説明

ディスク装置およびその制御方法

【課題】ヘッドの位置制御系の非線形性を適切に測定することが可能なディスク装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】磁気ディスク装置1は、基準信号Sをボイスコイルモータ7に入力するとともに、基準信号Sに起因する高調波成分が抑制された制御信号Sをボイスコイルモータ7に入力し、基準信号Sと、高調波成分が抑制された制御信号Sとがボイスコイルモータ7に入力された状態で得られる誤差信号PESを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの磁気ディスク装置では、ディスク媒体に形成されたトラックに沿ってサーボデータが記録されており、ディスク媒体上に浮遊するヘッドによってサーボデータが読み出される。このため、磁気ディスク装置は、ヘッドがトラックに追従するようにサーボデータに応じてヘッドの位置を制御するフィードバック制御系を、ヘッドの位置制御系として有している。
【特許文献1】特開平11−297013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなヘッドの位置制御系には、非線形要素が含まれることが多いため、系の非線形性を特定することが求められる。例えば、ヘッドの位置に応じて書き込み動作を禁止しようとする場合、ヘッドの位置を得るための誤差信号(PES:Position Error Signal)が非線形性の影響を受けていると、誤差信号からヘッドの正しい位置を得ることができず、書き込み動作を正しく禁止することが困難である。このため、位置制御系の非線形性を特定し、非線形性を補償する関数を作成する必要がある。
【0004】
通常、フィードバックがない系では、系に基準信号を入力し、この基準信号と、系から出力される信号とを比較することで、系の非線形性を特定することができる。
【0005】
しかしながら、ヘッドの位置制御系では、基準信号を入力した場合に、非線形性の影響を受けた信号がフィードバックされることから、出力される信号から非線形性を適切に特定することができない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、ヘッドの位置制御系の非線形性を適切に特定することが可能なディスク装置およびその制御方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のディスク装置の制御方法は、トラックに沿ってデータが記録されたディスク媒体と、前記データを読み出すヘッドと、前記ヘッドを前記ディスク媒体に対して相対移動させるアクチュエータと、前記トラックに対する前記ヘッドの位置誤差を表す誤差信号を受け入れ、前記ヘッドの位置誤差を抑制する前記アクチュエータの制御信号を生成する位置制御回路と、を備えるディスク装置を対象とし、所定周波数の基準信号を前記アクチュエータに入力するとともに、前記所定周波数の高調波成分が抑制された制御信号を前記アクチュエータに入力し、前記基準信号と、前記高調波成分が抑制された制御信号とが前記アクチュエータに入力された状態で得られる誤差信号を測定する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記基準信号の位相と、前記高調波成分が抑制された制御信号の位相とを同期させる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記測定された誤差信号に含まれる前記所定周波数の高調波成分を特定する。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記特定された前記所定周波数の高調波成分に基づいて、制御系の非線形性を補償する関数を作成する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記基準信号は、少なくとも前記トラックの幅だけ前記ヘッドを揺動させる。
【0012】
