説明

ディーゼルパティキュレートフィルタ

【課題】パティキュレートマター(PM)低減性能を向上させ得るディーゼルパティキュレートフィルタを提供することにある。
【解決手段】本発明のディーゼルパティキュレートフィルタ12は、無機繊維を含む三次元網目状構造体13と、透孔を有する支持体14とを備え、三次元網目状構造体13及び/又は支持体14の構成を、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成とした。排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成としては、三次元網目状構造体13の空隙率を排ガス経路の下流側に向けて減少させた構成とすることが好ましい。また、支持体14の表面積を排ガス経路の下流側に向けて増加させた構成とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下「DPF」と称する。)に関し、更に詳しくは、上流側と下流側で略均一な流量の排ガスを流通するようにして、パティキュレートマター(Particulate Matter、以下「PM」と称する。)低減性能を向上させ得るDPFに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるPMの低減には、一般的にDPFが用いられる。
従来のDPFには、セラミックス系材料から成形されたセルを備えたハニカム型フィルタや無機繊維(例えば耐熱性に優れる炭化ケイ素)を用いたフィルタ等が用いられる。
無機繊維を用いたDPFとして、例えば無機繊維を粗に積層した粗フェルトと無機繊維を密に積層した密フェルトとを重ねて、この粗フェルトと密フェルトを2枚の金網の間に挟んで、断面を蛇腹状に湾曲させたものが開示されている(特許文献1)。このDPFは、密フェルトと粗フェルトを挟んだ2枚の金網に通電して、捕集されたPMを燃焼し、フィルタの再生処理を行う。
【特許文献1】特開2000−130150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のDPFはフィルタの再生に電力が必要であり、電力の消費量が増大する。また、従来の無機繊維は蛇腹状等の構造を維持するために金網などが必要であり、単独では形状を維持することが困難であるという問題もある。
その他、フィルタを再生処理する方法としては、DPFに燃料等を供給して捕集されたPMを燃焼させて除去する方法も採用されているが、供給する燃料が多くなると燃費がよくないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、PM低減性能を向上させ得るDPFを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、排ガス経路の上流側と下流側ではDPFを流通する排ガスの流量や圧力が均一ではなく、DPFを流通する排ガスの流量などが不均一であることによって、PMの低減性能が低下していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明のDPFは、無機繊維を含む三次元網目状構造体と、透孔を有する支持体とを備え、上記三次元網目状構造体及び/又は支持体の構成を、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、DPFを排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成としたことによって、排ガス経路の上流側と下流側でDPFを流通する排ガスの流量及び/又は圧力を略均一にして、排ガス中のPMの捕集効率及びPMの酸化(燃焼)効率を向上させることができ、PM低減性能を向上させたDPFを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のDPFについて説明する。
本発明のDPFは、無機繊維を含む三次元網目状構造体と透孔を有する支持体とを備えている。
図1に、従来のセラミックス系の材料から成形されたフィルタの概略構成の一例と、本発明のDPFを構成する三次元網状構造体(b)の概略構成の一例の説明図を示す。
【0009】
図1(a)に示すように、従来の多孔質のセラミックス系のフィルタ1は、フィルタ1を構成するセラミックス系(例えば炭化ケイ素;SiC)の担体2の孔部3の表面に触媒4が担持されている。フィルタ1を流通する排ガス中のPM5は、孔部3の表面に担持された触媒4と接触する。
図1(a)に示す例において、孔部3の平均細孔径は約10μmであり、PMの平均粒子径は10〜300nmである。
フィルタ1を流通するPM5の量が増大すると、孔部3の入口部にPM5が詰まって、PM5がフィルタ1(担体2)の壁面(セル壁面)に堆積する。PM5がフィルタ1の壁面に堆積すると、PM5と触媒4との接触率が少なくなり、触媒4の性能が十分に発揮されない。
【0010】
一方、図1(b)に示すように、本例のDPFを構成する三次元網目状構造体6は、この三次元網目状構造体6を構成する各々の繊維の表面に触媒6aが担持されている。
本例のDPFを構成する三次元網目状構造体6は、従来のフィルタ1よりも空隙率が大きいので、PM5が三次元網目状構造体6の表面に堆積せず、三次元網目状構造体6の内部に分散させてPM5を捕集することができる。そのため、DPFを構成する三次元網目状構造体6は、PM5の捕集率を向上させることができる。
更に、三次元網目状構造体6を構成する繊維の表面に触媒6aが担持されているため、捕集したPM5と触媒6aとの接触率を向上させて、PM5の燃料効率を向上させることができる。
図1(b)に示す例において、三次元網目状構造体6を構成する繊維の平均直径は3〜30μmである。
【0011】
触媒を担持した三次元網目状構造体は、PMとの接触率が大きいため、PMの燃焼効率(酸化効率)を向上することができ、PMの低減性能の向上に有効である。
本発明者らが種々検討を行った結果、排ガス経路に設置される三次元網目状構造体の全体にわたって、略均一に分散させてPMを捕集することができれば、更にPMの燃焼効率を向上させることができることが分かった。
三次元網目状構造体に略均一に分散させてPMを捕集するためには、三次元網目状構造体の全体にわたって略均一な流量で排ガスを流通させることが有効である。即ち、略均一な流量の排ガスが流通する面積が大きい程、PMを略均一に分散させて三次元網目状構造体に捕集することができ、PMの捕集効率及び燃焼効率を向上させることができる。
【0012】
