説明

デングウイルスに対するワクチンを投与するための組成物および方法

本発明の実施形態は、被験体に、デングウイルスに対してワクチン接種をするための組成物および方法を報告する。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物は、皮内導入によって投与され得る。特定の実施形態において、デングウイルスに対するワクチンの被験体での皮内導入は、最初のワクチン接種後に、1回以上の皮内ブーストを含み得る。他の実施形態は、デングウイルスに対するワクチン組成物の皮内注射を含み、ここで上記組成物は、DEN−1、DEN−2、DEN−3およびDEN−4のうちの2種以上に対する防御を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2009年6月1日に出願された米国仮特許出願第61/183,020号の米国特許法§119(e)の下での利益を主張する。この仮特許出願は、本明細書においてその全体が参照として援用される。
【0002】
(分野)
本発明の実施形態は、デングウイルスに対して、ワクチンを被験体に投与するための組成物および方法を報告する。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物は、皮内注射によって投与され得る。特定の実施形態において、デングウイルスに対するワクチンの被験体における皮内注射は、最初のワクチン接種後の1回以上の皮内ブーストを含み得る。他の実施形態は、デングウイルスに対するワクチン組成物の皮内注射を含み、ここで上記組成物は、デングウイルスの1より多くの血清型(例えば、DEN−1、DEN−2、DEN−3およびDEN−4)に対する防御を提供する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ウイルス感染に対する防御のためのワクチンは、ヒト疾患の発生率を低下させるために効果的に使用されてきた。ウイルスワクチンで最も成功している技術のうちの1つは、動物もしくはヒトを、上記ウイルスの弱毒化株(weakened or attenuated strain)(「生の弱毒化ウイルス」)で免疫することである。免疫後の制限された複製に起因して、上記弱毒化株は、疾患を引き起こさない。しかし、上記制限されたウイルス複製は、ウイルス抗原の完全なレパートリーを発現するには十分であり、上記ウイルスに対する強力かつ長期間持続する免疫応答を発生させ得る。従って、上記ウイルスの病原性株にその後に曝露されると、上記免疫された固体は、疾患から防御される。これら生の弱毒化ウイルスワクチンは、公衆衛生において最も成功裏に使用されているワクチンの中のものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本発明の実施形態は、一般に、例えば、デングウイルスに対してワクチンをヒトに投与することによって、デングウイルスに対する被験体の防御を誘導するための方法および組成物に関する。いくつかの実施形態は、皮内(ID)注射を介して、被験体にワクチン組成物を導入する工程を包含し得る。これら実施形態によれば、上記ワクチン組成物は、例えば、1種以上のデング血清型に対して防御する(例えば、交差防御)ために、被験体の皮内に導入され得る。特定の実施形態において、ワクチン組成物は、被験体に投与される、デングウイルスのうちの1種の血清型(例えば、DENVax 4)の単一用量が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の実施形態において、ワクチン組成物は、デングウイルスのうちの1種の血清型(例えば、DENVax 4もしくは他の血清型)の初期用量を含み得るが、これらに限定されず、次いで、同じものの1回以上のブースト、組み合わせもしくは異なる血清型が、被験体に投与され得る。
【0005】
本明細書における他の局面は、例えば、ワクチン組成物を、皮内導入を介して被験体に導入することによって、被験体における細胞性免疫応答を誘導することに関し得る。ここで上記ワクチン組成物は、デングウイルスワクチンを含むが、これに限定されない。これら実施形態によれば、開示される組成物は、デングウイルス血清型に対する被験体における中和抗体生成を調節するために、上記被験体に皮内投与され得る。いくつかの局面は、所定の組成比(例えば、1:1、1:2、1:4)に関し、2種以上の血清型の任意の比は、上記被験体が単一のワクチン組成物を皮内に投与される場合に、いくつかのもしくは全てのデングウイルス血清型に対する被験体の交差防御を増大させるために、単一のワクチン組成物における、デングウイルスの種々の血清型もしくはそれらのフラグメントまたはこれらの弱毒化組成物を企図する。
【0006】
特定の実施形態において、デングウイルスに対するワクチンの皮内導入を使用するいくつかの利点としては、被験体におけるいくつかのもしくは全てのデングウイルス血清型に対する複数の防御、皮下注射と比較して低用量を使用することによるコストの低下、被験体におけるいくつかのもしくは全てのデングウイルス血清型に対して生成される抗体の調節、およびデングウイルスに対するワクチンの組成物を投与した被験体における投与部位での疼痛の低下が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0007】
