説明

デジタルNMR信号処理システムおよび方法

【課題】スーパーヘテロダイン式の受信器を使用する従来の信号処理方式により、システムの複雑さおよび費用が増加し、かつアナログ式ミキサーにより振動・他の人工的信号が入り込むなどを避ける手段を提供する。
【解決手段】デジタルダウンコンバージョンおよびサブサンプリングを使用した核磁気共鳴(NMR)受信器を採用する。既知の位相に対応する、参照時間、送信および受信信号位相を追跡する。デジタルダウンコンバージョン54および搬送位相補正55は、対象となるNMR変調を生成するために行われ、位相決定回路52は、fsでインクリメントされるNビットカウンタと、各過渡的なサンプリング期間開始用の搬送生成器再設定から経過した時間を示すカウントレジスタを含む。これにより検知されたNMR信号に対して位相補正を適用し、送信器もしくはダウンコンバータNCO再設定などのシステム変更または搬送周波数変更を補償できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(NMR)分光法に関し、特に、NMR分光計における取り外し可能な極低温NMR接続を形成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)分光計は通常、静磁場B0を生成するための超伝導磁石と、静磁場B0に垂直な、経時変化する磁場B1を生成するため、および、印加された磁場に対する試料の反応を検知するための1つ以上の特定用途の高周波(RF)コイルを含むNMRプローブとを含んでいる。各RFは、その関連する電気回路とともに、試料中に存在する対象となる核のラーモア周波数で共鳴することができる。RFコイルは通常、NMRプローブの一部として提供され、試料管またはフローセル内に置かれた試料を分析するために使用される。
【0003】
対象となるNMR周波数は、対象となる核および印加された静磁場B0の強度によって決定される。NMR測定の感度を最大化するために、励起/検知電気回路の共鳴周波数は、対象となる周波数と等しくなるよう設定される。NMR実験では、多くの種類の情報を決定するために、取得したデータセット(ベクトル)の間の位相関係に関する情報を使用する。このような情報は、空間的情報、化学シフトおよび核間接触時間を含んでいてもよい。
【0004】
NMRシステムは通常、印加されたRFエネルギーに対するNMR試料の反応を検知するために、スーパーヘテロダイン式の受信器を使用する。送信位相で、局所的な発振器信号は、送信側のミキサーを使用して、連続波またはパルス状の中間周波数信号にミキシングされて、送信NMR信号を生成し、これが対象となる試料に印加される。続く受信段階で、受信されたNMR信号は、受信側のミキサーを使用して、局所的な発振器信号にミキシングされて、試料NMR反応を示す中間周波数受信信号を生成する。
【0005】
図1は、RFエネルギーを試料コイル24に印加するための送信器1100と、試料コイル24からのNMR信号を検知するための受信器1200とを含む、例示的な先行技術のNMRシステム1000を示している。送信器1100は、局所的発振器1104および中間周波数(IF)源1106により生成されたRF信号をミキシングするミキサー1012を含んでいる。受信器1200は、局所的発振器1104により生成されたRF信号と試料コイル24から受信されたRF信号とをミキシングして対象となるIF NMR信号を生み出すミキサー1202を含んでいる。増幅器1204、1206は、ミキサー1202の前後で、受信した信号を増幅するために使用される。IF NMR信号は、NMRスペクトルなどの所望のNMRデータをさらに生み出すために、デジタル化され処理されてもよい。
【0006】
このような送信/受信信号処理方式により、低い振幅および高い周波数を共有している、対象となるNMR信号を、正確に生成および検知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような信号処理方式により、NMRシステムの複雑さおよび費用が著しく増加する場合があり、アナログ式ミキサーにより振動または他の人工的信号が入り込む場合がある。なお、いくつかのマルチチャンネルNMRシステムでは、16〜20個のミキサーならびに関連するケーブルおよび他のRF構成要素を使用していてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の核磁気共鳴(NMR)測定方法は、送信信号シンセサイザとサンプリングカウンタとを同期させるステップであって、前記送信信号シンセサイザは、NMR高周波数(RF)送信信号の少なくとも搬送周波数成分を生成するステップと、前記サンプリングカウンタにより生成された信号サンプリングカウントをインクリメントし、前記送信NMR信号の前記搬送周波数成分の搬送周波数fcおよび受信したNMR信号よりも低いサンプリング周波数fsで、受信したNMR信号をデジタル式にサンプリングするステップであって、前記受信したNMR信号は、前記送信信号に応答して、NMR試料により生成されるステップと、前記送信信号シンセサイザと前記サンプリングカウンタとを同期させる時間を参照して、前記送信信号の送信位相を示す前記サンプリングカウントの値を保存するステップと、前記受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするステップと、前記サンプリングカウントの前記保存された値に従って、前記デジタル化されダウンコンバートされたNMR信号に対し位相補正を行うステップとを含んでいる。
【0009】
