説明

ディスプレイ用前面フィルタ、及びこれを用いた画像表示装置

【課題】電磁波遮蔽性と、コントラスト向上及び画像白化防止につながる外光吸収性とを両立させたディスプレイ用前面フィルタと、これを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイ用前面フィルタ100は、電磁波遮蔽層30と外光遮蔽層40を有し、電磁波遮蔽層は透明基材20上にパターン状に形成された導電性凸状パターン層10を有し、導電性凸状パターン層は導電性粒子1aとバインダ樹脂1bとを含む導電性組成物層からなる導電パターン層1と、この表面に形成され端角部が突出し中央部が凹陥した金属層2と、この表面に形成され金属針状体からなる黒化層3を有する。外光遮蔽層は、外光を吸収する遮光パターン40aと、この隙間に形成された光透過部40bを有する。画像表示装置は、このフィルタをディスプレイパネルの前面に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイの画像観察者側である前面に配置するディスプレイ用前面フィルタと、これを用いた画像表示装置に関する。
特に、ディスプレイパネルから出る電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層と、ディスプレイパネルに入る外光を吸収する外光遮蔽層とを備えたディスプレイ用前面フィルタと、これを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(以後PDPとも言う)などの各種薄型ディスプレイが普及してきている。
また、プラズマディスプレイを例にとれば、ディスプレイパネルの前面(画面)に光学フィルタを配置し、光学フィルタにより、電磁波遮蔽機能、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、調色機能、コントラスト向上機能、反射防止機能等の光学フィルタ機能、この他、帯電防止機能、耐衝撃機能などの各種機能を実現している。
【0003】
電磁波遮蔽層としては、印刷法によるものがコスト的に有利であり、例えば、特許文献1では、透明基材上に、銀などの金属粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物層からなる導電パターン層を、凹版印刷法によって形成したものを開示している。
また、銀粒子は可視光反射率が高い為に外光を反射し、ディスプレイ画像のコントラストを低下させる。この為、特許文献2では、銀などの金属粒子に加えて、導電性組成物中に別の導電性粒子として黒色を呈するグラファイト粒子を添加した電磁波遮蔽層を提案している。
一方、前記特許文献1でも、外光反射を防ぐ為に、導電パターン層の表面に、黒化ニッケルめっき等による黒化層を形成して表面を黒くした電磁波遮蔽層も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4436441号公報(国際公開第2008/149969号のパンフレット)
【特許文献2】特開2001−102792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電パターン層に含ませる銀などの金属粒子では、金属の一般物性として、電磁波遮蔽性能に直結する導電性と、可視光の光反射性とは、いずれも物質中の自由電子の易動度に起因する。このため、金属粒子を用いた導電パターン層においては、電磁波遮蔽性と光反射性とは相反する。また、黒化層においては、光反射防止性と導電性とが相反し、黒化層に電磁波遮蔽性能は期待できない。
したがって、グラファイト粒子の添加や黒化層の形成による光反射防止性の付与によって、電磁波遮蔽性能と外光吸収性能とを両立させて、電磁波遮蔽性と、外光吸収性によるコントラスト向上及び画像白化防止と、を両立させることは原理的に難しかった。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、電磁波遮蔽性と、コントラスト向上及び画像白化防止につながる外光吸収性とが両立するディスプレイ用前面フィルタと、このフィルタを用いた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明では、ディスプレイ用前面フィルタと画像表示装置を次の様な構成にした。
(1)ディスプレイパネルから放出される電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層と共に、ディスプレイパネルに入射する外光を吸収する外光遮蔽層を有する、ディスプレイ用前面フィルタであって、
上記電磁波遮蔽層は、透明基材と該透明基材上にパターン状に形成された導電性凸状パターン層からなり、該導電性凸状パターン層は、導電性粒子とバインダ樹脂とを含む導電性組成物層からなる導電パターン層と、該導電パターン層の表面に形成され端角部が突出し中央部が凹陥した金属層と、該金属層の表面に形成され金属針状体からなる黒化層とを有し、
上記外光遮蔽層は、光を吸収する遮光パターンと、該遮光パターンの少なくとも隙間に形成され光を透過する光透過部とを有する、
ディスプレイ用前面フィルタ。
(2)上記金属層が溝状凹部を有する、上記(1)のディスプレイ用前面フィルタ。
(3)ディスプレイパネルの前面に、上記(1)又は(2)のディスプレイ用前面フィルタが、その導電性凸状パターン層の黒化層を観察者側に向けて配置されている、画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁波遮蔽性と外光吸収性が両立し、高電磁波遮蔽性と共に、外光吸収機能によって、明室での画像の白化が防げ、画像の(明室での)コントラストが向上する。
また、導電性凸状パターン層が備える金属層が溝状凹部を有すると、外光反射をより効果的に防げ、外光吸収機能が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるディスプレイ用前面フィルタをその一形態で説明する断面図。
【図2】本発明によるディスプレイ用前面フィルタの別の一形態を例示する断面図。
【図3】本発明による画像表示装置の一形態を例示する断面図。