いくつかの実施形態において、デングウイルスに対する単回用量ワクチンは、1種以上のデングウイルス血清型を含み得る。これら実施形態によれば、被験体は、最初の注射とは別個の部位において(例えば、その近くもしくは上記被験体の別個の解剖学的部位において)投与される少なくとも1回のさらなる皮内注射で処置され得る。さらに、少なくとも1回のさらなる皮内注射は、上記被験体への最初の投与後30日未満で行われ得る。本明細書で開示されるこれらおよび他の実施形態のワクチン組成物は、所定の比において2種以上のデングウイルス血清型を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、特定の実施形態をさらに示すために含められる。いくつかの実施形態は、これら図面のうちの1つ以上への言及によって、単独で、もしくは示される具体的実施形態の詳細な説明と組み合わせて、よりよく理解され得る。
【図1】図1は、現在利用可能な皮内注射デバイスの例を示す。
【図2】図2は、デングウイルスに対するワクチンを皮内導入した被験体における注射部位の例を示す。
【図3】図3は、デングウイルスに対するワクチンの皮下注射 対 皮内注射の棒グラフ比較および最初の投与後の異なるデングウイルス血清型に対して生成される中和抗体力価を示す。
【図4】図4は、デングウイルスに対するワクチンの皮下注射 対 皮内注射の棒グラフ比較、および2回目のブースト投与後の異なるデングウイルス血清型に対して生成された中和抗体力価を示す。
【図5】図5は、デングウイルス血清型に対するワクチンでのマウスにおける皮下免疫および皮内免疫のヒストグラムプロットを示す。
【図6】図6Aおよび図6Bは、デング血清型に対して2種の異なるデングウイルス血清型を使用するチャレンジ実験(別のデングウイルス血清型での上記マウスのワクチン接種後の免疫マウス集団)のグラフ描写を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(定義)
本明細書で使用される場合、「1つの、ある(a)」もしくは「1つの、ある(an)」とは、1つもしくは1つより多くの事項を意味し得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、容器は、試験管、ミニ遠心分離チューブもしくはマイクロ遠心分離チューブ、チャネル、バイアル、マイクロタイタープレートもしくは容器を含み得るが、これらに限定されない。
【0011】
本明細書で使用される場合、「被験体(単数)(subject))」もしくは「被験体(複数)(subjects)」は、哺乳動物(ヒトもしくは家畜化されたもしくは野生の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、他の家庭のペット(例えば、ハムスター、モルモット、マウス、ラット)、フェレット、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、プレーリードッグ、もしくは動物園の動物)を含み得るが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書で使用される場合、「約」とは、±10%を意味し得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「弱毒化ウイルス」とは、被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒトもしくは動物)に投与された場合に、疾患の臨床的徴候が低下しているかもしくはないことを示すウイルスを意味し得る。
【0014】
(説明)
以下の節において、種々の例示的組成物および方法は、種々の実施形態を詳述するために記載される。上記種々の実施形態の実施が、本明細書で概説される具体的詳細のうちの全てもしくはさらにいくつかの使用を必要とするのではなく、むしろ濃度、時間および他の具体的詳細が、慣用的な実験を介して改変され得ることは、当業者に明らかである。いくつかの場合には、周知の方法もしくは成分は、説明に含めなかった。
【0015】
本発明の特定の局面は、デングウイルスに対するワクチン組成物の投与を含むが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の実施形態は、一般に、デングウイルス血清型に対する被験体における防御を誘導するための方法および組成物に関する。他の実施形態は、皮内(ID)注射を介して被験体にワクチン組成物を導入することを包含し得る。ここで皮内に導入される上記ワクチン組成物は、いくつかもしくは全てのデング血清型に対する交差防御を誘導する。特定の実施形態において、上記ワクチン組成物は、被験体に投与されたデングウイルス血清型4(DENVax 4)に対するワクチンの単一用量を含む。他の実施形態において、上記ワクチン組成物は、DENVax 4の最初の用量を含み、次いで、上記ワクチンの1回以上のブーストが、被験体に投与される。