本発明の別の局面によれば、NMR機器は、NMR RFコイルに送信されるNMR高周波(RF)送信信号の少なくとも搬送周波数成分を生成するよう構成された送信信号シンセサイザであって、前記搬送周波数成分は搬送周波数fcを有している送信信号シンセサイザと、前記搬送周波数fcよりも低いサンプリング周波数fsで、受信したNMR信号をデジタル式にサンプリングするよう構成されたアナログ・デジタルコンバータであって、前記受信したNMR信号は、前記送信信号に応答して、NMR試料により生成され、当該アナログ・デジタルコンバータによりサンプリングされた前記受信したNMR信号は、前記搬送周波数fcを有している、アナログ・デジタルコンバータと、前記サンプリング周波数fsでインクリメントされた信号サンプリングカウントを保存するサンプリングカウンタと、前記サンプリングカウンタに接続されたサンプリングカウントレジスタであって、前記送信信号シンセサイザと前記サンプリングカウンタとの同期の時間を参照して、前記送信信号の送信位相を示す前記信号サンプリングカウントの値を保存するよう構成されたサンプリングカウントレジスタと、前記送信信号シンセサイザおよび前記送信信号サンプリングカウンタに接続されたリアルタイムコントローラであって、前記送信信号シンセサイザと前記送信信号サンプリングカウンタとを同期させるよう構成されたリアルタイムコントローラと、前記アナログ・デジタルコンバータおよび信号処理論理回路に接続され、前記受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするよう構成されたデジタルダウンコンバータと、前記サンプリングカウントレジスタおよび前記デジタルダウンコンバータに接続された信号処理論理回路であって、前記サンプリングカウントの前記保存された値に従い、前記デジタル化されダウンコンバートされたNMR信号に対して位相補正を行うよう構成された信号処理論理回路とを備えている。
【0010】
本発明の別の局面によれば、NMR測定方法は、受信したNMR信号をサンプリング周波数fsでデジタル化するステップであって、前記受信したNMR信号は、前記サンプリング周波数fsよりも高い搬送周波数fcを有する搬送周波数成分を有しているステップと、ハードウェアカウンタを使用し、参照事象を参照して、前記搬送周波数成分の位相を示すカウントを周期的にインクリメントするステップと、前記デジタル化された受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするステップと、前記カウントに従い、前記デジタル化された受信したNMR信号に対して位相補正を行うステップとを含んでいる。
【0011】
本発明の別の局面によれば、NMR機器は、NMRサンプリング周波数fsで、受信したNMR信号をデジタル化するよう構成されたアナログ・デジタルコンバータであって、前記受信したNMR信号は、前記サンプリング周波数fsよりも高い搬送周波数fcを有する搬送周波数成分を有している、アナログ・デジタルコンバータと、参照事象を参照して、前記搬送周波数成分の位相を示すカウントを周期的にインクリメントするよう構成されたカウンタと、前記アナログ・デジタルコンバータおよび信号処理論理回路に接続され、前記デジタル化された受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするよう構成されたデジタルダウンコンバータと、前記カウンタおよび前記デジタルダウンコンバータに接続され、前記カウントに従って、前記デジタル化されたNMR信号に対し位相補正を行うよう構成された信号処理論理回路とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アナログミキサーを使用した、先行技術のNMR回路の一部を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、例示的なNMR分光計の模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る、送信/受信スイッチを介してNMRプローブに接続された送信器および受信器を含む例示的なNMRシステムを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、例示的なデジタルNMR受信器および位相決定回路を示す図である。
【図5−A】本発明の実施形態に係る、例示的なデジタルNMR搬送位相決定回路を示す図である。
【図5−B】本発明の実施形態に係る、例示的なマルチシンセサイザデジタルNMR搬送位相決定回路を示す図である。
【図6−A】本発明の実施形態に係る、検索テーブルを含む例示的なデジタルNMR搬送位相決定回路の信号処理論理回路部を示す図である。
【図6−B】本発明の実施形態に係る、検索テーブルを含む別の例示的なデジタルNMR搬送位相決定回路の信号処理論理回路部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上記局面および利点は、以下の詳細な説明を読み、図面を参照することで、よりよく理解されるであろう。
