説明

ディスク装置

【課題】トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができるように構成されたディスク装置を提供する。
【解決手段】ディスクを載置すべきトレイ2と、トレイ2を収容する筐体1とを備え、筐体1に対するトレイ2の排出及び収容により前記ディスクの出し入れを行うように構成されたディスク装置において、トレイ2を筐体1から排出したときに、トレイ2に載置されたディスクを傾斜させる傾斜手段を備えている。前記傾斜手段は、内側トレイ21に設けられ、筐体1の側に突設された係合突起21b,21bと、筐体1に設けられ、係合突起21b,21bが係合する係合溝13,13とを有してなる。トレイ2の排出に伴う係合位置の移動に応じて内側トレイ21を外側トレイ22に対して回動させて、前記ディスクを傾斜させるように構成してあるから、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイ2へのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクを載置するトレイの筐体に対する排出及び取入によりディスクの出し入れを行うディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AV機器、パーソナルコンピュータ等の情報機器及び携帯音楽プレーヤ等の携帯機器において、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)、BD(ブルーレイディスク)等のディスクに対してデータの再生又は記録を行うCD、DVD、BD装置等のディスク装置が広く用いられている。
【0003】
このようなディスク装置は、一般に、ディスクを載置すべきトレイと、該トレイを収容する筐体と、ディスクの記録面にレーザ光等を照射してデータを再生又は記録する光ピックアップと、筐体に対するトレイの排出又は取入を行うトレイ移動手段とを備えている。トレイへのディスクの取付け(又は取外し)は、トレイを筐体から排出して、トレイの一面に形成された凹面である載置面にディスクを載置する(又はトレイの載置面に載置されたディスクを掴んで取外す)ことによりなされる。
【0004】
このようにトレイへのディスクの取付け又は取外しを行うときに、ディスクがトレイの載置面に平行をなして置いてあるだけの場合、使用者がディスクを着脱しにくいという問題があった。そこで、トレイへのディスクの着脱のしにくさを改善すべく構成されたディスク装置が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
特許文献1に開示されたディスク装置は、ディスク装置の内部に組み込まれたガイドレールと、該ガイドレールに沿ってスライドし、その一面にディスクが載置されるべきトレイとを備え、該トレイのディスクを載置する載置面の後方端には、奥側を低くした傾斜面をもつ傾斜部が設けてある。このディスク装置においては、このような傾斜部を設けているから、ディスクの一側を低く傾斜させた状態で、ディスクを一側からディスク装置の内部に挿入することにより、筐体の入口のコーナに当たることなくトレイの載置面にディスクを容易に取付けることができる。
【0006】
特許文献1に係るディスク装置においては、ディスクをトレイから取外すときに、ディスクのトレイの載置面の後方端までは手が入らないため、ディスクのトレイの載置面の前方側、換言すると排出方向の側からディスクを掴む必要がある。ところが、ディスクのトレイの排出方向の側は、ディスクとトレイの載置面との間に隙間が殆どないため、ディスクを掴みにくく、ディスクの取外しがしにくいという問題があった。
【0007】
特許文献2に開示されたディスク装置は、ディスクを載置するトレイと、該トレイの排出及び取入を行う本体と、トレイ内に設けられた可動部材とを備え、トレイを本体から排出したときに、前記トレイに載置されたディスクを前記可動部材によりトレイから浮上させるように構成してある。より詳しくは、L字型の形状を有し、その両端及び曲部に同方向に突出する突起部を設け、長辺部分の突起部間に支点を設けた可動部材を、長辺がトレイの移動方向に沿うように、突起部がトレイの載置面よりも上方に突出可能なようにトレイ内に設けてある。この構成により、トレイを排出したときに、可動部材の一端の突起部が本体の上部カバーに設けた突設部に接触して、可動部材の一端の側が押し下げられ、支点を介して可動部材の他端及び曲部の突起部が押し上げられ、他端及び曲部の少なくとも一方によりディスクが押し上げられる。この結果、ディスクとトレイの載置面との間に隙間が生じるから、ディスクを掴み易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−296044号公報
