説明

ディスク駆動装置

【課題】 ディスククランプ時における吸引力を維持しつつ、ディスクの非クランプ時におけるディスククランプ機構からの騒音発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】 本発明のディスク駆動装置110は、磁性体を有するクランパ212と、クランパに対向して昇降可能に配設され、磁石214を有し、磁石214と磁性体とにより生じる磁気的吸引力によって、クランパと協働してディスク120をクランプするターンテーブル216と、ターンテーブルを回転させるスピンドルモータ218と、ディスクが無い状態でクランパとターンテーブルとが吸着している場合に、磁性体と磁石との対向面同士が平行とならないよう規制する規制構造と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクや光磁気ディスク等円盤状の記録媒体をターンテーブルとクランパでクランプ(狭持)して回転させるディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc)等円盤状の記録媒体(以下、単にディスクという。)を再生可能なディスクプレーヤやパーソナルコンピュータ等には、そのようなディスクを再生するためのディスク駆動装置(ディスクドライブ)が搭載されている。ディスク駆動装置は、ユーザによって装着されたディスクを回転させ、回転しているディスクからピックアップによってデータを読み出し、画像、音楽およびアプリケーション等の情報を取得する。
【0003】
このようなディスク駆動装置では、回転動力源であるスピンドルモータの回転をディスクに伝達するため、また、ディスク回転時の半径方向および軸方向のブレを防止するため、少なくとも回転時にはディスクをスピンドルモータのロータ軸に固着しなければならない。例えば、特許文献1では、磁石と磁性板との磁力による吸引力を利用し、クランパとターンテーブルとでディスクをクランプして回転軸に固着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−123452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13のディスククランプ機構を示した部分断面図に示すように、ディスク駆動装置10は、装着されたディスク12をクランプするディスククランプ時において、ディスク12をターンテーブル14とクランパ16とでクランプし、スピンドルモータ18の回転を伝達する。ターンテーブル14とクランパ16とは、それぞれに設けられた磁石20とヨーク22とによって吸引し合い、互いに向かい合った平らな面24をディスク12に押し当ててディスク12をクランプしている。
【0006】
一方、ディスク駆動装置10は、動作状態においてディスク12が装着されていない場合(ディスク非クランプ時)も、ターンテーブル14とクランパ16とがクランプ状態にある。この場合は、図14の部分断面図に示すように、ディスク12が存在しないため、ディスク12に押し当てるための平らな面24より先に、ターンテーブル14中央側に設けられた磁石20の平らに形成されたクランプ対向面26と、クランパ16のヨーク22を被覆する合成樹脂28の平らに形成されたターンテーブル対向面30とが面同士で接触し、クランパ16とターンテーブル14とが吸着する。ここで、新たにディスク12をクランプしようとすると、ディスク12をクランパ16とターンテーブル14との間に挿通させるため、吸着したクランパ16とターンテーブル14とを離脱させなければならない。
【0007】
かかるクランパ16とターンテーブル14との離脱時には、図15に示すように、スピンドルモータ18に連結された駆動板32が矢印のように弧を描いて下降するため、吸着したターンテーブル14とクランパ16とは水平から少し傾くこととなる。そして、クランパ16とターンテーブル14との対向面同士が図15の拡大図に示すように吸着している状態で、クランパ16の一部Aが掛止され、駆動板32がさらに下降するとクランパ16とターンテーブル14とが離脱する。このとき、駆動板32は、クランプ対向面26およびターンテーブル対向面30の面同士の吸着を一度に引き離す力を要し、離脱時の反動に起因する部材間の接触によって騒音が発生する。
【0008】
近年、ディスク12における記録容量の増加と読み出し速度の高速化が望まれ、単位面積あたりの記録容量の増加と共に、ディスク12の回転が高速化している。ディスク12の回転が高速になるほどディスク12の半径方向および軸方向のブレが大きくなり、ターンテーブル14からの離脱のおそれも高まるので、それを抑制すべくディスク12をクランプする吸引力、即ち、磁石20の磁力を増やす必要がある。
