説明

デミボディ:二量体化活性化治療剤

本発明は、全体として、被験体において特定の細胞を標的にするのに有用である、本明細書で「デミボディ」と呼ばれる1セットの合成免疫相互作用性分子に関する。より特定的には、本発明は、セット内からの、それぞれが標的細胞上の異なる抗原に特異的である少なくとも2つの分子が、デミボディ媒介性細胞性もしくは補体媒介性の細胞傷害活性および/またはレポーター機能および/または治療活性を指示する活性複合体を形成するために、細胞表面で互いに相互作用するのに必要とされる、1セットのデミボディを提供する。本発明のデミボディは、白血病細胞を含む癌細胞、マラリアの、細菌の、およびウイルスの因子を含む病原体、ならびに胚性および成人幹細胞を含む幹細胞、ならびに病原細胞などの特定の細胞のターゲティングに有用である。本発明は、それゆえに、処置、診断、および研究の取り組みの方法、ならびにそれらに有用なデミボディを含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、全体として、被験体おいて特定の細胞を標的にするのに有用である、本明細書で「デミボディ(demibody)」と呼ばれる1セットの合成免疫相互作用性分子に関する。より特定的には、本発明は、セット内からの、それぞれが標的細胞上の異なる抗原に特異的である少なくとも2つの分子が、デミボディ媒介性細胞性もしくは補体媒介性の細胞傷害活性および/またはレポーター機能および/または治療活性を指示する活性複合体を形成するために、細胞表面で互いに相互作用するのに必要とされる、1セットのデミボディを提供する。本発明のデミボディは、白血病細胞を含む癌細胞、マラリアの、細菌の、およびウイルスの因子を含む病原体、ならびに胚性および成人幹細胞を含む幹細胞、ならびに病原細胞などの特定の細胞のターゲティングに有用である。本発明は、それゆえに、処置、診断、および研究の取り組みの方法、ならびにそれらに有用なデミボディを含む組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
本明細書において本発明者らに参照された刊行物の書誌的詳細は、説明の終わりに集められている。
【0003】
本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の国における共通の一般的な知識の一部を形成するという承認またはある種の示唆ではなく、かつそれとして解釈されるべきではない。
【0004】
治療剤の研究およびおよび開発における重要な特徴は、標的識別または選択毒性である。特に、被験体において、癌細胞または病原細胞に感染した細胞などの標的細胞を正常細胞の集団の中で識別する能力は、最も重要である。これは、特に、標的癌細胞が、周囲の正常細胞と共通した多くの生理学的、解剖学的、および生化学的性質を有する、癌治療における場合である。一部の抗癌薬は正常細胞に付帯的損傷を引き起こすが、それらの使用は、特に活発で急激に成長する癌について必要とされる、または少なくとも正当化される場合がある。
【0005】
治療用抗体は、最も急速に成長する薬剤の領域であり、30個より多い抗体は後期臨床試験におけるものである(Hudson and Souriau, Nat Med 9:129-134, 2003)。改変抗体の多くのバリエーションがある(例えば、マウスモノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトモノクローナル、一本鎖可変抗体断片(scFv)、ミニボディ、アプタマー)。組換えDNAテクノロジーを用いて開発されたダイアボディは、異なる結合特異性および両方のscFvが同時に抗原を結合するのを可能にするためにこれらのドメイン間に適切な間隔を有する、2つまたはそれ以上の一本鎖可変抗体断片(scFv)を含む(Hudson and Souriau, 前記 2003)。二価および二重特異性scFv抗体は、異なるscFvに付着したロイシンジッパーに基づいた二量体化カセットを用いて形成されている(de Kruif and Logtenberg, J Biol Chem 271:7630-7634, 1996)。ポリペプチド鎖によって連結された異なるscFvドメインを有する二重特異性抗体は、T細胞を腫瘍と架橋結合するように設計されている。そのようなキメラ抗体が細胞上の異なる表面抗原と生じる2つまたはそれ以上の相互作用は、個々の相互作用についての解離定数が掛け算であるため、結合強度を著しく増加させる。
【0006】
治療用抗体は重要であるが、多重特異性抗体は、それほどの成功は収めていない。それゆえに、標的細胞に対してより選択が高い、抗体に基づいた薬物および他の治療剤を開発する必要性がある。
【0007】
抗体全体は、特異性の高いターゲティング剤として提案されている(Carter, Nature Reviews 1:118-128, 2001)。一つの提案において、細胞傷害物質が、標的細胞上の抗原に特異的な抗体に連結している。しかしながら、抗体は高度の標的特異性を有するが、それらは、幅広い病理学的治療的使用を達成しておらず、主として、臨床画像診断適用に用いられる。これは、それらの比較的長い循環半減期およびそれらの関連したエフェクター機能によると考えられる。
【0008】
しかしながら、改変抗体は、免疫治療適用においてある程度の容認に達している(Carter (2001) 前記; de Haard et al., Adv. Drug Delivery Rev. 31:5-31, 1998; Chames and Baty, FEMS Microbiol. Lett. 189:1-8, 2000; Funaro et al., Biotechnol. Adv. 18:385-401, 2000: Hudson, Exp. Opin. Invest Drugs 9:1231-1242, 2000)。
【0009】
治療用抗体を含む例は、Carter (2001)前記の表1に概説されている。
【0010】
これらの抗体はすべて、補体依存性細胞傷害活性(CDC)および抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)に必要とされるFcドメインを含む。
【0011】
抗体断片の使用におけるもう一つの有用な開発は、放射性アイソトープ(Wu et al., Immunotechnology 2:21-36, 1996; Wu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:8495-8500, 2000; Adams et al., Nuc. Med. Biol. 27:330-346, 2000)、治療を生み出すための酵素(Bagshawe and Begent, Adv. Drug Delivery Rev. 22:365-367, 1996)、および標的にされた細胞殺害のための毒素(Reiter and Pastan, Tibtech 16:51-520, 1998; Kreitman, Curr. Opin. Immunol. 11:570-578, 1999)などの活性作用物質とのそれらの融合である。
【0012】
特に関心対象の改変抗体は、互いに連結した軽鎖および重鎖の可変領域配列を有する一本鎖可変断片(scFv)である。scFv抗体断片は、ひと続きの合成ペプチドにより軽鎖のV領域に連結された重鎖のV領域を含む抗体の抗原結合断片(Fragment antigen binding)(Fab)部分由来である。
【0013】
scFv抗体断片は、分子のターゲティングとしての有用性の妥当なレベルに達しているが、それらはFcドメインを欠き、ADCCまたはCDCを誘導することができない。
【0014】
本発明は、scFv抗体断片の改変型が標的にされる細胞治療および/または診断および/または研究に用いられることを可能にする。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本明細書を通して、文脈が他に要求しない限り、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの語尾変化語は、規定された要素もしくは整数値、または要素もしくは整数値の群の包含を意味するが、いかなる他の要素もしくは整数値または要素もしくは整数値の群の排除も意味しないことを理解されていると思われる。
【0016】
