説明

ディスクチェンジャ

【課題】 新たな振動検出センサを付加せずに、ディスクチェンジャに振動が印加された場合でもディスクチェンジャの動作を保護する。
【解決手段】 スイングアームによってストッカからの所望のディスクの取り出し、再生後にこのディスクをストッカに返却するディスクチェンジャにおいて、ディスクチェンジャ内で装置の上下方向の位置を検出する部材の出力を監視し、この部材の出力の変動に基づいてディスクチェンジャに加わる振動の大きさを検出し、振動の大きさが所定値を越えた時には、スイングアームのディスクのクランプ動作、ディスクのストッカへの返却動作等、振動によって不具合が生じる可能性のあるスイングアームの動作を一時停止、或いは再動作させることによりディスクチェンジャを振動から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスクチェンジャに関し、特に、ディスク装置内におけるディスクの移動動作時に、外部から加わる振動による機構部品の位置ずれに起因するディスクの移動動作不良を防止する保護装置を備えるディスクチェンジャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車室内で音楽を楽しむための媒体としてはカセットテープが主流であったが、近年、このカセットテープに代わってCD(コンパクトディスク)やMD(ミニディスク)等のディスク媒体が主流になってきている。そして、ディスク媒体はカセットテープに比べて薄く、特にCDのような光ディスクはケースにも入っていないので、再生装置内にディスクを複数枚収納してこれを交換しながら再生するディスクチェンジャが普及している。また、同じ光ディスクであるDVDについてもディスクチェンジャが開発されつつある。
【0003】
このような光ディスクのディスクチェンジャには、その筐体の内部に複数枚のディスクを1枚1枚別々に収納できるディスク収納棚があり、スイングアームによってこのディスク収納棚から所望の1枚のディスクを取り出して光学ヘッドにより再生し、再生が終了するとディスクをディスク収納棚に戻すようになっている。一般に、スイングアームの先端部にはディスクを回転させるターンテーブルと、ディスクをターンテーブル上に固定するクランパがある。そして、ターンテーブル上で回転するディスクに対して、光学ヘッドがスイングアームに設けられた移動路を光ディスクの半径方向に移動してディスクに記録された情報を再生する。また、ディスクチェンジャの構成としては、ディスク収納棚から所望の1枚のディスクを取り出すために、ディスク収納棚が装置内を昇降可能になっている構成が一般的である。
【0004】
このようなCDのディスクチェンジャのうち、初期のものは装置のサイズが大きいので自動車のトランクルーム内に収納されていた。ところが近年、ディスクチェンジャの小型化が進み、ディスクチェンジャを内蔵するディスク装置が自動車のインストルメントパネルのセンターコンソール等に収納できるようになってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディスク装置におけるディスクチェンジャの小型化が進んだ結果、ディスクチェンジャ内の部品同士の寸法に余裕がなくなり、ディスクの交換動作やディスクを装置内のディスク収納棚に出し入れする動作時に外部からの振動がディスク装置に伝わると、ディスクのディスクチェンジャ構成部品との衝突や、スイングアームのターンテーブルへのディスクのクランプ動作不良等が発生し、ディスクチェンジャが動作不良を起こす可能性があった。
【0006】
このような振動印加時にディスクチェンジャの誤動作を防止するためには、ディスク装置に加わる振動の大きさを加速度センサのような振動検出センサで検出し、振動検出時にはディスクの交換動作やディスクをクランプする係合動作時を行わないようにすることが考えられる。ところが、ディスク装置に新たに振動検出センサを追加すると、振動検出センサのコスト分だけディスク装置のコストが上昇してしまうという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、前記従来のディスクチェンジャを内蔵するディスク装置における振動印加時の課題を解消し、新たな振動検出センサを付加することなく、ディスク装置に振動が印加された時にディスクチェンジャの動作を保護する保護装置を備えたディスクチェンジャを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明のディスクチェンジャは、以下の5つの形態が可能である。
