説明

ディスプレイおよびそれに用いられる視野角制御装置

【課題】表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替えることにより様々な使用環境や用途に適応可能なディスプレイを提供する。
【解決手段】表示装置の背面および前面の少なくとも一方に視野角制御用液晶パネル2を備えたディスプレイである。視野角制御用液晶パネル2は、液晶をハイブリッド配向させた液晶セル21と、駆動回路215とを備えている。液晶セル21の垂直配向膜212aの界面の液晶分子213pには、垂直配向膜212aに対するラビング処理によってプレチルト角θaが与えられている。液晶セル21は、偏光透過軸X13,X22が略直交するよう配置された2枚の偏光板13,22の間に配置されている。前記駆動回路は、視野角制御用液晶パネル2の液晶層の液晶分子213pの配列状態を変化させることにより、表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの視野角を広視野角と狭視野角との間で切替えられる視野角制御装置と、それを用いたディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、一般的には、どの視角から見ても鮮明な画像を見ることができるように、可能な限り広い視野角を有することが求められている。特に、最近広く普及している液晶ディスプレイは、液晶そのものが視角依存性を有することから、広視野角化に関して様々な技術開発がなされてきた。しかしながら、使用環境によっては、使用者本人にしか表示内容が視認できないよう、視野角が狭い方が好都合であることもある。特に、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型情報端末(PDA)、または携帯電話等は、電車や飛行機内など、不特定多数の人間が存在し得る場所で使用される可能性も高い。そのような使用環境においては、機密保持やプライバシー保護等の観点から、近傍の他人から表示内容を覗かれたくないので、ディスプレイの視野角が狭いことが望ましい。このように、近年、1台のディスプレイの視野角を、使用状況に応じて広視野角と狭視野角との間で切替えたいという要求が高まっている。なお、この要求は、液晶ディスプレイに限らず、任意のディスプレイに対して共通の課題である。
【0003】
このような要求に対して、画像を表示する表示装置に加えて位相差制御用装置を備え、位相差制御用装置に印加する電圧を制御することによって視野角特性を変化させようとする技術が提案されている(例えば、下記の特許文献1)。この特許文献1では、位相差制御用液晶表示装置で用いる液晶モードとして、カイラルネマティック液晶、ホモジニアス液晶、ランダム配向のネマティック液晶などが例示されている。
【0004】
また、表示用液晶パネル上部に、視野角制御用液晶パネルを設け、これらのパネルを2枚の偏光板で挟持し、視野角制御用液晶パネルへの印加電圧を調整することによって、視野角制御を行う構成も従来開示されている(例えば、特許文献2,3)。特許文献2では、視野角制御用液晶パネルの液晶モードはツイストネマティック方式である。特許文献3には、平行な透過軸を有する2枚の偏光板の間に視野角制御用液晶パネルを備えた構成が開示されている。
【特許文献1】特許第3322197号公報
【特許文献2】特開平10−268251号公報
【特許文献3】特開2005−316470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、位相差制御用液晶素子を用いることによって広視野角と狭視野角との切替えが可能であると述べられているが、その効果は十分とは言えない。例えば特許文献1の図4には、コントラスト比が10:1の等コントラスト曲線が示されており、狭視野角では、確かに広視野角方向のコントラストが低下している。しかしながら、この程度の変化では、隣にいる人から表示が十分に視認されてしまう。一般に、コントラスト比が2:1まで低下しても、十分に表示を視認できるからである。
【0006】
また、特許文献2の技術も、視野角制御用液晶パネルへの印加電圧を変化させてコントラストを調整することによって、広視野角と狭視野角との切替えを行うものであり、その効果は十分とは言えない。
【0007】
すなわち、特許文献1,2のいずれの技術も、広視野角方向のコントラストを低下させることによって、広視野角と狭視野角との切替えを行う手法を採用しているが、このような手法では、狭視野角時に広視野角方向の遮蔽が十分ではなく、他人から画像が見られてしまう可能性があるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、広視野角と狭視野角とを切替えることにより様々な使用環境や用途に適応可能なディスプレイと、これに用いられる視野角制御装置とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明にかかるディスプレイは、表示すべき画像に応じて駆動される表示装置と、前記表示装置の背面および前面の少なくとも一方に配置され、前記表示装置の視野角を制御する視野角制御装置とを備えたディスプレイであって、前記視野角制御装置は、一対の透光性基板間に液晶分子をハイブリッド配向させた液晶層を有する液晶セルと、前記液晶層へ電圧を印加する駆動回路とを備え、前記液晶セルは、当該ディスプレイ内で、偏光透過軸が略直交するよう配置された2枚の偏光板の間に配置され、前記液晶セルは、前記一対の透光性基板の一方に設けられた水平配向膜と、前記一対の透光性基板の他方に設けられた垂直配向膜とを有し、前記垂直配向膜の少なくとも一部に、前記水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられ、前記駆動回路が、前記視野角制御装置の液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより、表示状態を、第1の視野角範囲を提供する第1の状態と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲を提供する第2の状態との間で切替え可能とすることを特徴とする。
【0010】
上記の構成では、視野角制御装置を挟むように、偏光透過軸が略直交する2枚の偏光板が配置されている。なお、視野角制御装置と上記2枚の偏光板とは、必ずしも隣接している必要はなく、それらの間に何らかの構成要素が介在しても良い。上記の構成では、液晶層に所定の電圧を印加して液晶分子の配列状態を変化させ、液晶の複屈折を利用することにより、視野角制御装置の液晶セルから出射する光の偏光状態を変化させれば、視野角制御装置の観察者側に配置されている偏光板が検光子として作用し、視野角制御装置から観察者側へ出射する光を、視角に応じて透過または遮蔽することができる。すなわち、表示状態を、第1の視野角範囲を提供する第1の状態(広視野角)と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲を提供する第2の状態(狭視野角)とのいずれかに切替え可能である。なお、「広視野角」と「狭視野角」とは、特定の絶対的な角度範囲を意味するのではなく、相対的に広い視野角と、相対的に狭い視野角とを意味する。また、上記の構成では、液晶分子をハイブリッド配向させた液晶セルを用いることにより、限られた視野角のみ表示を視認できる狭視野角状態が実現可能である。これにより、上記従来の視野角制御技術のように広視野角側の表示のコントラストを低下させるのではなく、光の透過および遮蔽の切替えによって視野角制御を行うことができる。この結果、様々な使用環境や用途に適応可能なディスプレイを提供することができる。さらに、上記の構成では、垂直配向膜の少なくとも一部に、水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられていることにより、これらの配向膜界面の非対称性によって生じる残留リタデーションが相互に補償される。これにより、極角が大きい視角に対する光漏れを効果的に防止することができるという優れた効果を有する。
【0011】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記プレチルト付与領域におけるプレチルト角が2°〜5°の範囲であることが好ましい。極角が大きい視角に対する光漏れを効果的に防止しつつ、ピーク透過率を維持することが可能であるからである。
【0012】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記垂直配向膜の界面全体が前記プレチルト付与領域である構成としても良い。しかし、前記垂直配向膜の界面が、前記プレチルト付与領域と、配向処理が施されていない非チルト領域とを含む構成としても良い。後者の構成では、極角が大きい視角に対する光漏れを防止したい領域をプレチルト付与領域とすることにより、ピーク透過率を高く維持しつつ、極角が大きい視角に対する光漏れを防止できる。この場合、例えば、前記非チルト領域が、前記垂直配向膜の中央に位置し、前記プレチル付与領域が、前記非チルト領域の周辺に位置する構成とすることが好ましい。あるいは、前記プレチルト付与領域と前記非チルト領域とが交互に隣接して設けられた構成としても良い。
