説明

ディスク状ガラスおよびその製造方法、情報記録媒体用基板および情報記録媒体の製造方法

【課題】真円度の高いディスク状ガラスをプレス成形によって製造することができるディスク状ガラスの製造方法、この方法により得られたディスク状ガラスを用いる、情報記録媒体用基板および情報記録媒体を製造する方法を提供する。
【解決手段】熔融ガラス塊を下型と上型を用いてプレスして、外周面が自由表面であるディスク状ガラスを成形する工程を含む、最大肉厚が1.2mm未満であるディスク状ガラスの製造方法。熔融ガラスの分離によって熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕を、ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御することで、真円度が100μm以内のディスク状ガラスを得る。最大肉厚が1.2mm未満であり、真円度が100μm以内であり、平坦度が10μm以下であり、かつ外周面が自由表面であるディスク状ガラス。ディスク状ガラスを加工してディスク状の情報記録媒体用基板の製造する方法。情報記録媒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状ガラスおよびその製造方法、並びに情報記録媒体用基板および情報記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話等に大容量記録手段として利用されているハードディスクの基板として、ガラス製あるいはガラスセラミックス(結晶化ガラス)製の基板が高性能かつ高信頼性を有するものとして広く使用されている。ガラス製あるいはガラスセラミックス(結晶化ガラス)製の基板は、主表面が極めて平坦かつ平滑に仕上げられたディスク形状をしたものである。
【0003】
パソコン等の普及、情報ネットワーク社会の発展に伴い、このようなガラス製あるいはガラスセラミックス製の情報記録媒体用基板及び情報記録媒体の需要は、近年急速に伸びてきている。そして、その需要に対応すべく、高生産性を有する基板製造技術が望まれている。そのような技術のうちで最も有力な方法としては、作製しようとする基板の形状に研削、研磨しろ等、あるいは結晶化時の体積変化等を見込んで基板に近似する形状を有するガラス製中間体を、成形型による溶融ガラスのプレス成形により作製する、いわゆるダイレクトプレス法と呼ばれる方法を挙げることができる。
【0004】
情報記録媒体用基板の中間体をダイレクトプレスによって生産する方法として、特開平12−53431号公報(特許文献1)に開示されている方法が知られている。この方法においては、ハードディスク基板の内孔加工が容易になるよう、中間体成形の段階で内孔を開ける部分にノッチと呼ばれる溝を設けている。そして、供給される溶融ガラスの量が過剰であっても、中間体の周縁部が胴型などで規制されず、ガラスの余剰体積を周縁部に逃がすことによって供給されるガラスの体積にばらつきがあっても毎回、安定した厚みの中間体を得るようにしている。
【0005】
上記公報に記載されている中間体とは別に、ノッチが形成されていない円板状の中間体もオーソドックスなものとして知られている。この場合、中間体の周縁部は成形型によって規定されている。
【0006】
ところで、ダイレクトプレス法により成形された中間体は、基板を作製する際には研削、研磨加工が必須であるので、スラッジと呼ばれる研削、研磨くずが発生する。省資源、廃棄物削減による環境負荷の軽減、コストの低減などの面から、スラッジ削減の要求は強い。したがって、ダイレクトプレス法においては、基板に近い厚みを有する中間体の製造が求められている。
【0007】
それに対して、プレス成形で平坦性の高い基板ブランクを作ることができれば、後工程における研削、研磨工程を省力化することができる。特開2002−226219号公報(特許文献2)に開示されている方法は、熔融ガラス塊をプレスして肉薄板状に成形し、表面を研削、研磨するともに、中心孔を設ける方法であって、ディスク状ガラスの外周面を自由表面とし、プレスによってガラスが均等に伸びて平坦性の高い基板ブランクを得る方法である。
【特許文献1】特開平12−53431号公報
【特許文献2】特開2002−226219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されている方法は、プレス成形で平坦性の高い基板ブランクを作ることができる、優れた方法である。しかし、情報記録媒体のより一層の小型・軽量化が進めされており、基板および基板ブランクの尚一層の肉薄化が求められている。特許文献2の実施例に開示されている基板ブランクは、薄肉部分の最小値が1.2mmであるが、薄肉部分の最小値が1.2mm未満、例えば、1.0mm、あるいはそれより薄い小さい基板ブランクに対する要望もある。
【0009】
それに対して、本発明者らは、基板ブランクのさらなる肉薄化を検討した。その結果、基板ブランクの薄肉部分の最小値を1.2mm未満にすると、次のような問題があることが明らかになった。
【0010】
