説明

ディスク装置

【課題】より現実的な条件で設置環境の良否を判別し、その情報を提供できるディスク装置を提供する。
【解決手段】複数のハードディスクドライブ14を有し、それらのうち少なくとも一部複数のハードディスクドライブ14を監視対象として、制御部21が予め定めた時間だけ停止または動作した状態に維持し、停止または動作した状態を維持した時間の経過後の予め定めた時間差をおいた複数のタイミングで、監視対象のハードディスクドライブ14から得られる温度の情報をそれぞれ取得し、監視対象となった各ハードディスクドライブ14での温度の変化量を演算し、当該温度の変化量に基づいて、設置環境異常の有無を判定するディスク装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のハードディスクドライブを備えたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブを備えたディスク装置では、内部装置の温度上昇を抑制するために、ファンを備えたものが多い。ファンを備えたディスク装置において、装置内部の温度センサが、異常な温度上昇を検出した場合に、当該温度上昇の原因がファンの異常によるものであるか、またはディスク装置の設置環境がよくないためであるかをユーザが簡易に区別できるよう、ファンセンサと温度センサとを用いて、これらの各センサによる検出の結果に基づいて、ディスク装置の設置環境に問題があると判断される場合に、その旨報知する技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−089858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際にはファンの異常の有無に関わらず設置環境の適否の問題は発生する。また、装置内部であっても温度勾配が生じている。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、より現実的な条件で設置環境の良否を判別し、その情報を提供できるディスク装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来例の問題点を解決する本発明は、ディスク装置であって、複数のハードディスクドライブを有し、前記複数のハードディスクドライブのうち、少なくとも一部複数のハードディスクドライブを監視対象として、当該監視対象のハードディスクドライブをいずれも、予め定めた時間だけ停止または動作した状態に維持する状態維持手段と、前記停止または動作した状態を維持した時間の経過後の予め定めた時間差をおいた複数のタイミングで、前記監視対象のハードディスクドライブから得られる温度の情報をそれぞれ取得し、監視対象となった各ハードディスクドライブでの温度の変化量を演算し、記録する演算手段と、前記記録した温度の変化量に基づいて、設置環境異常の有無を判定する判定手段と、当該判定の結果、少なくとも設置環境が異常であると判定したときには、その旨を報知する報知手段と、を備えたこととしたものである。
【0007】
またここで、前記温度の情報は、ハードディスクドライブのs.m.a.r.t.情報から取得してもよく、ハードディスクドライブを制御する制御基板に、さらに温度センサを備え、前記設置環境異常を判定する判定手段は、当該基板上の温度センサでの温度変化も参照して、設置環境異常の有無を判定することとしてもよい。
【0008】
さらに、ハードディスクドライブを予め定めた時間だけ動作させて、前記動作した状態としてもよい。また、予めコントロールされた環境において測定された、前記温度変化を基準として記録する手段をさらに含んで、前記設置環境異常を判定する判定手段が、当該基準と前記記録した温度の変化量とを比較して、設置環境異常の有無を判定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、温度の時間変化により、より現実的な条件で設置環境の良否を判別し、その情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスク装置の例を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るディスク装置の制御装置の例を表す構成ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るディスク装置における設置環境異常の有無を判定する処理の例を表すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るディスク装置が生成する情報の例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るディスク装置に対する基準の設定処理の例を表すフローチャート図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るディスク装置において設定される基準の例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係るディスク装置1は、図1に例示するように、筐体10内に、電源部11と、制御基板12と、ファン13と、複数のハードディスクドライブ(HDD)14a,b…(図1の例では4つあるものとしている)とを備えている。