【0013】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記視野角制御装置の液晶層が、ポジ型のネマティック液晶を含み、前記駆動回路が、前記液晶層へ所定の電圧を印加することにより、前記第2の視野角範囲を提供することが好ましい。あるいは、本発明にかかるディスプレイにおいて、前記視野角制御装置の液晶層が、ネガ型のネマティック液晶を含み、前記駆動回路が、前記液晶層へ所定の電圧を印加することにより、前記第1の視野角範囲を提供する構成としても良い。
【0014】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記2枚の偏光板が、それぞれの偏光透過軸が80°〜100°の範囲で交差するように配置されたことが好ましい。
【0015】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記表示装置が、直線偏光を出射する表示装置であって、前記2枚の偏光板のうち1枚が、前記表示装置に設けられた偏光板であることが好ましい。例えば、前記表示装置が透過型液晶表示装置であり、バックライトをさらに備えた構成とすることができる。この場合、視野角制御装置は、前記バックライトと前記透過型液晶表示装置との間に配置されても良いし、前記透過型液晶表示装置の前面に配置されても良い。また、前記バックライトが、法線方向に指向性を有する指向性バックライトであることが好ましい。
【0016】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記表示装置が、反射型液晶表示装置または半透過型液晶表示装置であることも好ましい。または、前記表示装置が自発光型表示装置であって、前記2枚の偏光板のうち1枚は、前記自発光型表示装置と前記視野角制御装置との間に設けられている構成であっても良い。
【0017】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記偏光板の偏光透過軸が、前記視野角制御装置の法線方向から見た前記液晶分子の配向軸と、40°〜50°の範囲で交差するように配置されたことが好ましい。
【0018】
本発明にかかるディスプレイにおいて、前記視野角制御装置と前記2枚の偏光板との間の少なくとも1箇所に位相差フィルムを備えたことが好ましい。
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる第1の視野角制御装置は、表示すべき画像に応じて駆動され直線偏光を出射する表示装置の背面および前面の少なくとも一方に配置され、前記表示装置の視野角を制御するために用いられる視野角制御装置であって、一対の透光性基板間に液晶分子をハイブリッド配向させた液晶層を有する液晶セルと、前記液晶層へ電圧を印加する駆動回路と、前記液晶セルにおいて前記表示装置からの直線偏光を入射する面の反対側に設けられ、当該直線偏光の偏波面に略直交する偏光透過軸を有する偏光板とを備え、前記液晶セルは、前記一対の透光性基板の一方に設けられた水平配向膜と、前記一対の透光性基板の他方に設けられた垂直配向膜とを有し、前記垂直配向膜の少なくとも一部に、前記水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられ、前記駆動回路が、前記液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより、光の出射範囲を、第1の視野角範囲と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲との間で切替え可能とすることを特徴とする。
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる第2の視野角制御装置は、表示すべき画像に応じて駆動される自発光型表示装置の前面に配置され、前記自発光型表示装置の視野角を制御するために用いられる視野角制御装置であって、一対の透光性基板間に液晶分子をハイブリッド配向させた液晶層を有する液晶セルと、前記液晶層へ電圧を印加する駆動回路と、前記一対の透光性基板の外側に、偏光透過軸が略直交するよう設けられた一対の偏光板とを備え、前記液晶セルは、前記一対の透光性基板の一方に設けられた水平配向膜と、前記一対の透光性基板の他方に設けられた垂直配向膜とを有し、前記垂直配向膜の少なくとも一部に、前記水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられ、前記駆動回路が、前記液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより、光の出射範囲を、第1の視野角範囲と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲との間で切替え可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替えることにより様々な使用環境や用途に適応可能なディスプレイと、これに用いられる視野角制御装置とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明にかかるディスプレイは、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる液晶ディスプレイ100の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、液晶ディスプレイ100は、画像を表示する表示用液晶パネル1(表示装置)と視野角制御用液晶パネル2(視野角制御装置)との2枚の液晶パネルを備えている。本実施形態における表示用液晶パネル1は透過型であり、光源としてバックライト3が用いられる。視野角制御用液晶パネル2は、バックライト3と表示用液晶パネル1との間に設けられている。液晶ディスプレイ100は、視野角制御用液晶パネル2における液晶をスイッチング動作させることにより、表示用液晶パネル1の画像が視認できる視野角が広い状態(広視野角)と、視野角が狭い状態(狭視野角)との間で、表示状態を切替えることができる。狭視野角は、他人に表示用液晶パネル1の画像を見られたくない場合に特に好適に用いられ、広視野角は、それ以外の通常の使用時や、表示用液晶パネル1の画像を複数人で同時に見たい場合等に好適に用いられる。
【0024】
表示用液晶パネル1は、一対の透光性基板間に液晶を挟持した液晶セル11と、液晶セル11の表裏に設けられた偏光板12,13とを有する。液晶セル11の液晶モードやセル構造は任意である。また、表示用液晶パネル1の駆動モードも任意である。すなわち、表示用液晶パネル1としては、文字や画像あるいは動画を表示できる任意の液晶パネルを用いることができる。従って、図1においては表示用液晶パネル1の詳細な構造を図示せず、その説明も省略する。また、表示用液晶パネル1は、カラー表示可能なパネルであっても良いし、モノクロ表示専用のパネルであっても良い。さらに、バックライト3の構成にも何ら限定がなく、公知の任意のバックライトを用いることができるので、バックライト3の詳細な構造の図示および説明も省略する。
【0025】
視野角制御用液晶パネル2は、一対の透光性基板間に液晶層を挟持した液晶セル21と、液晶セル21のバックライト3側に設けられた偏光板22とを備えている。第1の実施形態では、液晶セル21は、ハイブリッド配向させたポジ型(液晶分子の長軸方向の誘電率が短軸方向の誘電率よりも高い)のネマティック液晶によって液晶層が構成される。
【0026】
図2(a)および(b)は、第1の実施形態にかかる液晶セル21の液晶配向状態を示す模式図である。なお、これらの図面では、液晶分子のふるまいを分かりやすくするために、液晶分子の大きさ等を誇張して示した。
【0027】
図2(a)および(b)に示すように、液晶セル21は、液晶層を挟持する一対の透光性基板211a,211bを備えている。透光性基板211a,211bのそれぞれの表面には、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いて透明電極214a,214bが形成されている。透明電極214a,214bには、駆動回路215が接続されている。なお、表示用液晶パネル1は、表示単位(画素単位またはセグメント単位)で液晶を駆動することが必要であるので、表示単位に応じた電極構造を有しているが、視野角制御用液晶パネル2は、電極構造に関しては制限がない。例えば、表示面全体で一様なスイッチングを行うために透光性基板211a,211bの全面に一様な透明電極が形成された構成としても良いし、他の任意の電極構造を取り得る。
【0028】
