説明

デジタイザのためのジェスチャ検出

身体部分から得られるマルチタッチ感応デジタイザへの入力を、ユーザ対話に無効な入力およびユーザ対話に有効な入力として分類するための方法であって、デジタイザセンサへの入力の複数の離散的領域を識別するステップと、該領域のうちの少なくとも2つの間の空間的関係を決定するステップと、少なくとも2つの領域のうちの1つを、少なくとも2つの領域間で決定された空間的関係に基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2007年10月11日に出願した米国特許仮出願第60/960714号(参照として本明細書中にその全体を援用される)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、マルチタッチ・デジタイザ・システムに関し、さらに詳しくは、マルチタッチ・デジタイザ・システムにおける指先入力検出に関する。
【背景技術】
【0003】
タッチ技術は、種々の製品のための入力装置として一般的に使用される。様々な種類のタッチ装置の使用は、パーソナルデジタルアシスト(PDA)、タブレットPC、およびワイヤレスフラットパネルディスプレイ(FPD)スクリーンディスプレイのような新しい携帯装置の出現のため、急増している。これらの新しい装置は通常、それらの移動性を制限するとみなされる標準キーボード、マウス、または類似の入力装置に接続されない。代わりに、何らかの種類のタッチ感応デジタイザを使用する傾向がある。スタイラスおよび/または指先を、ユーザタッチとして使用することができる。
【0004】
両方ともN−trig Ltd.に譲渡され、両方の内容を参照によって本書に援用する、「Physical Object Location Apparatus and Method and a Platform using the same」と称する米国特許第6690156号および「Transparent Digitizer」と称する米国特許第7292229号は、FPD上の1つ以上の物理オブジェクトの位置を決定する電磁的方法、および一般的にアクティブディスプレイスクリーンで電子装置に組み込むことのできる透明なデジタイザを記載している。デジタイザセンサは、電気信号を検知する垂直および水平方向の導電線のマトリクスを含む。デジタイザ上の特定の位置に物理オブジェクトを配置すると、信号が誘起され、その起点位置を検出することができる。
【0005】
N‐Trig Ltd.に譲渡された「Touch Detection for a Digitizer」と称する米国特許第7372455号は、スタイラスと、指または同様の身体部分によるデジタイザセンサのタッチとの両方を検出するための検出器を記載しており、その内容を参照によって本明細書に援用する。検出器は典型的には、格子状の検知導電線を持つデジタイザセンサ、予め定められた周波数の振動電気エネルギ源、および振動電気エネルギが印加されたときに、タッチと解釈される検知導電線への静電容量影響を検出するための検出回路を含む。検出器は、複数の指タッチを同時に検出することができる。
【0006】
N‐Trig Ltd.に譲渡された「Apparatus for Object Information Detection and Methods of Using Same」と称する米国特許出願公開第20070062852号は、容量結合に感応するデジタイザセンサ、および該センサに信号が入力されたときにセンサと容量結合を形成するように適応された物体を記載しており、その内容を参照によって本明細書に援用する。センサに関連付けられた検出器は、センサの出力信号から物体の物体情報コードを検出する。通常、物体情報コードは物体の導電領域のパターンによって提供される。
【0007】
N‐Trig Ltd.に譲渡された「Fingertip Touch Recognition for a Digitizer」と称する米国特許出願公開第20070285404号は、デジタイザセンサの導電線から得た信号を指先タッチのパターンの予め定められた指先特性と比較することによって、デジタイザへの指先タッチ入力を検証するための方法を記載しており、その内容を参照によって本明細書に援用する。
【0008】
「Multipoint Touch Screen」と称する米国特許出願公開第20060097991号は、タッチパネルの平面内の相異なる場所で同時に発生する複数のタッチまたはニアタッチを検出し、かつ複数のタッチの各々について、タッチパネルの平面上のタッチの場所を表す相異なる信号を生成するように構成された、透明な静電容量検知媒体を有するタッチパネルを記載しており、その内容を参照によって本明細書に援用する。
【0009】
「Method and apparatus for integrating manual input」と称する欧州特許公開EP1717684号は、近接性を検知し応従性を持つ可撓性のマルチタッチ表面に手が接近し、触れ、かつその上を摺動するときに、複数の指および掌接触を同時に追跡するための装置および方法を記載しており、その内容を参照によって本明細書に援用する。各近接画像の切出し処理により、各々の区別できる接触に対応する電極の1群を構築し、各群の形状、位置、および表面近接特徴を抽出する。同じ手の接触に対応する連続画像内の群は、個々の接触のタッチダウンおよびリフトオフをも検出する持続経路追跡器によって連結される。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一部の実施形態の態様は、マルチタッチ感応デジタイザ上の指先入力と他の容量性物体、例えば掌、手、腕、指関節、および他の身体部分による入力とを区別するための方法を提供する。本発明の一部の実施形態では、入力はタッチによる入力および/またはホバリングによる入力を含む。
【0011】
本発明の一部の実施形態の態様は、身体部分から得られるマルチタッチ感応デジタイザへの入力を、ユーザ対話に無効な入力およびユーザ対話に有効な入力として分類するための方法であって、デジタイザセンサへの入力の複数の離散的領域を識別するステップと、該領域のうちの少なくとも2つの間の空間的関係を決定するステップと、少なくとも2つの領域のうちの1つを、少なくとも2つの領域間で決定された空間的関係に基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップとを含む方法を提供する。
【0012】
任意選択的に、前記方法は、分類される領域の少なくとも1つの空間特性を決定するステップと、少なくとも2つの領域のうちの1つを、決定された特性に基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップとを含む。
【0013】
任意選択的に、空間特性は、サイズ、形状、およびアスペクト比を含む群から選択される。
【0014】
任意選択的に、空間的関係は、少なくとも2つの領域の間の距離である。
【0015】
任意選択的に、前記方法は、複数の離散的領域の各々のサイズを決定するステップを含む。
【0016】
任意選択的に、少なくとも2つの領域は、所定の面積閾値より低い面積を有する少なくとも1つの小面積領域、および所定の面積閾値より高い面積を有する少なくとも1つの大面積領域を含む。
