説明

ディスペンサ装置

複数の錠剤に属する錠剤を個別に取り出すためのディスペンサ装置が提案される。ケース(100)内に、前記ケースに対して取出位置と搬送位置との間を往復可能な搬送部材(200)が設けられる。このディスペンサ装置は、前記ケースに対して前記搬送部材が取出位置から搬送位置に移動したとき、前記複数の錠剤を固定されたままにし、前記搬送部材が取出位置に戻るときに前記複数の錠剤を前記取出口に向けて連動させる保持手段、特にリフト部材(300)を有する。このようにして、搬送部材が前後方向に移動した都度、複数の錠剤が搬送方向に所定量、特に一つの錠剤の厚み分搬送され、一つの錠剤が容易に取出可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略平坦な錠剤用のディスペンサ装置に関する。加えて、本発明は、錠剤用のディスペンサ装置から錠剤を取り出すための方法に関する。この装置は、複数の錠剤を収納し、これらの錠剤を別々に取り出す、すなわち一つずつ、又は所定の数ずつ取り出すのに適する。問題となる錠剤は、例えば錠剤状の医薬製剤であっても良いが、その他の健康増進製剤、例えばビタミン錠剤ないしフードサプリメント、錠剤状の菓子ないしチューインガム、洗濯機ないし食器洗い機等の洗剤錠剤であっても良い。特定の種類の錠剤に限定されないものの、本発明は湿気及び/又は機械的損傷から保護されなくてはならない錠剤に特に適切である。機械的損傷から確実に保護する必要がある錠剤は、とりわけ錠剤状で入手可能であり、治療目的で服用される必要がある薬剤である。錠剤として処方されるビタミン剤、ないし鉄ないし鉄化合物を含有する薬剤は、適切に湿気から保護されなくてはならない。この種のディスペンサ装置は、以下、略して錠剤ディスペンサないし錠剤ディストリビュータとも記載される。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、複数の錠剤から一つだけをユーザに対して取り出すための様々な可能な方法が公知である。
小さな標準チューブ用のディスペンサインサートないしキャップが、国際公開第03/086901(特許文献1)ないし国際公開第2005/112672号(特許文献2)から公知である。この種のインサートないしキャップは、実際に錠剤を容易に分離できるものの、錠剤が重力によりディスペンサインサート内部に入り込むようにするため、この小さなチューブが逆さに配される必要がある。これは満足のいくものではない。
【0003】
この問題は、中空ケース中に、ばねを装着したリフト部材を設けて複数の錠剤をケースの上部開口端に向けて押圧することで解決可能である。この場合、上部端には、一回に一つの錠剤を取り出すのを可能とする取出機構が設けられる。この種の解決例は米国特許第5071033号明細書(特許文献3)、米国特許第5366112号明細書(特許文献4)ないし米国特許出願公開第2003/0132239号明細書(特許文献5)に示される。しかしながら、このようなディスペンサの問題点は、非常に広い範囲(実質的に複数の錠剤の全高)にわたって弾性を保つばねが必要となることである。この結果、錠剤は最初に非常に大きなばね力にさらされ、その後非常に大きな機械的負荷が加えられることになる。すなわち、特に一つの錠剤が取り出された後、その下に配された錠剤が最終的に比較的大きな力で上部開口端に向けて付勢された場合に、錠剤が損傷しやすい。また大きなばね圧により、最上部の錠剤が取り出しにくくなる。
【0004】
米国特許第6230931号明細書(特許文献6)には、複数の錠剤が中空ケース中に収納されたリフト部材上に配されるディスペンサが開示される。このリフト部材は、ケースに対し、ラチェット接続部を介して取り出し口に向けて変位可能とされる。この例では、このラチェット接続部によりリフト部材が前進方向と逆に押し戻されるのが防止される。このリフト部材用の駆動ボタンは、ケースの長手方向スリットを介して外部に連通し、ユーザによるリフト部材(及びこれとともに複数の錠剤)のケース内前進方向の押圧動作を可能とする。この設計について特に問題があるのは、ケースにスリットがなくてはならず、結果として空気ないし湿気に対して密封できないことである。錠剤がオープンにアクセスできることから、錠剤は容易に汚れやすい。上記ディスペンサは、例えば湿気に対して過敏な、発泡性の錠剤などに不適切である。
【0005】
米国特許第7204391号明細書(特許文献7)には、錠剤が、外チューブによって囲まれた第一内チューブに錠剤の周縁に沿って一列に配されることが提案されている。これらのチューブは、共通の長手軸を中心としてお互いに逆に回転することができる。内チューブ内に収納されるのは、一方で内チューブの長手軸にそって内チューブ内を直線的に案内され、他方で内チューブの長手方向スリットに沿って外チューブの螺旋状のガイドトラックを案内されるリフト部材である。この内チューブを外チューブに対してひねった場合、このリフト部材は外チューブの螺旋トラックに追従して、内チューブに対して内チューブ内の取り出し口に向けて変位する。このリフト部材は、このようにして内チューブ中に配された錠剤を前方に押し出す。錠剤がその周縁にそって一列に配されることから、少数の錠剤のみを収納可能とするか、あるいはチューブを不釣り合いに長くする必要がある。このデザインでの別の問題点は、片手で容易に操作できないということである。内チューブを外チューブに対して十分に簡単なアクションで回動可能とするためには、二つのチューブ間に隙間がなくてはならない。この場合、空気と湿気がこの隙間を介して内部に侵入し、不都合である。このような解決において隙間がない場合には、対応する大きな力が操作するのに加えられる必要があることから、ディスペンサ装置を操作するのが非常に困難となる。不用意に回転すれば、錠剤がリフト部材によって固定されない可能性がある。この場合、移動によって錠剤が機械的に損傷を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/086901号
【特許文献2】国際公開第2005/112672号
【特許文献3】米国特許第5071033号明細書
【特許文献4】米国特許第5366112号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0132239号明細書
【特許文献6】米国特許第6230931号明細書
【特許文献7】米国特許第7204391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた特性を有する錠剤を取り出すためのディスペンサ装置を示し、またディスペンサ装置から錠剤を取り出すための方法を示すことである。本発明の目的は、錠剤を個別に取り出すためのディスペンサ装置であって、任意の所望の向きでの最も単純な操作が可能で、防湿性をもって密閉可能に形成され、かつ費用効率が高く製造可能なディスペンサ装置を示すことである。
【0008】
この目的は、特に請求項1の特徴を有する装置によって達成される。有利な改良点が従属項に示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、提案されるのは、複数の錠剤を収納し、この複数の錠剤に属する錠剤を個別に取り出すためのディスペンサ装置である。このディスペンサ装置は、複数の錠剤を収納するケースを有する。この装置は、一つの錠剤、又は所定の数の錠剤、例えば二つないし三つの錠剤を一回に取出可能な取出口をも有する。この取出口は、ケースのみにより規定される必要はなく、ディスペンサ装置に属する別の部材によって規定されても良い。ケースは、蓋、特に折りたたみ蓋を有しても良い。このディスペンサ装置は複数の錠剤を搬送方向に沿って取出口に搬送する搬送部材を有する。この搬送部材は、ケースに対して取出位置(通常位置/延伸位置)と搬送位置(駆動/押込位置)との間を往復可能である。このディスペンサ装置は、以下のように構成される保持手段を有する。取出位置から搬送位置に搬送部材が移動する際、保持手段は複数の錠剤を、ケースに対して、この搬送部材が複数の錠剤に対して搬送方向と逆方向に変位するように保持する。他方、搬送位置から取出位置に搬送部材の反対方向への移動が行われると、保持手段は、複数の錠剤が搬送部材によって搬送方向に連動するように複数の錠剤を保持する。したがって、ケースとの相互作用において搬送部材と保持手段が行うのは、搬送部材の前進後退が行われる都度、複数の錠剤が搬送方向に所定量搬送されることである。この所定量は、特に一つの又は所定の数の錠剤の厚みであっても良い。
【0010】
この種のディスペンサ装置によって非常に単純な操作が可能となる。錠剤が取出口から取り出された後に新たな錠剤ないし所定の数の新たな錠剤を取出口に動かすのに必要なのは、ケースに対して搬送部材を取出位置から搬送位置に戻すことだけである。一般に、搬送部材の搬送位置への移動は、ユーザにより手動で行われる。逆方向への移動は、以下に詳細に記載される弾性部材によって行われるのが好ましいが、手動で行われても良い。この機能はディスペンサ装置の向きとは無関係である。搬送部材は、完全にケース内部に配されても良く、これにより何ら問題なくディスペンサ装置が防湿性を有する形で密閉可能に形成可能となる。装置の全体は射出成形法により費用効率の高い形で製造可能である。
【0011】
