説明

デジタル信号出力装置およびデジタル信号出力方法

【課題】 生成するデジタル信号の論理値を決定するのに要する時間が長くなること、および、生成するデジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能なデジタル信号出力装置およびデジタル信号出力方法を提供する。
【解決手段】 保持部11cは、第一しきい値、第一しきい値以下の第二しきい値、第二しきい値より小さい第一設定値および第一しきい値より大きい第二設定値を保持する。制御部11dは、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値が第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けるとそのカウンタ値を第一設定値に変更する。信号再生回路12は、その変更に伴い論理0のデジタル信号を生成する。また、制御部11dは、そのカウンタ値が第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けるとそのカウンタ値を第二設定値に変更する。信号再生回路12は、その変更に伴い論理1のデジタル信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号出力装置およびデジタル信号出力方法に関し、特には、入力信号に応じたデジタル信号を出力するデジタル信号出力装置およびデジタル信号出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路の開閉器(メカニカル・スイッチ)のチャタリング防止回路として使用可能なデジタル信号出力装置が知られている。
【0003】
図8は、従来のデジタル信号出力装置の一例を示したブロック図である。
【0004】
図8において、従来のデジタル信号出力装置30は、同期化回路21と、信号再生回路23とを含む。
【0005】
同期化回路21は、複数のD−FF、具体的には、D−FF21aないし21hを有し、バッファ20から入力信号I0を受け付ける。
【0006】
信号再生回路23は、D−FF21aないし21hが保持している論理値(論理0または論理1)を受け付ける。信号再生回路23は、同期化回路21から受け付けた論理0の数と、同期化回路21から受け付けた論理1の数と、に基づいて、再生信号I1の論理状態を決定する。
【0007】
具体的には、信号再生回路23は、多数決方式または全一致方式で、再生信号I1の論理状態を決定する。
【0008】
多数決方式では、信号再生回路23は、論理0の数と論理1の数を比較し、多数の方の論理値を選択し、その選択された論理値の再生信号I1を出力する。
【0009】
一方、全一致方式では、入力信号I0が、サンプルクロック(内部クロック)の周期にD−FFの個数を掛け合わせて得られた期間以上、同じ論理値を維持すると、信号再生回路23は、その維持された論理値の再生信号I1を出力する。
【0010】
また、特許文献1(特開平4−330820号公報)には、アップダウンカウンタを用いて、入力信号に含まれるノイズを除去する雑音除去回路が記載されている。
【0011】
このアップダウンカウンタは、ローレベルの入力信号を受け付けるとカウントダウンし、ハイレベルの入力信号を受け付けるとカウントアップする。また、このアップダウンカウンタは、第1基準値と第2基準値の範囲内でカウント動作を行うように制御される。
【0012】
特許文献1に記載の雑音除去回路は、アップダウンカウンタのカウンタ値が、第1基準値と第2基準値の範囲内に設けられたしきい値より大きい場合、ハイレベルの信号を出力し、一方、そのカウンタ値がそのしきい値より小さい場合、ローレベルの信号を出力する。
【特許文献1】特開平4−330820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多数決方式では、“010101”のように論理0の数と論理1の数が同数の場合、信号再生回路23は、次の入力信号I0の論理値に基づいて、再生信号I1の論理値を決定する。このため、多数決方式では、再生信号I1の論理値が頻繁に切り替わるおそれがある。
【0014】
全一致方式では、入力信号I0が、サンプルクロック(内部クロック)の周期にD−FFの個数を掛け合わせて得られた期間以上、同じ論理値を維持しなければ、信号再生回路23は、再生信号I1の論理値を決定できない。また、全一致方式回路では、D−FFの個数が十分でない場合に入力信号I0が多くのノイズを含むと、再生信号I1の論理値が頻繁に切り替わるおそれがある。
【0015】
また、頻繁な再生信号の論理値の切り替えを防止するためにD−FFが増やされると、2つの決定方式とも、信号が再生されるまでの時間が長くなってしまう。
【0016】
