説明

ディスク装置および同ディスク装置を備えた電子機器

【課題】音声出力手段を備え、回転ディスクを記録媒体として利用するディスク再生装置において、ディスク装置における回転騒音の影響を相対的に低減できるようにする。
【解決手段】デリスクの再生が開始されると、初期設定の回転速度でディスクからデータを読み取って一時記憶用のバッファメモリに保存し(S2)、順次音声信号データを読み出してデコードし(S3)、DSPにより音量調整や音質調整その他のデジタル処理を施し(S4)、オーディオ出力回路に出力する(S5)。バッファメモリのデータの残量が所定量以下になると、音声出力の設定レベルに対応したディスクモータの回転速度を算出(S8)し、算出した値にディスクモータの回転速度を制御(S9)する。
出力音量が大きいときにディスクの回転速度を速くするので、騒音を相対的に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも音声信号データを再生するディスク装置および同ディスク装置を備えたAV機器やパソコン装置などの電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVDなどの光ディスクあるいはハードディスクなどの記録媒体に記録された音声信号/映像信号データをパソコンなどのデータ処理装置を用いて再生し音声出力手段(スピーカ等)から音声信号を出力し、また、映像信号を表示装置に表示して視聴することが行なわれている。再生と共にこれら音声信号/映像信号のデータをディスク装置に記録することも行なわれている。
また、パソコンとは別にこのような音声信号/映像信号の記録再生のためのディスク装置や、このようなディスク装置を内蔵したAV機器などの電子機器も普及している。
このようなディスク装置等により音声信号データを記録したディスクを再生する場合、通常、ディスクから読み出したデータをバッファメモリに一時的に記憶し、当該バッファメモリから読み出したデータを音量調整、音質調整等の処理をして実際に視聴するAV信号を得ている。そのため、ディスクから大量のデータを高速に読み出すときはディスクの回転速度を上げることになるので、モータその他のディスクの回転機構の回転に伴う振動、風切音等の騒音が発生する。
更に、前記のようなディスク装置あるいはディスク装置を内蔵した電子機器は、運転に伴って、モータ、光ピックアップ、アンプ、電源装置、その他の機材からの発熱を冷却するために冷却ファンも備えており、ディスク装置と併せ、これらの回転機構から発生する騒音も無視できない。
【0003】
ディスク装置等における上述したような回転騒音についての対策技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、音量調整ボリュームを用いて光ディスクの回転速度を調整するものがある。
【特許文献1】特開平2004−334981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に見られる先行技術の開示は、単に光ディスクの回転速度の調整に、音量調整ボリュームを兼用するというものに過ぎず、音声信号の音量調整レベルとは何ら関連していない。また、冷却ファンから発生する騒音については何ら言及していない。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、音声出力手段を備えたディスク装置等において、出力手段から出力される音量レベルに対応してディスクの回転速度や、冷却ファンの回転速度を制御することにより回転機構の騒音の影響を相対的に低減できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題を解決するために以下の技術手段を備えることを特徴とする。
【0007】
第1の技術手段は、少なくとも音声信号データを記録したディスクを再生するディスク装置であって、前記ディスクを回転するモータを駆動制御するディスク回転速度制御部と、前記ディスクから読み出したデータを一時的に記憶するバッファメモリと、該バッファメモリから読み出した音声信号データを処理する音声信号データ処理部と、前記ディスク装置の各部を制御するシステム制御部と、再生した音声信号を出力する音声出力手段を備え、前記システム制御部は前記ディスクの回転速度を前記音声信号データ処理部が設定した音声出力レベルに基づいた回転速度に制御することを特徴としたものである。
【0008】
第2の技術手段は、前記ディスク再生の起動時にディスクの回転速度を回転に伴う騒音レベルが所定の値以下となる初期回転速度に制御することを特徴としたものである。
【0009】
第3の技術手段は、前記バッファメモリが記憶している音声信号データ量を検知し該データ量が所定値以下の場合に前記ディスク回転速度を前記音声出力レベルに基づいた回転速度に制御することを特徴としたものである。
【0010】
第4の技術手段は、所定の回転速度で運転される冷却ファンを備え、当該冷却ファンの回転速度を前記音声出力レベルに基づいて前記所定の回転速度よりも増速する冷却ファンを備えることを特徴としたものである。
【0011】
第5の技術手段は、前記音声出力レベルの設定値が所定値よりも高い場合に前記冷却ファンの運転速度を増速する冷却ファンを備えることを特徴としたものである。
【0012】
第6の技術手段は、温度センサを備え、前記冷却ファンの増速運転状態において前記温度センサが所定の温度以下に温度が低下したことを検知した場合、前記冷却ファンの回転速度を減速又は停止する冷却ファンを備えることを特徴としたものである。
【0013】
第7の技術手段は、上記ディスク装置を備えたことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、音声出力の設定レベルが高く、出力音量レベルが大きいときには音量に対してディスクの回転に伴う騒音は相対的に低くなるので、回転速度を高めて高速にデータの読み取りを行い、また、冷却ファンについても定常の運転速度よりも増速して冷却効果と高めるものである。