以下の説明では、一式の要素は1つ以上の要素を含んでいる。複数の要素は2つ以上の要素を含んでいる。ある要素への言及は、1つ以上の要素を包含するものと理解される。言及された要素および構造体はそれぞれ、単一の構造体により形成されていても、もしくは単一の構造体の一部であってもよく、または複数の異なる構造体により形成されていてもよい。特に記載のない場合、言及された電気的または機械的な接続は、直接的な接続であっても、または中間的な構造体を介した間接的で作動的な接続であってもよい。2つの事象が同期して起きるという記述は、その2つの事象が共通のクロック周期で起きることを意味すると理解される。特に記載のない場合、カウンタのインクリメント(増加)は、1のステップおよび1より大きいステップにおけるインクリメント、ならびに、単調に増加するインクリメントおよびモジュロインクリメントを包含している。例えば、実施形態では、タイムカウンタは1のステップで単調にインクリメントするが、位相カウンタは位相ユニット(例えば、その度、ラジアンまたは比)で説明する位相ステップで、360度(または2πラジアン)を法としてインクリメントされる。特に記載のない場合、タイムカウンタは単調にインクリメントされるカウントを参照するが、位相カウントは最大位相サイクルを法としてインクリメントされたカウントを参照する。特に記載のない場合、「論理回路」という用語は、特定用途のハードウェア(例えば、特定用途向け集積回路ASICの一部)およびプログラミング可能な論理回路(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイFPGA、プログラマブルデジタル信号処理器DSP、または、マイクロコントローラなどの他のプログラマブル処理器)を包含する。
【0014】
以下の記載では、本発明の実施形態が、必ずしも限定のためでなく、例として示される。
図2は、本発明の実施形態に係る、例示的な核磁気共鳴(NMR)分光計12を示す模式図である。分光計12は、磁石16と、磁石16の円筒状の孔に挿入されたNMRプローブ20と、磁石16およびプローブ20に電気的に接続された制御/取得システム18とを備えている。
【0015】
プローブ20は、1つ以上の測定チャネルを有しており、1つ以上の高周波(RF)コイル24と、関連する電気回路構成要素とを備えている。分かりやすくするために、以下の説明では単独のRFコイル24に注目するが、システムは他の類似のコイルを含んでいてもよい。RFコイル24およびRFコイル24に接続されたさまざまな構成要素は、1つ以上のNMR測定回路を形成している。試料に対する測定が行われている間、対象となるNMR試料をRFコイル24内に保持するために、試料容器22がプローブ20内に配置されている。試料容器22は、試料管またはフローセルであってもよい。
【0016】
測定を行うために、試料は、RFコイル24内に区画された測定空間に挿入される。磁石16は、試料容器22内に保持された試料に、静磁場B0を印加する。所望の高周波パルスまたは連続波励起信号をプローブ20に印加し、プローブ20内の試料の核磁気共鳴特性を示すデータを取得するよう構成された電気部品を、制御/取得システム18は備えている。
RFコイル24は、試料に高周波磁場B1を印加するため、および/または、印加された磁場に対する試料の反応を測定するために使用される。RF磁場は静磁場に対して垂直である。RF磁場を印加するため、および、印加された磁場に対する試料の反応を測定するための両方に、同一のコイルを使用してもよい。あるいは、RF磁場を印加するために1つのコイルを使用し、印加された磁場に対する試料の反応を測定するために別のコイルを使用してもよい。コイルを含むNMR測定回路の共鳴周波数を同調させることにより、単一のコイルを複数の周波数で測定を行うために使用してもよい。回路に含まれる1つ以上の可変コンデンサの静電容量を調節することにより、回路共鳴周波数の同調を実現してもよい。インピーダンス整合または他の所望の回路特性を実現するために、1つ以上の静電容量の調節を使用することもできる。
【0017】
図3は、本発明の実施形態に係る、例示的なNMR測定回路26を示しており、NMR測定回路26は、送信回路32と、受信回路34と、送信回路32および受信回路34をプローブ20に交互に接続する送信/受信(T/R)スイッチ36と、送信回路32および受信回路34に接続された制御/同期回路(コントローラ)50とを含んでいる。
分光計12の作動の送信位相において、T/Rスイッチ36は、送信器40をプローブ20に接続する。分光計12の作動の受信位相において、T/Rスイッチ36は、プローブ20を受信器48に接続する。測定回路26は、分かりやすくするために図3に示していない構成要素を含んでいてもよい。このような構成要素はとりわけ、ケーブル、同調カプラ、バイアスティー、不変および/または可変の減衰器、バイパスフィルタおよび/または他のフィルタ、ならびに他の公知の構成要素を含んでいてもよい。
【0018】
送信回路32は、送信器40と、T/Rスイッチ36の送信ポートに接続されたパワーアンプ(送信アンプ)44とを含んでいる。送信路が、送信パワーアンプ44およびT/Rスイッチ36を介し、送信器40からプローブ20へと順次規定されている。送信器40は、対応する振幅および位相変調器に接続された1つ以上の周波数生成器を含む信号生成器を含んでいる。振幅の変調を、可変の減衰器を使用して行ってもよい。送信器40は、搬送周波数成分および連続波成分またはパルス化されたNMR変調成分を含む送信NMR信号を生成することができる。
【0019】
受信回路34は、プリアンプ(受信アンプ)46と、T/Rスイッチ36の受信ポートに接続された受信器48とを含んでいる。受信路が、T/Rスイッチ36およびプリアンプ46を介し、プローブ20から受信器48へと順次規定されている。受信器48は、以下に詳細に説明するように、受信位相中にNMR信号を検知する。受信器48は、フィルタ、増幅ステージ、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)およびデジタルダウンコンバージョン構成要素を含んでいてもよい。受信器48は、NMR測定信号を受信および処理して、周波数スペクトルなどのデジタルNMR測定信号データを生成する。
【0020】
