説明

デッキフロアボード

【課題】車両座席とボード先端との間の間隙への荷物の落下を抑制できる簡易な構造のデッキフロアボードを提供する。
【解決手段】車両座席2の後方に設けられた荷室3の床面3aに載置されるデッキフロアボード1であって、本体ボード部5と、本体ボード部5から車両座席2の後面側まで車両前方に向かって延設され、車両前方に向かうにつれて車両上方に傾斜する前側ボード部6と、を備え、前側ボード部6には、前側ボード部6より大きな傾斜角の傾斜面を有する段差部(先端側段差部15、後方側段差部18)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキフロアボードに関し、更に詳しくは、車両座席とボード先端との間の間隙への荷物の落下を抑制できる簡易な構造のフロアデッキボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデッキフロアボードとして、車両座席の後方に設けられた荷室の床面に載置されるものが一般に知られている。このデッキフロアボードでは、通常、そのボード先端と車両座席の背もたれ部との間には、デッキフロアボードの成形精度や組付精度のバラツキにより間隙が生じている。そこで、デッキフロアボード上の荷物が間隙から落下してしまうことを防止する技術として様々な荷物落下防止構造が提案されている。
【0003】
上記荷物落下防止構造としては、例えば、図6に示すように、ボード101先端側と車両座席102の背もたれ部102aとをカーペット104で連絡してなり、車両座席102の背もたれ部102aが起立状態(図6(a)参照)であるときにカーペット104で間隙Sを塞ぐ一方、車両座席102の背もたれ部102aが起立状態から傾倒しても(図6(b)参照)、その傾倒動作に追従してカーペット104が変形・伸縮して間隙Sを塞ぐようにした構造が知られている。また、他の荷物落下防止構造としては、ボード先端側に回動可能に設けた蓋体を付勢手段で背もたれ部に向かって付勢してなり、車両座席の背もたれ部が起立状態であるときに蓋体で間隙を塞ぐ一方、車両座席の背もたれ部が起立状態から傾倒しても、付勢手段の付勢力によりその傾倒動作に追従して蓋体が回動して間隙を塞ぐようにした構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−199063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の荷物落下防止構造では、デッキフロアボードとは別部材であるカーペットや蓋体等を用いる必要があり、部品点数が増加して構造が複雑化してしまう。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、車両座席とボード先端との間の間隙への荷物の落下を抑制できる簡易な構造のフロアデッキボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両座席の後方に設けられた荷室の床面に載置されるデッキフロアボードであって、本体ボード部と、前記本体ボード部から前記車両座席の後面側まで車両前方に向かって延設され、車両前方に向かうにつれて車両上方に傾斜する前側ボード部と、を備え、前記前側ボード部には、該前側ボード部より大きな傾斜角の傾斜面を有する段差部が設けられていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記段差部は、前記前側ボード部の車両前方の先端側に設けられる先端側段差部を有することを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記段差部は、前記前側ボード部の車両前方の先端側より車両後方側に設けられる後方側段差部を有することを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記前側ボード部には、車両下方に向かって凹んだ凹部が形成され、前記段差部の傾斜面は、前記凹部の立壁面をなすことを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項において、前記前側ボード部は、前記荷室の床面上に配設される支持部材により支持されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のデッキフロアボードによると、本体ボード部と、前側ボード部と、を備え、前側ボード部には、前側ボード部より大きな傾斜角の傾斜面を有する段差部が設けられているので、傾斜する前側ボード及び段差部により、デッキフロアボード上の荷物が車両前方へ移動することが抑えられ、車両座席とボード先端との間の間隙に荷物が落下することが抑制される。また、従来のようにデッキフロアボードとは別部材であるカーペットや蓋体等を用いるものに比べて、部品点数を低減して簡易な構造とすることができる。