【0009】
第1の形態は、複数枚のディスクを収納して装置内を昇降可能なディスク収納棚と、このディスク収納棚からディスクを取り出して再生するスイングアームと、このスイングアームの駆動装置と、装置内を昇降する部材の位置を検出する位置検出センサと、ディスク昇降棚の昇降を行う昇降機構とを備えたディスクチェンジャであって、位置検出センサの出力を監視して、この出力の変動でディスクチェンジャに加わる振動を検出する振動検出手段と、振動検出手段による振動の検出値が所定値を越えた時に、スイングアームの動作状態を検出する振動印加時のスイングアームの動作状態検出手段と、振動印加時のスイングアームの動作状態検出手段が前記スイングアームの所定の動作状態を検出した時に、前記スイングアームの移動動作を一時的に停止するスイングアーム動作の一時停止手段と、振動検出手段による振動の検出値が所定値を下回った時に、スイングアーム動作の一時停止手段の動作を解除するスイングアーム動作の再開手段とを有する保護装置を備えることを特徴とするディスクチェンジャである。位置検出センサは、ディスク収納棚の位置を検出するリニアポジションセンサとすることができ8、昇降機構は、このリニアポジションセンサの出力に基づいてディスク昇降棚の昇降を行うことができる。
【0010】
第2の形態は、第1の形態のディスクチェンジャにおいて、更に、振動印加時のスイングアームの動作検出手段がスイングアームの別の所定の動作状態を検出した時に、スイングアームの移動動作を中止して移動前の位置に復帰させるスイングアーム動作の中止手段と、振動検出手段による振動の検出値が所定値を下回った時に、スイングアーム動作を最初からやり直させるスイングアーム動作のやり直し手段とを備えることを特徴とするディスクチェンジャである。
【0011】
第3の形態は、第1又は第2の形態のディスクチェンジャにおいて、スイングアームの所定の動作状態が、ディスクのターンテーブルへの載置直前の動作状態、ディスクをターンテーブルにクランプする動作状態、及びスイングアームが動作開始する直前の状態の何れかであることを特徴とするディスクチェンジャである。
【0012】
第4の形態は、第1から第3の何れかの形態のディスクチェンジャにおいて、スイングアームの別の所定の動作状態が、ディスクの上下にスイングアームが挿入される状態、またはスイングアームがディスクをストッカに返却する状態の何れかであることを特徴とするディスクチェンジャである。
【0013】
第5の形態は、振動検出手段による振動検出結果に基づき、所定動作の規制を行う振動時規制動作機能を備えたディスクチェンジャにおいて、振動検出手段は、ディスク交換に伴い移動する移動部材の位置を検出する位置検出手段の検出信号に基づいて振動を検出することを特徴とするディスクチェンジャである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のディスクチェンジャによれば、ディスクチェンジャ内においてディスクの交換動作を行うデッキを構成する部材の移動を検出するセンサの出力を監視し、この出力の変動でディスクチェンジャに加わる振動を検出し、振動値が所定値を越えた場合で、かつ、このディスクチェンジャがディスクの交換動作、挿入排出動作を実行しようとする段階にある時には、その動作を一時停止させ、振動値が所定値を下回った場合には、その動作を再開させるので、安価にディスクチェンジャの保護を実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明を適用するディスクチェンジャ1の構成を示すものであり、ディスクが収容されていない状態を示すものである。本発明を適用するディスクチェンジャ1は、装置本体の内部に、複数枚のディスクを収納でき、装置内を昇降可能なディスク収納棚であるストッカ4と、このストッカ4からのディスクの取り出し、ディスクの再生、及び再生後のディスクのストッカ4への返却動作を行うスイングアーム3と、このスイングアーム3の駆動装置7と、ストッカ4の位置を検出するリニアポジションセンサ(図示せず)と、このリニアポジションセンサの出力に基づいてストッカ4の昇降を行う昇降機構5とを備えている。