【0017】
任意選択的に、前記方法は、少なくとも1つの小面積領域の重心を決定するステップと、それを用いて少なくとも2つの領域の間の空間的関係を決定するステップとを含む。
【0018】
任意選択的に、決定される空間的関係性は、少なくとも1つの小面積領域と少なくとも1つの大面積領域との間の近接性を含む。
【0019】
任意選択的に、近接性は、少なくとも1つの小面積領域の周りに定義されるエリア内で決定される。
【0020】
任意選択的に、少なくとも1つの小面積領域は、有効入力または無効入力のいずれかとして分類される。
【0021】
任意選択的に、無効入力領域は、掌または手がデジタイザセンサに触れるか、あるいはその上をホバリングすることから得られる。
【0022】
任意選択的に、有効入力領域は、指先がデジタイザセンサに触れるか、あるいはその上をホバリングすることから得られる。
【0023】
任意選択的に、前記方法は、デジタイザとのユーザ対話に有効な入力領域だけを使用することを含む。
【0024】
任意選択的に、デジタイザセンサは、入力を受信する複数の接合点を形成する、直交する2組の平行な導電線を含む。
【0025】
任意選択的に、デジタイザセンサへの入力は静電容量式タッチ検出法によって検出される。
【0026】
任意選択的に、前記方法は、デジタイザセンサの導電線からの信号振幅のパターンを検出するステップを含む。
【0027】
任意選択的に、前記方法は、信号振幅のパターンから信号振幅の二次元画像を形成するステップを含む。
【0028】
任意選択的に、画像の画素は接合点の各々における信号振幅に対応する。
【0029】
任意選択的に、前記方法は、画像に画像切出しを実行して複数の離散的領域を識別するステップを含む。
【0030】
任意選択的に、領域のサイズは、領域に含まれる接合点の数によって定義される。
【0031】
任意選択的に、領域のサイズは領域を包囲する矩形エリアによって定義され、矩形エリアは、ユーザ入力が検出される各直交軸上の導電線の数によって定義される寸法を有する。
【0032】
任意選択的に、前記方法は、少なくとも2つの領域のうちの1つを、領域内の振幅レベルに基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップを含む。
【0033】
任意選択的に、振幅レベルは、領域との接合点のベースライン振幅と比較される。接合点のベースライン振幅とは、ユーザ入力が無いときのその接合点における振幅である。
【0034】
任意選択的に、前記方法は、少なくとも2つの領域のうちの1つを、該領域がそれらのベースライン振幅より高い振幅を含むことに応答して無効入力領域として分類するステップを含む。
【0035】
本発明の一部の実施形態の態様は、身体部分から得られるマルチタッチ感応デジタイザへの入力を、ユーザ対話に無効な入力として分類するための方法であって、
入力を受信する複数の接合点を形成する直交する2組の平行な導電線を含んで成るデジタイザセンサの導電線からの信号振幅のパターンを検出するステップと、
信号振幅のパターンに基づいて、デジタイザセンサへの入力の少なくとも1つの領域を識別するステップと、
少なくとも1つの領域を、該少なくとも1つの領域が接合点のベースライン振幅より高い接合点の振幅を含むことに応答して、無効入力領域として分類するステップと、
を含む方法を提供する。
【0036】
任意選択的に、接合点のベースライン振幅とは、ユーザ入力が無いときのその接合点における振幅である。
【0037】
任意選択的に、前記方法は、信号振幅のパターンから信号振幅の二次元画像を形成するステップを含む。
【0038】
任意選択的に、画像の画素は接合点の各々における信号振幅に対応する。
【0039】
任意選択的に、前記方法は、画像に画像切出しを実行して少なくとも1つの領域を識別するステップを含む。
【0040】
任意選択的に、デジタイザセンサへの入力は、静電容量式タッチ検出法によって検出される。
【0041】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0042】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0043】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書中に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【0044】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の一部の実施形態に係るデジタイザシステムの例示的簡易ブロック図である。
【0046】
【図2】図2は、本発明の一部の実施形態に係る、指先タッチを検出するための静電容量式タッチ法に基づく指先タッチ検出のためのデジタイザセンサの略図である。
【0047】
【図3】図3は、本発明の一部の実施形態に係るデジタイザセンサに載せた手に応答して検出されたタッチ領域の略図である。
【0048】
【図4】図4は、本発明の一部の実施形態に係る、掌が存在する状態でマルチタッチ・デジタイザ・センサの指先タッチを識別するための方法の例示的フローチャートを示す。
【0049】
【図5】図5は、本発明の一部の実施形態に係るデジタイザセンサで検出されたタッチ領域を識別し、かつ特徴付けるための方法の例示的フローチャートを示す。
【0050】
【図6】図6は、本発明の一部の実施形態に係る、1つ以上の潜在的指先タッチ領域から指先タッチ領域を確実に識別するための方法の例示的フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、マルチタッチ・デジタイザ・システムに関し、さらに詳しくは、マルチタッチ・デジタイザ・システムにおける指先検出に関する。
【0052】
本発明の一部の実施形態の態様は、マルチタッチ・デジタイザ・システム上の指先タッチからの入力と掌タッチの結果生じる入力とを区別するための方法を提供する。一部の例示的実施形態では、掌タッチの結果生じる入力は、実際のタッチ領域ではなく典型的には掌タッチまたは他の大面積タッチ領域を包囲する、アーチファクト領域をも含む。本発明の一部の実施形態では、デジタイザシステムは、接合点としての位置が画定される平行線交差格子を持つデジタイザセンサを含む。しかし、本発明は複数の位置を検出する任意のデジタル化システム、例えば静電容量式または接触式タッチパッドに適用可能であることに留意されたい。本発明者らは、一部のデジタイザでは、掌および/または手がデジタイザセンサに触れかつ/またはその上をホバリングするときに、複数の相異なるタッチ領域が検出されることがあることに気付いた。掌からの複数のタッチ領域の検出は、掌の三次元輪郭および/またはデジタイザセンサ上で傾いている掌の重量分布の結果であるかもしれない。本発明者らは、掌タッチによる検出が大小の領域の組合せを含むことがあり、小領域の中には指先タッチと誤認されるものがあることに気付いた。本発明者らは、典型的に小領域が大領域を包囲することに気付いた。小面積は掌の三次元輪郭によるものであるかもしれず、あるいは大面積タッチの周囲に現れる傾向のあるアーチファクトによるものであるかもしれない。
【0053】