上記特許文献2に記載の方法では、プレス成形時にディスク状ガラスの外周部を型によって規制しない。こうした成形法で肉薄化した基板ブランクを製造すると、真円度が低下したディスク状ガラスが含まれるようになり、製造されたディスク状ガラスの真円度にばらつきが生じた。真円度が低下すると、高い真円度が要求される基板に加工する際、基板ブランクの外周を大きく研削しなければならず、スループットが低下し、加工コストも高くなってしまう。
【0011】
そこで、真円度低下の原因について種々検討した。その結果、プレス成形に供される熔融ガラス塊の温度分布が、プレス時の加圧軸に対して軸対称から僅かでもずれていると、プレスによってガラスが均等に伸びず、真円度が低下することが判明した。
【0012】
本発明はこうした問題を解決するためになされたものであり、プレス時の加圧軸に対して軸対称である温度分布を有する熔融ガラス塊をプレス成形できる方法を見いだし、その結果、真円度の高いディスク状ガラスをプレス成形によって製造することができるディスク状ガラスの製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、この製造方法により得られたディスク状ガラスを用いて、後工程における研削、研磨工程を省力化できる、情報記録媒体用基板および情報記録媒体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
[1] 熔融ガラスを分離して熔融ガラス塊を得る工程、および得られた熔融ガラス塊を下型の成形面上に配置し、前記下型と上型を用いてプレスして、外周面が自由表面であるディスク状ガラスを成形する工程を含む、最大肉厚が1.2mm未満であるディスク状ガラスの製造方法において、
前記熔融ガラスの分離によって熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕を、ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御することで、真円度が100μm以内のディスク状ガラスを得ることを特徴とするディスク状ガラスの製造方法。
[2] 前記分離痕の制御は、パイプから流出する熔融ガラス流を下型の成形面上に供給し、V字型を有する一対の切断刃が対向して設けられた切断装置の前記一対の切断刃によって熔融ガラス流を挟んで切断して前記熔融ガラス塊を分離することで行うことを特徴とする[1]に記載のディスク状ガラスの製造方法。
[3] 前記切断刃のV字型の内角は、50〜120°の範囲内である[2]に記載のディスク状ガラスの製造方法。
[4] 最大肉厚が1.2mm未満であり、真円度が100μm以内であり、平坦度が10μm以下であり、かつ外周面が自由表面であるディスク状ガラス。
[5] [1]〜[3]のいずれかに記載の方法により製造されたディスク状ガラスまたは[4]に記載のディスク状ガラスを加工してディスク状の情報記録媒体用基板を作製する情報記録媒体用基板の製造方法。
[6] ガラスを結晶化させるための熱処理工程をさらに含む[5]に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
[7] [6]に記載の方法により製造した基板上に少なくとも情報記録層を形成することを含む、情報記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プレス時の加圧軸に対して軸対称である温度分布を有する熔融ガラス塊をプレス成形できる方法を提供でき、真円度の高いディスク状ガラスを高い生産性のもとに製造することができる。
【0015】
また、上記方法により作製したディスク状ガラスを加工することにより、外周面加工の省力化が可能な情報記録媒体用基板の製造方法、ならびに前記基板を用いた情報記録媒体の製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[ディスク状ガラスの製造方法]
本発明は、ディスク状ガラスの製造方法に関する。本発明のディスク状ガラスの製造方法は、熔融ガラスを分離して熔融ガラス塊を得る工程、および得られた熔融ガラス塊を下型の成形面上に配置し、前記下型と上型を用いてプレスして、外周面が自由表面であるディスク状ガラスを成形する工程を含む、最大肉厚が1.2mm未満であるディスク状ガラスの製造方法である。さらに本発明のディスク状ガラスの製造方法は、熔融ガラスの分離によって熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕を、ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御することで、真円度が100μm以内のディスク状ガラスを得ることを特徴とする。
【0017】
本発明のディスク状ガラスの製造方法においては、該ディスク状ガラスは、軟化状態の溶融ガラス塊(以下、ゴブと称すことがある。)を、上型および下型を備えた成形型によってプレス成形することにより、製造される。薄板状であるディスク状ガラスの両主表面は上型成形面と下型成形面によってそれぞれ転写成形される。なお、上型、下型とも必要に応じて、一つ又は複数の部材から構成される。
【0018】
