディスクをクランプした後でも、良好にディスクをリリースすることができるディスクストッパーを提供することを目的とする。
【解決手段】高静摩擦性を有する熱可塑性エラストマーからなるグリップ層1と粘着層3とを積層してなり、ターンテーブルTに貼り付けてディスクDのズレを防止するディスクストッパーであって、上記グリップ層1表面に非粘着性樹脂からなるリリース層2を散在させてなり、上記リリース層2が上記グリップ層1の弾性により該グリップ層1内に埋没してディスクD表面がグリップ層1に当接してグリップされると共に、リリース時には上記グリップ層1が弾性復帰することにより上記リリース層2が該グリップ層1表面から突出してディスクDを上記グリップ層1から離間させるように構成されたディスクストッパーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD、DVD、BDなどの光学記録ディスクを回転させるターンテーブルに貼り付けて、該ディスクのずれやスリップを防止するディスクストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
CD、DVD、BDなどの光学記録ディスクを回転させるドライブのターンテーブルには、高静摩擦性のゴムや熱可塑性エラストマーからなるシート状のディスクストッパーが貼り付けて、上記光学記録ディスクのズレやスリップを防止することが行われている。
【0003】
従来、このようなディスクストッパーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーをグリップ層として用いたものが知られている(特許文献1:特開2003−82136号公報、特許文献2:特開2005−63617号公報)。
【0004】
しかしながら、これら熱可塑性エラストマーでグリップ層を形成したディスクストッパーを用いた場合、ディスクをターンテーブルから取り外す際に、ディスクのリリースがスムーズに行われなくなる場合がある。
【0005】
即ち、熱可塑性樹脂は一般に温度依存性が高く、回転機構部やレーザー光照射部などの発熱により高温環境となりやすいディスクドライブ内にあっては、このディスクストッパー上にディスクが圧接された状態で長時間クランプされた場合、ディスクがディスクストッパーに貼り付く現象が発生しやすく、クランプ状態を解除しても簡単にディスクをリリースすることができなくなる場合がある。
【0006】
このため、ディスクを確実にグリップして、ズレやスリップを生じることなくディスクを確実に回転駆動することができ、しかもディスクの取り出し時には良好にディスクをリリースすることができるディスクストッパーの開発が望まれる。なお、上記以外に本発明に関連する公知技術としては、PETフィルムなどの基材シート上に、シリコーンゴム、天然ゴム、その他合成ゴムなどのゴムからなるグリップ層を点状に配置したディスクストッパーも提案されている(特許文献3:特開2005−231213号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−82136号公報
【特許文献2】特開2005−63617号公報
【特許文献3】特開2005−231213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ディスクを確実にグリップして、ズレやスリップを生じることなくディスクを確実に回転駆動することができ、しかも高温下に長時間ディスクをクランプした後でも、ディスクの取り出し時には良好にディスクをリリースすることができるディスクストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、下記請求項1のディスクストッパーを提供する。
請求項1:
高静摩擦性を有する熱可塑性エラストマーからなるグリップ層と粘着層とを積層してなり、該粘着層によりターンテーブルに貼り付け、ターンテーブル上に所定圧力でクランプされたディスクのズレを上記グリップ層の静摩擦性によって防止するディスクストッパーであって、上記グリップ層表面に非粘着性樹脂からなるリリース層を散在させてなり、上記ディスクをターンテーブル上にクランプした際、上記リリース層が上記グリップ層の弾性により該グリップ層内に埋没してディスク表面が直接上記グリップ層に当接してグリップされると共に、クランプ状態を解除した際には、上記グリップ層が弾性復帰することにより上記リリース層が該グリップ層表面から突出してディスクを上記グリップ層から離間させるように構成されたディスクストッパー。
【0010】
即ち、本発明のディスクストッパーは、グリップ層として、ディスクを確実にグリップして、ズレやスリップを生じことなくディスクを確実に回転駆動することができる高静摩擦性の熱可塑性エラストマーを用い、このグリップ層上に、例えばPET、PP、PEなどの非粘着性樹脂からなるリリース層を散在させたものである。
そして、このディスクストッパーでは、ディスクを所定圧力で圧接させてクランプした際に上記グリップ層を形成する熱可塑性エラストマーの弾性によって上記リリース層が該グリップ層内に埋没し、ディクス表面が直接グリップ層と当接してディスクが良好にグリップされる。一方、ディスクのクランプ状態を解除した際には、上記グリップ層を形成する熱可塑性エラストマーの弾性によって該グリップ層が弾性復帰して非粘着性樹脂からなる上記リリース層が該グリップ層表面から突出し、これによりディスクがグリップ層から引き剥がされ、ディスクを確実にディスクストッパーからリリースすることができるものである。
【0011】
また、本発明は好適な実施態様として下記請求項2〜8のディスクストッパーを提供する。
