説明

デジタル放送受信システム及びそれを構成するデジタル放送受信装置

【課題】スロットに装着されるアダプタの形状の違いを利用し、スロットを増やすことなく多機能化を実現するデジタル放送受信装置を提供する。
【解決手段】カード20が装着された2種類の形状のアダプタ30を装着可能なスロット47を有するデジタル放送受信装置40において、スロット47は、装着されたアダプタ30の形状の違いを検出する検出スイッチ49を備え、3.3V用アダプタを検出した場合、IP放送受信用カードであると判別し、通信部26、及び変換部27によるIP放送受信処理を許可し、5V用アダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、所定のスクランブル放送の解除を許可する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードと、該カードが装着されるアダプタと、2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットを有するデジタル放送受信装置とを含むデジタル放送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル地上波を使用した地上デジタルテレビ放送(以下、「デジタル放送」と言う)においては、所定の対価を支払って正規の受信契約を結んだ視聴者のみが番組を正しく視聴することができるように、限定受信(CA:Conditional Access)システムが採用されている。
【0003】
この限定受信システムでは、番組提供者側が、番組を構成する映像信号や音声信号にスクランブル処理を施して送信するとともに、正規の受信契約を交わした視聴者に対して、スクランブル解除用のカードを支給する。
【0004】
そして、視聴者がデジタル放送受信装置にカードを装着することにより、受信した映像信号や音声信号に対してデスクランブル処理を施すことができ、番組を正しく視聴することが可能となる。なおデジタル放送受信装置としては、例えばデジタルチューナ、デジタル放送受信対応テレビ、デジタル放送受信対応ハードディスクレコーダ等がある。
【0005】
また、デジタル放送の方式は世界共通ではなく、各地域で異なった規格が採用されている。従ってそれぞれの放送方式に応じて、スクランブル解除用のカードの規格も異なっている。例えば、日本ではスクランブル解除用のB−CAS(BS Conditional Access Systems)カードを直接デジタル放送受信装置の所定スロットに差し込むようになっている。しかし欧州では、スクランブル解除用のカードを5V用アダプタに差し込み、それをデジタル放送受信装置のCI(Common Interface)スロットに装着するようになっている。なお、CIスロットには3.3V用アダプタも装着可能となっている。
【0006】
ところで、デジタル放送サービスが普及するにしたがって、デジタル放送受信装置はさらなる多機能化が進んでいる。
【0007】
例えば特許文献1には、リモコン側にカードスロットを設け、IP放送用テレビで動作するプログラムやデータを格納しておき、赤外線でIP放送用テレビに転送し、IP放送用テレビでプログラムを実行してインターネットに接続するIP放送用テレビが開示されている。これによると、インターネットカードさえ持っていれば、いかなるIP放送用テレビでも同一の設定で利用可能である。
【0008】
また例えば特許文献2には、ネット家電としてのデジタル・テレビジョン受像機にハードウェア・キー入力部を設けて、識別したハードウェア・キーに関連付けて、デジタル・テレビジョン受像機の機能制限、利用状況の履歴記録を行う受像器システムが開示されている。これによると、デジタル・テレビジョン受像機の利用管理ができるとともに、外出時や就寝時などハードウェア・キーを用いない場合、自動的に省電力モードになるように制御することで、電気代を節約することができる。
【特許文献1】特開2004−260860号公報
【特許文献2】特開2002−325207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようにデジタル放送受信装置には、デジタル放送受信装置の設定・管理を行ったり視聴者を識別したりするための様々な機能が備えられている。また特許文献1や特許文献2では、インターネットカードやハードウェア・キーを利用したデジタル放送受信装置の多機能化が提案されている。しかしながら、特許文献1や特許文献2においては、CIスロットを採用したデジタル放送受信装置に関しては考慮がなされていない。つまりCIスロットにおいて用いられる5V用アダプタと3.3V用アダプタの形状の違いを利用した機能については、開示も示唆もなされていない。
【0010】
