説明

ディスク記憶装置及びオフセット測定方法

【課題】ディスクの1回転でのオフセットの変動が大きい場合でも、オフセット値を高精度で測定できるディスク記憶装置を提供することにある。
【解決手段】DTM型ディスク10を使用し、ダイナミック・オフセット制御に必要なダイナミック・オフセット値を測定するオフセット測定機能を有するディスクドライブ1が開示されている。CPU17は、ディスク10上のランドの最適位置にオフセット測定用位置情報を書き込み、このオフセット測定用位置情報に基づいてダイナミック・オフセット値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブなどのディスク記憶装置に関し、特に、ディスクリート・トラック媒体であるディスクを使用し、当該ディスク上でのリード/ライトヘッドのオフセット測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブを代表とするディスク記憶装置(以下、ディスクドライブと表記する場合がある)では、磁気記録媒体であるディスクとして、ディスクリート・トラック媒体(discrete track media : DTM)型のディスクが注目されている。DTM型ディスクは、基板上にデータの磁気記録領域である磁性領域と非磁性領域(非磁性ガード帯)とが分断形成されたパターンが形成されている。ディスクドライブは、指定の磁性領域上に磁気ヘッドを位置決めして、データを記録または記録されているデータを再生する。ここで、データが記録された磁性領域をデータトラックと呼ぶ場合がある。
【0003】
磁気ヘッドは、1つのスライダ(ヘッド本体)上に、リードヘッドとライトヘッドとが分離して実装された構造である。リードヘッドは、ディスク上からデータを読出すためのヘッドである。ライトヘッドは、ディスク上にデータを書き込むヘッドである。このような構造の磁気ヘッドでは、ディスク媒体上の半径位置に依存して、リードヘッドとライトヘッドのそれぞれのトラック軌跡に、一定のオフセット(位置ずれ)が発生している。
【0004】
ディスクドライブでは、ディスク上の指定位置に磁気ヘッドを位置決めするときに、リードヘッドとライトヘッドのそれぞれに対して、測定されたオフセット値に基づいて位置調整を行なうオフセット制御が実行されている。ここで、オフセット制御では、ディスク偏心(disk runout)などを考慮し、ディスクの1回転で変化するオフセット値を使用して制御を行なうダイナミック・オフセット制御(dynamic offset control : DOC)が有効である(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
従来では、オフセット制御に必要なオフセット値を測定するために、測定用データをDTM型ディスク上に記録し、この測定用データを磁気ヘッドにより読出すことでオフセット値を算出する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2005−216378号公報
【特許文献2】特開2007−265546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、DTM型ディスクに対するオフセット値の測定方法として、測定用データをディスク上に記録し、この測定用データを磁気ヘッドにより読出すことでオフセット値を算出する方法がある。DTM型ディスクでは、パターン形成されている磁性領域上に、磁気ヘッドのライトヘッドにより測定用データを書き込むことになる。
【0007】
しかしながら、ディスク偏心などによりディスクの1回転でのオフセットの変動が大きい場合、磁性領域上に測定用データを確実に書き込むことができない状態が発生する可能性がある。この場合、測定用データを高精度で読出すことができないため、オフセット値の測定精度が低下することになる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ディスクの1回転でのオフセットの変動が大きい場合でも、オフセット値を高精度で測定できるディスク記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点に従ったディスク記憶装置は、データの磁気記録領域である磁性領域と非磁性領域とが分断されて同心円状に構成されているデータ領域、及びサーボ情報が記録されているサーボ領域が設けられているディスクリート・トラック媒体型のディスクと、前記ディスク上に対してデータを書き込むライトヘッド及び前記ディスク上からデータを読み出すリードヘッドのそれぞれが分離して設けられている磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを搭載し、前記ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