一つの実施形態では、複数の錠剤は、ケース及び/又は搬送部材に対して、搬送方向とは逆方向に不連続なステージで移動しないようにされる。各ステージ内で、複数の錠剤は、問題となる部材に対して往復移動可能である。しかしながら、次のステージに到達した時点で、ケース、又は搬送部材に対する複数の錠剤の逆方向移動はこのステージを超えては不可能である。このような状況下で、ステージ間の距離は、特に一つの又は所定の数の錠剤の厚みに対応しても良い。しかしながら、この距離は、例えば0.5から2ミリという、錠剤の通常の厚みの分数のみに対応しても良く、これにより装置に異なる厚みの錠剤を充填可能となる。特に、装置によって、ステージ間距離の整数倍に対応する厚みを有する錠剤を投与することが可能である。
【0012】
ディスペンサ装置が防湿性をもって密閉可能に形成される、または防湿性をもつように密閉できるようにするためには、一般に部品が互いに接続時に隙間なく接続され又は接続可能であることで十分である。したがって、例えば、ケースの一部であるディスペンサ装置の外チューブが蓋によって一端部(上端部)で密閉される場合、チューブと蓋との間には隙間ないしギャップが残らない。蓋は、このように上端部を特に確実に閉塞可能なように、外チューブの一端部、すなわち“上”端部に形状によって係止されるように接続されるのが好ましい。特に、確実に防湿性をもって密閉するためには、蓋と外チューブとが圧入されても良い。他端部、すなわち外チューブの“下”端部も、ベースによって防湿性をもって密閉される。このようにして、湿気がディスペンサ装置内部に入り込みうる流路、ギャップなどはなくなる。
【0013】
ケースのベースは、隙間なく外チューブの他端(下)端部を密閉する別部材であっても良い。外チューブの下端部とベースとを防湿性をもって連結するため、ベースを外チューブに圧入する。ベースと外チューブの下端部とを一体に連結することにより、より確実に、例えば湿っぽい空気などの湿気がディスペンサ装置内部に入り込まなくなる。
好ましい実施形態では、保持手段は複数の錠剤がその基端部(すなわち、取出口の反対端の“下”端部)で静置されるリフト部材を有する。リフト部材は、その後ケースに対して搬送方向に沿って例えば上述のように不連続なステージで移動可能で、かつ少なくとも段階的に搬送方向と逆方向に移動が規制されるようにケースと相互作用する。リフト部材も、ケースに対し、搬送方向と逆方向に搬送部材の移動を許容しつつ、搬送部材が搬送方向に移動した時にその移動に連動するような形でケースと相互作用する。すなわち、リフト部材は、搬送部材に対し搬送方向に、例えば同様に段階的に移動可能であるのに対し、少なくとも段階的に、搬送部材に対して搬送方向と逆方向に移動が規制される。このようにして、搬送部材が前後方向に移動した都度、複数の錠剤は搬送方向に所定量ずつ搬送される。
【0014】
この機能は、リフト部材がケースに対してリフト部材の搬送方向への移動を許容し、段階的な搬送方向と逆方向への移動を規制するラチェット接続部を介してケースと相互作用することにより達成可能である。この目的で、ケースの内面上に、搬送方向に沿って縦に並べられ、リフト部材の少なくとも一つの第一ラッチング領域と相互作用してケースに対して搬送方向へのリフト部材の移動を許容しつつ搬送方向と逆方向の少なくとも段階的な移動を防止する例えばブロックスケール(保持歯)ないしブロックカムとしての複数のブロック部材が形成されても良い。リフト部材のラッチング領域を弾性的にブロック部材に対して押圧するため、リフト部材は、搬送方向の横方向に変形力に対して弾性変形可能であり、かつリフト部材のラッチング領域は変形力によってブロック部材に対して押圧される。この目的で、リフト部材は搬送方向に略沿って延びる一つ以上のスリットを有しても良い。あるいは、リフト部材が全体として変形可能となる必要がないように、第一ラッチング領域を弾性ばね凸部として構成することも可能である。保持力をより良く分散させるため、リフト部材上に、搬送方向に沿って縦に配された複数の第一ラッチング領域を設けても良い。
【0015】
これらの状況下では、ブロック部材間の距離によって、ケースに対するリフト部材の搬送方向と逆方向の段階的な移動が防止されるステージの大きさが決定される。上述されたように、この距離は一つ又は複数の錠剤の厚みに対応しても良く、あるいは、一般の錠剤の厚みの分数のみに対応しても良い。この場合、リフト部材のラッチング領域とブロック部材との相互作用は、ケーブルバインダと同様に構成されても良い。
【0016】
リフト部材の第一ラッチング領域は、搬送方向に略沿って延びる一つ以上のスリット(搬送部材にある)を挿通しても良い。このリフト部材の第一ラッチング領域は、一つ又は複数のスリットを通って延び、ケース上のブロックスケールと相互作用する。このようにして、搬送部材はケース及びリフト部材に対して搬送方向の横方向に位置が固定可能となる。
【0017】
このリフト部材の構成は、搬送部材が実質的にチューブ状の構造であるときに特に有利である。この場合、搬送部材は、正反対の方向に配された二つのスリットを有するのが好ましい。この場合、リフト部材は搬送方向に沿って搬送部材に案内され、正反対に対とされ径方向に二つのスリットを通って延びるラッチングカムとしての二つ以上のラッチング領域を有するのが好ましい。この場合、このリフト部材は、プラグ状の構造であり、すなわち複数の錠剤が挿通される被覆壁を有するのが好ましく、かつラッチングカムが径方向に突出する円筒状ないし円錐台状の側壁部を有するのが好ましい。このリフト部材は、取出口に向けて僅かにテーパ状とされ、このようにして特に確実に搬送部材に対して所望の方向にトラブルなく移動するようにされるのが好ましい。
【0018】
リフト部材も、ケースに対し、搬送方向と逆方向にリフト部材に対する搬送部材の移動を許容しつつ、搬送部材がケースに対して搬送方向に移動した時にリフト部材の搬送方向の移動に連動するようにする第二ラチェット接続部を介して搬送部材と相互作用する。すなわち、第二ラチェット接続部はリフト部材を搬送部材に対して搬送方向に可動としつつ、反対方向に段階的に移動するのを規制する。この目的で、搬送部材は、リフト部材に対する搬送部材の搬送方向の逆方向への移動を許容し、かつ搬送方向への移動を規制するようリフト部材の少なくとも一つの第二ラッチング領域と相互作用する、例えばブロックスケールないしブロックカムとしての複数のブロック部材を有する。この状況下で、リフト部材が搬送方向の横方向に変形力に対して弾性変形可能であり、第二ラッチング領域が変形力によって搬送部材上のブロック部材に対して弾性的に押圧されれば有利である。この目的で、スリットがリフト部材上に設けられるか、あるいは上述の第一ラッチング領域の変形を許容するスリットが第二ラッチング領域の変形を許容しても良い。ケース上のブロック部材間の距離に関して上述されたことは、搬送部材上のブロック部材間の距離に対応してあてはまる。この場合においても、搬送方向に縦に並べられた複数の第二ラッチング領域が設けられても良い。
【0019】
特に、リフト部材がプラグ状でチューブ状の搬送部材中を案内される場合、第二ラッチング領域は、リフト部材の(取出口から離れる方向を向く)基端によって形成されても良く、ブロック部材は搬送部材の内部に形成されても良い。
【0020】
別の構成において、リフト部材は、ケースに対して、その形状によりリフト部材が搬送部材によって搬送方向に連動するのを許容しつつ、ケースに対するリフト部材の搬送方向の段階的な逆方向への移動を規制する制御カム内を案内されても良い。この目的で、制御カムは搬送方向に対して浅い角度で延びる第一部分と搬送方向に対して略横方向に延びる第二部分とを有する鋸歯形状を有しても良い。リフト部材は制御カム内を案内される制御ピンを有する。制御ピンが第一部分内に配される場合、リフト部材は搬送方向に変位可能とされ、ピンにより第二部分の領域内に入り込む。制御ピンが第二部分に位置した時点で、第二部分が延びる方向により搬送方向の逆方向には戻ることができない。しかしながら、この制御カムを含む実施形態は、本発明のその他の実施形態と比較して製造コストが比較的高い。
【0021】
搬送部材が先行技術から公知の吸湿性プラスチック材料から製造されるか、ケースの内壁がこのような材料からなるのが好ましい。あるいは、あるいは追加的に、リフト部材は乾燥剤用の収納領域を有しても良い。蓋も乾燥剤を含んで良い。しかしながら、以下に述べる理由で平坦な蓋を形成可能とするため、蓋は少なくとも部分的に吸湿性プラスチック材料から同様に製造されるのが好ましい。いずれにしても、これはディスペンサ装置の内部に配される蓋の壁部に当てはまる。
【0022】
別の構成において、保持手段は、ケースの内面に設けられ、複数の錠剤の取出口と反対の下端部と、又は複数の錠剤を保持するリフト部材と相互作用可能で、複数の錠剤またはリフト部材のケースに対する取出口への移動を許容し、搬送方向と逆方向の移動を規制する複数の第一ばね凸部(弾性“折りたたみスケール”)を有しても良い。このようにして、ケースと相互作用するためのリフト部材は完全に省略できるか、あるいは、特に弾性部材なしの非常に簡略な形で構成できる。加えて、保持手段は、搬送部材上に設けられ、複数の錠剤の取出口と反対の端部と、又はリフト部材と相互作用可能で、複数の錠剤またはリフト部材に対する搬送部材の搬送方向の逆方向への移動を許容し、かつ搬送部材が搬送方向に移動したとき最下部の錠剤またはリフト部材を連動させる複数の第二ばね凸部/折りたたみスケールを有しても良い。