特に、受信器48は、搬送周波数成分およびNMR変調成分を有するNMR信号を受信するよう構成されたアナログ・デジタルコンバータ(ADC)を含んでいる。ADCは、受信した信号をサンプリング周波数fsでデジタル化する。このサンプリング周波数fsは、搬送周波数fcよりも低いが、信号を搬送周波数でデジタル化することができる。いくつかのNMRシステムでは、陽子測定用の搬送周波数は、300MHz〜1GHzの間の値(例えば約700MHz)を有していてもよい。実施形態では、300MHz〜1GHzの間の搬送周波数を使用するシステムにおいて、ADCは、50〜200MHzの間(例えば約80MHz)のサンプリング周波数値を使用していてもよい。当業者は、利用可能な機器、ならびに、所与の搬送周波数/サンプリング周波数関係から得られる搬送周波数および不感帯分布に従って、適切なサンプリング周波数を選択してもよい。不感帯がサンプリング周波数の付近、サンプリング周波数の半分およびその複数に存在する場合、より高いサンプリング周波数により、不感帯の数が低減される。実施形態でふさわしいADCの一例が、Linear Technology Inc.が提供するLTC 2208 ADCである。これは、最大約700MHzまで信号をデジタル化することができ、約130MHzの最大サンプリングレートを有している。
【0021】
受信器48はまた、以下に説明するように、受信したNMR信号に対しデジタル位相補正処理を行うように構成された信号処理論理回路を含んでいてもよい。実施形態では、このような信号処理論理回路は、コントローラ50の一部として設けられていてもよい。
コントローラ50は、以下に詳細に説明するように、同期ステップおよび搬送位相決定ステップを含む多くの制御および信号処理ステップを実施する。実施形態では、コントローラ50はまた、以下に説明する1つ以上の位相補正ステップを実施してもよい。コントローラ50はとりわけ、T/Rスイッチ36、送信器40および受信器48に接続されて、T/Rスイッチ36、送信器40および受信器48の作動を制御する。コントローラ50はT/Rスイッチ36を、作動の送信位相中に送信状態に設定し、作動の受信位相中に受信状態に設定するよう構成されている。コントローラ50はまた、NMR測定位相シーケンス、および送信器40により生成された搬送周波数信号、ならびに受信器48により行われるデータ取得および/または信号分析を制御するよう構成されている。
【0022】
特に、コントローラ50は、受信器48により信号化されるNMR信号を生成するために使用される送信信号の搬送周波数成分の位相を決定し、決定された位相に従って複素数値の位相補正項を生成する。位相補正項は、以下に説明するように、対象となる位相補正されたNMR信号を生成するために、デジタルダウンコンバージョンされたNMR信号に適用(乗算)することができる。対象となるNMR信号は、受信したNMR信号のNMR変調成分であり、ときとして自由誘導減衰(FID)信号と呼ばれる。コントローラ50は、送信器40の搬送波シンセサイザ形成部の再設定などの参照事象から経過した時間に従い、搬送周波数成分の位相を決定する。
【0023】
図4は、本発明の実施形態に係る受信器48およびコントローラ50を示している。コントローラ50は、搬送位相決定ユニット52を備えている。受信器48は、ADC53と、ADC53およびコントローラ50に接続されたデジタルダウンコンバータ54と、デジタルダウンコンバータ54およびコントローラ50に接続された位相補正ユニット55とを含んでいる。
実施形態では、搬送位相決定ユニット52、デジタルダウンコンバータ54および位相補正ユニット55は、以下に説明するふさわしいレジスタを含む特定用途の論理回路(ハードウェア)によって実現される。また、実施形態では、搬送位相決定ユニット52、デジタルダウンコンバータ54および/または位相補正ユニット55の全てまたは一部が、以下に説明するステップを実行するよう構成されたプログラマブルプロセッサおよび関連するソフトウェアを使用して実現されてもよい。
【0024】
搬送位相決定ユニット52は、ADC53によりデジタル化されたNMR信号の搬送周波数成分の位相を決定する。実施形態では、搬送位相決定ユニット52はまた、送信器40の1つ以上の搬送周波数同調形成部および/またはデジタルダウンコンバータ54の1つ以上の数値制御発振器(NCO)形成部を個別に再設定するのに使用される送信および/または受信再設定信号を生成する。
【0025】
デジタルダウンコンバータ54は、デジタル化されたNMRデータをADC53から受信し、搬送周波数成分をデジタル式に除算してデジタルダウンコンバートされたデータを生成する。位相補正ユニット55は、デジタルダウンコンバートされたデータをデジタルダウンコンバータ54から受信し、デジタル化されたNMRデータそれぞれについての搬送位相のインジケータを搬送位相決定ユニット52から受信し、受信したダウンコンバートされたデータおよび以下に説明する搬送位相の複素数値関数を乗算することにより、対象となるNMR変調を示す位相補正されたデジタルダウンコンバートされたNMRデータ信号を生成する。位相補正されたデジタルダウンコンバートされたデータは、制御/取得システム18によりさらに処理されて、NMRスペクトルなどの、対象となるNMRデータが生成される。
【0026】
図5-Aは、本発明の実施形態に係る、デジタルNMR搬送位相決定回路52の例示的な内部構造を示している。回路52は、サンプリング周波数信号源(サンプリングクロック)60と、クロック60に接続されたNビットサンプリングカウンタ64と、サンプリングカウンタ64に接続されたサンプリングカウントレジスタ66と、サンプリングカウントレジスタ66に接続された信号処理ユニット68と、クロック60、サンプリングカウンタ64およびサンプリングカウントレジスタ66に接続されたリアルタイムコントローラ62とを含んでいる。
【0027】