御し、前記磁気ヘッドを前記ディスク上の指定位置に位置決めするコントローラとを有し、前記コントローラは、データの書き込み動作またはデータの読み出し動作に応じて前記磁気ヘッドを前記ディスク上の指定位置に位置決めするときに、ダイナミック・オフセット値に基づいたオフセット調整を行うオフセット制御手段と、前記ダイナミック・オフセット値を測定するためのオフセット測定用位置情報を、前記ディスク上の磁性領域に含まれる最適な位置に書き込む書き込み手段と、前記書き込み手段により記録された前記オフセット測定用位置情報を使用して、前記ダイナミック・オフセット値を算出する測定手段とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、DTM型ディスクを使用するディスク記憶装置において、ディスクの1回転でのオフセットの変動が大きい場合でも、オフセット値を高精度で測定できるディスク記憶装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(ディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関するディスクドライブの構成を説明するためのブロック図である。
【0013】
本実施形態のディスクドライブ1は、図1に示すように、磁気記録媒体であるディスク10と、当該ディスク10を回転させるスピンドルモータ(SPM)11と、磁気ヘッド12と、磁気ヘッド12を搭載しているアクチュエータ13とを有する。磁気ヘッド12は、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとが、1つのスライダ上に分離して実装されている構造である。リードヘッド12Rは、ディスク10から記録されているユーザデータやサーボ情報を読出す。ライトヘッド12Wは、ディスク10上にユーザデータや、後述するオフセット測定用データであるオフセット測定用位置情報を書き込む。
【0014】
ディスク10は、図2に示すように、ディスクリート・トラック媒体(DTM)型のディスクである。ディスク10は、ユーザデータを記録するデータ領域として、磁性層からなる磁性領域であるランド(Land)110と、非磁性領域(磁気記録ができない領域)であるグルーブ(Groove)120とが分断して同心円状に構成されている。即ち、データトラックを構成するランド110と、グルーブ120からなる非磁性ガード帯とが同心円状に配置されるようにパターン形成されている。
【0015】
また、ディスク10は、周方向に一定間隔を有する放射状のサーボ領域100が形成されている。サーボ領域100は、磁気ヘッド12をディスク上の指定位置(目標のデータトラック)に位置決めするためのサーボ情報が記録されている領域である。サーボ領域100は、データ領域と同様に、磁性領域であるランドと非磁性領域であるグルーブとが混在するパターン形成されている。
【0016】
サーボ情報は大別して、アドレス情報とサーボバースト信号(A〜D)を有する。アドレス情報は、データトラックを識別するトラックアドレス(シリンダアドレス)及びデータセクタを識別するセクタアドレスを示すコードである。サーボバースト信号は、データトラック内の位置を検出するための位置誤差情報(PES)を算出するための精密位置情報である。
【0017】
アクチュエータ13は、磁気ヘッド12を搭載しているサスペンション、アーム及びボイスコイルモータ(VCM)を有し、磁気ヘッド12をディスク10上の半径方向に移動させる。
【0018】
さらに、ディスクドライブ1は、ヘッドアンプユニット14、リード/ライトチャネル15、ハードディスクコントローラ(HDC)16、マイクロプロセッサ(CPU)17及びモータドライバ18を有する。モータドライバ18は、SPM11に駆動電流を供給するSPMドライバ及びアクチュエータ13のVCMに駆動電流を供給するVCMドライバを有する。VCMドライバは、CPU17のヘッド位置決め制御(サーボ制御)に応じてアクチュエータ13のVCMに駆動電流を供給して、磁気ヘッド12をディスク10上の半径方向に移動制御する。
【0019】
ヘッドアンプユニット14は、磁気ヘッド12のリードヘッド12Rにより読出されたリード信号を増幅してリード/ライトチャネル15に出力するリードアンプを含む。また、ヘッドアンプユニット14は、リード/ライトチャネル15から出力されるライトデータをライト信号(ライト電流)に変換して、磁気ヘッド12のライトヘッド12Wに供給するライトドライバを含む。
【0020】