【0012】
筐体10は、少なくとも正面側に、外気を取り込む孔が設けられる。また筐体10の背面側にはファン13が設置され、筐体10内では、正面側から背面側へと空気が流れるよう設計されている。
【0013】
電源部11は、外部から交流電源の供給を受け、これを必要な電圧の直流に変換し、制御基板12、ファン13、及び各HDD14に供給している。制御基板12には、図2に例示するように、制御部21、記憶部22、インタフェース部23、及び通信部24を含む回路が形成されている。
【0014】
ここで制御部21は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部22に格納されたプログラムに従って動作する。この制御部21は、外部から入力される指示に従い、HDD14からデータを読み出して外部に出力する処理や、外部から入力される指示に従い、外部から受け入れたデータを書き込む、といった処理を実行している。また制御部21は、筐体10内部の温度の情報を取得し、当該温度の情報に基づいてファン13の速度を制御する処理を行ってもよい。
【0015】
また本実施の形態においてはこの制御部21は、状態維持手段、演算手段、判定手段、及び報知手段の各手段を実現する。本実施の形態の一態様では、この制御部21は、HDD14のうち、少なくとも一部n台(nは2以上)のHDD14を監視対象として、当該監視対象のHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ停止または動作した状態に維持する。さらにこの制御部21は、停止または動作した状態を維持した時間の経過後の予め定めた時間差をおいた複数のタイミングで、監視対象のHDD14から得られる温度の情報をそれぞれ取得し、監視対象となった各HDD14での温度の変化量を演算・記録する。そして制御部21は、この記録した温度の変化量に基づいて、設置環境異常の有無を判定し、当該判定の結果を報知する。この制御部21の動作については、後に詳しく述べる。
【0016】
記憶部22は、メモリデバイス等であり、制御部21によって実行されるプログラムを保持している。またこの記憶部22には制御部21の処理において利用されるパラメータ情報が保持される。さらに記憶部22は、制御部21のワークメモリとしても動作する。インタフェース部23は、制御部21と各HDD14とを接続するインタフェースである。
【0017】
通信部24は、例えばUSBポート等のシリアルインタフェースを含む。この通信部24は、制御部21から入力される指示に従って、データを外部に送出する。また、この通信部24は、外部から入力される指示やデータを受信し、制御部21に出力する。
【0018】
ファン13は、制御部21から入力される指示に従って回転、または停止制御される。またこのファン13は、温度センサを有してもよい。温度センサを備える場合、ファン13は、停止制御されていなければ、当該温度センサで検出される温度に応じて予め定めた回転数で回転する。またこのファン13は、制御部21から入力される指示に従って、回転速度が制御されてもよい。
【0019】
HDD14は、インタフェース部23を介して制御基板12上にある制御部21に接続される。このHDD14は、利用者により交換可能となっていても構わない。またHDD14は、内部に温度センサを有する。HDD14は制御部21から入力される指示に従い、この内部の温度センサにより測定された温度の情報(その生データ)をs.m.a.r.t.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)情報の一部として制御部21に出力する。
【0020】
次に、制御部21の動作例について説明する。本実施の形態の制御部21は、通信部24を介して外部の装置からデータの読み出し指示を受け入れる。読み出しの指示を受けた制御部21は、当該指示に従ってHDD14からデータを読み出す。そして当該HDD14から読み出したデータを、通信部24を介して指示元である外部の装置に出力する。
【0021】
またこの制御部21は、通信部24を介して外部の装置からデータの書き込み指示と、書き込むべきデータとを受け入れると、当該外部から受け入れたデータをHDD14に書き込む。
【0022】
本実施の形態では複数のHDD14が備えられているが、制御部21は利用者の設定により、各HDD14をそれぞれ独立したハードディスクドライブとしてデータの読み書きを行ってもよいし、RAID(Redundant Arrays of Independent Disks)機能を用いて、ストライピングやミラーリングといった処理を行ってもよい。この制御部21の動作は、広く知られているので、詳しい説明を省略する。
【0023】
