説明

デジタルカメラ

【課題】所定の衝撃力より小さな力でカメラ本体収納部内の鏡枠が動いてしまうことを防止でき、さらに、衝撃によりカメラ本体収納部内を鏡枠が移動する際のスムーズな緩衝移動や緩衝移動後の復帰を正確に行なうことのできるデジタルカメラを提供する。
【解決手段】扁平な形状をなし、ブレ補正機構を有する鏡枠4と、収納部2sに収納された鏡枠4の光学系の光軸方向へのスライド移動を支持するための支持部が設けられたカメラ本体である前カバー2と、収納部2sの両側面と垂直な内側面と、衝撃により収納部2sの内部で鏡枠4が相対的に光軸方向にスライド変位したときに、前カバー2の収納部2sの内側と鏡枠4の外面部分との間に生じる光軸方向の剪断力により衝撃を吸収する緩衝ユニット21と、収納部2sの内側面と緩衝ユニット21との間に介在する弾性変形可能な弾性スペーサ25とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタルカメラ、詳しくは、外部からカメラ本体に衝撃が加わった際に、当該カメラ本体の内部で鏡枠を移動させることにより当該鏡枠への衝撃を吸収するブレ補正機能付きのデジタルカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光学レンズ等からなるレンズ鏡枠ユニットと、光学レンズによって結像される被写体の光学像を光電変換する撮像素子を含む撮像ユニット等を備えたデジタルカメラが種々実用化されている。
【0003】
これらのデジタルカメラは、使用者が常に携行して持ち運び、気軽に場所を選ばずに使用することができるように、常に機器全体の小型化が望まれている。
【0004】
一方、使用者がデジタルカメラを常に携行するようになると、例えばデジタルカメラの携行中に誤って落下させたり、意図せずに壁等に衝突させてしまう等の可能性が多くなる。しかしながら、このようなデジタルカメラは極めて精密に構成される機器であるので、外部から衝撃力を受けると、その外力の影響は内部構成物にまで及ぶことがあり、それによって内部構成物を破損させたり故障させてしまうことにもなりかねない。
【0005】
そこで、従来のデジタルカメラ等の小型機器においては、落下等の衝撃に対応するために、機器本体の内面に内部構成物が移動可能となるように構成すると共に、この移動可能な内部構成物の外面と機器本体の内面との間に緩衝部材を設けるようにフローティング構造で構成したものが、例えば、特許文献1,2,3,4等に提案されている。
【0006】
このようなフローティング構造の小型機器では、外力による衝撃力が機器本体外部に加わったとき、緩衝部材が圧縮されることで、その衝撃力が吸収されるようになっている。
【0007】
特許文献1に開示されている小型機器は、カメラユニットを保持しかつ輪郭を画定する本体ケースを備えた携帯電話機等であって、本体ケースを通してカメラユニットへ加わる衝撃力を緩和させるために、ユニットケースと本体ケースとの間であって、レンズの移動方向(光軸方向、Z方向)及びそれと垂直な方向(Y方向)のそれぞれに沿う面に緩衝部材を設けて構成している。
【0008】
特許文献2に開示されている小型機器は、車室内のダッシュパネルに設置される車載用プレーヤ装置であって、ダッシュパネルに組み込まれる外筐体と、この外筐体に収納される装置本体とのあいだに緩衝部材を介在させて構成している。
【0009】
特許文献3及び特許文献4に開示されている小型機器は、機器本体内に収納されるディスク状記録媒体カートリッジを着脱自在に収納するスロット部の外面と、他の内部構成物との間に緩衝部材を介在させて構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−258971号公報
【特許文献2】特開2005−306078号公報
【特許文献3】特開2006−80987号公報