リード/ライトチャネル15は、リード/ライトデータ信号を処理する信号処理ユニットである。リード/ライトチャネル15は、ユーザデータや後述するオフセット測定用位置情報を変調または復調するユニットや、サーボ情報を復調するユニットなどを含む。HDC16は、ディスクドライブ1とホストシステム(パーソナルコンピュータやディジタル機器)とのインタフェースを構成し、ホストシステムとのユーザデータのリード/ライト転送制御などを実行する。また、HDC16は、リード/ライトチャネル15のリード/ライト動作を制御する。
【0021】
CPU17は、ディスクドライブ1のメインコントローラであり、ヘッド位置決め制御(サーボ制御)を実行するためのサーボシステムのメイン要素である。CPU17は、ヘッド位置決め制御と共に、本実施形態に関するダイナミック・オフセット制御(DOC)機能、そのDOCに関連するオフセット測定機能、及びセルフサーボライト機能を有する。
【0022】
(ダイナミック・オフセット制御)
以下、本実施形態のディスクドライブ1におけるオフセット測定処理を説明する。
【0023】
まず、本実施形態のオフセット測定処理に関連するダイナミック・オフセット制御(DOC)について説明する。
【0024】
図3は、ディスク偏心(disk runout)が無い場合に、DTM型ディスク10上のデータトラックの状態を示す図である。ここで、データトラックとは、データが記録されたランド110または記録対象のランド110である。また、サーボ領域100は、サーボ情報が記録されている領域である。ここで、本実施形態では、便宜的に、サーボ領域100のサーボ情報として、サーボバースト信号(精密位置情報)A〜Dのみを図示する。サーボ領域100には、サーボバースト信号以外に、アドレス情報や同期信号などが記録(パターン形成)されている。
【0025】
ディスクドライブ1では、CPU17は、リードヘッド12Rにより読出されたサーボ情報に基づいて、ライトヘッド12Wをデータトラック(ランド110)の中心線130上に位置決めして、データの書き込み動作を実行させる。この場合、ディスク偏心が無いため、データトラックの軌跡とランド110の領域とが一致している。通常では、ディスク偏心は、同一のサーボアドレス(トラックアドレス)において、ディスク10の1回転の軌跡であるサーボトラックが、ディスク10の回転中心に対する回転円軌跡に対して偏差を有する状態を意味する。
【0026】
図4は、ディスク偏心が有る場合のデータトラックの状態を示す図である。このようなディスク偏心が有る場合、図4に示すように、リードヘッド12Rの位置(ランド110の中心線220)と、データトラックのオフセット量(ライトヘッド12Wの位置)とが、ディスク10の1回転で変化し、ライトヘッド12Wの軌跡(中心線230)とランド110とが異なる状態が発生する。
【0027】
このような状態において、ディスク10の1回転で変化するデータトラックのオフセットをダイナミック・オフセット(DO)と呼び、そのオフセット量をダイナミック・オフセット値(単にオフセット値と表記する場合がある)とする。なお、図4などにおいて、符号200で示す矢印は、DO変動が発生していることを示す。
【0028】
ランド110には、ライトヘッド12Wの軌跡に従ったデータ記録領域(これがデータトラックとなる)210が形成される。しかしながら、リードヘッド12Rは、ランド110上を走行するように位置決めされるため、ランド110上のデータ記録領域210以外の領域からは磁気記録信号を得ることができない。
【0029】
以上のようにディスク偏心がある場合には、リードヘッド12Rにより記録データを再生する場合のビット誤り率(BER)が劣化するため、ディスクドライブ1のCPU17は、データ書込み時には、ライトヘッド12Wがランド110上を走行するように、ディスク10の回転に同期させてダイナミック・オフセット200を調整するダイナミック・オフセット制御(dynamic offset control : DOC)を実行する。特に、データ書込み時に、DTM型ディスク10上のランド110に、ライトヘッド12Wを位置決めするときのDOCをライトDOC(Write-DOC)と呼ぶ。
【0030】
このライトDOCの動作では、各データトラック(ランド110)におけるDO情報であるダイナミック・オフセット値が必要となる。そこで、本実施形態のディスクドライブ1では、CPU17は、ダイナミック・オフセット値を測定するためのオフセット測定処理を実行する。具体的には、CPU17はオフセット測定処理を、例えばディスクドライブ1の起動時に毎回行なう。また、ディスクドライブ1の動作中に、CPU17がディスク10の中心がシフトするディスクシフトの検出時に、オフセット測定処理を実行してもよい。ディスクシフトの検出方法は、例えばDOにより、サーボ領域100の間隔の変化に基づいて判定する方法でもよい。また、CPU17は、ディスクドライブ1の動作中に、衝撃などの外乱がショックセンサにより検出されたときに、ディスクシフトが検出されたと判定し、オフセット測定処理を実行してもよい。ここで、ディスクシフトが生ずると、ディスク偏心量が変化する。ディスク偏心は、ディスクドライブ1のスピンドルモータ11の取付誤差などにより発生する。