請求項2:
上記グリップ層を形成する熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する組成物である請求項1記載のディスクストッパー。
請求項3:
上記グリップ層を形成する熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選ばれたスチレン系熱可塑性エラストマー又は該スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する組成物である請求項2記載のディスクストッパー。
請求項4:
上記スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンブロックの含有量が10〜70質量%である請求項2又は3記載のディスクストッパー。
請求項5:
上記グリップ層が、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン樹脂及び/又はポリスチレン樹脂とを含有するエラストマー組成物で形成されたものである請求項2〜4のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
請求項6:
上記エラストマー組成物が、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1、ポリスチレンから選ばれた1種又は2種以上の樹脂とを含有するものである請求項5記載のディスクストッパー。
請求項7:
上記グリップ層が、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)と、アイソタクティックポリプロピレンとを含む組成物で成形された請求項6記載のディスクストッパー。
請求項8:
上記リリース層を形成する非粘着性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)から選ばれた硬質樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
請求項9:
上記リリース層が、上記グリップ層表面に形成された線状、格子状、又は点状の突起である請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
請求項10:
上記リリース層が、上記グリップ層表面に点在する、高さ10〜500μm、直径50〜1,000μmの小突起である請求項1〜9のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
請求項11:
上記グリップ層の厚さが10〜500μmである請求項に1〜10のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
請求項12:
上記粘着層がアクリル系両面粘着テープである請求項1〜11のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディスクストッパーによれば、ディスクを確実にグリップして、ズレやスリップを生じことなくディスクを確実に回転駆動することができ、しかも高温下に長時間ディスクをクランプした後でも、ディスクの取り出し時には良好にディスクをリリースすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明ディスクストッパーの一例を示す概略断面図である。
【図2】同ディスクストッパー上にディスクをクランプした状態を示す概略断面図である。
【図3】同ディスクストッパーを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のディスクストッパーは、上記のように、高静摩擦性を有する熱可塑性エラストマーからなるグリップ層上に非粘着性樹脂からなるリリース層を散在させたものであり、例えば、図1,2に示したように、上記グリップ層1とターンテーブルTに貼着するための粘着層3とを積層した複合シートの上記グリップ層1の表面に、小突起状の上記リリース層2を点在させたものである。
【0015】
上記グリップ層1を形成する高静摩擦性を有する熱可塑性エラストマーとしては、良好な静摩擦性を有しクランプしたディスクDを確実にグリップすることができ、かつ良好な弾性を有するものであればよく、例えばスチレン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0016】
より具体的には、上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体などが例示される。なお、これらのスチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンブロックの含有量は、10〜70質量%であることが好ましく、さらには20〜40質量%の範囲が好ましい。
【0017】
また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)としては、ポリプロピレン(PP)中にエチレン−プロピレンゴム(EPDM、EPM)を微分散させた熱可塑性エラストマーが好ましく用いられ、より具体的には三菱化学(株)製「サーモラン」、エクソンモービル社製「サントプレーン」、三井東圧化学(株)製「ミラストマー」、JSR(株)製「エクセリンク」、三菱化学(株)製「ミラプレーン」等が挙げられる。
【0018】