また、前記段差部が先端側段差部を有する場合は、上記間隙の近傍に設けられる先端側段差部により間隙への荷物の落下が効果的に抑制される。例えば、デッキフロアボード上を荷物が段差部を乗り越える程度の移動力で移動する場合、荷物は、前側ボード部の車両前方側に移動すると段差部の傾斜面で飛び上がり車両座席の後面に当たってデッキフロアボード上に落ちることとなり、荷物の間隙への落下が効果的に抑制される。
また、前記段差部が後方側段差部を有する場合は、上記間隙から離間して設けられる後方側段差部により荷物の車両前方側への移動が効果的に抑制される。特に、前記段差部が先端側段差部と後方側段差部とを有する場合は、両段差部の協同により荷物の車両前方側への移動が段階的に抑制される。
また、前記前側ボード部に凹部が形成され、前記段差部の傾斜面が前記凹部の立壁面をなす場合は、車両前方側へ移動した荷物を最終的に凹部内に収容することができる。
さらに、前記前側ボード部が、前記荷室の床面上に配設される支持部材により支持される場合は、前側ボード部に剛性を付与することで、車両前方側に移動してくる荷物が前側ボード部上に配置されても、前側ボード部が傾斜状態を維持して荷物の車両前方側への移動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るデッキフロアボードを示す斜視図である。
【図2】上記デッキフロアボードを備える車両荷室の縦断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3の要部拡大図であり、(a)は先端側段差部を示し、(b)は後方側段差部を示す。
【図5】上記デッキフロアボードの要部拡大断面図である。
【図6】従来の荷物落下防止構造を説明するための説明図であり、(a)は車両座席の背もたれ部の起立状態を示し、(b)は車両座席の背もたれ部の傾倒状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.デッキフロアボード
本実施形態1.に係るデッキフロアボードは、車両座席(2)の後方に設けられた荷室(3)の床面(3a)に載置されるデッキフロアボード(1)であって、本体ボード部(5)と、本体ボード部から車両座席の後面側まで車両前方に向かって延設され、車両前方に向かうにつれて車両上方に傾斜する前側ボード部(6)と、を備え、前側ボード部には、前側ボード部より大きな傾斜角の傾斜面(15a、18a)を有する段差部(15、18)が設けられていることを特徴とする(例えば、図1〜図3等参照)。
【0012】
なお、上記「前側ボード部より大きな傾斜角」とは、前側ボード部の傾斜角が所定値である場合には、その所定値より大きな傾斜角を意図し、前側ボード部の傾斜角が変化する場合には、前側ボード部における段差部の設置部位の傾斜角より大きな傾斜角を意図する。また、上記「傾斜角」は、例えば、水平に対する傾斜角であることができる。
【0013】
上記段差部としては、例えば、〔1〕前側ボード部(6)の車両前方の先端側に設けられる先端側段差部(15)を有する形態、〔2〕前側ボード部(6)の車両前方の先端側より車両後方側に設けられる後方側段差部(18)を有する形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0014】
上記〔1〕形態では、例えば、上記前側ボード部(6)の傾斜角(θ1)及び上記先端側段差部(15)の傾斜面(15a)の傾斜角(θ2)のそれぞれの値は、傾斜角(θ1)が傾斜角(θ2:90°以下の値)より小さな値である限り、任意の角度値を選択することができる。また、上記〔2〕形態では、例えば、上記前側ボード部(6)の傾斜角(θ3)及び上記後方側段差部(18)の傾斜面(18a)の傾斜角(θ4)のそれぞれの値は、傾斜角(θ3)が傾斜角(θ4:90°以下の値)より小さな値である限り、任意の角度値を選択することができる。
【0015】
本実施形態1.に係るデッキフロアボードとしては、例えば、上記前側ボード部(6)には、車両下方に向かって凹んだ凹部(16、19)が形成され、上記段差部(15、18)の傾斜面(15a、18a)は、凹部の立壁面(16a、19a)をなす形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。この場合、例えば、上記凹部(16、19)は、車両幅方向に延びる前立壁面(16a、19a)と、前立壁面の両端側から車両後方に向かって延びる左右の横立壁面(16b,19b)と、を備えることができる。これにより、凹部の前方及び側方から荷物の脱出を効果的に抑制できる。さらに、例えば、上記凹部は、上記前立壁面と、上記横立壁面と、横立壁面の車両後方の端側を連絡し且つ車両幅方向に延びる後立壁面(19c)を更に備えることができる。これにより、凹部の前後方及び側方からの荷物の脱出を効果的に抑制できる。