本発明は、CIスロットに装着されるアダプタの形状の違いを利用し、CIスロットを増やすことなく多機能化を実現するデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。また、このデジタル放送受信装置を含むデジタル放送受信システムと、それを構成するスクランブル解除兼IP放送受信用カードとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、カードと、該カードが装着されるアダプタと、2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと、制御部とを有するデジタル放送受信装置とを含むデジタル放送受信システムにおいて、前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、前記デジタル放送受信装置の制御部は、一方の形状のアダプタを検出した場合、IP(Internet Protocol)放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードを装着可能なアダプタであると判別し、スクランブル解除用カードが該アダプタに装着されている場合にスクランブル放送の解除を許可することを特徴とする。
【0012】
この構成によると、デジタル放送受信装置のスロットが、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備えている。そして一方の形状のアダプタ、例えば側面突起部により検出スイッチを押下する形状のアダプタが検出された場合、IP放送を受信可能であるカード(=IP放送受信用カード)を装着可能なアダプタであると判別する。IP放送受信用カードは、IP通信網に接続可能な通信部を備えている。通信部は例えば、UTP(Unshielded Twist Pair cable)ケーブルを接続可能な接続端子を備え、この端子を用いて入力した電気信号をIPパケットに復調する。通信部により得られたIPパケットは変換部に送られる。変換部はIPパケットの内部を解析してMPEG−2TS(MPEG−2トランスポートストリーム)方式のデータ(以下、「TS」と言う)を生成する。これによりTSに含まれる映像データ及び音声データを得ることが可能となる。
【0013】
また他方の形状のアダプタ、例えば検出スイッチを押下する突起部が備わっていない形状のアダプタが検出された場合、デジタル放送のスクランブル解除用カードを装着可能なアダプタであると判別する。このアダプタにスクランブル解除用カードが装着された場合、デジタル放送受信装置は所定のスクランブル放送の解除を許可する。このように、アダプタの形状の違いを利用して、IP放送受信用カードとスクランブル解除用カードとのどちらが装着されているかを判別することができる。
【0014】
また本発明は、カードと、該カードが装着されるアダプタと、2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと、制御部とを有するデジタル放送受信装置とを含むデジタル放送受信システムにおいて、前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、前記デジタル放送受信装置の制御部は、一方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除兼IP放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カードが該アダプタに装着されている場合にスクランブル放送の解除を許可すると共に、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、スクランブル放送の解除を許可することを特徴とする。
【0015】
この構成によると、デジタル放送受信装置のスロットが、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備えている。そして一方の形状のアダプタが検出された場合、IP放送を受信可能であり、かつ所定のスクランブル放送の解除を許可するカード(=スクランブル解除兼IP放送受信用カード)を装着可能なアダプタであると判別する。また他方の形状のアダプタが検出された場合、デジタル放送のスクランブル解除用カードを装着可能なアダプタであると判別する。このように、アダプタの形状の違いを利用して、スクランブル解除兼IP放送受信用カードとスクランブル解除用カードとのどちらが装着されているかを判別することができる。
【0016】
また本発明は、前記一方の形状のアダプタが3.3V用、前記他方の形状のアダプタが5V用であることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、上記のデジタル放送受信システムにおいて、前記一方の形状のアダプタが3.3V用、前記他方の形状のアダプタが5V用の形状をしている。これは従来、欧州のデジタル放送受信装置においては3.3V用と5V用の兼用のスロットが採用されているためである。なお、スクランブル解除用カードは5V用のアダプタに装着されて使用される。
【0018】
また本発明は、前記検出スイッチは、前記一方の形状のアダプタでは押下され、前記他方の形状のアダプタでは押下されないことを特徴とする。
【0019】
この構成によると、上記のデジタル放送受信システムにおいて、検出スイッチは、一方の形状のアダプタでは押下され、他方の形状のアダプタでは押下されない。これにより検出スイッチは、挿入されたアダプタがどちらの形状であるかを確実に判別することができる。また、検出スイッチとしてタクトスイッチなど安価なスイッチを採用することができる。
【0020】