【図4A】導電性凸状パターン層を黒化層側から見た走査型電子顕微鏡写真(図4A〜図4Dの順に高倍率化)。
【図4B】導電性凸状パターン層を黒化層側から見た走査型電子顕微鏡写真。
【図4C】導電性凸状パターン層を黒化層側から見た走査型電子顕微鏡写真。
【図4D】導電性凸状パターン層を黒化層側から見た走査型電子顕微鏡写真。
【図5】透明基材と導電パターン層間にプライマ層を有する形態を例示する断面図。
【図6】本発明による画像表示装置の別の一形態を例示する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0011】
《要旨》
「面方向」とは、ディスプレイ用前面フィルタの表裏面に平行な方向であり、外光遮蔽層、透明基材などの層面に平行な方向でもある。
「主切断面」とは、外光遮蔽層の層面に立てた法線を含む断面である「縦断面」のうち、遮光パターン40aで言えば、遮光パターン40aの延在方向に直交する断面として定義される面が「主切断面」である。この「主切断面」に於ける形状が「主切断面形状」である。
【0012】
《要旨》
本発明のディスプレイ用前面フィルタを、図1に例示する一実施形態のディスプレイ用前面フィルタ100を参照して説明する。
本発明のディスプレイ用前面フィルタ100は、ディスプレイパネル200の画像を観察する観察者V側である前面に配置されて使用される。同図に例示のディスプレイ用前面フィルタ100は、ディスプレイパネル200の側から順に、電磁波遮蔽層30と外光遮蔽層40とを有する。
【0013】
電磁波遮蔽層30は、透明基材20と該透明基材20上にパターン状に形成された導電性凸状パターン層10からなる。該導電性凸状パターン層10は、透明基材20上にパターン状に形成され導電性粒子1aとバインダ樹脂1bとを含む導電性組成物層からなる導電パターン層1と、該導電パターン層1の表面に形成されその頂部の側端縁の端角部が突出し中央部が凹陥した金属層2と、該金属層2の表面に形成され金属針状体からなる黒化層3とから構成される。透明基材20と導電性凸状パターン層10からなる電磁波遮蔽層30は、導電性凸状パターン層10を観察者Vに向けて配置される。
外光遮蔽層40は、光を吸収する遮光パターン40aと、該遮光パターン40aの面方向に於ける少なくとも隙間に形成され光を透過する光透過部40bとを有する。外光遮蔽層40は、同図に例示する形態の様に、透明支持体50に積層されていても良い。透明支持体50に積層することで、機械的強度が増して取り扱いが容易となる。
遮光パターン40aは、同図では、紙面に垂直な方向に延在する直線状の光学要素である。したがって、遮光パターン40aを、フィルタ面に垂直な方向から見た場合には、遮光パターン40aがストライプ状を呈する。
【0014】
この様な構成とすることによって、観察者V側を向けて配置される、導電性凸状パターン層10の黒化層3の金属針状体によって、外光Laを吸収することができる。すなわち、ディスプレイ用前面フィルタ100に当たった外光Laは、先ず外光遮蔽層40で吸収される。外光遮蔽層40で遮蔽しきれずに通り抜けた外光Laのみが電磁波遮蔽層30まで達する。電磁波遮蔽層30まで到達した外光Laは、そこで導電性凸状パターン層10の表面の黒化層3に当たると、黒化層3の金属針状体で効果的に更に吸収される。
このため、電磁波遮蔽性と外光吸収性が両立し、高電磁波遮蔽性と共に、外光遮蔽層の外光吸収機能によって、明室での画像の白化が防げ、画像のコントラストが向上する。
【0015】
図2は、別の実施形態例を示し、同図のディスプレイ用前面フィルタ100では、観察者V側から見て、電磁波遮蔽層30と外光遮蔽層40との前後関係が図1とは逆となった一形態である。この形態では、外光は最初に電磁波遮蔽層30の黒化層3で吸収され、次に外光遮蔽層40で吸収されて、ディスプレイパネル200に到達するまで、二重に吸収される。この為、電磁波遮蔽性と外光吸収性が両立し、高電磁波遮蔽性と共に、外光遮蔽層の外光吸収機能によって、明室での画像の白化が防げ、画像のコントラストが向上する。
この様に、本発明のディスプレイ用前面フィルタ100は、電磁波遮蔽層30と外光遮蔽層40との位置関係は、特に限定はない。
【0016】
図3は、本発明による画像表示装置の一実施形態例を示す。同図の画像表示装置1000は、ディスプレイパネル200の前面に、本発明によるディスプレイ用前面フィルタ100を配置した構成である。ディスプレイパネル200は、例えば、プラズマディスプレイパネルである。
この様な構成の画像表示装置とすることによって、電磁波遮蔽性と外光吸収性が両立し、高電磁波遮蔽性と共に、外光吸収機能によって、明室での画像の白化が防げ、画像のコントラストが向上する。
【0017】
なお、図1、図2、図3では、層間には、空気層がある様に描いてあるが、空気層があっても良いが、空気層はなくして接着剤層(含む粘着剤層)などの透明な樹脂層を介して密着した方が、界面での光反射を減らせる点で好ましい。
【0018】
以下、更に本発明を、各層、各部材毎に詳述する。
【0019】
A.ディスプレイ用前面フィルタ:
ディスプレイ用前面フィルタの構成要素について説明する。
【0020】
《電磁波遮蔽層》
電磁波遮蔽層30は、透明基材20上に、特定の構成からなる導電性凸状パターン層10を有する(図1参照)。
【0021】
〔透明基材〕
透明基材20としては、透明であれば、特に制限はなく公知のものを適宜選択使用すれば良い。例えば、樹脂フィルム(乃至シート)、樹脂板、或いは無機材料板等が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)の樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、或いは、ポリカーボネート系樹脂等である。樹脂板の樹脂としては、例えば、前記の樹脂フィルムと同様の樹脂である。無機材料板の材料としては、例えば、硝子、石英、透明セラミックス等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはコスト、透明性、機械的強度等の点で好適な材料である。なお、透明基材の厚みは通常12〜5000μm程度である。
【0022】
〔導電性凸状パターン層〕
