説明

ディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置による制御方法及び電子機器

【課題】シーク動作の応答性能の更なる向上を可能とする。
【解決手段】ディスク記憶装置は、目標となるトラックにヘッドを移動させるシーク動作を行う際に、ディスクから読み出されたデータに含まれる複数の位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号に対し、複数の位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を複数の位置信号が記録された記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成し、生成されたタイミング信号に従って読み出された複数の位置信号をもとに、ヘッドの位置を復調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シーク動作を行うディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置による制御方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクなどへの読み書きをヘッドで行うディスク記憶装置では、ヘッドをディスク上の目標のトラックへ移動するシーク動作の際に、トラック中心からのオフセット位置を検出する複数の位置信号が記録されたサーボパターンを検出してヘッドの位置を復調し、その復調した位置(復調位置)を制御に用いることでシーク動作の応答性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−256741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サーボパターンに記録された複数の位置信号は、トラックへ追従するフォロイング動作の際に正確な復調位置を得るためのものであり、サーボパターンを斜めに横切る場合を考慮して記録されてはいない。したがって、シーク動作の際に、サーボパターンに記録された複数の位置信号を検出して復調位置を得る場合には、ディスクの半径方向へ移動するヘッドの速度の増加に伴って復調位置の誤差が大きくなり、復調位置と実位置との対応関係が不明確となるヘッドの速度(復調限界速度)があった。この復調限界速度の制約は、シーク動作の応答性能の更なる向上を阻害する要因の一つであった。
【0005】
本発明の実施形態は、シーク動作の応答性能の更なる向上を可能とするディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置による制御方法及び電子機器を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態のディスク記憶装置は、トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記信号生成手段は、前記制御手段が目標となるトラックへ前記ヘッドを移動させるシーク動作を行う際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、ディスクに記録されるサーボパターンの一例を示す概念図である。
【図2】図2は、ディスクに記録されるサーボパターンの一例を示す概念図である。
【図3−1】図3−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図3−2】図3−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図4−1】図4−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図4−2】図4−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図5−1】図5−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図5−2】図5−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図6−1】図6−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図6−2】図6−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図7−1】図7−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図7−2】図7−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図8−1】図8−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図8−2】図8−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図9−1】図9−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図9−2】図9−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図10−1】図10−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図10−2】図10−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、実施形態にかかるディスク記憶装置の上面図である。
【図12】図12は、実施形態にかかるディスク記憶装置の断面図である。
【図13】図13は、実施形態にかかるディスク記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、位置決め制御系にかかるブロック図である。
【図15】図15は、サーボ復調回路のブロック図である。
【図16】図16は、ゲート信号のタイムチャート図である。
【図17】図17は、ピークのタイミングが異なる様子を説明する概念図である。
【図18】図18は、NULLパターンの場合のゲート信号を例示する概念図である。
【図19】図19は、ゲート選択信号の出力にかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図20】図20は、サーボコントローラの動作説明図である。