【0009】
磁力が増加すると、ディスク12をクランプする吸引力が上がるが、それに伴い、ディスク非クランプ時において平らな面同士で吸着しているクランパ16とターンテーブル14との離脱負荷が高まり、離脱に要するトルクも増加させなければならなくなる。従って、離脱時の部材間の接触による騒音も大きくなってしまう。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、ディスククランプ時における吸引力を維持しつつ、ディスクの非クランプ時におけるディスククランプ機構からの騒音発生を抑制することが可能なディスク駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のディスク駆動装置は、磁石および磁性体の一方を有するクランパと、クランパに対向して昇降可能に配設され、磁石および磁性体の他方を有し、磁石と磁性体とにより生じる磁気的吸引力によって、クランパと協働してディスクをクランプするターンテーブルと、ターンテーブルを回転させるスピンドルモータと、ディスクが無い状態でクランパとターンテーブルとが吸着している場合に、磁性体と磁石との対向面同士が平行とならないよう規制する規制構造と、を含むことを特徴とする。
上記規制構造は、クランパまたはターンテーブルの少なくともいずれか一方に設けられ他方に向け突出する突出部を含んで構成され、突出部が他方の対向する部位に接触し、磁性体と磁石との対向面同士を傾斜させることができる。
クランパまたはターンテーブルにおける突出部に対向する部位には、突出部を案内し、クランパとターンテーブルとの中心軸を合わせる案内孔が形成されてもよい。
ディスクをクランプした状態で、突出部は、対向する部位に接触しないとしてもよい。
突出部により、クランパとターンテーブルとの対向面同士の接触面積が突出部を設けていない場合と比べて小とされていてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の他のディスク駆動装置は、磁石および磁性体の一方を有するクランパと、クランパに対向して昇降可能に配設され、磁石および磁性体の他方を有し、磁石と磁性体とにより生じる磁気的吸引力によって、クランパと協働してディスクをクランプするターンテーブルと、ターンテーブルを回転させるスピンドルモータと、ディスクが無い状態でクランパとターンテーブルとが吸着している場合に、クランパとターンテーブルとの間に介在して、両対向面同士の接触面積を削減する介在部材と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のディスク駆動装置は、ディスククランプ時における吸引力を維持しつつ、ディスクの非クランプ時におけるディスククランプ機構からの騒音発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかるディスク装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】本実施形態にかかるディスク駆動装置の機械的な構成を説明するための説明図である。
【図3】本実施形態にかかるディスククランプ機構を説明するための斜視図である
【図4】本実施形態にかかるディスクのクランプ時の状態を示す部分断面図である。
【図5】本実施形態にかかるディスクの非クランプ時の状態を示す部分断面図である。
【図6】本実施形態にかかるディスクの非クランプ時の状態を示す部分断面図である。
【図7】本実施形態にかかるディスク駆動装置のディスクの装着動作を説明するための斜視図である。
【図8】本実施形態にかかるクランパとターンテーブルとの離脱時に発生する騒音を説明するための部分断面図である。
【図9】本実施形態にかかるクランパとターンテーブルの規制構造の他の例を列挙した説明図である。
【図10】本実施形態にかかるディスク駆動装置のディスクの取り出し動作を説明するための斜視図である。
【図11】本実施形態にかかるクランパとターンテーブルとの吸着時に生じる騒音を説明するための部分断面図である。
【図12】本実施形態にかかるクランパの他の例を列挙した説明図である。
【図13】従来のディスククランプ時におけるディスククランプ機構を示した部分断面図である。
【図14】従来のディスク非クランプ時におけるディスククランプ機構を示した部分断面図である。
【図15】従来のディスク非クランプ時におけるディスククランプ機構を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(ディスク装置100)