本発明の一部の実施形態では、検出されたタッチ領域が、デジタイザセンサの導電線、導線、または導体のアレイ上で検出された信号振幅のパターンから形成される画像の解析に基づいて、掌タッチまたは指先タッチに対応することを決定するための方法を提供する。本発明の一部の実施形態では、デジタイザセンサ上の複数の離散的タッチ領域を識別するために、画像に画像切出しが実行される。
【0054】
一部の例示的実施形態では、所定の面積未満の広さ、例えば面積を有する識別された領域は、潜在的指先タッチ領域と定義される。一部の例示的実施形態では、16mmから500〜1000mmの間の面積は潜在的指先タッチ領域として識別され、16mm未満の面積は無視される。一部の実施形態では、所定のサイズを超える識別されたタッチ領域は掌タッチ領域として識別される。典型的には、掌タッチ領域はホストコンピュータに転送されない。一部の例示的実施形態では、検出された掌領域をその間近で包囲する面積から検出された入力は、ユーザ対話に使用されず、例えばホストコンピュータに転送されない。一部の例示的実施形態では、サイズは、識別された領域に含まれる画素、例えば導電線接合点の数によって決定される。一部の例示的実施形態では、識別された領域のサイズは、特定の領域に対してユーザ入力が検出される各直交軸上の導電線の数によって画定される矩形により、概算される。
【0055】
本発明者らは、典型的には指先タッチ領域が、より大きい手、掌、または他の身体部分のタッチ領域から遠く離れていることに気付いた。例えばユーザが掌をデジタイザ表面に載せ、その同じ手の人差し指をユーザ対話のために使用する間、大きい掌領域は典型的には、掌クッション領域に、かつ/またはデジタイザとのユーザ対話に使用される人差し指の指先から典型的にはかなり離れたユーザの手首付近に検出される。別の例で、ユーザが片手をデジタイザセンサに載せ、次いでもう一方の手の指をユーザ対話に使用する場合、ユーザは典型的には、載っている手に近接した領域を指差しする前に、デジタイザセンサに載っている手を持ち上げるであろう。
【0056】
本発明の一部の実施形態では、識別された掌タッチ領域から所定の距離内にある潜在的指先タッチ領域、例えば小タッチ領域は、掌タッチの一部として特徴付けられ、デジタイザとのユーザ対話に使用されない。一部の例示的実施形態では、潜在的タッチ領域の重心から所定の距離内、例えば接合点の所定の数に対応する距離内に掌タッチ領域を有する潜在的タッチ領域は、掌タッチ領域の一部とみなされ、指先タッチ領域として認定されない。典型的には、接合点の所定の数は、デジタイザセンサの分解能と相関関係にある。一部の例示的実施形態では、平行な導電線間の距離が4mmの場合、接合点の所定の数は8〜12、例えば10である。一部の例示的実施形態では、重心は、2つの直交軸における検出信号の振幅の加重平均から決定される。
【0057】
指先タッチは典型的には近接かつ/または接触した接合点から電流を排出させるので、指先タッチに応答して検出される信号振幅は典型的にはベースライン振幅より低くなるが、より大きい面積、例えば掌領域のタッチから得られる信号振幅は、振幅がベースライン振幅より高い接合点からの1つ以上の出力を含むことがあることに、本発明者らは気付いた。1つの説明として、線の問合せ中に、信号が手を通して伝達され、幾つかの領域で出力信号を増大させるのかもしれない。したがって、例えばベースライン振幅によって正規化された信号振幅の正規化出力を検査するときに、検出されたタッチ領域で正および負の両方の出力が得られるかもしれない。
【0058】
一部の例示的実施形態では、検査される信号振幅は所定のベースライン振幅と比較され、かつ/または出力の検出された振幅からベースライン振幅を減算することによって、もしくは振幅をベースライン振幅で除算することによって正規化される。ベースライン振幅は本明細書では、ユーザタッチの無い状態で、問合せされた接合点から得られる振幅と定義される。典型的には、ベースライン振幅は、ユーザタッチの無い状態で問合せされた接合点から得られる平均振幅と定義される。典型的には、デジタイザセンサの各接合点に関連付けられるベースライン振幅は較正手順中に決定され、メモリに保存される。
【0059】
一部の例示的実施形態では、検出の領域を指先タッチ領域または掌タッチ領域のいずれかとして分類するために、追加的特性が使用される。一部の例示的実施形態では、複数の状態は、領域の形状、領域における信号振幅、および他の識別されたタッチ領域に対する領域の空間的位置付けを含む。一部の例示的実施形態では、出力が検出されるタッチ領域の短軸内の導電線数に対する長軸内の導電線数の比である形状尺度が決定される。一部の例示的実施形態では、2:1または3:1より大きい形状尺度を有する領域は、潜在的指先タッチ領域として不適格とされる。一部の例示的実施形態では、潜在的指先タッチ領域のアスペクト比が決定され、2:1または3:1より大きいアスペクト比は潜在的指先タッチ領域として不適格とされる。一部の例示的実施形態では、ベースライン信号より高い振幅を有する出力を含む領域は、潜在的指先タッチ領域として不適格とされ、掌タッチからの出力として特徴付けられる。一部の例示的実施形態では、掌タッチ領域の周りに定義されるエリアと重複する領域は、指先タッチ領域として不適格とされ、掌タッチからの出力として特徴付けられる。一部の例示的実施形態では、掌タッチ領域の周りに定義されるエリアは、導電線の直交軸の各々に射影される接合点の数によって画定される領域の寸法に相当する寸法の矩形エリアである。
【0060】
なお、本発明の一部の実施形態はタッチを介するデジタイザセンサへの入力に言及しているが、本明細書に記載する方法は、デジタイザセンサ上のホバリングを介するデジタイザセンサへの入力にも適用することができる。また、本発明の一部の実施形態は掌検出に言及しているが、本明細書に記載する方法は、デジタイザとのユーザ対話に意図されない他の身体部分からの入力の識別にも適用することもできる。
【0061】
ここで、本発明の一部の実施形態に係るデジタイザシステムの例示的簡易ブロック図を示す図1を参照しながら説明する。デジタイザシステム100は、ユーザと装置との間のタッチ入力を可能にする任意のコンピューティング装置、例えばFPDスクリーンを含む例えば携帯および/またはデスクトップおよび/またはテーブルトップコンピューティング装置に適しているかもしれない。そのような装置の例としてタブレットPC、ペン使用可能ラップトップコンピュータ、テーブルトップコンピュータ、PDAまたは任意のハンドヘルド装置、例えばパームパイロットおよび携帯電話または電子ゲームを容易にする他の装置が挙げられる。本発明の一部の実施形態では、デジタイザシステムは、任意選択的に透明であって一般的にFPD上に重ねて置かれる、導電線のパターン化配列を含むセンサ12を含む。一般的に、センサ12は、垂直および水平方向の導電線を含むグリッドベースのセンサである。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、センサ12の周りに配置された1つ以上のPCB30上に回路が設けられる。本発明の一部の実施形態では、PCB30は「L」字形のPCBである。本発明の一部の実施形態では、PCB30上に配置された1つ以上のASIC16は、センサの出力をサンプリングし、処理してデジタル表現にするための回路を含む。デジタル出力信号は、さらなるデジタル処理のためにデジタルユニット20に、例えば同じくPCB30上のデジタルASICユニットに転送される。本発明の一部の実施形態では、デジタルユニット20はASIC16と共にデジタイザシステムのコントローラとして働き、かつ/またはコントローラおよび/もしくはプロセッサの機能を有する。デジタイザセンサからの出力は、オペレーティングシステムまたは任意の現行アプリケーションによって処理するために、インタフェース24を介してホスト22に転送される。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、デジタルユニット20はASIC16と共に、メモリおよび/またはメモリ能力を含む。メモリ能力は揮発性および/または不揮発性メモリ、例えばフラッシュメモリを含むかもしれない。本発明の一部の実施形態では、メモリユニットおよび/またはメモリ能力、例えばフラッシュメモリは、デジタルユニット20とは分離されているがデジタルユニット20と通信するユニットである。