透光性基板211a,211bにおいて液晶層と接する面には、垂直配向膜212aと水平配向膜212bとがそれぞれ設けられている。垂直配向膜212aの近傍の液晶分子213pは、垂直配向膜212aの表面に対して、分子長軸がほぼ垂直となるよう配向する。水平配向膜212bの近傍の液晶分子213pは、水平配向膜212bの表面に対して分子長軸がほぼ平行となるよう配向する。
【0029】
垂直配向膜212aには、その全体にわたってラビング処理が施されることにより、プレチルトが与えられている。同様に、水平配向膜212bにも、その全体にわたってラビング処理が施されることにより、プレチルトが与えられている。垂直配向膜212aに対するプレチルト角θa(図2(a)参照)は、液晶分子213pの長軸が垂直配向膜212aの法線に対してなす角度である。水平配向膜212bに対するプレチルト角θb(図2(a)参照)は、液晶分子213pの長軸が水平配向膜212bの表面に対してなす角度である。垂直配向膜212aの界面におけるプレチルト角θaは、2°〜5°の範囲であることが好ましい。その理由は、後に詳述する。水平配向膜212bの界面におけるプレチルト角θbは、概ね0°<θ<10°であることが好ましい。なお、図2(a)において、θa,θbの大きさは、実際よりも誇張して示されている。
【0030】
垂直配向膜212aおよび水平配向膜212bにおけるラビング処理の方向は、図2(a)に矢印Ra,Rbとして示すように、パラレル(平行かつ同方向)である。なお、液晶セル21において、偏光板22側の透光性基板に垂直配向膜を形成し、偏光板12側の透光性基板に水平配向膜を形成した構成としても良いし、その逆に、偏光板12側の透光性基板に垂直配向膜を形成し、偏光板22側の透光性基板に水平配向膜を形成した構成としても良い。
【0031】
なお、上記の説明では、垂直配向膜212aと水平配向膜212bに対する配向処理の一例としてラビング処理を例示したが、プレチルトを付与するための配向処理は、ラビング処理に限定されない。また、垂直配向膜212aに対する配向処理と、水平配向膜212bに対する配向処理とが異種の処理であっても構わない。
【0032】
ここで、図2(a)および(b)を参照し、印加電圧に応じた液晶分子213pのふるまいについて説明する。駆動回路215から液晶層へ電圧が印加されていないとき、液晶分子213pの長軸は、図2(a)に示すように、垂直配向膜212aとの界面では当該界面の法線に対してプレチルト角θaだけ傾き、水平配向膜212bとの界面では当該界面に対してプレチルト角θbだけ傾き、これらの界面の間のバルク領域では、分子長軸の方向が漸次的に変化した状態となる。一方、駆動回路215から液晶層へ所定の電圧VH(例えば3V〜5V程度)が印加されたとき、図2(b)に示すように、バルク領域の液晶分子213pは、その長軸を電界の向きに揃えるように旋回する。垂直配向膜212aおよび水平配向膜212bの界面近傍では、配向膜のアンカリング強度が大きいので、液晶分子213pの向きはあまり変化せず、液晶分子213pはプレチルト状態をほぼ保つ。
【0033】
視野角制御用液晶パネル2は、液晶セル21への印加電圧を、0Vと上記の所定の電圧VHとの間で切替えることにより、表示用液晶パネル1の画像が視認できる視野角が広い状態(広視野角)と、視野角が狭い状態(狭視野角)との間で、表示状態を切替える。
【0034】
ここで、図3(a)および(b)を参照しながら、視野角制御用液晶パネル2の構成および動作について説明する。図3において、(a)は広視野角時におけるバルク領域の液晶分子の配列状態を示し、(b)は狭視野角時におけるバルク領域の液晶分子の配列状態を示す。
【0035】
図3(a)および(b)においても、垂直配向膜212aおよび水平配向膜212bのそれぞれにおけるラビング方向を、矢印Ra,Rbにより示した。図3(a)および(b)の例では、垂直配向膜212aに対するラビング方向Raは、水平配向膜212bに対するラビング方向Raに平行かつ同じ向きである。すなわち、液晶セル21は、ラビング方向に関して、いわゆるパラレル型セルである。
【0036】
なお、図3(a)および(b)に示すように、視野角制御用液晶パネル2において液晶セル21の下方に設けられた偏光板22と、表示用液晶パネル1の偏光板13とは、それぞれの偏光透過軸X22とX13とが略直交するように配置されている。偏光透過軸X22とX13とのなす角が80°〜100°の範囲であれば、視野角切替えの十分な効果が得られる。表示用液晶パネル1の偏光板13の偏光透過軸X13は、透光性基板211aの配向膜に対するラビング方向Raに対して、40°〜50°(好ましくは45°)の傾きを持つ。
【0037】
透光性基板211a,211b(図2参照)のそれぞれに設けられた透明電極214a,214b(図3では図示せず)間に、駆動回路215より電圧が印加されていない状態では、図2(a)および図3(a)に示すように、液晶層のバルク領域における液晶分子213pは、ラビング方向Ra,Rbに平行かつ液晶セル21の基板面に垂直な面内で、液晶セル21の基板面の法線に対して分子長軸がやや傾いた状態に配列する。一方、透光性基板211a,211bのそれぞれに設けられた透明電極214a,214b(図3には図示せず)間に、駆動回路215より所定の電圧VHが印加された状態では、図2(b)および図3(b)に示すように、液晶層のバルク領域における液晶分子213pは、ラビング方向Ra,Rbに平行かつ液晶セル21の基板面に垂直な面内において旋回し、液晶セル21の基板面の法線に対して分子長軸がほぼ平行となった状態に配列する。
【0038】
以下、上述の構成にかかる視野角制御用液晶パネル2を用いて、液晶セル21への印加電圧を切替えた場合の視野角の変化について説明する。なお、以下の説明において、視野角制御用液晶パネル2と偏光板13との積層体に対する、ある視点からの視角を、偏光板13の中央を基準とした方位角θおよび極角φによって表す。図4は、図3(a)および(b)と同じ向きに配置された視野角制御用液晶パネル2と偏光板13との積層体に対する、3つの視点P1〜P3からの視角を表したものである。図4に示すように、方位角θとは、視点から偏光板13の表面を含む平面へ下ろした垂線の足と、偏光板13の中央13cとを結ぶ線の回転角である。図4の例では、方位角θは、視点P2の方位角θ2を0°として、偏光板13の法線方向上側から見た場合に時計回りに増加するものとする。図4の例では、視点P3の方位角θ3は90°、視点P1の方位角θ1は270°である。極角φは、偏光板13の中央13cと視点とを結ぶ直線が、偏光板13の法線となす角度である。
【0039】
まず、電圧が印加されず、図2(a)および図3(a)に示すように液晶分子213pが配列した状態では、視点P1〜P3の全ての方位角に対して、バックライト3から出射され、偏光板22を透過して液晶セル21内に入射した直線偏光は、液晶分子213pによって複屈折が与えられ、偏光板13の偏光透過軸に一致するよう偏光方向が回転され、偏光板13を透過する。従って、視点P1〜P3の全ての方位角に対して、良好な表示が得られる。
【0040】
一方、所定の電圧VHが印加され、図2(b)および図3(b)に示すように液晶分子213pが配列した状態では、視点P3(θ=θ3=90°)からの視角の近傍では液晶分子213pによる複屈折によりほぼ良好な表示が得られるが、視点P3以外の視角に対しては、バックライト3から出射され、偏光板22を透過して液晶セル21内に入射した直線偏光は、液晶分子213pによって複屈折が与えられず、偏光板13で遮蔽される。従って、方位角θ=0°(視点P2)、θ=180°、θ=270°(視点P1)等からの視角に対しては、極角φのほぼ全範囲にわたって、他人からの覗き見を防止するに十分な遮光状態が得られる。
【0041】
なお、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2は、垂直配向膜212aの界面において液晶分子213pがプレチルトを与えられていることにより、狭視野角状態としたとき(すなわち、電圧VHが印加されたとき)に、極角が大きい視角に対する光漏れを効果的に防止できるという優れた効果がある。この効果が得られる原理について、図5〜図7を参照し、以下に説明する。
【0042】
図5(a)は、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2へ電圧VHが印加されたときの、水平配向膜212bと垂直配向膜212aとの間における液晶分子213pの状態を示す。また、図5(b)は、図5(a)に示した本実施形態との比較例として、垂直配向膜212a側にプレチルトが与えられていない場合の液晶分子の状態を示す。図5(a)および(b)においては、水平配向膜212bから垂直配向膜212aまでの間に存在する液晶分子213pの状態を、液晶分子213p1〜213p5によって模式的に示した。また、図5(a)および(b)においては、液晶分子213p1〜213p5のそれぞれの屈折率楕円体を水平配向膜212bに平行な平面に投射し、この投射面に表れる短軸方向の屈折率成分であるnxを太い矢印で示し、長軸方向の屈折率成分であるnyを白抜き矢印で示した。