また、特許文献1に記載の雑音除去回路では、アップダウンカウンタのカウンタ値がしきい値を挟んでアップダウンを繰り返すと、雑音除去回路の出力は、そのアップダウンに応じて、ハイレベルとローレベルに頻繁に切り替わる。すなわち、雑音除去回路の出力(デジタル信号)の論理値が頻繁に切り替わってしまう。
【0017】
本発明の目的は、生成するデジタル信号の論理値を決定するのに要する時間が長くなること、および、生成するデジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能なデジタル信号出力装置およびデジタル信号出力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のデジタル信号出力装置は、入力信号に基づいてデジタル信号を生成するデジタル信号出力装置であって、第一しきい値と、前記第一しきい値以下の第二しきい値と、前記第二しきい値より小さい第一設定値と、前記第一しきい値より大きい第二設定値と、を保持する保持部と、アップダウンカウンタと、前記アップダウンカウンタのカウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントダウンし、前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントアップし、前記カウンタ値が前記第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第一設定値に変更し、前記カウンタ値が前記第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第二設定値に変更する制御部と、前記カウンタ値が前記第一設定値に変更されると論理0のデジタル信号の生成を開始し、前記カウンタ値が前記第二設定値に変更されると論理1のデジタル信号を生成を開始する信号再生部とを含む。
【0019】
本発明のデジタル信号出力方法は、第一しきい値と前記第一しきい値以下の第二しきい値と前記第二しきい値より小さい第一設定値と前記第一しきい値より大きい第二設定値とを保持する保持部と、アップダウンカウンタと、を含むデジタル信号出力装置が行うデジタル信号出力方法であって、前記アップダウンカウンタのカウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントダウンするカウントダウンステップと、前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントアップするカウントアップステップと、前記カウンタ値が前記第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第一設定値に変更する第一設定値変更ステップと、前記カウンタ値が前記第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第二設定値に変更する第二設定値変更ステップと、前記カウンタ値が前記第一設定値に変更されると、論理0のデジタル信号の生成を開始する論理0デジタル信号生成ステップと、前記カウンタ値が前記第二設定値に変更されると、論理1のデジタル信号の生成を開始する論理1デジタル信号生成ステップとを含む。
【0020】
上記の発明によれば、カウンタ値が第一しきい値のときに論理0の入力信号が受け付けられると、カウンタ値が第一設定値に変更されて論理0のデジタル信号が生成される。また、カウンタ値が第二しきい値のときに論理1の入力信号が受け付けられると、カウンタ値が第二設定値に変更されて論理1のデジタル信号が生成される。
【0021】
このため、論理0のデジタル信号が生成された直後に、論理1の入力信号が受け付けられても、そのときのカウンタ値は第二しきい値より小さい第一設定値なので、論理0のデジタル信号は生成されない。また、論理1のデジタル信号が生成された直後に、論理0の入力信号が受け付けられても、そのときのカウンタ値は第一しきい値より大きい第二設定値なので、論理0のデジタル信号は生成されない。よって、デジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能になる。
【0022】
また、従来行われていた多数決方式または全一致方式を用いる必要がない。このため、生成するデジタル信号の論理値を決定する時間が長くなることを抑制可能になる。
【0023】
また、前記第一設定値が、前記第二しきい値より1以上小さく、前記第二設定値が、前記第一しきい値より1以上大きく、前記アップダウンカウンタのカウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号が受け付けられると、前記カウンタ値を1だけ小さくし、また、前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号が受け付けられると前記カウンタ値を1だけ大きくすることが望ましい。
【0024】