【0023】
一つの実施形態において、搬送部材は実質的にチューブ状であり、すなわち中空円筒状の構造である。この場合、搬送部材は複数の錠剤を内部に収納する。これらの状況下では、搬送部材の安定性が確保できる限りで、搬送部材の側壁部(シェル壁)は材料を節約するため任意の所望の形で孔が開けられて良い。この搬送部材は複数の錠剤を搬送方向に区切るのに適する先端取出部を有するのが好ましい。この目的で、搬送部材は先端方向に閉塞する適切な被覆壁を有するのが好ましい。取出口が先端取出部に横方向に形成されて、複数の錠剤中の取出部に収納された最上部の錠剤がこの取出部から取出口を介して搬送方向に対して横方向に取出可能とされるのが好ましい。
【0024】
横方向取出口によって達成されるのは、錠剤がディスペンサ装置から比較的制御されない形で落下することがないことから、錠剤を所望の量だけ確実に取り出すことができるということである。以下に述べる理由により、搬送部材の(ケース内ではない)横方向取出口の構造により、搬送部材に取出位置から搬送位置への適切な移動規制が生じる。このようにして達成されるのは、錠剤が取り出された後、次の錠剤の取出準備のため搬送部材の駆動により必要な移動量だけ複数の錠剤が上方向に変位するということである。
【0025】
搬送部材は搬送位置から取出位置まで、すなわち搬送方向にばねで付勢されるのが好ましい。これにより、片手操作が容易となる。この場合、搬送部材は、ばね力に抗して親指でケースを押圧可能なように配されるのが好ましい。解放されると、搬送部材はばね力によって取出位置まで押し戻される。
【0026】
これは、ばね部材がケースと搬送部材との間に配されることにより達成可能である。このばね部材は、特に搬送部材の基端部とケースのベース部との間に配されても良い。単純な構成では、ばね部材は、第一リングと、第二リングと、第一リングと第二リングとを連結し、実質的にその周面内部で搬送方向に対して傾斜して延びる複数の弾性ウェブとを有する。
【0027】
ばね部材及びリフト部材は、単純に互いに一体として製造されても良く、互いに所定の破断点を介して連結されても良い。この所定の破断点は、最も早くてこれらがディスペンサ装置が組み立てられた時点、あるいは遅くとも搬送部材が最初に駆動されたときに破断するような寸法とされる。ばね部材とリフト部材の接合一体製造により、有利な形で製造及び組み立てコストが低減する。
【0028】
ばね力は、ばね部材の代わりにケース自体によって生じるようにされても良い。この目的で、ケースは、搬送方向に対して、ばね力に抗して伸張可能なベローズ状部を有しても良い。このベローズ状部は、ケースを取出口に近い先端部と、この取出口から遠い基部とに分割する。搬送部材は、搬送部材が先端部に対して搬送方向と逆方向に移動し、ベローズ状部がこれにより伸張したときに、基部が連動するように基部に挿入される。この結果、この領域によって搬送部材上への回復ばね力が生じる。
【0029】
錠剤は、基本的にディスペンサ装置内で縦に重ねられ、この位置で位置固定される。このようにして機械的損傷が防止される。これは、正確な投与作業が問題となるときに、特に重要である。たとえば、人の健康を増進する錠剤が機械的に損傷を受けた場合、患者は機械的に損傷を受けた錠剤を服用する結果、少ない量の投与を受けることとなる。この実施形態は、したがって、とりわけ錠剤として投与される薬剤を保管するのに役立つ。
【0030】
錠剤が取り出されて残りの錠剤がその後すぐに上方向に取出口ないし蓋に向けて適切に変位しない場合、この有利な位置固定は基本的に保証されない。このような状況は、例えば、残りの錠剤を上方向に取出口に向けて適切に変位させるため、搬送部材が手動で駆動されなくてはならない場合に起こる。この好ましくない状況を防ぐため、本発明の一実施形態では、ディスペンサ装置の取出口及び/又は蓋に隣接して上ストップが設けられる。
【0031】
このストップは、例えば搬送部材内部で環状構造を有する。このストップは、取出準備のできた錠剤の直下に配されるように設けられる。複数の錠剤の残りの部分は、その“上”端部でこのストップに衝突し、したがってその上に配された錠剤が取り出された場合でもその位置が保たれる。機械的損傷の恐れは、錠剤がストップの下に保持されることから、最小化される。ストップの弾性及び大きさは、複数の錠剤に属する錠剤が、十分な圧力の結果ストップを通過して、この錠剤が取出可能な位置まで入り込めるように錠剤と合わせて設定される。
【0032】
ディスペンサ装置をより簡易かつ経済的に製造可能とするため、搬送部材は、本発明の一実施形態では、接合されてチューブを形成する二つのシェル片を有する。これらの二つのシェル片は、互いにその形状によって係止されるのが好ましい。内部にブロックスケールなどが配されたチューブを製造するのは比較的困難である。この課題は、より簡単に、かつより経済的に製造可能な二つのシェル片を製造することによって解決される。これら二つのシェル片間を確実に連結するため、被覆壁と取出口とを有する取出部が、別個に製造され、二つの接合されたシェル片上に、これらシェル片が、少なくとも補充的にこの別個に製造された取出部によって保持されるように取り付けられるのが好ましい。
【0033】
上述の各種構成間の任意の組み合わせが可能である。したがって、例えば、ばね力が生じる仕組みは、リフト部材が設けられるか否か、及びこの部材が案内される仕組みとは独立である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ディスペンサの第一実施形態の斜視図である。
【図2】II−II線の視認方向での図1のディスペンサの側面図である。
【図3】II−II線の方向から見た図1のディスペンサの中央長手方向断面図である。
【図4】蓋が開いた状態の図3の長手方向断面図である。
【図5】蓋が開いた状態の図1のディスペンサの斜視図である。
【図6】蓋が開いた状態のディスペンサの別の斜視図である。
【図7】図1のディスペンサのケースの斜視断面図である。
【図8】図1のディスペンサの内チューブの斜視図である。
【図9】図5のディスペンサのIX-IX方向から見た内チューブの側面図である。
【図10】図1のディスペンサのリフト部材及びばね部材の拡大斜視図である。
【図11】図10の部材の別の拡大斜視図である。
【図12】IX−IXの視認方向に対して90度回転された視認方向での図10の部材の側面図である。
【図13】IX−IXの視認方向から見た図10の部材の中央長手方向断面図である。
【図14】図10の部材の変形例の斜視図である。
【図15】図14の変形例の別の斜視図である。
【図16】IX−IXの視認方向から見た図14の変形例の中央長手方向断面図である。
【図17】第二実施形態のケースの斜視図である。
【図18】第三実施形態のケースの斜視図である。
【図19】第四実施形態のケースの斜視図である。
【図20】折りたたみスケール付きの内チューブの詳細の拡大図である。
【図21】リフト部材のラッチングカムを介して延びる断面に沿った第五実施形態のディスペンサの中央長手方向断面図である。
【図22】図21の基端部の拡大詳細図である。
【図23】図21のディスペンサの外チューブの斜視図である。
【図24】図21のディスペンサの閉塞部材の斜視図である。
【図25】リフト部材の平面図である。
【図26】ディスペンサ装置の一実施形態の詳細の第一側面断面図である。
【図27】ディスペンサ装置の一実施形態の詳細の第二側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の錠剤ディスペンサの第一実施形態は図1(FIG.1)から6に示される。このディスペンサ、すなわちディスペンサ装置は、フィルムヒンジ121を介して一体に連結される蓋120を有する外チューブ110としてのケース100を有する。この外チューブ110は組み立て目的でV字状の方向指示部116により第一側壁部111と、わずかに小さな内径の第二側壁部112とに分割される円筒状側壁部を有する。図1に見られるように、外側から視認可能な方向指示を設けるため、外径も対応して小さくされるのが好ましい。したがって外チューブの内壁は、挿入されるリフト部材に属するラッチングカム302等のための漏斗型の下向きテーパガイドを有する。このガイドにより、ラッチングカムは所望の位置に方向付けられ、これにより、ディスペンサ装置の対応する各部材の組み立てが容易となる。
【0037】
外チューブ110はベース113によって底部に向けて閉塞され、一体に接続される。外チューブの上端部に、フィルムヒンジ121と対向して、開封補助部114が形成される。ケースの蓋120は、短い円筒状の側壁部123と、上部被覆壁122とを有する。この側壁部は搬送部材の取出口203をシール可能となるのに必要なだけの高さを有するのが好ましい。この取出口はケースに対して防湿性をもって突出する。この蓋の高さは、したがって、せいぜい取出口203の高さよりもわずかに高いだけである。基本的に、側壁部123の高さは、したがって錠剤の厚みよりも大きく、錠剤の厚みの二倍よりも低い。これは、もちろん、取出口の高さと比較して錠剤が非常に薄い場合にはあてはまらない。側壁部120の高さが低いほど、この部分は機械的に安定し、好ましくない形で漏出が起こる危険性が低い。この実施形態においては、したがって蓋に乾燥剤を収納することは、蓋の高さを好ましくない形で大きくすることとなり、省略するのが好ましい。