【特許文献4】特開2006−40503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記特許文献1に開示されている手段では、レンズの移動方向(Z軸方向)及びそれと垂直な方向(Y軸方向)のそれぞれに沿う面に緩衝部材を配設したので、レンズ移動方向(Z軸方向)に衝撃力が加わった場合、緩衝部材にかかる力は押圧力と剪断力となる。この場合には、緩衝部材が圧縮された際の反発力と剪断力とが互いにその効力を打ち消し合ってしまうことになる。
【0012】
また、デジタルカメラ等においては、光学レンズ等を有する鏡枠本体がカメラ本体内部に収納して構成されているのであるが、この鏡枠本体は、レンズ移動方向(Z軸方向)以外の方向、即ち、Y軸方向,X軸方向については、カメラ本体等によって、外部からの衝撃力に対する強度が確保されている。その一方で、鏡枠本体内の光学レンズは、例えば合焦動作や変倍動作等のために所定の方向(光軸方向)への移動が自在となるように構成されている。このことは、特に光軸に沿う方向の外力が鏡枠本体に加わった場合には、強度的に不利な構成であると言える。また、上述のように緩衝部材の圧縮力により衝撃を吸収する手段では、緩衝部材の圧縮に伴って生じる反発力が鏡枠本体に影響を及ぼすことも考えられる。
【0013】
さらに、機器内面に緩衝部材を設ける場合、その厚み分だけ機器内部の空間が必要となる。特に光学レンズが移動する方向である光軸方向の寸法は確実に確保しなければならないという事情から、光軸方向と直交する方向に沿う面に緩衝部材を設けた場合、長手方向の大型化につながってしまうという問題点もある。
【0014】
一方、緩衝部材を圧縮させることで衝撃を吸収させる手段では、緩衝部材の厚みが衝撃吸収性に寄与しており、緩衝部材が薄くなるほどその効果は少なくなるという傾向がある。
【0015】
その反面、携行して使用するデジタルカメラ等にあっては、機器本体の小型化や薄型化への要求が常にあるため、機器本体と内部構成物との間に充分な衝撃吸収性能を有する緩衝部材を配設する空間を確保することは困難な状況となっているという問題点もある。
【0016】
また、上述したブレ補正機能を有するデジタルカメラに緩衝構造でフローティング構造を適用した場合、カメラ本体収納部と鏡枠との間の空間(ガタ)の大きさによって、当該カメラ本体と鏡枠との位置関係が微妙にずれたり、位置関係が一定とならず、ブレ量補正による撮像の際に影響を及ぼすことがあった。
【0017】
さらに、外部からの衝撃によりカメラ本体収納部内を鏡枠が移動する際、上記空間(ガタ)の大きさによってはスムーズな緩衝移動や緩衝移動後の復帰が正確にできないことがあった。
【0018】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ブレ補正機能を有する鏡枠がカメラ本体収納部内で緩衝移動するデジタルカメラにおいて、非撮像時におけるカメラ本体収納部と鏡枠との間のガタ(空間)をなくし、また、外部からの衝撃によりカメラ本体収納部内を鏡枠が移動する際のスムーズな緩衝移動や緩衝移動後の復帰を正確に行なうことのできるデジタルカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明のデジタルカメラは、全体として扁平な形状をなし、撮像素子と、被写体からの反射光を当該撮像素子へ結像させるための光学系と、当該撮像素子へ結像する被写体像のぶれを補正するブレ補正機構と、を有する鏡枠ユニットと、上記鏡枠ユニットをスライド変位可能に収納する鏡枠収納部を有するカメラ本体と、上記扁平な鏡枠ユニットの外面部分に設けられていて、上記カメラ本体が外部から衝撃力を受けて上記鏡枠ユニットが上記カメラ本体収納部に対してスライド変位した際に、剪断変形することにより衝撃を吸収する衝撃吸収手段と、上記鏡枠収納部と上記衝撃吸収手段との間に、圧縮された状態で配置される弾性変形可能な弾性シートと、上記鏡枠収納部に収納された上記鏡枠ユニットを、上記鏡枠収納部の方向へ押圧する板状の押圧部材と、を具備し、上記板状の押圧部材による押圧力は、上記カメラ本体に衝撃力が作用した際に上記衝撃吸収手段の剪断変形による衝撃吸収効果が得られる押圧力を上限とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブレ補正機能を有する鏡枠がカメラ本体収納部内で緩衝移動するデジタルカメラにおいて、非撮像時におけるカメラ本体収納部と鏡枠との間のガタ(空間)をなくすことができる。