【0017】
スイングアーム3は駆動装置7によって回動するようになっており、大きく分けてフレーム30とクランプアーム33とから構成される。フレーム30の先端部にはディスクを回転させるターンテーブル32が設けられており、フレーム30の中央部には光学ヘッド36とこの光学ヘッド36が移動する移動路35が設けられている。クランプアーム33は、その基部がフレーム30の上に回転軸によって取り付けられており、クランプアーム33の先端部にはディスクをクランプするクランパ34が回転自在に設けられている。クランプアーム33の先端部はフレーム30側に回転して、ターンテーブル32の上に載置されたディスクをクランパ34で挟んで固定する。
【0018】
スイングアーム3の装置内における垂直方向の位置は変わらず一定である。よって、スイングアーム3がストッカ4に収納されたディスクの所望の1枚をクランプするために、ストッカ4が装置の上下方向に分割され、移動するようになっている。ストッカ4は1枚のストッカベースと、この上に載置された複数の可動棚板である可動ストッカを備えており、個々の可動ストッカがそれぞれディスクを1枚収納できるようになっている。このストッカ4はストッカの昇降機構5によって装置内を昇降する。また、ストッカ4に保持された所望の1枚のディスクをスイングアーム3によって取り出すために、ストッカ4を構成する可動ストッカは、ストッカの分割機構6によって所望の位置で上下方向に分割できるようになっている。
【0019】
図2は、ディスクチェンジャの保護装置10を有する本発明の一実施例のディスクチェンジャ1の構成を示すものであり、図1に示したディスクチェンジャ1の内部の構成をブロックで示すものである。図2では図1で説明したディスクチェンジャ1の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付してある。
【0020】
スイングアーム3は、図1に示したように、フレーム30とクランプアーム33とを備えており、フレーム30の先端部にはディスクを回転させてるターンテーブル32があり、クランプアーム33の先端部にはこのターンテーブル32と係合するクランパ34がある。36はターンテーブル32に取り付けられたディスクのデータを読み取る光学ヘッドである。スイングアームの駆動装置7は、スイングアーム3の回転動作、スイングアーム3に設けられているクランプアーム33のクランプ動作、及び光学ヘッド36の移動動作を行う。
【0021】
また、この実施例では、ストッカ4には6個の可動ストッカがあり、それぞれに1枚のディスク2を収納することが可能である。更に、この実施例では、ストッカ4の位置がリニアポジションセンサ9で検出できるようになっており、ストッカの分割・昇降機構8は、図1に示したストッカの昇降機構5やストッカの分割機構6を駆動してストッカ4の分割と昇降を行うことができるように構成されている。
【0022】
本発明では、以上のような構成を備えるディスクチェンジャ1において、リニアポジションセンサ9の出力値を検出するディスクチェンジャの保護装置10を設けている。この保護装置10は、リニアポジションセンサ9の出力電圧を常に監視しており、出力電圧の変化からディスクチェンジャ1に加わる振動の大きさを検出できるようになっている。ディスクチェンジャの保護装置10にマイクロコンピュータが内蔵されている場合には、リニアポジションセンサ9の出力電圧をAD変換してデジタル値によって出力電圧の大きさを検出することができる。そして、ディスクチェンジャ1に加わる振動の大きさが基準値を越えた時には、スイングアームの駆動装置7によるスイングアーム3の動作の一時停止、或いはスイングアーム3の動作解除を行う。ディスクチェンジャの保護装置10は、ディスクチェンジャ1に加わる振動の大きさが基準値を越えた時に、ストッカの分割・昇降機構8のストッカ4の分割動作を停止することもできる。
【0023】