本発明は、特定の細胞を標的にする能力があり、かつ細胞傷害活性および/またはレポーター機能および/または細胞治療を促進する能力がある「デミボディ」と本明細書で呼ばれる免疫相互作用性分子を作製するための抗体-抗原相互作用の特異性を組み合わせる。より特定的には、本発明の一つの局面は、各デミボディが抗原結合部、作用物質またはその部分、および結合対のどちらかのメンバーを含む、少なくとも2つのデミボディのセットを提供する。2つのデミボディは、極めて接近している場合、相補的な結合対の一方を構成する各メンバーが相互作用して結合対を形成するように設計される。これは、その結果として、作用物質の部分の相互作用が、機能性作用物質または2つの作用物質の相互作用を発生させることを可能にし、その作用物質は、例えば、細胞死、細胞治療、またはレポーターシグナルをもたらすことに起因する性質を有する。このゆえに、デミボディ上の作用物質は、レポーター分子、治療用分子、または細胞傷害性分子として作用できる、またはそれらを形成することができる。好ましくは、デミボディは、作用物質の非機能性部分を含む。極めて接近している場合、レポーターまたは治療用または細胞傷害性分子部分は一体となり、シグナルをもたらす、または細胞治療もしくは細胞障害活性を誘導する能力がある機能性分子が再構築される。これは、画像診断、診断、および治療の目的のための特異性を増加させる。デミボディはまた、FACS、フローサイトメトリー、およびアフィニティークロマトグラフィーについてなどの有用な研究ツールである。デミボディはまた、タンパク質、またはそれらの異なるリン酸化もしくはグリコシル化もしくは他の翻訳後修飾体などの細胞の産物を検出するために用いられうる。要するに、本発明のデミボディは、細胞、ウイルス、またはタンパク質などのそれらの産物の免疫表現型選択の向上を可能にする。
【0017】
抗原結合部は、scFv(またはF'ab断片)などの免疫グロブリンまたは微小親和性足場などの任意の親和性足場由来でありうる。例には、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質(microprotein)、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン(anticalin)、アプタマー、ダルピン(darpin)、アビマー(avimer)、アフリン(afflin)、およびクニッツ(Kunitz)ドメインが挙げられる。
【0018】
デミボディは、セットにおける各デミボディが特定の抗原に特異的であるため、増強した標的特異性を有する。このゆえに、異常な一対の抗原を有する細胞またはウイルスを選択することは、非特異的結合のリスクを低下させる。
【0019】
一つの態様において、各デミボディは不完全なFcドメインを有するが、その対のデミボディの結合により、2つの不完全なFcドメインは、ここで機能性Fcドメインまたはその機能性部分を形成する。結合したデミボディは全体として、生物学的機能性Fcドメインを有し、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害活性(CDC)などの関連した活性を惹起できる。もう一つの態様において、2つの不完全なドメインは、再構築される場合、レポーター分子、治療剤、または細胞傷害性剤などの作用物質を形成する。さらなる態様において、作用物質は、一緒になると特定のシグナルをもたらす蛍光色素などの色素である。
【0020】
このゆえに、本発明の一つの局面は、一緒に高選択的細胞障害活性を誘導することができる1セットのデミボディ対を含む組成物を提供する。選択毒性は、標的細胞の表面上の少なくとも2つの異なる抗原とのデミボディの相互作用の結果として起こる。主に、標的細胞集団上にのみ同時に発現している2つの異なる抗原。たとえこれらの抗原の1つ(または類似抗原)が正常細胞上に提示されたとしても、両方の抗原がその1つの細胞上に存在しない限り、その対のデミボディは、機能性Fcドメイン、治療用分子、細胞傷害性分子、またはレポーター分子などの機能的細胞傷害性ドメインを形成するように相補的結合対を介してその細胞の表面上で一体にならないと考えられる。
【0021】
さらなる態様において、デミボディ対の再構築は、結果として、機能的細胞傷害性分子または治療用分子を生じる。そのような再構築される機能性分子の例は、アポトーシス性、細胞周期静止性、溶解性、または細胞傷害性の分子、抗生物質、ペプチド、およびサイトカインである。
【0022】
代替の態様において、各デミボディは、色素または蛍光マーカーなどの機能的レポーター分子を有し、デミボディがともに再構築する場合、組み合わされたシグナル(または組み合わされた色素)または組み合わされた蛍光シグナルは、個々のシグナル(または色素)とは異なる。蛍光マーカーの例には、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、カスケードブルー、ルシファーイエロー、NBD、フィコエリトリン(PE)、PerCP、アロフィコシアニン、hoechst 33342、DAP1、SYTOX Blue、hoechst 33258、クロモマイシンA3、ミトラマイシン、YOYO-1、SYTOX green、SYTOX orange、7-AAD、アクリジンオレンジ、TOTO-1、To-PRO-1、チアゾールオレンジ、TOTO-3、TO-PRO-3、LDS 751、Alexa Fluro-350、-430、-488、-532、-546、-555、-556、-594、-633、-647、-660、-680、-700、および-750を含むAlexa Fluor色素;BoDipy 630/650およびBoDipy 650/665を含むBoDipy色素;CY色素、特にCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7;6-FAM(フルオレセイン);PE-Cy5、PE-Cy7、フルオレセインdT;ヘキサクロロフルオレセイン(Hex);6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン(JOE);488-Xおよび514を含むOregon green色素;X-ローダミン、LissamineローダミンB、ローダミングリーン、ローダミンレッド、およびROXを含むローダミン色素;TRITC、テトラメチルローダミン(TMR);カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA);テトラクロロフルオレセイン(TET);Red 6B、FluorX、BODIPY-FL、およびテキサスレッドが挙げられる。
【0023】
本発明のデミボディは、癌、病原体による感染を含むさまざまな状態の処置、または被験体における任意の細胞型の選択的ターゲティングに有用である。それらはまた、幹細胞などの細胞のターゲティングに有用である。
【0024】
被験体への言及には、ヒトまたは他の霊長類、家畜動物、実験試験動物、コンパニオン・アニマル、または鳥類が挙げられる。被験体はまた、患者とみなされうる。
【0025】
本発明は、それゆえに、結合対を介して互いに結合する場合、ADCCまたはCDCなどの細胞傷害活性を誘導する能力があるFcドメインなどの機能的細胞傷害性ドメインまたはその機能性部分を形成する少なくとも2つのデミボディを被験体に投与する段階を含む、患者などの被験体において処置する方法を企図する。または、デミボディは、細胞傷害性剤または治療用分子を再構築する。
【0026】
診断および/または画像診断および/または治療のための診断組成物ならびに方法もまた、本発明の一部を形成する。
【0027】
対の免疫相互作用性分子は、同時に、または逐次的に、投与されうる。
【0028】
本発明はさらに、細胞を選択的に同定するための方法であり、該細胞を一対のデミボディと接触させる段階を含み、各デミボディが、第一部分が細胞上の1つまたは2つの抗原と相互作用する能力があり、第二部分が別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的な非機能性部分を含み、かつ第三部分が相補的な結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、個々のデミボディのその2つの抗原への結合により、結合対が組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらすことまたは単一のレポーター分子を再構築することを可能にする方法を提供する。
【0029】
本明細書に用いられる略語のリストは、表1に提供される。
【0030】
(表1)略語