本発明においては、ディスク状ガラスの素材であるゴブは、溶融ガラスの状態で、通常下型の上に供給され、ディスク状ガラスが所定形状になるよう重量管理されている。下型上へのゴブ供給(以下、キャストという)の際、下型との接触によりゴブが急激に冷却されてプレス成形不能にならないように下型温度は調整されている。一般的に下型温度はゴブの温度よりも低いので、キャストからプレス成形、そして成形されたガラスがプレス成形型から取り出される(以下、テイクアウトという)まで、ガラスと下型の接触面からゴブ及びガラス成形品のもつ熱量が奪われて行く。さらに、プレス成形時においても、上型温度は調整されているものの、一般にゴブの温度よりも低いので、上型がゴブあるいは成形品に触れている間は、上型によっても、ゴブ及びガラス成形品のもつ熱量が奪われていく。
【0019】
成形品のうねりは、薄板状の成形品が冷却される過程で上下型による加圧方向に垂直な面内にできる大きな放熱の分布によって生じるものと考えられる。ダイレクトプレス法では、冷却過程で成形品内部と成形品表面、成形品の中心部と外周部、厚肉部と薄肉部で放熱分布ができる。この放熱分布を抑制するために、本発明においては、ゴブを、形成されるディスク状ガラスの周縁部が成形型に接触しないようにプレス成形して、ディスク状ガラスを作製する。
【0020】
この本発明の製造方法においては、好ましい態様として、下記の3種のディスク状ガラスを作製する方法を挙げることができる。
【0021】
まず、第1の態様は、平坦な表裏面と周縁部からなる表面を有するディスク状ガラスを作製する方法である。ここで平坦な面とは微小な反りや不可避的に形成される微妙な凹凸などは別にして、意図的な凹凸が設けられていない面を意味する。この場合、ディスク状ガラスの表裏面、すなわち両主表面は互いに平行であることが望ましい。
【0022】
第2の態様は、ディスク状ガラスの厚みの最小値、すなわち肉厚の最も薄い箇所の厚みが、目的とするガラス基板の最も厚肉の箇所の厚み(基板の厚みの最大値)よりも厚いディスク状ガラスを作製する方法である。このような成形として、本件出願人が先に出願した特開平10−194760号公報で開示した平坦性の優れた板状ガラスの作製に好適なディスク状ガラスのように、厚肉部と薄肉部を有するディスク状ガラスの成形を例示することができる。
【0023】
第3の態様としては、厚肉部と厚みの最も薄い薄肉部を有し、かつ上記薄肉部の面積が厚肉部の面積よりも大きなディスク状ガラスを作製する方法である。このような成形として、上記特開平10−194760号公報で開示した平坦性の優れた板状ガラスの作製に好適なディスク状ガラスの成形を例示することができる。
【0024】
このような第1〜第3の態様のそれぞれによってうねりの発生が抑制されたディスク状ガラスを作製することができる。また、上記第2の態様と第3の態様を組み合わせることによっても、好適なディスク状ガラスを作製することができる。
【0025】
プレス成形時に形成されるディスク状ガラスの周縁部を成形型に接触しないようにする、すなわち前記周縁部を規制しないようにすると、周縁部は自由表面となる。自由表面は成形型の成形面が転写されていないので、成形面に存在する加工痕が転写されることがない。また粉末状離型剤を成形面に塗布して成形を行う場合、自由表面は粉末が塗布された成形面により加圧されないので、離型剤による荒れがこの部分にはできない。
【0026】
また周縁部は、プレス成形過程で従来と比較して比較的低粘度を保つことができ、成形品のヒケが生じる時点でも周縁部の塑性変形は可能である。それに対して、上下型成形面によって転写成形された面は冷却が進んで高粘度化するので、ヒケを周縁部に分散させることができ、ヒケによるディスク状ガラスの形状精度低下を低減することもできる。
【0027】
ゴブの量を毎回、厳密に等しくしたり、前記公報のように外周から余剰ガラスをはみ出させるだけでは、ヒケによって成形品の最大厚みに相当する全高のばらつきが大きくなる。一方、本発明のように、ヒケを成形品の周縁部に分散させる方法では、成形毎の全高を±5〜10μm以内に収めることができる。
【0028】
ディスク状ガラスの厚肉部は、ディスク状ガラスの両主表面側からの圧力をこの厚肉部が受け止めるように成形することが望ましい。そのためには、ディスク状ガラス外周部に厚肉部を、外周部に囲まれた部分に薄肉部を形成するか、ブランク中心部に厚肉部を、その周囲に薄肉部を形成するか、又はディスク状ガラス外周部と中心部に厚肉部を、外周部と中心部の間に薄肉部を形成することが好ましい。そして、薄肉部の肉厚、厚肉部の肉厚をそれぞれ均一にする
ことが好ましい。
【0029】
ディスク状ガラスの形状は、磁気ディスク用基板のように加圧方向に対称な形状、すなわち円板形状である。ディスク状ガラスでは、円板の側面が周縁部となる。
【0030】
本発明では、厚みが1.2mm未満のディスク状ガラスを作製する。作製するディスク状ガラスの厚みの上限は好ましくは1.18mm、より好ましくは1.16mm、さらに好ましくは1.15mmであり、好ましい下限は0.7mm、より好ましくは0.8mm、さらに好ましくは0.9mm、より好ましくは1.0mmである。厚肉部、薄肉部を有するブランクでもディスク状ガラスの厚みの最大値と最小値がともに、上記範囲にあるディスク状ガラスの作製に好適である。最大肉厚が薄いほうがプレス成形品の研削、研磨工程などの後工程を省力化することができるが、薄すぎると成形が困難になり歩留まりが低下するなどの傾向が現われる。こうした点を考慮して上記好ましい範囲が設定される。