導電性凸状パターン層10は、電磁波遮蔽機能を有すると共に、表面の黒化層3が有する多数の放射状に突き出した金属針状体によって、外光吸収機能も有する。
このような導電性凸状パターン層10は、透明基材20上に形成された導電パターン層1と、該導電パターン層1の表面に形成された金属層2と、該金属層2の表面に形成され突出した金属針状体を有する黒化層3とを有する。
【0023】
[導電パターン層]
導電パターン層1は、導電性粒子1aとバインダ樹脂1bとを含む導電性組成物層として形成される。このような導電パターン層1は、透明基材20にパターン状に印刷法により形成することができる。
導電パターン層1を印刷形成する場合の印刷法には特に制限はない。例えば、(シルク)スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷などの有版印刷、或いはインクジェット印刷に代表される無版印刷等である。
これらの印刷法の中でも、前記特許文献1で開示された凹版印刷の一種である「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、高転移率、微細パターン再現性、及び透明基材との高密着性などの点で特に好ましい印刷方式の一種である。また、当該印刷法では、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立させることができる。「引抜プライマ方式凹版印刷法」で形成されるプライマ層については、後述する。
なお、導電パターン層1は、銅等の金属箔のエッチングによって形成することも可能であり、この構成でも金属針状体からなる黒化層3の特性は活かせる。また、この構成は金属層2は省略できる。また、この構成では、印刷法により導電性組成物層として形成される導電パターン層1と比較して、コスト的に不利であり高コストを許容し得る用途に限定される。
【0024】
(パターン形状)
導電パターン層1の(平面視の)パターン形状は、また結果として導電性凸状パターン層10のパターン形状は、公知の形状など任意であり、例えば、メッシュ形状(六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。導電パターン層1の非形成部に該当する開口部の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電パターン層1の形成部の線幅は、電磁波遮蔽性能とメッシュの不可視性の両立の観点から通常は5〜50μmである。更に、電磁波遮蔽性能と可視光透過性の両立の観点からは、線幅は好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。
また、導電パターン層1の開口率〔(導電パターン層1の開口部の合計面積/導電パターン層1の開口部及び導電パターン層1の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の観点から、50〜95%程度である。導電パターン層1の厚みは電磁波遮蔽性の点からは3μm以上、好ましくは10μm以上とする。又、通常最大100μm以下とする。これ以上の厚みでは、通常用途に於いては過剰性能となる上、パターン形成が困難となったり、導電パターン層1が外力を受けて破損し易くなったりする為である。
【0025】
(導電性組成物)
導電パターン層1は、導電性粒子1aと樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インク等とも呼ばれる)を用いて形成でき、該導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化プロセスによって固化させて導電性組成物層として得られる。なお、樹脂バインダは、上記導電性組成物から導電性粒子1aを除いた残りの成分であり、また溶剤等の揮発散逸成分を含み得る成分であり、この樹脂バインダ中に含まれる樹脂分がバインダ樹脂1bである。また、樹脂バインダには、安定剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤など、公知の各種添加剤を含み得る。なお、バインダ樹脂が硬化性樹脂でその硬化に硬化剤や重合開始剤等を使用する場合、これらの硬化剤はバインダ樹脂の一成分であると捉える。
【0026】
導電性粒子1aは、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド(粒子)等である。なお、これらの金属粒子としては、樹脂粒子や無機非金属物粒子等の表面を前記高導電性金属で被覆した金属被覆粒子を用いてもよい。なお、導電性粒子1aの粒子径は、平均粒子径で、0.01〜10μm、より低表面抵抗率とする点で好ましくは0.1〜3μmである。
【0027】
バインダ樹脂1bとしては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを単独使用又は併用する。熱硬化性樹脂は、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などである。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋反応などによって重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。なお、電離放射線としては、通常、紫外線、電子線などが使用される。また、該モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
また、熱可塑性樹脂は、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂等である。
【0028】
そして、樹脂バインダは、印刷適性を調整するために、例えば凹版の版面凹部への充填に適した流動性を得るために、上記の様なバインダ樹脂を有機溶剤に溶解したワニスとして使用することができる。該有機溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インクに用いられる溶剤の中から適宜選択使用すれば良い。
【0029】
[金属層]