【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、抗体様免疫相互作用性分子を形成する、一対の改変免疫グロブリン分子に関する。これに関連して「免疫相互作用性」という用語は、抗体の主要な特性、すなわち、抗原と特異的に相互作用する抗体の能力、の一つを目立たせるために用いられる。各分子は、事実上、抗体様分子の半分であるため、本明細書では「デミボディ」と呼ばれる。本発明は、それゆえに、1つの抗原に対する特異性を有する一本鎖可変断片(例えば、scFv)を形成するために組換えにより、および/または化学的に改変された抗体を含む。そのようなデミボディはまた、本明細書では、免疫相互作用性分子、または改変もしくはキメラ免疫グロブリン、または改変もしくはキメラ抗体と呼ばれうる。
【0032】
本発明のデミボディは以下を含む:
(i)scFv抗原結合部;
(ii)作用物質またはその非機能部分;および
(iii)第二デミボディ上のメンバーと相互作用し、それによりホモ二量体ではなく、ヘテロ二量体の結合対を形成する能力がある結合対のうちのメンバー。
【0033】
使用において、少なくとも2つのデミボディは以下を有するように選択される:
(i)標的細胞上の異なる抗原に対するscFv抗原結合部;
(ii)両方のデミボディが互いに結合した場合に、機能性作用物質が形成されるような、作用物質またはその非機能性部分;および
(iii)極めて接近して、両方のメンバーが相補的パートナー間の結合対を形成するように相互作用することができるような、2つの結合メンバー。
【0034】
一つの態様において、作用物質の不完全な非機能性部分は、Fcドメインまたはその機能性部分である。この場合、相補的で、不完全な非機能性Fcドメインは各デミボディ上で用いられる。または、非機能性部分は、細胞傷害性分子、またはレポーター分子、または治療用分子の一部である。さらにもう一つの態様において、作用物質は機能性であるが、両方の作用物質が合わさる場合、上記の1つの作用物質に存在しない特別の結果が生じる(シグナルなど)。
【0035】
このゆえに、再構築された場合の作用物質は、細胞傷害性、薬物、治療的、またはレポーターシグナル性質を有しうる。
【0036】
デミボディは、癌細胞もしくは病原体の細胞傷害性ターゲティング、癌細胞、幹細胞(胚性または成人)、もしくは病原体に感染した細胞などの細胞の選択的検出を含むさまざまな適用を有する。細胞検出は、FACS、フローサイトメトリー、および蛍光顕微鏡法により容易にされうることができる。デミボディはまた、アフィニティークロマトグラフィーなどの研究適用をもつ。デミボディはまた、タンパク質、またはそれらの異なるリン酸化もしくはグリコシル化もしくは他の翻訳後修飾体などの細胞の産物を検出するために用いられうる。タンパク質の異なる型の検出は、特に、疾患状態もしくは健康レベルを診断または予後判定するのに有用である。
【0037】
一つの態様に関して、結合対の形成は、結果として、機能性Fcドメインまたはその部分の形成を生じる。Fcドメインは一般的に、対形成されたCH2とCH3ドメインに対応し、エフェクター分子およびFc受容体を有する細胞と相互作用する抗体の一部である。不完全なFcドメインが一体となって機能性Fcドメインを形成することは、細胞上のエフェクター分子またはFc受容体と相互作用するのに必要とされる十分な量のFcが形成されることを意味する。それはさらに、不完全なFcドメインを示す場合がある。それゆえに、本発明は、Fcドメインが、2つのデミボディが互いに結合する場合、エフェクター分子または細胞との相互作用に関して機能的であるとの条件で、完全または不完全なFcドメインの使用を含む。個々の免疫相互作用性分子は、不完全な、非機能性Fcドメインを有する。
【0038】
好ましい態様において、不完全な、非機能性Fcドメインは、γ2a鎖およびγ2b鎖に対応する。各デミボディは、好ましい態様において、Fcドメインのγ2a鎖かまたはγ2b鎖のいずれかを有する。
【0039】
それゆえに、Fcドメインおよび結合メンバーに関して相補的である、かつ異なる抗原に対する抗原結合部を有し、その抗原が標的細胞上に共発現している、1セットの少なくとも2つのデミボディが必要とされる。
【0040】
従って、本発明の一つの局面は、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が非機能性の、不完全なFcドメインであり;および
第三部分が相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を含み、
デミボディが該標的細胞上のもう一つの抗原と相互作用する部分を含む第二相補的デミボディに結合する場合、機能性Fcドメインを形成する能力がある、
デミボディを提供する。
【0041】
機能性Fcドメインは、標的細胞のADCCを媒介するのに有用である。
【0042】
本発明はさらに、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が非機能性、不完全なFcドメインであり;および
第三部分が相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を有する第一デミボディ;ならびに
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性Fcドメインを形成する第二部分;および
該結合対の相補的結合メンバーである第三部分を含む、第二デミボディ
を含む、1セットのデミボディを提供する。
【0043】
本発明はさらに、細胞の細胞傷害活性を選択的に誘導するための方法であり、
細胞を第一および第二デミボディと接触させる段階を含み、
該第一デミボディが、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が非機能性、不完全なFcドメインであり;および
第三部分が相補的結合対のうちの一メンバーである、該第一、該第二、および該第三部分
を含み;かつ
該第二デミボディが、
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性Fcドメインを形成する第二部分;および
該結合対の相補的結合メンバーである第三部分
を含み;
該デミボディが、機能性Fc含有抗体が再構築されて、該細胞の溶解を媒介するのに十分な時間および条件下で投与される、方法を企図する。
【0044】
本発明のこれらの局面は、機能性部分(すなわち、作用物質)としてFcドメインに関するが、本発明は、細胞周期停止を誘導する作用物質由来のアポトーシス性ドメインまたは溶解性ドメインなどの他の細胞傷害性ドメイン、および治療用分子のドメインにまで及ぶ。
【0045】
不完全なFcドメインの代替として、それゆえに、本発明は、細胞傷害性分子、治療用分子、およびレポーター分子についての不完全なドメインにまで及ぶ。
【0046】
従って、本発明のもう一つの局面は、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が細胞傷害性分子、または治療用分子、またはレポーター分子の非機能性、不完全なドメインであり;および
第三部分が相補的結合対のうちの一メンバーである、該第一、該第二、および該第三部分
を含むデミボディであり、
該デミボディが、
該標的細胞上のもう一つの抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性Fcドメインを形成する第二部分;および
該結合対の相補的結合メンバーである第三部分
を含む第二相補的デミボディにそのデミボディが結合する場合、機能性細胞傷害性分子、または治療用分子、またはレポーター分子を形成する能力がある、デミボディ
を提供する。
【0047】
デミボディは、事実上、上で定義された第一、第二、および第三部分と等価な第一、第二、および第三分子を有するモジュラーまたはキメラ分子である。
【0048】
本発明はさらに、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が非機能性、不完全な細胞傷害性分子、または治療用分子、またはレポーター分子であり;および
第三部分が相補的結合対のうちの一メンバーである、該第一、該第二、および該第三部分を有する、
第一デミボディ;ならびに
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性細胞傷害性分子またはレポーター分子を形成する第二部分;および
該結合対の相補的結合メンバーである第三部分を含む
第二デミボディ
を含む、1セットのデミボディを提供する。
【0049】
本発明はさらに、細胞を選択的に検出または標的にするための方法であり、
細胞を第一および第二デミボディと接触させる段階を含み、
該第一デミボディが、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が非機能性の、不完全な、細胞傷害性分子、または治療用分子、またはレポーター分子であり;および
第三部分が相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を含み;かつ
該第二デミボディが、
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能的細胞傷害性分子、または治療用分子、またはレポーター分子を形成する第二部分;および
該結合対の相補的結合メンバーである第三部分を含む、方法
を企図する。
【0050】
さらなる態様において、各デミボディは、2つのデミボディがお互いと再構築する場合、組み合わされたレポーター分子が特有のシグナルをもたらす色素などのレポーター分子を有する。色素の例には、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、カスケードブルー、ルシファーイエロー、NBD、フィコエリトリン(PE)、PerCP、アロフィコシアニン、hoechst 33342、DAP1、SYTOX Blue、hoechst 33258、クロモマイシンA3、ミトラマイシン、YOYO-1、SYTOX green、SYTOX orange、7-AAD、アクリジンオレンジ、TOTO-1、To-PRO-1、チアゾールオレンジ、TOTO-3、TO-PRO-3、LDS 751、Alexa Fluro-350、-430、-488、-532、-546、-555、-556、-594、-633、-647、-660、-680、-700、および-750を含むAlexa Fluor色素;BoDipy 630/650およびBoDipy 650/665を含むBoDipy色素;CY色素、特にCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7;6-FAM(フルオレセイン);PE-Cy5、PE-Cy7、フルオレセインdT;ヘキサクロロフルオレセイン(Hex);6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン(JOE);488-Xおよび514を含むOregon green色素;X-ローダミン、LissamineローダミンB、ローダミングリーン、ローダミンレッド、およびROXを含むローダミン色素;TRITC、テトラメチルローダミン(TMR);カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA);テトラクロロフルオレセイン(TET);Red 6B、FluorX、BODIPY-FL、およびテキサスレッドが挙げられる。
【0051】
本発明はさらに、細胞を選択的に同定するための方法であり、該細胞を一対のデミボディと接触させる段階を含み、各デミボディが、第一部分が細胞上の1つまたは2つの抗原と相互作用する能力があり、第二部分が別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的非機能性部分を含み、かつ第三部分が相補的結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、個々のデミボディの2つの抗原への結合により、結合対が組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらす、または単一のレポーター分子を再構築するのを可能にする方法を企図する。
【0052】
上の局面において、抗原結合部は、限定されるわけではないが、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインなどの、免疫グロブリン由来でありうる、または任意の親和性足場でありうる。
【0053】
投与は逐次的または同時的でありうる。逐次投与は、ナノ秒、数秒、数分、数時間、または数日以内の両方のデミボディの別々の投与を含む。同時投与は、単一の組成物における、または2つの別々の組成物における同時投与を含む。
【0054】
被験体は、ヒトもしくは他の霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ)、実験試験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、捕獲野生動物、または鳥類(例えば、家禽、愛玩鳥、狩猟鳥、捕獲野生鳥)でありうる。被験体はまた患者とみなされうる。
【0055】
抗原結合部は、一般的には、組換えFab断片である。この断片は、重鎖のVHおよびCHドメインと対形成した完全な軽鎖を含む抗体分子のアームに対応する。
【0056】
一般的には、抗原結合部は、抗体のscFv部分である。scFvは、一般的に、単量体であるが、二量体性または多価性と比較した単量体性の程度は、VHドメインとVLドメインの間のリンカーのサイズに依存しうる。scFv分子の構築は、Hudson (1999)前記、およびKortt et al., Biomolecular Engineering 18:95-108, 2001に記載されている。
【0057】
本発明は、限定されるわけではないが、dAbなどの免疫グロブリンの他の結合部、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメイン、または限定されるわけではないが、微小足場などの他の親和性足場にまで及ぶ。
【0058】
抗原結合部は、標的細胞上の表面、または外部環境と共接続した表面下の抗原に特異的である。標的細胞は、癌細胞、病原体もしくは寄生生物に感染した細胞、または他の望ましくない細胞でありうる。病原体は、マラリア寄生虫を含む真核または原核微生物を含む。それはまた、ウイルスを含む。さらに、ウイルス感染細胞は、その表面上にウイルス由来受容体を発現する可能性がある。そのような細胞の特異的ターゲティングは、結果として、ウイルス産生細胞の減少を生じうる。これは、望ましくない細胞の例である。
【0059】
本発明は、白血球サブセットを含む癌細胞を標的にするための治療剤の作製に特に有用である。癌細胞は、一般的に、特定のCD抗原の発現により定義される。しかしながら、単一のCD抗原を標的にすることは、同じCD抗原を有する正常細胞への付帯的損傷を引き起こしうる。この問題は、単一型のデミボディ単独が機能性Fcドメインの欠如および架橋結合できないためにADCCまたはCDCを誘導する能力がないということから、本発明により解決されることが提案される。しかしながら、癌細胞上に存在する2つの異なるCD抗原または他の抗原に対するら相補的結合メンバーを有する2つのデミボディが用いられると、この異常な対の表面分子を有する細胞のみが、両方のデミボディが結合した後、細胞傷害的に標的にされる。いったん結合した場合には、CD抗原は、脂質二重層の二次元において自由に移動し、デミボディは、最終的に、お互いに極めて接近する。その時点において、結合対のメンバーは、相互作用して、結合対を生じ、2つの不完全なFcドメインは、機能性Fcドメインを形成する。選択的細胞傷害活性が、その際、その細胞に誘導される。本発明のこの局面の本質は、特定の癌細胞または望ましくない細胞または他の標的細胞に対応する表面分子の異常な組み合わせである。
【0060】
癌処置に関して、表2に列挙されたものより選択された2つまたはそれ以上のCD抗原などのCD抗原が、特に好ましい。
【0061】
(表2)CD抗原の概要