【0031】
図1(a)〜(d)は、ディスク状ガラスの形状の異なる例を示す主表面に対する垂直断面概略図であって、符号1はディスク状ガラスを示す。図1における(a)は、厚肉部、薄肉部がなく、均一な厚みのディスク状ガラスを示し、厚みとしては0.6〜1.2mmが好ましく、0.8〜1.0mmが特に好ましい。また上記厚さを有し、かつ外径が60〜100mmのディスク状ガラスが好適である。
【0032】
(b)は、ディスク状ガラス1の外周部に厚肉部11を、外周部に囲まれた部分に薄肉部12を有するディスク状ガラスを示し、(c)は、ディスク状ガラス1の外周部と中心部に、それぞれ厚肉部11および11′、外周部と中心部の間に薄肉部12を有するディスク状ガラスを示す。(d)はディスク状ガラス1の中心部に厚肉部11′を、厚肉部11′の周囲に薄肉部12を有するディスク状ガラスを示す。このように、厚肉部11および/または11′、薄肉部12を有するディスク状ガラスの場合、厚肉部の厚みは0.8〜1.2mm、薄肉部の厚みは0.6〜1.0mmとすることが好ましい。また上記の厚みの範囲にあって、外径が60〜100mmのディスク状ガラスが好適である。なお、符号13は、周縁部を示す。
【0033】
本発明のディスク状ガラスの製造方法に従って、プレス成形を行うことにより、ゴブが広がりやすくなり、成形品の薄板化に対してもプレス圧力を過度に高める必要がなくなる。その結果、プレス不良を低減するとともに、粉末状離型剤が不要になり、離型剤による成形品の表面荒れが低減される。また、過度のプレス圧力上昇やノッチのような局所的な薄肉部を形成しないので、ノッチ形成部における成形品の損傷を防ぐこともできる。本発明のディスク状ガラスの製造方法は、特に情報記録媒体用ブランクの作製に好適である。
【0034】
次に、成形型の構造について説明する。図2は、前記図1(a)に示される円板状ディスク状ガラスをプレス成形により作製する様子の1例を示す模式図である。成形型は、下型3、上型4、胴型5および上部胴型から構成されている。上型4は上部胴型の内部で摺動可能となっている。図2(a)は、ゴブが成形面上に供給された下型3に、プレスのために上型4と上部胴型が下降し、胴型5と上部胴型とが当接した状態を示している。この状態から上型4はさらに下降し、下型3とともにゴブ2を加圧する。加圧されたゴブ2は下型3、上型4、胴型5および上部胴型によって形成されるキャビティ内に広がり、プレス成形品1に成形される。この際、上型4の成形面と上部胴型によって成形される面との間に段差を作らないように、上型4の下降量は規制される。したがって、成形品1の上面は平坦に形成されるとともに、成形品1の下面も平坦に形成される。成形品1の周縁部13は胴型5に接触せず(胴型5によって規制されない)、自由表面として成形品1に残る。プレス成形後、成形品1は上型4及び上部胴型から離型され、下型3上に残される。
【0035】
図1(b)、(c)、(d)で図示されたディスク状ガラスの作製も成形型の転写成形面の形状をディスク状ガラスの形状に合わせて変更するだけで、概ね上記と同様に行われ、周縁部13に自由表面を有するディスク状ガラスが得られる。
【0036】
次に上記成形型を用いたディスク状ガラスの作製について説明する。情報記録媒体用基板の材料としては、例えば化学強化可能なアルカリ金属酸化物を含むガラス、高速回転時にたわみの少ない高ヤング率のガラス、結晶化させることによってヤング率を高めることができるとともに、研削、研磨仕上げによって平坦かつ平滑な結晶化ガラス基板表面が得られるガラス、あるいは基板自体又は表面に光学薄膜を設けることにより光学フィルターとなる基板材料に適したガラスなどが用いられる。このようなガラスとしては、アルカリ金属酸化物、特に酸化リチウムを含むアルミノシリケートガラス、さらに酸化ジルコニウムを加えたアルミノシリケートガラス、酸化マグネシウムなどの二価成分を含むアルミノシリケートガラスなどが挙げられる。
【0037】
ディスク状ガラスの作製は、次に示す方法により、行うことができる。まず、溶解、清澄、攪拌均一化されたこれらガラス材料からなる溶融ガラスを、流出ノズルから一定の流出速度で連続して排出させ、この溶融ガラス流を切断機によって、常に一定重量のゴブが得られるように周期的に切断する。
【0038】
本発明では、溶融ガラス流を切断機によって行う、熔融ガラスの分離によって熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕を、ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御する。溶融ガラス流を切断機によって切断することで熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕は、切断の仕方によってその寸法や形状をコントロールすることができ、熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕の寸法や形状をコントロールすることで、ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御することができる。本願明細書において、「ディスク状ガラスの表面の中央部に局在する」とは、ディスク状ガラスの表面(円形の表面)の中心から半径方向に15mm以内、すなわち直径で30mm以内の範囲、好ましくは直径で20mm以内の範囲にのみ分離痕が残存することを意味する。ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御することで、ディスク状ガラスの真円度を100μm以内に制御することができる。