略均一な流量の排ガスが流通する三次元網目状構造体の面積の違いによって、PMの捕集効率が異なることを次の方法により確認した。
排ガスの流通方向に直交するように大きさの異なる三次元網目状構造体を設置して、各三次元網目状構造体に、例えば、流量1300L/minなどの条件で、排ガスを流通させて、三次元網目状構造体の下流側で、三次元網目状構造体から排出されるPMの粒径別個数分布を走査型モビリティ粒径分析器(SMPS:Scanning Mobility Particle Seizer,TSI社, model 3936L76)により測定した。
本例において、三次元網目状構造体は、空隙率が70%であり、繊維の平均直径が30μmのものを用いた。
図2に示すように、PMの個数は、(a)面積144φ(144cm)の三次元網目状構造体を1枚設置した場合と、(b)面積100φ(100cm)の三次元網目状構造体を1枚設置した場合と、(c)面積36φ(36cm)の三次元網目状構造体を等間隔で4枚並列に設置した場合(4枚の合計面積144cm)に分けて測定した。測定結果を図3に示す。
【0013】
図3に示すように、最も面積が大きい144φの三次元網目状構造体は、この三次元網目状構造体の下流側で測定されたPMの個数が最も少なく、PMの粒径の大小に係わらず、PMの捕集率が高かった。
一方、面積が100φ、36φの三次元網目状構造体は、これらの三次元網目状構造体の下流側で測定されたPMの個数が144φの三次元網目状構造体の下流側で測定されたPMの個数よりも多く、PMの捕集率が低かった。なお、図3中、INは、三次元網目状構造体の上流側で測定された排ガス中のPMの個数を示している。
【0014】
特に36φの三次元網目状構造体を4枚並列に配置した下流側で測定されたPMの粒径別個数分布は、PMの粒径が100nm以上の大きいものの個数が多かった。
図2に示すように、36φの三次元網目状構造体を4枚並列に配置した場合は、排ガスが下流側に流通するに従って、三次元網目状構造体中に捕集されたPM5が、ブラウン運動によりPM5同士が互いに接触し、PM5の粒子が大きく増殖して、三次元網目状構造体から排出されるために、大きな粒径のPM5の個数が増大したと推測される。
【0015】
図2及び図3に示す結果から、排ガス経路の上流側から下流側まで略均一な流量又は略均一な圧力で排ガスを三次元網目状構造体に流通させることができれば、PMの捕集効率及び燃焼効率を向上させることが可能であることが分かった。
【0016】
図4は、排ガス経路内に従来のDPFを設置した状態の概略構成を示す説明図である。
図4に示すように、排ガス経路7内において、排ガスと接触する三次元網目状構造体の面積を可能な限り大面積にするためには、排ガスの流通方向に沿って、三次元網目状構造体を筒状に形成することが好ましい。
図4に、三次元網目状構造体8及び支持体9が筒体であり、三次元網目状構造体8の内部に、透孔を有する支持体9を同軸関係で配置したDPF10を示す。
なお、図4のDPF10は、三次元網目状構造体8の一部を破断して、この三次元網目状構造体8の内部に配置した支持体9の一部を示している。
【0017】
図4中、矢印で示すように、排ガスは、三次元網目状構造体8と支持体9を流通して、DPF10の内部(支持体9の内部)に流入し、DPF10と連通する排出口11から排出される(図4中、矢印は排ガスの流通方向及び流量を模式的に示す)。
【0018】
しかし、DPF10を流通する排ガスは、排ガス経路7の上流側(in)と下流側(out)で流量及び圧力が異なる。
図5は、排ガス経路7の上流側(in)から下流側(out)にかけて、図4に示すDPF10を流通する排ガスの流量を示すグラフである。
図5において、DPF10の下流側端部から(A)2cm、(B)5cm、(C)10cm、(D)15cm、(E)20cm、(F)25cmの位置を流通する排ガスの流量を風量測定装置(日吉電気製作社製)により測定した。
【0019】
図4及び図5に示すように、排ガス経路7の上流側(in)では、DPF10を流通する排ガスの流量が小さく、下流側(out)に向かうに従って排ガスの流量が大きくなる。
DPF10の上流側(in)では、排ガス中のPMを捕集し易く、三次元網目状構造体8中に多量のPMが捕集されることによって圧力損失が大きくなり、排ガスの流量が小さくなると推測する。
一方、DPF10の下流側(out)では、三次元網目状構造体8中に捕集されるPMの量が少ないので圧力損失は小さくなり、排ガスの流量が大きくなると推測する。
このように、排ガス経路7内に配置されたDPF10を流通する排ガスの流量が不均一であると、DPF10を構成する三次元網目状構造体8に、略均一に分散してPMを捕集することができず、三次元網目状構造体8に担持された触媒とPMとの接触率が小さくなり、PMの燃焼効率が低下する。
【0020】
次に、本発明のDPFの好ましい実施形態の第1の例を図6に基づき説明する。図6中、矢印は排ガスの流通方向及び流量を模式的に示す。図6は、三次元網目状構造体13の一部を破断して、内部に配置した支持体14の一部を示している。
【0021】
図6に示すように、本例のDPF12は、筒体である三次元網目状構造体13と支持体14とを備え、三次元網目状構造体13の内部に支持体14を同軸関係で配置している。また、本例のDPF12は、三次元網目状構造体13及び/又は支持体14が、排ガス経路15の下流側の排出口16に向かって圧力損失を大きくする構成とした。
図6においては、排ガス経路15の排出口16(下流側)に向けて、支持体14の表面積を増加させた例を示している。
本例においては、支持体に形成する透孔の面積を排ガス経路の下流側に向けて減少させることによって、上流側に配置された支持体14aの表面積に対して、下流側に配置された支持体14bの表面積を増加させている。
【0022】
図6に示すように、本例のDPF12は、可能な限り大面積で排ガスと接触するように、筒状の三次元網目状構造体13及び支持体14を備えている。
更に、本例のDPF12は、排ガス経路15の下流側に向かって圧力損失を大きくする構成としたため、上流側と下流側でDPF12を流通する排ガスの流量及び/又は圧力を略均一にすることができる。
排ガスの経路の下流側に向かって、圧力損失を大きくする構成は、本例に限らず、例えば、排ガス経路の下流側に向かって三次元網目状構造体13の空隙率を減少させるなどの構成が挙げられる。
【0023】
以下、DPFを構成する三次元網目状構造体及び/又は支持体の好ましい実施形態について説明する。
本発明のDPFの好ましい実施形態の第2の例として、排ガス経路の下流側に向けて三次元網目状構造体の空隙率を減少させたDPFが挙げられる。