【0038】
開封補助部124も、フィルムヒンジ121の反対側の蓋上に形成される。加えて、ここには示されないものの、最初の開封を保証し、蓋が最初に開封されたときに回復不能に変形ないし破壊されて、ディスペンサに手がつけられていないことを示すのに適切な部材が蓋上に形成されても良い。この蓋は、ここに示されたのと異なる形式で形成されて良く、特に、先行技術から様々な形で公知の子供用安全装置を有しても良い。また、ディスペンサ装置を開封し、再び閉じるのに両方の手が通常必要となるものの、ねじ付蓋として形成されても良い。フィルムヒンジによりディスペンサ装置に永久的に接続され、結果として無くすことのない、スナップ方式の蓋がしたがって好ましい。
【0039】
外チューブ110には、特に図3及び4に明確に見られるように、内チューブ200としての搬送部材が配される。この内チューブ200は、下向きに開口する。内チューブ200は、外部に実質的に円筒状の側壁部201を有する。この内チューブは上端部において取出部202により閉塞される。この取出部202は部分的にチューブを上向きにマスクし、横方向の開口部203をブロックしないことで、内チューブに収納される複数の錠剤500から一回に一つの錠剤501を取り出すようにする。これにより、蓋の有無に関わらず、取出可能な最上部の錠剤501用の上ストップが形成される。機械的損傷の恐れは、これによってより良好に低減される。チューブが上向きで部分的にのみマスクされることにより、最上部の錠剤は上から容易に触れることができ、容易に横向きに押し出すことができる。これは、上の錠剤をつまんで保持する場合に特に有利である。これがなく、保持する観点からの大きな問題を恐れる必要がない場合、内チューブも上向きに完全にマスクされてもよい。
【0040】
内チューブ200は、その開口した下端部207によって、ばね部材400上に配される。内チューブ200は、外チューブ110内で、内外チューブの共通の円筒軸に沿って搬送方向205及び搬送方向の逆方向に長手方向変位可能とされる。開始位置(以下、取出位置とも記載)が、図3及び4に示される位置である。この位置において、内チューブ200が外チューブ110の上縁の十分上に突出し、取出口203がこの側面から自由にアクセス可能とされる。この取出位置で蓋120が開いた状態で、複数の錠剤中の最上部の錠剤501が取出口203から横向きに押出可能とされ、又は特定の状況下で、ディスペンサが取出口203が下向きにされた状態でディスペンサが水平位置になったときに取出部から自動的に落下するようにされる。
【0041】
特に、環状ストップ208(“保持ビード”とも記載)が、最上部の錠剤501が容易に変位可能な形で支持されるように配される場合、最上部にある錠剤が自動的に落下する。これは、特に最上部の錠剤が、一方で容易に横方向に落下可能であり、他方で機械的損傷を恐れる必要がないように長手軸II-IIに沿った移動が規制されるように、最上部の錠剤201に最小限の隙間(上方向又は下方向)しか残されない場合に達成可能である。この実施形態では、ディスペンサ装置を片手のみで使用できる可能性がより促進される。
【0042】
内チューブは搬送方向205と逆方向に外チューブに押し込み可能であり、この場合、ばね部材400が圧縮され、搬送方向に作用する回復力が内チューブに働く。この内チューブは、回復力に抗して、第二位置(いわゆる“搬送位置”)まで押し込み可能である。内チューブが再び解放されると、内チューブはこの回復力によって自動的に取出位置まで戻る。
【0043】
図1から6の表示では、蓋120のヒンジ121は、取出口203と正反対の側に配される。これに代えて、これらの間に異なる角度をつけても良く、特にヒンジと取出口とが搬送方向を中心として90度オフセットされた構成も可能である。
【0044】
リフト部材300が内チューブ200内で案内される。複数の錠剤500中の最下部の錠剤503がこのリフト部材300上に置かれる。
【0045】
このディスペンサは、以下のように動作する。最上部の錠剤501が取り出された後、複数の錠剤500中の別の錠剤を取り出す場合、ユーザは内チューブをばね部材400のばね力に抗して搬送位置に押圧する。この工程中で、リフト部材300は、複数の錠剤500が外チューブ110に対して位置が変わらない状態で、外チューブ110に保持される。内チューブ200は、したがって、複数の錠剤500に対して、取出部202の被覆壁が現在最上部にある錠剤上に静置され搬送方向と逆方向の内チューブの更なる移動が防止するようになるまで、一つの錠剤の厚み分最終的に下方向に変位する。内チューブが再び解放されると、ばね部材400が内チューブを押圧して取出位置に戻す。この工程中、内チューブ200によってリフト部材が搬送方向205に連動される。この結果、複数の錠剤500の全体は、外チューブに対して一つの錠剤の高さ分だけ上方向に変位する。複数の錠剤500中の最上部のタブレットは、再び取出部202に配置され、容易に取出可能となる。
【0046】
この内チューブ、外チューブ、リフト部材およびばね部材の相互作用は、これらの部材をそれぞれの場合について別個に示す図7から13中でより詳細に説明される。
【0047】
リフト部材300は、被覆面306によって上方向に閉塞された円錐台状側壁部301を有する。側壁部中には、二つの対向する長手方向スリット305が配され、共同してスリット305をつなぐ線に直交する横方向に沿ってリフト部材を押圧可能とする。これにより、図11に示されるような変形力Fが生じる。二つのラッチングカム302がリフト部材300の側壁部301にスリット305に対して90度オフセットして形成される。このラッチングカムは、長手軸に対して浅い角度で傾斜して延び、その中心軸からの距離が下向きに連続的に増加する摺動面303を有する。下端部では、このラッチングカム302は、それぞれストップ面304を有し、このストップ面の法線方向に延びる面は、搬送方向の略逆方向を向いている。
【0048】
本例では、リフト部材300及びばね部材400は、例えばポリエチレン(PE)等の弾性プラスチックから一体的に製造される。リフト部材300は、所定の破断点を形成する細いブリッジ309を介してばね部材400に連結される。これらの所定の破断点は、組み立て時、又は遅くとも錠剤ディスペンサが初めて駆動された時に破断され、リフト部材300がばね部材から完全に独立となる。
【0049】
ばね部材は、下リング401と、搬送方向に沿ってオフセットされるように配される上リング402と、これら二つのリングを連結し長手軸に対して傾斜して延びる複数のばねウェブ403(本例では5つのばねウェブ)とを有する。ばね部材の二つのリング401、402が互いに押圧される場合、これら二つのリングを互いに離れる方向に押し、これによりばね力を発生させる弾性剪断力がばねウェブ403によって生じる。ばね部材は、しかしながら、異なる形で形成されても良く、特に、それ自体として公知な形でプラスチックから製造されても良い。
【0050】
内チューブ200は、その側壁部201の内部に多数のブロックスケール204を有する。これらブロックスケールの各々は、長手軸に対して傾斜する摺動面を有し、側壁部の内径が各々において最初は摺動面の領域において上向き(搬送方向)に傾斜し、その後、上向きのストップ面の領域で再び突然拡径する。リフト部材は、内チューブ200の内部で上方向(搬送方向)に摺動可能である。この工程中、リフト部材は、各段階でブロックスケールの摺動面によってわずかに弾性変形される。リフト部材300の下縁308が摺動面の領域を離れストップ面を超えた時、リフト部材は再び僅かに拡径する。リフト部材を内チューブ内で搬送方向と逆方向に押し込もうとすると、このリフト部材の下端部308が問題となるブロックスケールのストップ面と衝突し、押し込みが防止される。このため、リフト部材は内チューブ内で上方向(搬送方向)のみに隣接するそれぞれのブロックスケールの間の距離だけ段階的に移動可能となる。
【0051】
内チューブ200は、側壁部201の対向する面上に、リフト部材のラッチングカム302が挿通される二つの長手方向スリット205を有する。これらのラッチングカムは、外チューブ110の側壁部の内面に形成されるブロックスケール115と相互作用する。ブロックスケールは、長手方向に沿って延びる細い帯状体を形成し、わずかに凹んだ状態で側壁部の溝内に入る。リフト部材300は、ラッチングカム302によりこの溝内に沿って案内され、このようにして外チューブに対して回転しないようにされる。
【0052】
ラッチングカム302が内チューブのスリット205により案内されることで、内チューブも外チューブ110に対して回転しないようにされる。これにより、搬送部材の取出口が常に確実にアクセス可能となる。
【0053】
方向指示部116は、ラッチングカム302が凹状に配されたブロックスケール115に入るのを補助する。
【0054】
別の方法として、好ましくない回転は、ディスペンサ装置の長手軸と平行に延びる外チューブと内チューブとの間の別の溝-爪連結によっても防止可能である。この方法では、特にブロックスケールは、例えば環状構造であっても良い。
【0055】