【0039】
ディスク状ガラスの真円度の上限は100μmであるが、好ましい真円度は90μm以内、より好ましい範囲は80μm以内、更に好ましい範囲は70μm以内、いっそう好ましい範囲は60μm以内、最も好ましい範囲は50μm以内である。尚、ディスク状ガラスの真円度は、一般的な真円度測定器を用いて測定することができる。例えば、接触式の測定器を用いる場合には、測定器のワークを回転させながら外周部にスタイラスを当てて測定することができる。
【0040】
厚みが1.2mm未満と比較的薄いディスク状ガラスであって、真円度がより一層高いディスク状ガラスを成形するには、加圧方向を向き、プレス前の熔融ガラス塊の中心を通る仮想的な軸に対して、熔融ガラス塊の温度分布を軸対称に近づけることが望まれる。熔融ガラス塊の温度分布が軸対称から外れると、温度が低い部分、すなわち、粘度が高い部分のガラスは上下型の成形面に沿って広がりにくく、反対に温度が高い部分、すなわち、粘度が低い部分のガラスは上下型の成形面に沿って広がりやすいので、プレス成形品の真円度が低下しやすい。
【0041】
熔融ガラス塊の調製は、前述のように、パイプから熔融ガラス流を流出し、熔融ガラス流の先端(下端)からプレス成形品1個分の熔融ガラスを分離することで行われる。その際、熔融ガラス流の下端を下型成形面の中央で受けてから熔融ガラス塊を分離する。こうして、下型成形面の中央部に熔融ガラス塊を配置するが、熔融ガラス塊の平面視形状は円になる。
【0042】
熔融ガラス塊を分離する際、分離箇所においてガラスが局所的に急冷される。分離後、分離箇所の粘度が十分低ければ、表面張力によって分離箇所は熔融ガラス塊本体に吸収されるが、前述のように分離箇所が急冷されて粘度が上昇しているため、分離箇所はプレス後もプレス成形品の表面に分離痕として残る。しかし、例えば、シアブレードと呼ばれる切断刃により熔融ガラス流を切断し、熔融ガラス塊を分離する場合、切断刃によりガラスの熱が急速に奪われ、分離痕として切断痕(シアマークと呼ぶ。)がプレス成形品に残る。シアマークは切断刃で熔融ガラス流を挟み切ることにより生じるから、その形は、切断刃間に沿って細長くなる。このことから、プレス直前の熔融ガラス塊上面に存在する切断による高粘度の部分も熔融ガラス塊表面に沿って細長い形状をしていると推測される。こうした細長い高粘度部分は前述の温度分布の軸対称性を低下させる要因になる。
【0043】
そこで本発明では、シアマークを小さくすることにより、上記高粘度部分も局在化させ、その結果、熔融ガラス塊の温度分布も軸対称に近づける。本発明では、シアマークなどの分離痕をディスク状ガラスの中央部に局在化することにより、プレスによりガラスを均等に押し広げ、真円度が所望の範囲内になるようにする。
【0044】
分離痕の大きさが真円度低下に大きく影響するのは、外周面を型によって規制しないプレス成形(サイドフリー成形という。)である。そして、プレス成形品の肉厚が薄くなると、こうした影響が顕著になる。そこで、本発明は、サイドフリー成形で分離痕を中央部に局在化することにより、平坦性の高いプレス成形品を得るとともに、最大肉厚が1.2mm未満と肉薄で、真円度が100μm以内のディスク状ガラスを得る。
【0045】
前記分離痕の制御は、例えば、パイプから流出する熔融ガラス流を下型の成形面上に供給し、切断刃の形状がV字型を有する一対の切断刃が対向して設けられた切断装置の前記一対の切断刃によって熔融ガラス流を挟んで切断して前記熔融ガラス塊を分離することで行うことができる。V字型を有する一対の切断刃を使用することにより、熔融ガラス流は切断刃で挟まれても一方向にくびれず、ガラス流が細くなりつつ切断されることになる。その結果、分離痕を小さくすることができる。
【0046】
分離痕の大きさを制御する方法についてさらに説明する。熔融ガラス流の分離は、対向する2枚のシアブレードを使用し、これらシアブレードで熔融ガラス流を挟んで切断する。シアブレードはガラスが熱融着しないように冷却することが適当である。上記シアブレードの刃に相当する部分の平面視形状はV字形状、すなわち、2つの辺が所定角度で交わる形状となっている。上記所定角度、すなわち、V字の内角は、例えば、50°〜120°の範囲で適宜調整することができる。V字の内角は、好ましくは70°〜110°の範囲である。上記2つの辺が交わる部分の平面視形状は円弧状もしくは円弧状に近似する形状とすることができ、上記角度が一定の場合、上記円弧の半径を小さくすることによりシアマークの大きさを小さくすることができる。したがって、上記角度と上記円弧の半径を調整することによりシアマークの大きさを調整することができる。
【0047】
ただし、円弧の半径、V字の内角を小さくしすぎるとシアブレードで熔融ガラス流を挟んだときに熔融ガラス流がV字の奥、すなわち円弧状部分に入って行かずに良好な切断ができないことがあるので、この点に配慮して、V字の内角を選択すること適当である。