また、出力音量レベルが低いときには騒音の影響が相対的に高くなり無視できなくなるので回転速度を低く制御し、あるいは、回転騒音が気にならない程度の初期回転速度で運転することにより、ノイズの影響を低減することができる。
【0015】
また本発明によれば、冷却ファンの増速運転により冷却能力が増大し、温度が低下すれば温度センサが冷却ファンの運転を(一部)停止又は減速することが可能であり、冷却ファンによる騒音を低減することができなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、DVD(次世代DVDを含む)やCD−Rなどの光ディスクに記録されている音声信号データを再生するディスク装置の場合を例にとって説明する。
図1は、音声信号データを再生するディスク装置の構成を示すブロック図である。ディスク装置は、各部の制御をつかさどるシステム制御部11、ディスクdを回転させるディスクモータ12、システム制御部11からの制御信号によりディスクモータ12の回転を制御するディスクモータ制御部13、再生する曲やその順番の指定、音量調整、音質調整その他各種の設定や指定を行う操作部14、システム制御部11からの制御信号に基づいてディスクdからレーザ光を利用してデータを読み取る光ピックアップ15、ディスクdから読み取ったデータを一時記憶するバッファメモリ16、バッファメモリに記憶した音声信号データを順次取り出してデコードするデコーダ17、デコードした音声信号データに対し音量調整や音質調整その他のデジタル処理を施す音声信号用のDSP(Digital Signal Processor)18、デジタル処理された音声信号データをアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータ19、アナログ音声信号を増幅して音声出力手段(スピーカ)21を駆動するオーディオ出力回路20、冷却ファンモータ制御部22、冷却ファン装置23を備えている。
なお、冷却ファン部は、ディスク装置の起動と連動して連続運転する冷却ファンと、装置の温度によって起動する冷却ファンが必要に応じ設定される。
【0017】
図2は、上述したディスク装置におけるシステム制御部11が行うディスクの回転速度制御の処理フローの1例について説明するフローチャートである。再生が開始されると、最初にディスクからデータを読み出すときの回転速度として騒音レベルが所定の値以下となる速度を初期値として設定し(ステップS1)、回転するディスクdから音声信号データを読み取って一時記憶用のバッファメモリ16に記憶する(ステップS2)。続いてバッファメモリ16に記憶されているデータを順次読み出してデコーダ17によりデコードし(ステップS3)、デコードした音声信号データをDSP18により音量調整や音質調整その他のデジタル処理を施す(ステップS4)。続いてデジタル処理した音声信号データをD/Aコンバータ19によりアナログ音声信号に変換し、変換した音声信号をオーディオ出力回路20に出力する(ステップS5)。
【0018】
ステップS6において、出力すべきデータすなわち再生するデータの有無を判断し、出力すべきデータが有る場合(ステップS6、YES)は、バッファメモリの記憶データ残量が所定量以下になったか否かを調べ、所定量以下になっていない場合(ステップS7、NO)は、ステップS3に戻り、バッファメモリ16から再びデータを読み出しステップS5まで同様の処理を繰り返す。
【0019】
ステップS7において、バッファメモリ16に記憶されているデータの残量が所定量以下になったと判定された場合(ステップS7、YES)は、ステップS8に進み、ユーザ操作により操作部14の指示により設定された音声出力レベルに基づいてディスクモータの回転速度を算出し(ステップS8)、算出した値に基づいてディスクモータ12の回転速度を制御する(ステップS9)。すなわち、音声出力手段21から出力される音量に応じたディスクモータの回転速度によって以後のデータをディスクdから読み出してバッファに保存し(ステップS2)、同様にステップS6で出力すべきデータが無いと判断されるまで上記のステップを繰り返えし出力音量レベルに応じたデスク回転速度でデータを読み出す。
出力すべきデータが無くなった場合(ステップS6/N)、音声出力処理を完了する。
【0020】
なお、図2のフローチャートには示していないが、ステップS8における回転速度の算出において、後述する冷却ファンの運転状況を含めてもよい。温度センサにより運転が制御される冷却ファンが運転中の場合、又は同冷却ファンが増速運転(後述)している場合には騒音レベルが高くなるので、ディスクの回転速度は相対的に低く算出されることになる。
【0021】
図3は、冷却手段として冷却ファンを備えたディスク装置/電子機器の実施形態における、冷却ファンの制御について示すフローチャートである。
ディスク装置等に設けられる冷却ファンには、通常、例えばCPUの冷却ファンのように装置の動作中は常に所定の冷却能力が要求され連続して運転することが必須の冷却ファンと、装置の温度を検出する温度センサの動作により運転する冷却ファンの2種類が存在する。
以下では、装置の温度によって冷却能力を可変できる冷却ファンを対象に説明する。
装置の電源がオンになると、あらかじめ定めた冷却ファンを所定速度で運転駆動(ステップS11)する。温度センサが装置の温度をチェック(ステップS12)し、第1の所定温度(閾値)以上を検出(ステップS13、YES)すると、全冷却ファンの運転を駆動し冷却ファンは定常運転(ステップS14)となり、所定の冷却能力で運転する。
この状態でディスク再生の出力音量レベルの設定値をチェック(ステップS15)し、所定値(閾値)以上(ステップS16、YES)であれば冷却ファンの速度を増速し(ステップS17)冷却能力を増大する。つまり、出力音量が大であれば、冷却ファンの発する騒音増加の影響が低減される。