【特許文献2】特開平8−87797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献2に係るディスク装置においては、本体の上部カバーに設けられた突設部の突設高さに応じて一端の突起部の押し下げ量が定まるが、前記突設部の突設高さをあまり高くすることはできないから、可動部材の回動角度、換言するとディスクのトレイの載置面から浮上して生じる隙間をあまり大きくすることはできない。また、特許文献2の実施例に記載の如く、ディスクのトレイの後方側を該トレイの載置面から浮上させるように構成してある場合、ディスクのトレイの前方側を浮上させる場合と比較してディスクを掴みにくいという問題があった。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができるように構成されたディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るディスク装置は、ディスクを載置すべきトレイと、該トレイを収容する筐体とを備え、該筐体に対する前記トレイの排出及び取入により前記ディスクの出し入れを行うように構成されたディスク装置において、前記トレイを前記筐体から排出したときに、前記トレイに載置されたディスクを傾斜させる傾斜手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、ディスクを載置すべきトレイを筐体から排出したときに、ディスクを傾斜させる傾斜手段を設けているから、該傾斜手段を適切に構成することにより、例えば、ディスクのトレイの排出方向の側、換言すると使用者の側が上側になるようにディスクを傾斜させることが可能となり、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【0013】
本発明に係るディスク装置は、前記トレイは、前記ディスクの少なくとも一部が載置される第1トレイと、該第1トレイを、前記トレイの移動方向に略直交する軸回りに回動可能に支持する第2トレイとを備えてなり、前記傾斜手段は、前記筐体及び第1トレイの一方に設けられ、他方の側に突設された突起と、前記他方に設けられ、前記突起が係合する係合溝とを有してなり、前記トレイの排出に伴う係合位置の移動に応じて前記第1トレイを前記第2トレイに対して回動させて、前記ディスクを傾斜させるように構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、ディスクの少なくとも一部が載置される第1トレイと、第1トレイを軸回りに回動可能に支持する第2トレイとによりトレイを構成すると共に、筐体及び第1トレイの一方に他方の側に突設された突起を、他方に該突起に係合する係合溝を夫々設けている。トレイを筐体から排出したときに、該トレイの排出に伴って、係合位置が移動し、係合溝の形状に応じた方向の力が筐体から第1トレイに作用する。突起及び係合溝を適切に設けることにより、第1トレイをトレイの移動方向に略直交する軸回りに第2トレイに対して回動させて、例えば、ディスクのトレイの排出方向の側が上側になるように、ディスクを傾斜させることが可能となる。この結果、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【0015】
本発明に係るディスク装置は、前記突起は前記第1トレイに設けてあり、前記係合溝は前記筐体の内面に設けてあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、第1トレイに前記突起を設け、筐体の内面に前記係合溝を設けている。係合溝を筐体に設けているから、トレイの移動方向に交叉する方向に設ける係合溝の傾斜部をトレイの移動方向に直交する方向の適長に亘って形成することができ、ディスクの傾斜を容易に大きくすることができる。この結果、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【0017】