上記の発明によれば、デジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能になる。
【0025】
前記カウンタ値が前記第一設定値のときに論理0の入力信号が受け付けられると、前記カウンタ値を前記第一設定値に保持し、また、前記カウンタ値が前記第二設定値のときに論理1の入力信号が受け付けられると、前記カウンタ値を前記第二設定値に保持することが望ましい。
【0026】
上記の発明によれば、カウンタ値を、第一設定値以上第二設定値以下の値にすることが可能となる。
【0027】
また、前記第一設定値は前記アップダウンカウンタの最小値であり、前記第二設定値は前記アップダウンカウンタの最大値であることが望ましい。
【0028】
上記の発明によれば、アップダウンカウンタのカウンタ値の、最大値から最小値への桁上げ(キャリー)、および、最小値から最大値への位借り(ボロー)を抑止することが可能となる。このため、生成されるデジタル信号の論理値が、キャリーおよびボローによって悪影響を受けることを防止できる。
【0029】
また、前記保持部は、受け付けられた第一しきい値および第二しきい値を保持することが望ましい。
【0030】
上記の発明によれば、第一しきい値および第二しきい値を任意の値に設定することが可能になる。このため、例えば、入力信号の種類に応じて、第一しきい値および第二しきい値を変更することが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、入力信号に基づいてデジタル信号を生成するデジタル信号出力装置において、生成するデジタル信号の論理値を決定するのに要する時間が長くなること、および、生成するデジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施例のデジタル信号出力装置を示したブロック図である。
【0034】
図1において、本デジタル信号出力装置は、同期化回路21と、デジタル信号出力回路10とを含む。デジタル信号出力回路10は、計数回路11と、信号再生回路12とを含む。
【0035】
同期化回路21は、内部クロックを受け付け、また、バッファ20から入力信号を受け付ける。同期化回路21は、内部クロックを用いて入力信号をサンプリングし、そのサンプリング結果を、次のサンプリングが行われるまで保持する。同期化回路21は、その保持されているサンプリング結果を出力する。なお、このサンプリング結果は、内部クロックに同期した入力信号(以下「同期化入力信号」と称する。)となる。
【0036】
計数回路11は、内部クロックを受け付け、また、同期化回路21から同期化入力信号を受け付ける。計数回路11は、同期化入力信号を、内部クロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立下りエッジ)ごとにサンプルする。
【0037】
計数回路11は、そのサンプル結果が論理0(例えば低レベル電圧)ならば、自己の計数値を1だけ減算し、一方、そのサンプル結果が論理1(例えば高レベル電圧)ならば、その計数値を1だけ加算する。
【0038】
計数回路11は、自己の計数値の最大値から最小値への桁上げ(キャリー)、または、計数値の最小値から最大値への位借り(ボロー)を抑止する。
【0039】
本実施例では、計数回路11の最大値を「7」とし、計数回路11の最小値を「0」とする。なお、計数回路11の最大値および最小値は、適宜変更可能である。
【0040】
計数回路11は、自己の計数値が第一しきい値(例えば「4」)のときに論理0の同期化入力信号を受け付けると、その計数値を計数回路11の最小値(例えば「0」)に設定する。
【0041】
換言すると、計数回路11は、自己の計数値が第一しきい値のときに同期化入力信号のサンプル結果が論理0であると、その計数値を計数回路11の最小値(第一設定値)に設定する。
【0042】
また、計数回路11は、自己の計数値が第二しきい値(例えば「3」)のときに論理1の同期化入力信号を受け付けると、その計数値を計数回路11の最大値(例えば「7」)に設定する。
【0043】
換言すると、計数回路11は、自己の計数値が第二しきい値のときに同期化入力信号のサンプル結果が論理1であると、その計数値を計数回路11の最大値(第二設定値)に設定する。
【0044】
なお、第一しきい値は、第二しきい値以上かつ第二設定値未満であれば、適宜変更可能であり、また、第二しきい値は、第一しきい値以下かつ第一設定値より大きければ、適宜変更可能である。
【0045】
図2は、計数回路11の計数値の変化を説明するための説明図である。
【0046】
図2において、縦軸Yは計数回路11の計数値を示し、横軸Xは時間を示す。なお、図2では、第一設定値が「0」、第二設定値が「7」、第一しきい値が「4」、第二しきい値が「3」である。また、図2では、説明を簡略化するために、論理0の入力信号が連続して受け付けられ、その後、論理1の入力信号が連続して受け付けられた場合の、計数回路11の計数値の変化を示す。