図3(a)は図2に示したリニアポジションセンサ9の構成を示すものである。リニアポジションセンサ9は、この実施例ではストッカ4の移動する経路に摺動抵抗として設けられている。即ち、ストッカ4が装置の上下方向に移動すると、リニアポジションセンサ9の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化が出力として取り出される。図3(b)はこのリニアポジションセンサ9の電気的な構成を示すものである。リニアポジションセンサ9の両端には直流電源11の電圧が印加されており、ストッカ4が移動するとこのリニアポジションセンサ9の抵抗値が変化して出力端子12に現れる電圧が変化する。直流電源11による印加電圧は5V程度で良い。
【0024】
図3(c)はリニアポジションセンサ9の出力特性を示すものである。リニアポジションセンサ9の出力(V)は、ストッカ4が装置底面からどれだけの高さ(位置)にあるかによって直線的に変化するが、この実施例では直線性の良い位置Bから位置Aの範囲で使用している。位置Bは最大出力(100%)に対して3.5%の地点、位置Aは96.5%の地点である。従って、ストッカ4の位置が位置Cに定められた場合は、リニアポジションセンサ9から出力される電圧は、この特性図から電圧Voとなることが分かる。
【0025】
ところで、ディスクチェンジャ1に外部から加わる振動の方向は、図3(a)に示すように、ストッカ4の移動方向と同じである。このため、ディスクチェンジャ1に外部から振動が加わると、ストッカ4が移動し、この結果、リニアポジションセンサ9の出力電圧が振動により変動する。この出力電圧の変動は、図3(b)に示すようにリニアポジションセンサ9の出力端子12に接続した電圧計13によって検出することができる。図3(d)はディスクチェンジャ1に外部から振動が加わった時のリニアポジションセンサ9の出力の変化を示す線図である。
【0026】
この実施例では、ストッカ4が所定位置Cにある時の出力電圧値Voの変動に基準値を設け、出力電圧Voがこの基準値を越えたら、ディスクチェンジャ1に大きな振動が加わったと判定する。この基準値は、図3(d)に示すように、リニアポジションセンサ9の出力電圧Vo±K(V)である。そして、ディスクチェンジャ1に大きな振動が加わったことを判定した場合は、図2で説明したディスクチェンジャの保護装置10が、スイングアームの駆動装置7の動作情況によっては、その動作を一旦停止、或いは中止する。
【0027】
このディスクチェンジャの保護装置10の動作を説明する前に、まず、本発明を適用するディスクチェンジャ1におけるスイングアームの駆動装置7と、ストッカの分割・昇降機構8の通常の動作について説明する。即ち、スイングアーム3がストッカ4から1枚のディスクを取り出す動作、再生する動作、再生後にディスクをストッカ4に返却する動作について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4はディスクチェンジャの動作を平面視したものであり、図5はディスクチェンジャの動作を側面視したものである。
【0028】
まず、図4により、ディスクチェンジャ1におけるディスク2、スイングアーム3、及びストッカ4の位置について説明する。図4(a)は、ディスクチェンジャ1が動作していない待機状態、或いは電源を切られた状態を示すものである。この状態では、ストッカ4に複数枚のディスク2が収納されている。そして、スイングアーム3はスイングアームの駆動装置7の中に収容されており、この図面には示されていない。このとき、ストッカ4の中にあるディスク2は、ストッカの昇降機構5によって装置内で自由に昇降することができる。
【0029】
ここでは、ストッカ4に収納されたディスク2の内、一番上のディスク2がストッカ4から取り出されて再生され、再生が終了した後にストッカ4に戻される場合について図4(b)〜(e)を用いて説明する。ストッカ4に収納されたディスク2の内、一番上のディスク2が再生される場合は、図4(a)の状態でストッカの昇降機構5によってストッカ4が下降し、一番上のディスク2の位置がスイングアーム3によって取り出される位置になる。詳細は後述するが、この状態でストッカ4が上下に分割され、再生されるディスク2を収納したストッカ4のみを残して他のストッカ4が更に下降する。
【0030】