【0017】
本発明の他の局面は、被験体へ皮下に投与されるのと比較して、皮内に投与されたデングウイルスに対するワクチンに対する免疫応答を調節することを包含する。デングウイルスに対するワクチンは、デングウイルスの血清型の比、生の弱毒化デングウイルス、もしくはこれらのフラグメント(例えば、デングウイルス血清型に由来するかもしくはこれらから得られたタンパク質もしくは核酸)を含む組成物を含み得る。種々の血清型の比は等しくてもよいし、特定の血清型が、必要性もしくは上記ウイルスへの曝露もしくは潜在的曝露に依存して、他のものより多く提示され得る。これら実施形態によれば、比は、例えば、上記処方物において提示される血清型の数、所定の応答および所望される効果に依存して、1:2、1:3、1:4、1:10、1:20;1:1:1、1:2:2、1:2:1、1:1:1:1、1:2:1:2;1:3:1:3、2:3:3:3、5:4:5:5、1:2:2、または血清型1、2、3および/もしくは4のうちのいずれかの任意の比であり得る。任意のデングウイルス血清型処方物は、必要な被験体への皮内投与において有用なワクチン(例えば、弱毒化ウイルスなど)を生成するために使用され得ることが企図される。いくつかの処方物は、他の処方物以外に皮内に導入された場合に他のものより有効であり得ることが企図される。
【0018】
他の実施形態において、デングウイルスワクチン処方物の組成物は、上記被験体によるデングウイルスへの曝露の前に、その間に、もしくはその後に、被験体へ皮内に導入され得る。これら実施形態によれば、被験体は、デングウイルス処方物を含む単一の皮内注射もしくは1回より多い注射、必要に応じて、続いて、1回以上のさらなる注射を受容し得る。本明細書に記載される処方物の皮内適用は、被験体への任意の他の抗ウイルス処置もしくはワクチンの投与様式(例えば、皮下注射)と組み合わされ得る。いくつかの実施形態において、本明細書で企図された処方物の皮内導入は、被験体の身体(例えば、腕、臀部など)の任意の適切な領域に投与され得ることが企図される。さらに、初回投与もしくはブースト投与としての本明細書中のワクチン処方物の皮内投与は、同日に起こってもよいし、連続した日に起こってもよいし、1週間に1回、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、もしくは他の適切な処置レジメンで起こってもよい。
【0019】
(方法)
(核酸増幅)
核酸は、任意の処方物において使用され得るか、または本明細書で企図される任意の処方物を生成するために使用され得る。増幅用テンプレートとして使用される核酸配列は、標準的な方法論によれば、単離されたウイルス(例えば、デングウイルス)であり得る。核酸配列は、ゲノムDNAであってもよいし、フラグメント化されたRNAであっても、全細胞RNAであってもよい。RNAが使用される場合、上記RNAを相補的cDNAへ変換することが望ましいことであり得る。いくつかの実施形態において、上記RNAは、全細胞RNAであり、増幅用テンプレートとして直接使用される。核酸分子を増幅するための当該分野で公知の任意の方法が企図される(例えば、PCR、LCR、Qbetaレプリカーゼなど)。
【0020】
(発現されるタンパク質もしくはペプチド)
遺伝子は、任意の数の異なる組換えDNA発現系において発現されて、その大量のポリペプチド生成物を生成し得、上記ポリペプチド生成物は、次いで、精製され得、本明細書で報告される方法および組成物において使用され得る。構築物を生成および使用するための当該分野で公知の任意の方法が、企図される。特定の実施形態において、1種以上のポリペプチドをコードする遺伝子もしくは遺伝子フラグメントが、当該分野で公知の標準的なクローニング技術もしくはサブクローニング技術によって発現ベクターへと挿入され得る。
【0021】
タンパク質、ペプチドおよび/もしくは抗体、またはこれらのフラグメントは、当該分野で公知の任意の手段によって検出もしくは分析され得る。特定の実施形態において、分子を分離および分析するための方法が使用され得る(ゲル電気泳動もしくはカラムクロマトグラフィー法)。
【0022】
(電気泳動)
電気泳動は、分子(例えば、高分子(例えば、タンパク質もしくは核酸))をそれらのサイズおよび電荷に基づいて分離するために使用され得る。当該分野で公知の電気泳動には、多くのバリエーションがある。上記分子が移動する溶液は、遊離していてもよい(通常は、キャピラリーチューブ中にある)し、当該分野で公知のマトリクスもしくは他の材料中に埋め込まれていてもよい。一般的なマトリクスとしては、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、質量分析、ブロッティングおよび濾紙が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0023】