【0064】
本発明の一部の実施形態では、センサ12は、箔またはガラス基板上にパターン形成された、導電性材料、任意選択的にインジウムスズ酸化物(ITO)から作られた導電線のグリッドを含む。導電線および箔は任意選択的に透明であるか、または線の背後の電子ディスプレイを観察するのと実質的に干渉しないように十分に薄い。一般的に、グリッドは、電気的に相互に絶縁された2つの層から作られる。一般的に、層の1つは第1組の等間隔に配置された平行な導電線を含み、他の層は、第1組に直交する第2組の等間隔の平行な導電線を含む。一般的に、平行な導電線は、ASIC16に含まれる増幅器に入力される。任意選択的に、増幅器は差動増幅器である。
【0065】
一般的に、平行な導電線は、任意選択的にFPDの大きさおよび望ましい解像度に応じて約2〜8mm、例えば4mmの間隔で配置される。任意選択的に、グリッド線の間の領域は、導電線の存在を隠すために、(透明)導電線と同様の光学特性を有する非導電性材料で満たされる。任意選択的に、増幅器から遠い方の線の端部は接続されないので、線はループを形成しない。一部の例示的実施形態では、デジタイザセンサはループを形成する導電線から構築される。
【0066】
一般的に、ASIC16はグリッドの種々の導電線の出力に接続され、第1処理段階で受信信号を処理するように機能する。上述の通り、ASIC16は一般的に、センサの信号を増幅するために、増幅器のアレイを含む。加えて、ユーザタッチのために使用されるオブジェクトから得られたおよび/または励起のために使用された周波数範囲に対応しない周波数を除去するために、ASIC16は任意選択的に1つまたはそれ以上のフィルタを含む。任意選択的に、フィルタリングはサンプリングの前に行なわれる。次いで信号はA/Dによってサンプリングされ、任意選択的にデジタルフィルタによってフィルタリングされ、さらなるデジタル処理のためにデジタルASICユニット20に送られる。あるいは、任意選択的なフィルタリングは完全にデジタルまたは完全にアナログである。
【0067】
本発明の一部の実施形態では、デジタルユニット20はサンプリングデータをASIC16から受け取り、サンプリングデータを読み出し、それを処理し、受信して処理された信号からデジタイザセンサに接触するスタイラス44および/またはトークン45および/または指46のような物理的オブジェクト、および/または電子タグの位置を決定かつ/または追跡する。本発明の一部の実施形態では、デジタルユニット20は、スタイラス44および/または指46のような物理的オブジェクトの存在および/または不存在を経時的に決定する。本発明の一部の例示的実施形態では、オブジェクト、例えばスタイラス44、指46、および手のホバリングも、デジタルユニット20によって検出され、処理される。算出された位置および/または追跡情報は、インタフェース24を介してホストコンピュータに送られる。
【0068】
本発明の一部の実施形態では、ホスト22は、ASIC16、デジタルユニット20から得た情報を格納かつ処理するために、少なくともメモリユニットおよび処理ユニットを含む。本発明の一部の実施形態では、メモリおよび処理機能は、ホスト22、デジタルユニット20および/またはASIC16のいずれかの間で分割することができ、あるいはホスト22だけに存在することができ、あるいは/またはホスト22およびデジタルユニット20の少なくとも1つに接続された分離ユニットがあってもよい。本発明の一部の実施形態では、ASIC16によってサンプリングされ、かつ/またはデジタイザユニット20によって算出された統計データおよび/または出力、例えばセンサ12の画像またはパターン化出力を記録するために、1つ以上のテーブルおよび/またはデータベースを格納することができる。一部の例示的実施形態では、サンプリングされた出力信号からの統計データのデータベースを格納することができる。データおよび/または信号値を揮発性および不揮発性メモリに格納することができる。本発明の一部の実施形態では、デジタイザセンサ12の接合点のベースライン振幅値が較正手順中に決定され、メモリに、例えばデジタルユニット20に関連付けられるメモリに格納される。
【0069】
本発明の一部の例示的実施形態では、ホストコンピュータに関連付けられる電子ディスプレイが画像を表示する。任意選択的に、画像は、物体が配置される表面の下および物理的物体または指を検知するセンサの下に位置するディスプレイスクリーンに表示される。本発明の一部の例示的実施形態では、表面はゲーム盤として機能し、物体はゲーム用駒または玩具である。任意選択的に、物体はゲームに参加するプレーヤまたは物体を表す。本発明の一部の実施形態では、物体は手で掴む物体である。他の実施形態では、物体は表面上を自律的に移動し、有線または無線接続を介してコントローラによって制御することができる。本発明の一部の実施形態では、物体の移動は、ホストによってまたはインターネットを介して遠隔的に制御されるロボット装置により制御される。
【0070】
スタイラスの検出および追跡
本発明の一部の実施形態では、デジタルユニット20は、センサ配列およびディスプレイスクリーンを包囲する励振コイル26に提供されるトリガパルスのタイミングおよび送信を生成および制御する。励起コイルは、スタイラス44またはユーザタッチに使用される他の物体内の受動回路を励起させる電界または電磁界の形のトリガパルスを提供して、その後に検出することのできるスタイラスからの応答を生成させる。一部の例示的実施形態では、スタイラスの検出および追跡は含まれず、デジタイザセンサは、指先、身体部分、および導電性物体、例えばトークンの存在を検出する静電容量センサとして機能するだけである。
【0071】
指先の検出および追跡
一部の実施形態では、デジタルユニット20はトリガパルスを生成して、導電線の少なくとも1つに送信する。典型的には、トリガパルスおよび/または信号はアナログパルスおよび/または信号である。本発明の一部の実施形態では、実現されるトリガパルスおよび/または信号は、1つ以上の所定の周波数、例えば18KHzまたは20〜40KHzに制限されるかもしれない。一部の例示的実施形態では、指タッチ検出は、トリガパルスを導電線に送信するときに容易化される。
【0072】