【0031】
(オフセット測定処理)
以下、図5から図16、及び図17,18のフローチャートを参照して、本実施形態のオフセット測定処理を説明する。
【0032】
本実施形態では、ディスクドライブ1は、オフセット測定用データとして、ディスク10上にオフセット測定用位置情報(E,F)を書込む。オフセット測定用位置情報(E,F)は、サーボバースト信号A〜Dと同様の精密位置情報である。即ち、オフセット測定用位置情報は、サーボ情報に含まれるサーボバースト信号A〜Dに相当するバースト信号E,F(バーストE,Fと表記する場合がある)からなり、半径方向と周方向に位相がずれた2つのオフセット測定用バースト信号である。
【0033】
CPU17は、リードヘッド12Rにより読出されたオフセット測定用位置情報に基づいて、ダイナミック・オフセット値(DO値)を算出する。CPU17は、ディスク10上の最内周領域に存在するランド110を測定用トラックとして設定し、例えばサーボ領域100の直後の領域をオフセット測定用位置情報の書き込み位置として設定する。この測定用トラックは、通常のユーザデータを書き込まない領域として設定される。
【0034】
CPU17は、アクチュエータ13を駆動制御して、磁気ヘッド12を測定用トラックまでシークさせる(ステップS1)。通常では、CPU17は、ライトDOCを実行することで、ライトヘッド12Wを測定用トラックのランド110に、オフセット測定用位置情報を書き込む。
【0035】
ここで、DO変動が大きい場合、ランド110上にオフセット測定用位置情報を書き込むことができない。そこで、CPU17は、図17のフローチャートに示すように、最適な位置にオフセット測定用位置情報を書き込むために、オフセット測定用位置情報の書込み位置を調整する処理を実行する。
【0036】
まず、CPU17は、ライトDOC機能をオフし、オフセット測定用位置情報の書き込み時のダイナミック・オフセット制御(DOC)動作を実行しない(ステップS2)。次に、CPU17は、ライトヘッド12Wにより、測定用トラックのランド110上で、サーボ領域100のサーボバースト信号A〜Dの直後に、セルフサーボライト機能によりオフセット測定用位置情報(E,F)を書き込む(ステップS4)。
【0037】
ここで、図6に示すように、ディスク10の1回転中に、ランド110上のi番目のトラックオフセット位置、即ち、例えば最初のサーボ領域100の直後にライトヘッド12Wによりサーボバースト信号Eを書き込む。さらに、一定のトラックオフセット後に、サーボバースト信号Fを書き込む。図6は、ランド110上の最適な位置にオフセット測定用位置情報(E,F)が書き込まれた状態を示す。即ち、オフセット測定用位置情報(E,F)の書き込み位置が最適な場合には、サーボバースト信号E,Fの境界軌跡は、ランド110上の中心線220に一致する。
【0038】
次に、CPU17は、リードヘッド12Rを予め求められた一定距離だけトラックオフセットし、ライトヘッド12Wを使用したセルフサーボライトにより記録したオフセット測定用位置情報(E,F)を再生する。CPU17は、再生したオフセット測定用位置情報(E,F)に基づいて、リードヘッド12Rの位置誤差情報(PES)を算出する(ステップS5)。CPU17は、ディスク10の1回転に亘って、算出した位置誤差情報(PES)の平均値を算出する(ステップS6)。このような処理を、ランド110上に設定した測定位置数分だけ繰り返す(ステップS7,S8)。
【0039】
即ち、CPU17は、ディスク10の1回転に亘る位置誤差情報(PES)の平均値を算出することにより、ディスク10の1回転で変化するリードヘッド12Rとライトヘッド12Wのオフセット値(ダイナミック・オフセット値DO)を、直接的に高精度で観測する。
【0040】
ここで、位置誤差情報PESは、下記式(1)に示すように、オフセット測定用位置情報(E,F)を再生したときの各振幅値bstE,bstFから算出される。
【0041】
PES=(bstE−bstF)/(bstE+bstF)…(1)
また、オフセット値測定用位置情報OPは、下記式(2)に示すように、位置誤差情報PESと換算係数PESgから算出される。換算係数PESgは、各振幅値bstE,bstFと位置誤差情報のゲイン係数である。
【0042】
OP=PES×PESg…(2)
ここで、前述したように、DO変動が大きい場合、ランド110上にオフセット測定用位置情報を高精度に書き込むことができない。そこで、最適な位置にオフセット測定用位置情報を書き込むために、オフセット測定用位置情報の書込み位置を調整する処理が必要となる。以下、図5から図10を参照して、書込み位置の調整処理について具体的に説明する。
【0043】