【0047】
図3は、計数回路11の一例を示したブロック図である。なお、図3において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0048】
図3において、計数回路11は、アップダウンカウンタ11aと、入力部11bと、保持部11cと、制御部11dとを含む。
【0049】
アップダウンカウンタ11aのカウンタ値は、計数回路11の計数値である。
【0050】
入力部11bは、ユーザから、第一しきい値、第二しきい値、第一設定値、および、第二設定値を受け付ける。
【0051】
保持部11cは、第一しきい値、第二しきい値、第一設定値、および、第二設定値を保持する。なお、保持部11cは、入力部11bにて受け付けられた第一しきい値、第二しきい値、第一設定値、および、第二設定値を格納して保持してもよい。
【0052】
制御部11dは、同期化入力信号を受け付け、その受け付けられた同期化入力信号に基づいて、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値を制御する。具体的には、制御部11dは、以下のようにアップダウンカウンタ11aのカウンタ値を制御する。
【0053】
制御部11dは、同期化入力信号を、内部クロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立下りエッジ)ごとにサンプルする。
【0054】
制御部11dは、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値が、保持部11cにて保持された第一しきい値(例えば「4」)および第一設定値(例えば「0」)と異なるときに、同期化入力信号のサンプル結果が論理0であると、そのカウンタ値から「1」を減算する。換言すると、制御部11dは、そのカウンタ値が第一しきい値および第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値をカウントダウンする。
【0055】
また、制御部11dは、そのカウンタ値が、保持部11cにて保持された第二しきい値(例えば「3」)および第二設定値(例えば「7」)と異なるときに、同期化入力信号のサンプル結果が論理1であると、そのカウンタ値に「1」を加算する。換言すると、制御部11dは、そのカウンタ値が第二しきい値および第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値をカウントアップする。
【0056】
また、制御部11dは、そのカウンタ値が第一しきい値のときに同期化入力信号のサンプル結果が論理0であると、そのカウンタ値を第一設定値に変更する。換言すると、制御部11dは、そのカウンタ値が第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第一設定値に変更する。
【0057】
また、制御部11dは、そのカウンタ値が第二しきい値のときに同期化入力信号のサンプル結果が論理1であると、そのカウンタ値を第二設定値に変更する。換言すると、制御部11dは、そのカウンタ値が第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第二設定値に変更する。
【0058】
また、制御部11dは、そのカウンタ値が第一設定値のときに同期化入力信号のサンプル結果が論理0であると、そのカウンタ値を第一設定値に保持する。換言すると、制御部11dは、そのカウンタ値が第一設定値のときに論理0の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第一設定値に保持する。
【0059】
また、制御部11dは、そのカウンタ値が第二設定値のときに同期化入力信号のサンプル結果が論理1であると、そのカウンタ値を第二設定値に保持する。換言すると、制御部11dは、そのカウンタ値が第二設定値のときに論理1の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第二設定値に保持する。
【0060】
信号再生回路12は、計数回路11の計数値が第一しきい値のときに計数回路11による同期化入力信号のサンプル結果が論理0であると、論理0のデジタル信号(再生信号)を出力する。換言すると、信号再生回路12は、計数回路11の計数値が計数回路11の最小値(第一設定値)に設定されると、論理0のデジタル信号を出力する。
【0061】
また、信号再生回路12は、計数回路11の計数値が第二しきい値のときに計数回路11による同期化入力信号のサンプル結果が論理1であると、論理1のデジタル信号(再生信号)を出力する。換言すると、信号再生回路12は、計数回路11の計数値が計数回路11の最大値(第二設定値)に設定されると、論理1のデジタル信号を出力する。
【0062】
