説明

ディスプレイパネルの冷却装置とその方法

【課題】PDPパネル中央部の冷却風を低温化することと、トレイの有無により部屋毎の冷却風量を制御させ、PDPパネル温度を均一化させる。
【解決手段】両方のダクト103によって、吹出し口104より供給された冷却風102は、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201を介して、PDPパネル101面上に吹き出される。吹き出された冷却風102とPDPパネル101により生じた熱と熱交換することによって、PDPパネル101を冷却する。これにより、PDPパネル101全体に冷却風102を供給することができ。PDPパネル101全体に熱交換が作用してPDPパネル101面内の温度を均一化できる。さらに、複数のファン201の吹出し口前面に整流板を備え、複数のファン201を個別制御し、冷却風を変化させてPDPパネル101の温度を均一化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ(PDP)パネルの製造方法および装置に係り、特にパネルエージング工程でのパネルの発熱に対して、表面温度を均一化する冷却装置とその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のディスプレイパネルの冷却装置とその方法は、略水平に置かれたPDPパネルに対して、ダクトによって側方からの冷却風を吹出し口より吹き出し、吹出し口とは違う方向の排気口を設けて、熱を奪った空気を排気口より逃がすことで冷却をしているものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の冷却装置とその方法を示す図である。図8において、略水平に置かれたPDPパネル101があり、冷却風102は側方からのダクト103と吹出し口104を介して、PDPパネル101の熱を冷却風102によって熱交換される。熱交換された冷却風102は、吹出し口104と異なる方向に設けられた排気口105から排出され、PDPパネル101を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−35384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今のPDPパネルは高密度化に伴い発熱量が増大し、前述の構成では、熱交換された冷却風とPDPパネルからの熱が混ざり合って、冷却風が高温化してPDPパネルの熱との熱交換が進まず、これによりPDPパネルに温度のバラツキが発生する。さらに、排気口より遠い場所では熱交換された冷却風が滞留してしまい、その場所での冷却風が高温化してPDPパネルの熱との熱交換が進まず、これによりPDPパネルの温度は高温化する。
【0006】
また、一般的なパネルエージング工程での生産方法は、冷却風によりPDPパネルの熱交換を行うための部屋の多段化を実施しており、PDPパネルをトレイ等に載せて部屋内に移載させる方式をとっている。しかしながら、従来の構成では、トレイの有無によって、供給される冷却風の圧力損失が生じることとなり、風量差が発生してPDPパネルの熱交換量に差が生じ、結果としてPDPパネルの温度バラツキが発生することになる。
【0007】
前述した構成では、PDPパネル中央部の冷却風が高温化すること、また、トレイの有無により部屋毎の冷却風量がアンバランスになるという課題を有している。
【0008】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するものであり、PDPパネル中央部の冷却風を低温化すること、また、トレイの有無により部屋毎の冷却風量を制御させ、PDPパネル温度を均一化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載したディスプレイパネルの冷却装置は、トレイの上に載置したディスプレイパネルを、ディスプレイパネル平面に垂直な方向に複数個を積み重ねて配置して冷却するディスプレイパネルの冷却装置において、少なくともトレイの上に載置したディスプレイパネルの一方の面と対向する位置に複数個の第1ファンを配置したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2〜4に記載した発明は、請求項1のディスプレイパネルの冷却装置において、ディスプレイパネルの他方の面と対向する位置に複数個の第2ファンを配置したこと、さらに、トレイの有無あるいはトレイを出し入れするクレーンアームの有無により、第1ファンあるいは第2ファンの回転数を変化させる制御部を設けたこと、さらに、ディスプレイパネルと第1ファンの間あるいはディスプレイパネルと第2ファンの間に配置される整流板を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載したディスプレイパネルの冷却方法は、トレイの上に載置したディスプレイパネルを、ディスプレイパネル平面に垂直な方向に複数個を積み重ねて配置して冷却するディスプレイパネルの冷却方法であって、トレイの上に載置したディスプレイパネルの一方の面と対向する位置に複数個配置した第1ファン、および/またはディスプレイパネルの他方の面と対向する位置に複数個配置した第2ファンの回転数を、トレイの有無あるいはトレイを出し入れするクレーンアームの有無によって変化させる制御を行うことを特徴とする。