これらの中では、特に制限されるものではないが、機械的強度、耐熱安定性、耐候性、耐薬品性、柔軟性、加工性などの点から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でもスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が特に好ましく用いられる。
【0019】
これらスチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量については特に制限はないが、ディスクストッパーとしての機械的特性や成形性などの面から、40,000〜120,000の範囲であることが好ましく、さらには60,000〜100,000の範囲が好ましい。
【0020】
また、上記グリップ層1は、上記スチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物(以下「エラストマー組成物」と称することがある。)で形成することもできる。
【0021】
このエラストマー組成物中の上記スチレン系熱可塑性エラストマー以外の成分としては、種々のものを配合することができるが、該エラストマー組成物の加工性、耐熱性等の向上を図る点から、ポリオレフィン樹脂やポリスチレン樹脂などの樹脂成分を配合することができる。
【0022】
上記エラストマー組成物中に配合されるポリオレフィン樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1などを挙げることができる。ポリオレフィン樹脂としてアイソタクティックポリプロピレン又はその共重合体を用いる場合、そのMFR(JIS K7210)が0.1〜50g/10分、特に0.5〜30g/10分の範囲のものが好適に使用できる。なお、エラストマー組成物中に含まれる熱可塑性エラストマーは、一種単独で、また二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
次に、上記エラストマー組成物中に配合されるポリスチレン樹脂としては、従来公知の製造方法で得られたもの、例えば、ラジカル重合法、イオン重合法のいずれで得られたものも好適に使用できる。ここで、使用するポリスチレン樹脂の数平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲から選択でき、分子量分布は5以下のものが好ましい。
【0024】
ポリスチレン樹脂として具体的には、例えば、ポリスチレン、スチレン単位含有量60質量%以上のスチレン−ブタジエンブロック共重合体、ゴム補強ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、これらの一種または二種以上を併用してもよい。更に、これらポリマーを構成するモノマーの混合物を重合して得られる共重合体も用いることができる。
【0025】
また、上記エラストマー組成物には、上記ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂とを併用して配合することもできる。この場合、ポリオレフィン樹脂単独を添加する場合に比較してポリスチレン樹脂を併用すると、得られる成形体の硬度が高くなる傾向にある。従って、これらの配合比率を選択することにより、グリップ層1の硬度を調整することもできる。なお、ポリオレフィン樹脂/ポリスチレン樹脂の配合比率は95/5〜5/95(質量比)の範囲から選択することが好ましい。
【0026】
エラストマー組成物中の上記樹脂成分の配合量は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、特にポリオレフィン樹脂の場合には0.1〜50質量部がより好ましい。なお、樹脂成分の配合量が100質量部を超えると、グリップ層1の硬度が高くなりすぎる場合がある。
【0027】
上記エラストマー組成物中には、さらに軟化剤を添加することができる。軟化剤としては、通常、室温で液体又は液状のものが好適に用いられる。このような性状を有する軟化剤としては、例えば、鉱物油系,合成系などの各種ゴム用又は樹脂用軟化剤の中から適宜選択することができる。
【0028】
鉱物油系の軟化剤としては、ナフテン系、パラフィン系などのプロセス油が挙げられ、特に、非芳香族系オイル、特に鉱物油系のパラフィン系オイル、ナフテン系オイル又は合成系のポリイソブチレン系オイルから選択される1種又は2種以上であって、その数平均分子量が450〜5,000であるものが好ましく用いられる。なお、これらの軟化剤は一種を単独で用いてもよく、互いの相溶性が良好であれば二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
軟化剤の配合量は、特に制限はないが、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、通常1〜1,000質量部、好ましくは1〜500質量部とすることができる。配合量が、1質量部未満であると効果的に低硬度化することができない場合があり、一方1,000質量部を超えると軟化剤のブリードが発生したり、十分な機械的強度が得られなくなる場合がある。なお、この軟化剤の配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマーの分子量及び該スチレン系熱可塑性エラストマーに添加される他の成分の種類に応じて、上記範囲で適宜選定することができる。
【0030】
