説明

ディスプレイ向け二つの珪酸塩のマトリクスのコーティング

カラーディスプレイのディスプレイスクリーンが開示される。ディスプレイスクリーンは、3つの異なる色を放出する蛍光体からなるアレイをその上に有するガラス基板を含む。グラファイトベースのマトリクスは、3つの異なる色を放出する蛍光体のそれぞれの間にある隙間領域に配置される。グラファイトベースのマトリクスは、グラファイト、珪酸カリウム、珪酸ナトリウムを含む水性の組成から形成される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーディスプレイに関し、より詳細には、フェイスプレートパネル上に蛍光体の堆積を有するカラーディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばカラー陰極線管(CRT)及び電界放出デバイス(FED)のような多くのカラーディスプレイは、典型的にディスプレイスクリーンを含む。ディスプレイスクリーンは、3つの異なる色を放出する蛍光体からなるアレイでコートされるガラス基板から形成される。コントラストを提供するため、3つの異なる色を放出する蛍光体のそれぞれの間の隙間の領域にグラファイトベースのマトリクスが設けられる。
【0003】
多くのグラファイトベースのマトリクス組成は、ガラスに対する粘着性を失い、ガラスとの物理的な接触が行なわれるときに弱い内部強度を示す。電界放出デバイスのアセンブリの間、グラファイトベースのマトリクス組成と接触してスペーサが配置される。グラファイトマトリクスのコーティングの弱さのため、スペーサが落ちるように、接着の不具合がコーティング/グラスのインタフェースで主に生じる場合がある。また、接着の不具合は、グラファイトベースのマトリクス組成のボディ内でも生じ、ディスプレイスクリーンから離れさせる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ガラスディスプレイスクリーンへの改善された接着をもつグラファイトベースのマトリクス組成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カラーディスプレイのディスプレイスクリーンに関する。ディスプレイスクリーンは、3つの異なる色を放出する蛍光体からなるアレイをその上に有するガラス基板を含む。グラファイトベースのマトリクスは、3つの異なる色を放出する蛍光体のそれぞれの間の隙間の領域に位置される。グラファイトベースのマトリクスは、グラファイト、珪酸カリウム、及び珪酸ナトリウムを含む水性の組成(aqueous composition)から形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の原理の好適な実現は、添付図面と関連して、更に詳細に記載される。
図1は、カラーディスプレイのディスプレイスクリーン1の一部の側面図である。ディスプレイスクリーン1は、3つの異なる色を放出する蛍光体15G,15B,15Rからなるアレイをその上に有するガラス基板10を有する。グラファイトベースのマトリクス20は、3つの異なる色を放出する蛍光体G,1515B,15Rのそれぞれの間の隙間の領域に配置される。本実施の形態で記載される例示的なディスプレイスクリーン1は、他のディスプレイスクリーンのなかで、電界放出ディスプレイ(FED)と同様に、カラー陰極線管(CRT)のフェイスプレートパネルである。
【0007】
グラファイトベースのマトリクスは、グラファイト、珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムを含む水性の組成から形成される。混合されたアルカリ珪酸塩の付加は、倍数の方式でグラファイトベースのマトリクス組成に対する接着強度を与える。珪酸カリウムは、室温で硬くなり、その後の処理ステップを乗り切るために十分な強度をグラファイトベースのマトリクス組成に提供する。珪酸ナトリウムは、(たとえば450°での)焼付けの間に硬くなり、コーティング/ガラスインタフェースで、及びその後の処理ステップの間のコーティングのボディ内で良好な接着が存在する。珪酸ナトリウムのみがグラファイトベースのマトリクス組成においてアルカリ珪酸塩であるとき、グラファイトベースのマトリクス組成は、その後の処理ステップの間にガラスを洗う。珪酸カリウムのみがグラファイトベースのマトリクス組成においてアルカリ珪酸塩であるとき、グラファイトベースのマトリクス組成は、与えられたスペーサを保持するために十分な接着強度を有さない。
【0008】
珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムは、珪酸ナトリウム対珪酸カリウムが約1:1から約5:1の比率で水性の組成に存在する場合がある。さらに、水性の組成は、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムを重量で10%まで含むことが好ましい。
【0009】
[実施例1]
例示的な含水グラファイトベースのマトリクス水溶液(aqueous graphite-based matrix solution)は、14.4グラムのKasil2135珪酸カリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、9.4グラムのJ珪酸ナトリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、100グラムのElectrodag1530グラファイトディスパージョン(Port Huron, MIのAcheson Colloids社から商業的に入手可能)を128.9グラムの脱イオン水で混合することで形成される。含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、約30分以上の間、ジャーローラ(jar roller)で更に混合される。混合の後、グラファイトベースのマトリクスの構成は、凝集を回避するために約24時間内でディスプレイスクリーンに加えられるべきである。