また、外部からの衝撃の際、当該衝撃より小さな力でカメラ本体収納部内の鏡枠が動いてしまうことを防止できる。さらに、外部からの衝撃によりカメラ本体収納部内を鏡枠が移動する際のスムーズな緩衝移動や緩衝移動後の復帰を正確に行なうことのできるデジタルカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である撮像装置としてのデジタルカメラの外観を前面側からみた斜視図である。
【図2】図1のデジタルカメラの外観を背面側からみた斜視図である。
【図3】図1のデジタルカメラの後カバーを外し、内部配置を示した背面図である。
【図4】図3のデジタルカメラにて、前カバーと鏡枠ユニットと緩衝ユニットとを分解した状態を示した斜視図である。
【図5】図4の鏡枠ユニットを前面側下方からみた斜視図である。
【図6】図5のVI−VI断面図であって、図5の鏡枠ユニットの光軸に沿った断面を示す。
【図7】図3のデジタルカメラにおいて、前カバーに鏡枠ユニットを挿入した状態を示した模式的拡大図である。
【図8】図4の鏡枠ユニットを緩衝ユニットを挟んで前カバーに組み込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図1,2は、本発明の一実施形態である撮像装置としてのデジタルカメラの外観を示す斜視図であって、図1が前面側からみた斜視図であり、図2が背面側からみた斜視図である。図3は、上記デジタルカメラの後カバーを外した状態の背面図である。図4は、上記デジタルカメラの前カバー、鏡枠ユニットおよび緩衝ユニットの分解斜視図である。図5は、上記鏡枠ユニットを前面側下方からみた斜視図である。図6は、図5のVI−VI断面図であって、上記鏡枠ユニットの光軸に沿った断面を示す。
【0024】
本発明の一実施形態であるデジタルカメラ1は、被写体像を撮像するための折り曲げ光学系を備えた鏡枠ユニット20を内蔵し、撮像手段である撮像素子を手ブレに応じて移動させる手ブレ補正機能を有するコンパクトタイプのデジタルカメラであり、さらに、落下等の衝撃から鏡枠を保護する緩衝構造が適用されている。
【0025】
上記折り曲げ光学系は、第一の光軸(以下、光軸O1とする)に沿って入射してきた被写体光束を光軸O1と直交する第二の光軸方向(以下、光軸O2とする)へ折り曲げ、光軸O2上に配置される撮像素子の受光面に光学像を結像するように構成された撮像光学系である。
【0026】
なお、以下の説明において、デジタルカメラ1にて光軸O1方向の被写体側を前方側とする。また、光軸O2と平行な方向をZ方向とする。光軸O2に対して直交する面に沿った方向であって、光軸O1の方向と平行な方向をY方向とし、Y方向に直交する方向をX方向とする。X方向の左右は特に指定しない限り背面側からみた左右で示す。
【0027】
本実施形態のデジタルカメラ1は、図1〜4に示すように箱形状の外装体として、互いに対向した状態で結合されるカメラ本体としての前カバー2および後カバー3と、前カバー2,後カバー3内に収容される鏡枠ユニット20と、カメラ制御基板18とからなる。
【0028】
前カバー2には前面部に撮影開口窓部2d、閃光発光装置の発光用窓2e等が配され、上面部に電源スイッチ釦15およびレリーズ釦14が配されている。
【0029】
後カバー3には背面部に撮影モード設定等の操作スイッチ釦群13と、LCDモニタ16が配されている。
【0030】