【0016】
本実施形態1.に係るデッキフロアボードとしては、例えば、上記前側ボード部(6)は、荷室の床面上に配設される支持部材(20)により支持される形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。
【0017】
本実施形態1.に係るデッキフロアボードとしては、例えば、上記前側ボード部(6)は、車両前方に向かうにつれて傾斜角が大きくなるように形成されている形態(例えば、図3等参照)を挙げることができる。これにより、荷物の車両前方への移動を効果的に抑制できる。この場合、意匠性といった観点から、上記前側ボード部が湾曲板状に形成されていることが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0019】
(1)デッキフロアボードの構成
本実施例に係るデッキフロアボード1は、図1及び図2に示すように、車両座席2の後方に設けられた荷室3の床面3aに載置されるボードであり、本体ボード部5及び前側ボード部6を備えている。なお、上記車両座席2の背もたれ部2aは、起立状態A(図3中に実線で示す。)から車両前方に向かって傾倒した傾倒状態B(図3中に仮想線で示す。)となるように傾倒可能とされている。また、図1及び図2中に矢印で示す方向は、荷室3の床面3aに載置した状態のデッキフロアボード1が向く方向を示す。
【0020】
上記本体ボード部5は、荷室3の床面3aに形成されたスペアタイヤ8等を収納する収納凹部9を覆うように設けられている。この本体ボード部5は、略水平方向に延びる平板状に形成されている。また、本体ボード部5は、収納凹部9内でスペアタイヤ8上に配設される発泡体からなる支持部材10により支持される。また、本体ボード部5の車両幅方向の両端縁には左右の横側ボード部11が延設されている。これら各横側ボード部11と本体ボード部5との間には車両前後方向に沿って延びる薄肉部12が形成されている。そして、各横側ボード部11及び本体ボード部5は、薄肉部12を軸心として相対的に回動可能に一体形成されている。
【0021】
上記前側ボード部6は、本体ボード部5の車両前方の一端側から車両座席2の背もたれ部2aの後面側まで車両前方に向かって延設されている。この前側ボード部6と本体ボード部5との間には車両幅方向に沿って延びる薄肉部14が形成されている。そして、前側ボード部6及び本体ボード部5は、薄肉部14を軸心として相対的に回動可能に一体形成されている。また、前側ボード部6は、車両前方に向かうにつれて車両上方に傾斜している。具体的には、前側ボード部6は、車両前方に向かうにつれて傾斜角が大きくなるように湾曲板状に形成されている。
【0022】
また、上記前側ボード部6の車両前方の先端側には、図3に示すように、車両幅方向に延びる先端側段差部15が設けられている。この先端側段差部15の傾斜面15aの傾斜角θ2(例えば、約45度)は、前側ボード部6における先端側段差部15の設置部位の傾斜角θ1(例えば、約15度)より大きな値とされている(図4(a)参照)。また、上記前側ボード部6の車両前方の先端側には、車両下方に向かって凹んだ平面略矩形状の先端側凹部16が形成されている。この先端側凹部16は、車両幅方向に延びる前立壁面16aと、この前立壁面16aの両端側から車両後方に向かって延びる左右の横立壁面16bと、を備えている(図1参照)。そして、上記先端側段差部15の傾斜面15aは、先端側凹部16の前立壁面16aをなしている。
【0023】
また、上記前側ボード部6の先端側段差部15より車両後方側には、図3に示すように、車両幅方向に延びる後方側段差部18が設けられている。この後方側段差部18の傾斜面18aの傾斜角θ4(例えば、約30度)は、前側ボード部6における後方側段差部18の設置部位の傾斜角θ3(例えば、約5度)より大きな値とされている。また、上記前側ボード部6の先端側段差部15より車両後方側には、車両下方に向かって凹んだ平面略矩形状の後方側凹部19が形成されている。この後方側凹部19は、車両幅方向に延びる前立壁面19aと、この前立壁面19aの両端側から車両後方に向かって延びる左右の横立壁面19bと、これら横立壁面19bの車両後方の端側を連絡し且つ車両幅方向に延びる後立壁面19cと、を備えている(図1参照)。そして、上記後方側段差部18の傾斜面18aは、後方側凹部19の前立壁面19aをなしている。
【0024】