また、上記エラストマー組成物には、グリップ層1の圧縮永久歪みを改善するなどの目的で、所望によりポリフェニレンエーテル樹脂を配合することができる。ポリフェニレンエーテル樹脂としては、公知のものを用いることができ、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが例示され、また2,6−ジメチルフェノールと1価のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体も用いることができる。
【0031】
これらのなかでは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)や2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、更に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好まし用いられる。
【0032】
ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して10〜250質量部の範囲で好適に選択することができる。配合量が250質量部を超えると、スチレン系熱可塑性エラストマー層2の硬度が高くなりすぎる場合があり、10質量部未満であると十分な圧縮永久歪みの改善効果が得られない場合がある。
【0033】
また、上記エラストマー組成物には、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのりん片状無機系添加剤、各種の金属粉、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填剤、各種の天然または人工の短繊維、長繊維(各種のポリマーファイバー等)、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーなどを配合することもできる。
【0034】
更に、このエラストマー組成物には、他の添加剤として、難燃剤、抗菌剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノールテルペン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体などの各種粘着付与剤(タッキファイヤー)、レオストマーB(商品名:リケンテクノス(株)製)などの各種接着性エラストマー、ハイブラー(商品名:(株)クラレ製、ビニル−ポリイソプレンブロックの両末端にポリスチレンブロックが連結したブロック共重合体)、ノーレックス(商品名:日本ゼオン(株)製、ノルボルネンを開環重合して得られるポリノルボルネン)などの他の熱可塑性エラストマー又は樹脂などを、必要に応じて併用することができる。
【0035】
このグリップ層1の硬度は、特に制限されるものではないが、JIS−A規格で80度以下が好ましい。硬度が80度以下であると、ディスクDをグリップするディスクストッパーとしての良好な柔軟性が得られると共に、ディスクDを所定圧力で圧接することにより良好に弾性変形して、図2のように上記リリース層2を良好に埋没させることができる。以上の点から、硬度がJIS−A規格で70度以下が更に好ましく、60度以下が特に好ましい。なお、硬度の下限は、JIS−A規格で4度以上とすることが好ましい。
【0036】
また、このグリップ層1は、特に制限されるものではないが、JIS−K6262(100℃、24時間、圧縮率25%)による圧縮永久歪が50%以下であることが好ましく、より好ましくは35%以下、更には20%以下であることが好ましい。このようにグリップ層1の圧縮永久歪を小さくすることにより、ディスクDのクランプ状態を解除してディスクをターンテーブルTから取り外す際に、圧縮状態にあるグリップ層1が良好に弾性復帰して埋没状態にあった上記リリース層2がグリップ層1表面から突出してディスクDを押し上げ、グリップ層1から良好に離間させることができる。
【0037】
このグリップ層1の厚さに制限はなく、ディスクストッパーとして用いる際のターンテーブルTやドライブの構造などに応じて適宜設定されるが、通常10〜500μm、特に100〜300μmとされる。
【0038】
次に、このグリップ層1表面に形成される上記リリース層2は、上述のように、非粘着性樹脂により形成される。この非粘着性樹脂としては、ディスクとの粘着性を有さず、ディスクと高温下で長時間圧接した状態にあっても、ディスクに貼り付くことがないものであればよく、特に制限されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの硬質樹脂が例示され、特にコストの観点から、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましく用いられる。
【0039】
このリリース層2は、上記グリップ層1の表面に散在させるものであるが、その形態に特に制限はなく、図1,2に示されているように、複数の小突起を点在させる他、例えば線状の突起を複数突設したり、複数の線状突起を格子状に設けたりすることもできるが、通常は図1,2のように複数の小突起を点在させることが好ましい。
【0040】
この場合、小突起の大きさに制限はなく、高さが上記グリップ層1よりも小さく、押圧されることにより該グリップ層1内に埋没し得、かつ非押圧時にはグリップ層1表面から確実に突出した状態となる大きさであればよく、通常高さは10〜500μmとすることが好ましく、より好ましくは100〜300μm、径は50〜1,000μmとすることが好ましく、より好ましくは300〜700μmである。
【0041】