本実施の形態の制御部21はまた、予め定めたタイミングで、設置環境を判定する処理を実行する。このタイミングは、例えば工場出荷後、最初に電源が投入されたタイミングであってもよいし、利用者が判定を行うよう指示したタイミングであってもよい。また定期的なタイミングであってもよい。
【0024】
この処理において制御部21は、複数のHDD14のうち、少なくとも一部複数のHDD14(すべてのHDD14でもよい)を監視対象とする。
【0025】
制御部21は、設置環境を判定する処理を開始すると、図3に例示するようにまず、ファン13を停止させる(S1)。制御部21は監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する(S2)。具体的には制御部21は、監視対象としたHDD14に対して、シーク動作等を予め定めた時間だけ続けさせる。そして当該予め定めた時間が経過すると、ファン13を起動して動作させて(S3)、ループを開始し(S4)、監視対象のHDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得する。また制御部21は、当該取得した温度の情報を記憶部22に保持する(S5)。そして制御部21は予め定めた時間Δtだけ待機し(S6)、予め定めた回数だけ処理S5を繰り返し実行したか否かを判断する(S7)。
【0026】
この処理S7において、処理S5の繰り返し実行回数が予め定めた回数に達していなければ、処理S5からの処理を繰り返して実行する。また、処理S5の繰り返し実行回数が予め定めた回数に達したならば、制御部21は、ループを抜けて、監視対象となった各HDD14について繰り返し取得した温度の情報を記憶部22から読み出して、その変化量(時間変化)を演算する(S8)。制御部21は、この演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、記憶部22に保持する(S9)。
【0027】
そして制御部21は、記録した温度の変化量に基づいて、設置環境異常の有無を判定する(S10)。この判定の具体的な例については後に述べる。制御部21は、この判定の結果、設置環境が異常であると判定したときには、その旨を報知して(S11)、処理を終了する。また制御部21は、処理S10での判定の結果、設置環境が異常でないと判定したときには、そのまま処理を終了してもよいし、設置環境が異常でない旨報知してもよい。
【0028】
ここで、処理S8での変化量の演算、並びに処理S10における判定の具体的な例について説明する。本実施の形態では処理S5により、記憶部22には、図4に例示するように、監視対象となったHDD14ごとに、予め定めた時間ごとの温度の測定値T1,T2,…,Tnが保持されている。
【0029】
そこで処理S8において制御部21は、変化量を表す値として例えば、処理S5でのループ開始後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnを求める。このΔTは、一般にT1>Tnなので正の値となり、ここでの例では、より冷却効果があるほど大きい値となる。
【0030】
または制御部21は、処理S8において、温度の時間変化を表すモデル式、例えば、
T(t)=T1・e-αt (1)
といった式を用いてもよい。具体的には、時刻Δt×(i−1)での温度Ti(i=1,2,…,n)を参照し、最小二乗法など広く知られた方法で(1)式にフィッティングして、係数αを求め、この係数αを、変化量を表す値としてもよい。
【0031】
そして制御部21は、処理S10において、処理S8で演算した、温度の変化量(時間変化)を表す値が予め定めた条件を満足するか否かを判断する。この条件は、温度が時間経過とともに十分低下することを表す条件である。具体的に、変化量を表す値として、上記の通り処理S3でのファン13の起動後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnが用いられる場合、このΔTと、予め定めたしきい値ΔTthとを比較し、より冷却効果があったと判断される場合、つまりここでの例ではΔT>ΔTthであれば、温度が十分低下しており十分な冷却効果があったと判断する。
【0032】
また、(1)式にフィッティングする場合、αの値が、予め定めたしきい値αthより大きい場合に、より短時間で十分な冷却効果があったと判断することとしてもよい。
【0033】
制御部21は、この温度の変化量の演算と、十分な冷却効果があったか否かの判断とを、監視対象となったHDD14ごとに個別に行う。そして制御部21は、例えば監視対象となったHDD14のすべてについて、いずれも十分な冷却効果があったと個別に判断したときに、処理S10の判定の結果として、設置環境の異常がないものと判定する。
【0034】
また、ここでのしきい値ΔTthやαth等は、HDD14ごとに定めてもよい。すなわち、本実施の形態のディスク装置1では、筐体10内に電源部11等の発熱要素を含むため、この電源部11に近いHDD14は、温度の変化が小さいことが考えられる。そこで筐体10内の発熱要素からの影響を考慮して、監視対象となるHDD14ごとにしきい値を設定しておいてもよい。
【0035】