本明細書において、排ガス経路の下流側とは、排ガス経路に配置されるDPFの長手方向の半分を境として、一方の側を下流側とし、他方の側を上流側とする。
本例において、DPFを構成する筒体の三次元網目状構造体は、一方の側の空隙率を大きく、他方の側の空隙率を小さく形成し、空隙率の大きい側を排ガス経路の上流側(排ガスの流入口に近い側)に配置する。
三次元網目状構造体は、DPFの長手方向の半分を境として、一方の側と他方の側で2段階で空隙率を減少させる構成に限らず、下流側に向けて多段階に空隙率を減少させる構成としてもよく、下流側に向けて連続して徐々に空隙率を減少させる構成にしてもよい。
【0024】
三次元網目状構造体の上流側(一方の側)の空隙率は、好ましくは95〜70%であり、より好ましくは85〜70%である。
排ガス経路の上流側(in)に配置する三次元網目状構造体の空隙率が95%を超えると、空隙率が大きすぎてPMを効率よく捕集することができにくくなり、三次元網目状構造体に捕集されたPM同士が接触して大きな粒径のPMが排出され易くなる。
一方、上流側(in)に配置する三次元網目状構造体の空隙率が、70%未満であると、空隙率が少なすぎて、排ガス経路の上流側の圧力損失が大きくなり、排ガス経路の上流側から下流側まで略均一な流量の排ガスを流通することが難しくなる。
【0025】
また、三次元網目状構造体13の下流側(他方の側)の空隙率は、好ましくは90〜50%であり、より好ましくは75〜60%である。
排ガス経路の下流側(out)に配置する三次元網目状構造体の空隙率が90%を超えると、上流側の空隙率との差が小さくなり、圧力損失が小さいので、下流側に向けて流量が多くなる排ガスを、上流側から下流側まで略均一なる流量で流通させることが難しくなる。
一方、下流側(out)に配置する三次元網目状構造体の空隙率が、50%未満であると、空隙率が小さすぎて圧力損失が大きくなり、排ガス経路の上流側から下流側まで略均一な流量の排ガスを流通させることが難しくなる。
【0026】
三次元網目状構造体は、排ガス経路の上流側に配置する三次元網目状構造体の空隙率を100%とした場合に、排ガス経路の下流側に配置する三次元網目状構造体の空隙率の減少率が5〜50%であることが好ましい。
【0027】
三次元網目状構造体の空隙率は、水銀圧入法(測定装置:オートポアIV9510、島津製作所社製、以下、この測定装置を用いて三次元網目状構造体の空隙率を測定した。)により、下記(1)式に基づいて空隙率を算出する。この方法は、内容積が精密に測定されている容器に試料及び水銀を充填し、容器の容積から充填された水銀の容積を除いた値によって空隙率を算出する方法である。
空隙率(%)=圧入された水銀容積(細孔容積)/試料体積×100 ・・・(1)
【0028】
本発明のDPFの好ましい実施形態の第3の例として、例えば、排ガス経路の下流側に配置する三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径が、排ガス経路の上流側に配置する三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径よりも小さいものを用いることができる。
【0029】
排ガス経路の上流側に配置する、三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径は、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜30μm、更に好ましくは15〜30μmである。
排ガス経路の上流側に配置する、三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径が、5μm未満であると、空隙率が減少し圧力損失が大きくなり、30μmを超えると、空隙率が大きく成りすぎて、PMの捕集効率が低下する。
【0030】
排ガス経路の下流側に配置する、三元網目状構造体を構成する繊維の平均直径は、好ましくは3〜15μm、より好ましくは3〜10μmである。
排ガス経路の下流側に配置する、三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径が、3μm未満であると、空隙率が減少し圧力損失が大きくなり、10μmを超えると、下流側の空隙率が大きくなりすぎて、上流側から下流側に亘って略均一な流量、圧力損失で排ガスを流通させることが難しくなる。
【0031】
排ガス経路の上流側と下流側では、三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径の差が2〜15μmであることが好ましい。
【0032】
本発明のDPFの好ましい実施形態の第4の例として、三次元網目状構造体が、ジグザグ状の複数のプリーツを有するものであってもよい。三次元網目状構造体のプリーツ(折り襞)は等間隔で形成されていることが好ましい。
図7は、プリーツを有する三次元網目状構造体17と支持体18とを備えたDPF19の概略構成を示す斜視図である。
【0033】
図7に示すDPF19は、三次元網目状構造体18の構成として、上流側(in)に配置する、三次元網目状構造体17aを構成する繊維に平均直径の大きいものを用い、下流側(out)に配置する、三次元網目上構造体17bを構成する繊維に平均直径の小さいものを用いた例である。
上流側に配置する三次元網目状構造体17aを構成する繊維の平均直径が大きく、下流側に配置する三次元網目状構造体17bを構成する繊維の平均直径を小さくすることで、三次元網目状構造体18を、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成とした。この構成により、筒体の三次元網目状構造体18の上流側から下流側まで、略均一な流量の排ガスを流通させることができる。
【0034】
本発明のDPFの好ましい実施形態の第5の例として、プリーツを有する三次元網目状構造体のプリーツの折り角度を排ガス経路の下流側に向けて段階的又は連続的に小さくしてもよい。
図8は、三次元網目状構造体のプリーツの折り角度を下流側に向けて段階的に小さくした三次元網目状構造体20と支持体21を備えたDPF22の概略構成を示す斜視図である。
【0035】
図8に示すDPF22のように、上流側(in)に配置する三次元網目状構造体20aのプリーツの折り角度を大きく、下流側(out)に配置する三次元網目状構造体20bのプリーツの折り角度を小さくすることで、三次元網目状構造体20を、下流側に向けて圧力損失を大きくする構成とした。この構成により、筒体の三次元網目状構造体20の上流側から下流側まで、略均一な流量の排ガスを流通させることができる。