【0043】
図5(a)および(b)に示すように、屈折率成分nyは、水平配向膜212bに最も近い液晶分子213p1において最も大きく、水平配向膜212bから遠ざかるにつれて小さくなる。そして、図5(a)の例では、垂直配向膜212aに最も近い液晶分子213p5のように、バルク領域において垂直配向膜212aの配向規制力の影響をより多く受ける液晶分子213pについては、その屈折率成分nyが、水平配向膜212bの配向規制力の影響を受ける液晶分子213p1等の屈折率成分nyとは逆向きとなる。このように、図5(a)に示した本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2では、水平配向膜212b側の屈折率成分nyによって生じた残留リタデーションが、垂直配向膜212a側の逆向きの屈折率成分nyによって補償されることとなる。一方、図5(b)に示した比較例では、液晶分子213p1〜213p5は全て同じ方向の屈折率成分nyを有するので、残留リタデーションが大きくなる。
【0044】
言い換えれば、垂直配向膜側にプレチルトが与えられていない場合は、図6(a)に示すように、ハイブリッド配向の液晶層へ斜め方向から入射した光に対しては、水平配向膜側の界面Saと垂直配向膜側の界面Sbにおける非対称性により、残留リタデーションが発生する。そして、液晶層への入射角が大きくなるほど、この残留リタデーションは大きくなる。従って、極角が大きい視角に対しては、この残留リタデーションに起因する光漏れが生じ易くなる。この結果、図6(b)に示すように、極角φが例えば60°以下の領域A1に対しては、残留リタデーションの影響があまりないが、極角φが例えば60°よりも大きい領域A2については、残留リタデーションの影響により、光漏れが生じやすくなる。そこで、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2では、上述のとおり、垂直配向膜212a側にもプレチルトを付与して残留リタデーションを補償することにより、上記の光漏れを防止するものである。
【0045】
図5(a)および(b)にそれぞれ示した液晶分子配列による残留リタデーションの違いは、図7(a)および(b)にそれぞれ示すように、透過率特性に影響を及ぼす。図7(a)は、図5(a)に示した本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2の狭視野角状態時の透過率特性である。図7(b)は、図5(b)に示した比較例の狭視野角状態時の透過率特性である。図7(a)と図7(b)とを比較することから分かるように、図7(b)の透過率特性では、狭視野角状態時に遮蔽される方位角の一部(180°〜230°付近、および315°〜0°付近)であって、かつ、極角が大きい(およそ60°以上)視角に対して、若干の光漏れが生じる。すなわち、この範囲の視角に対しては、遮蔽が十分ではなく、表示用液晶パネル1の表示が見えてしまうこととなる。一方、図5(a)に示した構成によれば、上述のように上下の配向膜界面における残留リタデーションが補償されることにより透過率が下がる。これにより、極角が大きい視角に対する漏れ光がなくなり、図7(a)に示すように、狭視野角状態時に遮蔽されるべき方位角(180°〜270°〜0°)の全体にわたって均一な遮光状態が得られる。
【0046】
なお、垂直配向膜212a界面にプレチルトが与えられていると、当然に、広視野角状態においても残留リタデーションが補償されるので、透過率は低下することとなる。ただし、広視野角状態においては透過率が全体的に高いので、透過率の低下分が画質に大きな影響を与えることはない。
【0047】
以上のとおり、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2は、ハイブリッド配向の液晶セル21を用い、かつ、垂直配向膜212a側にもプレチルトを与えたことにより、狭視野角状態としたときに十分な遮光性能が得られる範囲が広い。これにより、斜め後方にいる他人からの覗き見を確実に防止する表示装置を実現できる。
【0048】
なお、垂直配向膜212a側のプレチルト角θaは、前述のとおり、2°〜5°の範囲であることが好ましい。この理由を、図8および図9を参照して以下に説明する。
【0049】
図8(a)は、垂直配向膜212a側のプレチルト角θaを様々に異ならせた場合の、狭視野角状態における方位角200°、極角70°の視角に対する黒表示時の透過率比を表すグラフである。なお、図8(a)においては、図5(b)に示した比較例のように、垂直配向膜界面にプレチルトが与えられていない場合の黒表示時の透過率を100%とした。また、プレチルト角θaの大きさは、図9に示すように、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2のように、水平配向膜212b側への配向処理に対してパラレルに配向処理がなされた場合のプレチルト角をプラスとし、アンチパラレルに配向処理がなされた場合のプレチルト角をマイナスとした。
【0050】
図8(a)に示すように、方位角200°、極角70°の視角に対する狭視野角状態での黒表示時の透過率は、プレチルト角がマイナス方向に大きくなるほど高くなり、プレチルト角がプラス方向に大きくなるほど低くなる。また、プレチルト角が+2°のときに、透過率比は89.8%であり、約10%程度、透過率を下げることが可能である。従って、垂直配向膜212aのプレチルト角θaは2°以上であることが好ましい。また、垂直配向膜212aに対する配向処理をラビング法によって行う場合、ラビングによって付与できるプレチルト角の範囲は、一般的には0.1°〜5°である。ラビング強度を強くするとプレチルト角は大きくなるが、過度なラビングは配向膜削れを生じさせるため好ましくない。従って、ラビング処理上の制限からは、垂直配向膜212aのプレチルト角θaは5°以下であることが好ましい。以上より、垂直配向膜212aのプレチルト角θaは、2°〜5°の範囲であることが好ましい。
【0051】
また、図8(b)は、垂直配向膜212aのプレチルト角θaと、狭視野角状態におけるピーク透過率比との関係を示すグラフである。ピーク透過率とは、最も透過率が高い箇所における透過率である。なお、図8(b)においては、図5(b)に示した比較例のように、垂直配向膜界面にプレチルトが与えられていない場合のピーク透過率を、100%とした。図8(b)に示すように、プレチルト角θaが大きくなるほど、ピーク透過率比は低くなる。プレチルト角θaが5°のときのピーク透過率比は、約97%である。つまり、プレチルト角θaが前述のように2°〜5°の範囲であれば、狭視野角状態におけるピーク透過率の低下は3%以内におさまるので、好ましい。
【0052】
なお、図10に示すように、液晶セル21の透光性基板211aと偏光板13との間に位相差フィルム4aを、透光性基板211bと偏光板22との間に位相差フィルム4bを、さらに備えた構成とすることが好ましい。液晶セル21に電圧VHを印加することによって狭視野角とした場合、方位角90°付近以外の視角(例えば方位角0°付近、180°付近、270°付近)から見た場合、バックライト3から出射し偏光板22を透過した後の直線偏光は、液晶分子213pの屈折率(ne,no)により、液晶セル21の液晶層において複屈折が生じて楕円偏光となる。これにより、偏光板13を透過する成分が生じ、光漏れの原因となる。位相差フィルム4a,4bは、その楕円偏光を光学補償するために設けられるものである。
【0053】
なお、図10に示すように、位相差フィルム4aの3次元屈折率軸N4ax,N4ay,N4azと、位相差フィルム4bの3次元屈折率軸N4bx,N4by,N4bzとを定義する。すなわち、位相差フィルム4aのN4axは、偏光板13の偏光透過軸X13に平行な成分、N4ayは、偏光板13の偏光透過軸X13に垂直な成分、N4azは、偏光板13の法線に平行な成分である。なお、位相差フィルム4aは、いわゆるXプレートであり、N4ax>N4ay>N4azの関係が成り立つ。また、位相差フィルム4bは、N4bxは、偏光板22の偏光透過軸X22に垂直な成分、N4byは、偏光板22の偏光透過軸X22に平行な成分、N4bzは、偏光板22の法線に平行な成分である。位相差フィルム4bは、いわゆるNEZプレートであり、N4bx>N4bz>N4byの関係が成り立つ。
【0054】