【図21−1】図21−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図21−2】図21−2は、実施形態のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図22−1】図22−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図22−2】図22−2は、実施形態のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図23−1】図23−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図23−2】図23−2は、実施形態のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図24−1】図24−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。
【図24−2】図24−2は、実施形態のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【図25】図25は、磁気ヘッドの移動速度に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図26】図26は、シーク距離に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【図27】図27は、実施形態にかかるディスク記憶装置を備える電子機器を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるディスク記憶装置、ディスク記憶装置のコントローラ、ディスク記憶装置の制御方法及び電子機器を詳細に説明する。以下の実施形態では、磁気ディスクへの読み書きを磁気ヘッドで行うディスク記憶装置を例に説明する。なお、ディスク記憶装置は、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optic)等の光ディスク装置や、リードオンリーの装置(再生装置)であってもよいことは言うまでもないことである。
【0009】
<ディスクについて>
図1は、ディスク6に記録されるサーボパターン60の一例を示す概念図である。図1に示すように、ディスク記憶装置が読み書きを行うディスク6には、回転中心から半径方向に円弧状に延びるサーボパターン60が記録されている。サーボパターン60は、磁気ヘッドを位置決めするために使用される情報である。
【0010】
ディスク6は、金属又はガラス製の円盤(ディスク)状の基板に磁性膜を形成した記憶媒体である。ディスク6へデータの記録を行う場合には、ディスク6のデータを記録する記録領域に磁気ヘッドから磁界をかけ、表面上の磁性体の磁化状態を変化させることによってデータを記録する。また、ディスク6からデータを読み出して再生する場合には、再生対象となるディスク6上の記録領域に磁気ヘッドを移動させ、ディスク6の磁性体の磁化状態を読み取ってデータを再生する。なお、ディスク6の記録方式は、垂直磁気記録方式、水平磁気記録方式のいずれであってもよい。
【0011】
サーボパターン60は、サーボマーク、グレイコード、バースト部を有する構成である。サーボマークは、サーボパターン60の先頭を示し、読み出しの基準となる基準マークである。グレイコードは、トラックごとのトラック番号(「2N」、「2N+1」、「2N+2」…)がデジタルデータで記録される。ディスク記憶装置では、グレイコードに記録されたトラック番号を復調することで、磁気ヘッドがどのトラック番号のトラックに位置しているかを検出できる。バースト部は、各トラックにおいてトラック中心からのオフセット位置を検出するため、位相の90度ずれた4相の面積パターンを示す位置信号PosA、PosB、PosC、PosDが記録される記録領域である。ディスク記憶装置では、バースト部に記録された位置信号PosA、PosB、PosC、PosDの振幅(面積に相当)を得て、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッドの位置(オフセット位置)を復調する。
【0012】
図2はディスク6に記録されるサーボパターン60の一例を示す概念図であり、より具体的にはサーボパターン60のバースト部に2相のNULLパターンが形成される場合を示す図である。図2に示すように、NULLパターンの場合は、位相の180度ずれた2相の位置信号PosN、PosQがバースト部に記録される。このNULLパターンの場合は、図1の場合と類似するが、バースト部の幅を半分とすることができる。ディスク記憶装置では、バースト部に記録された位置信号PosN、PosQの振幅(面積に相当)ならびに位相が変化することを得て、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッドの位置(オフセット位置)を復調する。なお、特に図示しないが、NULLパターンと形状が類似するDCパターンの場合も同様であることは言うまでもないことである。
【0013】
<磁気ヘッドの位置の復調について>
ここで、位置信号PosA、PosB、PosC、PosDによる磁気ヘッドの位置の復調について説明する。まず、位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得ることで、以下の(1)、(2)式よりPosN、PosQを計算する。なお、NULLパターンの場合は、位置信号PosN、PosQが(1)、(2)式の結果に相当するので、この計算を省くことができる。
【0014】
PosN=PosA−PosB(1)
PosQ=PosC−PosD(2)
この位置信号の直線部分を使用して、復調位置(磁気ヘッドの現在位置)が復調される。この復調位置は、計算によって得られる。例えば、復調位置(Position)は、下記の式で計算する(たとえば、特開平8−195044号公報)。即ち、PosNの絶対値abs(PosN)と、PosQの絶対値abs(PosQ)との大きさを比較し、abs(PosN)≦abs(PosQ)である時は、下記(3)式により、復調位置を得る。
【0015】
Position=-sgn(PosQ)*PosN+Track(3)
但し、sgn(PosQ)*even(Track)>0.0である時は、下記(4)式を(3)式に加算する。
【0016】
Position+=sgn(PosQ)*sgn(PosN)*1.0 (4)
逆に、abs(PosN)≦abs(PosQ)でないときは、下記式(5)を使用する。
【0017】
Position=sgn(PosN)*(PosQ+even(Track)*0.5 )+Track (5)