【0062】
結合パートナーは、お互いと相互作用して会合または結合を形成する能力があるいくつかの実体(entity)のいずれかを構成しうる。結合パートナーの例には、ロイシンジッパー、受容体-リガンド(例えば、サイトカインおよびサイトカイン受容体)、アクチンおよびアクチン結合タンパク質、DNAアプタマーの相補的部分が挙げられる。結合対の実際の性質は、二次元で極めて接近して一体となる際、結合対の両方のメンバーが会合または結合を形成する場合には、本発明にとって重要ではない。
【0063】
好ましい態様において、結合対は、ロイシンジッパーの相補的部分を含む。ロイシンジッパーアミノ酸配列は、表3に示されている。ヘテロ二量体化は、例えば、SEQ ID NO:1と2、SEQ ID NO:3と4、およびSEQ ID NO:3と5の間で生じる。ロイシンジッパーまたは他の相補的結合部の長さには、限定されるわけではないが、10アミノ酸から100アミノ酸までが挙げられ、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100アミノ酸などである。
【0064】
(表3)ロイシンジッパー配列



【0065】
一つの態様において、本発明は、Fab部分(scFv)またはその誘導体、結合対のメンバーである不完全な非機能性Fcドメイン(Cγ2aまたはCγ2b)、および相補的結合対のうちの一メンバーを含むデミボディであり、免疫相互作用性分子が、Fab部分、第一デミボディ上の不完全なFcドメインを補完し、それにより結合対の他のメンバーと活性Fcドメインを形成するのに必要とされるFcドメインの量を含む第二相補的デミボディに結合する場合、機能性Fcドメインを形成する能力があるデミボディを企図する。
【0066】
好ましくは、結合対はロイシンジッパーを含む。
【0067】
好ましくは、Fab部分はscFv断片である。
【0068】
好ましくは、FabまたはscFv断片は、CD抗原などの癌細胞上の抗原に対する特異性を有する。
【0069】
本発明は、それゆえに、各セットはがそれぞれ以下の構造を有する少なくとも2つのデミボディを含む、1セットのデミボディを提供する。
x-(FcI)i-scFv(Ag1);または
y-(FcII)i-scFv(Ag2);
ここで、
xおよびyは互いに会合または結合を形成する能力がある結合パートナーであり;
(FcI)iおよび(FcII)iは、xとyの結合により機能性Fcドメインを形成する能力がある、それぞれの不完全な、非機能性Fcドメインであり;ならびに
scFv(Ag1)およびscFv(Ag2)は、2つの異なる抗原(Ag)、Ag1またはAg2、に対する特異性を有する一本鎖可変性断片である。
【0070】
好ましくは、(FcI)iはFcドメインのγ2a鎖であり、(FcII)はFcドメインのγ2b鎖である。
【0071】
本発明はさらに、以下のデミボディを含む組成物を企図する。
x-(FcI)i-scFv(Ag1);および
y-(FcII)i-scFv(Ag2)
【0072】
上記のように、Fc部分は、色素などの作用物質、または細胞傷害性分子、治療用分子、もしくはレポーター分子などの作用物質の部分と置換されうる。
【0073】
このゆえに、本発明のもう一つの局面は、各セットがそれぞれ以下の構造を有する少なくとも2つのデミボディを含む、1セットのデミボディを提供する。
x-(MoI)i-scFv(Ag1);または
y-(MoII)i-scFv(Ag2);
ここで、
xおよびyは互いに会合または結合を形成する能力がある結合パートナーであり;
(MoI)iおよび(MoII)iは、それぞれ、xとyの結合により機能性レポーター分子、細胞傷害性分子、または治療用分子を形成する能力があるレポーター分子、細胞傷害性分子、または治療用分子、または他の作用物質のそれぞれの部分であり;ならびに
scFv(Ag1)およびscFv(Ag2)は、2つの異なる抗原(Ag)、Ag1またはAg2、に対する特異性を有する一本鎖可変性断片である。
【0074】
上記式に関して、scFvは、限定されるわけではないが、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインなどの、免疫グロブリンのもう一つの抗原結合部、または任意の親和性足場により置換されうる。
【0075】
デミボディは、異なる組成物内、または同じ組成物内でありうる。上記のように、デミボディが使用前に混合される、複数パートの薬学的パッケージが企図される。
【0076】
本発明のデミボディは、投与前に脱免疫される必要がある場合がある。「脱免疫される(deimmunize)」という用語は、ヒトに関して、ヒト化を含む。キメラ抗体を作製することまたは抗体へCDAを接ぎ合わすことを含む、任意の脱免疫化技術が用いられうる。
【0077】
本発明のこの局面の組成物はまた、1つもしくは複数の薬学的担体および/または希釈剤を含みうる。薬学的組成物の調製は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (Mack Publishing Company, Easton, PA, U.S.A., 1990)など、当技術分野において十分記載されている。上記のように、特に有用な態様は、癌細胞上のCD抗原に特異的なデミボディに向けられる。便利には、癌細胞により発現されたCD抗原のレパートリーは、CD抗体マイクロアレイにより測定される。
【0078】
特に有用なマイクロアレイは、国際特許出願番号PCT/AU99/01156(WO 00/39580)に開示されている。
【0079】
いったんCD抗原発現のパターンが決定されると、標的細胞、例えば、癌細胞、上に発現しているが、正常細胞上には一般的には発現していない、2つのCD抗原に特異的なデミボディが、選択され、治療、例えば、癌治療、に用いられる。
【0080】
同様のアプローチはまた、ウイルス感染細胞などの他の細胞を標的にするために採用されうる。
【0081】
代替の態様において、Fc部分は、レポーター分子の部分を含む。2つのデミボディが極めて接近した場合に、同定可能なシグナルを発する能力がある機能性レポーター分子が再構築される。これは、高度に特異的な診断および画像化剤の設計を可能にする。
【0082】
なおさらにもう一つの態様は、一対のデミボディが一体になった場合に、再構築する薬物または他の治療剤の部分を提供する。薬物または治療剤はまた、内部に取り入れられうる。
【0083】
本発明はさらに、被験体において癌を診断するための方法であり、推定癌細胞を一対のデミボディと接触させる段階を含み、各デミボディが、第一部分は細胞上の1つまたは2つの癌特異的抗原と相互作用する能力があり、第二部分は別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的な非機能性部分を含み、かつ第三部分は相補的な結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、個々のデミボディのその2つの抗原への結合により、結合対が組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらすことまたは単一のレポーター分子を再構築することを可能にする。第一部分は、限定されるわけではないが、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインなどの、免疫グロブリンの抗原結合部、または任意の親和性足場でありうる方法を企図する。
【0084】
本発明はさらに、標的分子を検出するための方法であり、該標的分子を推定上含む試料を一対のデミボディと接触させる段階を含み、各デミボディが、該第一部分が標的分子特異的エピトープと相互作用する能力があり、該第二部分が別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的な非機能性部分を含み、かつ該第三部分が相補的な結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、個々のデミボディのその2つのエピトープへの結合により、結合対が組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらすことまたは単一のレポーター分子を再構築することを可能にする。好ましくは、標的分子は、翻訳後修飾タンパク質を含むタンパク質などの細胞産物である。例には、リン酸化またはグリコシル化タンパク質が挙げられる。そのようなタンパク質またはそれらの翻訳後修飾レベルは、疾患状態または健康レベルを示しうる方法を提供する。
【0085】
本発明はさらに、以下の非限定的実施例により記載される。実施例において、以下の材料および方法が用いられた。
【0086】
材料
RPMI 1640培地(Hepes改変)はSigma Aldrich(Castle Hill, NSW, Australia)から購入された。ゲンタマイシン(50mg硫酸ゲンタマイシン/ml)、L-グルタミン(200mM)、およびウシ胎児血清(FCS)は、Invitrogen (Mulgrave, Victoria, Australia)からであった。
【0087】
デミボディ設計
タンパク質配列(図1AおよびB)は以下由来であった。
・蛍光タンパク質(FP)dsRED変異体mOrange (Shaner et al., Nature Biotechnology 22:1567-1572, 2004)およびGFP変異体T-Sapphire (Zappater-Hommer and Griesbeck, BMC Biotechnol 3:5, 2003);
・scFV CD45 (Lin et al., Cancer Res 66:3884-92, 2006);
・scFV CD20 (Shan et al., J. Immunol 162:6589-95, 1999);および
・人工的ロイシンジッパー(LZ)ISAL E3およびISAL K3 (Litowski and Hodges, J. Biol. Chem. 277:37272-37279, 2002)。
【0088】
デミボディはscFV-リンカー-FP-リンカー-LZと名付けられ、以下の配置である。
・デミボディA(DBA;CD45-mOrange-E3);および
・デミボディB(DBB;CD20-Sapphire-K3)。
リンカーは、(GGGGS GGGGS GGGGS GGG グリシン セリン)[SEQ ID NO:8]。遺伝子の各リンカーのそれぞれの側に置かれた固有の6bp制限エンドヌクレアーゼ部位は、追加の残基の対を生じた。
【0089】
デミボディ遺伝子合成、タンパク質発現および精製
遺伝子配列は、大腸菌(E. coli)コドン選択を用いるこれらのタンパク質配列に基づいて設計された。
【0090】
タンパク質濃度
タンパク質濃度は、Trx-DBAおよびTrx-DBBについて、それぞれ、1.26および1.21の吸光度 0.1%の理論的減衰係数を用いて、A280nmにおいて推定された。
【0091】
SEC/MALLS
タンパク質の凝集状態は、SEC/MALLS(多角レーザー光散乱によりモニターされるサイズ排除クロマトグラフィー)により評価された。試料を、0.22μMフィルターを用いて濾過し、0.4mL.min-1の流速でSuperose-6カラム(GE Healthcare)を用いるAkta Basic(GE Healthcare)のSECに供した。215nm、280nm、および400nmまたは550nmにおける吸光度をモニターすることに加えて、試料の屈折率および3つの異なる角度における散乱データを、インラインOptilab DSP干渉屈折計およびMiniDawn(Wyatt)装置によりモニターした。BSAを較正標準として用いた。
【0092】
蛍光分析
蛍光実験は、Cary Eclipse蛍光分光光度計(Varian Inc., Palo Alto, CA)において測定された。5%v/vグリセロール(0.1%v/v)を含むTris-HCl(100mM)NaCl(50mM)、pH8.5中のタンパク質(0.1〜0.9mg/mL)。5-mmを用いて、〜250μLの容量を保持した。T-Sapphire蛍光およびFRETは、400nmにおける励起により測定され、蛍光発光スペクトルは、10nmのスリット幅を用いて、450〜600nmで記録された。mOrange蛍光は、510nmにおける励起により測定され、蛍光発光スペクトルは、10nmのスリット幅を用いて、550〜650nmで記録された。スキャンは60nm.min-1の速度で記録された。データは、Scan Software v.1.1を用いて処理された。
【0093】
細胞系およびそれらの培養
MEC1細胞は、Dipartimento di Scienze Biomediche e Oncologia Umana, Universita di Torino, Ospedale Mauriziano Umberto 10, Italyから入手された。Raji細胞(B細胞バーキットリンパ腫)およびCCRF-CEM細胞(T細胞急性リンパ性白血病)は、American Type Culture Collection(Manassas, VA, USA)からであった。細胞系を、10%v/vFCS、50μg/mlゲンタマイシン、および2mM L-グルタミンを追加したRPMI 1640培地中、37℃で非加湿雰囲気内で増殖させた。細胞培養物の試料(10mL)を、遠心分離(600g、10min、4℃)により8x105細胞/mLの密度で収集し、等容量のハンクス液中で洗浄し、一方または両方のデミボディとの相互作用のためにハンクス液に再懸濁した。
【0094】
フローサイトメトリー
細胞(2X106個)を、PBS中で2回、洗浄し、2.0mLのFACS緩衝液(5%v/vウシ胎児血清、FCSを含むPBS)に再懸濁した。アリコート(300μL、3X105細胞)を、デミボディ(〜200μg/mL、20μL)と混合し、室温で、暗闇中、1時間、インキュベートした。試料を、LSR IIフローサイトメーター(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, USA)で分析した。データを収集し、LSRソフトウェア(Becton Dickenson)を用いて分析した。最小限10,000個の事象からのデータを収集した。
【0095】
実施例1
デミボディの作製
DBAおよびDBBをコードする遺伝子を合成し(スキーム1および2)、pET32aベクターへクローニングしてpET32a-30103s1およびpET32a-30103s2を生じた。大腸菌BL-21(DE3)への形質転換後、各形質転換から数個のコロニーを選択し、タンパク質発現について試験した。誘導された試料からの〜78kDaにおけるバンドの出現が、タンパク質の発現の成功を示すものとみなされ、高発現コロニー(pET32a-30103s2についてコロニー5、およびpET32a-30103s2についてコロニー3)を、引き続いての発現実験に用いた(図2A、B)。両方の場合とも、タンパク質は、大規模発現(1L)後、封入体として発現し、タンパク質は、変性条件下で金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製され、再び折り畳まれて、Trx-DBAおよびTrx-DBBについて、それぞれ、0.1mg/mLおよび0.9mg/mLの最終タンパク質濃度を生じた。再び折り畳まれたタンパク質は、SDS-PAGEにより判断される場合、〜80%純粋であった(図2C)。
【0096】
スキーム1:合成30103 S1のDNA配列