金属層2は、導電性凸状パターン層10としての表面抵抗率を導電パターン層1のみによる場合よりも下げるために、導電パターン層1の表面にめっきによって形成される層である。めっき法としては、電解めっき、無電解めっきの何れも適用可能であるが、めっき速度が高く、且つ導電パターン層1上のみに選択的に形成可能である点で、電解めっき法が好ましい。
金属層2の金属としては、導電性が高く容易に電解めっき可能な金属(乃至その合金)であれば特に制限はなく、例えば、銅、銀、金、クロム、ニッケル、錫、などを用いることができる。なかでも、銅は材料費及び導電性に優れているので、好ましい金属の一種である。なお、金属層2の厚さは、用途、要求物性に応じたものとすればよく、例えば、0.1〜10μmである。
【0030】
電解めっきは公知の方法で行うことができる。電解めっき条件は、例えば、浴温度20〜60℃、電流密度0.001〜10A/dm2、めっき時間1〜10min程度である。電流密度を大きくすることによって、導電パターン層1頂部側端縁の端角部に電力集中が起こり電解めっきが付きやすくなり、導電パターン層1の表面に形成された金属層2は前記端角部が突出する一方、導電パターン5の頂部に於ける中央部が凹陥した表面形状となる。また、電流密度が大きい程、端角部と中央部とのめっき層成長速度に差が生じ、相対的に端角部の電流密度が高くなって、中央部が凹陥した表面形状となり易い。端角部と中央部との段差は、1〜3μm程度である。また、このような現象を生じさせるには、導電パターン1の断面形状が、半円形状や半楕円形状の様な角のない形状ではなく、図1に例示の様な、台形、長方形、或いは正方形とする方が、端角部の電流密度を相対的に大きくできる。
金属層2の端角部が突出した形状となることで、導電性凸状パターン層10の端角部が突出した形状となる。
なお、黒化層3を構成する金属針状体は、製造工程に於いて他の部材乃至は物品との接触により、潰れ、磨耗、或いは剥脱を生じ易いことが難点である。しかし、本発明の電磁波遮蔽層30においては、導電性凸状パターン層10の突出した端角部がスペーサとして機能することで、電磁波遮蔽層30を連続帯状シートとして製造時に、ロールやシートで重ね合わされた時に、或いは加工や搬送する際にガイドローラ等と接触した時に、導電性凸状パターン層10の表面の金属針状体を潰れ、剥脱、或いは磨耗から保護することができる。その結果、金属針状体による外光の減衰による反射防止効果を維持することができる。
【0031】
また、電流密度を大きくすると、金属層2の頂部に於ける表面に、溝状凹部U、特に、図4B〜図4Dの走査型電子顕微鏡写真で示す様に、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の溝状凹部Uが生成し易くなる。なお、図4B〜図4Dの写真は、正方格子状のメッシュパターンがそれと判る撮影倍率の最も小さい図4Aから、図4A〜図4Dの順に倍率が大きして撮影したうちの高倍率の方の3枚である。このような溝状凹部U(図4C参照)、特に、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の溝状凹部Uによって、光が溝状凹部Uの内部に進入すると複雑な経路で反射を多数回繰り返すことで減衰する。この為、溝状凹部Uによって、外光の反射を防止できる。
【0032】
なお、金属層2の端角部を突出させた形状とするには、金属層2を形成前の導電パターン層1の頂部側端縁の端角部自体を突出させた形状としておく方法もある。導電パターン層1を凹版印刷する際の凹版の形状を端角部が凹んだ形状としておけば良い。
【0033】
[黒化層とその金属針状体]
黒化層3は、金属層2の表面に黒化処理によって形成され、外光を減衰させる。黒化層3は、暗色を呈する層であり、暗色であれば良く、黒以外に低明度の色、例えばこげ茶色など有彩色でもよい。
黒化処理は、例えば、硫酸銅五水和物と硫酸を含む水溶液からなる電解浴を用いた陰極電解処理によって、粗面化処理を行うことで、金属層2の表面に、銅からなる金属針状体を有する黒化層3を形成することができる。粗面化処理は、陰極電解で金属の粒状突起物を析出させた後、その上に金属めっきして粒状突起物の脱落を防いだ後、金属皮膜を形成して金属の粗面を形成する。
このような粗面化処理を伴う黒化処理は、粒状突起物形成時の電流密度を大きくすることによって、針状結晶が生成され易いので好ましい。この針状結晶が、最終的に、金属針状体となる。金属針状体の長さは、0.1〜1μm程度である。図4C及び図4Dは、導電性凸状パターン層10の表面に形成されている黒化層3が有する金属針状体が表面に突出している様子を示す走査型電子顕微鏡写真である。
黒化層3が多数の金属針状体を表面に突出して有することよって、黒化層3に入射した光が金属針状体の面間で多重反射することで、吸収、散乱が多数回発生して、光を減衰させて、反射を防止できる。
そして、前記溝状凹部Uを形成した上で、更にその表面に、金属針状体を有する黒化層3を形成することで、溝状凹部Uによる効果と、金属針状体による効果との相乗効果によって、光反射防止効果がより高められる。
【0034】
〔プライマ層〕
図5の断面図で示す様に、引抜プライマ方式凹版印刷法では、透明基材20上の導電パターン層1が特有のプライマ層4を介して形成され、このプライマ層4に他の印刷法に見られない大きな特徴を有する。それは、同図の様に、プライマ層4と導電パターン層1との界面について、プライマ層4は、導電パターン層1の形成部での厚さが導電パターン層1の非形成部での厚さよりも厚い形状となることである。なお、同図では、プライマ層4に注目した図面であり、導電パターン層1上に形成されている金属層2及び黒化層3の図示は省略してある。
上記非形成部の厚さ、つまり光透過性を確保する為の開口部の厚さは、上記形成部の厚さの影響のない開口部の中央部での厚さで捉える。非形成部の厚さは1〜10μm程度であり、形成部の厚さは非形成部の厚さに較べて1〜10μm程度厚く形成される。
このようなプライマ層4としては、透明な樹脂層として形成できる。その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、導電パターン層1で列記したバインダ樹脂と同様の樹脂を使用できる。