所望のときに(例えば、システムの作動開始時または少なくともいくつかの送信過渡期(送信位相)時に)、リアルタイムコントローラ62は、サンプリングカウンタ64と送信器40の1つ以上の送信シンセサイザとを再設定する再設定指令を送る。実施形態では、搬送周波数が変更されている、もしくはされつつある、または参照時間を確立しようとしているとき、再設定がシステムの作動開始(電源投入)時に起こる。
【0028】
再設定の際、サンプリングカウンタ64は、ゼロのカウントを示す。実施形態では、サンプリングカウンタ64は時間カウンタであり、クロック60により生成された各クロック信号につき(すなわち、試料期間1/fsの経過後に)1ずつインクリメントされる単調に増加するサンプリングカウントを生成する。80MHzで最大約300年、時間を保存するのに適しているであろう30ビット時間カウンタは、実施形態で時間カウンタに適している場合がある。実施形態では、サンプリング周波数64は位相カウンタである。サンプリングカウントは位相インクリメントによりインクリメントされるが、これは、クロック60により生成された各クロック信号につき(すなわち、試料期間1/fsの経過後に)一方と異なっていてもよい。位相インクリメントは、搬送周波数および試料期間に従って適切に決定されてもよい。位相サンプリングカウントは、単調に増加されてもよいし、搬送周波数位相サイクルを法としてインクリメントされても、すなわち、サンプリングカウントが最大サイクルを超えたときに360度分、周期的に減少されてもよい。実施形態では、20ビットカウンタが、モジュロ位相カウンタに適している場合もある。
【0029】
新たな過渡的試料期間が始まるときなどの所望のときに、リアルタイムコントローラ62は、サンプリングカウントレジスタ66にサンプリング指令(例えばコントロールストロボ)を送る。サンプリング指令に応答して、サンプリングカウントレジスタ66は、サンプリングカウンタ64の現在値を保存(ラッチ)する。信号処理ユニット68は、現在保存されているカウントをサンプリングカウントレジスタ66から受信し、搬送周波数の識別子をシステムメモリまたは他のストレージから受信する。信号処理ユニット68は、最新の送信器再設定から経過した時間を示す保存されたカウントと搬送周波数とを使用して、搬送位相および複素数値搬送位相補正関数を、以下に説明する各サンプリング時点で算出する。搬送位相または複素数値搬送位相補正関数は、位相補正ユニット55に送信される(図4)。
【0030】
図5-Bは、本発明の実施形態に係る、デジタルNMR搬送位相決定回路52'の例示的な内部構造を示している。回路52'は、2つ(または、拡張により、それ以上)の搬送位相成分をミキシングすることにより生成された搬送位相用に搬送位相補正を決定するのに適している。共通のサンプリングカウントがクロック60により、それぞれが別個の搬送周波数成分に対応する複数のカウンタ64、64'へ送られる。リアルタイムコントローラ62は、別個のサンプリングおよび再設定信号を、カウンタ64、64'および対応するサンプリングカウントレジスタ66、66'へ送る。個々の保存されたサンプリングカウントは、対応する搬送周波数とともに信号処理ユニット68'により使用されて、搬送位相および複素数値搬送位相補正関数が各サンプリング時点で算出される。
【0031】
図6-Aは、本発明の実施形態に係る信号処理ユニット68の例示的な構造を示している。信号処理ユニット68は、サンプリングカウントレジスタ66(図5-A)に接続された位相決定ユニット80と、位相決定ユニット80に接続されたサイン/コサイン検索テーブル88とを含んでいる。位相決定ユニット80は、サンプリングカウントレジスタ66bからカウントを受信し、360度を法としてカウントの位相ステップにより乗算されたカウントに等しい位相を生成する。サイン/コサイン検索テーブル88は、算出された位相を受信し、搬送位相補正用に使用されることになる複素数値関数を形成するサインおよびコサイン位相項を生成する。実施形態では、サイン/コサイン検索テーブル88により提供される値は、検索テーブルからの検索によるよりも、分析的な関係に従って各値を算出することにより生成される。
【0032】
図6-Bは、本発明の実施形態に係る信号処理ユニット68'の例示的な構造を示している。信号処理ユニット68は、サンプリングカウントレジスタ66、66'(図5-B)に接続された位相決定ユニット80'と、位相決定ユニット80'に接続された加算器82'と、加算器82'に接続されたサイン/コサイン検索テーブル88'とを含んでいる。位相決定ユニット80'は、カウントレジスタ66、66'から2つのカウントを受信し、360度を法として、第1のカウントの位相ステップにより乗算された第1のカウントに等しい第1の位相を生成し、360度を法として、第2のカウントの位相ステップにより乗算された第2のカウントに等しい第2の位相を生成する。加算器82'は、2つの受信した位相角を加算して、最終的な位相角を生成する。サイン/コサイン検索テーブル88'は、最終的な位相角を受信し、搬送位相補正用に使用されることになる複素数を形成するサインおよびコサイン位相項を生成する。実施形態では、サイン/コサイン検索テーブル88'により提供された値は、検索テーブルからの検索によるよりも、分析的な関係に従って各値を算出することにより生成されてもよい。図6-Bの構成を拡張し、周波数/シンセサイザの数を増やしてもよい。
【0033】
上述した例示的な位相決定および搬送減算/位相補正演算は、以下の理論的な説明を考慮することにより、よりよく理解することができる。以下の説明は、本発明の例示的な実施形態の局面を例示することを意図しており、本発明を限定することを意図していない。
式[1]の共鳴周波数で振幅および位相の両方が変調されたNMR信号について考察する。
【0034】
【数1】