カメラ制御基板18は、カメラの全制御を司るCPU、撮影モード制御部、ストロボ発光制御部、撮像素子による撮影画像データの処理を行う画像処理部、カメラ挿入された画像記録媒体であるメモリカードに撮影画像データを書き込む記録制御部、手ブレ検出センサ等が実装されたプリント基板からなり、前カバー2の内部右側に組み込まれる。
【0031】
鏡枠ユニット20は、扁平な外形形状をもつ鏡枠としての鏡枠本体4と、該鏡枠本体4内に組み込まれる撮像のための折り曲げ光学系と、鏡枠本体4のZ方向の下部に配されるブレ補正装置として、撮像素子であるCCD96を組み込んだ撮像ユニット88およびCCD駆動機構部71と備えている。
【0032】
鏡枠本体4内に組み込まれる上記折り曲げ光学系は、第一群レンズ系として光軸O1上に配される第一群レンズ(前)35a、および、被写体光束を光軸O2に向けて屈折するプリズム35b、さらに、プリズム35bの下部に配される第一群レンズ(後)35bと、光軸O2に沿って配され、ズームレンズを構成する第二群レンズ36および第三群レンズ38と、第二群レンズ36と第三群レンズ38の間に配されるシャッタ/絞り37と、フォーカスレンズを構成する第四群レンズ39からなる(図6)。
【0033】
上記各レンズ群を保持するレンズ枠部材として光軸O1上に配され、第一群レンズ35a、35c、プリズム35bを保持する第一群枠31と、光軸O2上に配され、第二群レンズ36を保持する第二群枠32と、第三群レンズ38を保持する第三群枠33と、第四群レンズ39を保持する第四群枠34とが配されている。また、シャッタ/絞り37は、鏡枠本体4の絞り開口部にて開閉可能な状態で支持されている(図6)。
【0034】
ブレ補正装置を構成する撮像ユニット88と該撮像ユニット88を変位駆動するCCD枠駆動ユニット71とは、図5,6に示すように鏡枠本体4の下部の上記折り曲げ光学系の下方に配される。
【0035】
撮像ユニット88は、Xスライダ89と、Xスライダ89に連結され、光学ローパスフィルタ(光学LPF)95cおよび撮像素子であるCCD96が装着されるCCD枠91とからなる。
【0036】
Xスライダ89は、鏡枠本体4に対してXガイド軸によってX方向にスライド変位が可能に支持され、CCD枠91は、Xスライダ89に対してYガイド軸により連結され、X方向にはXスライダ89とともに移動し、かつ、Y方向に相対的にスライド移動可能に支持されている。従って、CCD枠91は、鏡枠本体4に対してXY平面上を二次元的に変位可能である。
【0037】
CCD96は、CCD接続フレキシブル基板(以下、CCD接続FPCと記載する)65に実装された状態でCCD枠91の開口部に光学ローパスフィルタ(以下、光学LPFと記載する)とともに固定保持されている。
【0038】
CCD枠駆動部71は、鏡枠本体4の下部右方突出部(図5では、左方側)に配され、X駆動モータ72と、Y駆動モータ79と、ギヤ部と送リネジを含む駆動機構とを備えている。
【0039】
カメラが手ブレ補正モードにあるとき、CCD96の露光を行う場合、撮像ユニット88のXスライダ89およびCCD枠91がカメラ側手ブレ検出センサによって検出された手ブレ検出信号に応じて上記手ブレを打ち消すようにCCD枠駆動部71によってXY平面上を変位駆動される。このブレ補正動作によりCCD96により手ブレ補正された撮像信号が得られる。
【0040】
鏡枠ユニット20は、鏡枠本体4に上述した折り曲げ光学系が組み込まれ、前面部に後述する衝撃吸収手段である緩衝ユニット21が装着された状態で前カバー2の収納部2sに組み込まれる(図4,5)。以下、鏡枠ユニット20の前カバー2の収納部2sへの組み込み構造について説明する。
【0041】
鏡枠としての鏡枠本体4は、本カメラ1のカメラ本体である前カバー2の内部において、例えば、図3に示すように前カバー(カメラ本体)内部の一方の側面に寄った所定の部位に配設されている。なお、鏡枠本体4の前カバー2の内部における配置については、本実施形態の例に限ることはなく、カメラ本体内部の略中央部分に配設するようにしてもよい。
【0042】