図8に示す例においては、三次元網目状構造体20のプリーツの折り角度を、上流側と下流側の2段階でプリーツの折り角度を小さくしているが、本例に限らず、上流側から下流側まで多段階にプリーツの折り角度を変化させてもよく、下流側に向けて徐々に折り角度を小さくするように連続的に折り角度を変化させてもよい。
【0036】
図9は、上流側(in)に配置する三次元網目状構造体20aの端面を示す。
上流側に配置する三次元網目状構造体20aのプリーツの折り角度θa、θa’は、100度以下であることが好ましい。プリーツの折り角度が100度を超えると、プリーツを成形しにくくなり、プリーツを成形した効果が発揮され難くなる。
【0037】
図10は、下流側(out)に配置する三次元網目状構造体20bの端面を示す。
下流側に配置する三次元網目状構造体20bのプリーツの折り角度θb,θb’は、30度以下であることが好ましい。プリーツの折り角度が30度を超えると、排ガスと接触する面積が大きくなりすぎて、上流側から下流側に亘って略均一な流量、圧力損失で排ガスを流通させることが難しくなる。
【0038】
本発明のDPFの好ましい実施形態の第6〜8の例として、支持体の表面積を、排ガス経路の下流側に向けて増加させた構成としてもよい。
支持体の表面積を増加させるためには、例えば、支持体に形成する透孔の面積を下流側に向けて減少させた構成とすることが挙げられる。
図11〜13は、下流側に向けて透孔の面積を減少させた支持体23と、プリーツを有する三次元網目状構造体24とを備えたDPF25の概略構成を示す説明図である。図11〜13は、三次元網目状構造体24の一部を破断し、内部に配置した支持体23の一部を示している。図11〜13において、同様の部材には、同一の符号を付した。
【0039】
図11は、上流側に配置する支持体23の透孔23aに対して、下流側に配置する支持体23の透孔23bの個数を減らすことによって、透孔23bの面積を減少させた例を示す。
図12は、上流側に配置する支持体23の透孔23aに対して、下流側に配置する支持体23の透孔23cの孔直径を小さくすることによって、透孔23cの面積を減少させた例を示す。
また、図13は、上流側に配置する支持体23の透孔23aの孔形状(例えば円形)と、下流側に配置する支持体23の透孔23dの孔形状(例えば四角形)を変えることによって、透孔23dの面積を減少させた例を示す。
【0040】
本明細書において、下流側の透孔の面積とは、排ガス経路に配置される支持体の長手方向の半分を境として、一方の側に形成された個々の透孔の合計面積をいう。
支持体は、一方の側と他方の側で透孔の面積が異なるように2段階で透孔の面積を変化させる場合に限らず、多段階に透孔の面積を減少させるようにしてもよく、連続して透孔の面積を除々に減少させるように構成してもよい。
【0041】
排ガス経路の上流側に配置する支持体の透孔の面積に対して、排ガス経路の下流側に配置する支持体の透孔の面積の減少率が30%以下であることが好ましい。
排ガス経路に配置するDPFの支持体の長手方向の半分を境として、一方の側(上流側)に形成された個々の透孔の合計面積を100%とした場合に、他方の側(下流側)に形成された個々の透孔の合計面積が70%以上であり、他方の側(下流側)に配置された支持体の透孔の面積の減少率が30%以下であることが好ましい。
排ガス経路の下流側に配置する、支持体の透孔の面積の減少率が30%を超えると、下流側に配置する支持体と排ガスとの接触面積が大きくなり、上流側から下流側まで、略均一な流量の排ガスを流通させることが難しくなる。
【0042】
本発明のDPFの好ましい実施形態の第9の例として、排ガス経路を流通する排ガスの流通方向に直交する、上記三次元網目構造体及び支持体の断面積を、排ガス経路の下流側に向けて小さくしてもよい。
図14は、排ガス経路の下流側に向けて断面積を小さくした支持体26と、排ガス経路の下流側に向けて断面積を小さくした三次元網目状構造体27とを備えたDPF28の概略構成を示す説明図である。図14は、三次元網目状構造体27の一部を破断し、内部に配置した支持体26の一部を示す。
支持体26及び三次元網目状構造体27の排ガスの流通方向に直交する断面積を排ガス経路の下流側に向けて小さくすることによって、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくすることができ、上流側から下流側にかけて略均一な流量で排ガスをDPFに流通させることができる。
【0043】
DPFを構成する三次元網目状構造体は、無機繊維を含むものである。
無機繊維としては、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、又はアルミナシリカ繊維、及びこれらを任意に組み合わせたものを用いることが好ましく、任意に組み合わせたものとしては、これらの混合物や複合化物などが挙げられる。更に、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含むいわゆるガラス繊維を用いてもよい。
無機繊維としては、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維等のアルミニウムを含むメタル繊維であることがより好ましい。
【0044】
アルミニウムを含むメタル繊維は、表面部にアルミニウムを含有し、且つ表面に凹部及び/又は凸部を複数有し、メタル繊維の表面に、この凹部及び/又は凸部によって構成される鱗状模様を有するものであることが好ましい。このメタル繊維は、アルミニウムを含むメタル繊維をアルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤に浸漬しつつ、超音波処理又はマイクロ処理を行うことによって製造することができる。
凹部及び/又は凸部によって構成される鱗状模様を有するメタル繊維は、凹部及び/又は凸部の円ないし楕円相当の長径が100〜500nmのものであることが好ましい。
凹部及び/又は凸部によって構成される鱗状模様を有するメタル繊維は、触媒層形成用のスラリーとの密着性が向上し、更に、繊維表面に形成された触媒層との密着性が向上する。
【0045】
三次元網目状構造体を構成する無機繊維は、本発明のDPFを構成する三次元網目状構造体の効果を妨げない限り、特に限定されないが、好ましくは繊維の平均直径が3〜30μmであり、長さが0.1〜10mmである。なお、三次元網目状構造体中には、長繊維と短繊維の両方を含んでいてもよい。