このため、信号再生回路12は、計数回路11の計数値が計数回路11の最小値(第一設定値)に変更されてからその計数値が計数回路11の最大値(第二設定値)に変更されるまで、論理0のデジタル信号を生成し、また、計数回路11の計数値が計数回路11の最大値(第二設定値)に変更されてからその計数値が計数回路11の最小値(第一設定値)に変更されるまで、論理1のデジタル信号を生成する。
【0063】
図1に戻って、内部論理回路22は、信号再生回路12にて生成されたデジタル信号を受け付ける。
【0064】
図4は、同期化回路21およびデジタル信号出力回路10の論理記述例を示した説明図である。図4では、同期化回路21およびデジタル信号出力回路10が、Verilog−HDLと呼ばれるハードウェア記述言語にて記載されている。また、図4で各行の左端に描かれた数字は行番号を示す。
【0065】
図4において、eliminate#noise#idea1は、デジタル信号出力装置(モジュール)名を示し、b_doは信号生成回路12にて生成されるデジタル信号を示し、bclockは内部クロックを示し、reset_zはリセット信号を示し、x_diは入力信号を示す。
【0066】
同期化回路21は、入力信号を内部クロックでサンプルする回路であり、直列に接続された2個のD型フリップフロップ(以下、D−FF)を含む。
【0067】
計数回路11は、4個の条件判断文を含む。
【0068】
第一の条件判断文(行番号34)によれば、計数回路11に初期値が与えられる。
【0069】
第二の条件判断文(行番号36)によれば、同期化入力信号が、論理1(例えば高レベル電圧)もしくは論理0(例えば低レベル電圧)であるかが判断され、その後、第三または第四の条件判断文に制御が渡される。
【0070】
第三の条件判断文(行番号37)は、同期化入力信号が論理1の場合に有効になる。第三の条件判断文によれば、現在の計数回路11の計数値が最大値(第二設定値)もしくは第二しきい値に等しい場合、その計数値は最大値(第二設定値)に設定される。また、第三の条件判断文によれば、計数回路11の計数値が最大値(第二設定値)および第二しきい値と異なる場合、その計数値に「1」が加算される。
【0071】
第四の条件判断文(行番号42)は、同期化入力信号が論理0の場合に有効になる。第四の条件判断文によれば、現在の計数回路11の計数値が最小値(第一設定値)もしくは第一しきい値に等しい場合、その計数値は最小値(第一設定値)に設定される。また、第四の条件判断文によれば、計数回路11の計数値が最小値(第一設定値)および第一しきい値と異なる場合、その計数値から「1」が減算される。
【0072】
信号再生回路12は、3個の条件判断文を含む。
【0073】
第一の条件判断文(行番号55)によれば、信号再生回路12に初期値が与えられる。
【0074】
第二の条件判断文(行番号57)によれば、同期化入力信号が論理0、かつ、計数回路11の計数値が第一しきい値に等しい場合に、論理0のデジタル信号が出力される。
【0075】
第三の条件判断文(行番号59)によれば、同期化入力信号が論理1、かつ、計数回路11の計数値が第二しきい値に等しい場合に、論理1のデジタル信号が出力される。
【0076】
信号再生回路12は、同期化入力信号の論理と計数回路11の計数値が、第一、第二、第三のいずれの条件判断文にも該当しない場合には、現在の出力を保持する。
【0077】
次に、動作を説明する。
【0078】
図5は、図1に示したデジタル信号出力装置の動作を説明するためのタイミング図である。以下、図5を参照して、デジタル信号出力装置の動作を説明する。
【0079】
なお、図5において、bclockは内部クロックを示し、reset_zはリセット信号を示し、x_diは入力信号を示し、async_di_r[1]は同期化回路21の初段のD−FFの出力を示し、async_di_r[2]は同期化回路21の2段目(最終段)のD−FFの出力を示し、b_balanceは計数回路11の計数値すなわちアップダウンカウンタ11aのカウンタ値を示し、b_doは信号再生回路12の出力を示す。
【0080】
reset_z信号が論理0(低レベル電圧)を保持し続ける時刻(1)までの間、計数回路11と信号再生回路12は、初期値を保持する。
【0081】
計数回路11と信号再生回路12の初期値は、入力信号(x_di)の初期状態によって設定される。
【0082】
図5のタイミング図では、入力信号(x_di)の初期状態が論理1(高レベル電圧)なので、計数回路11(制御部11d)は、計数回路11の計数値(アップダウンカウンタ11aのカウンタ値)の初期値を「7」に設定し、信号再生回路12は、信号再生回路12の初期値を論理1のデジタル信号に設定する。
【0083】
同期化回路21は、入力信号(x_di)を、内部クロック(bclock)でサンプルする。
【0084】
入力信号(x_di)が低速度で変化する場合、入力信号(x_di)が初段のD−FFの入力しきい電圧付近にとどまる時間が長くなる。