ここで、本発明の一部の実施形態に係る、デジタイザセンサを用いた指先タッチ検出のための容量性接合タッチ方法を概略的に示す図2を参照しながら説明する。センサ12の各接点、例えば接点40で、直交する導電線の間に特定のキャパシタンスが存在する。例示的実施形態では、2次元センサマトリクス12の1つまたはそれ以上の平行な導電線にAC信号60を印加する。信号60が線上で誘起される特定の位置で指41がセンサに接触すると、少なくともタッチ位置に近接して、信号60が印加される導電線と対応する直交導電線との間のキャパシタンスは増加し、指41のキャパシタンスによって、信号60は対応する直交導電線に交差し、低い振幅信号65、例えばベースライン振幅に対して低い信号を生成する。この方法は、同時に2つ以上の指タッチ(マルチタッチ)および/または容量オブジェクトを検出することができる。この方法はさらに、タッチ領域を算出することができる。本発明の例示的実施形態では、各導電線は増幅器に入力され、出力は増幅器の出力からサンプリングされる。任意選択的に、各線は差動増幅器に入力される一方、増幅器の他の入力は接地される。指は典型的には電流を線から大地に排出させるので、指の存在は典型的には、結合信号を15〜20%または15〜30%低減させる。一部の例示的実施形態では、指先タッチを検出するために、18〜40KHzの帯域幅内の信号の振幅が検査される。
【0073】
トークンの検出および追跡
本発明の一部の例示的実施形態では、装置はさらに、デジタイザ表面と接触する状態で表面物体上に配置された1つ以上の小さい導電性要素、例えばトークンを含め、1つ以上の物理的物体45の位置を検出および追跡することができる。一部の例示的実施形態では、トークンの検出は、指先の検出と同様の方法で実行される。例示的実施形態では、AC信号60が二次元センサマトリックス12の1つ以上の平行な導電線に印加され、結合信号を検出するために出力が直交線上でサンプリングされる(図2)。典型的には、2つの直交する導電線間の接合点の上および/または付近に配置されたトークンに応答して、接合点における結合信号は、明らかに能動導電線と受動導電線との間の容量結合の増加によって約5〜10%増大する。物体は、物理的物体を識別するために使用されるトークンの幾何学的配置を含むことが好ましい。
【0074】
本発明は、本書で述べるデジタイザシステムの技術的記載に限定されない。スタイラスおよび/または指先のタッチ位置を検出するために使用されるデジタイザシステムは、例えば援用する米国特許第6690156号、米国特許出願公告第20040095333号および/または米国特許出願公告第20040155871号に記載されたデジタイザシステムと同様とすることができる。それはまた、当業界で公知の他のデジタル化システムおよびタッチスクリーンの構成によっては、それらに、特にマルチタッチ検出の可能なシステムに当てはまる。
【0075】
ここで図3を参照すると、本発明の一部の実施形態に係る、デジタイザセンサ上に載っている手に応答して検出されるタッチ領域の略図が示されている。本発明の一部の実施形態では、ユーザは、指先を使用してデジタイザと対話しながら、デジタイザセンサ上に掌を載せることがある。本発明の一部の実施形態では、デジタイザセンサで検出される入力は、指先入力からの検出領域310のみならず、掌入力からの検出領域350をも含む。本発明の一部の実施形態では、掌からの検出領域350は複数の領域を含む。本発明の一部の実施形態では、複数の領域は1つ以上の大面積領域320および小面積領域340を含む。一部の例示的実施形態では、小面積領域はアーチファクト信号の結果生じる。一部の例示的実施形態では、小面積領域は、デジタイザセンサに部分的に触れているだけの手および/または掌の部分、例えば指関節から生じる。本発明の一部の実施形態では、領域は、同様の出力を有する複数の連続接合点399として識別される。
【0076】
ここで図4を参照すると、本発明の一部の実施形態に係る、掌の存在下でマルチタッチ・デジタイザ・センサの指先タッチを識別するための方法の例示的フローチャートが示されている。本発明の一部の実施形態では、デジタイザセンサの接合点に問合せが行われ、デジタイザセンサの接合点の各々から得られる振幅出力から画像が構築される(ブロック410)。任意選択的に、画像はデジタイザセンサの接合点の各々から得られる振幅および位相出力から構築される。典型的に、デジタイザセンサの1組の平行な線の各々にトリガ信号を順次送信し、かつ該組に直交する各導電線からの出力をサンプリングすることによって、センサの接合点に問合せが行われる。典型的には、直交導電線からの出力信号は同時にサンプリングされる。サンプリングされた出力は、トリガ線とサンプリングされた線との間に形成された接合点からの出力を表す。一部の例示的実施形態では、接合点の振幅出力は画像の画素値に等化される。一部の例示的実施形態では、振幅はベースライン振幅によって正規化される。本発明の一部の実施形態では、画像から1つ以上のタッチ領域、および/またはタッチ領域のように見えるアーチファクト領域を抽出、例えば識別するように、画像切出しが実行される(ブロック420)。典型的には、画像切出しは、画像上で同様の特性、例えば画素値を有する領域を画定する。典型的には、各切出し領域はデジタイザセンサのタッチ領域に対応する。
【0077】
本発明の一部の実施形態では、各切出し領域、例えばタッチ領域は、1つ以上の決定された特性によって特徴付けられ、かつ/または識別される(ブロック430)。一部の例示的実施形態では、各タッチ領域に識別番号、例えば通し番号{1、2、3、}が割り当てられる。一部の例示的実施形態では、タッチ領域内の各画素に識別番号がラベル付けされる。本発明の一部の実施形態では、各タッチ領域の面積が決定され、タッチ領域を特徴付ける特性として使用される。一部の例示的実施形態では、面積は、タッチ領域に含まれる画素数、例えば接合点数によって決定される。一部の例示的実施形態では、タッチ領域の面積は、長さおよび幅がデジタイザセンサの直交軸に沿ったタッチ領域の長さおよび幅に対応する矩形の面積によって定義される。本発明の一部の実施形態では、タッチ領域の重心が決定され、タッチ領域を特徴付けるために使用される。典型的には、重心は、タッチ領域の接合点の各々で得られる振幅出力の加重平均を算出することによって決定される。本発明の一部の実施形態では、検出された全てのタッチ領域を列挙したテーブルがメモリに格納される。本発明の一部の実施形態では、テーブルは、各タッチ領域を特徴付けるために使用される特性、例えば面積、重心、およびアスペクト比を含む。一部の例示的実施形態では、タッチ領域に関連付けられない画素にヌル値、例えば−1がラベル付けされる一方、タッチ領域に関連付けられる各画素にはその関連タッチ領域の識別番号がラベル付けされる。一部の例示的実施形態では、ラベル付けされた画素は、潜在的指先タッチ領域の近傍にあるタッチ領域を識別するために使用される。
【0078】
本発明の一部の実施形態では、各切出し領域は、そのサイズ、形状、および/またはアスペクト比のようなその空間特性に基づいて、潜在的指先タッチまたは掌タッチ領域のいずれかに分類される(ブロック440)。本発明の一部の実施形態では、分類は各セグメントの算出された面積に基づく。一部の例示的実施形態では、所定のサイズより小さい切出し領域は無視され、かつ/またはヌル値をラベル付けされる。一部の例示的実施形態では、約16mm〜500mmの間のサイズ、または約16mm〜1000mmの間のサイズを有する切出し領域は、潜在的指先タッチ領域として分類され、より大きい切出し領域は掌タッチ領域として分類される。