【0010】
実施例1のグラファイトベースのマトリクス組成から形成されるコーティングは、接着のために検査された。グラス/コーティングのインタフェースで、又はコーティングのボディ内で不具合が生じなかった。
【0011】
[実施例2]
例示的な含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、8.1グラムのKasil2135珪酸カリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、5.25グラムのJ珪酸ナトリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、100グラムのElectrodag1530グラファイトディスパージョン(Port Huron, MIのAcheson Colloids社から商業的に入手可能)を83.75グラムの脱イオン水で混合することで形成される。含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、約30分以上の間、ジャーローラで更に混合される。混合の後、グラファイトベースのマトリクス組成は、凝集を回避するために約24時間内でディスプレイスクリーンに加えられるべきである。
【0012】
実施例2のグラファイトベースのマトリクス組成から形成されるコーティングは、接着のために検査された。グラス/コーティングのインタフェースで、又はコーティングのボディ内で不具合が生じなかった。
【0013】
[実施例3]
例示的な含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、5.84グラムのKasil2135珪酸カリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、11.98グラムのJ珪酸ナトリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、100グラムのElectrodag1530グラファイトディスパージョン(Port Huron, MIのAcheson Colloids社から商業的に入手可能)を111.31グラムの脱イオン水で混合することで形成される。含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、約30分以上の間、ジャーローラで更に混合される。混合の後、グラファイトベースのマトリクス組成は、凝集を回避するために約24時間内でディスプレイスクリーンに加えられるべきである。
【0014】
実施例3のグラファイトベースのマトリクス組成から形成されるコーティングは、接着のために検査された。グラス/コーティングのインタフェースで、又はコーティングのボディ内で不具合が生じなかった。
【0015】
[実施例4]
例示的な含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、3.9グラムのKasil2135珪酸カリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、12.6グラムのJ珪酸ナトリウム(Valley Forge, PAのPQ社から商業的に入手可能)、100グラムのElectrodag1530グラファイトディスパージョン(Port Huron, MIのAcheson Colloids社から商業的に入手可能)を112.0グラムの脱イオン水で混合することで形成される。含水グラファイトベースのマトリクス水溶液は、約30分以上の間、ジャーローラで更に混合される。混合の後、グラファイトベースのマトリクス組成は、凝集を回避するために約24時間内でディスプレイスクリーンに加えられるべきである。
【0016】
実施例4のグラファイトベースのマトリクス組成から形成されるコーティングは、接着のために検査された。グラス/コーティングのインタフェースで、又はコーティングのボディ内で不具合が生じなかった。
【0017】
図2及び図3A〜図3Dを参照して、カラーディスプレイのディスプレイスクリーン上に本発明のグラファイトベースのマトリクスを形成する方法が記載される。はじめに、図2及び図3Aで参照符号100により示されるように、当該技術分野で知られるように、ディスプレイスクリーン10の内部表面を苛性溶液で洗浄し、それを水ですすぎ、それを緩衝されたフッ化水素酸でエッチングし、再びそれを水ですすぐことにより、ディスプレイスクリーン10の内部表面がクリーニングされる。
【0018】
ひとたびガラスが適切に準備されると、アンチハレーション(anti-halation)コーティングは、反射を低減するために処理側に反対である、プレートの逆側に行なわれる。フォトレジストは、ガラス表面に塗布され、マスクを通して露光される。露光される領域では、フォトレジストは架橋し、硬くなる。次いで、プレートは脱イオン水ですすがれ、硬化していないフォトレジストが除去される。次いで、プレートを約35℃に加熱し、グラファイトサスペンションにスピンをかける。結果的に得られるコーティングは、加熱ランプの下で乾燥することが許容される。ひとたび乾燥すると、過ヨウ素酸の希薄なバスに浸される。酸は、硬化されたフォトレジストをエッチングし、プレートが再び脱イオン水で洗浄されたとき、軟化されたフォトレジストは洗い流し、グラファイトが上になる。このように、グラファイトパターンは、フォトレジストが存在しなかった場所に依然として残る。
【0019】