監視対象となるHDD14ごとにしきい値を設定した場合、制御部21は次のように動作する。例えば変化量を表す値として、上記の通り処理S5でのループ開始後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnを用いているとすると、制御部21は、監視対象となったHDD14を順次、注目HDD14として選択し、選択した注目HDD14のΔT_iと、当該注目HDD14について予め定められしきい値ΔTth_iとを比較し、ΔT_i>ΔTth_iであれば十分な冷却効果があったと判断する。そして制御部21は、例えば監視対象となったHDD14のすべてについて、いずれも十分な冷却効果があったと個別に判断したときに、処理S10の判定の結果として、設置環境の異常がないものと判定する。
【0036】
さらに本実施の形態においては、ディスク装置1ごと、あるいはディスク装置1の生産単位(ロット単位あるいは共通の部品を使用している単位)ごとに個別のしきい値を基準値として設定してもよい。この場合は工場出荷前に、予め設置環境として、良好と判断されるべき環境としてコントロールされた場所にこのディスク装置1を置いたうえで、制御部21に対して次の処理を行わせる。具体的に、この環境は、ディスク装置1に隣接して他の装置などの熱源を置かず、空調により外気を25℃に維持した場所などとしておく。
【0037】
すなわち制御部21は、指示により基準値の設定に係る処理を開始すると、図5に例示するようにまず、ファン13を停止させる(S21)。そして制御部21は、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する(S22)。具体的には制御部21は、監視対象としたHDD14に対して、シーク動作等を予め定めた時間だけ続けさせる。そして当該予め定めた時間が経過すると、ファン13を起動して(S23)、ループを開始し(S24)、監視対象となるHDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得する。また制御部21は、当該取得した温度の情報を記憶部22に保持する(S25)。そして制御部21は予め定めた時間Δtだけ待機し(S26)、予め定めた回数だけ処理S25を繰り返し実行したか否かを判断し(S27)、処理S25の繰り返し実行回数が予め定めた回数に達していなければ、処理S25からの処理を繰り返して実行する。
【0038】
また、処理S25の繰り返し実行回数が予め定めた回数に達したならば、制御部21は、ループを抜けて、監視対象となった各HDD14について繰り返し取得した温度の情報を記憶部22から読み出して、その変化量(時間変化)を演算する(S28)。制御部21は、この演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を基準値として、記憶部22に保持する(S29)。
【0039】
この処理S28において演算する変化量は、図3の処理S8におけるものと同じであり、例えば処理S23でのファン13起動後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnを求める。または制御部21は、処理S28において、温度の時間変化を表すモデル式、例えば時刻Δt×(i−1)での温度Ti(i=1,2,…,n)を、最小二乗法など広く知られた方法で(1)式にフィッティングして、係数αを求め、この係数αを変化量を表す基準値としてもよい。
【0040】
制御部21はこのようにして監視対象とする各HDD14について基準値を求め、HDD14を特定する情報に関連付けて記憶部22に格納しておく。
【0041】
このようにした場合、制御部21は図3の処理S10においては、監視対象となったHDD14ごとに、処理S8にて得た変化量の値と、それぞれ対応するHDD14を特定する情報に関連付けて記憶部22に格納された基準値とを比較し、当該比較の結果に基づいて十分な冷却効果があったか否かを判断する。そして制御部21は、例えば監視対象となったHDD14のすべてについて、いずれも十分な冷却効果があったと個別に判断したときに、処理S10の判定の結果として、設置環境の異常がないものと判定する。
【0042】
具体的に処理S8において変化量を表す値として、上記の通り処理S3でのファン13起動後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnが用いられる場合、各HDD14を順次注目HDD14として選択し、選択したHDD14について演算された変化量の値ΔTと、当該注目HDD14を特定する情報に関連付けて記憶部22に格納された基準値ΔT_cとを比較し、ΔT>ΔT_cまたは、(ΔT−ΔT_c)が予め定めたしきい値ΔTdを下回る場合に、当該注目HDD14については十分な冷却効果があったと判断する。このしきい値ΔTdは、異常と判断されるべき環境にディスク装置1が置かれた場合に、(ΔT−ΔT_c)が予め定めたしきい値ΔTdを超えることとなるよう、実験的に定める。
【0043】