図5は、ダイナミック・オフセット200が大きく変動し、ライトヘッド12Wによるオフセット測定用位置情報の書き込み位置がディスク10の内周側にオフセットしている状態を示す。また、図7は、ダイナミック・オフセット200が大きく変動し、ライトヘッド12Wによるオフセット測定用位置情報の書き込み位置がディスク10の外周側にオフセットしている状態を示す。図6は、前述したように、オフセット測定用位置情報の書き込み位置が最適な場合を示す。
【0044】
即ち、図6に示すように、オフセット測定用位置情報(E,F)の書き込み位置が最適である場合には、バーストEとバーストFの境界軌跡220がランド110の中心線上にある。一方、図5及び図7に示すように、書き込み位置がオフセットしている場合には、バーストEとバーストFの境界軌跡220が、ランド110の中心線からずれた状態となる。この場合、ライトヘッド12Wのトラック幅や環境温度、浮上量などの影響により、当該ずれ量は変化する。
【0045】
図8は、オフセット測定用位置情報の書き込位置に応じて、CPU17が算出する位置誤差情報(PES)のプロファイルを示す図である。図8に示すように、オフセット測定用位置情報の書き込位置が最適位置のプロファイル81は点対称となる。しかし、書き込み位置が内周側にオフセットしている場合のプロファイル80及び外周側にオフセットしている場合のプロファイル82は、点対称とならない。
【0046】
図9は、オフセット測定用位置情報の書き込位置において、ディスク1回転分の位置誤差情報(PES)の平均値を示す。即ち、書き込位置が最適位置であるランド110の中央LCの場合には、その平均値90はゼロとなる。一方、DOによりランド110の中央に対して書き込位置がずれている場合には、−1から+1の範囲で変化する平均値91,92となる。なお、図9において、LWはランド110の幅を意味する。
【0047】
以上から、CPU17は、位置誤差情報(PES)の平均値がゼロとなる書き込み位置(トラックオフセット値)及び換算係数PESgを算出することにより、オフセット測定用位置情報(E,F)のバーストE,Fの境界軌跡をランド110の中心線上に設定できる(ステップS9)。
【0048】
図10(A),(B)は、ディスク10上に書き込まれたオフセット測定用位置情報のバーストE,Fの各振幅値から位置誤差情報に変換する換算係数(PESg)を算出する方法を説明するための図である。図10(A)に示すように、本実施形態では、オフセット測定用位置情報のバーストE,Fの書き込み位置を、ヘッドの走行方向にずらした場合を示す。なお、必ずしも、図10(A)に示すように、バーストE,Fをずらして書き込む必要は無い。また、CPU17は、本算出処理を、オフセット測定用位置情報の書き込位置の調整処理と同時に実行する(ステップS9)。
【0049】
CPU17は、ある特定のサーボ領域(サーボセクタ)10の直後に書き込まれたオフセット測定用位置情報のバーストE,Fをリードヘッド12Rにより読み出すことにより、図10(B)に示す位置誤差情報(PES)を算出する。ここで、図10(B)に示すグラフの傾きの逆数が、振幅値と位置誤差情報の換算係数PESgとなる。しかし、実際上の測定処理では、PESプロファイルが理想的な条件に対する理想値よりも歪む。そこで、原点近傍で直線近似をして、換算係数PESgを算出してもよい。
【0050】
次に、図11から図16、及び図18のフローチャートを参照して、本実施形態のダイナミック・オフセット値DOの測定方法を具体的に説明する。
【0051】
CPU17は、図18に示すように、ライトDOC機能を有効にして、DOC機能に関係するパラメータをセットする(ステップS11〜S13)。CPU17は、前述の書き込み調整により設定したディスク10上のランド110(測定用トラック)の最適位置に、オフセット測定用位置情報140のバーストE,Fを書き込む(ステップS14)。
【0052】
即ち、図11に示すように、ディスク10の1回転中に、ランド110上のi番目のトラックオフセット位置、即ち、例えば最初のサーボ領域100の直後にライトヘッド12Wによりサーボバースト信号Eを書き込む。さらに、一定のトラックオフセット後に、サーボバースト信号Fを書き込む。
【0053】
図12は、ディスク10の1回転におけるダイナミック・オフセット200を観測したときの図である。即ち、ランド110上の中心線220に対するオフセット位置誤差量を、実線230で示すDOとして観測できる。ここで、実際のダイナミック・オフセット値DOは、点線240で示すものであり、直接的に観測することができない。
【0054】
そこで、CPU17は、実線230のプロファイルから実際のダイナミック・オフセット240を推定する。具体的には、CPU17は、ディスク10の1回転におけるオフセット測定用位置情報の最大ダイナミック・オフセット値DO(j)を算出する(ステップS15)。CPU17は、算出した最大ダイナミック・オフセット値DO(j)を使用して推定ダイナミック・オフセット値DOを算出する(ステップS16)。CPU17は、算出した推定値DOを、実際のDOC機能のDOC設定値として記憶する(ステップS17)。