図1は、本実施形態にかかるディスク装置100の電気的な構成を示した機能ブロック図である。ディスク装置100は、ディスク駆動装置110と、データバッファ112と、画像信号出力部114と、音声信号出力部116とを含んで構成される。
【0017】
CD、DVDやBD等、円盤形状の記録媒体であるディスク120に記録されたコンテンツの再生を試みるとき、ユーザは、ディスク装置100のディスク駆動装置110に対象となるディスク120を装着し、再生操作を行う。かかる再生操作を受けてディスク装置100のディスク駆動装置110は、ディスク120の所定の領域からコンテンツデータを読み出し、データバッファ112に一時的に保持する。
【0018】
画像信号出力部114は、データバッファ112からコンテンツデータ中の画像データを抽出し、映像信号に変換した後、モニタ122に出力する。音声信号出力部116は、データバッファ112からコンテンツデータ中の音声データを抽出し、音声信号に変換した後、スピーカ124に出力する。以下、本実施形態で特徴的なディスク駆動装置110について詳述する。
【0019】
(ディスク駆動装置110)
図2は、本実施形態にかかるディスク駆動装置110の機械的な構成を説明するための説明図である。ディスク駆動装置110の筐体200は、箱形状のベースシャーシ202とその上部を覆う天板204とから構成され、ベースシャーシ202には、トレイ206を搬送するための開口部208が設けられている。ディスク駆動装置110は、操作キー(図示せず)へのユーザ操作に応じてトレイ206を矢印方向にスライドすることで、ユーザが装着したディスク120をディスク駆動装置110内部に搬入する。
【0020】
ディスク駆動装置110内部に搬入されたディスク120の一方の面側には、磁性体としてのヨーク210が設けられたクランパ212が配置されており、他方の面側には、磁石214が設けられたターンテーブル216が配設されている。ターンテーブル216の磁石214は、クランパ212のヨーク210を吸引し、ディスク120をクランプする。かかるディスククランプ機構に関しては後ほど詳述する。ここでヨーク210および磁石214は、一対となって磁気的吸引力を得られさえすれば、クランパ212およびターンテーブル216のいずれに配置されてもよい。
【0021】
ターンテーブル216は、スピンドルモータ218のロータ軸220に直結され、ターンテーブル216の磁石214の周縁にはディスク120の中心孔に嵌合するためのテーパが形成されたハブ222が設けられている。スピンドルモータ218は、ターンテーブル216およびクランパ212を介してディスク120を回転させる。従って、クランパ212、ディスク120、ターンテーブル216は、スピンドルモータ218の回転軸224と一体的に回転することとなる。
【0022】
また、ディスク120の搬入時または搬出時にはディスク120をターンテーブル216とクランパ212との間に挿通しなくてはならないので、ターンテーブル216はクランパ212に対して離接可能に構成されている。そのため、ターンテーブル216およびスピンドルモータ218は、一端が支点226として回転可能に軸支された板状の駆動板228の他端230側に固設され、カム232の回動に応じて昇降する(トラバース機構)。
【0023】
ディスク120の搬入出時にターンテーブル216が下降する場合、クランパ212は、ターンテーブル216からの吸引力によってターンテーブル216に追従して下降するが、天板204に固設されクランパ212を遊嵌状態で保持するクランパ収容部234の掛止部236に、自体のフランジ部238が掛止されて下降が規制される。その結果、ターンテーブル216から離脱する。ターンテーブル216から離脱したクランパ212は、クランパ収容部234内の半径方向と軸方向とに設けられた遊びの範囲で移動自在になる。また、ターンテーブル216が上昇すると、上昇したターンテーブル216にクランパ212が持ち上げられ、クランパ212は、クランパ収容部234に接触することなく回転可能となる。
【0024】
また、駆動板228の中央付近には、駆動板228の長手方向にスライド可能なピックアップ240が設けられ、ピックアップ240は、ディスク120の盤面に沿って半径方向に移動し、自体の発光素子から照射してディスク120の盤面で反射させた反射光を受光素子で受けることでデータを読み出す。
【0025】
図3は、ディスククランプ機構を説明するための斜視図であり、図4は、ディスク120のクランプ時の状態を示す部分断面図であり、図5および図6は、ディスク120の非クランプ時の状態を示す部分断面図である。図3を参照すると、スピンドルモータ218に回転可能に軸支されるターンテーブル216は、自体の中心に埋設された環状の磁石214で、クランパ212中央段部に固設された円盤状のヨーク210を、回転軸224に合わせるように吸引する。そして、ターンテーブル216とクランパ212それぞれに設けられた環状の当接部250をディスク120の両面に当接してディスク120をクランプする。