さらに、上記前側ボード部6は、図3に示すように、荷室3の床面3a上に配設される発泡体からなる支持部材20により支持される。さらに、上記デッキフロアボード1は、ケナフ等の植物繊維ボードと表皮シートとを積層して加熱圧縮成形してなり、図5に示すように、植物繊維ボードからなる繊維層22と、この繊維層22の両方の表面に積層される表皮シートからなる表皮層23と、を備えている。
【0025】
(2)デッキフロアボードの作用
次に、上記構成のデッキフロアボード1の作用について説明する。このデッキフロアボード1では、図3に示すように、その前側ボード部6の先端と車両座席2の背もたれ部2aとの間には、デッキフロアボード1の成形精度や組付精度のバラツキにより所定間隔(例えば、背もたれ部2aが起立状態Aで約10mm、背もたれ部2aが傾倒状態Bで約5mm等)の間隙Sが生じている。
【0026】
そして、車両の移動及び停止に伴ってデッキフロアボード1上の荷物Pは、車両前方に向かって移動する(図3中に実線で示す。)。このとき、例えば、荷物Pの移動力が比較的小さな場合には、前側ボード部6上を移動する荷物Pは、後方側段差部18の傾斜面18aを乗り越えて移動力が弱められ、先端側段差部15の傾斜面15aにより移動が止められ、先端側凹部16又は後方側凹部19内に収容される。一方、荷物Pの移動力が比較的大きな場合には、前側ボード部6上を移動する荷物Pは、後方側段差部18の傾斜面18aを乗り越えてから先端側段差部15の傾斜面15aを乗り越えて飛び上がり車両座席2の背もたれ部2aの後面に当たってデッキフロアボード1上に落ちて(図3中に仮想線矢印で示す。)、先端側凹部16又は後方側凹部19内に収容される。
【0027】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のデッキフロアボード1によると、本体ボード部5と、前側ボード部6と、を備え、前側ボード部6には、前側ボード部6より大きな傾斜角の傾斜面15a、18aを有する段差部15、18が設けられているので、傾斜する前側ボード6及び段差部15、18により、デッキフロアボード1上の荷物が車両前方へ移動することが抑えられ、車両座席2とボード先端との間の間隙Sに荷物が落下することが抑制される。また、従来のようにデッキフロアボードとは別部材であるカーペットや蓋体等を用いるものに比べて、部品点数を低減して簡易な構造とすることができる。
【0028】
また、本実施例では、段差部として先端側段差部15を有するので、間隙Sの近傍に設けられる先端側段差部15により間隙Sへの荷物の落下が効果的に抑制される。例えば、デッキフロアボード1上を荷物Pが段差部15を乗り越える程度の移動力で移動する場合、荷物Pは、前側ボード部6の車両前方側に移動すると段差部15の傾斜面15aで飛び上がり車両座席2の後面に当たってデッキフロアボード1上に落ちることとなり、荷物Pの間隙Sへの落下が効果的に抑制される。
【0029】
また、本実施例では、段差部として後方側段差部18を有するので、間隙Sから離間して設けられる後方側段差部18により荷物の車両前方側への移動が効果的に抑制される。特に、本実施例では、先端側段差部15と後方側段差部18との協同により、荷物の車両前方側への移動が段階的に抑制される。
【0030】
また、本実施例では、前側ボード部6に先端側凹部16が形成され、先端側段差部15の傾斜面15aが先端側凹部16の立壁面16aをなすので、車両前方側へ移動した荷物を最終的に先端側凹部16内に収容することができる。特に、本実施例では、先端側凹部16は、車両幅方向に延びる前立壁面16aと、前立壁面16aの両端側から車両後方に向かって延びる左右の横立壁面16bと、を備えるので、凹部16の前方及び側方から荷物の脱出を効果的に抑制できる。
【0031】
また、本実施例では、前側ボード部6に後方側凹部19が形成され、後方側段差部18の傾斜面18aが後方側凹部19の立壁面19aをなすので、車両前方側へ移動した荷物を最終的に後方側凹部19内に収容することができる。特に、本実施例では、後方側凹部19は、車両幅方向に延びる前立壁面19aと、前立壁面19aの両端側から車両後方に向かって延びる左右の横立壁面19bと、横立壁面19bの車両後方の端側を連絡し且つ車両幅方向に延びる後立壁面19cと、を備えるので、凹部19の前後方及び側方からの荷物の脱出を効果的に抑制できる。
【0032】
また、本実施例では、前側ボード部6が、荷室3の床面3a上に配設される支持部材20により支持されるので、前側ボード部6に剛性を付与することで、車両前方側に移動してくる荷物が前側ボード部6上に配置されても、前側ボード部6が傾斜状態を維持して、荷物の車両前方側への移動が抑制される。
【0033】