ラッチングカム302は、中心軸からの距離が下向きに増加するように長手軸に対して傾斜して延びる摺動面303を有する。ほぼ下向き(搬送方向と逆方向)に向けられたストップ面304がラッチングカムの下端部に形成される。リフト部材が外チューブに対して押し上げられたとき、ラッチングカム302が摺動面303によってブロックスケール115上を摺動する。結果として、リフト部材は、変形力Fとは逆に横方向に押圧される。ラッチングカム302がそのストップ面によりブロックスケール115を通過すると、変形力により、ラッチングカムが二つの連続するブロックスケールの間の領域に押圧される。リフト部材を搬送方向と逆方向に押し戻そうとすると、このストップ面304は反対方向に向いたブロックスケール115のストップ面に相対することとなり、押し戻しが防止される。
【0056】
リフト部材300は、したがって外チューブ110及び内チューブ200に対して二つの連続するブロックスケール115ないし204の間の距離だけ搬送方向に段階的にのみ変位可能であり、したがって反対方向に段階的に変位しないようになっている。これにより、内チューブ200が外チューブ110に対して押圧された時、リフト部材300は、外チューブに対して固定されたままであり、内チューブは、複数の錠剤に対して搬送方向とは逆方向に一つの錠剤の厚みだけ変位する。さらに、内チューブが逆方向に移動したとき、リフト部材は、一つの錠剤の厚みだけ搬送方向に内チューブによって連動する。この工程中、一つの錠剤の厚みは、二つの連続するブロックスケール115ないし204の間の距離に正確に対応する。このようにして、内チューブが前後方向に移動した都度、複数の錠剤は、搬送方向に一つの錠剤の厚み分搬送される。
【0057】
しかしながら、ブロックスケールはそれぞれ一つの錠剤の整数分の1のみに対応する距離だけ離れていても良い。この場合、リフト部材のラッチングカムは、錠剤が搬送される都度複数のブロックスケール上を摺動する。これにより、異なる厚みを有する錠剤について同一のディスペンサを用いることができる。加えて、保持力をより良く分散させるため、リフト部材上に搬送方向に縦に配された複数のラッチングカムを設けても良い。
【0058】
この第一実施形態の変形例では、図14から16に示されるように、リフト部材は、追加的に乾燥剤の保持具として形成されても良い。この目的で、リフト部材は、乾燥剤311の円筒状錠剤ないし粒を収納する環状収納部310を有する。乾燥剤は、例えば、通気性のある厚紙からなる小さな保持板312によって収納部310中に保持される。乾燥剤311と複数の錠剤の領域間で空気を流通させるようにするため、この構造ではリフト部材の被覆壁306は、複数の貫通孔307を有する。
【0059】
あるいは、ないし追加的に、内チューブ201は、例えば、分子篩型材料等のそれ自体として吸湿性を有するプラスチック複合材から形成されても良い。この種のプラスチック材料は、例えば国際公開第97/032663号に開示される。吸湿性材料から内チューブを製造することは、内部空間が均一に乾燥した状態に保たれることから好ましい。このようにして錠剤は、湿気から均一に保護される。さらに、錠剤は、重ねられた状態で自身の位置に保持されることから、これによって錠剤が異なる程度で湿気から保護されるということがない。
【0060】
本発明の第二実施形態が図17に図示され、ここでは対応して構成された錠剤ディスペンサのケース100’が示される。同一の部材が以下に示され、第一実施形態と同じ参照番号が付される。この実施形態では、上述したばね部材400が省略され、ケースの側壁部のベローズ状部117によって置き換えられる。このベローズ状部117によりケースが先端部とベース113側の基部118とに分割される。この内チューブ200は、第一実施形態と同様に構成される。この実施形態においても、第一実施形態と同様にケース上のブロックスケール及び内チューブのブロックスケールと相互作用するリフト部材があり、このリフト部材が内チューブと外チューブとの双方で各々の一つの錠剤の厚みだけ搬送方向に変位可能となっているのに対し、搬送方向の逆方向に変位しないようになっている。本実施形態において、取出位置では、内チューブは、その下端部で外チューブのベース113上に静置されるようになっている。内チューブが取出位置から搬送位置に搬送方向と逆方向に押された場合、内チューブは、弾性回復力に抗してベローズ状部117を引っ張る。本実施形態においても、解放された後、この弾性回復力により内チューブ200は、取出位置に戻ることになる。しかしながら、本実施形態は、比較的高い製造コストを必要とし、したがってより好ましくない。
【0061】
第三実施形態が図18に示され、ディスペンサのケース100”が示される。ここで、リフト部材は、ラチェット接続部の代わりに二つの正対する制御カム130を介してケース上を案内される。この目的で、リフト部材は、制御カムに係合する二つの対応する制御ピンを有する。この制御カムは、長手軸に対して略45度傾斜して延びる部分と、長手軸に対して横断して延びる部分とを有してジグザグ状に形成される。本実施形態では、内チューブ200は、第一及び第二実施形態と同様に構成される。内チューブが押圧されると、リフト部材は、その制御ピンによって制御カムの横方向に延びる部分で位置が固定される。内チューブが逆方向に移動すると、このリフト部材は、傾斜部分に沿って内チューブに連動して、制御ピンにより次の横方向延出部分に入り込む。これを確実にするため、内チューブは、逆方向に移動した時に、リフト部材を横方向延出部分に押し込むトルクが内チューブに、ひいてはリフト部材上に生じるようにケースの基部中で位置が固定される。当然ながら、制御カムを有するこの実施形態は、ケース上のベローズ状のデザインの代わりにばね部材400によっても実現可能である。
【0062】
図19及び20に示されるような第四実施形態においては、リフト部材は完全に省略可能である。この実施形態では、ケースの側壁部の内面上に、張力が作用しない位置では内壁から上方向に(先端に向けて)斜めかつ長手軸に対して傾斜して内方向に突出する多数のばね凸部(折りたたみスケール)140が配される。これは図19に示される。対応するばね凸部210も内チューブ200’の側壁部の内側に設けられ、図20の内チューブ200’の拡大図に見られるように同様の方向に向けられる。複数の錠剤500中の錠剤は、搬送方向にこれらのばね凸部140ないし210上を摺動可能とされる。この工程中、これらの錠剤は、弾性力に抗してばね凸部140ないし210を外側に押圧する。複数の錠剤中の最下部の錠剤がばね凸部上を摺動すると、すぐにばね凸部はそのばね力によって張力が作用しない位置に折りたたまれ、その上端部が最下部の錠剤の下側にある状態で静止する。このようにして、ばね凸部は最下部の錠剤が再び押し戻されるのを防止する。
【0063】
本実施形態が機能するその他の方式は、第一実施形態が機能する方式と同様である。内チューブは、同様に外チューブのばね部材のばね力に抗して取出位置から搬送位置に押される。この押込動作が起こると、折りたたみスケール130が係合することにより複数の錠剤は、外チューブに対して固定された状態となる。内チューブが解放されると、内チューブはばね部材により取出位置に押し戻され、この工程中で、内チューブ上の折りたたみスケール/ばね凸部との係合により複数の錠剤と連動し、これによりこれらの複数の錠剤を全体として一つの錠剤の厚み分上方向に搬送する。
【0064】
本実施形態においても、最も単純な場合には、最下部の錠剤が静置される一つの錠剤の厚みを有する浅く丸いディスクとして形成されるリフト部材を用いることも当然に可能である。この場合、このリフト部材は、最下部の錠剤の代わりに折りたたみスケール/ばね凸部と相互作用する。この実施形態においても、ケース上に第三実施形態のようなばね部材として作用するベローズ状部を形成することは当然に可能である。この変形例においても、内チューブは吸湿性プラスチック材料から形成されても良い。
【0065】
上記に示された実施形態において、外チューブないしケースは固定されたベース113を有する。したがって、蓋の部分を通して上方から錠剤を詰める必要がある。特に、内チューブと、該当する場合には、リフト部材及びばね部材とを外チューブ内に上から導入する必要がある。これらの状況下では、リフト部材ないし複数の錠剤を外チューブに押し込むため(例えば、ラッチング部材ないし折りたたみスケールを押し込むため)に補助が必要となるか、又はリフト部材ないし複数の錠剤が、少なくとも加熱された状態で外チューブに上から適切な力を加えて押し込み可能なようにこれらの部材が構成されることが必要となる。
【0066】
しかしながら、この充填作業は、外チューブが最初に下方向に開口され、この充填作業後にのみ下端部でシールされるようにすればより簡略化できる。この場合、外チューブ、蓋及び最初の開封インジケータ(例えば、保証片)は、特に相互に一体で射出成形されても良い。
【0067】