【0026】
磁石214は、永久磁石であり、ヨーク210は、磁性体で形成される。磁石214とヨーク210の間には、ヨーク210を薄肉で覆う樹脂が介在している。かかるクランプ盤252は、非磁性の合成樹脂、例えばディスク120より軟質なポリアセタール(POM:polyacetal)樹脂等で構成される。
【0027】
また、図4に示すように、クランプ盤252には、ターンテーブル216の対向面中心に、先端254が半球型に形成され、ターンテーブル216に向け突出する突出部256が一体に形成される。かかる突出部256がターンテーブル216の磁石214の中心に設けられた案内孔258に嵌入されることで、クランパ212の中心軸とターンテーブル216の回転軸224とが概ね位置合わせされることとなる。案内孔258の底部にはスピンドルモータ218のロータ軸220が配されている。ロータ軸220の外周には、オイルレスメタルで形成されロータ軸220のラジアル荷重を受けるラジアル軸受260が配され、ロータ軸220の下端には、オイルレスメタルで形成され、ロータ軸を回転可能に支持し、軸方向の荷重を受けるスラスト軸受262が配され、抜け止め264によってロータ軸220のクランパ212方向への移動が制限されている。ここではラジアル軸受260が抜け止め264として機能している。図4のように、ディスク120をクランプしている間、突出部256は案内孔258の底部であるロータ軸220に接触しない。
【0028】
本実施形態においては、突出部256におけるクランプ盤252の底面270から突出している部分の長さが、案内孔258の深さより長く形成されているため、ディスク120非クランプ時においては、図5のように、突出部256の先端254が案内孔258の底部である金属製のロータ軸220の半球形状の頭部266に接触する。そして、磁石214とヨーク210とによる吸引および重力によって、クランパ212とターンテーブル216とは、図6のように、突出部256の先端254とロータ軸220の頭部266以外の点268でも接触し、クランパ212が傾斜した状態でバランスがとれる。
【0029】
このように突出部256は、簡易な構成でありながら、ディスク120が無い状態(ディスク120非クランプ時)で、ヨーク210側と磁石214側とが吸着している場合に、ヨーク210と磁石214との対向面同士が平行とならないよう規制する規制構造として、また、両対向面同士の接触面積を削減する介在部材として機能する。
【0030】
上述したディスククランプ機構では、突出部256の長さを調整することにより、ディスク120非クランプ時におけるクランパ212とターンテーブル216との吸着状態を変えることで、クランパ212とターンテーブル216との着脱時に発生する騒音を抑制することができる。以下、ディスク120非クランプ時におけるクランパ212とターンテーブル216との着脱動作を、離脱動作と吸着動作に分けて説明する。
【0031】
(クランパ212とターンテーブル216との離脱動作)
図7は、ディスク駆動装置110のディスク120の装着動作を説明するための斜視図である。ここでは理解を容易にするため、ディスク駆動装置110の筐体200の天板204や詳細な駆動機構は省略している。ディスク120非クランプ時においては、図7(a)に示すように、トレイ206は、ベースシャーシ202内に搬入された状態であり、クランパ212とターンテーブル216とは吸着状態を維持している。
【0032】
ユーザがディスク駆動装置110へのディスク120の装着を試みると、ディスク駆動装置110はユーザ操作に応じてトレイ206を搬出する。トレイ206の搬出時には、トレイ206のディスク載置面より突出しているターンテーブル216と、トレイ206との接触を回避するため、図7(a)の白抜き矢印Aのように、ターンテーブル216、スピンドルモータ218、ピックアップ240は、支点226を中心とした駆動板228の回動に応じて一旦下降する。このとき、クランパ212は、クランパ収容部234の掛止部236に掛止されてターンテーブル216から離脱する。図7(b)のように搬出されたトレイ206にディスク120が装着され、ユーザ操作によって図7(c)のようにトレイ206と共にディスク120が搬入されると、ターンテーブル216は矢印Bのように再度上昇、クランパ212を吸引し、クランパ212と協働してディスク120をクランプする。そして、ディスク120を再生する旨のユーザ操作に応じて、スピンドルモータ218は、クランパ212とターンテーブル216とにクランプされたディスク120を回転する。