【0055】
図13は、前述の推定値DOを打ち消すように、オフセット測定用位置情報140をディスク10上のランド110に書き込みした状態を示す図である。即ち、CPU17は、推定ダイナミック・オフセット値DOを使用したライトDOCを実行して、ランド110上にオフセット測定用位置情報のバーストE,Fを書き込んでいる。
【0056】
図14は、ディスク10の1回転におけるダイナミック・オフセット230を観測したときの図である。図14に示すように、ランド110上の中心線220に対するオフセット位置誤差量は、低減している。しかし、推定ダイナミック・オフセット値DOを使用したときの推定誤差260が存在するため、オフセット位置誤差変動は僅かであるが、残存している。また、ダイナミック・オフセット230には、位置誤差情報PESの振幅値と位置情報との換算誤差が含まれているので、必ずしも真値であるとは限らない。
【0057】
図15は、前述の推定値DO及び推定誤差260を考慮して、オフセット測定用位置情報をディスク10上のランド110に、DOを打ち消すようにオフセット測定用位置情報を書き込んだときの図である。即ち、CPU17は、推定ダイナミック・オフセット値DO及び推定誤差260を考慮してライトDOCを実行して、ランド110上にオフセット測定用位置情報のバーストE,Fを書き込んでいる。
【0058】
図16は、推定ダイナミック・オフセット値DO及び推定誤差260から予想されるダイナミック・オフセット値DOが正しい場合に、オフセット位置誤差変動が閾値250の範囲内となるダイナミック・オフセット230を示す。即ち、CPU17は、観測されたダイナミック・オフセット値DOの誤差量が閾値TH内となるまで、ステップS14からの処理を繰り返す(ステップS18,S19)。ここで、換算誤差はオフセット位置誤差が0近傍では無視できるほど小さい。CPU17は、オフセット位置誤差変動が閾値内となったときにセットしてあるライトDOCのDOC設定値を観測したトラックにおけるダイナミック・オフセット値DOとして設定する。
【0059】
以上のようにして本実施形態によれば、指定の測定用トラックであるランド110上にオフセット測定用位置情報を書き込み、このオフセット測定用位置情報を読出して推定ダイナミック・オフセット値DOを算出する。この推定ダイナミック・オフセット値DOを使用して、ランド110上の中心線220に対するオフセット位置誤差変動量が閾値内となるまで、ランド110上にオフセット測定用位置情報を書き込む処理を繰り返す。これにより、ランド110上の最適な位置に、オフセット測定用位置情報を書き込むことが可能となる。従って、CPU17は、ランド110上の最適な位置からオフセット測定用位置情報を高精度に再生し、高精度のDOCに必要な実際上のダイナミック・オフセット値DOを設定することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態は、ディスク全面が磁性領域であるディスクを使用するディスクドライブに対しても適用可能である。この場合、オフセット測定用位置情報の書き込位置調整は、セルフサーボライト機能を用いて書き込んだバーストE、バーストFに対して、リードヘッド12Rをトラックオフセットさせて、ディスク1回転分のPES平均値が0となる位置を求める方法でもよい。この方法であれば、オフセット測定用位置情報の記録動作を含まないことから、測定時間の短縮化を図ることが可能である。但し、当然ながら、本方法は、DTM型ディスク10ではランド110の位置が固定であるため、適用できない。
【0061】
また、セルフサーボライト機能により書き込みしたバーストE,Fを用いたダイナミック・オフセット値DOを算出する方法として、推定DO値を算出した後に、データの読み出し時にDOCを実行するリードDOC機能を実行する方法でもよい。本方法は、リードDOC機能により位置誤差情報を再生し、誤差が閾値内に収まったときに設定されているDOC設定値をダイナミック・オフセット値DOとして設定する方法である。この方法であれば、オフセット測定用位置情報の記録動作を含まないことから、測定時間の短縮化を図ることが可能である。但し、当然ながら、本方法は、DTM型ディスク10ではランド110の位置が固定であるため、適用できない。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に関するディスクドライブの構成を説明するためのブロック図。
【図2】本実施形態に関するDTM型ディスクの構造を説明するための図。
【図3】本実施形態に関してディスク偏心が無い場合のデータトラックの状態を示す図。