【0048】
シアマークを小さくする、すなわちシアマークが存在する領域を仮想的な円で囲んだときに前記円の直径を小さくすると、真円度が向上する(真円に近づく)という定性的関係がある。例えば、前記のように、前記円の直径を30mm以下にすると、真円度が向上する。しかし、上記仮想円の直径をいくつにすれば真円度がどの程度向上するかといった定量的関係は使用するガラス、プレス成形品の直径、厚さ、プレス成形の条件によって変わる。したがって、使用するシアブレード、シアマークの大きさについては、V字の内角を一定にして上記円弧の半径が異なる幾種類かのシアブレードを用意し、得られたプレス成形品のシアマークの大きさ、真円度を測定し、真円度が所定の範囲になるシアブレードを選択、使用して製造を行うことが適当である。
【0049】
切断されたゴブは流出ノズル直下で待機している下型により受け取られる。流出ノズルから排出される溶融ガラスの粘度は0.3〜100Pa・s程度であり、下型の温度はゴブの温度よりも低温ではあるが、ゴブ温度が急降下してプレス不能とならない温度に加熱調温される。
【0050】
上記キャストが終わってゴブを載置した下型は上型が待機しているプレス位置に移送されて、上型及び下型によりプレス成形される。この際の上下型温度、プレス圧力、プレス時間は、形成される成形品の周縁部が成形型に触れないような条件で適宜設定する。例えば、上型の温度を250〜550℃、下型の温度を350〜650℃とし、上型温度を前記範囲内で下型温度ないし[下型温度−100℃]の範囲に設定することができる。プレス時の加圧力については数GPa程度を目安にできるが、特にこの範囲に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。
【0051】
プレス成形が終わると成形品上面が上型から離型され、成形品を載置した下型はテイクアウトを行う位置に移送される。なお、プレス位置とテイクアウト20位置の間で下型を停留させて、下型上の成形品の上面を押し型で押圧し、成形品の反りを修正してからテイクアウト位置に下型ごとを移送してもよい。成形品はテイクアウト位置に移送されるまでの間にガラス転移温度付近あるいはガラス転移温度より低い温度にまで冷却される。これはテイクアウトの際に加わる力によって、成形品が変形してしまうのを防ぐためである。テイクアウトは成形品の上面を吸着手段で吸着保持して行われる。テイクアウトされた成形品は、大気中で急冷されたのち、アニール炉に入れられてアニールされる。アニールによって除歪されたディスク状ガラスは、研削工程、あるいは内径外径加工、または結晶化のための熱処理工程へと移される。
【0052】
このようにして作製されたディスク状ガラスの平行度、平坦度はともに、ディスク状ディスク状ガラスの最小肉厚が1.2mm未満、外径が100mm程度であっても10μm以内の範囲に入っており、冷却過程における大きなうねりの発生が解消されている。この平行度、平坦度は、外径95mm、厚さ1mmの基板を得るためにブランクの最小肉厚を1.2mm未満に低減しても、また外径65mm、厚さ0.63mmの基板を得るためにディスク状ガラスの最小肉厚を1.0mmにまで低減しても維持されており、本発明の方法がいかに有効であるかが分かる。
【0053】
ディスク状ガラスが円板状の場合、直径が60〜100mmの範囲のもの、四角形などの多角形の場合においては、一辺の長さが60〜100mmの範囲のものに本発明の方法は好適であるが、加圧方向に対して回転対称なディスク状ガラスの作製に対して特に好適である。
【0054】
次に、上記ディスク状ガラスを用いて情報記録媒体用基板を作製する工程を例に挙げ、ガラス基板の製造方法について説明する。上記ディスク状ガラスに内径外径加工を施した後、研削、研磨加工を施すことにより、基板形状に整えられるとともに平坦かつ平滑な主表面を付与されて基板となる。アルカリ金属酸化物を含むガラスからなる基板の場合、基板をアルカリ金属溶融塩に浸漬させてイオン交換による化学強化を行ってもよい。上記各工程において、適宜、洗浄などの工程を加えることができる。
【0055】
結晶化ガラス基板を得る場合、適宜、研削や内径外径加工などの加工を施したディスク状ガラスを熱処理し、結晶相をアモルファス相中に析出させる結晶化を行い、これに研削、研磨加工を施して、あるいは内径外径加工を加えて基板を得る。上記各工程においても、適宜、洗浄などの工程を加えることができる。
【0056】
いずれの場合も、ディスク状ガラスの厚みを薄くできるとともに、うねりの小さなディスク状ガラスを使用できるので、研削、研磨しろを40%程度低減することができ、省資源、環境負荷の低減、コスト低減、研削、研磨加工時間の短縮化などのメリットが得られる。
【0057】
本発明によれば、最大肉厚が1.2mm未満であり、真円度が100μm以内であり、平坦度が10μm以下であり、かつ外周面が自由表面であるディスク状ガラスを提供することができる。このようなディスク状ガラスは、従来の方法では製造することができなったものである。
【0058】
本発明のディスク状ガラスは、