【0033】
図8は、クランパ212とターンテーブル216との離脱時に発生する騒音を説明するための図7(a)におけるC−C部分断面図である。クランパ212とターンテーブル216との離脱時において、駆動板228がターンテーブル216を下降する方向に回動すると、図6のように傾斜したクランパ212が掛止部236に掛止され、図8(a)のように水平になる。このとき、ターンテーブル216は、駆動板228の支点226を中心とする回動により下降するので、拡大図(1)に示すように、駆動板228の長さおよび下降距離から求まる角度θほど水平から傾斜した状態となる。また、クランパ212は、突出部256によりターンテーブル216との吸着が阻まれ、掛止部236に水平に掛止されるので、ヨーク210と磁石214との対向面同士も角度θ分傾斜することとなる。
【0034】
引き続き駆動板228により、ロータ300とステータ302との吸引による軸方向の付勢力より大きな力が加えられると、ロータ軸220やモータ筐体304に対して、ステータ302やラジアル軸受260を含む部位が軸方向下向きに引っ張られてしまい、図8(a)の拡大図(2)のように位置していたロータ軸220に固設された抜け止め鍵306が、図8(b)の拡大図(3)のように、抜け止め264に接触する。このとき、抜け止め鍵306と抜け止め264との接触によって騒音が生じ得る。また、ターンテーブル216は、駆動板228の下降により拡大図(4)に示すように角度θより大きい角度θの傾斜角で傾斜した状態となる。
【0035】
駆動板228は、磁石214とヨーク210との吸引力およびロータ300とステータ302との吸引による軸方向の付勢力の和に抗する力でさらに下降し、遂には図8(c)のように、クランパ212からターンテーブル216を離脱させる。離脱後には、ロータ軸220とステータ302とを軸方向に引き離す力が作用しなくなるので、抜け止め鍵306は抜け止め264と離隔し、図8(c)の拡大図(5)に示すような通常の位置に戻る。このとき、磁石214とヨーク210との吸引力から解放されたロータ軸220は、その解放の反動と自体の付勢力および自重とによって、スラスト軸受262に衝突する。かかる衝突に応じて騒音が生じる。また、クランパ212も、磁石214とヨーク210との吸引力から解放された反動でクランパ収容部234内で振動する場合があり、その振動による騒音も生じ得る。
【0036】
本実施形態では、図8(b)の状態において、クランパ212の突出部256とターンテーブル216の案内孔258の底部(ロータ軸220)を接触させ、クランパ212やターンテーブル216の他の部位の接触を回避するように構成しているので、クランパ212とターンテーブル216とが図8(b)の拡大図(4)のように傾斜角θを有すこととなり、ヨーク210と磁石214との対向面同士も傾斜することとなる。このとき、ヨーク210と磁石214との吸引力は、互いが平行なときより弱まり、さらに、離脱に要する時間も互いが平行なときより長くなる。これは、互いが傾斜することによって比較的離隔した部位(例えば、図8(b)のD)から離脱し始め、距離の短い部位(例えば、図8(b)のE)が最後に離脱するためである。
【0037】
このように本実施形態のディスク駆動装置110では、部品点数を増やすことなく、突出部256を長く形成するといった簡易な変更を施すだけで離脱時の負荷を軽減できるので、ディスク120クランプ時における吸引力(磁力)を維持したまま、ディスク120非クランプ時の駆動板228の回動に加える駆動機構、例えばカム232を回動するトルク負荷を低減することができ、それに伴って離脱時に生じる騒音を抑制することが可能となる。
【0038】
図9は、クランパ212とターンテーブル216の規制構造の他の例を列挙した説明図である。上述した実施形態では、突出部256の長さを長くすることでヨーク210と磁石214との対向面同士が平行とならないように規制しているが、図9(a)に示すように、案内孔258の底部(ロータ軸220)の深さを浅くすることでも本願の目的を達成することができる。また、上述した実施形態では、突出部256の先端254およびロータ軸220の頭部266のいずれも半球形状に形成しているが、図9(b)のように、一方を平面もしくは緩い球面で形成し、両者を略点で接触させることでも本願の目的を達成することができる。
【0039】
さらに、図9(c)のように、案内孔258の底部をロータ軸220ではなく、ハブ222を延長して形成することもできる。かかる構成によると、突出部256とハブ222とがいずれも合成樹脂で形成されることとなることから後述する突出部256の接触による騒音も低減することが可能となる。また、図9(d)のように、突出部256の接触点を回転軸224中心からオフセットさせることもできる。