【図4】本実施形態に関してディスク偏心が有る場合のデータトラックの状態を示す図。
【図5】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書き込み位置が内周側にオフセットしている状態を示す図。
【図6】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書き込み位置が最適な場合を示す図。
【図7】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書き込み位置が外周側にオフセットしている状態を示す図。
【図8】本実施形態に関する位置誤差情報のプロファイルを示す図。
【図9】本実施形態に関するディスク1回転分の位置誤差情報の平均値を示す図。
【図10】本実施形態に関する換算係数の算出方法を説明するための図。
【図11】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書き込み状態を示す図。
【図12】本実施形態に関するダイナミック・オフセットのプロファイルを示す図。
【図13】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書き込み状態を示す図。
【図14】本実施形態に関するダイナミック・オフセットのプロファイルを示す図。
【図15】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書き込み状態を示す図。
【図16】本実施形態に関するダイナミック・オフセットのプロファイルを示す図。
【図17】本実施形態に関するオフセット測定用位置情報の書込み位置の調整処理の手順を説明するためのフローチャート。
【図18】本実施形態に関するオフセット測定処理の手順を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
1…ディスクドライブ、10…ディスクリート・トラック媒体型のディスク、
11…スピンドルモータ(SPM)、12…磁気ヘッド、12R…リードヘッド、
12W…ライトヘッド、13…アクチュエータ、14…ヘッドアンプユニット、
15…リード/ライトチャネル、16…ハードディスクコントローラ(HDC)、
17…マイクロプロセッサ(CPU)、18…モータドライバ、
100…サーボ領域(サーボセクタ)、110…ランド(磁性領域)、
120…グルーブ(非磁性領域)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの磁気記録領域である磁性領域と非磁性領域とが分断されて同心円状に構成されているデータ領域、及びサーボ情報が記録されているサーボ領域が設けられているディスクリート・トラック媒体型のディスクと、
前記ディスク上に対してデータを書き込むライトヘッド及び前記ディスク上からデータを読み出すリードヘッドのそれぞれが分離して設けられている磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを搭載し、前記ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御し、前記磁気ヘッドを前記ディスク上の指定位置に位置決めするコントローラとを有し、
前記コントローラは、
データの書き込み動作またはデータの読み出し動作に応じて前記磁気ヘッドを前記ディスク上の指定位置に位置決めするときに、ダイナミック・オフセット値に基づいたオフセット調整を行うオフセット制御手段と、
前記ダイナミック・オフセット値を測定するためのオフセット測定用位置情報を、前記ディスク上の磁性領域に含まれる最適な位置に書き込む書き込み手段と、
前記書き込み手段により記録された前記オフセット測定用位置情報を使用して、前記ダイナミック・オフセット値を算出する測定手段と
を含むことを特徴とするディスク記憶装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記測定手段により算出されたダイナミック・オフセット値の推定値を使用して、前記書き込み手段を制御することで、前記オフセット測定用位置情報を前記磁性領域の最適な位置に書き込むことを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
前記オフセット測定用位置情報は、前記サーボ情報に含まれるサーボバースト信号に相当するバースト信号からなり、半径方向と周方向に位相がずれた2つのオフセット測定用バースト信号を含むことを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記コントローラは前記書き込み手段を制御することで、