【0012】
前記冷却装置とその方法によれば、ディスプレイパネル平面と対向する方向に複数のファンを配置し、配置したファンを個別に制御するとともに、ファンの吹出し口前面に整流板を配して、冷却を行って、ディスプレイパネルの中央部の冷却風を低温化し、また積み重ねて配置した部屋のトレイの有無によって、部屋毎の冷却風量を制御して、パネル温度を均一化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PDPパネルのパネルエージング工程におけるパネル面内の温度を均一化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1におけるパネルエージング装置の(a)は断面図、(b)は概略斜視図
【図2】本発明の実施形態2におけるパネルエージング装置を示す断面図
【図3】本実施形態2における(a)はパネルエージング装置のスタッカークレーンがトレイを挿入した状態、(b)はスタッカークレーンの概略構成を示す図
【図4】本実施形態2におけるパネルエージング装置の(a)はファン配置図と冷却風の流れ方、(b)は滞留部の冷却風を示す図
【図5】本実施形態2におけるパネルエージング装置のファンを制御した冷却風の流れ方を示す図
【図6】本発明の実施形態3における(a)は整流板を設けたパネルエージング装置の断面、(b)はファン直下の滞留部の冷却風、(c)は整流板により拡散した冷却風を示す図
【図7】本実施形態3における(a)はパンチングメタル、(b)は金網の整流板を示す図
【図8】従来の冷却装置とその方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1におけるパネルエージング装置を示す(a)は断面図、(b)は概略斜視図である。ここで、前記従来例を示す図8において説明した構成部材に対応し同等の機能を有するものには同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0017】
図1(a)に示すように、パネルエージング装置は、両方のダクト103と、吹出し口104と、PDPパネル101と、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201から構成されている。
【0018】
両方のダクト103によって、吹出し口104より供給された冷却風102は、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201を介して、PDPパネル101面上に吹き出される。吹き出された冷却風102とPDPパネル101により生じた熱と熱交換することによって、PDPパネル101が冷却される。熱交換した冷却風102は排気口105から排気ダクト106を経て排出される。
【0019】
係る構成によれば、PDPパネル101全体に冷却風102を供給することができ。PDPパネル101全体に熱交換が作用してPDPパネル101面内の温度を均一化できる。
【0020】
(実施形態2)
図2は本発明の実施形態2におけるパネルエージング装置を示す断面図であり、上段の部屋401aにトレイ301がない状態を示す。また、図3(a)はパネルエージング装置において、スタッカークレーンによりトレイを上段の部屋に挿入した状態、(b)はスタッカークレーンの概略構成を示す図である。図4はパネルエージング装置における(a)はファン配置図と冷却風の流れ方、(b)は滞留部の冷却風を示す図である。
【0021】
また、図2〜図4においても、図1および図8で説明した構成部材に対応し同等の機能を有するものには同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
図2においては、PDPパネル101を載せたトレイ301が上段の部屋401にないことを示し、図3においては、上段の部屋401にスタッカークレーン300のアーム302を介して、PDPパネル101を載せたトレイ301を挿入した状態を示している。また、図4にはパネルエージング装置のファン201の配置を示しており、そのファン201は個別に制御できる構成である。
【0023】
図2に示すように、両方のダクト103によって、吹出し口104より供給された冷却風102は、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201を介してPDPパネル101面上に吹き出される。このとき、PDPパネル101を載せたトレイ301がない上段の部屋401aに供給された冷却風102は、PDPパネル101を載せたトレイ301がある下段の部屋401に供給された冷却風と合わさり、下段の部屋401に供給される。このため、上段の部屋401aにパネルを載せたトレイ301がある場合とパネルを載せたトレイ301がない場合では、供給風量の温度が異なるためにPDPパネル101より生じた熱との熱交換効率が異なってパネル温度が変化する。