本発明に係るディスク装置は、前記突起は、前記第1トレイの前記トレイの排出方向の反対側に前記軸に離隔して設けてあり、前記係合溝は、前記トレイの移動方向に沿って設けられた直線部と、該直線部の前記トレイの排出方向の側の一端から前記直線部に交叉する方向に下向きに延設された傾斜部とを有してなることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、第1トレイの前記トレイの排出方向の反対側に前記軸に離隔して突起を設けており、前記トレイの移動方向に沿って設けられた直線部と、該直線部の前記トレイの排出方向の側の一端から前記直線部に交叉する方向に下向きに延設された傾斜部とを有してなる係合溝を筐体の内面に設けている。トレイを筐体から排出したときに、突起の係合溝との係合位置が係合溝の傾斜部にあるとき、突起は、傾斜部から力を受けつつ傾斜部に沿って移動するから、第1トレイは、トレイの移動方向に直交する軸回りに第2トレイに対して回動して、トレイの排出方向の側が上側になるように傾斜する。これにより、トレイの排出方向の側が上側になるようにディスクを傾斜させることができ、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【0019】
本発明に係るディスク装置は、前記傾斜手段は、前記トレイに載置されたディスクの前記トレイの排出方向の側を押上げる押上部と、該押上部に離隔して設けられた突起と、前記押上部及び突起間に設けられ、前記トレイに回動自在に支持される軸とを有する可動部材と、前記筐体の内面に設けられ、前記可動部材の突起が係合する係合溝とを備えてなり、前記トレイの排出に伴う係合位置の移動に応じて前記ディスクを前記押上部により押上げて傾斜させるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、トレイに載置されたディスクの前記トレイの排出方向の側を押上げる押上部と、該押上部に離隔して設けられた突起と、押上部及び突起間に設けられた軸とを有する可動部材の突起を筐体の内面に設けられた係合溝に係合させてある。トレイを筐体から排出したときに、該トレイの排出に伴って、係合位置が移動し、係合溝の形状に応じた方向の力が筐体から可動部材の突起に作用し、押上部によりディスクのトレイの排出方向の側が上方に押上げられ、使用者の手前側が浮き上るようにディスクを傾斜させることができる。また、係合溝を筐体に設けているから、トレイの移動方向に交叉する方向に設ける係合溝の傾斜部をトレイの移動方向に直交する方向の適長に亘って形成することができ、ディスクの傾斜を容易に大きくすることができる。この結果、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トレイを筐体から排出したときに、トレイに載置されたディスクを傾斜させるように構成してあるから、使用者がディスクを掴み易くなり、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の模式的外観斜視図である。
【図2】ディスク装置の模式的平面図である。
【図3】ディスク装置の模式的側面図である。
【図4】ディスク装置の一部の模式的分解斜視図である。
【図5】トレイが筐体に収容された状態を示すディスク装置の模式的側面図である。
【図6】トレイ2の模式的下面図である。
【図7】図2の VII−VII 矢視から見た係合溝の形状を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るディスク装置のトレイの模式的下面図である。
【図9】トレイの模式的側面図である。
【図10】可動部材の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るディスク装置の模式的外観斜視図である。図2は、ディスク装置の模式的平面図である。図3は、ディスク装置の模式的側面図である。図1乃至3においては、ディスクを載置するトレイが筐体から排出された状態を示している。なお、図2においては、説明の便宜上、筐体の天板の図示を省略している。
【0024】
図中1は、前側に矩形開口を有する筐体である。筐体1は、矩形状をなす底板11a及び該底板11aに立設された周壁11bを有するローディングベース11と、該ローディングベース11の底板11aの反対側に取着された矩形状をなす天板12とを備えている。天板12の内面には、後述するターンテーブルと共にディスクを所定位置に挟持するクランパ12aが設けてある。
【0025】
この筐体1には、ディスクを載置すべきトレイ2が取入られ、収容される。トレイ2は、矩形板状であり、筐体1の矩形開口から前後方向に移動可能なように天板12と平行をなして筐体1に取付けてある。トレイ2の上面には、円形に凹ませてなるディスクを載置する載置面2aが設けてある。トレイ2は、載置面2aの中央に設けられた円形切欠部と、該円形切欠部の一部からトレイ2の移動方向に沿って後側に延設された矩形切欠部とからなる切欠部2bを有している。なお、この切欠部2bは、ディスクの径方向にトラバース動作を行う後述する光ピックアップが挿通可能なように適切に設けてある。