また、突起の形状にも制限はなく、図1,2のような半球状乃至ドーム状に限定されるものではなく、立方体、三角錐、四角錐、台状など、種々の形状とすることができる。更に、この小突起の数や配設箇所にも制限はなく、クランプ時にはその圧力によって確実に全ての突起(リリース層2)がグリップ層1内に埋没してディスクDをグリップ層1に均一に当接させることができ、かつリリース時には確実にディスクDを押し上げてグリップ層1から離間させることができる数及び配置とすればよい。
【0042】
このリリース層2を形成する方法に特に制限はなく、公知の方法により形成すればよく、例えば上記PET、PP、PE等の硬質樹脂でリリース層2を形成する場合には、溶融状態のこれら樹脂をシルクスクリーン印刷やディスペンサーにより、点状、線状、格子状に塗布し硬化させることにより、容易に形成することができる。
【0043】
この場合、リリース層2は、上記グリップ層1を形成するシートの全面に均等に形成して、その後に最終製品の形状(例えば、リング状)に打ち抜いてもよいが、図3に示したように、上記グリップ層1を形成するシート上に予め最終製品の形状(図3では、リング状)に上記リリース層2を配置塗布し硬化させた後、最終製品の形状に打ち抜くことにより、材料の無駄を少なくすることができる。
【0044】
次に、上記粘着層3は、上記グリップ層1の他面側に、シリコーン系粘着剤などの適宜な粘着剤を塗布して形成することもできるが、公知の両面粘着テープを貼着して粘着層3とすることが好ましい。この両面粘着テープとしては、市販のテープを使用することができ、具体的には、(株)寺岡製作所「No.773」、「No.777」、「No.7783」;住友スリーエム(株)「Y4914」、「Y4920」;日東電工(株)「TW−Y01」、「No.5000N(C)」、「No.5000NS」、「No.5015」;ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)「G4000」、「G9000」、「G9900」;(株)スリオンテック「5686」;積水化学工業(株)「575」、「5754」、「5760LS(E)」、「5782LSV」;テサテープ(株)「5197」;DIC(株)「8810TD」、「8408TD」などを例示することができる。
【0045】
なお、この粘着層3とグリップ層1との間に、両者を強固に接着するための接着層やプライマー層を設けることもできる。
【0046】
本発明のディスクストッパーは、通常CD、DVD、BDなどの光学記録ディスクを回転させるターンテーブルTに、上記粘着層3により貼り付けて用いられる。そして、このターンテーブルT上にディスクDを載置し、所定圧力でディスクストッパーに圧接しながらクランプすると、図2に示されているように、上記グリップ層1が弾性変形して上記リリース層2が該グリップ層1内に埋没した状態となり、ディスクDの表面が直接グリップ層1に直接当接した状態となる。これにより、該グリップ層1の静摩擦性によってディスクDが良好にグリップされた状態で回転駆動され、ズレやスリップを生じることなく、安定的にディスクDを回転/加速/減速/ストップさせることができる。
【0047】
そして、クランプ状態を解除してディスクDをターンテーブルTから取り外す際には、図1に示されているように、上記グリップ層1の弾性により該グリップ層1が弾性復帰して上記リリース層2が再びグリップ層1の表面から突出した状態となり、ディスクストッパー上のディスクDを持ち上げてグリップ層1から離間させる。これにより、容易にディスクDをターンテーブルTから取り外すことができる。
【0048】
このように、本発明のディスクストッパーによれば、高温下にクランプした状態が長時間続き、グリップ層1にディスクDが貼り付いた状態となったとしても、クランプ状態を解除した際に、上記リリース層2がディスクDをグリップ層1から引き剥がして、容易にディスクDをターンテーブルから取り外すことができる。また、そのため貼り付きの問題を生じやすい静摩擦係数の高い熱可塑性エラストマーを用いてグリップ性能の非常に高いディスクストッパーを構成することができ、高性能なディスクストッパーを提供することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例,比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0050】
[実施例]
スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)[(株)クラレ製「SEPS 4099」]と100質量部、プロセスオイル[出光興産(株)製「ダイナプロセスオイル PW380」]50質量部、アイソタクティックポリプロピレン[プライムポリマー社製「プライムポリプロ F113G」]10質量部を含有するエラストマー組成物を下記条件で厚さ400μmのシート状に押出し成形してグリップ層1を形成した。
【0051】
(押出し成形の条件)
・Tダイ:ダイス幅300mm、リップ幅0.20mm
・押出し機:口径φ30mm、L/D=38、フルフライトスクリュー
・引取速度:0.8m/min
・引取りロール温度:100℃
・樹脂圧:12MPa
・温度条件:ダイ温度200℃、バレル温度(ダイ側 200℃、180℃、120℃、60℃ ホッパー側)、
【0052】
得られた上記グリップ層1上に、溶融させた状態のポリプロピレン(PP)をシルクスクリーン法により印刷塗布して、図3に示されたように、リング状に点在させ、これを冷却硬化させて小突起状のリリース層2をグリップ層1上に散在させた。得られたリリース層2は、高さ200μm、径500μmの小突起であり、この小突起が25個/cm2の密度でリング状の印刷範囲に均等に形成されたものである。
【0053】