【0085】
図6(a)は、入力信号(x_di)とD−FFの入力しきい電圧とを示した説明図であり、図6(b)は、図6(a)の一部拡大図である。
【0086】
図6(b)に示したように、入力信号(x_di)は、微小な幅(振幅)を有している。このため、入力信号(x_di)は、初段のD−FFの入力しきい電圧を一気に横切るのではなく、ある時刻には入力しきい電圧を下回るが、次に瞬間には入力しきい電圧を上回ることがある。
【0087】
したがって、入力信号(x_di)がD−FFの入力しきい電圧を横切る際、初段のD−FFの出力(async_di_r[1])は、内部クロックの立ち上がりエッジごとに論理1と論理0を交互に出力する(図5の時刻(2)から(8)参照。)。
【0088】
計数回路11(制御部11d)は、同期化回路21の出力信号(async_di_r[2])が論理0、かつ、計数回路11の現在の計数値つまりアップダウンカウンタ11aのカウンタ値(b_balance)が、計数回路11の最小値「0」および第一しきい値「4」と等しくない場合、時刻(4)、(6)、(8)のとおり、現在の計数値(b_balance)から「1」を減算する。
【0089】
また、計数回路11(制御部11d)は、同期化回路21の出力信号(async_di_r[2])が論理0、かつ、現在の計数値(b_balance)が最小値「0」もしくは第一しきい値「4」に等しい場合、時刻(9)、(10)、(11)のとおり、計数回路11の計数値(b_balance)を最小値「0」に設定する。
【0090】
また、計数回路11(制御部11d)は、同期化回路21の出力信号(async_di_r[2])が論理1、かつ、現在の計数値(b_balance)が計数回路11の最大値「7」および第二しきい値「3」に等しくない場合、時刻(5)、(7)のとおり、現在の計数値(b_balance)に「1」を加算する。
【0091】
また、計数回路11(制御部11d)は、同期化回路21の出力信号(async_di_r[2])が論理1、かつ、現在の計数値(b_balance)が計数回路11の最大値「7」もしくは第二しきい値「3」に等しい場合、時刻(2)、(3)、(12)、(13)のとおり、計数回路11の計数値(b_balance)を最大値「7」に設定する。
【0092】
信号再生回路12は、計数回路11の計数値(b_balance)が第一しきい値「4」のときに同期化回路21の出力信号(async_di_r[2])が論理0であると、時刻(9)のとおり、論理0のデジタル信号を出力する。
【0093】
また、信号再生回路12は、計数回路11の計数値(b_balance)が第二しきい値「3」のときに同期化回路21の出力信号(async_di_r[2])が論理1であると、時刻(12)のとおり、論理1のデジタル信号を出力する。
【0094】
信号再生回路12は、現在の状況が自己の第一、第二、第三の条件判断文に該当しない場合には、出力中のデジタル信号を保持する。
【0095】
なお、本実施例において、x_diの初期状態が論理0ならば、計数回路11の初期値を「0」、信号再生回路12の初期値を論理0としてもよい。
【0096】
本実施例によれば、制御部11dは、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値が第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第一設定値に変更する。信号再生回路12は、その変更に伴い、論理0のデジタル信号を生成する。
【0097】
また、制御部11dは、そのカウンタ値が第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第二設定値に変更する。信号再生回路12は、その変更に伴い論理1のデジタル信号が生成される。
【0098】
このため、論理0のデジタル信号が生成された直後に、論理1の入力信号が受け付けられても、そのときのカウンタ値は第二しきい値より小さい第一設定値なので、論理1のデジタル信号は生成されない。また、論理1のデジタル信号が生成された直後に、論理0の入力信号が受け付けられても、そのときのカウンタ値は第一しきい値より大きい第二設定値なので、論理0のデジタル信号は生成されない。よって、デジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能になる。
【0099】
また、従来行われていた多数決方式または全一致方式を用いる必要がない。このため、生成するデジタル信号の論理値を決定する時間が長くなることを抑制可能になる。
【0100】