【0026】
トレイ2の下面には、トレイ2の移動方向に沿って適長に亘ってラック2cが設けてある。ラック2cには、筐体1のローディングベース11に設けられた駆動モータ(図示せず)により駆動されるピニオン7が噛合している。該ピニオン7の回転がピニオン7とラック2cとの噛合部においてラック2cの長手方向の移動に変換される。ピニオン7が一方向(図2において反時計回り)に回転したとき、該ピニオン7に噛合するトレイ2のラック2cが筐体1の矩形開口から前側に突出する方向に移動し、トレイ2が筐体1から排出される。一方、ピニオン7が他方向(図2において時計回り)に回転したとき、ラック2cが逆方向に移動し、トレイ2が筐体1に収容される。
【0027】
またトレイ2の下面には、後述するシフタが係合するガイド溝2dが設けてある。トレイ2が駆動モータの回転に応じて移動したときに、このトレイ2の移動に伴う係合位置の移動に応じて、トレイ2の移動方向に直交し、トレイ2の載置面2aに平行をなす方向に前記シフタが移動する。詳細については後述する。
【0028】
このディスク装置は、トレイ2が筐体1に収容されたとき、ディスクの記録面へのデータの再生又は記録を行うべく、トレイ2に載置されたディスクを筐体1の天板12に設けられたグランパ12aの位置まで移動させて保持するように構成してある。図4は、ディスク装置の一部の模式的分解斜視図である。
【0029】
筐体1の内部には、ディスクを所定位置に保持するクランプ機構3が設けてある。クランプ機構3は、スピンドルモータ31と、該スピンドルモータ31の出力端に設けられ、スピンドルモータ31の回転に伴い回転するターンテーブル31aと、矩形状の開口を有し、スピンドルモータ31を支持する矩形状の支持板32と、該支持板32に前記開口を挟んで並設された2本の案内軸33,33を介してディスクの径方向にトラバース動作可能に搭載され、ディスクの記録面に対してデータの再生又は記録を行う光ピックアップ34とを備えている。支持板32の4隅に設けられた穴には、弾性筒体35,35…が係止してある。このクランプ機構3は、支持板32のターンテーブル31aの反対側の弾性筒体35,35に、ローディングベース11の底板11aに立設された筒体を内嵌して、該筒体の内面に設けられた雌ネジに雄ネジを螺着することにより、ローディングベース11の底板11aに取着してある。
【0030】
このクランプ機構3の支持板32のターンテーブル31aの側には、ターンテーブル31aを昇降させるリフタ4が連結してある。リフタ4は略U字形に形成してある。リフタ4の両側面部の端部には枢軸4a,4aが外向きに突設してある。リフタ4の底面部には適長離隔して2つの係合凸部4c,4cが外向きに突設してある。リフタ4の屈曲部には2つの筒体4b,4bが枢軸4a,4a及び係合凸部4c,4cに直交する方向に立設してある。リフタ4の枢軸4a,4aは、ローディングベース11の周壁11bの内面に設けられた穴に内嵌してある。このリフタ4は、支持板32のターンテーブル31aの側の弾性筒体35,35に、リフタ4に立設された筒体4b,4bを内嵌して、該筒体4b,4bの内面に設けられた雌ネジに雄ネジを螺着することにより、支持板32のターンテーブル31aの側に連結してある。これにより、リフタ4が枢軸4a,4a回りに揺動したときに、この揺動に応じて支持板32のターンテーブル31aの側が昇降することになる。
【0031】
このリフタ4には、該リフタ4を枢軸4a,4a回りに揺動させるシフタ5が係合している。シフタ5は、筐体1のローディングベース11の底板11aに、トレイ2の移動方向に直交し、トレイ2の載置面2aに平行をなして移動することが可能なように保持してある。シフタ5は、トレイ2の移動方向に直交する方向に形成された2つのカム溝5a,5aと、トレイ2の移動方向に直交する方向に沿って適長に亘って設けられ、ピニオン7に噛合可能なラック5bと、トレイ2の載置面2aに直交する方向に突設された係合凸部5cとを備えている。カム溝5a,5aには、リフタ4の係合凸部4c,4cが係合している。一方、シフタ5の係合凸部5cは、トレイ2の下面(載置面2aの反対側の面)に設けられたガイド溝2dに係合させてある。これにより、トレイ2の移動に応じて、シフタ5がトレイ2の移動方向に直交し、トレイ2の載置面2aに平行をなす方向に移動する。そして、このシフタ5の移動に応じて、リフタ4が枢軸4a,4a回りに揺動する。