また処理S8において(1)式にフィッティングして、変化量を表す値としてαの値を定める場合、各HDD14を順次注目HDD14として選択し、選択したHDD14について演算された変化量の値αと、当該注目HDD14を特定する情報に関連付けて記憶部22に格納された基準値α_cとを比較し、α>α_cまたは、(α_c−α)が予め定めたしきい値αdを下回る場合に、当該注目HDD14については十分な冷却効果があったと判断する。このしきい値αdは、異常と判断されるべき環境にディスク装置1が置かれた場合に、(α_c−α)が予め定めたしきい値αdを超えることとなるよう、実験的に定める。
【0044】
なお、ここまでの説明においては、変化量の演算や基準値の取得の際に、ファン13の回転量について特に限定していないが、制御部21は、ファン13の回転量を、筐体10の内部の温度やHDD14から得られる温度の情報に関わらず一定に制御することとしてもよい。さらに、制御部21は、ファン13の回転量を変化させつつ、複数の回転量としたときの温度の変化量や基準値を取得することとしてもよい。
【0045】
本実施の形態のディスク装置1は、以上の構成を基本的に備えており、一例としては次のように動作する。なお、以下の説明では、制御部21がファン13の回転量を、停止・低速・中速・高速の四段階で切り替え可能であるものとして説明する。
【0046】
またこの例では予めディスク装置1の製造側において、基準値を定めるものとする。具体的に製造側ではディスク装置1を設置環境として、良好と判断されるべき環境としてコントロールされた場所にこのディスク装置1を置いたうえで、基準値を設定する処理を、当該ディスク装置1に行わせる。すなわちディスク装置1は、ファン13を停止させ、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する。そして当該予め定めた時間が経過すると、ディスク装置1は、ファン13を低速で起動し、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得して、当該取得した温度の情報T1(監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。またディスク装置1は、この後、予め定めた時間Δt(例えば2分)だけ待機し、それから再度、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得し、当該取得した温度の情報T2(これもまた監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。つまり、ここでは図5に例示した処理S25を2回だけ繰り返して実行する例としている。
【0047】
そしてディスク装置1は、監視対象のHDD14ごとに温度の変化量を表す情報ΔT=T1−T2を演算する。そしてこの演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、ファン13を低速で回転させた場合の基準値として、記憶部22に保持する。
【0048】
次にディスク装置1は、予め定めた時間だけおいてから(HDD14の温度が十分低下するだけの時間が経過してから)再びファン13を停止させ、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する。そして当該予め定めた時間が経過すると、ディスク装置1は、ファン13を中速で起動し、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得して、当該取得した温度の情報T1(監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。またディスク装置1は、この後、予め定めた時間Δt(例えば2分)だけ待機し、それから再度、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得し、当該取得した温度の情報T2(これもまた監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。
【0049】
そしてディスク装置1は、監視対象のHDD14ごとに温度の変化量を表す情報ΔT=T1−T2を演算する。そしてこの演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、ファン13を中速で回転させた場合の基準値として、記憶部22に保持する。
【0050】
さらにディスク装置1は、予め定めた時間だけおいてから(HDD14の温度が十分低下するだけの時間が経過してから)再度ファン13を停止させ、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する。そして当該予め定めた時間が経過すると、ディスク装置1は、ファン13を高速で起動し、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得して、当該取得した温度の情報T1(監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。またディスク装置1は、この後、予め定めた時間Δt(例えば2分)だけ待機し、それから再度、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得し、当該取得した温度の情報T2(これもまた監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。