本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2において、狭視野角時の印加電圧VHをおよそ2.5V〜3.5Vの範囲とする場合、位相差フィルム4aは、面内のリタデーションReが50nm程度、厚さ方向のリタデーションRthが270nm程度であることが好ましい。その場合、視野角制御用液晶パネル2の液晶材料として、例えば、異常光屈折率neがおよそ1.579であり、常光屈折率noがおよそ1.488の液晶材料を用いることが好ましい。また、この場合、位相差フィルム4bとしては、リタデーションが140nm程度、N4bz=0.1のものを使用することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2によれば、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に電圧VHを印加すれば、限られた視野角からのみ表示を視認できる狭視野角の表示を実現できる。また、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に電圧を印加しなければ、広い視野角から表示が視認できる。
【0056】
[第2の実施形態]
本発明にかかるディスプレイの他の実施形態について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、第1の実施形態において説明した構成には、第1の実施形態と同じ参照符号を付記し、その説明を省略する。
【0057】
第1の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2は、垂直配向膜212aの界面全体にプレチルトが与えられた液晶セル21を備えていた。これに対して、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルは、液晶セル21の代わりに、図11(a)および(b)に示す液晶セル51を備えている。その他の構成については、第1の実施形態にかかる液晶ディスプレイ100と同様である。
【0058】
図11(a)は、液晶セル51の平面図である。図11(b)は、図11(a)のA−A’断面における液晶セル51の構造を示す断面図である。液晶セル51では、垂直配向膜512aにおいて、セル中央部51cに対応する領域にはラビング処理が施されておらず、セル中央部51cの周辺領域51pにのみラビング処理が施されている。これにより、液晶セル51の液晶分子513pは、セル中央部51cにおいては、垂直配向膜512aの界面に対して分子長軸が垂直になるよう配向し、周辺領域51pにおいては、垂直配向膜512aの界面に対してプレチルト角θaを有するよう配向する。
【0059】
このように、垂直配向膜512aにおいて周辺領域51pに対応する部分のみにプレチルトを与えることにより、第1の実施形態に比較して以下のような利点がある。すなわち、垂直配向膜512aの界面に対してプレチルトを与えると、第1の実施形態において図9を参照して説明したとおり、ピーク透過率が低くなる。そこで、本実施形態のように、狭視野角状態において遮蔽されるべき周辺領域51pにおいてのみ、垂直配向膜512aにラビング処理を施すことにより、周辺領域51pにおける透過率を低く抑えつつ、セル中央部51cについては、ピーク透過率を高く保つことができる。
【0060】
なお、図11(a)においては、液晶セル51の主面中央に位置するほぼ円形のセル中央部51cを、ラビング処理を施さない領域とした。この場合、第1の実施形態において図6(b)に示した領域A2、すなわち、パネル中央の法線に対して極角φが所定の角度(例えば60°)以上となる領域を、プレチルトを与えるべき周辺領域51pとしても良い。しかし、垂直配向膜512aにおいてラビング処理を施す領域と施さない領域の分割パターンは、図11(a)の具体例のみに限定されず、任意である。つまり、ディスプレイの用途や使用状況等に応じて、ラビング処理を選択的に施す領域の分割数、位置、大きさ、および形状等を、任意に設計すれば良い。
【0061】
ここで、垂直配向膜512aの一部の領域にのみラビング処理を施す方法について、図12を参照しながら説明する。まず、図12(a)に示すように、透光性基板211a上に透明電極513aを形成し、その上に垂直配向膜材料512a’を塗布する。そして、図12(b)に示すように、さらにその上に、レジスト514を塗布する。次に、図12(c)に示すように、レジスト514において、プレチルトを付与したい領域(周辺領域51p)に相当する箇所のみが紫外線に暴露されるよう、所定のパターンが形成されたフォトマスク515を介して、レジスト514へ紫外線を照射する。
【0062】
次に、図12(d)に示すように、レジスト514を現像処理し、プレチルトを付与したい領域のレジスト514を剥離する。そして、図12(e)に示すように、レジスト514を剥離した領域の垂直配向膜材料512a’にのみ、ラビング処理を施す。次に、図12(f)に示すように、残ったレジストを剥離することにより、部分的にラビング処理が施された垂直配向膜512aが完成する。この垂直配向膜512aを有する透光性基板211aを、水平配向膜212bを有する透光性基板211bとを所定の間隔を持って貼り合わせて、その間隙に液晶材料を注入することにより、図11(b)に示したような液晶セル51が完成する。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、液晶セル51に電圧VHを印加すれば、限られた視野角からのみ表示を視認できる狭視野角の表示を実現できる。また、液晶セル51に電圧を印加しなければ、広い視野角から表示が視認できる。また、液晶セル51の垂直配向膜512aの一部の領域にのみラビング処理が施されていることにより、極角が大きい視角に対する漏れ光を確実に遮蔽しつつ、ピーク透過率を高く保つことが可能な視野角制御用液晶パネルを実現できる。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明にかかるディスプレイのさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、前述の各実施形態において説明した構成には、同じ参照符号を付記し、その説明を省略する。
【0065】
第2の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルは、液晶層との界面全体が、プレチルトが与えられた領域(ラビング処理が施された領域)と、プレチルトがない領域(ラビング処理が施されていない領域)とにマクロ的に分割された垂直配向膜512aを備えていた。これに対して、第3の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルは、第2の実施形態の垂直配向膜512aの代わりに、例えば図13に示すように、プレチルトが与えられた領域612a1とプレチルトがない領域612a2とがミクロ的に混在した垂直配向膜612aを備えている。図13の例では、プレチルトが与えられた領域612a1とプレチルトがない領域612a2とがチェッカーパターン状に交互に配置されている。なお、その以外の構成については、第1および第2の実施形態において説明した構成と同様である。
【0066】
なお、このような垂直配向膜612aは、第2の実施形態において図12を参照しながら説明した方法と同様の方法によって作成可能である。つまり、紫外線照射工程で用いるフォトマスク515のパターンを微細化することによって、プレチルトが与えられた領域612a1と、プレチルトがない領域612a2とがミクロ的に混在した垂直配向膜612aを作成することができる。
【0067】
このような構成にかかる垂直配向膜612aを備えたことにより、本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルを備えたディスプレイは、狭視野角状態において、極角が大きな視角から見た場合の透過率を低く抑えつつ、ピーク透過率を高く保つことができる。
【0068】
なお、図13では、プレチルトが与えられた領域612a1とプレチルトがない領域612a2とがチェッカーパターン状に混在した例を示したが、これはあくまでも一例にすぎず、プレチルトが与えられた領域とプレチルトがない領域との分割態様は、領域数、領域の大きさ、および領域の形状等について任意に設計することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態をいくつか説明したが、本発明の実施形態は上述の例に限定されず、他の様々な技術要素と組み合わせることができる。
【0070】
例えば、第1〜第3の実施形態にかかる液晶ディスプレイは、バックライト3として、一般的なバックライト(極角全範囲にわたってほぼ平均的な輝度分布を有するバックライト)を用いても良いが、指向性バックライトを用いることが好ましい。指向性バックライトとは、ディスプレイの正面方向、すなわち極角にしてφ=0°を中心とした比較的狭い角度範囲の輝度が、他の部分の輝度よりも高くなるような輝度分布を有するバックライトであり、一般的なバックライトに1枚または複数枚のレンズシートを積層することによって実現できる。
【0071】