ここで、sgn()は、()の符号、Trackは、トラック番号、even(Track)は、トラック番号が、偶数の時、「1」、奇数の時、「0」である。これを、C言語プログラムで記述すると、下記の如くなる。
【0018】
if(abs(PosN)≦abs(PosQ)){
Position=-sgn(PosQ)*PosN+Track;
if(sgn(PosQ)*even(Track)>0.0)
Position+=sgn(PosQ)*sgn(PosN)*1.0;
}else{
Position=sgn(PosN)*(PosQ+even(Track)*0.5)+Track;
【0019】
<従来のディスク記憶装置によるシミュレーション>
ここで、実際の磁気ヘッドの位置と、復調位置との関係を見るため、従来のディスク記憶装置をモデルにシミュレーションしてみる。なお、このシミュレーションでは、例えば面積パターンの場合であり、バースト部から4相の位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得て復調位置を復調している。
【0020】
図3−1、4−1、5−1、6−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図3−2、4−2、5−2、6−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【0021】
図3−1、図3−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図3−1に示すように、磁気ヘッドの半径方向の速度が0トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は0.5トラックずれた関係であり、バースト部の記録と合致している。したがって、図3−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じていない。
【0022】
図4−1、図4−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が20トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図4−1に示すように、磁気ヘッドの半径方向の速度が20トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は図3−1に示した状態からずれたものとなる。より具体的には、PosNが図の右方向(トラック増加方向)に、PosQが図の左方向(トラック減少方向)にシフトしている。したがって、図4−2に示すように、磁気ヘッドの実位置と復調位置と間には誤差が生じている。この誤差は、サーボパターンを斜めに横切る(図1、2の矢印方向)ことで生じるものであり、磁気ヘッドの半径方向の速度に比例して大きくなる。
【0023】
図5−1、図5−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が40トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図5−1に示すように、磁気ヘッドの半径方向の速度が40トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は、図4−1に示した状態から更にずれたものとなる。より具体的には、PosNとPosQとの間の位相関係は0となっている。
【0024】
図6−1、図6−2では、磁気ヘッドの半径方向の速度が60トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図6−1に示すように、磁気ヘッドの半径方向の速度が60トラック/サンプルである場合は、PosNとPosQとの間の位相関係は、図5−1に示した状態から更にずれたものとなり、逆転している。したがって、復調位置と実位置との対応関係が不明確となり、図6−2に示すように、まともに復調できなくなっている。以上のように、磁気ヘッドの半径方向の速度においては、復調位置と実位置との対応関係が不明確となる限界速度(復調限界速度)がある。
【0025】
同様に、例えばNULLパターンの場合であり、バースト部から2相の位置信号PosN、PosQを得て復調位置を復調する場合の、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果を例示する。図7−1、8−1、9−1、10−1は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図7−2、8−2、9−2、10−2は、従来のディスク記憶装置のシミュレーション結果において、磁気ヘッドの実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【0026】
図7−1〜図10−2に示すように、NULLパターンの場合は、磁気ヘッドの半径方向の速度が80トラック/サンプルである場合に復調限界速度を迎えることがわかる。これは4相の場合(40トラック/サンプル)と比べると2倍である。この要因は、1つのバースト部のサイズを、2相の場合と4相の場合とで同じにしてシミュレーションしたためと考えられる。
【0027】
<実施形態にかかるディスク記憶装置>
ここで、実施形態にかかるディスク記憶装置について説明する。図11は、実施形態のディスク記憶装置100にかかる上面図である。図12は、実施形態にかかるディスク記憶装置100の断面図である。この実施形態では、ディスク記憶装置100としてハードディスク装置を例にしてある。
【0028】
図11及び図12に示すように、ディスク6は、基板(円板)に磁気記録層を設けて構成される。ディスク6は、例えば2.5インチの大きさであり、ドライブ内に、3枚設けられている。スピンドルモータ5は、ディスク6を支持し、且つ回転する。磁気ヘッド4は、アクチュエータに設けられている。アクチュエータは、VCM3(ボイスコイルモータ)と、アーム8と、フレクシャ9(サスペンション)を有する。フレクシャ9の先端に、磁気ヘッド4が取り付けられている。
【0029】
磁気ヘッド4は、ディスク6のデータを読み取り、データを書き込む。磁気ヘッド4は、MR素子(再生素子)と、ライト素子とを有する。VCM3は、磁気ヘッド4をディスク6の半径方向に駆動し、ディスク6の所望のトラックに位置付ける。VCM3及びスピンドルモータ5は、ドライブベース2に設けられる。カバー1は、ドライブベース2を覆い、ドライブ内部を外部から隔離する。プリント板7は、ドライブベース2の下に設けられ、ドライブの制御回路を搭載する。コネクタ10は、ドライブベース2の下に設けられ、制御回路と外部とを接続する。このドライブは、小型であり、例えばノートパソコン等の内蔵ディスクとして使用される。