次に、本発明のディスク装置は、トラックに沿ってデータが記録されたディスク媒体と、前記データを読み出すヘッドと、前記ヘッドを前記ディスク媒体に対して相対移動させるアクチュエータと、前記トラックに対する前記ヘッドの位置誤差を表す誤差信号を受け入れ、前記ヘッドの位置誤差を抑制する前記アクチュエータの制御信号を生成する位置制御部と、所定周波数の基準信号を前記アクチュエータに入力させる基準信号出力部と、前記所定周波数の高調波成分が抑制された制御信号を前記アクチュエータに入力させる高調波成分抑制部と、前記基準信号と、前記高調波成分が抑制された制御信号とが前記アクチュエータに入力された状態で得られる誤差信号を測定する誤差信号測定部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記基準信号の位相と、前記高調波成分が抑制された制御信号の位相とを同期させる位相調整部を更に含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定周波数の基準信号と、この所定周波数の高調波成分が抑制された制御信号とがアクチュエータに入力された状態で得られる誤差信号を測定するので、ヘッドの位置制御系の非線形性を適切に特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る磁気ディスク装置1の構成例を示す。磁気ディスク装置1は、筐体9内に、磁気ディスク2、スピンドルモータ3、磁気ヘッド4、サスペンションアーム5、キャリッジ6、ボイスコイルモータ7およびヘッドアンプ14を収納している。
【0017】
また、磁気ディスク装置1は、筐体9外の基板に、主制御回路10、リードライトチャネル(R/Wチャネル)13およびモータドライバ17を有している。
【0018】
磁気ディスク2は、スピンドルモータ3により回転駆動される。磁気ディスク2には、同心円状に配列する複数のトラック21が形成されている。また、各トラック21には、周方向に沿って所定の周期で配列するサーボデータ領域21sと、それらの間に位置するユーザデータ領域21uとが形成されている。
【0019】
サーボデータ領域21sには、サーボデータが記録されている。サーボデータは、アドレスデータと、バースト信号とを含む。また、ユーザデータ領域21uには、ユーザデータが記録される。
【0020】
磁気ヘッド4は、サスペンションアーム5の先端部に取付けられて、磁気ディスク2上に支持されている。サスペンションアーム5は、筐体9に支承されたキャリッジ6に基端側が取付けられている。ボイスコイルモータ7は、キャリッジ6を旋回駆動することで、磁気ヘッド4を磁気ディスク2上で略半径方向に移動させる。
【0021】
主制御回路10は、マイクロプロセッシングユニット(MPU)と、ROMやRAMなどのメモリとを含む。主制御回路10は、メモリに格納されたプログラムを読み出し、実行することによって、磁気ヘッド4の位置制御やデータの記録再生制御など、種々の制御を実現する。本実施形態においては、主制御回路10が、位置制御回路として機能する。
【0022】
また、主制御回路10は、ハードディスクコントローラ(HDC)と、バッファメモリとを含む。このHDCは、インターフェースコントローラ、エラー訂正回路、バッファコントローラなどを有している。
【0023】
磁気ヘッド4の位置制御において、主制御回路10は、R/Wチャネル13から入力されるサーボデータから磁気ヘッド4の現在位置を特定するとともに、磁気ヘッド4を目標トラック上に位置させるための制御信号を生成し、モータドライバ17へ出力する。モータドライバ17は、制御信号をアナログ変換し、増幅して、ボイスコイルモータ7に出力する。
【0024】
データの記録再生制御において、主制御回路10は、磁気ディスク2に記録すべきユーザデータを外部ホストから受信すると、このユーザデータをR/Wチャネル13へ出力する。また、主制御回路10は、復調されたユーザデータがR/Wチャネル13から入力されると、このユーザデータを外部ホストへ送信する。また、主制御回路10は、ユーザデータをバッファメモリに一時的に格納させる。
【0025】
R/Wチャネル13は、主制御回路10からユーザデータが入力されると、このユーザデータを変調して、ヘッドアンプ14へ出力する。また、R/Wチャネル13は、増幅された再生信号がヘッドアンプ14から入力されると、この再生信号をデジタルデータに変換し、復調して、主制御回路10へ出力する。また、R/Wチャネル13は、再生信号から所定のサンプリング周期でサーボデータを抽出して、主制御回路10へ出力する。
【0026】
ヘッドアンプ14は、変調されたユーザデータがR/Wチャネル13から入力されると、このユーザデータを記録信号に変換して、磁気ヘッド4へ出力する。また、ヘッドアンプ14は、磁気ディスク2から読み出された再生信号が磁気ヘッド4から入力されると、この再生信号を増幅して、R/Wチャネル13へ出力する。