ストッカ4の下降及び再生ディスク2を収納するストッカ4の分割が終了すると、図4(b)に示すように、スイングアームの駆動装置7に駆動されてスイングアーム3が装置内を回転移動し、ディスク2の中心孔に向かう。図4(b)にはスイングアーム3の上側にあるクランプアーム33とクランパ34のみが示されており、スイングアーム3のフレームはディスク2の下側にあるので図示されていない。図示されないフレームは、再生されるディスク2と、分割されてその下側にあるディスク2との間にある空間を移動する。
【0031】
スイングアーム3の回転は、図4(c)に示すように、ディスク2の中心孔の真上で停止する。この状態において、再生されるディスク2を収納するストッカ4のみが下降し、保持しているディスク2がスイングアーム3のターンテーブルの上に載置される。再生されるディスク2がターンテーブル上に載置されると、スイングアーム3のクランプアーム33がターンテーブル側に回転し、再生されるディスク2がクランパ34によりクランプされてターンテーブル上に固定される。
【0032】
再生されるディスク2がクランパ34によりターンテーブル上に固定されると、図4(d)に示すように、スイングアーム3がディスク2の再生位置まで回転し、この位置でディスク2の再生が行われる。ディスク2の再生が終了すると、図4(e)に示すように、スイングアーム3がストッカ4に保持されているディスク2の中心孔の方向に再び回転移動し、再生が終了したディスク2をストッカ4に収納する。図4(e)の状態は、再生が終了したディスク2の一部がストッカ4に挿入されている状態であって、ディスク2が完全にストッカ4に戻された状態ではない。
【0033】
再生が終了したディスク2が完全にストッカ4に収納されると図4(c)と同じ状態となる。この後、スイングアーム3はスイングアームの駆動装置7側に回転移動して戻り、図4(a)の状態となる。そして、この状態でストッカ4は次に再生されるディスク2をスイングアーム3の位置にするために上下方向に移動し、他のディスク2に対する前述の再生動作が繰り返される。なお、ストッカ4に収納されているディスク2は、装置の外部にある別のディスクと交換可能であるが、ディスク2の交換動作についてはここでは説明しない。
【0034】
次に、以上説明したディスク2の、ストッカ4からの取り出し動作、再生動作、及びストッカ4への収納動作を、ディスクチェンジャ1の側面から見た状態を示す図5(a)〜(j)を用いて更に詳細に説明する。なお、ここでは、ストッカ4の分割動作が明確になるように、ストッカ4に収納されたディスク2の内、上から3枚目のディスク2−3が再生される状態を説明する。ストッカ4は、図5(a)に示すように、ストッカベース4−Bの上に6枚の可動ストッカ4−1〜4−6が載置されているものであり、可動ストッカ4−1〜4−6はそれぞれ独立して移動することができる。また、各可動ストッカ4−1〜4−6の中にはそれぞれ1枚のディスク2(これらは、図5(b)に示すように、上からディスク2−1〜2−6とする)を収納することができる。
【0035】
図5(a)は図4(a)と同じ状態を示すものであり、ディスク2の再生前の状態である。ここではスイングアーム3にあるターンテーブル32とクランパ34のみを代表して示してあり、スイングアーム3の他の構成部材の図示は省略してある。図5(a)の状態では、ターンテーブル32とクランパ34はディスク2の移動範囲から退避した位置にあり、ディスク2はストッカ4によりディスクチェンジャ1の上下方向に移動できるようになっている。即ち、図5(a)に示す状態は、これから再生されるディスクが選択される前の状態である。
【0036】
図5(b)はこれから再生されるディスク2が選択され、ストッカ4が分割した状態を示すものである。図5(b)の状態は、上から3段目の可動ストッカ4−3の中のディスク2−3が選択され、ストッカ4が3つに分割された状態を示している。この状態では、選択されたディスク2−3の下側にターンテーブル32、上側にクランパ34が挿入できるスペースが開けられる。図5(b)の状態は前述の図4(a)の状態と同じである。なお、ストッカ4の分割機構についてはここではその説明を省略する。
【0037】