【0032】
以下、トレイ2が筐体1から排出された状態から筐体1の内部に収容されるときの動作を例に説明する。図5は、トレイ2が筐体1に収容された状態を示すディスク装置の模式的側面図である。トレイ2が排出された状態において、シフタ5の係合凸部5cは、トレイ2のガイド溝2dの図2に示す位置に係合しており、シフタ5はピニオン7に最も離隔した位置にある。このとき、リフタ4の係合凸部4c,4cはカム溝5a,5aの底板11aの側の一端に係合しており、図3に示すように、リフタ4に連結されたクランプ機構3は、支持板32のターンテーブル31aの側が天板12と最も離隔した位置にある。
【0033】
この状態からトレイ2が駆動モータの回転に応じて筐体1の内部に向けて移動したときに、シフタ5は係合凸部5cが係合するガイド溝2dに沿ってX方向(図4に矢符にて示す)に移動する。このシフタ5のX方向の移動に伴って、リフタ4の係合凸部4c,4cのカム溝5a,5aとの係合位置が、カム溝5a,5aに沿って上側(天板12の側)に移動する。なお、係合位置が上側に移動するときに、ラック5bがピニオン7に噛合するようにしてある。リフタ4は、この係合位置の上側への移動に伴って、ラック5bを介してシフタ5に伝達されたピニオン7の駆動力により、カム溝5a,5a及び係合凸部4c,4cを介して、係合凸部4c,4cの側が天板12に向けて押し上げられ、図4に矢符にて示す方向に枢軸4a,4a回りに回動する。この結果、支持板32のターンテーブル31aの側が天板12に向けて上昇し、ターンテーブル31aがトレイ2に載置されたディスク100をクランパ12aに向けて押圧し、図5に示すように、ディスク100が、クランパ12a及びターンテーブル31aにより挟持される。そしてディスク装置は、ディスク100を所定の回転速度にて回転させ、光ピックアップ34をスレッドモータ36の駆動力により案内軸33,33を介してディスク100の径方向にトラバース移動させて、ディスク100の記録面に対してデータの再生又は記録を実行する。
【0034】
このように構成された本発明に係るディスク装置は、トレイ2を、ディスクが載置される載置面2aを一部含み、矩形板状をなす第1トレイとしての内側トレイ21と、該内側トレイ21を回動自在に支持する第2トレイとしての外側トレイ22とを備え、内側トレイ21が外側トレイ22に対して回動可能なように構成してある。図6は、トレイ2の模式的下面図であり、トイレ2を載置面2aの反対側から見た図である。
【0035】
内側トレイ21のトレイ2の移動方向に沿う2側面の略中央には、該2側面から外向きに突設された枢軸21a,21aが設けてある。また内側トレイ21の前記2側面のトレイ2の排出方向の反対側には、枢軸21a,21aと適長離隔して、該枢軸21a,21aと同方向に枢軸21a,21aよりも突設された円柱状の係合突起21b,21bが設けてある。
【0036】
外側トレイ22は、矩形板状をなし、内側トレイ21よりも若干大きい寸法の矩形開口を有している。外側トレイ22は、該外側トレイ22の内周面の対向する2側面に設けられた穴22a,22aに内嵌された枢軸21a,21a回りに内側トレイ21を回動自在に保持している。また、外側トレイ22のトレイ2の排出方向の反対側には、前記穴22a,22aと適長離隔して貫通孔22b,22bが設けてある。貫通孔22b,22bは、係合突起21b,21bとの間に適宜の隙間を有するように設けてあり、内側トレイ21が枢軸21a,21a回りに回動したときに、この回動を妨げないようにしてある。
【0037】
筐体1のローディングベース11の周壁11bには、内側トレイ21の係合突起21b,21bが係合する係合溝13,13が設けてある。図7は、図2の VII−VII 矢視から見た係合溝13の形状を示す図である。係合溝13は、トレイ2の移動方向に沿って設けられた直線部13aと、該直線部13aのトレイ2の排出方向の側の一端から前記直線部13aに交叉する方向に下向きに延設された傾斜部13bとを有してなる。この係合溝13,13は、図2に示すように、トレイ1の移動方向の適長に亘って形成してある。なお、係合溝13は、枢軸21aと係合突起21bとの位置関係に応じて、トレイ2を排出したときに、内側トレイ21のトレイ2の排出方向の側が上側になるように、内側トレイ21を外側トレイ22に対して回動させるように形成してある。
【0038】
このディスク装置において、トレイ2が筐体1の内部に収容してあるとき、内側トレイ21の係合突起21b,21bは係合溝13,13の直線部13a,13a側の端部に係合している。このとき、係合突起21b,21bは、図5に示すように、枢軸21a,21aと同一高さに位置しており、内側トレイ21及び外側トレイ22の載置面2aは面一となっている。