【0030】
図13は、実施形態にかかるディスク記憶装置100の構成を示すブロック図である。HDC18(ハードディスクコントローラ)は、ホストCPU(Central Processing Unit)との間での各種コマンドの授受、データの授受等のホストCPUとのインターフェース制御及び磁気ディスク媒体上の記録再生フォーマットを制御するための磁気ディスク装置内部の制御信号の発生等を行う。バッファ17は、ホストCPUよりのライトデータの一時的な記憶及び磁気ディスク媒体よりのリードデータの一時的な記憶に使用される。
【0031】
MCU19(マイクロコントローラ)は、マイクロプロセッサ(MPU)、メモリ、DAコンバータ、ADコンバータ等で構成されている。MCU19は、磁気ヘッドの位置決めのためのサーボ制御(位置決め制御)等を行う。MCU19は、メモリに記憶されたプログラムを実行して、サーボ復調回路16よりの位置信号を認識し、位置決めのためのVCM3のVCM制御電流の制御値を計算する。更に、MCU19は、SPM駆動回路14の駆動電流の制御を行う。
【0032】
VCM駆動回路13は、VCM3に駆動電流を流すためのパワーアンプで構成される。SPM駆動回路14は、ディスク6を回転するスピンドルモータ5に駆動電流を流すためのパワーアンプで構成される。
【0033】
リードチャネル15は、記録再生を行うための回路である。リードチャネル15は、ホストCPUよりのライトデータをディスク6に記録するための変調回路、パラレルシリアル変換回路、ディスク6よりデータを再生するための復調回路、シリアルパラレル変換回路等を有する。サーボ復調回路16は、図15にて後述するように、ディスク6に記録されたサーボパターン60を復調する回路であり、MCU19に復調した位置信号を出力する。
【0034】
尚、図示されていないが、ドライブHDA内には、磁気ヘッド4に記録電流を供給するライトアンプと、磁気ヘッド4よりの再生電圧を増幅するプリアンプとを内蔵したヘッドICが設けられている。
【0035】
ここで、MCU19が実行する位置決め制御系について説明する。図14は、位置決め制御系にかかるブロック図である。
【0036】
図14に示すように、位置決め制御系は、MCU19と、VCM駆動回路13と、SPM駆動回路14と、サーボ復調回路16とで構成されている。MCU19は、サーボ復調回路16よりの位置信号をもとに、VCM駆動回路13、SPM駆動回路14の駆動を制御する制御信号を出力する。また、MCU19は、サーボ復調回路16で生成されるゲート信号を選択するゲート選択信号を出力する(詳細は後述する)。
【0037】
図15は、サーボ復調回路16のブロック図である。図15に示すように、サーボ復調回路16は、プリアンプ30、AGC回路31、サーボマーク検出器32、ゲート信号生成器33、トラック番号検出器34、PosA検出器35、PosB検出器36、PosC検出器37、PosD検出器38を備える。
【0038】
プリアンプ30は、リードチャネル15からの読み取り信号を増幅する。AGC回路31(自動ゲイン制御)は、読み取り信号のゲインを調整して、読み取り信号の振幅を一定に制御する。サーボマーク検出器32は、読み取り信号からサーボマーク(図1、2参照)を検出する。
【0039】
ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、入力される基準クロックに同期したタイミングでトラック番号検出器34、PosA検出器35、PosB検出器36、PosC検出器37、PosD検出器38のゲート信号を生成する。図16は、ゲート信号のタイムチャート図である。図16に示すように、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれるトラック番号の読み取りタイミングに合わせたピークP1を有するゲート信号G1を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosAの読み取りタイミングに合わせたピークP2を有するゲート信号G2を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosBの読み取りタイミングに合わせたピークP3を有するゲート信号G3を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosCの読み取りタイミングに合わせたピークP4を有するゲート信号G4を生成する。また、ゲート信号生成器33は、サーボマークの検出に応じて、読み取り信号に含まれる位置信号PosDの読み取りタイミングに合わせたピークP5を有するゲート信号G5を生成する。
【0040】
トラック番号検出器34は、ゲート信号G1に従って読み取り信号に含まれるトラック番号を検出(読み出し)し、そのトラック番号を出力する。PosA検出器35は、ゲート信号G2に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosAを検出(読み出し)し、その振幅をPosAとして出力する。PosB検出器36は、ゲート信号G3に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosBを検出(読み出し)し、その振幅をPosBとして出力する。PosC検出器37は、ゲート信号G4に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosCを検出(読み出し)し、その振幅をPosCとして出力する。PosD検出器38は、ゲート信号G5に従って読み取り信号に含まれる位置信号PosDを検出(読み出し)し、その振幅をPosDを出力する。
【0041】
なお、ゲート信号生成器33は、MCU19より出力されるゲート選択信号に応じて設定される動作モードに従って、ピークP2〜P5のタイミングが異なるゲート信号G2〜G5を生成する。
【0042】
図17は、ピークP2〜P5のタイミングが異なる様子を説明する概念図である。図17に示すように、ゲート選択信号に応じてモードM1が設定される場合、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号G2〜G5に含まれるピークP2〜P5の中心時刻Ta1、Tb1、Tc1、Td1は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの位置の中心と一致する。また、ピークP2〜P5の期間は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの幅と略一致する。このモードM1が設定された場合のピークP2〜P5のタイミングは、サーボマークを基準に位置信号PosA〜PosDの位置として見積もられる時刻に対応して、レジスタなどに書きこまれたピークP2〜P5の立ち上がり、立ち下がりの時刻を参照して生成される。