図5(c)は、図5(b)の状態になった後に、ターンテーブル32とクランパ34とから構成されるディスクドライブがディスク2−3の上下に挿入される状態を示すものであり、前述の図4(b),(c)の状態に対応するものである。ターンテーブル32とクランパ34の挿入は、ディスク2−3の中心孔の位置で終了し、この後、図5(d)に示すように、上から3段目の可動ストッカ4−3が下降し、可動ストッカ4−3の中に保持されていたディスク2−3がターンテーブル32の上に載置される。
【0038】
ターンテーブル32の上にディスク2−3が載置されると、図5(e)に示すように、ディスク2−3がクランパ34によってクランプされ、続いて図5(f)に示すように、ディスク2−3がターンテーブル32の移動によってストッカ4−3から引き出される。ストッカ4−3は、図1,図4に示したように三日月状であるので、ターンテーブル32がある程度再生位置側に移動すると、ディスク2−3と係合しなくなる。この状態で、空になったストッカ4−3は、図5(g)に示すように上昇する。
【0039】
この後、ターンテーブル32はディスク2−3を引き出す方向に更に回転を続け、図5(h)に示す再生位置で停止する。この状態が図4(d)に対応しており、ディスク2−3はこの位置で再生される。再生が終了すると、図5(i)に示すように、ターンテーブル32はストッカ4側に移動し、ディスク2−3を元の可動ストッカ4−3に収納する。図5(i)の状態は図4(e)に対応している。この時点では、可動ストッカ4−3はディスク2−3を収納する位置まで既に下降している。
【0040】
ディスク2−3が可動ストッカ4−3に収納されると、クランパ34が上昇してディスク2−3がターンテーブル32の上で自由になるので、ターンテーブル32とクランパ34からなるドライブが、図5(j)に示すように、ストッカ4に保持されたディスク2との干渉が無くなる位置まで後退して再生動作を終了する。この後、可動ストッカ4−3が図5(c)に示した位置まで上昇し、更にディスク2の再生が続けられる時には、図5(b)に示したストッカ4の分割位置が変わり、図5(b)から図5(j)に示した動作と同様の動作が繰り返される。
【0041】
以上説明したディスクの再生動作においては、ディスクチェンジャ1に外部から大きな振動が加わった場合に、問題なく動作を続行できる場合と、動作を一旦停止した方が良い場合と、動作を中止して動作前の状態に戻した方が良い場合がある。ここでは、大きな振動が加わっても問題がない動作状態を動作A、大きな振動が加わった場合には動作をその場で一旦停止した方が良い動作状態を動作B、大きな振動が加わった場合は動作を中止して動作前の状態に戻した方が良い動作状態を動作Cとする。動作Cは、振動でディスクがストッカに衝突する虞がある場合等の最も注意が必要な状態である。
【0042】
ディスクの再生動作における動作Aには以下の場合がある。
(A1)ストッカの分割位置決定後、ストッカが分割される状態(図5(b))
(A2)スイングアームがディスクをクランプして引き出す状態(図5(g,h))
(A3)スイングアームのターンテーブルでディスクを再生中の状態(図5(h))
(A4)ストッカにディスクを返却後、スイングアームが戻る状態(図5(j))
【0043】
ディスクの再生動作における動作Bには以下の場合がある。
(B1)ディスクのターンテーブルへの載置直前の状態(図5(d))
(B2)ディスクをターンテーブルにクランプする状態(図5(e))
(B3)スイングアームが動作開始する直前の状態(図5(b))
【0044】
ディスクの再生動作における動作Cには以下の場合がある。
(C1)ディスクの上下にスイングアームが挿入される状態(図5(c))
(C2)スイングアームがディスクをストッカに返却する状態(図5(i))
【0045】
ここで、前述の動作A〜Cの場合に、図2に示した本発明のディスクチェンジャの保護装置10がどのように動作するかの制御手順を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートに示す制御手順の実行周期は、例えば、約10ms毎である。
【0046】
ステップ601では、ストッカの分割・昇降機構による現在のストッカ位置の指示値に対応するリニアポジションセンサの出力値Voを算出する。リニアポジションセンサの出力値Voは図3(c)で説明した特性図に基づいて算出することができる。続くステップ602では、リニアポジションセンサ9の実際の出力電圧Vrを検出する。そして、リニアポジションセンサ9の実際の出力電圧Vrの変動をステップ603で検出し、変動が±K(V)を越えたら、ステップ604に進んでスイングアームの動作を検出する。