ここで、図14〜図17を参照し、第1〜第3の実施形態にかかる液晶ディスプレイに対して適用可能なバックライトの特性について説明する。図14は、バックライト3として、指向性バックライトではなく一般的なバックライト(レンズシートなし)を用いた場合の輝度分布図である。この場合、バックライト3は、水平方向(方位角θ=0°からθ=180°の方向)に対称的な輝度分布を有するが、垂直方向(方位角θ=90°からθ=270°の方向)については、輝度のピークLP1を方位角θ=270°、極角φ=45°の付近に有する。なお、バックライト3の輝度ピークLP1をこのように正面方向からずらした設計としたのは、後述するようにレンズシートを2枚積層した場合に、輝度ピークが真正面(極角φ=0°)に位置するようにしたためである。つまり、レンズシートを用いない場合、あるいはレンズシートを1枚だけ積層する場合は、バックライト3の輝度ピークは、図14に示した位置とは異なる。
【0072】
図15〜図17は、レンズシートを用いた指向性バックライトとした場合の、バックライト3の輝度分布を示す。図15は、図14の輝度特性を持つバックライトの光出射面にレンズシートを1枚積層した構成とした場合の、バックライト3の輝度分布図である。レンズシートとしては、住友スリーエム株式会社製の「BEF II 90/50(商品名)」を用いたが、これに限定されない。この場合、図15に示すように、レンズシートを光出射面に1枚積層したことによって輝度分布が変化し、輝度のピークLP2が方位角θ=270°、極角φ=30°付近に現われる。また、水平方向については極角がおよそ0°≦φ≦40°の範囲、垂直方向については極角がおよそ0°≦φ≦60°の範囲において、他の部分よりも相対的に輝度が高くなる。
【0073】
図16は、図14の輝度特性を持つバックライトの光出射面に、上記と同じレンズシートを、図15とは配置角度が90°異なる向きに積層した構成とした場合の、バックライト3の輝度分布図である。この場合、図16に示すように、輝度のピークLP3が方位角θ=270°、極角φ=15°付近に現われると共に、水平方向については極角がおよそ0°≦φ≦60°の範囲、垂直方向については極角がおよそ0°≦φ≦40°の範囲において、他の部分よりも相対的に輝度が高くなる。
【0074】
図17は、図14の輝度特性を持つバックライトの光出射面に、上記と同じレンズシートを2枚、配置角度が90°異なる向きで積層した構成とした場合の、バックライト3の輝度分布図である。この場合、図17に示すように、輝度のピークLP4がほぼ正面(方位角θ=270°、極角φ=5°付近)に現われると共に、水平方向については極角がおよそ0°≦φ≦40°の範囲、垂直方向については極角がおよそ0°≦φ≦40°の範囲において、他の部分よりも相対的に輝度が高くなる。
【0075】
図18は、バックライト3の水平方向(方位角θ=0°からθ=180°の方向)における輝度分布を、レンズシートの有無の別に示した輝度−極角特性図である。図19は、バックライト3の垂直方向(方位角θ=90°からθ=270°の方向)における輝度分布を、レンズシートの有無の別に示した輝度−極角特性図である。なお、図18では、正面方向(極角φ=0°)から方位角θ=180°側の極角に負の符号を付して表し、図19では、正面方向(極角φ=0°)から方位角θ=270°側の極角に負の符号を付して表した。
【0076】
図18および図19に示すように、レンズシートを1枚積層した場合、法線方向(極角φ=0°)の輝度は、レンズシートがない場合の約1.8倍(輝度上昇率は約1.60)となる。また、レンズシートを2枚積層した場合は、法線方向の輝度は、レンズシートがない場合の約2.8倍(輝度上昇率は約1.95)となる。ただし、輝度上昇率は、バックライトシステム全体の構成材料や設計または総合的な照明効果に応じて異なるので、上記の輝度上昇率が必ずしも最適であるとは限らない。
【0077】
また、図18および図19に示すThは、レンズシートを1枚積層した場合の法線方向の輝度の50%に相当する輝度を表す。このTh以上の輝度が得られる極角の範囲(水平方向)は、図15に示すレンズシートの配置の場合は約66°、図16に示すレンズシートの配置の場合は約96°である。同様に、このTh以上の輝度が得られる極角の範囲(垂直方向)は、図15に示すレンズシートの配置の場合は約99°、図16に示すレンズシートの配置の場合は約66°である。なお、レンズシートを2枚積層した場合、法線方向の輝度の50%に相当する輝度が得られる極角の範囲は、水平方向では約58°であり、垂直方向では約88°である。
【0078】
なお、指向性バックライトを用いた場合を、極角全範囲にわたってほぼ平均的な輝度分布を有する一般的なバックライトを用いた場合と比較すると、挟視野角状態において、輝度ピークが正面方向へ近づくと共に、遮光状態となる方位角の範囲がより広くなるという効果を有する。従って、指向性バックライトを用いることにより、斜め後方にいる他人からの覗き見を、より確実に防止する表示装置を実現できる。
【0079】
図20は、本実施形態にかかる液晶ディスプレイ100の変形例としての液晶ディスプレイ200の構成を示す。図1と図20とを比較することから分かるように、液晶ディスプレイ100と液晶ディスプレイ200とは、表示用液晶パネル1と視野角制御用液晶パネル2との積層順序が逆になっている。すなわち、図20に示すように、液晶ディスプレイ200は、バックライト3の上に表示用液晶パネル1が積層され、さらにその上に視野角制御用液晶パネル2が積層された構成である。なお、液晶ディスプレイ200において、表示用液晶パネル1は、半透過型液晶パネルであっても良い。
【0080】
液晶ディスプレイ200においては、表示用液晶パネル1の上側の偏光板12と、視野角制御用液晶パネル2(液晶セル21および偏光板22)との積層体が、液晶ディスプレイ100に関して図3(a)および(b)に示した積層体と同等に機能する。従って、図20に示す液晶ディスプレイ200においても、液晶ディスプレイ100と同様に、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に印加する電圧を、0VとVHとの間で切替えることにより、液晶ディスプレイ100の表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替えることができる。
【0081】
以上のように、本実施形態にかかる液晶ディスプレイ100,200によれば、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に電圧VHを印加すれば、限られた視野角からのみ表示を視認できる狭視野角の表示を実現できる。また、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に電圧を印加しなければ、広い視野角から表示が視認できる。
【0082】
なお、本実施形態は、あくまでも本発明の具体例を示すものであって、本発明の技術的範囲をこれらの具体例に限定する意図はない。例えば、上記の説明では、ポジ型ネマティック液晶を用いる例を示したが、ハイブリッド配向させたネガ型ネマティック液晶を用いても良い。ネガ型ネマティック液晶を用いた場合、図2(a)および(b)に示したポジ型ネマティック液晶の液晶分子と挙動が異なる。すなわち、図21(a)および(b)に示すように、電圧無印加時は、液晶分子213nが、図2(a)と同様な配列をとっているが、電圧が印加されると、液晶分子213nが、その長軸を基板面にほぼ平行に揃えるように配向する。従って、ポジ型ネマティック液晶を用いる場合とは逆に、広視野角時は視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に所定の電圧を印加し、狭視野角時は液晶セル21に電圧を印加しないようにすれば良い。
【0083】
さらに、上記の説明では、視野角制御用液晶パネル2の液晶層全体が一様に制御される構成を例示した。しかし、液晶セル21の電極構造を局所領域毎に異ならせれば、液晶の動作を局所領域毎に制御することができる。これにより、表示画面の視野角の広さを局所領域毎に異ならせることも可能である。
【0084】
また、上記の説明では、表示装置の背面または前面に視野角制御装置を配置した例を説明したが、表示装置の背面と前面との両方に視野角制御装置を配置した構成も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
また、上記の説明では、表示装置の具体例として、透過型液晶パネルを挙げたが、表示装置はこれに限定されない。例えば、反射型または半透過型の液晶表示パネルを表示装置として用いることもできる。また、液晶表示パネルのような非発光型表示装置に限らず、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、プラズマディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)素子、無機EL素子、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display)、電界放出ディスプレイ(Field Emission Display)、表面電界ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display)等の自発光型表示装置を用いることもできる。