また本発明をデジタル放送受信装置に適用すると、カードが装着された2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと制御部とを有するデジタル放送受信装置において、前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、前記制御部は、一方の形状のアダプタを検出した場合、IP放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、映像及び音声の出力とスクランブル放送の解除とを許可する構成となる。
【0021】
また本発明をデジタル放送受信装置に適用すると、カードが装着された2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと制御部とを有するデジタル放送受信装置において、前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、前記制御部は、一方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除兼IP放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カードが該アダプタに装着されている場合にスクランブル放送の解除を許可すると共に、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、スクランブル放送の解除を許可する構成となる。
【0022】
同様に、上記のデジタル放送受信装置においては、前記一方の形状のアダプタが3.3V用、前記他方の形状のアダプタが5V用の形状をしている。
【0023】
また同様に、上記のデジタル放送受信装置においては、検出スイッチは、一方の形状のアダプタでは押下され、他方の形状のアダプタでは押下されない。
【0024】
また本発明のスクランブル解除兼IP放送受信用カードは、アダプタを介してデジタル放送受信装置のスロットに装着され、スクランブル放送の解除を行うデスクランブル部と、IP通信網に接続されて通信を行う通信部と、通信部から入力されたIPパケットを音声データ及び映像データに変換する変換部とを備えたことを特徴とする。
【0025】
この構成によると、スクランブル解除兼IP放送受信用カードにより、デスクランブル処理とIP放送の受信との両方の機能を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、一方の形状のアダプタ及びIP放送受信用カードが装着されている場合には前記カードによるIP放送受信処理を許可し、他方の形状のアダプタ及びスクランブル解除用カードが装着されている場合にはデスクランブル処理を許可することにより、スロットを増やすことなくIP放送受信機能を付加でき多機能化を実現することができる。
【0027】
また本発明によれば、一方の形状のアダプタ及びスクランブル解除兼IP放送受信用カードが装着されている場合にはデスクランブル処理及び前記カードによるIP放送受信処理を許可し、他方の形状のアダプタ及びスクランブル解除用カードが装着されている場合にはデスクランブル処理を許可することにより、スロットを増やすことなくIP放送受信機能を付加でき多機能化を実現することができる。
【0028】
また、スロットを増やすことがないので装置の大型化やコスト上昇の問題もない。また、IP放送を受信するためのセットトップボックスの増設及び接続を行う必要がないため、デジタル放送受信装置周辺のスペースを有効活用できると共に、手間を掛けず素早くIP放送の受信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明のデジタル放送受信システムの概略構成を示すブロック図である。デジタル放送受信システム10は、カード20と、カード20が装着されるアダプタ30と、2種類の形状のアダプタを装着可能なデジタル放送受信装置40と、アンテナ60とを含んでいる。
【0030】
そしてデジタル放送受信装置40は、デジタルチューナ部41と、復調&FEC部42と、データ分離部43と、映像・音声デコード部44と、映像合成部45と、音声D/Aコンバータ46と、スロット47と、切替部48と、検出スイッチ49と、制御部50とを備えている。
【0031】
アンテナ60は、チューナ部に接続されており、デジタル放送の放送電波を受信し、電気信号である放送信号に変換してデジタルチューナ部41へ出力する。デジタルチューナ部41は、アンテナ60から入力された放送信号から制御部50が指示する周波数の放送信号を抽出し、該抽出した放送信号に対して周波数変換を行って中間周波数信号を生成し、復調&FEC部42へ出力する。
【0032】
復調&FEC部42は、中間周波数信号に対して復調及びエラー訂正(FEC)等を行ってTSを生成し、スクランブルの掛かっていないTSの場合はデータ分離部43へ出力し、スクランブルの掛かっているTSの場合はカード20へ出力する。装着されているカード20が後述するスクランブル解除用カード25又はスクランブル解除兼IP放送受信用カード28である場合は、カード内でTSがデスクランブル処理されデータ分離部43へ出力される。
【0033】