【0027】
磁気ヘッド4は、ヘッドアンプ14から記録信号が入力されると、この記録信号に応じた記録磁界を磁気ディスク2に印加する。これにより、磁気ディスク2に、ユーザデータを表す磁化が記録される。また、磁気ヘッド4は、磁気ディスク2に記録されている磁化から漏れ出る磁界を再生信号として読み出して、この再生信号をヘッドアンプ14へ出力する。
【0028】
図2に、主制御回路10の誤差信号測定モード時の機能構成例を示す。この誤差信号測定モードは、例えば磁気ディスク装置1の製造時などで使用される。
【0029】
主制御回路10は、磁気ヘッド4が読み出したサーボデータから磁気ヘッド4の位置誤差を表す誤差信号PES(Position Error Signal)を生成する誤差信号生成部31と、誤差信号PESに基づいて磁気ヘッド4の位置誤差を抑制する制御信号Sを生成し、ボイスコイルモータ7に対して出力するコントローラ33と、を含むフィードバック制御系を、磁気ヘッド4の位置制御系30として有している。
【0030】
この位置制御系30には非線形要素NLが含まれることから、誤差信号測定モードにおいて、主制御回路10は、位置制御系30の非線形性を特定するために誤差信号PESを測定する。
【0031】
このため、主制御回路10は、位置制御系30の非線形性を特定するための構成として、誤差信号生成部31およびコントローラ33の他に、基準信号出力部41、高調波成分抑制部43、誤差信号測定部45、位相調整部47および加算部49を含んでいる。
【0032】
誤差信号生成部31は、上記R/Wチャネル13から入力されるサーボデータに基づいて磁気ヘッド4の現在位置を特定し、目標トラックと現在位置との差分を求めることで、誤差信号PESを生成する。この誤差信号PESは、サーボデータに含まれるバースト信号から生成される。
【0033】
コントローラ33は、誤差信号生成部31により生成された誤差信号PES(詳細には、後述するように高調波成分抑制部43により高調波成分が抑制された誤差信号PES)に基づいて、ボイスコイルモータ7を駆動するための制御信号Sを生成する。この制御信号Sは、磁気ヘッド4の位置誤差を抑制し、位置制御系30を安定化する。
【0034】
基準信号出力部41は、単一周波数の基準信号Sを位置制御系30に入力させる。(本実施形態では、基準信号出力部41の出力は周波数ωのコサイン波とする)この基準信号Sは、単一周波数の三角関数波となりボイスコイルモータ7を駆動して磁気ヘッド4を揺動させる。
【0035】
具体的には、基準信号Sは、コントローラ33から出力された制御信号Sと加算部49により加算されて、上記モータドライバ17を介してボイスコイルモータ7に入力される。
【0036】
また、基準信号Sは、図4に示すように磁気ヘッド4を少なくともトラック21の幅だけ揺動させるのに十分な振幅を有している。磁気ヘッド4の再生素子4rは、上記コントローラ33の動作により、基本的にはトラック中心21cに位置決めされる。そして、基準信号Sが入力されることにより、再生素子4rは、トラック中心21cを中心に少なくともトラック21の幅に亘って揺動する。これにより、再生素子4rがトラック21の幅に亘ってバースト信号を読み出すことになるので、誤差信号PESと磁気ヘッド4の位置との関係を求めるのに好適である。
【0037】
図2の説明に戻り、高調波成分抑制部43は、周波数ωの高調波成分(2次以上の成分)を抑制するために、位置制御系30内(すなわち、フィードバック経路上)に設けられる。
【0038】
すなわち、周波数ωの基準信号Sがボイスコイルモータ7に入力された場合、位置制御系30に含まれる非線形要素NLによって、周波数ωの高調波成分が位置制御系30内の信号に現れ、信号の波形が歪むことになる。このような高調波成分を含む信号がフィードバックされてボイスコイルモータ7に入力されると、磁気ヘッド4の変位が、コントローラ33の動作によるものなのか、高調波成分の影響によるものなのかが区別できず、非線形性の特定が困難になる。このため、高調波成分抑制部43によって周波数ωの高調波成分を抑制している。
【0039】
具体的には、高調波成分抑制部43は、誤差信号生成部31から入力される誤差信号PESに含まれる周波数ωの高調波成分を抑制して、コントローラ33へ出力する。これにより、コントローラ33から出力される制御信号Sに周波数ωの高調波成分が含まれないようにすることができる。すなわち、制御信号Sは、周波数ωの高調波成分が除かれ、周波数ωの1次成分(周波数ωの波)を主に含むことになるので、基準信号Sと制御信号Sとが加算されたボイスコイルモータ7への入力信号を、周波数ωの波とすることができる。