そして、このリリース層2を形成したグリップ層1の他面側に、ソニーケミカル社製の両面粘着テープ「G9900」を貼り付けて粘着層3を形成し、上記リリース層2の形成位置に沿ってリング状に打ち抜いて、図1,2と同様の構成を有するディスクストッパーを得た。
【0054】
得られたディスクストッパーをCD−ROMドライブのターンテーブルに貼り付けて、CDディスクをクランプし、回転/加速/減速/ストップをランダムに繰り返す読み取りテストを行ったところ、ズレやスリップを生じることなく、良好にディスクを回転駆動させることができた。
【0055】
また、このCDディスクをクランプした状態で、22℃で24時間保持した後、クランプ状態を解除したところ、上記リリース層2によりディスクが良好にグリップ層1から引き剥がされ、簡単にディスクを取り外すことができた。
【0056】
[比較例]
リリース層2を形成しないこと以外は実施例1と同様にしてディスクストッパーを作製した。このディスクストッパーにつき、実施例1と同様に、読み取りテストを行ったところ、実施例1と同様に良好にディスクを回転駆動させることができたが、実施例1と同様にクランプ解除テストを行ってところ、ディスクストッパーにディスクが貼り付いて、容易に取り外すことができなくなった。
【符号の説明】
【0057】
1 グリップ層
2 リリース層
3 粘着層
D ディスク
T ターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高静摩擦性を有する熱可塑性エラストマーからなるグリップ層と粘着層とを積層してなり、該粘着層によりターンテーブルに貼り付け、ターンテーブル上に所定圧力でクランプされたディスクのズレを上記グリップ層の静摩擦性によって防止するディスクストッパーであって、
上記グリップ層表面に非粘着性樹脂からなるリリース層を散在させてなり、上記ディスクをターンテーブル上にクランプした際、上記リリース層が上記グリップ層の弾性により該グリップ層内に埋没してディスク表面が直接上記グリップ層に当接してグリップされると共に、クランプ状態を解除した際には、上記グリップ層が弾性復帰することにより上記リリース層が該グリップ層表面から突出してディスクを上記グリップ層から離間させるように構成されたディスクストッパー。
【請求項2】
上記グリップ層を形成する熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する組成物である請求項1記載のディスクストッパー。
【請求項3】
上記グリップ層を形成する熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選ばれたスチレン系熱可塑性エラストマー又は該スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する組成物である請求項2記載のディスクストッパー。
【請求項4】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンブロックの含有量が10〜70質量%である請求項2又は3記載のディスクストッパー。
【請求項5】
上記グリップ層が、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン樹脂及び/又はポリスチレン樹脂とを含有するエラストマー組成物で形成されたものである請求項2〜4のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
【請求項6】
上記エラストマー組成物が、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1、ポリスチレンから選ばれた1種又は2種以上の樹脂とを含有するものである請求項5記載のディスクストッパー。
【請求項7】
上記グリップ層が、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)と、アイソタクティックポリプロピレンとを含む組成物で成形された請求項6記載のディスクストッパー。
【請求項8】
上記リリース層を形成する非粘着性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)から選ばれた硬質樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
【請求項9】
上記リリース層が、上記グリップ層表面に形成された線状、格子状、又は点状の突起である請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
【請求項10】
上記リリース層が、上記グリップ層表面に点在する、高さ10〜500μm、直径50〜1,000μmの小突起である請求項1〜9のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
【請求項11】
上記グリップ層の厚さが10〜500μmである請求項に1〜10のいずれか1項に記載のディスクストッパー。
【請求項12】
上記粘着層がアクリル系両面粘着テープである請求項1〜11のいずれか1項に記載のディスクストッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−190512(P2012−190512A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53936(P2011−53936)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】