【0035】
(式中、R(t)は、受信したNMR信号であり、S(t)は、対象となる試料が印加された磁場と相互作用したことにより付与されたNMR変調であり、exp(-i2πft+φ)は、受信器48(図4参照)のA/Dコンバータの入力における、位相を含む搬送波形である。)
A/Dコンバータは、以下のように複素数信号の実数部を評価する。
【0036】
【数2a】

【0037】
または
【0038】
【数2b】

【0039】
(式中、RおよびTはそれぞれ、実数部および虚数部を示す。)
信号が周波数fsでサンプリングされると、タイムドメインは、式[3]により、試料番号ドメイン内へマッピングされる。
【0040】
【数3】

【0041】
(式中、nは整数である。)式[3]は、δを1/fsと定義すると、t=nδと表現することができる。式[3]を式[2b]に代入すると、
【0042】
【数4a】

【0043】
となる。または、δの観点からは、
【0044】
【数4b】

【0045】
が得られる。
fc>0.5fsの場合、サインおよびコサイン関数が周期的であるため、結果がエイリアスになる。有効周波数feffは、
【0046】
【数5】

【0047】
と定義することができる。
【0048】
【数5a】

【0049】
(式中、0≦Γ<π)と定義すると、サンプリングされた信号は、
【0050】
【数6】

【0051】
と書き直すことができる。
サンプリング周波数が搬送周波数の2倍よりも大きい場合、ナイキスト基準が当てはまり、検知された(測定された)信号は、搬送周波数の周りに集中される。このような場合、有効周波数および搬送周波数は同一である。搬送波が有効周波数の半分よりも大きい場合、搬送信号は有効周波数に対してエイリアスとなる。以下の説明では、有効周波数を考慮することにより、普通にサンプリングされた場合およびアンダーサンプリングされた場合の両方を考慮する。
【0052】
NMR信号は、ゼロ周波数を搬送(または有効搬送)周波数に設定した状態で、複素数として示すことができる。デジタルダウンコンバータは、搬送周波数を中心とするデジタル化された実数信号を、ゼロ周波数を中心とする複素数のベースバンド信号へと変換することができる。デジタルダウンコンバータは通常、正方形に固定されたコサイン発生器およびサイン発生器の連動された対を使用している。1対の発生器は一般に、搬送波と異なる場合のある周波数および位相を使用していてもよい。
【0053】
デジタルダウンコンバータの1対の数値制御発振器(NCO)(複素数値NCO)により生成された波形は、
【0054】
【数7】

【0055】
の形態を有していてもよい。実数項および虚数項は、別個のチャネルで処理されてもよい。デジタルダウンコンバータ信号と受信したNMR信号とをミキシングすることにより生成される実数および虚数チャネル波形は、
【0056】
【数8a】

【0057】
【数8b】

【0058】
と表現することもできる。
下記式[9]のように定義した場合、
【0059】
【数9】

【0060】
実数および虚数チャネル波形は、
【0061】
【数10a】

【0062】
【数10b】

【0063】
と表現することもできる。
標準の三角法恒等式
【0064】
【数11a】

【0065】
【数11b】

【0066】
【数11c】

【0067】
を使用すると、
実数および虚数チャネル波形は、
【0068】
【数12a】

【0069】
【数12b】

【0070】
と表現することもできる。
αおよびβ変数は、周波数および位相を示している。デジタルダウンコンバータNCO周波数が有効周波数に設定されている場合(式[5]参照)、
【0071】
【数13】

【0072】
となり、式[12a]、[12b]は、
【0073】
【数14a】

【0074】
【数14b】

【0075】
と書き直すことができる。
有効周波数が最終帯域幅の1.5倍よりも大きい場合、式[14a]、[14b]をさらに簡略化することができ、項2Γnは無視される。
【0076】
【数15a】

【0077】
【数15b】

【0078】
第1オーダ位相化のNMR操作により位相角がゼロに設定され、式[15a]、[15b]は、
【0079】
【数16a】

【0080】
【数16b】

【0081】
となり、測定されたNMR信号Rの関数としての、対象となるNMR変調Sの復調を可能にする。
デジタルダウンコンバータNCO周波数が搬送周波数とΔfだけ異なっている場合、受信器は送信器からオフセットされる。
【0082】
【数17】

【0083】
このやり方によるサンプリングは、追加のフィルタリングなしに、すべての周波数を、ゼロの周波数範囲へと、2で割ったサンプリングレートにマッピングすることができる。以下の表に、いくつかの周波数と、算出された対応するパラメータ値とを示している。
【0084】
【表1】