前カバー2の収納部2sは、図7に示すように前カバー2の内面に鏡枠本体4を光軸O2に沿う方向にのみ摺動自在に収納するように形成されている。そして、収納部2sは、カメラ1の前面カバー2の内面に鏡枠本体4の外形形状に合わせて段差をつけて形成されており、鏡枠本体4の光軸O2を挟んで両側に支持部2f,2g,2h,2iが設けられている。なお、図7の斜線で示される枠内部が、収納部2sに相当する。
【0043】
収納部2s内に鏡枠本体4を収納する場合、支持部2f,2g,2h,2iに対して鏡枠本体4の四隅の近傍部位、即ち、図7に示す部位4v1,4v2,4v3,4v4が面接触する。
【0044】
つまり、鏡枠本体4の四隅の部位4v1,4v2,4v3,4v4のそれぞれが収納部2sの支持部2f,2g,2h,2iに対して面接触することによって、鏡枠本体4は、前面カバー2の収納部2s内において光軸O2に沿うZ方向にのみ摺動自在に支持されており、かつ、光軸O2に対して直交する方向であって図4に示すX軸方向への移動が規制されている。
【0045】
一方、鏡枠本体4の前面に装着される衝撃吸収手段としての緩衝ユニット21は、図4,図8に示すように、弾性を有するブチル系ゴム部材等からなり薄平板状に形成される衝撃吸収部材24が金属若しくは樹脂等からなる二枚の薄板状部材である第一の薄板22と第二の薄板23に挟持され、さらに、収納部2s側の第二の薄板状部材23には弾性変形可能なスポンジ等からなるZ方向に沿った短冊状の2つの弾性シート25がX方向に離間した配置され、接着されている。
【0046】
この緩衝ユニット21は、鏡枠本体4が本カメラ1の前カバー2の収納部2sに配置された状態となったとき、鏡枠本体4の前面と、これに対向する前カバー2の内面の収納部2sとの間に上記弾性シート25を介在して配置される。
【0047】
上記配置状態において、二枚の薄板状部材のうちの一方の第一の薄板22は、鏡枠本体4と前カバー2との間で鏡枠本体4の前面にビス(図4参照)によってネジ止めされている。
【0048】
他方の第二の薄板23は、前カバー2の収納部2sの所定の部位に弾性シート25を挟んで固定される。第二の薄板23には、鏡枠本体4に組み付けられた状態で、光軸O2を挟んで対向する両側縁に切欠部23m,23nが形成されている。これに対して、前カバー2の収納部2sの内面側には、鏡枠本体4が前カバー2の収納部2sに収納された状態で上記切欠部23m,23nに対向する部位に係止突部2m,2nが形成されている。
【0049】
緩衝ユニット21が装着された鏡枠本体4を前面カバー部材2の収納部2sに収納した状態では、第二の薄板23の切欠部23m,23nが、収納部2sの係止突部2m,2nにそれぞれに係止され、第二の薄板23は、光軸O2に沿うZ方向への移動が規制された状態で弾性シート25を挟み込んで前カバー2に位置決めされる。
【0050】
また、第一の薄板22と第二の薄板23の間には、略中央部分に衝撃吸収部材24が挟持されており、この衝撃吸収部材24は、二枚の薄板状部材22,23のそれぞれに対して接着剤等によって接着固定されている。
【0051】
なお、第二の薄板23の略中央部近傍には、図5に示すように複数の孔部23aが形成されている。これらの孔部は、衝撃吸収部材24と第二の薄板23との間を接着固定した際に、余分な接着剤等を逃がすために設けられたものである。
【0052】
緩衝ユニット21に適用される衝撃吸収部材24について詳細に説明すると、緩衝ユニット21は、衝撃を受けて本カメラ1の前カバー2と後カバー3の内部で鏡枠本体4が相対的に光軸O2に沿う方向にスライド変位したとき、前カバー2の収納部2sに係止された第二の薄板23の内面と鏡枠本体4の前面との間に生じる光軸O2方向の剪断力によって衝撃吸収部材24を剪断弾性変形させ、衝撃を吸収することができるようにしている。
【0053】
換言すれば、衝撃吸収部材24は、上述したように弾性を有するゴム系部材からなるので、剪断方向、即ち、鏡枠本体4の光軸O2に沿う方向、すなわち、撮影レンズが移動するZ方向の外力(Z方向の分力を含む)が加わった場合には、衝撃吸収部材24が剪断変形することによって鏡枠本体4を前カバー2に対して相対的に同方向の光軸O2に沿うZ方向に若干移動させ得るようになっている。