厚みが1.2mm未満であり、特に上限は、好ましくは1.18mm以下、より好ましくは1.16mm以下、さらに好ましくは1.15mm以下であり、下限は好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは0.9mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、
真円度が100μm以内であり、好ましい真円度は90μm以内、より好ましい範囲は80μm以内、更に好ましい範囲は70μm以内、いっそう好ましい範囲は60μm以内、最も好ましい範囲は50μm以内であり、
平坦度が10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。
【0059】
本発明のディスク状ガラスまたは本発明の製造方法で得られるディスク状ガラスは、研削、研磨等の加工を施すことで情報記録媒体用基板を得ることができる。さらに、この情報記録媒体用基板の主表面に、情報記録層、例えば磁気記録層などを形成して磁気記録媒体を得ることもできる。磁気記録媒体の他、同様にして記録層を設けて、光磁気記録媒体、光メモリなどの情報記録媒体を得ることもできる。また、情報記録媒体の他、光学フィルター基板、この基板表面に光学薄膜(多層膜を含む)を設けた光学素子なども得ることができる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0061】
実施例
ガラス成分として、SiO2、Al23、Li2O、Na2O、ZrO2を含むアルミノシリケートガラス、SiO2、Al23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、ZrO2を含むアルミノシリケートガラスの2種類のガラスについて、以下のようにしてプレス成形品を作製した。両ガラスにおいて同様の結果を得た。
【0062】
まず、所定の組成が得られるように調合したガラス原料を熔融し、清澄、均質化した熔融ガラスをパイプから流出し、熔融ガラス流をプレス成形型の下型成形面の中央で受け、その状態で流出する熔融ガラス流の途中部分を一対のシアブレードで挟んで切断した。こうして、下型成形面の中央にプレス成形品に相当する量の熔融ガラス塊を得た。
【0063】
シアブレードは上記のように平面視形状がV字形状になっており、V字の内角を80°とした。V字が交わる部分の平面視形状は円弧形状になっており、その円弧の半径をRとした。
【0064】
下型成形面の中央に供給した熔融ガラス塊を下型に対向する上型を用いてプレスし、ガラスを円盤状に成形した。このとき、ガラスが伸びる方向、すなわち、円盤の外周にガラスを規制しない。したがって、成形される円盤状のガラスの外周面は自由表面になった。
【0065】
成形したガラスの中央には分離痕、すなわちシアマークが残った。シアマークを包含する仮想的な円のうち、直径が最小の円を考え、この円の直径をφとする。φが小さいほど、シアマークは円盤状のガラス成形品の中央に局在されることになる。
【0066】
下表に、Rに対するφおよび円盤状ガラス成形品の真円度、平坦度を示す。なお、プレス成形品の厚みはすべて1.0mm、シアマークの深さはすべて0.1〜0.2mmである。
【0067】
【表1】

【0068】
なお、シアマークの深さはプレス成形品をシアマークがあるところで割って、その割断面をスケール付ルーペで拡大観察して測定した。
【0069】
このようにして最大肉厚が1.2mm未満、真円度が100μm以内であり、平坦度が10μm以下、外周面が自由表面、すなわち、型に接触することなく固化した面であるディスク状ガラスを得た。
【0070】
次に上記ディスク状ガラスの中心に貫通孔をあけて、外周面、貫通孔の内周面の研削加工を行い、円盤の主表面を研削、研磨して直径65mm、厚さ0.7mmの磁気ディスク(磁気記録媒体)用基板に仕上げた。ディスク状ガラスの最大肉厚が薄く、平坦性、真円度に優れるため、外周面の加工、主表面の加工を省力化することができた。次いで、これら基板を酸、アルカリなどの洗剤を用いて洗浄し、純水ですすいだ後、乾燥させた。乾燥した基板を380に加熱された硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの混合熔融塩に240分、浸漬させて化学強化を行った後、洗浄、乾燥させた。化学強化した基板も化学強化しない基板同様、高い平坦性を有していた。このようにして化学強化した基板と化学強化しない基板を用いて、各基板上に下地層、軟磁性層、磁性層、潤滑層などを形成し、垂直磁気記録方式の磁気ディスク(磁気記録媒体)を作製した。情報記録層は媒体の種類に応じて適宜選択することができるが、Co−Cr系(ここで系とは、表記された物質を含む材料であることを意味する)、Co−Cr−Pt系、Co−Ni−Cr系、Co−Ni−Pt系、Co−Ni−Cr−Pt系、およびCo−Cr−Ta系などの磁性層を形成することができる。下地層としては、Ni層、Ni−P層、Cr層などを形成する。軟磁性下地層は、主に垂直磁気記録ディスクに用いられる下地層であって、磁気ヘッドの垂直磁気記録層(磁性層)への磁化パターン記録を促進する作用を有し、FeTa系軟磁性材料、FeTaC系軟磁性材料などのFe系軟磁性材料、CoZr系軟磁性材料、CoTaZr系軟磁性材料などを用いて軟磁性下地層を形成することができる。保護層としては、カーボン膜などを使用することができ、潤滑層を形成するためにはパーフルオロポリエーテル系などの潤滑剤を使用することができる。以上の各層の形成は公知の方法により行うことができる。