【0097】
スキーム2:合成30103 S2のDNA配列

【0098】
大腸菌のOrigami株からの可溶性デミボディタンパク質の発現
遺伝子DBBをpGS21aへサブクローニングし、結果として、His6-GST-DDBをコードするベクターpGS21a-30103s2を生じた。このベクターおよびpGEX-30103s1を、Origami(Novagen)大腸菌株へ形質転換し、高発現形質転換体を、BL21(DE3)株について上で記載されているように、選択した。Trx-DBAおよびHis6-GST-DDBの両方は、〜50%可溶性タンパク質を含む可溶性画分中に発現された(図2D)。
【0099】
再び折り畳まれたTrx-デミボディの蛍光特性
蛍光励起スペクトルは、TRX-DBAおよびTRX-DBBについて記録された。発光波長は、各タンパク質についての理論的最大値に、または実際と同じくらいに理論的最大値の近くに、設定された。TRX-DBA(オレンジ色)およびTRX-DBB(青色)は、それらのGFP変異体成分、mOrangeおよびT-Sapphire、について予想されたとおり、それぞれ、〜344nmおよび400nmに励起極大を示した(図3)。蛍光発光スペクトルは、TRX-DBAおよびTRX-DBBについて記録された。TRX-DBA(オレンジ色)およびTRX-DBB(青色)は、mOrangeおよびT-Sapphireについて予想されたとおり、それぞれ、〜510nmおよび〜560nmに発光極大を示した。
【0100】
再び折り畳まれたTrx-デミボディの活性濃度の推定
MALLSと組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィーは、再び折り畳まれたタンパク質が、たぶん不正確に折り畳まれたタンパク質から生じた、幅広い範囲のサイズの分子を含むことを示した。GFPにおけるフルオロフォアは、GFPが正しく折り畳まれた場合のみ形成し、一般的に、GFPは、それらが融合したタンパク質もまた折り畳まれ、可溶性である場合のみ蛍光性である。従って、相対的蛍光が、各試料における活性タンパク質の近似濃度を測定するために用いられた。既知のeGFP融合タンパク質の1-μM試料の蛍光特性が評価された。430nm(蛍光励起極大に近い)の励起波長が用いられる場合、試料は、〜510nmに強い蛍光発光を示した(図5)。これは、同様の条件下で記録されたTRX-DBAおよびTRX-DBB試料の蛍光特性と比較された(図4)。各場合における蛍光最大シグナルはeGFPの<10%であった。それらのタンパク質の濃度が、それぞれ、〜1.5μMおよび〜15μMであったため、Trx-DBAおよびTrx-DBBの再び折り畳まれた調製物はそれぞれ、≦〜8%および≦〜0.5%の正しく折り畳まれたタンパク質を含む可能性が高かった。
【0101】
硫酸アンモニウム分画
DBAおよびDBBタンパク質の大部分は不正確に折り畳まれていたため、各デミボディの全試料(〜30mL)を60%飽和硫酸アンモニウムでの分画に供した。固体ASを、希釈したデミボディ溶液へ段階的に加え、ガラス棒ですりつぶすことにより溶解させた。溶液を、その後、氷上で30分間、放置した。沈殿したタンパク質を遠心分離(10,000 g、30 min、4℃)により収集し、チューブの内側を丁寧にティッシュで拭き、タンパク質を、再びガラス棒を用いてすりつぶして、0.5mLのPBSに再溶解させた。おそらく変性した不活性デミボディと思われる不溶性物質を、遠心分離(10,000 g、30 min、4℃)により除去した。これらの濃縮されたデミボディ溶液における残留硫酸アンモニウムを、Centricon遠心濃縮機を用いて緩衝液交換により除去した。これらの分画および濃縮されたデミボディ溶液で得られたフローサイトメトリー結果は、この段階における不活性タンパク質の有意な除去を示した。
【0102】
Forster共鳴エネルギー移動
DBAおよびDBBの両方が結合する細胞の非存在下、かつ10-5M-1未満のタンパク質濃度において、FRETは観察されないはずである。TRX-DBAおよびTRX-DBBの混合物の発光スペクトルが記録された(図6)。それは、TRX-DBBのそれと本質的に同一であり、FRETの表示(510nmにおける発光ピークの強度における減少および〜560nmにおける追加のピークの出現により示される)を示さなかった。
【0103】
フローサイトメトリーによるデミボディで標識された細胞の蛍光分析
ヒト細胞系Raji(CD20+、CD45+)、MEC-2(CD20+、CD45+)、CCRF-CEM(CD20-、CD45+)の懸濁液を収集し(500 g、10 min、室温)、PBS+5%v/v FCSで洗浄し、遠心分離し、PBS+5%v/v FCS中に1x106細胞/mLの最終濃度まで再懸濁した。一方または両方のデミボディで細胞を標識するために、300μL細胞懸濁液(3×105細胞)を、30μLデミボディ(200μg/mL、デミボディA(DBA;CD45-mOrange-E3)、デミボディB(DBB;CD20-T-Sapphire-K3))と暗闇中、室温で60 min、インキュベートした。これらの細胞系の既知の免疫表現型に基づいて、以下の結合パターンが予想される。

【0104】
インキュベーション後、標識された細胞を、Becton Dickinson LSR IIを用いるフローサイトメトリーにより分析した。発光の検出についての波長は列挙され、その後に、フィルターのバンド幅が続く。