【0054】
上述のように鏡枠本体4が光軸O2に沿うZ方向に移動することを許容して鏡枠本体4が前カバー2と干渉するのを避けるために、鏡枠本体4の移動方向(Z方向)の両端部と前カバー2の内面との間の所定の部位に図7に示した若干の隙間空間A1,A2が形成されるように、前カバー2の内面に対する鏡枠本体4の形状が規定されている。
【0055】
なお、隙間空間A1,A2は、衝撃吸収部材24の素材によって決まる弾性力や剪断方向の衝撃吸収力や、鏡枠ユニット20の重量や、カメラ1自体の重量や、衝撃等による加わる外力の力量等、様々な要因によって設定される。
【0056】
そして、隙間空間A1,A2は、鏡枠本体4の移動量を考慮すると充分な寸法を確保すべきものではあるが、より大きな衝撃力量を想定すると必要以上に広い隙間寸法を確保する必要が生じ、カメラ1の小型化の要求に応えることができない。したがって、設計に際しては、装置の小型化をも合わせて考慮すると、本実施形態で例示するような小型カメラにおいては、隙間空間A1,A2の寸法としては、例えば、それぞれ約1mm程度を確保することが妥当である。このために、衝撃吸収部材24の大きさ、厚さ、硬度等を調整する。
【0057】
なお、緩衝ユニット21における衝撃吸収部材24は、鏡枠本体4の背面側と板状押エ部材21等との間に配置してもよいし、鏡枠本体4の前面と背面との両方に配置するようにしてもよい。第一の薄板22に換えて鏡枠本体4の前面に凹部を設け、衝撃吸収部材24を上記凹部にXZ面方向の隙間のない状態で接着固定しても同様の効果が得られる。さらには、第一の薄板22並びに上記凹部を設けることなく、衝撃吸収部材24を直接、鏡枠本体4の前面に接着固定する構造を採用してもよい。
【0058】
上述した構成を有する緩衝ユニット21が装着された鏡枠ユニット20の鏡枠本体4を収納部2sに収納する場合、鏡枠本体4をその前面側に緩衝ユニット21を装着した状態で収納部2sの係止突部2m,2nに第二の薄板23の切欠部23m,23n係合させて挿入し、鏡枠本体4の背面側に、図4に示す板状押エ部材26,27,28を当て付け、前面カバー2の内面側に設けられる固定部材2k,2p,2q,2rに複数のビス(図4)をネジ止め固定して収納状態とする。
【0059】
上述した収納状態では、板状押エ部材26,27,28によって鏡枠本体4の背面が押圧され、鏡枠本体4がY方向に押さえ込まれ、収納部2sによって緩衝ユニット21の弾性シート25が圧縮された状態となる。また、鏡枠本体4は、前カバー2に対して衝撃吸収部材24の剪断弾性変形により相対的にZ方向に変位可能状態で保持される。
【0060】
板状押エ部材26,27,28が前カバー2に固定されたとき、弾性シート25が圧縮されることで生じる鏡枠押圧力F1,F2(図8)は、緩衝ユニット21による衝撃吸収効果が得られる押圧力を上限とし、鏡枠本体4をがたつきなく押さえ、特にカメラ1が手ブレ状態になったときでも、鏡枠本体4を適正な力で保持することができる押圧力を下限とする。
【0061】
詳しくは、鏡枠押圧力F1,F2の上限は、カメラ1に対してレンズ保持枠等に悪影響を与えるような落下等の衝撃力が作用したとき、衝撃吸収のための衝撃吸収部材24の剪断弾性変形して鏡枠本体4のZ方向への相対変位を許容する押圧力である。言い換えると、鏡枠押圧力F1,F2が過大すぎて衝撃吸収部材24が押し潰されて剪断弾性変形しにくい状態になる状態、あるいは、鏡枠本体4を板状押エ部材26,27,28で過大な力で押さえ込んで鏡枠本体4のZ方向への相対変位が得られない状態になるような押圧力である。
【0062】
また、鏡枠押圧力F1,F2の下限は、上述のように鏡枠本体4と前カバー2の間にがたつきが生じず、かつ、カメラ1が許容される最大の手ブレ状態になったときでも、鏡枠本体4がカメラ外装体である前、後カバー2,3と一体の状態で変位することができる押圧力である。