【0039】
この構成において、トレイ2を筐体1から排出したときに、該トレイ2の移動に伴って、係合突起21b,21bの係合溝13,13との係合位置が係合溝13,13の直線部13a,13a側の端部から傾斜部13b,13b側の端部に向けて移動する。係合位置が直線部13a,13aにあるときは、内側トレイ21及び外側トレイ22は相対回動することなく、内側トレイ21及び外側トレイ22の載置面2aは面一の状態のままである。係合位置が傾斜部13b,13bにあるとき、係合突起21b,21bは、傾斜部13b,13bから斜め下方向の力を受けつつ傾斜部13b,13bに沿って移動するから、内側トレイ21は、トレイ2の移動方向に直交する枢軸21a,21a回りに外側トレイ22に対して回動する。係合位置が係合溝13,13の傾斜部13b,13b側の端部に到達したとき、内側トレイ21は、図1及び3に示すように、外側トレイ22に対して所定角度をなして傾斜する。この結果、トレイ2の載置面2aに載置されたディスク100が内側トレイ21と共に外側トレイ22に対して傾斜することになる。このとき、ディスク100は、図3に示すように、トレイ2の排出方向の側が上側になるように傾斜している。
【0040】
一方、この状態からトレイ2を筐体1に収容したときは、トレイ2の移動に伴って、係合突起21b,21bの係合溝13,13との係合位置が係合溝13,13の傾斜部13b,13b側の端部から直線部13a,13a側の端部に向けて移動する。この係合位置の移動に応じて内側トレイ21は外側トレイ22に対して反対方向に回動して、内側トレイ21及び外側トレイ22の載置面2aが面一となる状態に戻る。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係るディスク装置においては、トレイ2がディスク装置の筐体1から排出されたときに、前述の如く、内側トレイ21を外側トレイ22に対して回動させてディスク100をトレイの2の排出方向の側、換言すると使用者に近い側が上側になるように傾斜させるように構成してあるから、使用者がディスク100を掴み易くなり、トレイ2へのディスク100の取付け及び取外しを容易にすることができる。
【0042】
また、内側トレイ21に係合突起21b,21bを設け、筐体1の内面に係合溝13,13を設けているから、トレイ2の移動方向に交叉する方向に設ける係合溝13,13の傾斜部13b,13bをトレイ2の移動方向に直交する方向の適長に亘って形成することができ、ディスク100の傾斜を容易に大きくすることができる。この結果、使用者がディスク100を更に掴み易くなり、トレイ2へのディスク100の取付け及び取外しを容易にすることができる。このように使用者がディスク100を掴み易くなるため、使用者がディスク100の記録面を直に触ることを低減することができ、データの記録又は再生を安定して行うことができ、信頼性を向上することができる。
【0043】
また、ディスク100を載置面2aの一部と共に傾斜するように構成してあるから、ディスク100を傾斜させるときにディスク100の記録面を傷つけることなく、信頼性を向上することができる。
【0044】
なお、本実施の形態の如く、係合溝を筐体の内面に、係合突起を内側トレイに設けるように構成する方が望ましいが、係合溝を内側トレイに、係合突起を筐体の内面に設けるように構成してもよい。この場合においても、トレイへのディスクの取付け及び取外しを容易にすることができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、係合突起を枢軸よりも後側(トレイの排出方向の反対側)に設けているが、枢軸の方を後側に設けてもよい。この場合、係合溝の傾斜部を本実施の形態とは反対向きである排出方向の側が上側になるように傾斜するように形成すればよい。
【0046】
また、内側トレイ21及びトレイ2の外形を矩形板状に形成しているが、内側トレイ21及びトレイ2の形状はこれに限定されないのは言うまでもない。
【0047】