【0024】
具体的には、上段の部屋401aにパネルを載せたトレイ301がない場合では、パネルを載せたトレイ301がある場合に比べて、下段の部屋401への供給風量の温度が減少し同じ風量ではパネル温度は全体的に低温化する。実験結果では、約3度から5度低くなることが確認されている。
【0025】
そこで、上段の部屋401aにパネルを載せたトレイ301がない場合は、下段の部屋401のPDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の回転数を少なくする。例えば、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の回転数としては、上段の部屋401aにパネルを載せたトレイ301がある場合を80%とすると、上段の部屋401aにパネルを載せたトレイ301がない場合は60%に回転数を落とす。
【0026】
または、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の一部回転を止めることで、下段の部屋401への冷却風102の供給量を少なくさせることによりパネル温度の低温化を抑制する。ようするに、各部屋のトレイ検出手段203により、上段の部屋401aにパネルを載せたトレイ301の有無を判断し、下段の部屋401のPDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の回転数を制御することで、下段の部屋401のパネル温度の低下を抑制する。
【0027】
また、図3に示すように、上段の部屋401aへ10秒から20秒かけて、スタッカークレーン300のアーム302を介してPDPパネル101を載せたトレイ301を挿入しているとき、上段の部屋401aへは、両方のダクト103によって、吹出し口104より供給された冷却風102が、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201を介して、PDPパネル101面上に吹き出される。このとき、吹出し口104より供給された冷却風102はスタッカークレーン300のアーム302の側面で遮断されるため、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201への風量が少なくなり、上段の部屋401aのパネル温度は全体的に高温化する。
【0028】
具体的には、スタッカークレーン300のアーム302がある場合では、スタッカークレーン300のアーム302がない場合に比べて、上段の部屋401aのパネル温度は全体的に高温化し、上段の部屋401aからの冷却風と合わさる下段の部屋401へ供給する風量の温度も上昇する。実験結果では、約1度から3度上昇することが確認されている。そこで、スタッカークレーン300のアーム302がある場合では、下段の部屋401のPDPパネル101と対向に配置された複数のファン201の回転数を多くする。
【0029】
例えば、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の回転数は、スタッカークレーン300のアーム302がない場合を80%とすると、スタッカークレーン300のアーム302ある場合は100%に回転数を増加させることで、下段の部屋401へ冷却風102の供給量を増加させることによりパネル温度の上昇を抑制する。ようするに、アーム検出手段303により、スタッカークレーン300のアーム302の有無を判断し、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の回転数を制御させることで、下段の部屋401のパネル温度の上昇を抑制する。
【0030】
また、図4(a)に示すファン配置図のように、PDPパネル101面と対向した方向に複数のファン201を配置した場合、熱交換された冷却風102はファン201とファン201の間を通り排気口へと導かれるが、ファン201の回転数を全て100%に設定すると、少量の冷却風102はファン201とファン201の間に居座り滞留状態となって、滞留部202の冷却風は高温化する。このため、PDPパネル101との熱交換の効率が悪くなり、パネル温度が局部的に高温化することは実験で確認されている。
【0031】
そこで、複数を配置したファン201の回転数を変化させる。例えば、図5に記載しているように、ファン配置図において上下の列毎にファンの回転数を50%と100%に設定する。このことによって、ファン201の風力差により熱交換された冷却風は攪拌され、ファン201とファン201の間に居座ることなく排気口(図示せず)へと導かれる。
【0032】
この設定によって、PDPパネル101との熱交換の効率が良くなり、パネル温度の局部的な高温化を抑制する。また、上下に配置された列毎にファンの回転数を変化させることを記載したが、上下に代えて左右、または列毎にファンの回転を周期的に止める等を行うことも同じ効果が得られると想定される。