【0063】
なお、緩衝ユニット21に弾性シート25を適用せず、第二の薄板23を収納部2sに直接、当接させる構造では鏡枠本体4と前カバー2の寸法精度によって上述した適正な挟持押圧力F1,F2が得られず、鏡枠本体4にY方向のがたつきが生じたり、あるいは、挟持押圧力F1,F2が大きくなり過ぎて上記鏡枠本体4の衝撃吸収のためのZ方向への相対変位が妨げられ、衝撃吸収部材24による緩衝の吸収が行われないことがあり得る。
【0064】
鏡枠押圧力F1,F2を上述した上限値以下に設定することによって、落下等の衝撃力が作用した場合、緩衝ユニット21が十分機能し、鏡枠本体4内に収納される各レンズ保持枠等が衝撃力からより確実に保護される。
【0065】
また、本実施形態のカメラ1には、手ブレに対応させて撮像ユニット88のCCD枠91をXY平面で変位させるブレ補正装置が組み込まれているが、鏡枠押圧力F1,F2が上述した下限値以上に設定されていることによって、手ブレ発生時において上記手ブレ検出センサが組み込まれているカメラ外装体の前カバー2と鏡枠本体4とを一体的に変位する状態が確保される。この変位状態の確保より前述した手ブレ補正が正しく行われる。
【0066】
上記鏡枠押圧力F1,F2の設定は、弾性シート25の材質、圧縮量を選択して設定される。例えば、弾性シート25の厚み方向の剛性を衝撃吸収部材24の厚み方向の剛性よりも小さく設定することによって上記適正な保持力が容易に設定できる。
【0067】
以上、説明したように本実施形態のデジタルカメラ1によれば、カメラ外装体としての前カバー2に対して鏡枠ユニット20の鏡枠本体4を撮影レンズの移動方向である光軸O2に沿うZ方向にのみ移動可能に配設し、衝撃等による外力が加わった場合には、前カバー2の収納部2s内部で鏡枠本体4が一定方向に相対的に微少変位して上記衝撃力が吸収される。そして、鏡枠本体4と前カバー2とが干渉しないように、鏡枠本体4の移動方向に所定の隙間を設けて、鏡枠本体4を配置する。
【0068】
また、衝撃吸収部材24は、剪断方向の微少変位により衝撃力を吸収するようにしたので、より薄板形状で形成することができ、充分な衝撃吸収性を備えながらも装置の小型化に寄与することができる。
【0069】
さらに、衝撃吸収部材24は、移動のための空間を必要とする撮影レンズの進退方向ではなく、撮影レンズの進退方向に直交する面に沿って配設するようにしたので、装置の小型化に寄与することができる。
【0070】
さらに、鏡枠本体4の一面と前カバー内面との間に弾性を有する薄板形状の衝撃吸収部材24、および、薄板を介して弾性シート25を挟持するように介在させる構成した。
【0071】
従って、衝撃吸収部材24は、カメラ1が衝撃力を受け、上記カメラ外装体内部で鏡枠本体4が相対的に変位したとき、鏡枠本体4の一面と上記カメラ外装体内の一面との間に生じる剪断方向の衝撃力を吸収し、カメラ本体内部の鏡枠本体4、および、鏡枠本体4内に収容される各レンズ群枠等を保護することができる。
【0072】
また、衝撃吸収部材24の前方に薄板を介して弾性シート25を挟持するように配したことにより鏡枠本体4は、前カバー2や鏡枠本体4、さらに、衝撃吸収部材24の厚みの寸法にばらばきがあったとしても板状押エ部材26,27,28による鏡枠押圧力を安定した値に保持し、衝撃吸収効果を妨げることなく鏡枠本体4とカメラ外装体とを一体で変位させることができる。従って、ブレ補正機能を有するカメラにおいて、検出されたブレ検出信号により正しいブレ補正動作が可能になる。
【0073】