【0105】
フローサイトメトリーを用いて得られた結果は、表4に要約されている。575nmで検出された平均蛍光(赤色数字)における7倍より大きいシフトは、DBAのすべての3つの細胞系への結合を示し、それらがDBAに結合するCD45を発現していることから予想されたとおりである。蛍光における微量なシフトが、RajiおよびMEC-2細胞上のDBBの結合について検出された。微量FRETシグナルがRaji細胞系について検出された。これらのデータはまた、細胞単独についての蛍光値との比として表5に提示されている。細胞およびデミボディの組み合わせについての結合の存在およびFRETは、表6に要約されている。
【0106】
データ(表4〜6)は、DBA(CD45-mOrange-E3)がすべての3つの細胞系に強く結合することを示しているが、それらすべてが汎白血球マーカー、CD45を発現しているからである。データはまた、Bリンパ球マーカー、CD20を発現するRajiおよびMEC-2細胞へのDBB(CD20-T-Sapphire-K3)の有意により強い結合を示している。有意なFRETは、Raji+DBA+DBBについて観察されたが、MEC-2について観察されなかった。この矛盾は、MEC-2上のCD20のより低い発現、および本調製における活性DBBの低い割合によると思われる。407nmの光での(Raji細胞+DBA+DBB)の励起は、585nmの長波長の放射光を有するFRETを生じた。このFRETは、構築物に含まれる相補的ロイシンジッパーを介してのRaji細胞表面におけるDBAとDBBの組み合わせによってのみ説明されうる(図1AおよびB)。細胞が削除されているDBA+DBBについてそのようなFRETは観察されなかった(図6)。
【0107】
(表4)デミボディで標識された細胞のフローサイトメトリー分析

平均蛍光は、示された波長における細胞とデミボディの組み合わせについて提供されている。DBB(CD20-T-Sapphire-K3)上のT-Sapphireの蛍光は、青色で強調され、DBA(CD45-mOrange-E3)上のmOrangeの蛍光はオレンジ色で強調され、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は赤色で強調されている。
【0108】
(表5)デミボディで標識された細胞のフローサイトメトリー分析

蛍光値は、表4からのデータを用いて示されているように(細胞+デミボディ)/(細胞)の比率として表されている。
【0109】
(表6)デミボディで標識された細胞のフローサイトメトリー分析

デミボディの特定の細胞系への結合の観察は、表4からのデータを用いて、+/-表示により示されており、FRETは、DBA+DBBとのRaji細胞についてのみ見出された。++ デミボディの細胞への強い結合、+ デミボディの細胞への結合、+/- デミボディの細胞への弱い結合(バックグラウンド)。
【0110】
実施例2
発現および精製
30103 S1のpET32ベクターへのサブクローニング
(1)30103 S1遺伝子を合成し、Kpn IおよびHind IIIを用いてpET32ベクターへクローニングした。
(2)結果として生じたクローンpET-30103 S1をDNAシーケンシングにより検証した。
大腸菌BL-21(DE3)の形質転換
(3)5ナノグラムのpET-30103 S1プラスミドを大腸菌BL-21(DE3)へ形質転換した。
(4)3つのコロニーを選択した。これらのクローンをLB培地に播種し、増殖させ、0.5mM/L IPTGにより37℃で4 hr、誘導した。発現結果をSDS-PAGE(12%w/v)により検出した(図7)。コロニー3を今後の発現のために選択した。
最適化
(5)融合タンパク質は25℃および15℃で発現された。結果は図8に示されている。
タンパク質発現
(6)大腸菌株を1L LB培地において4時間、培養し、その後、0.5mM/L IPTGにより37℃でさらに4時間、誘導した。
(7)細胞を遠心分離により収集した。細胞ペーストを70mL PBSに再懸濁し、その後、氷上で超音波処理した。
タンパク質精製
(8)超音波処理後の可溶化液を、高速度で10 min、遠心分離し、封入体を収集した。
(9)封入体を、2M 尿素、2%v/v Triton X-100、5mM EDTA、0.5% BME、1M NaCl、100mM Tris-HCl緩衝液、pH8.0、および水で、それぞれ、2回、洗浄した。
(10)封入体を、8M 尿素、20mMリン酸緩衝液、pH8.0により分解し、その後、遠心分離して、上清をとっておいた。
(11)封入体を、100mM Tris Cl、50mM NaCl、および5%v/vグリセロール、pH8.5に対して透析することにより再び折り畳み、0.1mg/mLの最終濃度にした。再び折り畳まれたタンパク質を、図9に示されているように、SDS-PAGEにより検出した。
【0111】
実施例3
発現および精製
30103 S2のpET32ベクターへのサブクローニング
(1)30103 S2遺伝子を合成し、Kpn IおよびHind IIIを用いてpET32ベクターへクローニングした。
(2)結果として生じたクローンpET-30103 S2をDNAシーケンシングにより検証した。
大腸菌BL-21(DE3)の形質転換
(3)5ナノグラムのpET-30103 S2プラスミドを大腸菌BL-21(DE3)へ形質転換した。
(4)7つのコロニーを選択した。これらのクローンをLB培地に播種し、増殖させ、0.5mM/L IPTGにより37℃で4 hr、誘導した。発現結果をSDS-PAGE(12%w/v)により検出した(図10)。コロニー5を今後のの発現のために選択した。
最適化
(5)融合タンパク質は25℃および15℃で発現された。結果は図11に示されている。
タンパク質発現
(6)大腸菌株を1L LB培地において4時間、培養し、その後、0.5mM/L IPTGにより37℃でさらに4時間、誘導した。
(7)細胞を遠心分離により収集した。細胞ペーストを70mL PBSに再懸濁し、その後、氷上で超音波処理した。
タンパク質精製
(8)超音波処理後の可溶化液を、高速度で10 min、遠心分離し、封入体を収集した。
(9)封入体を、2M 尿素、2%v/v Triton X-100、5mM EDTA、0.5% BME、1M NaCl、100mM Tris-HCl緩衝液、pH8.0、および水で、それぞれ、2回、洗浄した。
(10)封入体を、8M 尿素、20mMリン酸緩衝液、pH8.0により分解し、その後、遠心分離して、上清をとっておいた。
(11)封入体を、100mM Tris Cl、50mM NaCl、および5%グリセロール、pH8.5に対して透析することにより再び折り畳み、0.1mg/mLの最終濃度にした。再び折り畳まれたタンパク質を、図12に示されているように、SDS-PAGEにより検出した。
【0112】
実施例4
scFv断片の構築
scFv断片は抗体全体から得られる。それらは、抗体の抗原結合VHドメインとVLドメインを柔軟なポリペプチドリンカーで連結することにより構築される。リンカーは、グリシン残基およびセリン残基の組み合わせを含み、柔軟性を与えうる、かつペプチドバックボーンの親水性を増強して、溶媒分子との水素結合を可能にしうる、加えて、プロテアーゼ消化に対して抵抗性にしうる。scFv断片の構築は、Kort et al. (2001)、前記に、およびそこに記載された刊行物に、記載されている。デミボディにおけるポリペプチドセグメントを示す概略図は図13に示されている。ヒトIgGI Fc断片の構造的構成要素の図は図14に示されている。Fcドメインは、好ましくは、γ2a鎖およびγ2b鎖に分けられる。これは、デミボディのFc部分を作製するのに有用である。図15は、ロイシンジッパーのヘテロ二量体化を示す。
【0113】
実施例5
抗体の作製
標的抗原に特異的な抗体は、scFv断片を開発するために用いられる。単離された形、または組換えもしくは合成の形をとる標的細胞由来の抗原(例えば、CD抗原)、または表面抗原を発現する細胞全体が、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を開発するために用いられる。実施例1および2に記載されているように、抗体は単離され、scFv断片は作製される。
【0114】
実施例6
診断および研究のためのツール
二重特異性抗体は、特定のマーカーを結合する試薬として診断に用いられ、抗体の検出を可能にする作用物質に対する結合部位をもたらす。例えば、ポジトロン放出断層撮影法(PET)適用において、二重特異性抗体は放射標識に対する結合部位をもたらす。
【0115】
デミボディは、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、蛍光顕微鏡法、およびイムノアッセイ法などの診断適用の増強を可能にする。統一原理は、シグナルが、蛍光もしくは酵素標識抗Fc抗体での新しく形成されたFcドメインの間接的標識によるか、または各scFv融合タンパク質が酵素もしくは蛍光タンパク質の半分を含み、ジッパー締着後のみ、そのような酵素もしくは蛍光タンパク質が活性になる、いわゆる「タンパク質断片相補性」(PCA)によるかのいずれかで、2つのscFv融合タンパク質のジッパー締着後のみ得られることである。原理上は、これは、デミボディおよびPCA/二分子蛍光相補性(BiFC)アプローチの組み合わせである。
【0116】
FACS
FACSについて、抗原/エピトープの同じ組み合わせが染色される。特別に設計されたデミボディは、抗原/エピトープの組み合わせの1色のみでの染色、およびそれに従って、追加の抗原について「自由な」他の色での染色を可能にする(例えば、CD4+ヘルパーT細胞:CD3およびCD4 − 現行の赤色および緑色、デミボディに関しては赤色または緑色)。異なるFcドメイン(例えば、IgGアイソタイプ)を形成するデミボディは、二次IgGサブタイプ特異的抗体での示差的標識を可能にする。Fcドメインの標識抗体での間接的標識の代わりに、BiFCまたは蛍光共鳴エネルギー移動(またはForster共鳴エネルギー移動、FRET)とでも組み合わせて、各scFv融合タンパク質は、蛍光タンパク質の一部を有することができ、その一部が、ジッパー締着後、蛍光タンパク質へお互いに補って完全になる完し合う(FRETの場合、組み合わせてなる完全な蛍光タンパク質はFRET移動を可能にする)。図16AおよびB参照。
【0117】
蛍光顕微鏡法
蛍光顕微鏡法について、FACS適用についてと同じ試薬が用いられ、臨床診断を目的とした組織学を含む。
【0118】
イムノアッセイ法
特別に設計されたデミボディは、多量体修飾タンパク質の検出を可能にし、それらの区別、例えば、リン酸化タンパク質(ホスホチロシンに対する1つのscFv、タンパク質に対する1つのscFv、第二サブユニットに対する捕獲抗体)またはグリコシル化アイソフォーム(シアル酸に対する1つのscFv、タンパク質に対する1つのscFv、第二サブユニットに対する捕獲抗体)、を可能にする[図17]。
【0119】
研究ツール
診断に有用なデミボディ試薬はまた、例えば、改良型細胞標識およびソーティング、または新規な抗体に基づいた分析のためのツールとして基礎研究に用いられうる。
【0120】
例:タンパク質精製
デミボディは、多量体タンパク質などの複合体、または修飾タンパク質の親和性精製による精製のために用いられうる。例は、リン酸化タンパク質の1段階精製である(scFv抗タンパク質、scFv抗ホスホ-チロシン)[図18]。
【0121】
実施例7
抗体依存性細胞傷害活性
図19は、CD5またはCD19に特異的な2つのデミボディの使用を示す図表示である。デミボディは、CD5またはCD19に結合する能力があるscFv部分、非機能性Fc部分、およびロイシンジッパーの半分を含む。ロイシンジッパーの部分のアミノ酸配列は表3に示されている(SEQ ID NO:1〜5参照)。適切な対には、SEQ ID NO:1と2、SEQ ID NO:3と4、およびSEQ ID NO:3と5が挙げられる。
【0122】
2つのデミボディは、CD5およびCD19の両方を発現する標的細胞に結合する。2つの結合したデミボディが極めて接近するようになった場合に、ロイシンジッパー部分は相互作用し、2つの不完全なFc部分は機能性Fcドメインを形成する(図19参照)。Fc受容体(FcR;例えば、CD16、CD23、CD32、CD64、CD89)を有する細胞傷害性細胞は、その後、細胞溶解を媒介する。
【0123】
当業者は、本明細書に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外のバリエーションおよび改変を受けやすいことは認識していると思われる。本発明がすべてのそのようなバリエーションおよび改変を含むことは理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で、個々にまたは集合的に、言及されたまたは示された段階、特徴、組成物、および化合物のすべて、ならびに該段階または特徴の任意の2つまたはそれ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0124】
引用文献