【0079】
本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチセグメントのうちのどれが実際は掌タッチ入力の一部であるか、かつ、もしあれば、どれがユーザ対話として意図した実際の指先タッチ入力であるか(ブロック450)を決定する際に、各々の潜在的指先タッチセグメントと掌タッチ領域との間の空間的関係性が考慮される。本発明の一部の実施形態では、空間的関係性は潜在的指先タッチセグメントの各々と掌タッチ領域との間の距離を含む。本発明の一部の実施形態では、空間的関係性は、掌タッチセグメントに対する潜在的指先タッチセグメントの向きを含む。本発明の一部の実施形態では、掌タッチセグメントの所定の近傍距離内にある潜在的指先タッチセグメントは、真の指先タッチ領域として不適格とされる。本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域の一部分は実際のタッチ領域ではなく、大面積のタッチ領域、例えば掌タッチ領域の周囲のアーチファクト信号の結果生じる。
【0080】
本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチセグメントが本当に指先タッチ領域であることを検証するために、その追加的特性が決定される(ブロック460)。一部の例示的実施形態では、潜在的指先タッチセグメントの形状が検査され、かつ/または振幅出力が検査され、指先タッチに関連付けられる典型的な形状または出力と比較される。一部の例示的実施形態では、潜在的指先タッチセグメントの形状は、アスペクト比データから決定される。例えば1:2または1:3に近いアスペクト比の場合、楕円形状が決定される一方、1:1に近いアスペクト比の場合、円形の形状が決定される。
【0081】
本発明の一部の実施形態では、1つ以上の潜在的指先タッチ領域が真の指先タッチ領域として検証され、デジタイザとのユーザ対話に使用される(ブロック470)。本発明の一部の実施形態では、検証された指先タッチ領域は位置が特定され、任意選択的に追跡される(ブロック480)。一部の例示的実施形態では、指先タッチの識別位置はタッチセグメントの重心である。本発明の一部の実施形態では、不適格とされた領域および/または掌入力に関連付けられる領域は、ホストコンピュータに転送されず、追跡されない。
【0082】
一部の例示的実施形態では、指先タッチとして不適格とされた潜在的指先領域の一部分が数サンプルにわたって追跡され、追跡に基づいて、前記潜在的指先領域が実際に指先入力から得られたかを決定する。一部の例示的実施形態では、追跡に基づいて、例えば追跡経路が実現可能である場合、かつ/または典型的な指追跡経路である場合に、領域は指先入力から得られたと決定されると、入力はユーザ対話に適格とされ、例えば前記領域からの入力はホストコンピュータに送信される。
【0083】
ここで図5を参照すると、本発明の一部の実施形態に係る、デジタイザセンサで検出された1つ以上のタッチ領域を識別し分類するための方法の例示的フローチャートが示されている。一部の例示的実施形態では、図5に記載する方法は、画像切出しのための例示的方法である。本発明の一部の実施形態では、所定の閾値を超える出力が少なくとも1つの接合点で検出される(ブロック515)まで、デジタイザの各線および/または接合点に問合せが行われる(ブロック510)。
【0084】
本発明の一部の実施形態では、例えばベースライン振幅で正規化された、正規化信号振幅の大きさが閾値と比較される。一部の例示的実施形態では、信号の振幅は第1および第2閾値と比較される。一部の例示的実施形態では、第1の所定の閾値はベースライン振幅の0.8%〜0.95%である。一部の例示的実施形態では、第2の所定の閾値はベースライン振幅の1.02%〜1.10%である。第1閾値未満または第2閾値超の振幅は、新しいタッチ領域の識別を構成する(ブロック520)。
【0085】
本発明の一部の実施形態では、確実な検出に応答して、隣接接合点に問合せが行われ、それらの振幅が第1閾値未満または第2閾値超であるか否かが決定される(ブロック525)。一部の実施形態では、2つの閾値領域内の信号振幅を持つ隣接接合点は、潜在的掌対話領域の一部として含まれる(ブロック530)。
【0086】
他の例示的実施形態では、タッチ領域内の全ての出力がベースライン振幅より高いこと、またはタッチ領域内の全ての出力がベースライン振幅より低いことが要求される。そのような場合、典型的にはより小さい面積を有するより多くの切出し領域が識別される。
【0087】
一部の例示的実施形態では、切出し領域、すなわちタッチ領域は、切出し領域の部分であるために要求される所定の範囲内でない出力を有する限定数の接合点、例えば3〜6個の接合点を含むかもしれない。
【0088】
本発明の一部の実施形態では、タッチ領域の面積および/またはサイズが決定される(ブロック535)。タッチ領域のサイズが、指先タッチの下限として使用される閾値、例えば16mmより小さいか否かを決定するために、クエリが行われる(ブロック540)。小さい場合、タッチ領域は廃棄または無視される(ブロック545)。そうでない場合、タッチ領域は記録される(ブロック550)。典型的には、タッチ領域に関連付けられる面積は格納もされる。一部の実施形態では、タッチ領域の重心が決定され(ブロック555)、格納される。
【0089】
本発明の一部の実施形態では、クエリはタッチ領域面積に基づいて行われ(ブロック560)、所定の閾値を超える面積を有しかつ/または所定の閾値を超える接合点数を含むタッチ領域は、掌タッチ領域(ブロック565)として定義され、所定の閾値未満の面積を有するタッチ領域は、潜在的指先タッチ領域(ブロック570)として分類される。一部の例示的実施形態では、接合点間の距離が4mmであるときに、掌タッチ領域は50以上の接合点を含む領域に定義される。一部の例示的実施形態では、接合点間の距離が4mmであるときに、潜在的指先タッチ領域は50未満の接合点を含む領域に定義される。接合点間の距離が4mmであるときに、指先タッチは典型的には1〜12個の接合点を含む。本発明の一部の実施形態では、図5に記載する方法は、デジタイザセンサのエリア全体が走査され、全てのタッチ領域が検出されるまで繰り返される。
【0090】
一部の例示的実施形態では、振幅のパターンは最初に、潜在的指先領域を検出するために解析され、例えば切り出され、次いで掌タッチ領域を検出するために解析され、例えば切り出される。本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域に含まれる振幅のパターンは、ベースライン振幅より低いことが要求される。本発明の一部の実施形態では、掌タッチ領域に含まれる振幅のパターンは、ベースライン振幅より低いかつ/または高い振幅を含むことができる。
【0091】