【0046】
DPFを構成する支持体としては、三次元網目状構造体を下流側から支持できる形態のものであれば特に限定されないが、例えば厚さ0.5〜5.0mmのアルミ製、ステンレス製、アルミニウム成分を含む鋼材等から成るのパンチングメタル板を用いることができる。
中でも、アルミニウム成分を含む鋼材は、触媒層形成用のスラリーとの密着性が良好であり、支持体に形成された触媒層との密着性が良好であるため、支持体を構成する材料として好適に用いることができる。
支持体に形成する透孔は、円形、楕円形、又は多角形、及びこれらを任意に組み合わせた形状としてもよい。
【0047】
三次元網目状構造体に担持する触媒の成分としては、例えば白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属や、セリウムやジルコニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を含んだ助触媒として機能し得る酸化物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を参考例、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
(参考例)
先ず、略均一な排ガスが流通する三次元網目状構造体の面積の違いによるPMの酸化速度及び圧力損失の変化を測定した。
図15に示すように、排ガスの流通方向に直交するように、(a)面積144φ(144cm)の三次元網目状構造体を1枚設置した場合と、(b)面積100φ(100cm)の三次元網目状構造体を1枚設置した場合と、(c)面積36φ(36cm)の三次元網目状構造体を等間隔で4枚並列に設置した場合(4枚の合計面積144cm)に分けて測定した
各三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維の平均直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、水銀圧入法により測定した空隙率が70%であった。この三次元網目状構造体を構成するメタル繊維の表面に、触媒として
セリウム(Ce)を担持させた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
各三次元網目状構造体に、流量1300L/分で排ガスを流通させて、各三次元網目状構造体に捕集されたPMの酸化速度を圧力損失の計測方法により、デジタルプレッシャーゲージ(TOUKYO KOKUKEIKI社製)を用いて計測した。また、同様に三次元網目状構造体を流通した排ガスの圧力損失を計測した。結果を図16に示す。
【0050】
図16に示すとおり、略均一な流量の排ガス流通する面積が最も大きい144φの三次元網目状構造体は、最もPM酸化速度が速く、圧力損失も小さかった。
一方、面積が100φ、36φのPM酸化速度は遅く、圧力損失も大きかった。
特に、36φの三次元網目状構造体を4枚並列に配置したものはPM酸化速度も遅く、圧力損失も大きくなった。
この結果から、上流側から下流側まで略均一な流量で排ガスが三次元網目状構造体を流通すれば、PM酸化速度(燃焼効率)が大きくなり、DPF全体を流通する排ガスの圧力損失も小さくなることが確認できた。
【0051】
(実施例1)
図6と同様のDPFを用いて、DPFを流通する排ガスの流量を測定した。本例のDPF12は、筒体である三次元網目状構造体13と支持体14とを備え、三次元網目状構造体13の内部に支持体14を同軸関係で配置し、排ガス経路15の下流側(排出口16)に向かって圧力損失を大きくする構成とした。具体的には、排ガス経路に配置したDPFの長手方向の半分を境として、排ガス経路15の下流側(排出口)に向けて支持体14の表面積を増加させる構成とした。
支持体14は、厚さ1.5mmのパンチングメタルを用いて、透孔がない場合の支持体の表面積100%とした場合に、支持体の表面積が50%となるように透孔を形成した支持体14aを排ガス経路15の上流側に配置し、支持体の表面積が75%となるように透孔を形成した支持体14bを下流側に配置した。
三次元網目状構造体13は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維の平均直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、水銀圧入法で測定した空隙率が70%であった。この三次元網目状構造体を構成するメタル繊維の表面に、触媒としてCeを担持させた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
本例のDPF12の下流側端部(排出口16)から(A)2cm、(B)5cm、(C)10cm、(D)15cm、(E)20cm、(F)25cmの位置を流通する排ガスの流量を風量測定装置(日吉電気製作所製 DP70C)により測定した。結果を表1及び図17に示す。
【0052】
(比較例1)
図4に示すように、支持体の構成を、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成としていないこと以外は、実施例1と同様のDPFを用いて、実施例1と同様にして、DPFを流通する排ガスの流量を測定した。結果を表1及び図17に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
図17に示すように、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成とした実施例1のDPFは、排ガス経路の上流側から下流側まで略均一の流量の排ガスが流通した。
一方、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成としていない比較例1のDPFは、排ガス流路の下流側(out)の流量が大きく、上流側(in)の流量が小さく、上流側と下流側では、排ガスの流量の差が大きくなった。
この結果から、実施例1のDPFは、排ガス経路内の上流側から下流側まで略均一の流量の排ガスを流通させることができるので、PMの捕集効率及びPM酸化速度(燃焼効率)を向上させることができ、PM低減性能を向上させることができる。
【0055】
(実施例2)
三次元網目状構造体の空隙率を排ガス経路の下流側に向けて減少させたDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例1と同様にして測定した。結果を表2及び図18に示す。