これにより冷却能力が所定量以上に増大するので温度が低下し、温度センサが第2の所定の温度(閾値)以下に低下したことを検知する(ステップS18、YES)と冷却ファンの一部の運転を停止(ステップS19)する。これにより、騒音レベルが低下する。一方、温度が低下してない状態(ステップS18、NO)ではファンの増速運転を継続するが、出力音量レベルの設定が前記所定値より低くなった(ステップS21、NO)場合、騒音を低減するために増速運転中の冷却ファンの速度を前記所定の速度に減速し(ステップS20)所定の冷却能力で定常運転する。電源がオフになると制御は終了するが、温度センサが所定の温度以下の温度低下を検出するまで、一部の冷却ファンの運転を継続するようにしてもよい。
【0022】
上記の説明では、ステップS11で装置の起動(電源オン)により一部の冷却ファンの運転を開始するものとしたが、温度センサが第1の所定温度以上の温度を検出するまでは全冷却ファンの運転を停止し、当該温度を検出した時に全冷却ファンの運転を開始してもよい。あるいは、起動と同時に全冷却ファンを所定の速度の定常運転(ステップS14の状態)で開始してもよい。
また、ステップS17で増速運転するファンを出力音量レベルに応じて部分的に増加してもよい。増速運転により温度が低下した場合、ステップS19で部分的又は全体のファンの回転速度を所定速度に減速したり、一部のファンを減速し、一部のファンの運転を停止したりすることができる。
要するに、出力音量レベルの設定が所定値以上の場合、騒音レベルが上昇しても影響がない範囲で、必要な冷却能力を供給する定常状態の運転の冷却ファンの回転速度を増速して冷却能力を増大させ、それによって温度が低下し、温度センサが第2の所定の温度に低下したことを検出したときには当該冷却ファンの回転速度を所定の速度に減速、又は運転を一部停止し、ノ騒音を低減するものである。したがって、増速する冷却ファンの対象をすべての冷却ファンとすることもできる。
更に、前述のディスクの回転速度を増速する場合、上述の冷却ファン装置の運転状況を考慮して増速速度を算出するようにしてもよい。また、冷却ファンの速度を出力音量に基づいて連続的に可変してもよい。
【0023】
以上、本発明について、記録媒体として光ディスクを利用するディスク再生装置を例に説明したが、本発明は、記録媒体として、光磁気ディスクを使用するMOやMDあるいは磁気ディスクを使用するハードディスクやフレキシブルディスクを利用するディスク再生装置においても適用できることはいうまでもない。
また、冷却ファンはディスク装置を内蔵したAV機器全体の冷却も対象にしていることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるディスク装置の一実施形態例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明によるディスク装置の一実施形態例を示すフローチャートである。
【図3】冷却ファン装置を備えたディスク装置等の冷却ファンの制御について示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
11…システム制御部、12…ディスクモータ、13…ディスクモータ制御部、14…操作部、15…光ピックアップ、16…バッファメモリ、17…でコーダ、18…オーディオ用DSP、19…D/Aコンバータ、20オーディオ出力回路、21…音声出力手段、22…冷却ファンモータ制御部、23…冷却ファン部、23a…冷却ファンモータ、23b…冷却ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも音声信号データを記録したディスクを再生するディスク装置であって、前記ディスクを回転するモータを駆動制御するディスク回転速度制御部と、前記ディスクから読み出したデータを一時的に記憶するバッファメモリと、該バッファメモリから読み出した音声信号データを処理する音声信号データ処理部と、前記ディスク装置の各部を制御するシステム制御部と、再生した音声信号を出力する音声出力手段を備え、前記システム制御部は前記ディスクの回転速度を前記音声信号データ処理部が設定した音声出力レベルに基づいた回転速度に制御することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記ディスク再生の起動時にディスクの回転速度を回転に伴う騒音レベルが所定の値以下となる初期回転速度に制御することを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記バッファメモリが記憶している音声信号データ量を検知し該データ量が所定値以下の場合に前記ディスク回転速度を前記音声出力レベルに基づいた回転速度に制御することを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
所定の回転速度で運転される冷却ファンを備え、当該冷却ファンの回転速度を前記音声出力レベルに基づいて前記所定の回転速度よりも増速することを特徴とする請求項1〜4のうちの1に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記音声出力レベルの設定値が所定値よりも高い場合に前記冷却ファンの運転速度を増速することを特徴とする請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
温度センサを備え、前記冷却ファンの増速運転状態において前記温度センサが所定の温度以下に温度が低下したことを検知した場合、前記冷却ファンの回転速度を減速又は停止することを特徴とする請求項5又は6に記載のディスク装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちの1に記載のディスク装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−159103(P2008−159103A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343821(P2006−343821)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】