【0033】
(実施形態3)
図6は本発明の実施形態3における(a)は整流板を設けたパネルエージング装置の断面、(b)はファン直下の滞留部の冷却風、(c)は整流板により拡散した冷却風を示す図である。
【0034】
図6(a)に示すように、側方からダクト103を経て吹出し口104より供給された冷却風102は、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201を介して吹き出されるが、ファン201の構成上、図6(b)のようにファン中心部では少量の冷却風が滞留状態となり、その滞留部202の冷却風は高温化する。このため、PDPパネル101との熱交換の効率が悪くなり、ファン201直下のパネル温度は局部的に高温化することは、実験で確認されている。
【0035】
図6(a)のように、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201の前面に整流板402を配置した構成とする。この整流板402の具体的な形状は、図7(a),(b)に示すように、パンチングメタル、金網等の開口率の高い形状となっている。PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201を通過した冷却風102は、複数のファン201の前面に配置された整流板402の遮蔽部と開口部を通過していく際、遮蔽部にあたった冷却風と開口部を通過する冷却風によって風力差が発生し、整流板402を通過した冷却風102は拡散される(図6(c))。
【0036】
これにより、冷却風102はファン中央部へも供給されると想定される。ファン201よる全体の風量は、整流板402の圧力損失により減少して全体的にパネル温度は上昇するも、ファン201直下でのパネル温度の局部的な高温化を抑制する。整流板402の形状としては、金網等の開口率の高いものが適していることは実験で確認されている。
【0037】
なお、前述の各実施形態では、PDPパネル101面と対向した方向に配置された複数のファン201として、部屋401内におけるPDPパネル101に対して上部に位置したファン201を例示して説明したが、下部にあるファン201あるいは上下両方のファン201としても同様か、さらなる効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るディスプレイパネルの冷却装置とその方法は、PDPパネルのパネルエージング工程におけるパネル面内の温度を均一化でき、PDPパネルの製造方法および装置として有用である。
【符号の説明】
【0039】
101 PDPパネル
102 冷却風
103 ダクト
104 吹出し口
105 排気口
106 排気ダクト
201 ファン
202 滞留部
203 トレイ検出手段
300 スタッカークレーン
301 トレイ
302 アーム
303 アーム検出手段
401,401a 部屋
402 整流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイの上に載置したディスプレイパネルを、前記ディスプレイパネル平面に垂直な方向に複数個を積み重ねて配置して冷却するディスプレイパネルの冷却装置において、
少なくとも前記トレイの上に載置したディスプレイパネルの一方の面と対向する位置に複数個の第1ファンを配置したことを特徴とするディスプレイパネルの冷却装置。
【請求項2】
前記ディスプレイパネルの他方の面と対向する位置に複数個の第2ファンを配置したことを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネルの冷却装置。
【請求項3】
前記トレイの有無あるいは前記トレイを出し入れするクレーンアームの有無により、前記第1ファンあるいは前記第2ファンの回転数を変化させる制御部を、
さらに設けたことを特徴とする請求項1または2記載のディスプレイパネルの冷却装置。
【請求項4】
前記ディスプレイパネルと前記第1ファンの間あるいは前記ディスプレイパネルと前記第2ファンの間に配置される整流板を、
さらに設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイパネルの冷却装置。
【請求項5】
トレイの上に載置したディスプレイパネルを、前記ディスプレイパネル平面に垂直な方向に複数個を積み重ねて配置し、前記ディスプレイパネルを冷却するディスプレイパネルの冷却方法であって、
前記トレイの上に載置したディスプレイパネルの一方の面と対向する位置に複数個配置した第1ファン、および/または前記ディスプレイパネルの他方の面と対向する位置に複数個配置した第2ファンの回転数を、前記トレイの有無あるいは前記トレイを出し入れするクレーンアームの有無によって変化させる制御を行うことを特徴とするディスプレイパネルの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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