【0035】
このように、電磁波遮蔽層30は、透明基材20と導電性凸状パターン層10との間にプライマ層4を有する形態が、高精細な導電性凸状パターン層10となる点で好ましいが、要求性能次第では、プライマ層4を省略した形態でも構わない。プライマ層4がない形態は、引抜プライマ方式凹版印刷法以外の印刷法、例えば、スクリーン印刷法などによって形成すれば良い。
【0036】
《外光遮蔽層》
外光遮蔽層40は、光を吸収する遮光パターン40aと、該遮光パターン40aの少なくとも隙間に形成され光を透過する光透過部40bとを有する。また、外光遮蔽層40は、透明支持体50と積層されていても良い。透明支持体50が積層される側は、任意であり、図1では電磁波遮蔽層30側であった。この逆に、透明支持体50は、観察者V側でも良く、この形態では、透明支持体50は保護層として機能させることができる(図6参照)。
【0037】
[遮光パターン]
遮光パターン40aは、外光を吸収する光学要素である。
【0038】
(平面視形状)
遮光パターン40aの平面視形状は、通常は、多数の直線が互いに平行に一方向に多数所定の間隔で配列したストライプ形状である。例えば、図1に例示の形態では、遮光パターン40aは、紙面に垂直な方向を延在方向としている。配列は通常所定の間隔を一定とする周期配列である。この場合、個々の直線が一つの単位光学要素となる。
遮光パターン40aの平面視形状は、ストライプ形状の様な一次元配列の他に、面方向に二次元配列したパターンでも良い。面方向に二次元配列したパターンとしては、例えば、正方格子、六方格子などのメッシュ形状であっても良い。メッシュ形状の場合は、平面視において、遮光パターン40aは面方向に連続した一つの光学要素となっている。面方向に二次元配列したパターンとしては、メッシュ形状の他に、平面視が円形、三角、多角形等を単位光学要素として、この単位光学要素が正方格子、六方格子等の格子点に互いに離れて配置されたパターンでも良い。
遮光パターン40aの平面視形状は、要求される外光遮蔽特性に応じて設計する。
【0039】
(主切断面形状)
遮光パターン40aの主切断面形状は、任意である。例えば、図1に例示の形態では、全周囲が直線からなる三角形状であり、楔形状でもあったが、その他の形状でも良い。例えば、斜辺が、面方向の法線に平行、つまりフィルタ面に垂直となる四角形状でも良い。また、断面形状が、台形形状、五角形形状、六角形形状等でも良い。或いは、三角形や台形等の両方又は片方の斜辺が、折れ線化又は曲線化した形状(遮光パターン40aの外側に向かって凸形状或いは凹形状)等でも良い。
また、遮光パターン40aの高さ(厚さ)と光透過部40bの厚さが同じで、遮光パターン40aと光透過部40bとが外光遮蔽層40の層面の両面で面一となるものでもよい。
遮光パターン40aの主切断面形状は、要求される外光遮蔽特性に応じて設計する。
遮光パターン40aの形状とその向きは、図1では二等辺三角形形状の楔形状であり、楔形状の先端の向きは、電磁波遮蔽層30側であり且つディスプレイパネル200側であるが、この逆に観察者V側にしても良い。
遮光パターン40aの主切断面形状の寸法は、一例を示せば、厚み(高さ)は50〜200μm程度、幅は10〜50μm程度、配列時の隙間が50〜100μm程度である。
【0040】
(材料)
遮光パターン40aは、光吸収性の暗色材料で形成することができる。暗色材料としては有機材料、無機材料、いずれでも良い。有機材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の暗色樹脂組成物を用いることができる。
該光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、これら暗色色材でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。光吸収性色材の含有量は、樹脂分固形分全量に対して例えば5〜100質量%である。
樹脂バインダの樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0041】
[光透過部]
光透過部40bは、画像光を透過させる光学要素である。
光透過部40bは、厚み方向では厚みが、遮光パターン40aの厚み以上で、面方向では遮光パターン40a同士の間を埋めて遮光パターン40aを少なくとも側面から支持して機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光学要素である。光透過部40bは透明な樹脂層として形成することができる。図1では、光透過部40bは遮光パターン40aを(両側)側面と、三角形の遮光パターン40aの頂点側の3方向から支持している例である。なお、光透過部40bの厚みは、例えば100〜300μm程度である。
また、遮光パタ−ン40aの厚みと光透過部40bとの厚み比は、
(遮光パタ−ン40aの厚み)/(光透過部40bとの厚み)=0.85〜1
とすることが出来る。
【0042】
(材料)
光透過部40bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0043】
[外光遮蔽層の形成法]
外光遮蔽層40の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂に電離放射線照射して重合させて形成する、いわゆるフォトポリマー法(別名2P法)で形成する。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用すれば、透明支持体50を連続シートで供給しながら連続的に成形できる点で、生産性に優れる成形方法である。
例えば、先ず最初に、2P法で透明支持体50上に、遮光パターン40aとは逆凹凸形状の凹部を表面に有する層として、成形型と電離放射線硬化性樹脂への紫外線など電離放射線照射による硬化によって光透過部40bを形成する。次に、前記凹部の内部のみに、暗色材料の暗色インクをワイピング法で充填し固化させて遮光パターン40aを形成して、外光遮蔽層40とする。
【0044】
《透明支持体》