【0071】
なお、ディスク状ガラスを熱処理して結晶化し、上記例と同様、加工して磁気ディスク用基板に仕上げてもよい。この場合、結晶化ガラスの原ガラス、すなわち、熱処理前のガラスとして公知のガラスを用いてディスク状ガラスを成形すればよい。こうして得た結晶化ガラス基板に上記各層を形成して磁気ディスク(磁気記録媒体)とすることもできる。
【0072】
この結果から、Rが8mmのシアブレードを使用し、φを8mm以内に制限することにした。このように分離痕の大きさを制御することによりプレス成形品の真円度を100μm以内にすることができた。
同様にして、Rが7.5mmのシアブレードを使用し、φを7.5mm以内に制限することにした。このように分離痕の大きさを制御することによりプレス成形品の真円度を90μm以内にすることができた。
同様にして、Rが7mmのシアブレードを使用し、φを7mm以内に制限することにした。このように分離痕の大きさを制御することによりプレス成形品の真円度を80μm以内にすることができた。
同様にして、Rが6.5mmのシアブレードを使用し、φを6.5mm以内に制限することにした。このように分離痕の大きさを制御することによりプレス成形品の真円度を600μm以内にすることができた。
同様にして、Rが6mmのシアブレードを使用し、φを6mm以内に制限することにした。このように分離痕の大きさを制御することによりプレス成形品の真円度を50μm以内にすることができた。
いずれの場合も平坦度は10μm以下と十分な平坦性を実現することができた。
【0073】
比較例
次に、プレス成形時にプレス成形型の胴型内面にガラスが達するようにし、得られた円盤状ガラス成形品の外周面が型転写面になるようにプレス成形を行った。得られた円盤状ガラス成形品の平坦度は40μmであり、平坦性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、情報記録媒体用基板等の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ディスク状ガラスの形状の異なる例を示す主表面に対する垂直断面概略図である。
【図2】ディスク状ガラスをプレス成形により作製する様子の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ディスク状ガラス(プレス成形品)
2 ゴブ
3 下型
4 上型
5 胴型
11,11′ 厚肉部
12 薄肉部
13 周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熔融ガラスを分離して熔融ガラス塊を得る工程、および得られた熔融ガラス塊を下型の成形面上に配置し、前記下型と上型を用いてプレスして、外周面が自由表面であるディスク状ガラスを成形する工程を含む、最大肉厚が1.2mm未満であるディスク状ガラスの製造方法において、
前記熔融ガラスの分離によって熔融ガラス塊の表面付近に生じる分離痕を、ディスク状ガラスの表面に残る分離痕がディスク状ガラスの表面の中央部に局在するように制御することで、真円度が100μm以内のディスク状ガラスを得ることを特徴とするディスク状ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記分離痕の制御は、パイプから流出する熔融ガラス流を下型の成形面上に供給し、V字型を有する一対の切断刃が対向して設けられた切断装置の前記一対の切断刃によって熔融ガラス流を挟んで切断して前記熔融ガラス塊を分離することで行うことを特徴とする請求項1に記載のディスク状ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記切断刃のV字型の内角は、50〜120°の範囲内である請求項2に記載のディスク状ガラスの製造方法。
【請求項4】
最大肉厚が1.2mm未満であり、真円度が100μm以内であり、平坦度が10μm以下であり、かつ外周面が自由表面であるディスク状ガラス。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造されたディスク状ガラスまたは請求項4に記載のディスク状ガラスを加工してディスク状の情報記録媒体用基板を作製する情報記録媒体用基板の製造方法。
【請求項6】
ガラスを結晶化させるための熱処理工程をさらに含む請求項5に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により製造した基板上に少なくとも情報記録層を形成することを含む、情報記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−67636(P2009−67636A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238714(P2007−238714)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】