さらに、本実施例では、前側ボード部6は、車両前方に向かうにつれて傾斜角が大きくなるように形成されているので、荷物の車両前方への移動を効果的に抑制できる。特に、本実施例では、前側ボード部6が湾曲板状に形成されているので、意匠性を高めることができる。
【0034】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。即ち、上記実施例では、車両前方に向かうにつれて傾斜角が大きくなるように湾曲板状に形成された前側ボード部6を例示したが、これに限定されず、例えば、車両前方に向かうにつれて傾斜角が大きくなるように屈曲板状に形成された前側ボード部を採用したり、傾斜角が一定の平板状に形成された前側ボード部を採用したりしてもよい。さらに、水平方向に延びる水平部位と傾斜部位とが混在する前側ボード部を採用してもよい。
【0035】
また、上記実施例では、先端側段差部15及び後方側段差部18を備える前側ボード部6を例示したが、これに限定されず、例えば、一方の段差部のみを備える前側ボード部を採用したり、両段差部15、18に加えて更に他の段差部を備える前側ボード部を採用したりしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、車両幅方向に延びる単一の先端側段差部15(又は後方側段差部18)を例示したが、これに限定されず、例えば、車両幅方向に沿って所定間隔で複数配置される段差部としてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、平面略矩形状の凹部16、19を例示したが、これに限定されず、例えば、平面略楕円形状、多角形状、異形状等の凹部を採用してもよい。
【0038】
また、上記実施例では、前側ボード部6に車両下方に凹む凹部16、19を設け、凹部16、19の立壁面16a、19aを段差部15、18の傾斜面15a、18aで構成したが、これに限定されず、例えば、前側ボード部に車両上方に突出する段差部を設けるようにしてもよい。
【0039】
さらに、上記実施例では、繊維層及び繊維層の両表面に設けられる表皮層を備えるデッキフロアボードを例示したが、これに限定されず、例えば、繊維層及び繊維層の一方の表面のみに設けられる表皮層を備えるデッキフロアボードを採用してもよい。
【0040】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0041】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
自動車、列車、航空機等の車両荷室内に配設されるデッキフロアボードとして広く利用される。
【符号の説明】
【0043】
1;デッキフロアボード、2;車両座席、2a;背もたれ部、3;荷室、3a;床面、5;本体ボード部、6;前側ボード部、15;先端側段差部、15a;傾斜面、16;先端側凹部、16a;前立壁面、18;後方側段差部、18a;傾斜面、19;後方側凹部、19a;前立壁面、20;支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両座席の後方に設けられた荷室の床面に載置されるデッキフロアボードであって、
本体ボード部と、
前記本体ボード部から前記車両座席の後面側まで車両前方に向かって延設され、車両前方に向かうにつれて車両上方に傾斜する前側ボード部と、を備え、
前記前側ボード部には、該前側ボード部より大きな傾斜角の傾斜面を有する段差部が設けられていることを特徴とするデッキフロアボード。
【請求項2】
前記段差部は、前記前側ボード部の車両前方の先端側に設けられる先端側段差部を有する請求項1記載のデッキフロアボード。
【請求項3】
前記段差部は、前記前側ボード部の車両前方の先端側より車両後方側に設けられる後方側段差部を有する請求項1又は2に記載のデッキフロアボード。
【請求項4】
前記前側ボード部には、車両下方に向かって凹んだ凹部が形成され、
前記段差部の傾斜面は、前記凹部の立壁面をなす請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデッキフロアボード。
【請求項5】
前記前側ボード部は、前記荷室の床面上に配設される支持部材により支持される請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデッキフロアボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1253(P2013−1253A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134560(P2011−134560)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】