透明支持体50としては、前記電磁波遮蔽層30で述べた透明基材20で列記した材料を用いることができる。透明支持体50の厚みも、透明基材20と同様である。透明支持体50には、透明基材20と同じ材料を用いても良く、異なる材料を用いても良い。
【0045】
《その他の層》
なお、本発明によるディスプレイ用前面フィルタは、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した以外のその他の層を含んでもよい。例えば、各種光学フィルタ機能を付与する光学フィルタ層、光学フィルタ機能以外の機能を付与する機能層などである。これらの層には公知の層を適宜採用することができる。
なお、光学フィルタ層としては、紫外線吸収層、PDPのネオン光を吸収するネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などである。また、光学フィルタ機能以外の機能を付与する機能層としては、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着剤層、該粘着剤層を使用時まで保護する離型フイルム、接着剤層、プライマ層、耐衝撃層などである。なお、これらの層は単層で2以上の機能を兼用することもある。
【0046】
B.画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図3に例示する様に、上記の様なディスプレイ用前面フィルタ100と、ディスプレイパネル200とを備える画像表示装置1000である。本画像表示装置1000は、該ディスプレイ用前面フィルタ100及び該ディスプレイパネル200以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
ディスプレイパネル200は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。ディスプレイパネル200としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路とディスプレイパネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、ディスプレイパネル200は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0047】
本ディスプレイ用前面フィルタ100のディスプレイパネル200に対する配置は、図3の様に、ディスプレイパネル200の画像を観察する観察者V側の前面に配置するとき、電磁波遮蔽層30を構成する導電性凸状パターン層10と透明基材20とについて、透明基材20をディスプレイパネル200側に向けて配置する。言い換えると、透明基材20よりも導電性凸状パターン層10を観察者V側に向けて配置する。
図1では、ディスプレイ用前面フィルタ100とディスプレイパネル200との間に空気層がある様に描いてあるが、粘着剤層など樹脂層で密着積層すると、空気層界面での反射による光損失を減らせる点で好ましい。
【0048】
この様な構成の画像表示装置とすることによって、ディスプレイ用前面フィルタ100の効果が得られる。その結果、電磁波遮蔽性と外光吸収性が両立し、高電磁波遮蔽性と共に、外光吸収機能によって、明室での画像の白化が防げ、画像の(明室での)コントラストが向上する。
【0049】
なお、画像表示装置1000は、図示はしないが、更にその他の光学部材を備えていても良い。その他の光学部材は、例えば前記したその他の層として述べた機能層を有する光学部材等である。例えば、赤外線吸収フィルタ、色補正フィルタ等である。その他の光学部材を配置する位置は任意である。
【0050】
C.用途:
本発明によるディスプレイ用前面フィルタ100は、PDP、LCDなどの各種ディスプレイパネルの観察者側の前面側に配置する用途が好適である。なかでも、PDPは好適な用途である。また、このディスプレイ用前面フィルタ100を備える画像表示装置1000は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例及び比較例によって更に詳述する。
【0052】
《実施例1》
〔電磁波遮蔽層の作製〕
電磁波遮蔽層30は、導電パターン層1の印刷に引抜プライマ方式凹版印刷法を利用して、次の様にして作製した。
【0053】
[導電パターン層]
透明基材20として、厚み100μmの帯状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをロール(巻取)から巻き出し、該フィルムの一方の面に、紫外線硬化性樹脂組成物を固化時厚みが10μmとなる様にグラビアリバースロールコートにより塗工した。紫外線硬化性樹脂組成物は、エポキシアクリレート系プレポリマー、ウレタンアクリレート系プレポリマー、フェノキシエチルアクリレート、及びエチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、光重合開始剤としてイルガキュア(登録商標)184(チバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を含むものを使用した。プライマ層は塗布後、硬化前の状態において流動性を示すが透明基材20から流れ落ちはしない。
次に、導電パターン層1形成用として、導電性粒子として平均粒子径2μmの銀粒子を熱可塑性ポリエステルウレタン樹脂及び溶剤を含む樹脂バインダ中に分散させた導電性組成物からなる銀ペーストを用意した。この銀ペーストを、引抜プライマ方式凹版印刷法によって、透明基材20上の前記プライマ層を介して印刷して、導電パターン層1を形成した。また、プライマ層の硬化は、透明基材20が円筒状の凹版版面上にあるうちに紫外線を照射して行った。形成された導電パターン層1は、正方格子のメッシュパターンで、線幅20μm、格子周期300μm、層厚み19μmであり、線の断面形状は略台形形状で頂部両側端縁の端角部が1μm突出したものであった。また、硬化したプライマ層4は、導電パターン層1の形成部で厚みが厚く、導電パターン層1の非形成部で厚みが薄かった。
【0054】
[金属層]