また、内側トレイ21に枢軸を設けているが、外側トレイに内側トレイに向けて突設された軸を設け、該軸に内側トレイを回動自在に保持するように構成してもよい。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、ディスクが載置されるトレイを内側トレイ及び外側トレイの2つのトレイに分離構成し、内側トレイを外側トレイに対して回動するように構成されたディスク装置について説明したが、以下においては、ディスクを傾斜させる他の構成例について説明する。図8は、本発明の実施の形態2に係るディスク装置のトレイ20の模式的下面図であり、トイレ20を載置面2aの反対側から見た図である。図9は、トレイ20の模式的側面図である。なお、図9において、左側がトレイ20の排出方向の側(前側)である。
【0049】
トレイ20の移動方向に沿う一側面の略中央には、後述する可動部材を保持する保持部2eが設けてある。また、トレイ20の載置面2aのトレイ20の排出方向の側には、円形の貫通孔2fが設けてある。トレイ20のその他の構成は、図6に示す実施の形態1と同様であるため、対応する構成部材に図6と同一の参照符号を付して、その構成及び動作の詳細な説明を省略する。なお、トレイ以外のディスク装置の構成は、実施の形態1と同様であるので、図示及び詳細な説明を省略する。
【0050】
このトレイ20には、略L字形をなす可動部材6が取付けてある。可動部材6の短辺側の端部には、円柱状をなし、トレイ20に載置されるディスクを押し上げる押上部6aが立設してある。可動部材6の長辺側の端部には、可動部材の6の長辺部分及び押上部6aに直交する方向に突設された係合突起6bが設けてある。同じく可動部材6の長辺部分には、係合突起6bに適長離隔して、該係合突起6bと同方向に突設された枢軸6cが設けてある。可動部材6は、トレイ20の貫通孔2fに押上部6aを挿入可能なように、枢軸6cをトレイ20の保持部2eに設けられた穴に内嵌させて、枢軸6c回りに回動自在にトレイ20に保持してある。また、可動部材6の係合突起6bは筐体1の係合溝13に係合させてある。
【0051】
このディスク装置において、トレイ20が筐体1の内部に収容してあるとき、可動部材6の係合突起6b,6bは、図7に示す係合溝13,13の直線部13a,13a側の端部に係合している。このときのトレイ20と可動部材とは図9に示すような位置関係にある。図10は、可動部材の動作説明図である。
【0052】
この構成において、トレイ20を筐体1から排出したときに、該トレイ20の移動に伴って、係合突起6bの係合溝13との係合位置が係合溝13の直線部13a側の端部から傾斜部13b側の端部に向けて移動する。係合位置が直線部13aにあるときは、可動部材6はトレイ20に対して相対回動することなく、トレイ20と可動部材とは図9に示すような位置関係のままである。係合位置が傾斜部13bにあるとき、係合突起6bは、傾斜部13bから斜め下方向の力を受けつつ傾斜部13bに沿って移動するから、可動部材6は、枢軸6c回りにトレイ20に対して図において時計回りに回動する。係合位置が係合溝13の傾斜部13b側の端部に到達したとき、可動部材6は、図10に示すように、トレイ20に対して所定角度をなして傾斜する。この結果、トレイ20の載置面2aに載置されたディスク100が貫通孔2fから突出した可動部材6の押上部6aにより押し上げられ、トレイ20の載置面2aに対して浮き上がり、所定角度をなして傾斜することになる。このとき、ディスク100は、図10に示すように、トレイ20の排出方向の側が上側になるように傾斜している。
【0053】
一方、この状態からトレイ20を筐体1に収容したときは、トレイ20の移動に伴って、係合突起6b,6bの係合溝13,13との係合位置が係合溝13,13の傾斜部13b,13b側の端部から直線部13a,13a側の端部に向けて移動する。この係合位置の移動に応じて内側トレイ21は外側トレイ22に対して反対方向に回動して、内側トレイ21及び外側トレイ22の載置面2aが面一となる状態に戻る。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係るディスク装置においては、トレイ20がディスク装置の筐体1から排出されたときに、前述の如く、可動部材6を枢軸6c回りに回動させて押圧部6aによりディスク100のトレイ20の排出方向の側、換言すると使用者に近い側が上側になるようにディスク100を押上げるように構成してあるから、使用者がディスク100を掴み易くなり、トレイ20へのディスク100の取付け及び取外しを容易にすることができる。また、筐体1の内面に係合溝13を設けているから、トレイ20の移動方向に交叉する方向に設ける係合溝13の傾斜部13bをトレイ20の移動方向に直交する方向の適長に亘って形成することができ、ディスク100の傾斜を容易に大きくすることができる。この結果、使用者がディスク100を更に掴み易くなり、トレイ20へのディスク100の取付け及び取外しを容易にすることができる。このように使用者がディスク100を掴み易くなるため、使用者がディスク100の記録面を直に触ることを低減することができ、データの記録又は再生を安定して行うことができ、信頼性を向上することができる。