図3Bに示されるように、ディスプレイスクリーン10の内部表面には、参照符号102により示されるように、グラファイトベースのマトリクス20が設けられる。グラファイトベースのマトリクス20は、たとえば当該技術分野で公知であるようなスピンコーティング技術を使用して、ディスプレイスクリーン10の内部表面にわたり一様に塗布される。グラファイトベースのマトリクスは、好ましくは、約1〜2μmの厚さを有することが好ましい。図2における参照符号104により示されるように、グラファイトベースのマトリクスがディスプレイスクリーン10に塗布された後、パターニングされる。
【0020】
グラファイトベースのマトリクス20は、そこに開口を形成するためにパターニングされ、その開口内で、3つの異なる色を放出する蛍光体15G,15B,15R(図1)が堆積される。図3Cを参照して、グラファイトベースのマトリクス20は、感光性物質25を堆積し、係るレイヤの一部をたとえば紫外線(UV)光のような光に照射することでパターニングされる。感光性物質25は、たとえば脱イオン水を使用して現像される。現像の間、感光性物質25の一部が除去される。その後、図3Dに示されるように、グラファイトベースのマトリクス20の一部は、3つの異なる色を放出する蛍光体15G,15B,15Rがその後に堆積される領域で除去される。
【0021】
図2における参照符号106により示されるように、グラファイトベースのマトリクスがパターニングされた後、ディスプレイスクリーン10は、そこから水分を除去するために約40分間に約450℃に焼付けられる。
【0022】
上述されたグラファイトベースにマトリクスの構成は、カラーディスプレイスクリーンのガラスの改善された接着を有する。さらに、グラファイトベースのマトリクス組成は、改善されたコーティングの強度を有する。
【0023】
本発明の教示を組み込んだカラー陰極線管(CRT)又は電界放出デバイス(FED)の例示的なカラーディスプレイスクリーンが本明細書で詳細に示され、記載されたが、当業者であれば、これらの教示を盛り込んだ多くの他の変形された実施の形態を容易に考案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のグラファイトベースのマトリクスを含むカラーディスプレイのディスプレイスクリーンの一部の側面図である。
【図2】カラーディスプレイのディスプレイスクリーン上に本発明のグラファイトベースのマトリクスを形成するプロセスのフローチャートである。
【図3】図3Aから図3Dは、発光スクリーンのアセンブリの形成の間のフェイスプレートパネルの内部表面のビューを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィールドのセットを定義するパターニングされた光吸収マトリクス組成を有するディスプレイスクリーンを有し、
前記光吸収マトリクスは、グラファイト、珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムを含む、
ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項2】
前記珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムは、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムが約1:1から約5:1の割合で前記光吸収マトリクス組成に存在する、
請求項1記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記光吸収マトリクス組成は、重量で約10%未満の珪酸ナトリウムと珪酸カリウムを含む、
請求項1記載のディスプレイ。
【請求項4】
複数のフィールドのセットを定義するパターニングされた光吸収マトリクス組成を有するディスプレイスクリーンを有し、
前記光吸収マトリクスは、グラファイト、珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムを含む、
ことを特徴とする陰極線管。
【請求項5】
前記珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムは、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムが約1:1から約5:1の割合で前記光吸収マトリクス組成に存在する、
請求項4記載の陰極線管。
【請求項6】
前記光吸収マトリクス組成は、重量で約10%未満の珪酸ナトリウムと珪酸カリウムを含む、
請求項4記載の陰極線管。
【請求項7】
複数のフィールドのセットを定義するパターニングされた光吸収マトリクス組成を有するディスプレイスクリーンを有し、
前記光吸収マトリクスは、グラファイト、珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムを含む、
ことを特徴とする電界放出デバイス。
【請求項8】
前記珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムは、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムが約1:1から約5:1の割合で前記光吸収マトリクス組成に存在する、
請求項7記載の電界効果デバイス。
【請求項9】
前記光吸収マトリクス組成は、重量で約10%未満の珪酸ナトリウムと珪酸カリウムを含む、
請求項7記載の電界効果デバイス。



【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2009−541931(P2009−541931A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516464(P2009−516464)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/024220
【国際公開番号】WO2007/149084
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】