次に、導電パターン層1の表面に、銅からなる金属層2を電解めっきして形成した。電解めっき液は、水溶液(3000L)として、硫酸銅五水和物(75g/L)、硫酸(180g/L)、塩酸(60mg/L)、配向調整成分として炭化水素系高分子系めっき添加剤(40mL/L)を含む液を用いた。めっき条件は、浴量(500mL)、攪拌(エアー攪拌)、浴温(25℃)、電流密度(2A/dm2)、めっき時間(5min)の条件である。電解めっき後、120℃で60min間加熱しアニール処理を行った。金属層2の厚みは2μmである。
【0055】
電解めっきでは、被めっき物とアノード電極とが近い部分にめっきが付き易く、角部に電流密度の集中が生じてめっきが厚く付き易い。ここで、被めっき物である導電パターン層1は、断面形状が台形形状で、しかも該台形形状は頂部両側端縁の端角部が尖り、その端角部が頂部の中央部よりも突出している形状となっている。このため、導電パターン層1の表面に形成された金属層2の表面が成す断面形状は、端角部が頂部の中央部よりも平均3μm突出し該中央部が端角部に対して陥没した形状となった。
【0056】
[黒化層]
次に、金属層2の表面に、次の条件で黒化処理を施し黒化層3を形成して、透明基材20上に導電性凸状パターン層10を有する電磁波遮蔽層30を作製した。得られた帯状の電磁波遮蔽層30をロール状に巻き取った。
【0057】
(1層目)
硫酸銅五水和物 70g/L
硫酸 100g/L
液温 40℃
電流密度 40A/dm2
電解時間 5s
陽極 白金
(2層目)
硫酸銅五水和物 250g/L
硫酸 100g/L
液温 45℃
電流密度 20A/dm2
電解時間 30s
陽極 白金
【0058】
黒化層3は、導電性凸状パターン層10としての頂部両側端縁の端角部が突出し頂部の中央部が凹陥した表面形状であった。また、黒化層3の表面には、図4B〜図4Dの走査型電子顕微鏡写真の如く、分岐しかつ蛇行する渓谷状の溝状凹部Uを多数観察された。また、黒化層3の表面には、図4B〜図4Dの走査型電子顕微鏡写真の如く、多数の金属針状体が観察された。
また、該電磁波遮蔽層30の製造工程で、黒化層3を形成後の導電性凸状パターン層10表面は帯状の電磁波遮蔽層30を搬送する際に複数のガイドローラと接触した。しかし、導電性凸状パターン層30には目視により判別し得るような黒化度の低下、ムラ、傷等の外観変化は見られなかった。
【0059】
〔コントラスト向上層の作製〕
先ず、透明支持体50として、片面に易接着処理済みで厚さ188μmの連続帯状の透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用意した。
この透明支持体50の易接着処理面に、光透過部40bを形成する為に、以下の光透過部形成用樹脂組成物を、固化時厚み90μmで塗工した。
【0060】
<光透過部形成用樹脂組成物>
エポキシアクリレートプレポリマー 40質量部
ウレタンアクリレートプレポリマー 10質量部
フェノキシエチルアクリレート 45質量部
エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート 10質量部
シリコーン系離型剤 1質量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 3質量部
(イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
【0061】
次に、回転している円筒状金属製の成形型と、上記塗工済みの透明支持体50との間に、塗布した樹脂組成物を挟んだ状態で高圧水銀灯によって紫外線照射して、樹脂組成物を架橋硬化させた後、成型型から離型して、透明支持体50上に光透過部40bが形成された、積層シートを得た。
上記成形型の型面には、円周方向に延在する直線状の凸条が、該円周方向とは直交する回転軸方向に多数配列されている。凸条の延在方向に直交する主切断面の形状は、後述の遮光パターン40aの主切断面形状と逆凹凸形状となっている。
この結果、上記積層シートに於ける光透過部40bには、その表面に断面形状が遮光パターン40aとは逆凹凸形状の台形の凹状溝が多数形成されている。
【0062】
次に、遮光パターン40aを形成するための下記の液状の遮光パターン形成用暗色樹脂組成物を、光透過部40bの凹条溝を有する表面に塗工した。
<遮光パターン形成用暗色樹脂組成物>
ウレタンアクリレート系プレポリマー 100質量部
カーボンブラック含有黒色球状樹脂粒子(平均粒径3.8μm) 20質量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 2質量部
(イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
【0063】
次いで塗工された塗膜をドクターブレードで掻き取り、凹条溝以外の部分の暗色樹脂組成物のみを除去し、凹条溝内のみに暗色樹脂組成物を充填した。この後、高圧水銀灯によって紫外線照射して暗色樹脂組成物を架橋硬化させて遮光パターン40aを形成し、透明支持体50上にコントラスト向上層40を作製した。
得られたコントラスト向上層40の遮光パターン40aの出切断面形状は、台形形状で、高さ85μm、大きい方の底辺である下底が10μm、小さい方の底辺である上底が4μmである。下底が光透過部40bの表面側に、また上底が透明支持体50側となる。
【0064】
〔透明粘着剤層の作製〕
アクリル系粘着剤(感圧性粘着剤「オリバイン(登録商標)」BPS6271:商品名、固形分27%、東洋インキ製造株式会社製)および硬化剤(BXX5627:商品名、東洋インキ製造株式会社製)に対して、酸化防止剤としてベンゾトリアゾール系の金属不活性化剤(IRGAMET(登録商標)39、BASFジャパン株式会社製)を0.5質量%添加した粘着剤層形成用組成物を作製した。
この組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、加熱乾燥後、この塗膜上に38μmの別の離型フィルムをラミネートし、2枚の離型フィルム間に透明粘着剤層60を有する透明粘着フィルムを作製した。
【0065】
〔着色粘着剤層の作製〕