【0043】
また、ゲート選択信号に応じてモードM2が設定される場合、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号G2〜G5に含まれるピークP2〜P5は、モードM1の場合と比較して、読み出し期間が短く(幅を短く)されている。具体的には、読み出し期間がモードM1の場合の約半分にされている。また、ピークP2〜P5の中心時刻Ta2、Tb2、Tc2、Td2は、サーボマークに応じた位置信号PosA〜PosDの中心、すなわちバースト部の中心に相当する時刻(復調中心時刻)に近づけている。より具体的には、モードM2の場合のピークP2〜P5は、モードM1の場合のピークP2〜P5の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、上述した復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングをその基準に近づけたものである。
【0044】
したがって、モードM2が設定された場合のピークP2〜P5では、モードM1の場合と比較して、(Ta2+Tb2)/2として見積もられるPosNの中心と、(Tc2+Td2)/2として見積もられるPosQの中心とが復調中心時刻側にシフトする。このため、モードM2が設定された場合のピークP2〜P5では、上述したシミュレーションで示したように、磁気ヘッド4の半径方向の速度増加に伴ったPosN、PosQのシフトに対応していることから、復調限界速度の改善と、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との誤差の改善とが見込まれる。
【0045】
なお、このモードM2が設定された場合のピークP2〜P5のタイミングも、モードM1の場合と同様に、サーボマークを基準に位置信号PosA〜PosDの位置として見積もられる時刻に対応して、レジスタなどに書きこまれたピークP2〜P5の立ち上がり、立ち下がりの時刻を参照して生成される。
【0046】
ここで、2相のNULLパターンに対応したゲート信号について説明する。図18は、NULLパターンの場合のゲート信号を例示する概念図である。図18に示すように、NULLパターンの場合も上述した4相の場合と同様に、位置信号PosNの読み出しに対応したピークPNと、位置信号PosQの読み出しに対応したピークPQとを含むゲート信号が生成される。
【0047】
具体的には、ゲート選択信号に応じてモードM1が設定される場合、ピークPN、PQの中心時刻Tn1、Tq1は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの位置の中心と一致する。また、ピークPN、PQの期間は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの幅と略一致する。このモードM1が設定された場合のピークPN、PQのタイミングは、サーボマークを基準に位置信号PosN、PosQの位置として見積もられる時刻に対応して、レジスタなどに書きこまれたピークPN、PQの立ち上がり、立ち下がりの時刻を参照して生成される。
【0048】
また、ゲート選択信号に応じてモードM2が設定される場合、ピークPN、PQは、モードM1の場合と比較して、読み出し期間が短く(幅を短く)されている。具体的には、読み出し期間がモードM1の場合の約半分にされている。また、ピークPN、PQの中心時刻Tn2、Tq2は、サーボマークに応じた位置信号PosN、PosQの中心、すなわちバースト部の中心に相当する時刻(復調中心時刻)に近づけている。より具体的には、モードM2の場合のピークPN、PQは、モードM1の場合のピークPN、PQの立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、上述した復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングをその基準に近づけたものである。
【0049】
したがって、モードM2が設定された場合のピークPN、PQでは、モードM1の場合と比較して、PosNの中心と、PosQの中心とが復調中心時刻側にシフトする。このため、モードM2が設定された場合のピークPN、PQでは、上述したシミュレーションで示したように、磁気ヘッド4の半径方向の速度増加に伴ったPosN、PosQのシフトに対応していることから、復調限界速度の改善と、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との誤差の改善とが見込まれる。
【0050】
なお、このモードM2が設定された場合のピークPN、PQのタイミングも、モードM1の場合と同様に、サーボマークを基準に位置信号PosN、PosQの位置として見積もられる時刻に対応して、レジスタなどに書きこまれたピークPN、PQの立ち上がり、立ち下がりの時刻を参照して生成される。
【0051】
図14に戻り、MCU19は、位置復調部20と、誤差演算器21と、ゲイン補正部22と、サーボコントローラ23とを有する。この各部は、MCU19の機能をブロック化したものである。サーボコントローラ23は、位置誤差に応じて制御量を算出する周知のサーボコントローラである。また、サーボコントローラ23は、磁気ヘッド4をディスク6上の目標のトラックへ移動するシーク動作の有無に応じたゲート選択信号を出力する。
【0052】
図19は、ゲート選択信号の出力にかかる動作の一例を示すフローチャートである。図19に示すように、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドをもとに、シーク動作を行うか否かを判定する(S1)。シーク動作を行う場合(S1:YES)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S2)。シーク動作を行わない場合(S1:NO)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S3)。したがって、ディスク記憶装置100では、シーク動作を行う際には、モードM2の設定に応じたゲート信号が生成されて、サーボマークから位置信号が読み出されることとなる。