【0040】
(クランパ212とターンテーブル216との吸着動作)
図10は、ディスク駆動装置110のディスク120の取り出し動作を説明するための斜視図である。ここでもディスク駆動装置110の筐体200の天板204や詳細な駆動機構は省略している。ディスク120クランプ時においても、図10(a)に示すように、クランパ212とターンテーブル216とはディスク120を介して吸着状態を維持しており、ディスク120は回転状態が維持されている。
【0041】
ユーザがディスク駆動装置110からのディスク120の取り出しを試みると、ディスク駆動装置110は、ユーザ操作に応じてスピンドルモータ218の回転を停止し、ディスク120を装着したトレイ206をディスク120ごと搬出する。トレイ206の搬出時には、図10(b)の白抜き矢印Fのように、ターンテーブル216、スピンドルモータ218、ピックアップ240が、支点226を中心とした駆動板228の回動に応じて一旦下降する。このとき、クランパ212は、図7で示した離脱動作同様、クランパ収容部234の掛止部236に掛止されてターンテーブル216から離脱する。搬出されたトレイ206からディスク120が取り出されると、ディスク駆動装置110は、ユーザ操作に応じて図10(c)のようにトレイ206を搬入する。このとき、ターンテーブル216は白抜き矢印Gのように再度上昇し、クランパ212を吸着する。
【0042】
図11は、クランパ212とターンテーブル216との吸着時に生じる騒音を説明するための図10(c)におけるH−H部分断面図である。クランパ212とターンテーブル216との吸着時において、駆動板228がターンテーブル216を上昇する方向に回動し、ターンテーブル216が、図11(a)のように自重によって掛止部236で掛止されているクランパ212に接近すると、磁石214とヨーク210との距離が短くなる。そして、その間の吸引力が、ロータ300とステータ302との吸引およびスピンドルモータ218とターンテーブル216との自重による軸方向の合力を超過すると、ターンテーブル216がロータ軸220やモータ筐体304と共にクランパ212に吸引され、図11(b)の拡大図(1)のようにクランパ212の突出部256とターンテーブル216の案内孔258の底部(ロータ軸220)とが接触する。かかるクランパ212の突出部256とロータ軸220との接触によって騒音が生じ得る。
【0043】
また、このときロータ300とステータ302との吸引による軸方向の付勢力によってその位置が保持されていたスピンドルモータ218のロータ軸220とステータ302とが軸方向に引き離され、図11(b)の拡大図(2)のように、ロータ軸220に固設された抜け止め鍵306が、磁石214とヨーク210との吸引によって移動した分だけ抜け止め264に近づく。
【0044】
さらに駆動板228が上昇しターンテーブル216が水平になると、ロータ軸220の抜け止め鍵306は、図11(c)の拡大図(3)のように元の位置に戻り、クランパ212は、クランパ収容部234から離れ、傾斜しながらターンテーブル216とのみ接触する。このクランパ212とターンテーブル216との接触によっても騒音が生じ得る。
【0045】
本実施形態では、図11(b)の状態において、磁石214とヨーク210との吸引力により、クランパ212の突出部256とターンテーブル216の案内孔258の底部(ロータ軸220)とをほぼ点で接触させ、クランパ212やターンテーブル216の他の部位の面同士の接触を回避するように構成しているので、その接触面積を最小限に留めることができる。
【0046】
従来では、磁石側とヨーク側とが対向面同士で吸着していたため、磁石とヨークとの間に樹脂性のクランプ盤が介在しているものの、肉薄なため金属同士(磁石とヨーク)の接触音を減衰できず、また、その接触面の大きさに比例して騒音が大きくなっていた。本実施形態では、クランパ212とターンテーブル216との接触時に肉厚の突出部256が介在するため金属同士の接触音を十分に抑制することができる。
【0047】
このように本実施形態のディスク駆動装置110では、部品点数を増やすことなく、突出部256を介在させるといった簡易な変更を施すだけで、クランパ212とターンテーブル216の対向面同士の接触面積を削減できるので、ディスク120クランプ時における吸引力(磁力)を維持したまま、吸着時に生じる騒音を抑制することが可能となる。
【0048】