【0085】
有効周波数が所望の帯域幅よりも低かった場合、NMR信号のエイリアスのコピーが対象となる帯域内に存在する。NCO周波数をシフトしても、エイリアスのコピーの空間/位置は一般に変化しない。エイリアスのコピーが対象となる帯域の外側に来るよう搬送周波数を適切に設定することにより、エイリアスのコピーを対象となる帯域の外側に置いてもよい。
【0086】
上述した例示的な位相決定システムおよび方法により、NMRシステムにおける送信器位相と受信器位相との関連付けが可能になる。NMR実験は通常、対象となる試料スピンと送信器と受信器との間の位相関係に依拠している。スピンにより、送信器が励起させた位相を参照する受信器コイルに電圧が誘導される。このように、送信器位相と受信器位相との間の関係を正確に決定することで、対象となるスピンに関する貴重な情報を提供することができる。
【0087】
上述した例示的なシステムおよび方法では、送信器位相は、送信器が再設定されたとき(これは、n=0に対応すると定義することができる)から累積を開始する。この時間の後、特定の時間を試料番号
【0088】
【数18】

【0089】
により識別してもよい。この時間の送信器位相は、
【0090】
【数19】

【0091】
となる。式[19]により、参照クロックカウントおよび有効周波数から、送信位相を算出することができる。デジタルダウンコンバータNCOおよび送信搬送周波数シンセサイザが再設定されていなかった場合、NCOおよび送信搬送位相はともにロックされる。共通のクロックが、NCOおよび送信シンセサイザの両方に使用される。
式[18]に類似した式を使用して、適切な対応するサンプリングカウントおよび有効周波数により、ダウンコンバータNCO位相を決定することができる。結果として、上述したシステムおよび方法により、ダウンコンバータNCOおよび送信器位相および2つの位相の間の相違を算出することができる。ユーザが希望する受信器位相を追加してもよく、信号はそれに従って補正される。
【0092】
複数の対象となる送信周波数に関し、送信位相の十分な説明は、
【0093】
【数20a】

【0094】
によって与えられてもよく、これはサンプリングカウント領域において、
【0095】
【数20b】

【0096】
と書き直されてもよい。(式中、fiは対象となる各周波数を示し、fsはサンプリング周波数である。)デジタルデータの位相補正は、
【0097】
【数20c】