この種の実施形態は、例えば図21から24に示される。この実施形態では、ケース100””の外チューブ110は、その基部119で開口し、この領域の内面に、例えば一つ又は二つの基部閉塞部材(ベースキャップ)150として働く周方向環状溝を有する。このベースキャップ150は、それ自体として図24に示され、ベース151と外側の、円周状の低い側壁部152を有する。側壁部の外側には、例えば一つ又は二つの外チューブのラッチング溝と相互作用して最初に外チューブ内に押し込まれた際に閉塞部材150が外チューブ110にその形状によって確実に保持されるようにする周方向ウェブが形成される。側壁部152によって区切られたベース151の領域から、内チューブの相補的な形状の下端部207がその内部に突出する収納リング154が上端(先端)部に設けられるベローズ状部153が上方向に突出する。この結果、この実施形態でのベローズ状部153は、第一実施形態のばね部材と置き換えられる。しかしながら、これに代えて、この開口基端部を有する実施形態では、当然ながら別のばね部材を設けるか、あるいは図18の実施形態のようにケース自体にベローズ状部を設けても良い。
【0068】
組み立てを容易にするため、基部閉塞部材は、これに加えてリフト部材と一体に製造されても良い。あるいは、内チューブをばね部材と一体かつケースと別体として製造しても良い。この閉塞部材をリフト部材と一体に連結する場合(製造工学的な観点からは有利)、この基部閉塞部材とリフト部材との間に所定の破断点が設けられる。この一体的に製造された閉塞部材には、製造及び/又は組み立てを有利にするため、所定の破断点を介してばね部材に連結されるばね部材とリフト部材とが設けられても良い。
【0069】
この実施形態では、充填作業は、基部側から行われる。この充填作業が完了した後、閉塞部材150は、外チューブに押し込まれ、その後、環状溝とウェブとの連結によって外チューブ内に固定された状態となる。
【0070】
外チューブ100””の下端部とベースとを形状により連結するのが有利だが絶対に必要ではない。ベース150が外チューブ100””に、例えば形状により、あるいは単独にないし追加的に力により、及び/又は接着、融着などで係止されるか否かに関わらず、いずれの場合でも防湿性のシールを施すのが有利である。このための最低限の要件は、ベース150と外チューブ100””との間の連結に隙間が残らないようにすることである。特に信頼性高く防湿性を得るため、少なくとも圧入などによりベースが外チューブの下端部に、例えば融着などによって一体に連結されるのが有利である。
【0071】
当業者は、ディスペンサ装置中でどのように錠剤が保護可能かにつき周知であるものの、当業者も、例えばリフト部材によって錠剤が個別に取出口に向けて搬送可能なディスペンサ装置についてどのようにこれが可能であるかは知らなかった。
【0072】
ディスペンサの個別の部材は、射出成形法により、他の材料も可能ではあるものの、以下の材料から製造される。
・ケース:ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)
・内チューブ:PP、PE又は防湿性化合物
・リフト/ばね部材 PP又はPE
【0073】
図25から27は、リフト部材300の別の特に好ましい実施形態を示す。プラスチックからなるラッチングカムの代わりに、図25のリフト部材の平面図から明らかなように、好ましくはばね鋼からなる平坦弾性部材600の二つの端部が両側に突出する。図26に示されるように、この二つの端部は、外側に向けて下方向に曲げられる。図25に示されるリフト部材を通る横断面図が図26に示される。上述の実施形態とは異なり、好ましくは、ばね鋼からなる部材600の二つの端部が、外チューブの好ましくは平滑な壁部に対して予め張力を加えられた状態で静止する。上述の理由で、第一壁部111と第二壁部112とがある場合、好ましくは、ばね鋼からなる平坦部材600の端部は、詳細を示す図26に示されるように内壁部111に対して静置される。上述のように、リフト部材は、図26には図示されないものの内チューブ200の内部に配される。好ましくは、ばね鋼からなる平坦部材600の端部は、内チューブの二つの長手方向スリットを介して通って延びる。好ましくは、ばね鋼からなる部材600の端部は、図示されるように下向きに曲げられることから、リフト部材は、予め加えられた張力に反して、上述したように何の問題もなく取出口に向けて上方向に移動可能である。しかしながら、端部が隣接する内壁部に密着することから、リフト部材300は、下方向に変位しない。
【0074】
鋼はプラスチックよりも高価であるものの、ブロックスケール115等を製造するのを省略可能であり、この結果、外チューブは、より安価に製造可能である。この実施形態の本質的利点は、反対方向の移動が防止される形でリフト部材が連続的に外チューブに対して上方向に移動可能、かつ任意の所望の位置で保持可能であることである。これにより、錠剤が取出口のサイズに合う限りで、ディスペンサ装置に任意の所望の異なる厚みの錠剤を収納可能とし、ディスペンサ装置から錠剤を取り出すための必須条件が与えられる。
【0075】
加えて、好ましくは、ばね鋼からなり、その両端部が同様にリフト部材から横に突出し下向きに曲げられる別の平坦弾性部材601が設けられる。これら二つの端部は、図27に見られるように内チューブ200の内壁部に対して、予めテンションが加えられた状態で静置される。図27は、図26の図に対応する。この場合、しかしながら、90度回転(長手軸を中心とする回転)された詳細が示される。これらの内壁部は、同様に平滑、すなわち上述のようなブロックスケールなどが設けられないのが好ましい。搬送部材として作用する内チューブが取出位置から搬送位置に押し込まれた場合、リフト部材300は、内チューブに対して、取出口に向けて移動する。このリフト部材は、上述の理由で、外チューブに対して下向きに移動しないことから、この相対移動を行うよう強いられる。内チューブがその後に取出位置に移動する場合には、リフト部材は上述の理由により内チューブに対して移動しない。しかしながら、このリフト部材は、外チューブに対して蓋に向けて上方向に移動する。このリフト部材の移動及び抑止は、連続的に可能である。上述の実施形態とは異なって、したがってディスペンサ装置を用いられる錠剤の厚みに合わせる必要はない。
【0076】
平坦部材600と比較して、平坦部材601は、横方向に突出する度合いが少ないのが好ましい。というのは、平坦部材601は、内チューブの内壁部にまで届けば良く、外チューブの内壁部にまで届く必要はないからである。平坦部材600は、使用中の故障のリスクを最小化するため、平坦部材601と直角をなすのが好ましい。二つのみの平坦部材600及び601の代わりに、より多くの数の平坦部材を設けて、これらを好ましくは星形に配置しても良い。しかしながら、この解決方法は、基本的により製造するのが高価となる。その端部が横方向に突出する平坦部材600ないし601の代わりに、同様に下向きかつ同様にばね鋼からなるのが好ましいばね凸部をリフト部材に取り付けることもできる。
【0077】
ブロックスケールなどを内壁に設けないのが経済的ではあるものの、これは全ての形のブロックスケールが図25から27に示される実施形態において必然的に省略されなくてはならないことを意味しない。したがって、例えば非常に小さな寸法のブロックスケールを予定される錠剤の厚みと比較して互いに実質的に小さな距離をおいて設けることも可能である。二つのブロックスケール間の小さな距離を選択すること、すなわち、例えばディスペンサ装置内に配される錠剤の厚みの三分の一よりも小さな距離を選択することにより、リフト部材の連続的な移動と抑止とを含む状況を近似できる。ブロックスケール間の距離が小さいほど、この近似がうまくいく可能性が高くなり、結果としてディスペンサ装置の製造を予定される錠剤の厚みと適合させる必要がなくなる。また、ばね鋼などの類似の特性を有する材料を省略することもできる。
【0078】
内壁がブロックスケールなどを有しない場合、二つの部材600及び601は、鋼からなる必要はない。また、上述したのと同一の作用を得ることのできる材料を選択することも可能である。この関連でとりわけ問題となるのは、予め加えられた張力に反してリフト部材の蓋ないし取出口への移動が可能となるよう材料が十分に弾性的な挙動を示すことである。一方、材料は、リフト部材が外ないし内チューブに対して取出口に向けて移動可能であり、かつ反対方向への移動が好ましくは防止され、少なくとも十分に規制されるように選択可能である。
【0079】
部材600及び601の形状も、所望の上述の挙動が得られる限りで変更可能である。
【0080】
多くの数の変形が可能であり、本発明は、ここに示される例示的な実施形態によって限定されるものではない。したがって、例えば、搬送部材は上述の実験例のように筒状である必要はなく、上端部から下端部へ力を十分に伝達可能とする異なる形状を有しても良い。搬送部材は、少なくとも部分的に複数の錠剤を囲むのが好ましいものの、これは、機能させる目的のため絶対的に必要ではなく、搬送部材が、例えば棒ないし部分的な円筒形状で、重ねられたタブレットの一方の側に配される、ないしこの複数の錠剤の二つの対向する側面に沿って延びるのみとされる構成も可能である。ケースの形状は、様々な要件に合わせて容易に調整可能であり、ケースは、いずれにしてもチューブ形状をとる必要はない。特に、上述の円形−円筒基本形状以外の形状、例えば、四角形内部断面を有する形状も想定可能である。数多くのその他の変形例が可能である。
【符号の説明】
【0081】
100,100’,100”,100”’,100”” ケース(外被)
110 外チューブ
111 第一側壁部
112 第二側壁部
113 ベース
114 開封補助部
115 ブロックスケール
116 方向指示部
117 ベローズ