前記オフセット測定用位置情報の前記各オフセット測定用バースト信号の境界軌跡が前記ディスクの1回転において前記磁性領域の中央部分と一致するように、前記オフセット測定用位置情報を前記磁性領域に書き込むことを特徴とする請求項3に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
前記コントローラは前記書き込み手段を制御することで、
前記リードヘッドにより読出された前記オフセット測定用位置情報に基づいて、前記リードヘッドと前記ライトヘッドとのオフセット値を算出し、
前記ディスクの1回転において変化する前記オフセット値が所定の範囲内になるように、前記ディスク上の書き込み位置を調整して、当該書き込み位置を前記最適な位置として前記オフセット測定用位置情報を書き込むことを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記書き込み手段を制御することで、前記各オフセット測定用バースト信号のそれぞれを前記ディスク上の半径方向にオフセットさせた位置に書き込み、
前記ディスクの1回転における前記各オフセット測定用バースト信号の振幅値の平均値が等しくなる位置を前記最適な位置として設定することを特徴とする請求項4に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記ディスクの1回転における前記各オフセット測定用バースト信号の振幅値の比から、前記各オフセット測定用バースト信号に基づいて算出する位置誤差情報に変換するための換算係数を算出することを特徴とする請求項3、4、6のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記換算係数と前記前記各オフセット測定用バースト信号の振幅値の比とを乗算して位置誤差情報に変換し、前記ディスクの1回転における前記磁気ヘッドの位置誤差量を算出することを特徴とする請求項7に記載のディスク記憶装置。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記ディスクの1回転における前記位置誤差量を補正して、前記各オフセット測定用バースト信号に基づいて算出される位置誤差量が閾値内に収まるまで前記書き込み手段による前記各オフセット測定用バースト信号の書き込みを繰り返し、前記最適な位置を探索することを特徴とする請求項8に記載のディスク記憶装置。
【請求項10】
前記コントローラは前記書き込み手段を御することで、
前記オフセット測定用位置情報を、前記ディスク上に設定した測定用領域に含まれる前記磁性領域に書き込むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項11】
前記コントローラは、
ディスク記憶装置の起動時またはディスクシフトの検出時に、前記測定手段の動作を起動させることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記測定手段により算出されたダイナミック・オフセット値を、前記オフセット制御手段で使用するダイナミック・オフセット値として設定することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項13】
データの磁気記録領域である磁性領域と非磁性領域とが分断されて同心円状に構成されているデータ領域、及びサーボ情報が記録されているサーボ領域が設けられているディスクリート・トラック媒体型のディスクと、前記ディスク上に対してデータを書き込むライトヘッド及び前記ディスク上からデータを読み出すリードヘッドのそれぞれが分離して設けられている磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを搭載し、前記ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御し、前記磁気ヘッドを前記ディスク上の指定位置に位置決めするコントローラとを有するディスク記憶装置に適用するオフセット測定方法であって、
前記コントローラは、
データの書き込み動作またはデータの読み出し動作のときに実行するダイナミック・オフセット制御で使用されるダイナミック・オフセット値を測定するためのオフセット測定用位置情報を、前記ディスク上の磁性領域に含まれる最適な位置に書き込むステップと、
前記最適な位置に記録された前記オフセット測定用位置情報を使用して、前記ダイナミック・オフセット値を算出するステップと
を含むことを特徴とするオフセット測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−266284(P2009−266284A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113058(P2008−113058)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】