また、本実施例では、第一設定値が第二しきい値より1以上小さく、第二設定値が第一しきい値より1以上大きく、制御部11dは、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値が第一しきい値および第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を1だけ小さくし、また、そのカウンタ値が第二しきい値および第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を1だけ大きくする。この場合、デジタル信号の論理値が頻繁に切り替わることを抑制可能になる。
【0101】
また、本実施例では、制御部11dは、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値が第一設定値のときに論理0の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第一設定値に保持し、また、そのカウンタ値が第二設定値のときに論理1の入力信号を受け付けると、そのカウンタ値を第二設定値に保持する。
【0102】
この場合、カウンタ値を、第一設定値以上第二設定値以下の値にすることが可能となる。
【0103】
また、本実施例では、第一設定値はアップダウンカウンタ11aの最小値であり、第二設定値はアップダウンカウンタ11aの最大値である。
【0104】
この場合、アップダウンカウンタ11aのカウンタ値の、最大値から最小値への桁上げ(キャリー)、および、最小値から最大値への位借り(ボロー)を抑止することが可能となる。このため、生成されるデジタル信号の論理値が、キャリーおよびボローによって悪影響を受けることを防止できる。
【0105】
また、本実施例では、保持部11cは、入力部11bにて受け付けられた第一しきい値および第二しきい値を保持することが望ましい。
【0106】
この場合、第一しきい値および第二しきい値を任意の値に設定することが可能になる。このため、例えば、入力信号の種類に応じて、第一しきい値および第二しきい値を変更することが可能になる。
【0107】
次に、本発明の他の実施例を説明する。
【0108】
図7は、デジタル信号出力回路10の他の論理記述例を示した説明図である。本実施例では、信号再生回路12は、計数回路11の最上位ビット(b#balance[MSB])にて代用される。
【0109】
以上説明した各実施例において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施例のデジタル信号出力装置を示したブロック図である。
【図2】計数回路11の動作の一例を説明するための説明図である。
【図3】デジタル信号出力回路10の一例を示したブロック図である。
【図4】デジタル信号出力装置の一例を示した説明図である。
【図5】デジタル信号出力装置の動作を説明するためのタイミング図である。
【図6】入力信号と入力しきい値電圧とを示した説明図である。
【図7】デジタル信号出力装置の他の例を示した説明図である。
【図8】従来のデジタル信号出力装置を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
10 デジタル信号出力回路
11 計数回路
11a アップダウンカウンタ
11b 入力部
11c 保持部
11d 制御部
12 信号再生回路
20 バッファ
21 同期化回路
22 内部論理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に基づいてデジタル信号を生成するデジタル信号出力装置であって、
第一しきい値と、前記第一しきい値以下の第二しきい値と、前記第二しきい値より小さい第一設定値と、前記第一しきい値より大きい第二設定値と、を保持する保持部と、
アップダウンカウンタと、
前記アップダウンカウンタのカウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントダウンし、前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントアップし、前記カウンタ値が前記第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第一設定値に変更し、前記カウンタ値が前記第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第二設定値に変更する制御部と、
前記カウンタ値が前記第一設定値に変更されると論理0のデジタル信号の生成を開始し、前記カウンタ値が前記第二設定値に変更されると論理1のデジタル信号を生成を開始する信号再生部と、を含むデジタル信号出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル信号出力装置において、
前記第一設定値は、前記第二しきい値より1以上小さく、
前記第二設定値は、前記第一しきい値より1以上大きく、