【0051】
そしてディスク装置1は、監視対象のHDD14ごとに温度の変化量を表す情報ΔT=T1−T2を演算する。そしてこの演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、ファン13を高速で回転させた場合の基準値として、記憶部22に保持する。
【0052】
これにより記憶部22には、図6に例示するように、監視対象となるHDD14ごとに、ファン13を低速・中速・高速で回転させたときの冷却効果に関する基準値が保持されているようになる。
【0053】
このディスク装置1は、利用者側に届けられて設置され、最初に起動されたタイミング、または利用者が指示したタイミングで、設置環境の異常の有無を判断する処理を開始する。この処理が行われている間は、ディスク装置1は、通信部24を介してのデータの書き込みや読み出しといった指示には応答しない。
【0054】
ディスク装置1は、設置環境の異常の有無を判断する処理を開始すると、ファン13を停止させ、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する。そして当該予め定めた時間が経過すると、ディスク装置1は、ファン13を低速で起動し、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得して、当該取得した温度の情報T1(監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。またディスク装置1は、この後、予め定めた時間Δt(例えば2分)だけ待機し、それから再度、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得し、当該取得した温度の情報T2(これもまた監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。つまり、ここでは図3に例示した処理S5を2回だけ繰り返して実行する例としている。
【0055】
そしてディスク装置1は、監視対象のHDD14ごとに温度の変化量を表す情報ΔT=T1−T2を演算する。そしてこの演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、ファン13を低速で回転させた場合の温度の変化量の値として、記憶部22に保持する。
【0056】
次にディスク装置1は、予め定めた時間だけおいてから(HDD14の温度が十分低下するだけの時間が経過してから)再びファン13を停止させ、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する。そして当該予め定めた時間が経過すると、ディスク装置1は、ファン13を中速で起動し、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得して、当該取得した温度の情報T1(監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。またディスク装置1は、この後、予め定めた時間Δt(例えば2分)だけ待機し、それから再度、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得し、当該取得した温度の情報T2(これもまた監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。
【0057】
そしてディスク装置1は、監視対象のHDD14ごとに温度の変化量を表す情報ΔT=T1−T2を演算する。そしてこの演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、ファン13を中速で回転させた場合の温度の変化量を表す値として、記憶部22に保持する。
【0058】
さらにディスク装置1は、予め定めた時間だけおいてから(HDD14の温度が十分低下するだけの時間が経過してから)再度ファン13を停止させ、監視対象としたHDD14をいずれも、予め定めた時間だけ、動作した状態に維持する。そして当該予め定めた時間が経過すると、ディスク装置1は、ファン13を高速で起動し、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得して、当該取得した温度の情報T1(監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。またディスク装置1は、この後、予め定めた時間Δt(例えば2分)だけ待機し、それから再度、監視対象となる各HDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得し、当該取得した温度の情報T2(これもまた監視対象のHDD14ごとに異なる)を記憶部22に保持する。