【0040】
この高調波成分抑制部43は、図3に示すように、定数部61、低域ブーストフィルタ63、繰り返し誤差除去フィルタ65および加算部67を含む。高調波成分抑制部43の出力は、定数部61、低域ブーストフィルタ63および繰り返し誤差除去フィルタ65を通過したフィードバック信号と、誤差信号PESと、が加算部67により加算された信号になる。
【0041】
定数部61は、位置制御系30を安定化するための定数を誤差信号PESに乗じる。この定数は、1よりも小さい正の定数とされ、誤差信号PESに含まれる複数のピーク(主に、周波数ωの高調波成分によるピーク)を細めることで、誤差信号PESの絶対値を低減する。これにより、位置制御系30の安定化が図られる。
【0042】
低域ブーストフィルタ63は、誤差信号PESのうち周波数ωの1次成分の信号強度を抑制するように設定される。これにより、誤差信号PESのうち、周波数ωの1次成分が通過せず、周波数ωの高調波成分が通過する。低域ブーストフィルタ63の伝達関数Lは、下記数式1で表すことができる。
【0043】
【数1】

【0044】
繰り返し誤差除去フィルタ65は、周波数ωの高調波成分が残存した誤差信号PESが入力されると、高調波成分の逆相の信号(すなわち、各次のピークとは逆相のピークを有する信号)を出力する。繰り返し誤差除去フィルタ65の伝達関数Zは、下記数式2で表すことができる。ここで、ft(z)は位相安定用のフィルタを表す。
【0045】
【数2】

【0046】
そして、繰り返し誤差除去フィルタ65から出力される高調波成分の逆相の信号が、加算部55により誤差信号PESと加算されることで、周波数ωの高調波成分が抑制された誤差信号PESが出力されることになる。すなわち、高調波成分抑制部43から出力される誤差信号PESは、周波数ωの高調波成分が抑制されて、0次成分(直流項)および1次成分(周波数ωの波)が残存している。
【0047】
なお、上記低域ブーストフィルタ63を設けずに、周波数ωの1次成分までも除去するようにしてもよい。
【0048】
図2の説明に戻り、位相調整部47は、基準信号Sの位相と、制御信号Sの位相とを同期させる。この位相調整部47は、バンドパスフィルタ51、ピークフィルタ53および加算部55を含む。
【0049】
バンドパスフィルタ51は、誤差信号PESのうち周波数ωを含む帯域を通過させる。また、加算部55は、バンドパスフィルタ51を通過する周波数ωの信号と、基準信号出力部41が発生する周波数ωのコサイン信号とを加算して、ピークフィルタ53に出力する。
【0050】
ピークフィルタ53は、周波数ωの成分を増幅した信号を生成して、出力する。ピークフィルタ53の伝達関数Pは、下記数式3で表すことができる。ここで、D(z)は位相安定用のフィルタを表す。
【0051】
【数3】

【0052】
ここで、ピークフィルタ53は、入力される信号が0となるように出力される信号の位相を調整する。すなわち、ピークフィルタ53は、バンドパスフィルタ51を通過する周波数ωの信号(誤差信号PESに含まれる周波数ωの1次成分)が、基準信号出力部41が発生する周波数ωのコサイン信号を打ち消すような位相および振幅を有するように、基準信号Sの位相および振幅を調整する。
【0053】
これにより、位置制御系30に入力されるPESの位相および振幅を、基準信号出力部41が発生するコサイン信号の位相および振幅と揃えることができ、更に、ボイスコイルモータ7に入力される信号を、周波数ωの波とすることができる。
【0054】
次に、誤差信号測定部45は、このように周波数ωの波の信号がボイスコイルモータ7に入力された状態で得られる誤差信号PESを測定する。ここで、ボイスコイルモータ7には、周波数ωの波の信号が入力されているので、この場合に得られる誤差信号PESには、周波数ωの高調波成分が含まれる。
【0055】
そして、主制御回路10は、測定された誤差信号PESに含まれる周波数ωの高調波成分を特定し、特定された周波数ωの高調波成分に基づいて位置制御系30の非線形性を補償する関数を作成する。なお、この計算は、測定された誤差信号PESを用いて外部のコンピュータ等に行わせてもよい。
【0056】