アクリル系粘着剤(感圧性粘着剤「オリバイン(登録商標)」BPS6271:商品名、固形分27%、東洋インキ製造株式会社製)および硬化剤(BXX5627:商品名、東洋インキ製造株式会社製)に対して、近赤外線吸収色素として、フタロシアニン系化合物(IR12:商品名、株式会社日本触媒製)0.05質量%、フタロシアニン系化合物(IR14:商品名、株式会社日本触媒製)0.02質量%、及びジインモニウム系化合物(IRG−068:商品名、株式会社日本触媒製)0.03質量%を配合した。更に、ネオン光吸収色素(TAP2:商品名、山田化学工業株式会社製)を0.01質量%配合した。更に、調色色素として、KAYASET(日本化薬株式会社製)を0.05質量%配合し、着色粘着剤形成用組成物を作製した。
この組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、加熱乾燥後、この塗膜上に38μmの別の離型フィルムをラミネートし、2枚の離型フィルム間に着色粘着剤層70を有する着色粘着フィルムを作製した。
【0066】
〔ディスプレイ用前面フィルタの作製〕
上記で得られた、透明支持体50上に積層されたコントラスト向上層40の面と、電磁波遮蔽層30の導電性凸状パターン層10側の面とを、透明粘着フィルムとして用意した透明粘着剤層60を間に挟んで、ラミネートして、コントラスト向上層40と電磁波遮蔽層30との積層シートを得た。
次に、この積層シートの電磁波遮蔽層30側の面である透明基材20の面に、上記着色粘着フィルムから片方の離型フィルムを剥がして着色粘着剤70の面でラミネートした。
得られたディスプレイ用前面フィルタ100は、図6に示す如くのディスプレイパネル貼付け用の着色粘着剤層付きのフィルタである。
【0067】
《比較例1》
実施例1において、導電性凸状パターン層10として表面に黒化層を施さない電磁波遮蔽層30のみで外光遮蔽層40は省略し、外光遮蔽層40の代わりに透明支持体50を電磁波遮蔽層30にラミネートした他は、実施例1と同様にして、〔離型フィルム/着色粘着剤層70/電磁波遮蔽層30/透明粘着剤層60/透明支持体50〕の層構成のディスプレイ用前面フィルタを得た。
【0068】
《性能評価》
以下の様にして、電磁波遮蔽性能と、コントラスト向上性能を評価した。
先ず、PDPを用いたテレビジョン受像機(商品名Wooo(登録商標)、株式会社日立製作所製)から既存の前面フィルタを取り外し、PDPの前面ガラス板の表面に、ディスプレイ用前面フィルタ100を、その着色粘着剤層70を介し貼着した(図6参照)。ディスプレイ用前面フィルタ100は、電磁波遮蔽層30よりもコントラスト向上層40が観察者V側となる向きであり、電磁波遮蔽層30にあっては、透明基材20よりも導電性凸状パターン層10が観察者V側となる向きである。
そして、周縁部に露出した電磁波遮蔽層30の導電性凸状パターン層10に接地加工を施して、評価用テレビジョン受像機とした。
【0069】
〔電磁波遮蔽性能〕
電磁波遮蔽性能は、評価用テレビジョン受像機を電磁波シールド材評価装置(株式会社アドバンテスト製、TR17301A)を用いて電磁波遮蔽性能を測定した。減衰量の測定結果が、200〜600MHzの範囲で−30デシベル程度以上の遮蔽性能を有するものを「良好」として評価し、−30デシベル程度未満の遮蔽性能を有するものを「不良」として評価した。
【0070】
〔コントラスト向上性能〕
コントラスト向上性能は、外光が存在する明室環境下での明室コントラストを測定し評価した。評価は、ディスプレイパネルの画面を鉛直面とした評価用テレビジョン受像機の上方45度の方向で距離1.5mの天井面に、外光光源として出力40Wの白色蛍光灯1本を設置し、画面を照明した。この外光照明条件下で、白画像と黒画像とを交互に配列した縞模様からなる画像を表示した。そして、画面から50cm離れた距離で、視認角度0〜80度の範囲で、目視で観察し、画像コントラスト(白色画像部と黒画像部との濃度比)を比較評価した。
【0071】
〔評価結果〕
評価結果は、電磁波遮蔽性能は、実施例1及び比較例1ともに良好であった。
コントラスト向上性能は、実施例1の方が、比較例1よりも、コントラストが高かった。実施例1は電磁波遮蔽性を維持しつつ、外光吸収効果によりコントラストが向上した。
【符号の説明】
【0072】
1 導電パターン層
1a 導電性粒子
1b バインダ樹脂
2 金属層
3 黒化層
4 プライマ層
10 導電性凸状パターン層
20 透明基材
30 電磁波遮蔽層
40 外光遮蔽層
40a 遮光パターン
40b 光透過部
50 透明支持体
60 透明粘着剤層
70 着色粘着剤層
100 ディスプレイ用前面フィルタ
200 ディスプレイパネル
1000 画像表示装置
V 観察者
U 溝状凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネルから放出される電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層と共に、ディスプレイパネルに入射する外光を吸収する外光遮蔽層を有する、ディスプレイ用前面フィルタであって、
上記電磁波遮蔽層は、透明基材と該透明基材上にパターン状に形成された導電性凸状パターン層からなり、該導電性凸状パターン層は、導電性粒子とバインダ樹脂とを含む導電性組成物層からなる導電パターン層と、該導電パターン層の表面に形成され端角部が突出し中央部が凹陥した金属層と、該金属層の表面に形成され金属針状体からなる黒化層とを有し、
上記外光遮蔽層は、光を吸収する遮光パターンと、該遮光パターンの少なくとも隙間に形成され光を透過する光透過部とを有する、
ディスプレイ用前面フィルタ。
【請求項2】
上記金属層が溝状凹部を有する、請求項1記載のディスプレイ用前面フィルタ。
【請求項3】
ディスプレイパネルの前面に、請求項1又は2記載のディスプレイ用前面フィルタが、その導電性凸状パターン層の黒化層を観察者側に向けて配置されている、画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2012−204445(P2012−204445A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65518(P2011−65518)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】