【0086】
図22は、表示装置として、反射型の液晶表示パネルを用いた場合の構成例である。図22に示す液晶ディスプレイ300は、反射型液晶表示パネル30の前面(観察者側)に、視野角制御用液晶パネル2を配置した構成である。反射型液晶表示パネル30は、観察者と反対側の基板に反射板(図示せず)を備えた反射型液晶セル31と、反射型液晶セル31の上面に配置された偏光板32とを備えている。反射型液晶セルの構造および動作は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。液晶ディスプレイ300では、反射型液晶表示パネル30の偏光板32と、視野角制御用液晶パネル2(液晶セル21および偏光板22)との積層体が、液晶ディスプレイ100に関して図3(a)および(b)に示した積層体と同等に機能する。従って、図22に示す液晶ディスプレイ300においても、液晶ディスプレイ100と同様に、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に印加する電圧を、0VとVHとの間で切替えることにより、液晶ディスプレイ300の表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替えることができる。
【0087】
また、図23は、表示装置として、例えばEL素子等の自発光型表示装置を用いた場合の構成例である。図23に示すディスプレイ400は、自発光型表示装置40の前面(観察者側)に、視野角制御用液晶パネル2を配置した構成である。この場合は、視野角制御用液晶パネル2は、液晶セル21の表裏に、一対の偏光板22,23を備えている。偏光板22,23の偏光透過軸は、互いに略直交するよう配置されている。ディスプレイ400では、視野角制御用液晶パネル2(液晶セル21および偏光板22,23)が、液晶ディスプレイ100に関して図3(a)および(b)に示した積層体と同等に機能する。従って、図23に示すディスプレイ400においても、液晶ディスプレイ100と同様に、視野角制御用液晶パネル2の液晶セル21に印加する電圧を、0VとVHとの間で切替えることにより、ディスプレイ400の表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替えることができる。
【0088】
なお、上記の実施形態のいずれにおいても、ディスプレイの表示状態が狭視野角であるときに、ユーザにその旨を知らせるためのメッセージ、画像、またはアイコン等を、表示装置の画面に表示するようにしても良い。
【0089】
また、上記の実施形態のいずれにおいても、表示装置で表示される画像の内容に応じて視野角制御装置の駆動回路が動作し、狭視野角と広視野角とを自動的に切替えるようにしても良い。例えば、ディスプレイがインターネットのウェブページを見るために用いられる場合、ウェブページの内容に応じて各ページに関連付けられたソフトウェアフラッグを参照し、他人から見られないことが好ましい内容である場合等に、狭視野角の表示状態に自動的に切替えるようにしても良い。また、ブラウザが暗号化モードで起動された場合に、狭視野角の表示状態へ切替えるようにしても良い。
【0090】
また、ディスプレイが、データ入力装置の一部である場合、またはデータ入力装置と関連し、入力されているデータタイプまたは入力されようとするデータタイプが機密性を有するものである場合等に、ディスプレイの表示状態を狭視野角に切替えるよう調整することも可能である。例えば、ユーザが何らかの個人識別番号を入力したとき等に、ディスプレイが自動的に狭視野角に切替わるようにすれば良い。
【0091】
なお、上記の実施形態のいずれにおいても、視野角制御装置は、表示装置から取り外しが可能なモジュールまたはカバーとして形成されても良い。そのような取り外し可能なモジュールは、表示装置に取り付けられたときに、表示装置に電気的に接続されることによって、適切な電力と制御信号を得ることができる。
【0092】
また、上記の実施形態のいずれにおいても、ディスプレイの周囲光を測定する光学センサ(アンビエントセンサ)をさらに備え、光学センサの測定値が所定の閾値を下回るときに、ディスプレイの表示状態を狭視野角とすることも好ましい。
【0093】
なお、本発明にかかるディスプレイおよび視野角制御装置の用途は多岐に亘る。例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型情報端末(PDA)、携帯型ゲーム機、または携帯電話等のディスプレイに適用されるだけでなく、ATM(現金自動受け払い機)、公共の場に設置される情報端末、券売機、および車載用ディスプレイ等、様々な機器のディスプレイに適用される。
【0094】
また、本発明にかかる視野角制御装置は、ディスプレイに組み込まれた状態で実施されることもあるが、ディスプレイの部品として、視野角制御装置単体で製造され、流通する可能性もある。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、広視野角と狭視野角とを切替えることにより様々な使用環境や用途に適応可能なディスプレイと、これに用いられる視野角制御装置として、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるディスプレイの概略構成を示す断面図である。
【図2】ハイブリッド配向されたポジ型のネマティック液晶のふるまいを示す模式図であり、(a)は電圧無印加時、(b)は電圧印加時の様子を示す。
【図3】第1の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルの構成を示す模式図であり、(a)は広視野角時における液晶分子の配列状態を示し、(b)は挟視野角時における液晶分子の配列状態を示す。
【図4】図2(a)および(b)と同じ向きに配置された視野角制御用液晶パネルおよび上側偏光板の積層体に対する、視角の定義を表す模式図である。
【図5】(a)は、第1の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルへ電圧が印加されたときの液晶分子の状態を示し、(b)は、第1の実施形態との比較例として、垂直配向膜側にプレチルトが与えられていない場合の液晶分子の状態を示す。
【図6】(a)は、垂直配向膜側にプレチルトが与えられていないハイブリッド配向の液晶セルにおける残留リタデーションの影響を示す模式図であり、(b)は、残留リタデーションの影響がある領域(A2)とない領域(A1)の分布と極角φとの関係を示す模式図である。
【図7】(a)は、図5(a)に示した本実施形態にかかる視野角制御用液晶パネル2の狭視野角状態時の透過率特性であり、(b)は、図5(b)に示した比較例の狭視野角状態時の透過率特性である。
【図8】(a)は、垂直配向膜側のプレチルト角θaを様々に異ならせた場合の、狭視野角状態における方位角200°、極角70°の視角に対する黒表示時の透過率比を表すグラフである。(b)は、垂直配向膜のプレチルト角θaと、狭視野角状態におけるピーク透過率比との関係を示すグラフである。
【図9】垂直配向膜のプレチルト角のプラスとマイナスの定義を示す模式図である。
【図10】本発明の第1の実施形態にかかるディスプレイの変形例であり、視野角制御用液晶パネルの透光性基板と偏光板との間に位相差フィルムをさらに備えた構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルが備える液晶セルの構成を示す図であり、(a)は当該液晶セルの平面図、(b)は、(a)のA−A’断面における当該液晶セルの構造を示す断面図である。
【図12】(a)〜(f)は、第2の実施形態にかかる液晶セルの垂直配向膜の主要な製造工程を示す模式図である。
【図13】本発明の第3の実施形態にかかる視野角制御用液晶パネルが備える垂直配向膜の構成を示す模式図である。
【図14】一般的なバックライト(レンズシートなし)の輝度分布図である。
【図15】レンズシートを積層した指向性バックライトの一例の輝度分布図である。
【図16】レンズシートを積層した指向性バックライトの他の例の輝度分布図である。
【図17】レンズシートを積層した指向性バックライトのさらに他の例の輝度分布図である。
【図18】バックライトの水平方向(方位角θ=0°からθ=180°の方向)における輝度分布を、レンズシートの有無の別に示した輝度−極角特性図である。
【図19】バックライトの垂直方向(方位角θ=90°からθ=270°の方向)における輝度分布を、レンズシートの有無の別に示した輝度−極角特性図である。
【図20】本発明の実施形態にかかるディスプレイの他の変形例の構成を示す断面図である。
【図21】ハイブリッド配向されたネガ型のネマティック液晶のふるまいを示す模式図であり、(a)は電圧無印加時、(b)は電圧印加時の様子を示す。