【図面の簡単な説明】
【0125】
いくつかの図は色の表現または実体を含む。カラー写真は、要請に応じて特許権所有者から、または適切な特許庁から入手可能である。手数料は、特許庁から入手される場合には、課せられる可能性がある。
(図1)図1AおよびBは、チオレドキシン-デミボディ結合体についてのアミノ酸配列の表示である。Trx-CD45-mOrange-E3(デミボディA、DBA、A)およびTrx-CD20-T-Sapphire-K3(デミボディB、DBB、B)。
(図2)図2A〜2Dは、タンパク質ゲルの写真表示である。
(図3)再び折り畳まれたTRXデミボディの蛍光励起スペクトルを示すグラフ表示である。発光波長はTRX-DBAについて580nm、およびTRX-DBBについて510nmに設定された。スリット幅は、両方とも10nmであり、タンパク質濃度は、それぞれ、0.1mg/mLおよび〜0.9mg/mLであった。蛍光励起スペクトルは、TRX-DBA(オレンジ)について400〜560nm、およびTRX-DBB(青)について350〜460nmで記録された。
(図4)再び折り畳まれたTRXデミボディの蛍光発光スペクトルを示すグラフ表示である。励起波長はTRX-DBAについて510nm、およびTRX-DBBについて400nmに設定された。スリット幅は、両方とも10nmであり、タンパク質濃度は、それぞれ、0.1mg/mLおよび〜0.9mg/mLであった。蛍光発光スペクトルは、TRX-DBA(オレンジ)について550〜650nm、およびTRX-DBB(青)について450〜600nmで記録された。
(図5)デミボディの相対的蛍光特性を示すグラフ表示である。eGFP融合タンパク質(1μM)は430nM(ダークシアン)で励起された;再び折り畳まれたTrx-DBA(〜1.5μM)は510nm(オレンジ)で励起された;再び折り畳まれたTrx-DBB(〜15μM)は400nm(青)で励起された。励起および発光スリット幅は、すべての場合において両方とも5nmであった。
(図6)TRX-DBAおよびTRX-DBBの混合物の蛍光特性を示すグラフ表示である。励起波長はTRX-DBBについて400nmに設定された;スリット幅は両方とも10nmであり、タンパク質濃度は、TRX-DBAおよびTRX-DBBについて、それぞれ、0.05mg/mLおよび〜0.45mg/mLであった。これは、≦〜130nMおよび≦〜75nMの推定活性濃度に対応する。蛍光発光スペクトルは、TRX-DBAおよびTRX-DBBの混合物(ABMIX;緑)について450〜600nmで記録され、TRX-DBB単独(青)のそれと比較される。
(図7)大腸菌BL21におけるpET32a-30103 S1の同定の写真表示である。M=マーカー;1=誘導されていないコロニー;2=コロニー1;3=コロニー2;4=コロニー3。
(図8)30103 S1の溶解性検出を示す写真表示である。1=15℃で一晩、誘導された30103 S1の上清;2=25℃で6時間、誘導された30103 S2の上清;3=15℃で一晩、誘導された30103 S1の沈殿;4=25℃で6時間、誘導された30103 S1の沈殿;M=低重量マーカー。
(図9)再び折り畳まれた30103 S1のSDS-PAGEを示す図表示である。M=マーカー;1=再び折り畳まれた30103 S1。
(図10)大腸菌BL21におけるpET32a-30103s2の同定の写真表示である。1=マーカー;2=誘導されていないコロニー#1;3〜7=誘導されたコロニー#2〜#6。
(図11)30103s2の溶解性検出を示す写真表示である。1=15℃で一晩、誘導された30103s2の沈殿;2=15℃で一晩、誘導された30103s2の上清;3=25℃で6時間、誘導された30103s2の沈殿;4=25℃で6時間、誘導された30103s2の上清。
(図12)再び折り畳まれた30103S2のSDS-PAGEの写真表示である。1=マーカー;2=再び折り畳まれた30103 S2。
(図13)提案されたキメラ抗体(デミボディ)のポリペプチドドメインを示す概略図である。
(図14)h1gG1 Fc断片-Fc RIII複合体のタンパク質構成要素の構造を示す図表示である。h1gG1 Fc断片は、明色での鎖Aおよび暗色での鎖Bを有するリボン図として示されている。N末端およびC末端が示されている。sFc IIIはワイヤー表示として示されている(座標は、RCSB Protein Databankアクセッションコード:1e4kからとられた;Sondermann et al., Nature 406:267-273, 2000)。
(図15)ロイシンジッパーヘテロ二量体化を示す図表示である。上部:ヘテロ二量体化のらせん車輪(helical wheel)表示(らせんの長軸を見下ろす)。下部:相補的帯電が、ホモ二量体化ではなく、ヘテロ二量体化を媒介することを示す概略図。A=CD19、B=α-CD19-ジップ-N'-GFP、C=緑、D=CD5、E=α-CD5-ジップ-C'-GFP。
(図16)デミボディを用いる増強されたFACSの図表示である。
増強されたFACS − 2つのマーカーについて1色