【0053】
また、サーボコントローラ23は、位置誤差に応じて、コアース制御、整定制御、フォロイング制御を実行する。図20は、サーボコントローラ23の動作説明図である。
【0054】
図20に示すように、コアース制御は、目標位置への速度制御である。コアース制御は、速度制御、PD制御、又は定常バイアス推定を含まないオブザーバ制御等により構成されている。また、コアース制御は、加速、定速、減速と、制御モードを切り替える。この加速モードは、電流を流し、速度を速くする制御である。定速モードは、電流を「0」にして、速度を一定速度に保つ制御である。減速モードは、電流を加速時とは反対方向に流し、速度を目標位置付近でゼロに近くする制御である。距離が小さい場合には、定速モードは含まれない。
【0055】
フォロイング制御は、磁気ヘッド4を目標位置に追従する制御である。フォロイング制御は、PID制御、PI×LeadLag、定常バイアス推定を含むオブザーバ制御等で構成される。整定制御は、コアース制御とフォロイング制御とのつなぎを行うための制御モードである。整定制御では、制御系に積分要素を含む。
【0056】
位置復調部20は、上述した計算式に従い、サーボ復調回路16からのトラック番号、PosA、PosB、PosC、PosDから復調位置(Position)を算出する。誤差演算器21は、復調位置yから目標位置rを差し引き、位置誤差を出力する第1の演算器と、トラック位置から目標位置を差し引き、位置誤差を出力する第2の演算器とを有する(図示しない)。ゲイン補正部22は、実速度と予め設定された制限速度とを比較し、速度を判定する。また、ゲイン補正部22は、サーボコントローラ23へ出力する位置誤差を、第1の演算器の位置誤差と、第2の演算器の位置誤差とから選択して、サーボコントローラ23に出力する。
【0057】
<実施形態にかかるディスク記憶装置によるシミュレーション>
ここで、実際の磁気ヘッド4の位置と、復調位置との関係を見るため、実施形態にかかるディスク記憶装置100をモデルにシミュレーションしてみる。なお、このシミュレーションでは、例えば面積パターンの場合であり、バースト部から4相の位置信号PosA、PosB、PosC、PosDを得て復調位置を復調している。
【0058】
図21−1、22−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図21−2、22−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【0059】
図21−1、図21−2では、磁気ヘッド4の半径方向の速度が40トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。この速度は、従来のディスク記憶装置の場合(図5−1、図5−2参照)、復調限界速度に至った速度である。しかしながら、図21−1、図21−2に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、モードM2の設定に応じたゲート信号が生成されているため、復調限界速度に至っていない。
【0060】
図22−1、図22−2では、磁気ヘッド4の半径方向の速度が65トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図22−1、図22−2に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド4の半径方向の速度が65トラック/サンプルで復調限界速度に至っている。すなわち、従来の場合と比較して、復調限界速度においては約50パーセントの改善となっている。
【0061】
同様に、例えばNULLパターンの場合であり、バースト部から2相の位置信号PosN、PosQを得て復調位置を復調する場合の、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果を例示する。図23−1、24−1は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置に対するPosN、PosQの様子を示すグラフである。また、図23−2、24−2は、実施形態にかかるディスク記憶装置100のシミュレーション結果において、磁気ヘッド4の実位置と復調位置との関係を示すグラフである。
【0062】
図23−1、図23−2では、磁気ヘッド4の半径方向の速度が80トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。この速度は、従来のディスク記憶装置の場合(図9−1、図9−2参照)、復調限界速度に至った速度である。しかしながら、図23−1、図23−2に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、モードM2の設定に応じたゲート信号が生成されているため、復調限界速度に至っていない。
【0063】
図24−1、図24−2では、磁気ヘッド4の半径方向の速度が320トラック/サンプルのシミュレーション結果を示している。図24−1、図24−2に示すように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド4の半径方向の速度が320トラック/サンプルで復調限界速度に至っている。すなわち、従来の場合と比較して、復調限界速度が約4倍になっている。また、面積パターンの場合と比べて、NULLパターンの方が復調限界速度の改善効果が高いことがわかった。上述したように、実施形態にかかるディスク記憶装置100では、シーク動作の応答性能の向上を阻害する要因の一つである復調限界速度が改善されることから、シーク動作の応答性能の更なる向上が可能となる。
【0064】
<磁気ヘッド4の速度に応じたゲート信号の切替>
次に、磁気ヘッド4の半径方向における移動速度に応じて、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号を切替える場合について説明する。図25は、磁気ヘッド4の移動速度に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。なお、図25に示す一連の動作は、シーク動作の開始に伴ってスタートされ、シーク動作中は、例えば1サンプル(算出した復調位置)ごとに1度実行される。
【0065】