【0055】
また、本実施の形態に係るディスク装置においては、トレイではなく可動部材6を回動させるように構成してあるから、小さな負荷にてディスクを傾斜させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、可動部材6を略L字状に形成しているが、形状はこれに限定されず、可動部材に設けた係合突起の筐体1の係合溝との係合位置の移動に伴い、可動部材が軸回りに回動し、押上部によりディスクの排出方向の側を押上げることが可能な形状であればよい。
【0057】
また、以上の実施の形態においては、ディスクの載置面が水平方向になるように構成されたディスク装置について説明したが、ディスクの載置面が鉛直方向になるように構成されたディスク装置に対しても同様に適用することが可能である。この場合、ディスクの排出方向の側が、外側トレイ22の載置面又はトレイ20の載置面と離隔するように、ディスクを傾斜させるように構成してあればよい。
【0058】
また、以上の実施の形態に係るディスク装置は、AV機器、パーソナルコンピュータ等の情報機器及び携帯音楽プレーヤ等の携帯機器に内蔵されるディスク装置、これらの機器に接続される外付けのディスク装置のいずれにも適用可能である。更に、本発明は、その他、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において種々変更した形態にて実施することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体
2,20 トレイ
21 内側トレイ(第1トレイ)
22 外側トレイ(第2トレイ)
21b 係合突起(突起,傾斜手段)
21a 枢軸(軸)
13 係合溝(傾斜手段)
6 可動部材(傾斜手段)
6a 押上部
6b 係合突起(突起)
6c 枢軸(軸)
100 ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを載置すべきトレイと、該トレイを収容する筐体とを備え、該筐体に対する前記トレイの排出及び取入により前記ディスクの出し入れを行うように構成されたディスク装置において、
前記トレイを前記筐体から排出したときに、前記トレイに載置されたディスクを傾斜させる傾斜手段を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記トレイは、前記ディスクの少なくとも一部が載置される第1トレイと、該第1トレイを、前記トレイの移動方向に略直交する軸回りに回動可能に支持する第2トレイとを備えてなり、
前記傾斜手段は、前記筐体及び第1トレイの一方に設けられ、他方の側に突設された突起と、前記他方に設けられ、前記突起が係合する係合溝とを有してなり、前記トレイの排出に伴う係合位置の移動に応じて前記第1トレイを前記第2トレイに対して回動させて、前記ディスクを傾斜させるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記突起は前記第1トレイに設けてあり、
前記係合溝は前記筐体の内面に設けてあることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記突起は、前記第1トレイの前記トレイの排出方向の反対側に前記軸に離隔して設けてあり、
前記係合溝は、前記トレイの移動方向に沿って設けられた直線部と、該直線部の前記トレイの排出方向の側の一端から前記直線部に交叉する方向に下向きに延設された傾斜部とを有してなることを特徴とする請求項3に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記傾斜手段は、前記トレイに載置されたディスクの前記トレイの排出方向の側を押上げる押上部と、該押上部に離隔して設けられた突起と、前記押上部及び突起間に設けられ、前記トレイに回動自在に支持される軸とを有する可動部材と、前記筐体の内面に設けられ、前記可動部材の突起が係合する係合溝とを備えてなり、前記トレイの排出に伴う係合位置の移動に応じて前記ディスクを前記押上部により押上げて傾斜させるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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