118 基部
119 基(下)端部
120 スナップオン式蓋
121 フィルムヒンジ
122 被覆壁
123 側壁部
124 開封補助部
125 複数の錠剤のストップ
130 ガイドカム
140 折りたたみスケール(ばね凸部)
150 基部閉塞部材(ベースキャップ)
151 ベース
152 側壁部
153 ベローズ状部
154 収納リング
200,200’ 搬送部材(搬送チューブ、内チューブ)
201 側壁部
202 被覆壁を有する取出部
203 取出口
204 ブロックスケール
205 搬送方向
206 スリット
207 下端部(基端部)
208 保持ビード
210 ばね凸部
300 リフト部材
301 側壁部
302 ラッチングカム
303 摺動面
304 ストップ面
305 スリット
306 被覆面
307 開口
308 下縁
309 所定の破断点
310 収納部
311 乾燥剤
312 小保持板
400 ばね部材
401 下リング
402 上リング
403 ばねウェブ
500 複数の錠剤
501 最上部の錠剤
502 上から2番目の錠剤
503 最下部の錠剤
600 鉄のばねからなる平坦部材
601 鉄のばねからなる平坦部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の錠剤(500)を収納し、前記複数の錠剤に属する錠剤(501)を取り出すためのディスペンサ装置であって、
前記複数の錠剤(500)を収納するケース(100,100’,100”,100””)と、
一回に一つの錠剤(501)ないし所定の数の錠剤を取り出すための取出口(203)と、
前記複数の錠剤(500)を前記取出口(203)に搬送方向(205)に沿って搬送するために、ケースに対して移動可能な搬送部材(200)とを有するディスペンサ装置において、
前記搬送部材(200)は、前記ケースに対して取出位置と搬送位置との間を往復可能であり、
前記搬送部材(200)が前記取出位置から前記搬送位置に移動した時、前記搬送部材(200)が前記複数の錠剤(500)に対して前記搬送方向(205)と逆方向に変位し、前記搬送部材(200)が前記搬送位置から前記取出位置に後退移動したとき、前記複数の錠剤(500)が前記搬送部材(200)によって前記搬送方向(205)に連動し、前記搬送部材の前進後退が行われる都度、前記複数の錠剤(500)が前記搬送方向に所定量搬送されるよう前記複数の錠剤をケースに対して保持するために形成された保持手段が設けられることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスペンサ装置において、前記保持手段は、前記複数の錠剤(500)が前記取出口(203)の反対端であるその基端部(502)に静置され、前記ケースに対して前記搬送方向(205)に沿って移動可能とされつつ、前記ケース(100,100’,100”)に対して前記搬送方向(203)の逆方向に移動不能とされるよう前記ケースと相互作用し、かつ前記ケース(300)に対して前記搬送部材(200)の前記搬送方向(205)の逆方向への移動を許容し、かつ前記搬送方向(205)への前記搬送部材(200)の移動が行われたとき、前記搬送部材(200)と連動するよう前記搬送部材(200)と相互作用するリフト部材を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のディスペンサ装置において、前記リフト部材(300)は前記ケース(100,100’)に対する前記リフト部材(300)の前記搬送方向(205)への移動を許容し、前記搬送方向と逆方向への移動を防止する第一ラチェット接続部(115,302)を介して前記ケース(100,100’)と相互作用することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のディスペンサ装置において、前記ケース(100,100’)の内面に前記リフト部材(300)の前記ケース(100)に対する前記搬送方向(205)への移動を許容し、前記搬送方向と逆方向への移動を規制するよう前記リフト部材(300)の少なくとも一つの第一ラッチング領域(302)と相互作用する複数のブロックスケール(115)が形成されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のディスペンサ装置において、前記リフト部材(300)は前記搬送方向(205)の横方向の変形力に対して弾性変形可能であり、前記リフト部材(300)の前記少なくとも一つの第一ラッチング領域(302)は前記変形力(F)によって前記ブロックスケール(115)に対して弾性的に押圧されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のディスペンサ装置において、前記少なくとも一つの第一ラッチング領域は弾性ばね凸部として形成されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材(200)は前記搬送方向(205)に略沿って延びるスリット(206)を有し、前記リフト部材の前記第一ラッチング領域は前記スリット(206)を介して延び前記ブロックスケール(115)と相互作用することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項8】
請求項2から7のいずれかに記載のディスペンサ装置において、前記リフト部材(300)は、前記リフト部材(300)に対する前記搬送部材(200)の前記搬送方向と逆方向の移動を許容し、前記搬送部材(200)の移動が生じた時、前記ケース(100,100’)に対して前記搬送方向に前記リフト部材(300)を連動させる第二ラチェット接続部(204,308)を介して前記搬送部材(200)と相互作用することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材(200)は、前記リフト部材に対する前記搬送部材(200)の前記搬送方向の逆方向への移動を許容し、かつ前記搬送方向への移動を規制するよう前記リフト部材(300)の少なくとも一つの第二ラッチング領域(308)と相互作用する複数のブロックスケール(204)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項10】
請求項8に記載のディスペンサ装置において、前記リフト部材(300)は前記搬送方向(205)の横方向に変形力に対して弾性変形可能であり、前記少なくとも一つの第二ラッチング領域(308)は前記変形力によって前記搬送部材上の前記ブロックスケール(204)に対して弾性的に押圧されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項11】
請求項2に記載のディスペンサ装置において、前記リフト部材(300)は、前記ケース(100”)に対して、その形状により前記リフト部材(300)が前記搬送部材(200)によって前記搬送方向と連動するのを許容しつつ、前記ケース(100”)に対する前記リフト部材(300)の前記搬送方向の逆方向への移動を規制する制御カム(130)内を案内されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のディスペンサ装置において、前記制御カム(130)は前記搬送方向に対して浅い角度で延びる第一部分と前記搬送方向に対して略横方向に延びる第二部分とを有する鋸歯形状を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項13】
請求項2から12のいずれかに記載のディスペンサ装置において、前記リフト部材(300’)は乾燥剤(311)用の収納部(310)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項14】
請求項1から3のいずれかに記載のディスペンサ装置において、前記保持手段は、ケース(100”’)の内面に設けられ、前記複数の錠剤の前記取出口(203)と反対の端部と、又は前記複数の錠剤を保持するリフト部材と相互作用可能で前記複数の錠剤または前記リフト部材の前記ケース(100”’)に対する前記搬送方向への移動を許容し、前記搬送方向と逆方向の前記移動を規制する複数の第一ばね凸部(140)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のディスペンサ装置において、前記保持手段は、前記搬送部材上に設けられ、前記複数の錠剤の前記取出口と反対の端部と、又は前記リフト部材と相互作用可能で前記複数の錠剤または前記リフト部材に対する前記搬送部材の前記搬送方向の逆方向への移動を許容し、かつ前記搬送部材が前記搬送方向に移動したとき最下部の錠剤またはリフト部材を連動させる複数の第二ばね凸部(140)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項16】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材(200)は略チューブ状であり、少なくとも部分的に前記複数の錠剤(500)を収納可能であることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項17】