データ分離部43は、入力されたTSを映像ストリームと音声ストリームとに分離し、映像・音声デコード部44へ出力する。映像・音声デコード部44は、データ分離部43から入力された映像ストリーム及び音声ストリームを、MPEG−2方式で圧縮された映像データ及び音声データへデコードする。そしてデコードした映像データを映像合成部45へ出力し、デコードした音声データを音声D/Aコンバータ46へ出力する。
【0034】
映像合成部45は、入力された映像データと、自ら生成した映像データとを合成し、合成データに基づく表示用信号を表示装置(不図示)へ出力する。また、映像合成部45は、上記合成を行わず、自ら生成した映像データに基づく表示用信号を出力する機能も備えている。
【0035】
音声D/Aコンバータ46は、入力された音声データをデジタルからアナログに変換し、スピーカ(不図示)へ出力する。なお、表示装置及びスピーカは、デジタル放送受信装置40と一体である形態でもよいし、外部装置として接続する形態であってもよい。
【0036】
スロット47は、2種類の形状のアダプタ30を装着可能なスロットである。ここでは、駆動電圧が5V用のアダプタと3.3V用のアダプタとを装着できるものとして説明する。切替部48は制御部50とスロット47との間に設けられ、制御部50の指示によって切替部48内の回路の切り替えを行う。これにより電源部(不図示)からスロット47に供給される電源電圧を5V用と3.3V用とで変更することが可能である。
【0037】
検出スイッチ49は、スロット47内に設けられ、スロット47に装着されるアダプタ30の形状の違いを検出するためのものである。なお、検出スイッチ49の詳細については後述する。
【0038】
制御部50は、デジタル放送受信装置40の各部を制御するためのものである。制御部50は例えば、デジタルチューナ部41に対して抽出する放送信号の周波数を指示したり、文字や図形等の映像データを生成して映像合成部45へ出力したりする。
【0039】
カード20には複数の種類があり、例えば受信契約を結んだ視聴者に支給されるスクランブル解除用カード21、デジタル放送受信装置40の付属品でありIP放送を受信可能なIP放送受信用カード25、及び両者の機能を兼ね備えたスクランブル解除兼IP放送受信用カード28が存在する。またアダプタ30には複数の種類があり、例えば5Vの電源電圧で駆動する5V用アダプタ31(=他方の形状のアダプタ)と、5V及び3.3Vの両方の電源電圧で駆動可能な3.3V用アダプタ32(=一方の形状のアダプタ)が存在する。
【0040】
スクランブル解除用カード21は5V用アダプタ31に装着して用いる仕様となっている。IP放送受信用カード25及びスクランブル解除兼IP放送受信用カード28は3.3V用アダプタ32に装着して用いる仕様となっている。なお、カード20の形態には特に限定はなく、例えば、ICカード、SDメモリカード、CFカードなどを用いることができる。
【0041】
図2に、5V用アダプタ31にスクランブル解除用カード21が装着された状態のブロック図を示す。また図3に、3.3V用アダプタ32にIP放送受信用カード25が装着された状態のブロック図を示す。また図4に、3.3V用アダプタ32にスクランブル解除兼IP放送受信用カード28が装着された状態のブロック図を示す。
【0042】
図2に示すように、スクランブル解除用カード21は5V用アダプタ31に装着して使用する。スクランブル解除用カード21には、解除キー22と、デスクランブル部23とが内蔵されている。
【0043】
解除キー22は、スクランブルの掛かった所定の番組を解除するためのキー情報であり、この解除キー22の種類によって受信契約を結んだ番組のスクランブル解除を行うことができる。デスクランブル部23は、復調&FEC部42から入力されたTSをデスクランブル処理し、データ分離部43へ出力する。以後の処理はスクランブルの掛かっていないTSと同様に行うことができる。
【0044】
図3に示すように、IP放送受信用カード25は3.3V用アダプタ32に装着して使用する。IP放送受信用カード25には通信部26、及び変換部27が内蔵されている。
【0045】
通信部26は、LAN(Local Area Network)等のIP通信網に接続されて電気信号の入出力を行う。入力された信号は復調されてIPパケットとなる。なお通信部26には固有のMACアドレスやIPアドレスが割り当てられており、これによりIP通信網に接続された他装置との通信を行うことが可能である。具体的には例えば、100BASE−TX等の通信規格に準拠したLAN端子を備えており、これにツイストペアケーブルを差し込むことによりIP通信網に接続される。或いは、IEEE802.11等の無線通信規格に準拠した無線LANに接続可能な無線装置を備える形態であってもよい。
【0046】
変換部27は、通信部26より入力したIPパケットの内部を解析し、複数のIPパケットからTSを生成する。生成されたTSはスロット47を介してデータ分離部43へ出力される。これによりMPEG方式で圧縮された映像データ及び音声データを得ることができる。
【0047】
図4に示すように、スクランブル解除兼IP放送受信用カード28は3.3V用アダプタ32に装着して使用する。スクランブル解除兼IP放送受信用カード28は、上記のスクランブル解除用カード21とIP放送受信用カード25の機能を合わせもったカードであり、解除キー22、デスクランブル部23、通信部26、及び変換部27が内蔵されている。このスクランブル解除兼IP放送受信用カード28によれば、デスクランブル処理とIP放送受信処理とを行うことができる。