(図17)デミボディを用いる増強されたイムノアッセイ法を示す図表示であり、A=α-ホスホ-チロシン、B=α-タンパク質-エピトープ、およびC=例えば、1段階における多量体修飾タンパク質の検出である。
(図18)デミボディを用いる増強されたイムノアッセイクロマトグラフィーを示す図表示であり、A=α-ホスホ-チロシン、B=α-Fc、例えば、プロテインA、およびC=α-タンパク質-エピトープである。
(図19)一対のデミボディによりCD5+CD19+慢性リンパ性白血病(CLL)細胞に対して媒介された抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を示す図表示である。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部分が、標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が、作用物質、または作用物質の非機能性の不完全な部分であり;および
第三部分が、第一および第二メンバーを含む相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を含むデミボディ(demibody)であって、
該標的細胞上のもう一つの抗原と相互作用する能力がある第一部分;最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性作用物質または2つの作用物質の組み合わせを形成する第二部分;および該結合対の他方のメンバーである第三部分を含む第二相補的デミボディに結合する場合、特異的性質をもつ機能性作用物質または組み合わされた作用物質を形成する能力がある、デミボディ。
【請求項2】
第一部分が、標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が、作用物質、または作用物質の非機能性の不完全な部分であり;および
第三部分が、第一および第二メンバーを含む相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を有する第一デミボディ;ならびに
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性作用物質または2つの作用物質の組み合わせを形成する第二部分;および
該結合対の相補的なメンバーである第三部分を含む、第二デミボディ
を含む、1セットのデミボディ。
【請求項3】
第一部分が免疫グロブリンのscFvまたは他の抗原結合断片である、請求項1もしくは2記載のデミボディまたはセットのデミボディ。
【請求項4】
第一部分が親和性足場である、請求項1もしくは2記載のデミボディまたはセットのデミボディ。
【請求項5】
親和性足場が、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質(microprotein)、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン(anticalin)、アプタマー、ダルピン(darpin)、アビマー(avimer)、アフリン(afflin)、およびクニッツ(Kunitz)ドメインより選択される、請求項4記載のデミボディまたはセットのデミボディ。
【請求項6】
作用物質が抗体のFc部分である、請求項1もしくは2記載のデミボディまたはセットのデミボディ。
【請求項7】
作用物質がレポーター分子である、請求項1もしくは2記載のデミボディまたはセットのデミボディ。
【請求項8】
作用物質が細胞傷害性分子または治療用分子である、請求項1もしくは2記載のデミボディまたはセットのデミボディ。
【請求項9】
被験体において標的細胞に細胞傷害性応答を選択的に誘導するための方法であって、
該被験体に第一および第二デミボディを投与する段階を含み、
該第一デミボディが、
第一部分が標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が非機能性の不完全なFcドメインであり;および
第三部分が第一および第二メンバーを含む相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を含み;かつ
該第二デミボディが、
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性Fcドメインを形成する第二部分;および
該結合対の他方のメンバーである第三部分
を含み;
該投与が、両方の相補的デミボディが標的細胞上の異なる抗原に結合する、およびその後、細胞表面で互いに結合して、ADCCまたはCDCが媒介される活性Fcドメインを形成するのに十分な時間および条件下である、方法。
【請求項10】
第一部分が免疫グロブリンのscFvまたは他の抗原結合断片である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第一部分が親和性足場である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
親和性足場が、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインより選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
デミボディが、同定可能なシグナルをもたらす能力があるレポーター分子の再構築可能な形を代替として含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
デミボディが、薬物または治療剤の再構築可能な形を代替として含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
被験体が、ヒト、霊長類、家畜動物、実験試験動物、捕獲野生動物、または鳥類である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
デミボディがCD抗原に特異的である、請求項1もしくは2記載のデミボディ、または請求項9記載の方法。
【請求項17】
結合対が、ロイシンジッパー、受容体-リガンド(例えば、サイトカインおよびサイトカイン受容体)、アクチンおよびアクチン結合タンパク質、DNAアプタマーの相補的部分を含む、請求項1もしくは2記載のデミボディ、または請求項9記載の方法。
【請求項18】
結合対がロイシンジッパーの相補的部分を含む、請求項1もしくは2記載のデミボディ、または請求項9記載の方法。
【請求項19】
各セットが、それぞれが以下の構造を有する少なくとも2つのデミボディを含む、1セットのデミボディ:
x-(FcI)i-scFv(Ag1);または
y-(FcII)i-scFv(Ag2);
ここで、
xおよびyが互いに会合または結合を形成する能力がある結合パートナーであり;
(FcI)iおよび(FcII)iが、xとyの結合により機能性Fcドメインを形成する能力がある、それぞれの不完全な非機能性Fcドメインであり;ならびに
scFv(Ag1)およびscFv(Ag2)が、2つの異なる抗原(Ag)、Ag1またはAg2、に対する特異性を有する一本鎖可変性断片である。
【請求項20】
各セットが、それぞれが以下の構造を有する少なくとも2つのデミボディを含む、1セットのデミボディ:
x-(MoI)i-scFv(Ag1);または
y-(MoII)i-scFv(Ag2);
ここで、
xおよびyが互いに会合または結合を形成する能力がある結合パートナーであり;
(MoI)iおよび(MoII)iが、xとyの結合により機能性レポーター分子、細胞傷害性分子、または治療用分子を形成する能力があるレポーター分子、細胞傷害性分子、または治療用分子のそれぞれの部分であり;ならびに
scFv(Ag1)およびscFv(Ag2)が、2つの異なる抗原(Ag)、Ag1またはAg2、に対する特異性を有する一本鎖可変性断片である。
【請求項21】
細胞を選択的に同定するための方法であって、
該細胞を一対のデミボディと接触させる段階を含み、
各デミボディが、第一部分が細胞上の1つまたは2つの抗原と相互作用する能力があり、第二部分が別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的な非機能性部分を含み、かつ第三部分が相補的な結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、
個々のデミボディのその2つの抗原への結合により、結合対が細胞表面で組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらすことまたは単一のレポーター分子を再構築することを可能にする、方法。
【請求項22】
第一部分が免疫グロブリンのscFvまたは他の抗原結合断片である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第一部分が親和性足場である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
親和性足場が、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインより選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
レポーター分子が蛍光色素である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
細胞が癌細胞または幹細胞である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
被験体において癌を診断するための方法であって、
推定癌細胞を一対のデミボディと接触させる段階を含み、
各デミボディが、第一部分が細胞上の1つまたは2つの癌特異的抗原と相互作用する能力があり、第二部分が別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的な非機能性部分を含み、かつ第三部分が相補的な結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、
個々のデミボディのその2つの抗原への結合により、結合対が組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらすことまたは単一のレポーター分子を再構築することを可能にする、方法。
【請求項28】
第一部分が免疫グロブリンのscFvまたは他の抗原結合断片である、請求項28記載の方法。
【請求項29】
第一部分が親和性足場である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
親和性足場が、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインより選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
レポーター分子が蛍光色素である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
デミボディが被験体に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
被験体がヒトである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
第一部分が、標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が、作用物質、または作用物質の非機能性の不完全な部分であり;および
第三部分が、第一および第二メンバーを含む相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を含むデミボディの使用であって;
該標的細胞上のもう一つの抗原と相互作用する能力がある第一部分;最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性作用物質または2つの作用物質の組み合わせを形成する第二部分;および該結合対の他方のメンバーである第三部分を含む、第二相補的デミボディに結合する場合、特異的性質をもつ機能性作用物質または組み合わされた作用物質を形成する能力があるデミボディの、薬物、診断剤、または親和性剤の製造における、使用。
【請求項35】
第一部分が、標的細胞上の第一抗原と相互作用する能力があり;
第二部分が、作用物質、または作用物質の非機能性の不完全な部分であり;および
第三部分が、第一および第二メンバーを含む相補的結合対のうちの一メンバーである、
該第一、該第二、および該第三部分を有する、第一デミボディ;ならびに
該標的細胞上の異なる抗原と相互作用する能力がある第一部分;
最初に述べたデミボディの第二部分と共同して、機能性作用物質または2つの作用物質の組み合わせを形成する第二部分;および
該結合対の相補的なメンバーである第三部分を含む、第二デミボディ
を含む1セットのデミボディの、薬物、診断剤、または親和性剤の製造における使用。
【請求項36】
第一部分が免疫グロブリンのscFvまたは他の抗原結合断片である、請求項34または35記載の使用。
【請求項37】
第一部分が親和性足場である、請求項34または35記載の使用。
【請求項38】
親和性足場が、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインより選択される、請求項37記載の使用。
【請求項39】
作用物質が抗体のFc部分である、請求項34または35記載の使用。
【請求項40】
作用物質がレポーター分子である、請求項34または35記載の使用。
【請求項41】
作用物質が細胞傷害性分子または治療用分子である、請求項34または35記載の使用。
【請求項42】
標的分子を検出するための方法であって、
該標的分子を推定上含む試料を一対のデミボディと接触させる段階を含み、各デミボディが、第一部分が標的分子特異的エピトープと相互作用する能力があり、第二部分が別個のレポーター分子または単一のレポーター分子の相補的な非機能性部分を含み、かつ第三部分が相補的な結合対である、該第一、該第二、および該第三部分を含み、
個々のデミボディのその2つのエピトープへの結合により、結合対が組み合わさって、レポーター分子が組み合わされたシグナルをもたらすことまたは単一のレポーター分子を再構築することを可能にする、方法。
【請求項43】
第一部分が免疫グロブリンのscFvまたは他の抗原結合断片である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
第一部分が親和性足場である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
親和性足場が、dAb、ナノボディ、マイクロタンパク質、フィブロネクチン、ミクロボディ、アンチカリン、アプタマー、ダルピン、アビマー、アフリン、およびクニッツドメインより選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
レポーター分子が蛍光色素である、請求項42記載の方法。
【請求項47】
標的分子がタンパク質である、請求項42記載の方法。
【請求項48】
標的分子が翻訳後修飾タンパク質である、請求項42記載の方法。
【請求項49】
標的分子がリン酸化またはグリコシル化タンパク質である、請求項42記載の方法。
【請求項50】
デミボディが被験体に投与される、請求項42記載の方法。
【請求項51】
被験体がヒトである、請求項42記載の方法。
【請求項52】
標的分子が疾患状態を示す、請求項42記載の方法。

【公表番号】特表2009−517408(P2009−517408A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542559(P2008−542559)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001810
【国際公開番号】WO2007/062466
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508158344)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (1)
【Fターム(参考)】