ここで図6を参照すると、本発明の一部の実施形態に係る、1つ以上の潜在的指先タッチ領域から指先タッチ領域を確実に識別するための方法の例示的フローチャートが示されている。本発明の一部の実施形態では、各潜在的指先タッチ領域を包囲する定義エリアが検査され、掌タッチ領域、例えばその一部分がそのエリア内に存在するか否かが決定される(ブロック610)。一部の例示的実施形態では、定義エリアは潜在的指先タッチ領域の重心からの距離によって定義される。
【0092】
本発明の一部の実施形態では、掌タッチ領域が潜在的指先タッチ領域の近傍内に存在するか否かを決定するために、クエリが行われる(ブロック620)。一部の例示的実施形態では、潜在的指先タッチ領域の周りの定義エリア内で、掌タッチ領域の接合点および/または画素が見つかると、潜在的指先タッチ領域は掌タッチ領域の一部であると特徴付けられ、指先タッチ領域として認定されない。掌領域に近接している潜在的指先タッチ領域は不適格とされ、ユーザ対話に使用されない(ブロック699)。
【0093】
本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域からの距離、および/または潜在的指タッチ領域の周りの近傍は、潜在的指タッチ領域の重心を中心とする方形領域によって画定される。一部の例示的実施形態では、方形領域は、算出された重心に最も近い接合点を中心とする。一部の例示的実施形態では、方形の寸法は約70〜90mm、例えば80mmである。一部の例示的実施形態では、画素間の距離が4mmであるときに、方形の寸法は約20×20画素に相当する。
【0094】
本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域の周りに定義されたエリア内にある掌タッチ領域は、定義されたエリア内の画素および/または定義エリアの周辺に沿った画素の画素ラベル、例えば切出し領域を識別する画素ラベルを検査することによって識別される。本発明の一部の実施形態では、ヌル値以外の値をラベル付けされた画素の識別に応答して、識別された切出し領域の面積が検査される。切出し領域が掌タッチ領域である場合、潜在的指先タッチ領域は掌タッチの一部として分類される。一部の例示的実施形態では、定義された方形領域の周辺に沿った画素だけを検査して、掌タッチ領域が方形によって画定される近傍内に存在するか否かが決定される。一部の例示的実施形態では、方形のエリア内のランダムな画素も検査される。なお、本発明の一部の実施形態は、潜在的指先領域を包囲する方形エリアに関連して記載しているが、他のエリア、例えば円形エリア、楕円形エリア、六角形エリア、および八角形エリアを定義することもできる。
【0095】
本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域が、掌タッチ領域の周りに定義されるエリアによって部分的に包含されるか否かを決定するために、クエリが行われる(ブロック630)。一部の例示的実施形態では、エリアは、直交軸の各々に射影される接合点の数によって画定される矩形エリアである。掌タッチ領域によって部分的に包含される潜在的指先タッチ領域は不適格とされ、かつ/または無視される(ブロック699)。
【0096】
本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域の出力の振幅がベースライン振幅と比較される(ブロック640)。典型的には、指先タッチはベースライン振幅の低下、例えば10〜15%の低下によって特徴付けられる。本発明の一部の実施形態では、ベースライン振幅より高い出力を含む潜在的指先タッチ領域は廃棄され、デジタイザセンサとのユーザ対話に使用されない。一部の例示的実施形態では、ベースライン振幅より高い出力を含むタッチ領域は、デジタイザセンサ上に配置されたトークンの結果生じるかもしれない。本発明の一部の実施形態では、ベースライン振幅より高い出力を含むタッチ領域は、掌および/または手タッチ領域として分類され、廃棄される。すなわちデジタイザセンサとのユーザ対話に使用されない。
【0097】
一部の例示的実施形態では、潜在的指先タッチ領域を適格とすべきか、それとも不適格とすべきかを決定するために、潜在的指先タッチ領域で形成される振幅のパターンの平滑度が使用される。真の指先タッチ領域で形成される振幅のパターンは典型的には、領域の重心の近傍にピークを持つドーム形である一方、掌および/または手タッチ領域から形成される振幅のパターンはより不規則になることに、本発明者らは気付いた。
【0098】
本発明者らは、タッチ領域がデジタイザセンサに載っている指関節および/または親指からも生じることがあることに気付いた。これらの領域は典型的には大きい掌タッチ領域からは遠く離れているかもしれないが、ユーザ対話に意図されていない領域である。本発明者らは、そのようなタッチ領域の形状を典型的には指先タッチから区別することができることに気付いた。例えば本発明者らは、ユーザ対話に意図されていないタッチが典型的には、指先タッチ領域と比較してより長円の領域を含むことに気付いた。本発明の一部の実施形態では、潜在的指先タッチ領域の形状尺度が決定され、閾値と比較される(ブロック650)。一部の例示的実施形態では、形状尺度は、タッチ領域の短軸上の検出線数に対する長軸上の導電線接合点数の比である。一部の例示的実施形態では、1:1および3:1の範囲外の形状尺度を有する領域は、潜在的指先タッチ領域として不適格とされる。
【0099】
本発明の一部の実施形態では、廃棄および/または不適格とされなかった潜在的指先タッチ領域は、指先タッチ領域として確実に識別され、ユーザ対話用に認定される(ブロック660)。
【0100】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、includining)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0101】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、かつそれらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0102】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、特許請求される組成物、方法、または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法、または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0103】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。種々の実施形態において記載される特定の特徴は、これらの要素無しでは実施形態が操作できない場合を除いては、これらの実施形態の必須の特徴であるとみなされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部分から得られるマルチタッチ感応デジタイザへの入力を、ユーザ対話に無効な入力およびユーザ対話に有効な入力として分類するための方法であって、
デジタイザセンサへの入力の複数の離散的領域を識別するステップと、
該領域のうちの少なくとも2つの間の空間的関係を決定するステップと、
少なくとも2つの領域のうちの1つを、少なくとも2つの領域間で決定された空間的関係に基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップと
を含む方法。
【請求項2】
分類される領域の少なくとも1つの空間特性を決定するステップと、少なくとも2つの領域のうちの1つを、決定された特性に基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
空間特性は、サイズ、形状、およびアスペクト比を含む群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
空間的関係は、少なくとも2つの領域の間の距離である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の離散的領域の各々のサイズを決定するステップを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの領域は、所定の面積閾値より低い面積を有する少なくとも1つの小面積領域、および所定の面積閾値より高い面積を有する少なくとも1つの大面積領域を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの小面積領域の重心を決定するステップと、それを用いて少なくとも2つの領域の間の空間的関係を決定するステップとを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
決定される空間的関係性は、少なくとも1つの小面積領域と少なくとも1つの大面積領域との間の近接性を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
近接性は、少なくとも1つの小面積領域の周りに定義されるエリア内で決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの小面積領域は、有効入力または無効入力のいずれかとして分類される、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
無効入力領域は、掌または手がデジタイザセンサに触れるか、あるいはその上をホバリングすることから得られる、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
有効入力領域は、指先がデジタイザセンサに触れるか、あるいはその上をホバリングすることから得られる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
デジタイザとのユーザ対話に有効な入力領域だけを使用することを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
デジタイザセンサは、入力を受信する複数の接合点を形成する、直交する2組の平行な導電線を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
デジタイザセンサへの入力は静電容量式タッチ検出法によって検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
デジタイザセンサの導電線からの信号振幅のパターンを検出するステップを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
信号振幅のパターンから信号振幅の二次元画像を形成するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
画像の画素は接合点の各々における信号振幅に対応する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
画像に画像切出しを実行して複数の離散的領域を識別するステップを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
領域のサイズは、領域に含まれる接合点の数によって定義される、請求項14〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
領域のサイズは領域を包囲する矩形エリアによって定義され、矩形エリアは、ユーザ入力が検出される各直交軸上の導電線の数によって定義される寸法を有する、請求項14〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
少なくとも2つの領域のうちの1つを、領域内の振幅レベルに基づいて、有効入力領域または無効入力領域のいずれかとして分類するステップを含む、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
振幅レベルは、領域との接合点のベースライン振幅と比較され、接合点のベースライン振幅は、ユーザ入力が無いときのその接合点における振幅である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2つの領域のうちの1つを、該領域がそれらのベースライン振幅より高い振幅を含むことに応答して無効入力領域として分類するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
身体部分から得られるマルチタッチ感応デジタイザへの入力を、ユーザ対話に無効な入力として分類するための方法であって、
入力を受信する複数の接合点を形成する直交する2組の平行な導電線を含んで成るデジタイザセンサの導電線からの信号振幅のパターンを検出するステップと、
信号振幅のパターンに基づいて、デジタイザセンサへの入力の少なくとも1つの領域を識別するステップと、
少なくとも1つの領域を、該少なくとも1つの領域が接合点のベースライン振幅より高い接合点の振幅を含むことに応答して、無効入力領域として分類するステップと、
を含む方法。
【請求項26】
接合点のベースライン振幅は、ユーザ入力が無いときのその接合点における振幅である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
信号振幅のパターンから信号振幅の二次元画像を形成するステップを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
画像の画素は接合点の各々における信号振幅に対応する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
デジタイザセンサへの入力は、静電容量式タッチ検出法によって検出される、請求項25〜28のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−501261(P2011−501261A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528523(P2010−528523)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001325
【国際公開番号】WO2009/047759
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(507182210)エヌ−トリグ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】