【0048】
図5は、5V用アダプタ31の外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図6は、3.3V用アダプタ32の外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図5では図示していないが、スクランブル解除用カード21は5V用アダプタ31の背面側から挿入されて5V用アダプタ31内に装着される。また図6では図示していないが、IP放送受信用カード25及びスクランブル解除兼IP放送受信用カード28は3.3V用アダプタ32の背面側から挿入されて3.3V用アダプタ32内に装着される。
【0049】
図5と図6を比較するとわかるように、5V用アダプタ31及び3.3V用アダプタ32の右側面の正面端部には、それぞれ切り欠き31a、切り欠き32aが形成されており、切り欠き31aの厚みが切り欠き32aの厚みよりも厚くなっている。5V用アダプタ31及び3.3V用アダプタ32のそれ以外の形状は同じである。
【0050】
次に、検出スイッチ49の詳細について説明する。図7は、5V用アダプタ31が装着された状態の検出スイッチ49の外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図8は、3.3V用アダプタ32が装着された状態の検出スイッチ49の外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0051】
検出スイッチ49は、スロット47の側面47aに配設されている。図7に示すように5V用アダプタ31がスロット47に装着された場合、検出スイッチ49は切り欠き31aにより5V用アダプタ31の側面と接触せず、従って押下されない。また図8に示すように3.3V用アダプタ32がスロット47に装着された場合、検出スイッチ49は切り欠き32aの下方のアダプタ側面32bと接触して押下される。
【0052】
検出スイッチ49は、略直方体であり、少なくとも挿入側端部49aの角は、丸めるか斜めに形成しておくことが望ましい。これは3.3V用アダプタ32が挿入される際に検出スイッチ49がスムーズに押下されるようにするためである。また検出スイッチ49は、押下されていない状態でOFF、押下されている状態でONとなるスイッチであり、タクトスイッチなどを用いることができる。
【0053】
なお、検出スイッチ49は上記の形状に限定されることはなく、例えば、棒状(針状)にしてアダプタ30の挿入方向に押下されるように、切り欠き31aに対向するスロット47の奥面47bに配設してもよい。
【0054】
次に、スクランブル解除及びIP放送受信に関するデジタル放送受信装置40の動作について説明する。図9は、デジタル放送受信装置40の動作を示すフローチャートである。
【0055】
まず制御部50は、ステップS10においてカード20及びアダプタ30がスロット47に装着されたか否かを判別する。これは、制御部50に入力されるカードディテクト信号によって判別される。例えば、スロット47に何も装着されていない場合にはカードディテクト信号がhighになるようにし、カード20及びアダプタ30が装着された場合にはカードディテクト信号がlowとなるようにすれば判別できる。
【0056】
ステップS10においてアダプタ30がスロット47に装着されていないと判別した場合は、ステップS11へ進んで、アンテナ60及びデジタルチューナ41から入力したTSをデスクランブル処理なしで出力する。つまり、スクランブルの掛かっていない番組は視聴できるがスクランブルの掛かった番組は視聴できない状態となる。
【0057】
一方、ステップS10においてアダプタ30がスロット47に装着されていると判別した場合は、ステップS12へ進んで検出スイッチ49のON/OFFを判別する。ステップS12において検出スイッチ49の状態がOFFと判別された場合、5V用アダプタ31が装着されていると判断される。この結果、ステップS13へ進んでスクランブル解除用カード21によるデスクランブル処理を許可する。
【0058】
一方、ステップS12において検出スイッチ49の状態がONと判別された場合、3.3V用アダプタ32が装着されていると判断される。このため、ステップS14へ進んでデスクランブル処理及びIP放送受信処理を許可する。ただし3.3V用アダプタ32にIP放送受信用カード25が装着されている場合、デスクランブル処理の許可はなされるものの、実際にはデスクランブル処理は実施されない。
【0059】
IP放送受信処理の許可がなされると、ステップS15へ進んで通信部26がIP通信網に接続されているかを判別する。具体的には例えば、予めIP放送受信用カード25に設定されているデフォルトゲートウェイに対して所定の信号を送信することにより、IP通信網に接続されているかどうかを判別する。ステップS15においてIP通信網に接続されていないと判別した場合は、ステップS16へ進みIP放送の受信処理を行わない。従ってTSの出力も行われない。
【0060】