【0059】
そしてディスク装置1は、監視対象のHDD14ごとに温度の変化量を表す情報ΔT=T1−T2を演算する。そしてこの演算して得た、監視対象となったHDD14ごとの温度の変化量を、ファン13を高速で回転させた場合の温度の変化量を表す値として、記憶部22に保持する。
【0060】
制御部21は、これらファン13を低速・中速・高速のそれぞれで動作させたときに記録された温度の変化量に基づいて、設置環境異常の有無を判定する。すなわちこの処理が終了した時点で、記憶部22には、監視対象となるHDD14ごとに、ファン13を低速・中速・高速で回転させたときの温度の変化量を表す値が保持されているようになる。そこで制御部21は、監視対象となるHDD14ごと、またファン13の回転速度ごと(低速・中速・高速のそれぞれ)に、変化量を表す値と、それに対応する基準値との差を演算する。例えばi番目の監視対象のHDD14について、ファン13の回転速度がX(Xはここでは低速、中速、高速のいずれか)である場合の変化量を表す値(利用者側に設置された状態で得られた値)を、V(i,X)、基準値をB(i,X)と表すとすると、ディスク装置1は、すべてのi,Xについて、基準値を得たときよりもより冷却効果があったと判断される場合、つまり、ここでの例では、より値が大きいほうが、より冷却効果があったと判断されるので、V(i,X)>B(i,X)であった場合、またはB(i,X)−V(i,X)が予め定めたしきい値を下回る場合に設置環境が異常でないと判定する。なお、このしきい値は異常と判断されるべき環境にディスク装置1が置かれた場合に、B(i,X)−V(i,X)が当該しきい値を超えることとなるよう、実験的に定める。
【0061】
また、いずれかのi,Xについて、基準値を得たときよりもより冷却効果がなかったと判断される場合、つまり、ここでの例では、V(i,X)<B(i,X)で、かつ、B(i,X)−V(i,X)が予め定めたしきい値を上回る場合は、ディスク装置1は、設置環境が異常であると判断して、その旨を報知する。この報知は、図示しない音声鳴動部により、ビープ音を鳴動することによって行ってもよいし、液晶表示部等の表示デバイスを備える場合、当該表示デバイスに設置環境が異常である旨を表す情報を表示してもよい。
【0062】
さらに本実施の形態のディスク装置1では、制御基板12上に温度センサDを備え、この基板上の温度センサDでの温度変化も参照して設置環境異常の有無を判定してもよい。一例としてこの温度センサDは、制御部21であるCPU内部に配された温度センサであってもよい。
【0063】
この場合、制御部21は図3に示した処理等においてこの制御基板12上の温度センサDについても温度の変化量に関する値を演算して取得する。すなわち、制御部21は、処理S5において、監視対象のHDD14に対してs.m.a.r.t.情報のうち、温度の情報を要求して取得するとともに、この温度センサDからも温度の情報を取得して、記憶部22に保持する。
【0064】
そして制御部21は、ループを抜けた後の処理S8にて、監視対象となった各HDD14について繰り返し取得した温度の情報を記憶部22から読み出して、その変化量(時間変化)を演算するとともに、温度センサDから繰り返し取得した温度の情報を記憶部22から読み出して、その変化量(時間変化)を演算する。この温度の変化量の値も、例えば処理S5でのループ開始後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnとしてもよいし、時刻Δt×(i−1)での温度Ti(i=1,2,…,n)を参照し、最小二乗法など広く知られた方法で(1)式にフィッティングして、係数αを求め、この係数αを変化量を表す値としてもよい。
【0065】
この場合の制御部21は、処理S10において、処理S8で演算した、監視対象のHDD14及びこの温度センサDに関しての温度の変化量(時間変化)を表す値が、予め定めた条件を満足するか否かを判断する。この条件は、温度が時間経過とともに十分低下することを表す条件であり、具体的に、変化量を表す値として、上記の通り処理S3でのファン13の起動後最初に取得した温度の情報T1と、ループを抜ける前に最後に取得した温度の情報Tnとの差ΔT=T1−Tnが用いられる場合、すべての監視対象のHDD14及びこの温度センサDに関してのΔTと、予め定めたしきい値ΔTthとを比較し、いずれについてもより冷却効果があったと判断される場合、つまりここでの例では、すべての監視対象のHDD14及びこの温度センサDに関してΔT>ΔTthであれば、温度が十分低下しており十分な冷却効果があったと判定することとすればよい。
【0066】
なお、温度センサDの温度の変化量についても、図5に例示した処理により基準値を求めてもよく、その場合は処理S10の判定において予め定めたしきい値ではなく、対応する基準値(温度センサDについては、温度センサDについて測定して得た基準値)を用いて、既に述べたHDD14における例と同様に判定を行ってもよい。