【0047】
続くステップ605ではスイングアームの動作が動作Aか否かを判定する。そして、動作Aである時はそのままこのルーチンを終了する。一方、スイングアームの動作が動作Aでない場合はステップ606に進み、スイングアームの動作が動作Bか否かを判定する。ステップ606の判定がYESの場合はスイングアームの動作が動作Bであるのでステップ607に進み、動作Bを一旦停止してこのルーチンを終了する。また、ステップ606の判定がNOの場合はスイングアームの動作が動作Cであるのでステップ608に進み、スイングアームが動作Cを行う前の状態に戻してこのルーチンを終了する。
【0048】
一方、ステップ603の判定がNOで、大きな振動の印加が無い場合はステップ609に進み、前回のスイングアームの動作が動作Cであるか否かを判定する。前回のスイングアームの動作が動作Cである場合(YES)はステップ610に進み、スイングアームに動作Cを最初から行わせてこのルーチンを終了する。ステップ609における判定がNOの場合はステップ611に進み、前回のスイングアームの動作が動作Bであるか否かを判定する。前回のスイングアームの動作が動作Bである場合(YES)はステップ612に進み、一旦停止していたスイングアームの動作Bを再開させてこのルーチンを終了する。ステップ611における判定がNOの場合は前回のスイングアームの動作が動作Aであるので、このままこのルーチンを終了する。
【0049】
このように、以上説明した実施例では、ディスクチェンジャに加わる大きな振動を、正規の振動検出センサではないリニアポジションセンサ9の出力電圧の変動によって検出し、大きな振動が加わったと判定場合には、スイングアームの動作状態に応じて動作の続行、一時停止、動作を解除して基に戻す、の何れかの制御を行っている。そして、このような大きな振動のディスクチェンジャへの印加は一時的なものであるので、大きな振動が無くなった状態をもって、動作Bでは一時停止の解除、動作Cでは動作のやり直しを行わせている。
【0050】
なお、以上説明した実施例では、ディスクチェンジャに加わる大きな振動を検出する手段として、ディスクチェンジャのディスクのストッカの位置を検出するリニアポジションセンサの出力を利用しているが、ディスクチェンジャに加わる大きな振動を検出する手段これに限定されるものではなく、機構部品の装置の上下方向の位置を検出する手段が別にもあれば、それを使用することができる。
【0051】
また、以上説明した実施例では、ディスクチェンジャに大きな振動が加わった時に、ディスクの再生動作を行うスイングアームの動作を安全に保護するものを説明したが、図5(b)に示したストッカを3つに分割する機構に対しても本発明を適用することができる。即ち、ストッカの分割機構は、図5(a)に示した可動ストッカ4−1〜4−6の何れかのストッカの間に楔状の分割レバーを挿入してストッカを分割するようになっているが、振動の印加時にこの分割レバーが正しく分割するストッカの間に挿入されなくなる不具合が発生する虞がある。このような場合は、この分割レバーのストッカの分割動作を、振動が印加されなくなるまで、待機させるようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用するディスクチェンジャの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明のディスクチェンジャの保護装置を備えたディスクチェンジャの構成を示すブロック回路図である。
【図3】(a)は本発明に使用するリニアポジションセンサの構成を示す図、(b)は本発明に使用するリニアポジションセンサの構成を示す回路図、(c)は本発明に使用するリニアポジションセンサの出力を示す特性図、(d)はディスクチェンジャに外部から振動が加わった時のリニアポジションセンサの出力の変化を示す線図である。
【図4】(a)から(e)はディスクチェンジャの動作を示す平面図である。
【図5】(a)から(j)はディスクチェンジャの動作を示す側面図である。
【図6】本発明のディスクチェンジャの保護装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 ディスクチェンジャ