図25に示すように、シーク動作が開始されると、算出手段としてのサーボコントローラ23は、半径方向における磁気ヘッド4の推定速度(Vest)を計算する(S10)。具体的には、サーボコントローラ23は、サーボマークの読み出しに応じて位置復調部20により算出した復調位置を一つのサンプルとしてスタックし、次のサンプルと比較する(微分する)ことで推定速度を計算する。また、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドの実行状態(実行中のコマンドとその実行時間)や、位置復調部20により算出した復調位置などの要素を元に所定の計算式で算出された推定速度を要素ごとのテーブルとするデータを参照し、推定速度を求めてもよい。
【0066】
次いで、サーボコントローラ23は、Vestの絶対値が予め設定された基準速度(V1)以下、すなわち磁気ヘッド4の推定速度の大きさが基準速度(V1)以下であるか否かを判定する(S11)。磁気ヘッド4の推定速度の大きさが基準速度(V1)以下である場合(S11:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力し(S13)、位置復調部20における、バースト部の位置信号を用いた復調位置の計算(バースト計算)を許可する(S15)。
【0067】
磁気ヘッド4の推定速度の大きさが基準速度(V1)より大きい場合(S11:NO)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S12)。サーボ復調回路16では、磁気ヘッド4の推定速度が基準速度(V1)より大きい場合にモードM2の設定に応じたゲート信号が生成され、磁気ヘッド4の推定速度が基準速度(V1)以下である場合にモードM1の設定に応じたゲート信号が生成される。磁気ヘッド4の推定速度が小さく、フォロイング動作に近い場合は、モードM1の設定に応じたゲート信号の方が位置信号の読み出し期間を長くできるため、対ノイズ性能を向上できる。逆に、磁気ヘッド4の推定速度が大きい場合は、モードM2の設定に応じたゲート信号の方が上述したとおり復調限界速度の向上が見込まれるため、シーク動作の応答性能の更なる向上が期待できる。
【0068】
S12に次いで、サーボコントローラ23は、Vestの絶対値が基準速度(V1)より大きい値として予め設定された基準速度(V2)以下、すなわち磁気ヘッド4の推定速度の大きさが基準速度(V2)以下であるか否かを判定する(S14)。この基準速度(V2)は、復調限界速度と見込みのある値よりも若干小さい値が予め設定される。
【0069】
磁気ヘッド4の推定速度の大きさが基準速度(V2)以下である場合(S14:YES)、サーボコントローラ23は、バースト計算を許可する(S15)。また、磁気ヘッド4の推定速度の大きさが基準速度(V2)より大きい場合(S14:NO)、サーボコントローラ23は、バースト計算を禁止する(S16)。すなわち、サーボ復調回路16では、バースト部の位置信号を用いた復調位置の計算が停止される。したがって、磁気ヘッド4の推定速度が復調限界速度に近づいた場合は、復調位置の計算が停止されることから、不確定な復調位置が位置復調部20より出力されることを未然に防止できる。
【0070】
<シーク距離に応じたゲート信号の切替>
次に、目標となるトラックと、シーク動作を開始する際の磁気ヘッド4の位置との間の距離(シーク距離)に応じて、ゲート信号生成器33が生成するゲート信号を切替える場合について説明する。図26は、シーク距離に応じたゲート信号の切り替えにかかる動作の一例を示すフローチャートである。
【0071】
図26に示すように、シーク動作が開始されると、サーボコントローラ23は、HDC18からのコマンドに応じた目標となるトラックと、位置復調部20より算出した復調位置、すなわち磁気ヘッド4の位置との間の距離(シーク距離)が、予め設定された閾値(L1)以下であるか否かを判定する(S20)。
【0072】
シーク距離が閾値(L1)以下である場合(S20:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S21)。シーク距離が閾値(L1)より大きい場合(S20:NO)、サーボコントローラ23は、モードM2の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力する(S22)。シーク動作時における磁気ヘッド4の最高速度は、シーク距離が決まれば事前に見積もることができる。したがって、上述したように、シーク距離に応じて生成するゲート信号を切り替えてもよい。
【0073】
S22に次いで、サーボコントローラ23は、シーク距離が閾値(L1)より小さい値として予め設定された閾値(L2)以下であるか否かを判定する(S23)。この閾値(L2)は、目標となるトラックに磁気ヘッド4の位置が十分近く、フォロイング動作に切り替わる程度のシーク距離として見積もられる値が予め設定される。
【0074】
シーク距離が閾値(L2)より大きい場合(S23:NO)は処理を待機する。シーク距離が閾値(L2)以下である場合(S23:YES)、サーボコントローラ23は、モードM1の設定を行うゲート選択信号をサーボ復調回路16へ出力し、モードM2の設定からの切り替えを行う(S24)。したがって、シーク距離がフォロイング動作に切り替わる程度に縮まった場合は、モードM1の設定に応じたゲート信号に切り替えて位置信号の読み出し期間を長くし、対ノイズ性能を向上できる。
【0075】
<実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器>
次に、実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器を説明する。図27は、実施形態にかかるディスク記憶装置100を備える電子機器1000を例示するブロック図である。
【0076】
図27に示すように、電子機器1000は、ディスク記憶装置100、CPU110、ROM120(Read Only Memory)、RAM130(Random Access Memory)、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部140、キーボードやポインティングデバイス等の操作部150、インターネット等と接続するための通信I/F160を備える。ディスク記憶装置100を含めた各部は、バス170により互いに接続され、CPU110の制御の元に動作する。電子機器1000の具体例としては、PC(Personal Computer)、ノートPC、HDDレコーダ、HDDを内蔵するテレビジョン受信装置等がある。
【0077】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0078】