一方、ステップS15においてIP通信網に接続されていると判別した場合、ステップS17へ進んで通信部26によるIP放送データを含むIPパケットの取得、及び変換部27によるIPパケットからTSへの変換を行う。変換により得られたTSは、スロット47を経由してデータ分離部43に送られる。これによりユーザはリモコン等の操作部(不図示)を操作することにより、IP放送を受信して視聴することが可能となる。
【0061】
なお、デジタルチューナ部41により受信されるデジタル放送と、IP放送受信用カード25及びスクランブル解除兼IP放送受信用カード28により受信されるテレビ放送とのどちらを出力表示するかの選択は、例えば映像合成部45により生成されるOSD(On Screen Display)画面等により行う。ユーザはデジタル放送受信装置40の各種設定を行うためのOSD画面を表示させ、その中で視聴する放送種別を選択することが可能である。また或いは、リモコン等の操作部に予め放送種別切り替え用のボタンが備えられている形態でもよい。
【0062】
このように、5V用アダプタ31が装着されている場合にはデスクランブル処理を許可し、3.3V用アダプタ32が装着されている場合にはIP放送受信処理及びデスクランブル処理を許可することにより、スロットを増やすことなくIP放送受信機能を付加でき、多機能化を実現することができる。また、スロットを増やすことがないので装置の大型化やコスト上昇の問題もない。また、IP放送を受信するためのセットアップボックスの増設及び接続を行う必要がないため、デジタル放送受信装置40周辺のスペースを有効活用できると共に、手間を掛けず素早くIP放送の受信を行うことができる。
【0063】
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0064】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
(A)本実施形態では、IP放送受信用カード25に通信部26、及び変換部27を備えているが、これらの一部または全部が3.3V用アダプタ32に搭載されている実施形態であってもよい。また、アダプタ機能を持たない3.3V用のCIカードに対して上記機能部を搭載する実施形態であってもよい。この場合、3.3V用CIカードにスロット47を設ける必要がないため、3.3V用CIカードの構成を簡略化することができる。
【0065】
(B)本実施形態では一方の形状のアダプタとして3.3V用アダプタ32、他方の形状のアダプタとして5V用アダプタ31を例に挙げて説明しているが、これら以外の形状のアダプタを用いて、アダプタの性能を判別する形態であってもよい。
【0066】
(C)本実施形態では、IP放送受信用カード25及びスクランブル解除兼IP放送受信用カードが復調して出力するデータとしてMPEG−2TS方式のデータを例に挙げて説明しているが、これ以外の方式、例えばMPEG−2PS方式のデータ等を復調して出力する形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のデジタル放送受信装置は、セットトップボックスをはじめとし、テレビ、DVDレコーダやHDDレコーダ等の記録再生装置、それらの複合機に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のデジタル放送受信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】5V用アダプタにスクランブル解除用カードが装着された状態のブロック図である。
【図3】3.3V用アダプタにIP放送受信用カードが装着された状態のブロック図である。
【図4】3.3V用アダプタにスクランブル解除兼IP放送受信用カードが装着された状態のブロック図である。
【図5】5V用アダプタの外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】3.3V用アダプタの外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である
【図7】5V用アダプタが装着された状態の検出スイッチの外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図8】3.3V用アダプタが装着された状態の検出スイッチの外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図9】デジタル放送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
10 デジタル放送受信システム
20 カード
21 スクランブル解除用カード
25 IP放送受信用カード
26 通信部
27 変換部
28 スクランブル解除兼IP放送受信用カード
30 アダプタ
31 5V用アダプタ(他方の形状のアダプタ)
32 3.3V用アダプタ(一方の形状アダプタ)
47 スロット
49 検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードと、該カードが装着されるアダプタと、2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと、制御部とを有するデジタル放送受信装置と、
を含むデジタル放送受信システムにおいて、