ここで参考として、磁気ヘッド4が任意のトラック上に位置するときの、誤差信号PESとヘッド位置との実際の関係を、図5に示す。同図において、ヘッド位置の0は、トラック中心21cを表す(図4参照)。この図5に示されるように、誤差信号PESとヘッド位置とは非線形的な関係にあることがわかる。これは、位置制御系30が非線形性を有するためである。
【0057】
このため、誤差信号PESからヘッド位置を求めるためには、位置制御系30の非線形性を補償する必要がある。以下、位置制御系30の非線形性を補償する関数を作成するまでの計算について説明する。
【0058】
まず、上記誤差信号測定部45によって得られた誤差信号PES(以下、xで表す)に含まれる周波数ωの1次成分Aを、フーリエ変換によって求める。この周波数ωの1次成分Aは、下記数式4で表される。この数式4において、nは、サンプリング数である。また、Nは、少なくともトラックの一周期分とすることが好ましい。1次成分の位相は、誤差信号PESの位相が、位相調整部47により、基準信号出力部41が発生するコサイン信号と逆相となるので、コサイン成分のみ計算すれば良い。
【0059】
【数4】

【0060】
これにより、誤差信号PESに含まれる周波数ωの高調波成分Δは、誤差信号PESと周波数ωの1次成分Aとの差分「x−A」として表すことができる。誤差信号PESと高調波成分Δとの関係は、例えば図6のグラフのように表される。
【0061】
次に、高調波成分Δを関数により近似する。本実施形態では、高調波成分Δを3次関数f(x)により近似している。3次関数f(x)は、下記数式5で表される。この数式5において、a0,a1,a2,a3はxの係数である。
【0062】
【数5】

【0063】
ここで、高調波成分Δと3次関数f(x)との差分「Δ−f(x)」を評価関数Eとしたとき、評価関数Eは下記数式6で表される。
【0064】
【数6】

【0065】
この数式6から、評価関数Eを最小にする係数a0,a1,a2,a3を求めることで、高調波成分Δを近似した3次関数f(x)を作成する。このようにして得られる3次関数f(x)は、例えば図7のグラフのように表される。なお、高調波成分Δの近似は、これに限らず、折れ線近似などの他の近似法を用いてもよい。
【0066】
このようにして、誤差信号PESと、高調波成分Δを近似した3次関数f(x)との差分「x−f(x)」を、位置制御系30の非線形性を補償する関数として求めることができる。
【0067】
また、この関数「x−f(x)」を用いて誤差信号PESからヘッド位置を求めるには、係数Kを掛け合わせたK(x−f(x))が所定の基準に合うように、係数Kの値を調整する。
【0068】
例えば、図4において、磁気ヘッド4がトラック中心21cからトラック幅の4分の1だけずれた位置では、誤差信号PESの値がA/(A+B)=C/(C+D)=0.5となることがわかっているので、この点を基準点として係数Kを求める。なお、この位置は、非線形性が最も現れやすいことが知られている。
【0069】
図8に、このように調整されたK(x−f(x))を破線で示す。また、図中の実線は、上記図5に表した誤差信号PESとヘッド位置の実際の関係である。
【0070】
このようにして、測定された誤差信号PESから求めた関数「x−f(x)」によって、位置制御系30の非線形性を補償し、誤差信号PESから磁気ヘッド4の位置を正しく特定できるようになる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態の形式に限定されない。例えば、主制御回路10の機能構成を、図9に示すように、上記位相調整部47を除いて構成してもよい。この場合、誤差信号PESの位相が、基準信号入力部41が発生する信号の位相と合うとは限らないので、測定される誤差信号PESの初期位相を求める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のディスク装置の一実施形態に係る磁気ディスク装置の構成例を表すブロック図である。
【図2】主制御回路の構成例を表すブロック図である。
【図3】高調波成分抑制部の構成例を表すブロック図である。
【図4】磁気ヘッドとトラックの関係を表す説明図である。
【図5】誤差信号PESとヘッド位置との実際の関係を表すグラフである。
【図6】誤差信号PESと、誤差信号PESに含まれる非線形成分Δとの関係を表すグラフである。
【図7】誤差信号PESと、非線形成分Δを近似した関数fとの関係を表すグラフである。
【図8】実際のヘッド位置と、非線形成分Δを近似した関数fとを比較するグラフである。