本実施例のDPFは、三次元網目状構造体と支持体が筒体であり、三次元網目状構造体の内部に支持体を同軸関係で配置したものを用いた。
三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維の平均直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、メタル繊維の表面に、触媒としてCeを担持させたものを用いた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
上流側に配置する三次元網目状構造体は、水銀圧入法で測定した空隙率が90%であり、下流側に配置する三次元網目状構造体は、同法で測定した空隙率が50%であった。上流側に配置する三次元網目状構造体の空隙率に対して、下流側に配置する三次元網目状構造体の空隙率の減少率は40%であった。
支持体は、直径5〜10mmの透孔が等間隔で形成されている、厚さ1.5mmのアルミニウム成分を含む鋼材から成るパンチングメタルを用いた。
【0056】
(比較例2)
排ガス経路の下流側に向かって三次元網目状構造体の空隙率を減少させた構成としていないこと以外は、実施例2と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例2と同様にして測定した。結果を表2及び図18に示す。
本比較例の三次元網目状構造体は、水銀圧入法により測定した空隙率が90%である。
【0057】
【表2】

【0058】
図18に示すように、排ガス経路の下流側に向かって空隙率を減少させた実施例2のDPFは、排ガス経路の下流側の流量がやや大きいものの、排ガス経路の上流側から下流側に亘って排ガスの流量が略均一になった。
一方、上流側から下流側まで空隙率が均一である比較例2のDPFは、上流側と下流側では、排ガスの流量の差が大きくなった。
【0059】
(実施例3)
図7と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例1と同様にして測定した。結果を表3及び図19に示す。
三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有するアルミニウムを含むメタル繊維を含み、このメタル繊維の表面に触媒としてCeを担持させたものを用いた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
上流側に配置する三次元網目状構造体を構成する、メタル繊維の平均直径は30μmであり、下流側に配置する三次元網目状構造体を構成する、メタル繊維の平均直径は15μmであった。
支持体は、直径5〜10mmの透孔が等間隔で形成されている、厚さ1.5mmのアルミニウム成分を含む鋼材から成るパンチングメタルを用いた。
【0060】
(比較例3)
繊維直径が30μmのメタル繊維により構成された三次元網目状構造体を用いたこと以外は、実施例3と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例3と同様にして測定した。結果を表3及び図19に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
図19に示すように、排ガス経路の下流側に配置した三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径が、排ガス経路の上流側に配置した上記三次元網目状構造体を構成する繊維の平均直径よりも小さい実施例3のDPFは、排ガス経路の下流側の流量がやや大きいものの、排ガス経路の上流側から下流側まで略均一な流量の排ガスが流通した。
一方、上流側から下流側まで同一の平均直径を有する繊維で構成された三次元網目状構造体を備えた比較例3のDPFは、上流側と下流側では、排ガスの流量の差が大きくなった。
【0063】
(実施例4)
図11と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例1と同様にして測定した。結果を表4及び図20に示す。
三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維の平均直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、このメタル繊維の表面に触媒としてCeを担持させたものを用いた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
三次元網目状構造体の水銀圧入法により測定した空隙率は70%であった。
支持体は、直径5〜10mmの透孔が等間隔で形成されている、厚さ1.5mmのアルミニウム成分を含む鋼材から成るパンチングメタルを用いた。
この支持体は、排ガス経路の上流側に配置する支持体の表面積70cmに対して、排ガス経路の下流側に配置する支持体の表面積が100cmであった。
また、この支持体は、排ガス経路の上流側に配置する支持体に形成された個々の透孔の合計面積100%に対して、排ガス経路の下流側に配置する支持体に形成された個々の透孔の合計面積が70%であり、排ガス経路の下流側に配置した支持体の透孔の面積の減少率は30%であった。
【0064】
(比較例4)
排ガス経路の下流側に向かって支持体の透孔の面積を減少させた構成としていないこと以外は、実施例4と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例2と同様にして測定した。結果を表4及び図20に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
図20に示すように、排ガス経路の下流側に向けて支持体の透孔の面積を減少させた実施例4のDPFは、排ガス経路の下流側の流量がやや大きいものの、上流側から下流側までDPFを流通する排ガスの流量が略均一になった。
一方、上流側から下流側まで空隙率が均一である比較例4のDPFは、上流側と下流側では、排ガスの流量の差が大きくなった。
【0067】
(実施例5)
図13と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例1と同様にして測定した。結果を表5及び図21に示す。
三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維の平均直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、このメタル繊維の表面に触媒としてCeを担持させたものを用いた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