前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、
前記デジタル放送受信装置の制御部は、
一方の形状のアダプタを検出した場合、IP(Internet Protocol)放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、
他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードを装着可能なアダプタであると判別し、スクランブル解除用カードが該アダプタに装着されている場合にスクランブル放送の解除を許可すること
を特徴とするデジタル放送受信システム。
【請求項2】
カードと、該カードが装着されるアダプタと、2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと、制御部とを有するデジタル放送受信装置と、
を含むデジタル放送受信システムにおいて、
前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、
前記デジタル放送受信装置の制御部は、
一方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除兼IP放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カードが該アダプタに装着されている場合にスクランブル放送の解除を許可すると共に、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、
他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、スクランブル放送の解除を許可すること
を特徴とするデジタル放送受信システム。
【請求項3】
前記一方の形状のアダプタが3.3V用、前記他方の形状のアダプタが5V用であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のデジタル放送受信システム。
【請求項4】
前記検出スイッチは、前記一方の形状のアダプタでは押下され、前記他方の形状のアダプタでは押下されないこと
を特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載のデジタル放送受信システム。
【請求項5】
カードが装着された2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと制御部とを有するデジタル放送受信装置において、
前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、
前記制御部は、
一方の形状のアダプタを検出した場合、IP放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、
他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、映像及び音声の出力とスクランブル放送の解除とを許可すること
を特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項6】
カードが装着された2種類の形状のアダプタを装着可能なスロットと制御部とを有するデジタル放送受信装置において、
前記スロットは、装着されたアダプタの形状の違いを検出する検出スイッチを備え、
前記制御部は、
一方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除兼IP放送受信用カードを装着可能なアダプタであると判別し、該カードが該アダプタに装着されている場合にスクランブル放送の解除を許可すると共に、該カード内の通信部によるIP通信網との通信と、変換部によるIPパケットから音声データ及び映像データへの変換とを許可し、
他方の形状のアダプタを検出した場合、スクランブル解除用カードであると判別し、スクランブル放送の解除を許可すること
を特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項7】
前記一方の形状のアダプタが3.3V用、前記他方の形状のアダプタが5V用であること
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項8】
前記検出スイッチは、前記一方の形状のアダプタでは押下され、前記他方の形状のアダプタでは押下されないこと
を特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載のデジタル放送受信装置。
【請求項9】
アダプタを介してデジタル放送受信装置のスロットに装着されるスクランブル解除兼IP放送受信用カードであって、
スクランブル放送の解除を行うデスクランブル部と、
IP通信網に接続されて通信を行う通信部と、通信部から入力されたIPパケットを音声データ及び映像データに変換する変換部と、
を備えたことを特徴とするスクランブル解除兼IP放送受信用カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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