【図22】本発明の実施形態にかかるディスプレイのさらに他の変形例の構成を示す断面図である。
【図23】本発明の実施形態にかかるディスプレイのさらに他の変形例の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 表示用液晶パネル
2 視野角制御用液晶パネル
3 バックライト
11 液晶セル
12 偏光板
13 偏光板
21 液晶セル
211a,211b 透光性基板
212a 垂直配向膜
212b 水平配向膜
213p 液晶分子
213n 液晶分子
214a,214b 透明電極
215 駆動回路
22 偏光板
23 偏光板
30 反射型液晶表示パネル
31 液晶セル
32 偏光板
40 自発光型表示装置
100 液晶ディスプレイ
200 液晶ディスプレイ
300 ディスプレイ
400 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示すべき画像に応じて駆動される表示装置と、
前記表示装置の背面および前面の少なくとも一方に配置され、前記表示装置の視野角を制御する視野角制御装置とを備えたディスプレイであって、
前記視野角制御装置は、一対の透光性基板間に液晶分子をハイブリッド配向させた液晶層を有する液晶セルと、前記液晶層へ電圧を印加する駆動回路とを備え、
前記液晶セルは、当該ディスプレイ内で、偏光透過軸が略直交するよう配置された2枚の偏光板の間に配置され、
前記液晶セルは、前記一対の透光性基板の一方に設けられた水平配向膜と、前記一対の透光性基板の他方に設けられた垂直配向膜とを有し、
前記垂直配向膜の少なくとも一部に、前記水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられ、
前記駆動回路が、前記視野角制御装置の液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより、表示状態を、第1の視野角範囲を提供する第1の状態と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲を提供する第2の状態との間で切替え可能とすることを特徴とするディスプレイ。
【請求項2】
前記プレチルト付与領域におけるプレチルト角が2°〜5°の範囲である、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記垂直配向膜の界面全体が前記プレチルト付与領域である、請求項1または2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記垂直配向膜の界面が、前記プレチルト付与領域と、配向処理が施されていない非チルト領域とを含む、請求項1または2に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記非チルト領域が、前記垂直配向膜の中央に位置し、
前記プレチルト付与領域が、前記非チルト領域の周辺に位置する、請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記プレチルト付与領域と前記非チルト領域とが交互に隣接して設けられた、請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記視野角制御装置の液晶層が、ポジ型のネマティック液晶を含み、
前記駆動回路が、前記液晶層へ所定の電圧を印加することにより、前記第2の視野角範囲を提供する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記視野角制御装置の液晶層が、ネガ型のネマティック液晶を含み、
前記駆動回路が、前記液晶層へ所定の電圧を印加することにより、前記第1の視野角範囲を提供する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記2枚の偏光板が、それぞれの偏光透過軸が80°〜100°の範囲で交差するように配置された、請求項1〜8のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記表示装置が、直線偏光を出射する表示装置であって、
前記2枚の偏光板のうち1枚が、前記表示装置に設けられた偏光板である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記表示装置が透過型液晶表示装置であり、バックライトをさらに備えた、請求項1〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記視野角制御装置が、前記バックライトと前記透過型液晶表示装置との間に配置された、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記視野角制御装置が、前記透過型液晶表示装置の前面に配置された、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記バックライトが、法線方向に指向性を有する指向性バックライトである、請求項11〜13のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記表示装置が、反射型液晶表示装置または半透過型液晶表示装置である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記表示装置が、自発光型表示装置であって、
前記2枚の偏光板のうち1枚は、前記自発光型表示装置と前記視野角制御装置との間に設けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項17】
前記偏光板の偏光透過軸が、前記視野角制御装置の法線方向から見た前記液晶分子の配向軸と、40°〜50°の範囲で交差するように配置された、請求項1〜16のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項18】
前記視野角制御装置と前記2枚の偏光板との間の少なくとも1箇所に位相差フィルムを備えた、請求項1〜17のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項19】
表示すべき画像に応じて駆動され直線偏光を出射する表示装置の背面および前面の少なくとも一方に配置され、前記表示装置の視野角を制御するために用いられる視野角制御装置であって、
一対の透光性基板間に液晶分子をハイブリッド配向させた液晶層を有する液晶セルと、
前記液晶層へ電圧を印加する駆動回路と、
前記液晶セルにおいて前記表示装置からの直線偏光を入射する面の反対側に設けられ、当該直線偏光の偏波面に略直交する偏光透過軸を有する偏光板とを備え、
前記液晶セルは、前記一対の透光性基板の一方に設けられた水平配向膜と、前記一対の透光性基板の他方に設けられた垂直配向膜とを有し、
前記垂直配向膜の少なくとも一部に、前記水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられ、
前記駆動回路が、前記液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより、光の出射範囲を、第1の視野角範囲と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲との間で切替え可能とすることを特徴とする視野角制御装置。
【請求項20】
表示すべき画像に応じて駆動される自発光型表示装置の前面に配置され、前記自発光型表示装置の視野角を制御するために用いられる視野角制御装置であって、
一対の透光性基板間に液晶分子をハイブリッド配向させた液晶層を有する液晶セルと、
前記液晶層へ電圧を印加する駆動回路と、
前記一対の透光性基板の外側に、偏光透過軸が略直交するよう設けられた一対の偏光板とを備え、
前記液晶セルは、前記一対の透光性基板の一方に設けられた水平配向膜と、前記一対の透光性基板の他方に設けられた垂直配向膜とを有し、
前記垂直配向膜の少なくとも一部に、前記水平配向膜に対する配向処理と平行かつ同じ向きに配向処理が施された領域であるプレチルト付与領域が設けられ、
前記駆動回路が、前記液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより、光の出射範囲を、第1の視野角範囲と、第1の視野角範囲内にあり第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲との間で切替え可能とすることを特徴とする視野角制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−299280(P2008−299280A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148394(P2007−148394)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】