支持体は、直径5〜10mmの透孔が等間隔で形成されている、厚さ1.5mmのアルミニウム成分を含む鋼材から成るパンチングメタルを用いた。
この支持体は、排ガス経路の上流側に配置する支持体の透孔の孔形状を円形とし、排ガス経路の下流側に配置する支持体の透孔の孔形状四角形とした。
また、この支持体は、排ガス経路の上流側に配置する支持体の表面積85cmに対して、排ガス経路の下流側に配置する支持体の表面積100cmであった。
また、この支持体は、排ガス経路の上流側に配置する支持体に形成された個々の透孔の合計面積100%に対して、排ガス経路の下流側に配置する支持体に形成された個々の透孔の合計面積が85%であり、排ガス経路の下流側に配置した支持体の透孔の面積の減少率が15%であった。
【0068】
(比較例5)
排ガス経路の上流側と下流側で同一直径の円形の透孔を有する支持体を用いたこと以外は、実施例5と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例5と同様にして測定した。結果を表5及び図21に示す。
【0069】
【表5】

【0070】
図21に示すように、排ガス経路の下流側に向かって支持体の透孔の形状を変化させた実施例5のDPFは、上流側と下流側で排ガス流量の差が大きくなり、この差が比較例5のDPFとあまり変わらなかった。
【0071】
(実施例6)
図8と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例1と同様にして測定した。結果を表6及び図22に示す。
三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、このメタル繊維の表面に触媒としてCeを担持させたものを用いた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
この三次元網目状構造体の水銀圧入法により測定された空隙率は70%であった。
この三次元網目状構造体は、上流側に配置する三次元網目状構造体のプリーツの折り角度が100度であり、下流側に配置する三次元網目状構造体のプリーツの折り角度が30度であった。
支持体は、直径5〜10mmの透孔が等間隔で形成されている、厚さ1.5mmのアルミニウム成分を含む鋼材から成るパンチングメタルを用いた。
【0072】
(比較例6)
排ガス経路の上流側と下流側で、プリーツの折り角度が同一の100度の三次元網目状構造体を用いたこと以外は、実施例6と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例6と同様にして測定した。結果を表6及び図22に示す。
【0073】
【表6】

【0074】
図22に示すように、排ガス経路の下流側に配置した三次元網目状構造体のプリーツの折り角度が、排ガス経路の上流側に配置した三次元網目状構造体のプリーツの折り角度よりも小さい実施例6のDPFは、上流側から下流側まで略均一な流量の排ガスが流通した。
一方、上流側から下流側までプリーツの折り角度が同一である三次元網目状構造体を備えた比較例6のDPFは、上流側と下流側では、排ガスの流量の差が大きくなった。
【0075】
(実施例7)
図14と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例1と同様にして測定した。結果を表7及び図23に示す。
三次元網目状構造体は、表面に鱗状模様の凹部及び/又は凸部を有し、繊維直径が30μmのアルミニウムを含むメタル繊維を含み、このメタル繊維の表面に触媒としてCeを担持させたものを用いた。Ceの担持量は、触媒を担持させた三次元網目状構造体の全質量100質量%に対して、5〜20質量%であった。
この三次元網目状構造体の水銀圧入法により測定された空隙率は70%であった。
支持体は、直径5〜10mmの透孔が等間隔で形成されている、厚さ1.5mmのアルミニウム成分を含む鋼材から成るパンチングメタルを用いた。
この支持体は、排ガス流路を流通する排ガスの流通方向に直交する、支持体の上流側の断面積が約100cmであり、下流側の断面積が約30cmであった。
この支持体の外部に、同軸関係でプリーツを有する三次元網目状構造体を配置した。この三次元網目状構造体は、上流側に配置される三次元網目状構造体の断面積が大きく、下流側に配置される三次元網目状構造体の断面積が小さいものを用いた。
【0076】
(比較例7)
排ガス経路の上流側と下流側で断面積が同一の支持体と三次元網目状構造体を用いたこと以外は、実施例7と同様のDPFを用いて、このDPFを流通する排ガスの流量を実施例7と同様にして測定した。結果を表7及び図23に示す。
なお、本比較例の支持体の断面積は約100cmであり、この支持体の外部に、同軸関係でプリーツを有する三次元網目状構造体を配置した。この三次元網目状構造体は、支持体の断面積よりもやや大きい断面積を有するものを用いた。
【0077】
【表7】

【0078】
図23に示すように、排ガス経路の下流側に向かって、排ガスの流通方向に直交する断面積を小さくした実施例7のDPFは、排ガス経路の上流側から下流側まで略均一の流量の排ガスが流通した。
一方、上流側から下流側まで、排ガスの流通方向に直交する断面積が同一である比較例7のDPFは、上流側と下流側では、排ガスの流量の差が大きくなった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来のセラミックス系の材料から成形されたフィルタの一例と、本発明のDPFを構成する三次元網状構造体(b)の概略構成の一例を示す説明図である。
【図2】PM個数の測定方法を示す説明図である。
【図3】PMの個数を示すグラフである。
【図4】排ガス経路内に従来例のDPFを設置した状態を示す説明図である。
【図5】図4に示すDPFを流通する排ガスの流量を示すグラフである。
【図6】本発明のDPFの好ましい実施形態の第1の例を示す説明図である。
【図7】本発明のDPFの好ましい実施形態の第4の例を示す斜視図である。
【図8】本発明のDPFの好ましい実施形態の第5の例を示す斜視図である。
【図9】図8に示すDPFの上流側の端面図である。
【図10】図8に示すDPFの下流側の端面図である。
【図11】本発明のDPFの好ましい実施形態の第6の例を示す説明図である。
【図12】本発明のDPFの好ましい実施形態の第7の例を示す説明図である。
【図13】本発明のDPFの好ましい実施形態の第8の例を示す説明図である。