【図9】主制御回路の変形例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1 磁気ディスク装置(ディスク装置の一例)、2 磁気ディスク(ディスク媒体の一例)、3 スピンドルモータ、4 磁気ヘッド(ヘッドの一例)、4r 再生素子、5 サスペンションアーム、6 キャリッジ、7 ボイスコイルモータ(アクチュエータの一例)、9 筐体、10 主制御回路(位置制御回路の一例)、13 R/Wチャネル、14 ヘッドアンプ、17 モータドライバ、21 トラック、21s サーボデータ領域、21u ユーザデータ領域、21c トラック中心、30 磁気ヘッドの位置制御系(フィードバック制御系)、31 誤差信号生成部、33 コントローラ、41 基準信号出力部、43 高調波成分抑制部、45 誤差信号測定部、47 位相調整部、49 加算部、51 バンドパスフィルタ、53 ピークフィルタ、55 加算部、61 定数部、63 低域ブーストフィルタ、65 繰り返し誤差除去フィルタ、67 加算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックに沿ってデータが記録されたディスク媒体と、
前記データを読み出すヘッドと、
前記ヘッドを前記ディスク媒体に対して相対移動させるアクチュエータと、
前記トラックに対する前記ヘッドの位置誤差を表す誤差信号を受け入れ、前記ヘッドの位置誤差を抑制する前記アクチュエータの制御信号を生成する位置制御回路と、
を備えるディスク装置を対象とし、
所定周波数の基準信号を前記アクチュエータに入力するとともに、
前記所定周波数の高調波成分が抑制された制御信号を前記アクチュエータに入力し、
前記基準信号と、前記高調波成分が抑制された制御信号とが前記アクチュエータに入力された状態で得られる誤差信号を測定する、
ことを特徴とするディスク装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置の制御方法であって、
前記基準信号の位相と、前記高調波成分が抑制された制御信号の位相とを同期させる、
ことを特徴とするディスク装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク装置の制御方法であって、
前記測定された誤差信号に含まれる前記所定周波数の高調波成分を特定する、
ことを特徴とするディスク装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のディスク装置の制御方法であって、
前記特定された前記所定周波数の高調波成分に基づいて、制御系の非線形性を補償する関数を作成する、
ことを特徴とするディスク装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載のディスク装置の制御方法であって、
前記基準信号は、少なくとも前記トラックの幅だけ前記ヘッドを揺動させる、
ことを特徴とするディスク装置の制御方法。
【請求項6】
トラックに沿ってデータが記録されたディスク媒体と、
前記データを読み出すヘッドと、
前記ヘッドを前記ディスク媒体に対して相対移動させるアクチュエータと、
前記トラックに対する前記ヘッドの位置誤差を表す誤差信号を受け入れ、前記ヘッドの位置誤差を抑制する前記アクチュエータの制御信号を生成する位置制御部と、
所定周波数の基準信号を前記アクチュエータに入力させる基準信号出力部と、
前記所定周波数の高調波成分が抑制された制御信号を前記アクチュエータに入力させる高調波成分抑制部と、
前記基準信号と、前記高調波成分が抑制された制御信号とが前記アクチュエータに入力された状態で得られる誤差信号を測定する誤差信号測定部と、
を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項7】
請求項6に記載のディスク装置であって、
前記基準信号の位相と、前記高調波成分が抑制された制御信号の位相とを同期させる位相調整部を更に含む、
ことを特徴とするディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−110597(P2009−110597A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281777(P2007−281777)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】