図12は、クランパ212の他の例を列挙した説明図である。上述した実施形態では、図12(a)のようにクランパ212における磁石214対向面350には一つの突出部256が形成されていたが、かかる場合に限られず、例えば、図12(b)のように、対向面350の同一円周上に突出部256を複数(ここでは3つ)等間隔に突設し、その先端を半球面状に形成することもできる。さらには、対向面350の外縁に沿って、環状の突出部256を形成することも可能である。いずれの場合であっても、対向面350に対してその接触面積を低減することができる。
【0049】
また、突出部256や、突出部256に接触するロータ軸220の材料を変更することで吸着時に生じる騒音をさらに抑制することも可能となる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、上述した実施形態においては、ディスクをトレイに装着して搬送するトレイ方式を採用しているが、かかる場合に限られず、スロットにディスクを挿入するだけでディスクの搬送とクランプが自動的に実行されるスロットイン方式等、様々な搬送方式に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、光ディスクや光磁気ディスク等円盤状の記録媒体をターンテーブルとクランパでクランプして回転させるディスク駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 …ディスク装置
110 …ディスク駆動装置
120 …ディスク
210 …ヨーク
212 …クランパ
214 …磁石
216 …ターンテーブル
218 …スピンドルモータ
224 …回転軸
256 …突出部
258 …案内孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石および磁性体の一方を有するクランパと、
前記クランパに対向して昇降可能に配設され、前記磁石および磁性体の他方を有し、前記磁石と前記磁性体とにより生じる磁気的吸引力によって、前記クランパと協働してディスクをクランプするターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回転させるスピンドルモータと、
前記ディスクが無い状態で前記クランパと前記ターンテーブルとが吸着している場合に、前記磁性体と前記磁石との対向面同士が平行とならないよう規制する規制構造と、
を含むことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記規制構造は、前記クランパまたは前記ターンテーブルの少なくともいずれか一方に設けられ他方に向け突出する突出部を含んで構成され、前記突出部が他方の対向する部位に接触し、前記磁性体と前記磁石との対向面同士を傾斜させることを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記クランパまたは前記ターンテーブルにおける前記突出部に対向する部位には、前記突出部を案内し、前記クランパと前記ターンテーブルとの中心軸を合わせる案内孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記ディスクをクランプした状態で、前記突出部は、前記対向する部位に接触しないことを特徴とする請求項2または3に記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記突出部により、前記クランパと前記ターンテーブルとの対向面同士の接触面積が前記突出部を設けていない場合と比べて小とされていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
磁石および磁性体の一方を有するクランパと、
前記クランパに対向して昇降可能に配設され、前記磁石および磁性体の他方を有し、前記磁石と前記磁性体とにより生じる磁気的吸引力によって、前記クランパと協働してディスクをクランプするターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回転させるスピンドルモータと、
前記ディスクが無い状態で前記クランパと前記ターンテーブルとが吸着している場合に、前記クランパと前記ターンテーブルとの間に介在して、両対向面同士の接触面積を削減する介在部材と、
を含むことを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−198660(P2010−198660A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39614(P2009−39614)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】