前記制御部は、前記アップダウンカウンタのカウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を1だけ小さくし、また、前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を1だけ大きくする、デジタル信号出力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデジタル信号出力装置において、
前記制御部は、前記カウンタ値が前記第一設定値のときに論理0の入力信号を受け付けると、前記カウンタ値を前記第一設定値に保持し、また、前記カウンタ値が前記第二設定値のときに論理1の入力信号を受け付けると、前記カウンタ値を前記第二設定値に保持する、デジタル信号出力装置。
【請求項4】
請求項3に記載のデジタル信号出力装置において、
前記第一設定値は、前記アップダウンカウンタの最小値であり、前記第二設定値は、前記アップダウンカウンタの最大値である、デジタル信号出力装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のデジタル信号出力装置において、
前記第一しきい値および前記第二しきい値を受け付ける入力部をさらに含み、
前記保持部は、前記入力部にて受け付けられた第一しきい値および第二しきい値を保持する、デジタル信号出力装置。
【請求項6】
第一しきい値と前記第一しきい値以下の第二しきい値と前記第二しきい値より小さい第一設定値と前記第一しきい値より大きい第二設定値とを保持する保持部と、アップダウンカウンタと、を含むデジタル信号出力装置が行うデジタル信号出力方法であって、
前記アップダウンカウンタのカウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントダウンするカウントダウンステップと、
前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値をカウントアップするカウントアップステップと、
前記カウンタ値が前記第一しきい値のときに論理0の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第一設定値に変更する第一設定値変更ステップと、
前記カウンタ値が前記第二しきい値のときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を前記第二設定値に変更する第二設定値変更ステップと、
前記カウンタ値が前記第一設定値に変更されると、論理0のデジタル信号の生成を開始する論理0デジタル信号生成ステップと、
前記カウンタ値が前記第二設定値に変更されると、論理1のデジタル信号の生成を開始する論理1デジタル信号生成ステップと、を含むデジタル信号出力方法。
【請求項7】
請求項6に記載のデジタル信号出力方法において、
前記第一設定値は、前記第二しきい値より1以上小さく、
前記第二設定値は、前記第一しきい値より1以上大きく、
前記カウントダウンステップでは、前記カウンタ値が前記第一しきい値および前記第一設定値と異なるときに論理0の入力信号を受け付けると、前記カウンタ値を1だけ小さくし、
前記カウントアップステップでは、前記カウンタ値が前記第二しきい値および前記第二設定値と異なるときに論理1の入力信号を受け付けると前記カウンタ値を1だけ大きくする、デジタル信号出力方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のデジタル信号出力方法において、
前記カウンタ値が前記第一設定値のときに論理0の入力信号を受け付けると、前記カウンタ値を前記第一設定値に保持する第一設定値保持ステップと、
前記カウンタ値が前記第二設定値のときに論理1の入力信号を受け付けると、前記カウンタ値を前記第二設定値に保持する第二設定値保持ステップと、をさらに含むデジタル信号出力方法。
【請求項9】
請求項8に記載のデジタル信号出力方法において、
前記第一設定値は、前記アップダウンカウンタの最小値であり、前記第二設定値は、前記アップダウンカウンタの最大値である、デジタル信号出力方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載のデジタル信号出力方法において、
前記第一しきい値および前記第二しきい値を受け付ける入力ステップと、
前記受け付けられた第一しきい値および第二しきい値を前記保持部に格納して保持する保持ステップと、をさらに含むデジタル信号出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−352240(P2006−352240A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172333(P2005−172333)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(390001395)エヌイーシーシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】