100…ディスク記憶装置、3…VCM、4…磁気ヘッド、6…ディスク、5…スピンドルモータ、8…アーム、9…フレクシャ、13…VCM駆動回路、14…SPM駆動回路、15…リードチャネル、16…サーボ復調回路、17…バッファ、18…HDC、19…MCU、20…位置復調部、21…誤差演算器、22…ゲイン補正部、23…サーボコントローラ、30…プリアンプ、31…AGC回路、32…サーボマーク検出器、33…ゲート信号生成器、34…トラック番号検出器、35…PosA検出器、36…PosB検出器、37…PosC検出器、38…PosD検出器、60…サーボパターン、G1〜G5…ゲート信号、PosA〜PosQ…位置信号、P1〜P5、PN、PQ…ピーク、M1、M2…モード、1000…電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、
回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、
前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号生成手段は、前記制御手段が目標となるトラックへ前記ヘッドを移動させるシーク動作を行う際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置。
【請求項2】
前記第2のタイミング信号は、前記位置信号ごとの前記第1のタイミング信号の立ち上がり及び立ち下がりタイミングにおいて、前記復調中心時刻に近い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを基準に、遠い側の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを前記基準に近づけた信号である、
請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
半径方向における前記ヘッドの移動速度を算出する算出手段を更に備え、
前記信号生成手段は、算出された前記移動速度が予め設定された第1の基準速度より大きい場合に前記第2のタイミング信号を生成し、前記第1の基準速度以下である場合に前記第1のタイミング信号を生成する、
請求項1又は2に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記復調手段は、前記第1の基準速度より大きい値として予め設定された第2の基準速度よりも、算出された前記移動速度が大きい場合、読み出された複数の前記位置信号をもとにした前記ヘッドの位置の復調を停止する、
請求項3に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
前記信号生成手段は、目標となる前記トラックと、前記シーク動作を開始する際の前記ヘッドの位置との間の距離が予め設定された第1の閾値より大きい場合に前記第2のタイミング信号を生成し、前記距離が前記第1の閾値以下である場合に前記第1のタイミング信号を生成する、
請求項1又は2に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記信号生成手段は、前記第2のタイミング信号を生成している際に、目標となる前記トラックと、前記ヘッドの位置との間の距離が前記第1の閾値より小さい値として予め設定された第2の閾値以下となる場合、前記第1のタイミング信号の生成に切替える、
請求項5に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記記録領域に記録された複数の前記位置信号は、当該記録領域で4相のパターンを示す信号である、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
前記記録領域に記録された複数の前記位置信号は、当該記録領域で2相のパターンを示す信号である、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のディスク記憶装置。
【請求項9】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、
回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段とを有するディスク記憶装置のコントローラであって、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成手段と、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調手段と、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号生成手段は、前記制御手段が目標となるトラックへ前記ヘッドを移動させるシーク動作を行う際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置のコントローラ。
【請求項10】
トラックごとに、トラック中心からのオフセット位置を検出するための複数の位置信号が記録された記録領域を有するサーボパターンが記録されたディスクと、
回転する前記ディスクから当該ディスクに記録されたデータの読み出しを行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、を有するディスク記憶装置による制御方法であって、
読み出された前記データから複数の前記位置信号を読み出すタイミングを示す第1のタイミング信号を生成する信号生成ステップと、
生成された第1のタイミング信号に従って読み出された複数の前記位置信号をもとに、前記ヘッドの位置を復調する復調ステップと、
復調された前記ヘッドの位置を参照して前記駆動手段を制御する制御ステップと、を含み、
前記信号生成ステップは、前記制御ステップが目標となるトラックへ前記ヘッドを移動させるシーク動作を行う際に、前記第1のタイミング信号に対して複数の前記位置信号のそれぞれを読み出す期間を短くするとともに、それぞれの期間の中心時刻を前記記録領域の中心に相当する復調中心時刻に近づけた第2のタイミング信号を生成するディスク記憶装置による制御方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のディスク記憶装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−138142(P2012−138142A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288844(P2010−288844)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】