2 ディスク
3 スイングアーム
4 ストッカ
5 ストッカの昇降機構
6 ストッカの分割機構
7 スイングアームの駆動装置
8 ストッカの分割・昇降機構
9 リニアポジションセンサ
10 本発明のディスクチェンジャの保護装置
30 フレーム
32 ターンテーブル
33 クランプアーム
34 クランパ
36 光学ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のディスクを収納して装置内を昇降可能なディスク収納棚と、このディスク収納棚からディスクを取り出して再生するスイングアームと、このスイングアームの駆動装置と、前記装置内を昇降する部材の位置を検出する位置検出センサと、前記ディスク昇降棚の昇降を行う昇降機構と、を備えたディスクチェンジャであって、
前記位置検出センサの出力を監視して、この出力の変動でディスクチェンジャに加わる振動を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段による振動の検出値が所定値を越えた時に、前記スイングアームの動作状態を検出する振動印加時のスイングアームの動作状態検出手段と、
前記振動印加時のスイングアームの動作状態検出手段が前記スイングアームの所定の動作状態を検出した時に、前記スイングアームの移動動作を一時的に停止するスイングアーム動作の一時停止手段と、
前記振動検出手段による振動の検出値が所定値を下回った時に、前記スイングアーム動作の一時停止手段の動作を解除するスイングアーム動作の再開手段と、を有する保護装置を備えることを特徴とするディスクチェンジャ。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクチェンジャであって、
前記位置検出センサが、前記ディスク収納棚の位置を検出するリニアポジションセンサであり、前記昇降機構が、このリニアポジションセンサの出力に基づいて前記ディスク昇降棚の昇降を行うことを特徴とするディスクチェンジャ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のディスクチェンジャであって、更に、
前記振動印加時のスイングアームの動作検出手段が前記スイングアームの別の所定の動作状態を検出した時に、前記スイングアームの移動動作を中止して移動前の位置に復帰させるスイングアーム動作の中止手段と、
前記振動検出手段による振動の検出値が所定値を下回った時に、前記スイングアーム動作を最初からやり直させるスイングアーム動作のやり直し手段と、を備えることを特徴とするディスクチェンジャ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のディスクチェンジャであって、
前記スイングアームの所定の動作状態が、ディスクのターンテーブルへの載置直前の動作状態、ディスクをターンテーブルにクランプする動作状態、及びスイングアームが動作開始する直前の状態の何れかであることを特徴とするディスクチェンジャ。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載のディスクチェンジャであって、
前記スイングアームの別の所定の動作状態が、ディスクの上下にスイングアームが挿入される状態、またはスイングアームがディスクをストッカに返却する状態の何れかであることを特徴とするディスクチェンジャ。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のディスクチェンジャであって、
前記リニアポジションセンサが半固定抵抗器であることを特徴とするディスクチェンジャ。
【請求項7】
振動検出手段による振動検出結果に基づき、所定動作の規制を行う振動時規制動作機能を備えたディスクチェンジャにおいて、
前記振動検出手段は、ディスク交換に伴い移動する移動部材の位置を検出する位置検出手段の検出信号に基づいて振動を検出することを特徴とするディスクチェンジャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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