請求項16に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材は、前記搬送方向に前記複数の錠剤を区画可能で、前記複数の錠剤(500)中の前記取出部に収納された最も先端の錠剤(501)が前記取出口(203)を介して前記搬送方向(205)に対して横方向に前記取出部(202)から取出可能な先端取出部(202)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材(200)は、その側壁部に、前記搬送方向に略沿って延び、前記保持手段が少なくとも部分的に突出する少なくとも一つの長手方向スリット(206)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項19】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材(200)は前記搬送位置から前記取出位置にばねで付勢されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項20】
請求項19に記載のディスペンサ装置において、前記ケース(100)と前記搬送部材(200)との間に配されたばね部材(400)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項21】
請求項20に記載のディスペンサ装置において、前記ばね部材(400)は前記搬送部材(200)の前記取出口と反対側の端部である基端部(207)と前記ケース(100)のベース部(113)との間に配されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項22】
請求項21に記載のディスペンサ装置において、前記ばね部材(400)は、第一リング(401)と、第二リング(402)と、前記第一リングと第二リングとを連結し前記搬送方向に対して傾斜して延びる複数の弾性ウェブ(403)とを有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項23】
請求項20から22のいずれかに記載のディスペンサ装置において、前記ばね部材(400)と前記リフト部材(300)とは互いに一体として製造され、互いに所定の破断点(309)で連結されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項24】
請求項19に記載のディスペンサ装置において、前記ケース(100’)は前記搬送方向に対してばね力に抗して伸張可能で、前記ケースを前記取出口に近い先端部と前記取出口から遠い基部(118)とに分割するベローズ状部(117)を有し、前記先端部に対して前記搬送部材(200)が前記搬送方向と逆方向に移動し、これにより前記ベローズ状部(117)が伸張した時に前記基部(118)が連動するように前記搬送部材(200)が前記基部に挿入されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項25】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材(200)は吸湿性のプラスチック材料から製造されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項26】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、防湿されるように密閉された錠剤(500,501)を収納する内部空間を有し、前記錠剤を前記ディスペンサ装置内の取出口(203)に搬送する搬送手段(117,140,200,210,300,400)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項27】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記取出口(203)に向けて連続的に移動可能なリフト部材と、前記リフト部材(300)を前記逆方向に連続的に規制する手段(600,601)とを有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項28】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、リフト部材(300)はばね鋼からなる二つの部材(600,601)または4つのばね凸部を有し、前記部材ないしばね凸部の端部が外向きかつ下向きで前記ディスペンサ装置の前記取出口から離れる方向に曲げられ、前記ディスペンサ装置の内壁部に対して予め張力が加えられて静置されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項29】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記内壁部は平滑であることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項30】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記搬送部材に対する前記ケースの回動を防止する手段を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項31】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、外被(100””)に形状、力及び/又は接着剤によって係止されて連結されるディスペンサ装置のケースのベース(113)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項32】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記複数の錠剤(500)に属する錠剤の位置を固定する手段(140,210,208,300)であって、横方向の取出口(203)の下に配される手段を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項33】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、取出準備のできた錠剤(501)以外の前記複数の錠剤(500)用の上ストップ(208)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項34】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、前記ストップ(125)は、前記ストップの上に配された一つ以上の錠剤(501)が前記ディスペンサ装置内で隙間を介して保持されるように配されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項35】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、取出口(203)を防湿性をもって密閉可能とするのに必要とするだけの高さで、乾燥剤を有しない蓋(120)を有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項36】
前記いずれかの請求項に記載のディスペンサ装置において、内部に錠剤形状の薬剤を有し、前記薬剤は鉄ないし鉄化合物を含有することを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項37】
ディスペンサ装置内に配された錠剤の取出方法において、錠剤が前記ディスペンサ装置内でリフト部材(300)の作用により蓋(120)に向けて搬送され、錠剤(501)がその後取り出されることを利用することを特徴とする取出方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記ディスペンサ装置に属する前記搬送部材(205)は前記リフト部材に対して前進後退し、これにより前記リフト部材が前記蓋に向けて搬送されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項39】
請求項37または38に記載の方法において、前記ディスペンサ装置は防湿性を保って密閉され、前記ディスペンサ装置の蓋(120)は錠剤を取り出す目的で開口されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2011−506210(P2011−506210A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536394(P2010−536394)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065097
【国際公開番号】WO2009/071415
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(509203050)ヴィフォール (インターナショナル) アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Vifor (International) AG
【Fターム(参考)】