この発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上述のように本発明のデジタルカメラは、ブレ補正機能を有する鏡枠がカメラ本体収納部内で緩衝移動するデジタルカメラにおいて、非撮像時におけるカメラ本体収納部と鏡枠との間のガタ(空間)をなくすことができ、また、外部からの衝撃の際、当該衝撃より小さな力でカメラ本体収納部内の鏡枠が動いてしまうことを防止でき、さらに、外部からの衝撃によりカメラ本体収納部内を鏡枠が移動する際のスムーズな緩衝移動や緩衝移動後の復帰を正確に行なうことのできるデジタルカメラとして利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
2 …前カバー(カメラ本体)
2f,2g,2h,2i
…支持部(カメラ本体の支持部)
2m,2n…係止突部
2s…収納部(カメラ本体の収納部)
4 …鏡枠本体(鏡枠)
21 …緩衝ユニット(衝撃吸収手段)
22 …第一の薄板
23 …第二の薄板
23m,23n…切欠部
24 …衝撃吸収部材
25 …弾性シート
A1、A2…鏡枠が移動する空間の寸法
O1…第一の光軸
O2…第二の光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として扁平な形状をなし、撮像素子と、被写体からの反射光を当該撮像素子へ結像させるための光学系と、当該撮像素子へ結像する被写体像のぶれを補正するブレ補正機構と、を有する鏡枠ユニットと、
上記鏡枠ユニットをスライド変位可能に収納する鏡枠収納部を有するカメラ本体と、
上記扁平な鏡枠ユニットの外面部分に設けられていて、上記カメラ本体が外部から衝撃力を受けて上記鏡枠ユニットが上記カメラ本体収納部に対してスライド変位した際に、剪断変形することにより衝撃を吸収する衝撃吸収手段と、
上記鏡枠収納部と上記衝撃吸収手段との間に、圧縮された状態で配置される弾性変形可能な弾性シートと、
上記鏡枠収納部に収納された上記鏡枠ユニットを、上記鏡枠収納部の方向へ押圧する板状の押圧部材と、
を具備し、
上記板状の押圧部材による押圧力は、上記カメラ本体に衝撃力が作用した際に上記衝撃吸収手段の剪断変形による衝撃吸収効果が得られる押圧力を上限としたことを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
上記板状の押圧部材による押圧力は、上記カメラ本体が手ブレ状態になったときでも上記鏡枠ユニットを適正な力で保持することができる押圧力を下限となされていることを特徴とする請求項1記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
上記弾性シートは、上記光軸を挟んで等距離の位置であって、かつ、光軸方向に延びて上記カメラ本体の鏡枠収納部側の面に固着されていることを特徴とする請求項2に記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
上記衝撃吸収手段は、上記鏡枠ユニットの少なくとも一つの外面部分に固定される第一の薄板と、上記カメラ本体の収納部内面に固定される第二の薄板と、上記第一及び第二の薄板の間に挟持された衝撃吸収部材とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載のデジタルカメラ。
【請求項5】
上記鏡枠収納部の内面には上記光学系の光軸を挟んでその両側に係止突部が設けられ、上記第二の薄板は当該係止突部のそれぞれと係止する切欠部が設けられ、
当該切欠部が当該係止突部に係止することにより、上記第二の薄板が上記光軸に沿う方向へ移動するのを規制されていることを特徴とする請求項4に記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−81256(P2013−81256A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−8485(P2013−8485)
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2009−17358(P2009−17358)の分割
【原出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】