【0098】
【数20d】

【0099】
により、実数および虚数データ点のベースバンド乗法によって実現されてもよい。
上述した例示的なシステムおよび方法により、対応する送信および受信NMR信号の搬送周波数成分の間の位相関係を正確に追跡することが可能になる。搬送周波数オフセットに対応していてもよい算出された値から適切な(正確な)信号値を生成するために、デジタルダウンコンバージョンおよびサブサンプリングを使用したシステムで、位相関係を使用して複素数値位相補正をデジタル受信NMR信号に適用してもよい。例えば送信シンセサイザおよびデジタルダウンコンバータ数値制御器発振器(NCO)の同期的な再設定により確立される、シンセサイザとNCOとの間の初期の既知の位相関係は、送信シンセサイザもしくはデジタルダウンコンバータNCOの独立した再設定またはとりわけ搬送周波数の変化などの、その後の事象の結果として変化してもよい。
【0100】
本発明の範囲を逸脱することなく上記実施形態をさまざまな仕方で変更できることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその法的な均等物により決定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMR高周波数(RF)送信信号の少なくとも搬送周波数成分を生成する送信信号シンセサイザとサンプリングカウンタとを同期させるステップと、
前記サンプリングカウンタにより生成された信号サンプリングカウントをインクリメントし、前記送信NMR信号の前記搬送周波数成分の搬送周波数fcおよび受信したNMR信号よりも低いサンプリング周波数fsで、前記送信信号に応答して、NMR試料により生成され受信したNMR信号をデジタル式にサンプリングするステップと、
前記送信信号シンセサイザと前記サンプリングカウンタとを同期させる時間を参照して、前記送信信号の送信位相を示す前記サンプリングカウントの値を保存するステップと、
前記受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするステップと、
前記サンプリングカウントの前記保存された値に従って、前記デジタル化されダウンコンバートされたNMR信号に対し位相補正を行うステップとを含む、核磁気共鳴(NMR)測定方法。
【請求項2】
前記サンプリングカウントが、単調に増加するタイムカウントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプリングカウントが、搬送周波数位相サイクルを法としてインクリメントされた位相カウントである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプリングカウントの前記値を保存するステップが、過渡的な試料期間の開始時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記送信信号シンセサイザと前記サンプリングカウンタとを同期させるステップが、リアルタイムコントローラを使用し、前記送信信号シンセサイザおよび前記サンプリングカウンタを同期して再設定するステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記位相補正を行うステップが、前記サンプリングカウントに対応するサイン/コサイン検索テーブルのエントリーを識別し、前記サイン/コサイン検索テーブルの前記エントリーに従って前記位相補正を行うステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記位相補正を行うステップが、2πを法とする関数φ=2πfeffnrefに従って、前記送信信号の前記送信位相を決定し、式中、feffは有効搬送周波数を示し、nrefは前記サンプリングカウントを示すステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記送信信号の前記搬送周波数fcが、300MHzより大きく1GHz未満であり、前記サンプリング周波数fsが、50MHzより大きく200MHz未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記送信信号をNMR試料に印加して、前記受信したNMR信号を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
NMR RFコイルに送信されるNMR高周波(RF)送信信号の少なくとも搬送周波数fcを有している搬送周波数成分を生成するよう構成された送信信号シンセサイザと、
前記搬送周波数fcよりも低いサンプリング周波数fsで、受信したNMR信号をデジタル式にサンプリングするよう構成されたアナログ・デジタルコンバータであって、前記受信したNMR信号は、前記送信信号に応答して、NMR試料により生成され、当該アナログ・デジタルコンバータによりサンプリングされた前記受信したNMR信号は、前記搬送周波数fcを有している、アナログ・デジタルコンバータと、
前記サンプリング周波数fsでインクリメントされた信号サンプリングカウントを保存するサンプリングカウンタと、
前記サンプリングカウンタに接続されたサンプリングカウントレジスタであって、前記送信信号シンセサイザと前記サンプリングカウンタとの同期の時間を参照して、前記送信信号の送信位相を示す前記信号サンプリングカウントの値を保存するよう構成されたサンプリングカウントレジスタと、
前記送信信号シンセサイザおよび前記送信信号サンプリングカウンタに接続されたリアルタイムコントローラであって、前記送信信号シンセサイザと前記送信信号サンプリングカウンタとを同期させるよう構成されたリアルタイムコントローラと、
前記アナログ・デジタルコンバータおよび信号処理論理回路に接続され、前記受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするよう構成されたデジタルダウンコンバータと、
前記サンプリングカウントレジスタおよび前記デジタルダウンコンバータに接続された信号処理論理回路であって、前記サンプリングカウントの前記保存された値に従い、前記デジタル化されダウンコンバートされたNMR信号に対して位相補正を行うよう構成された信号処理論理回路とを備える、核磁気共鳴(NMR)機器。
【請求項11】
前記サンプリングカウントが、単調に増加するタイムカウントである、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記サンプリングカウントが、搬送周波数位相サイクルを法としてインクリメントされた位相カウントである、請求項10に記載の機器。
【請求項13】
前記サンプリングカウントレジスタが、過渡的な試料期間の開始時に、前記信号サンプリングカウントを保存する、請求項10に記載の機器。
【請求項14】
前記送信信号シンセサイザおよび前記サンプリングカウンタを同期して再設定することにより、前記リアルタイムコントローラが、前記送信信号シンセサイザと前記サンプリングカウンタとを同期させるよう構成されている、請求項10に記載の機器。
【請求項15】
前記位相補正を行うステップが、前記サンプリングカウントに対応するサイン/コサイン検索テーブルのエントリーを識別するステップと、前記サイン/コサイン検索テーブルの前記エントリーに従って位相補正を行うステップとを含んでいる、請求項10に記載の機器。
【請求項16】
前記位相補正を行うステップが、2πを法とする関数φ=2πfeffnrefに従って、前記送信信号の前記送信位相を決定し、式中、feffは有効搬送周波数を示し、nrefは前記サンプリングカウントを示すステップを含んでいる、請求項10に記載の機器。
【請求項17】
前記送信信号の前記搬送周波数fcが、300MHzより大きく1GHz未満であり、前記サンプリング周波数fsが、50MHzより大きく200MHz未満である、請求項10に記載の機器。
【請求項18】
前記試料に静磁場を印加するよう構成されたNMR分光計磁石と、
前記送信信号シンセサイザに接続されたRFコイルを備えるNMRプローブであって、前記送信NMR信号に従って生成されたRF磁場を前記試料に印加するよう構成されたNMRプローブとをさらに備える、請求項10に記載の機器。
【請求項19】
受信したNMR信号をサンプリング周波数fsでデジタル化するステップであって、前記受信したNMR信号は、前記サンプリング周波数fsよりも高い搬送周波数fcを有する搬送周波数成分を有しているステップと、
ハードウェアカウンタを使用し、参照事象を参照して、前記搬送周波数成分の位相を示すカウントを周期的にインクリメントするステップと、
前記デジタル化された受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするステップと、
前記カウントに従い、前記デジタル化された受信したNMR信号に対して位相補正を行うステップとを含む、核磁気共鳴(NMR)測定方法。
【請求項20】
前記カウントが、単調に増加するタイムカウントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記カウントが、搬送周波数位相サイクルを法としてインクリメントされた位相カウントである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
サンプリング周波数fsで、受信したNMR信号をデジタル化するよう構成されたアナログ・デジタルコンバータであって、前記受信したNMR信号は、前記サンプリング周波数fsよりも高い搬送周波数fcを有する搬送周波数成分を有している、アナログ・デジタルコンバータと、
参照事象を参照して、前記搬送周波数成分の位相を示すカウントを周期的にインクリメントするよう構成されたカウンタと、
前記アナログ・デジタルコンバータおよび信号処理論理回路に接続され、前記デジタル化された受信したNMR信号をデジタル式にダウンコンバートするよう構成されたデジタルダウンコンバータと、
前記カウンタおよび前記デジタルダウンコンバータに接続され、前記カウントに従って、前記デジタル化されたNMR信号に対し位相補正を行うよう構成された信号処理論理回路とを備える、核磁気共鳴(NMR)機器。
【請求項23】
前記カウントが、単調に増加するタイムカウントである、請求項22に記載の機器。
【請求項24】
前記カウントが、搬送周波数位相サイクルを法としてインクリメントされた位相カウントである、請求項22に記載の機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−A】
image rotate

【図5−B】
image rotate

【図6−A】
image rotate

【図6−B】
image rotate


【公開番号】特開2011−102804(P2011−102804A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−251842(P2010−251842)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.