【図14】本発明のDPFの好ましい実施形態の第9の例を示す説明図である。
【図15】PM酸化速度及び圧力損失の測定方法を示す説明図である。
【図16】PM酸化速度及び圧力損失を示すグラフである。
【図17】実施例1及び比較例1のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【図18】実施例2及び比較例2のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【図19】実施例3及び比較例3のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【図20】実施例4及び比較例4のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【図21】実施例5及び比較例5のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【図22】実施例6及び比較例6のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【図23】実施例7及び比較例7のDPFを流通する排ガス流量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
1 フィルタ
2 セラミックス系の担体
3 孔部
4 触媒
5 PM
6 三次元網目状構造体
6a 触媒
7 排ガス経路
8 三次元網目状構造体
9 支持体
10 DPF
11 排出口
12 DPF
13 三次元網目状構造体
14 支持体
14a 上流側に配置する支持体
14b 下流側に配置する支持体
15 排ガス経路
16 排出口
17,20 三次元網目状構造体
17a,20a 上流側に配置する三次元網目状構造体
17b,20b 下流側に配置する三次元網目状構造体
18,21 支持体
19,22 DPF
23 支持体
23a 上流側に配置する支持体の透孔
23b,23c,23d 下流側に配置する支持体の透孔
24 三次元網目状構造体
25 DPF
26 支持体
27 三次元網目状構造体
28 DPF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を含む三次元網目状構造体と、透孔を有する支持体とを備え、上記三次元網目状構造体及び/又は支持体の構成を、排ガス経路の下流側に向けて圧力損失を大きくする構成としたことを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
上記三次元網目状構造体の空隙率を排ガス経路の下流側に向けて減少させたことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
上記支持体の表面積を排ガス経路の下流側に向けて増加させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
上記三次元網目状構造体及び支持体が筒体であり、三次元網目状構造体の内部に支持体を配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
排ガス経路の下流側に配置する上記三次元網目状構造体を構成する繊維の直径が、排ガス経路の上流側に配置する上記三次元網目状構造体を構成する繊維の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
排ガス経路の上流側に配置する上記三次元網目状構造体の空隙率に対して、排ガス経路の下流側に配置する上記三次元網目状構造体の空隙率の減少率が5〜50%であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項7】
上記三次元網目状構造体が複数のプリーツを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項8】
上記プリーツの折り角度を排ガス経路の下流側に向けて段階的又は連続的に小さくしたことを特徴とする請求項7に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項9】
排ガス経路の上流側に配置する上記三次元網目状構造体のプリーツの折り角度が100度以下であり、排ガス経路の下流側に配置する上記三次元網目状構造体のプリーツの折り角度が30度以下であることを特徴とする請求項8に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項10】
上記支持体の透孔の面積を排ガス経路の下流側に向けて減少させたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項11】
排ガス経路の上流側に配置する上記支持体の透孔の面積に対して、排ガス経路の下流側に配置する上記支持体の透孔の面積の減少率が30%以下であることを特徴とする請求項10に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項12】
上記支持体の各透孔の孔形状が、楕円形、円形又は多角形であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項13】
排ガス経路を流通する排ガスの流通方向に直交する、上記三次元網目状構造体及び支持体の断面積を、排ガス経路の下流側に向けて小さくしたことを特徴とする請求項4〜12のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項14】
上記三次元網目状構造体に触媒を担持したことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項15】
上記無機繊維が、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維及びアルミナシリカ繊維から成る群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つの項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2009−275541(P2009−275541A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125921(P2008−125921)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】