【0067】
また、ここまでの例では、HDD14について、温度の変化量(利用者側での判定時)や基準値を得るにあたり、図3の処理S2(または図5の処理S22)において監視対象のHDD14をいずれも一定の時間、動作状態とする例としていたが、これに限られない。例えば使用中の状態から、監視対象のHDD14をいずれも一定の時間だけ停止状態とし、その後、処理S2(またはS22)以下の処理を行ってもよい。すなわち、監視対象のHDD14の動作状態が一定の時間だけ互いに同等の温度変化を受けるような状態となっていればよい。
【0068】
さらに、制御部21は、ファン13の回転数を変化させたときの、各回転数での温度の変化量を得ている場合、各回転数のどれにおいて冷却効果が十分でなかったか(基準値より小さく、かつ基準値との差が予め定めたしきい値を超えている回転数がどれか、または予め定めたしきい値より小さい回転数がどれか)によって、原因の推定を行ってもよい。
【0069】
例えば想定される原因を予め列挙しておき、各想定される原因ごとにどの回転数での冷却効果が低減するかを調べておく。具体的な例として、想定される原因が(1)他の装置(発熱源)が隣接していること、または(2)壁面などに接していて空気の吸入や排出が十分でないことの2つであるとする。このとき、それぞれにおいて冷却効果が低減する回転数が、例えば、(1)の場合、すべての回転数において冷却効果が低減し、(2)の場合は回転数を上昇させることで冷却効果が達成できる(つまり、回転数が低い場合に冷却効果が低減する)と調べられたとする。
【0070】
この場合、制御部21は、監視対象となった各HDD14の各回転数での冷却効果の判断を参照する。そしてどの回転数でも冷却効果が低減している、つまり、どの回転数でも、ΔT≦ΔT_cかつ、(ΔT−ΔT_c)が予め定めたしきい値ΔTdを上回ると判断されると、原因が(1)他の装置(発熱源)が隣接しているためであると判断し、処理S11においてその旨を例えば液晶表示部等に表示して報知する。
また制御部21は、回転数が「低」のときには冷却効果が低減している、つまり、ΔT≦ΔT_cかつ、(ΔT−ΔT_c)が予め定めたしきい値ΔTdを上回ると判断されるが、回転数が「中」または「高」のときには、冷却効果が達成されている、つまり、ΔT>ΔT_cまたは、(ΔT−ΔT_c)が予め定めたしきい値ΔTdを下回ると判断されるときには、原因が(2)壁面などに接していて空気の吸入や排出が十分でないと判断し、処理S11においてその旨を例えば液晶表示部等に表示して報知する。
【0071】
本実施の形態によると、より現実的な条件で設置環境の良否を判別し、その情報を提供できる。
【符号の説明】
【0072】
1 ディスク装置、10 筺体、11 電源部、12 制御基板、13 ファン、14 ハードディスクドライブ、21 制御部、22 記憶部、23 インタフェース部、24 通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハードディスクドライブを有し、
前記複数のハードディスクドライブのうち、少なくとも一部複数のハードディスクドライブを監視対象として、当該監視対象のハードディスクドライブをいずれも、予め定めた時間だけ停止または動作した状態に維持する状態維持手段と、
前記停止または動作した状態を維持した時間の経過後の予め定めた時間差をおいた複数のタイミングで、前記監視対象のハードディスクドライブから得られる温度の情報をそれぞれ取得し、監視対象となった各ハードディスクドライブでの温度の変化量を演算し、記録する演算手段と、
前記記録した温度の変化量に基づいて、設置環境異常の有無を判定する判定手段と、
当該判定の結果、少なくとも設置環境が異常であると判定したときには、その旨を報知する報知手段と、
を備えたディスク装置。
【請求項2】
請求項1のディスク装置であって、
前記温度の情報は、ハードディスクドライブのs.m.a.r.t.情報から取得する。
【請求項3】
請求項1,2のディスク装置であって、
ハードディスクドライブを制御する制御基板に、さらに温度センサを備え、
前記設置環境異常を判定する判定手段は、当該基板上の温度センサでの温度変化も参照して、設置環境異常の有無を判定する。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載のディスク装置であって、
ハードディスクドライブを予め定めた時間だけ動作させて、前記動作した状態とする。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載のディスク装置であって、
予めコントロールされた環境において測定された、前記温度変化を基準として記録する手段をさらに含んで、
前記設置環境異常を判定する判定手段が、当該基準と前記記録した温度の変化量とを比較して、設置環境異常の有無を判定する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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