ポリペプチドをコードする遺伝子もしくは遺伝子フラグメントを使用するいくつかの実施形態は、標準的なサブクローニング技術によって、発現ベクターへと挿入され得る。融合タンパク質として組換えポリペプチドを生成する発現ベクターが使用され得、このことは、ペプチドもしくはタンパク質の迅速なアフィニティー精製を可能にする。このような融合タンパク質発現系の例は、グルタチオンS−トランスフェラーゼ系(Pharmacia,Piscataway,NJ)、マルトース結合タンパク質系(NEB,Beverley,MA)、FLAG系(IBI,New Haven,CT)、および6xHis系(Qiagen,Chatsworth,CA)である。
【0024】
(薬学的処方物)
ワクチンに関する当該分野で公知の任意の薬学的処方物は、本明細書で企図される。特定の実施形態において、処方物は、デングウイルスサブタイプもしくはその存在への所定の曝露に依存して、種々の比において1種以上のDEN血清型を含み得る。処方物が、被験体のワクチン接種において有用な他の因子(他の活性成分もしくは不活性成分または当業者に公知の組成物が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得ることが企図される。
【0025】
(キット)
他の実施形態は、本明細書で記載される方法(例えば、ワクチンの適用補うもしくは投与法)および組成物で使用するためのキットに関する。いくつかの実施形態は、1種以上のデングウイルスに曝されたか、曝されたことが疑われているかもしくは曝されている被験体を予防もしくは処置するために有用なワクチン組成物を有するキットに関する。特定の実施形態において、キットは、所定の比のデングウイルス血清型の1つ以上の処方物(例えば、弱毒化ワクチン)を含み得る。キットは、携帯式であり得、例えば、輸送可能であり、軍事施設もしくは遠くの村落のような遠い地域において使用できる。他のキットは、1種以上のデングウイルスに曝されたか、もしくはデングウイルスへの曝露の危険にあると疑われた被験体を処置するために、医療施設において有用であり得る。
【0026】
キットはまた、適切な容器(例えば、バイアル、チューブ、ミニ遠心分離チューブもしくはマイクロ遠心分離チューブ、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器)を含み得る。さらなる成分もしくは因子が提供される場合、上記キットは、1つ以上のさらなる容器を含み得、これら容器の中に、この因子もしくは成分が配置され得る。本明細書中のキットはまた、代表的には、商業的販売のために密に拘束した状態で上記因子、組成物および任意の他の試薬容器を含むための手段を含む。このような容器は、射出成形プラスチック容器もしくは吹き込み成形プラスチック容器を含み得る。その中に、所望のバイアルが保持される。必要に応じて、1種以上のさらなる因子(例えば、免疫原性因子もしくは他の抗ウイルス剤、抗真菌剤もしくは抗菌剤)は、記載される組成物のために、例えば、1種以上のさらなる微生物に対するワクチンとして有用な組成物のために、必要とされ得る。
【0027】
以下の実施例は、本明細書で示される特定の実施形態を実証するために含められる。以下の実施例において発見された技術が、本明細書で開示される実施において十分に機能することは発見された技術を示すことは、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に鑑みれば、多くの変化が、開示される特定の実施形態において行われ得、本明細書中の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様もしくは類似の結果をなお得ることを認識するはずである。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
以前の研究から、各DEN(デングウイルス)血清型による天然の感染が、同一源の(homologous)血清型によって引き起こされるデング熱に対する長時間持続する防御をもたらすことが明らかになった。特定の実施形態において、有効なデングワクチンの投与は、天然の感染に非常に近く模倣し、デングウイルスに対するワクチンを投与するための様式として働き得る。本明細書で報告される実施形態は、輸送宿主(蚊の咬傷)による皮内送達に類似する、デングウイルス(DEN)感染の天然の感染経路に関し得る。特定の実施形態において、上記ワクチンウイルスを同じ組織に沈着させるための皮内注射が使用され得る。皮膚は、非常に接近しやすい器官であり、表皮に存在するランゲルハンス細胞(LC)の存在に主に帰する効率的な免疫バリアを示す。皮膚免疫は、広い範囲の免疫応答(液性免疫、細胞性免疫、および粘膜免疫を含む)を誘発し、投与されたワクチンの免疫原性に対する既存の免疫の効果を出し抜く(bypass)可能性を有する。
【0029】
四価デングワクチンの皮内(ID)投与についての、このような処置が必要な被験体におけるいくつかの実施形態が、報告される。皮内投与の1つの例示的方法を、5:5:5:5 DENVax(デングウイルスワクチン)を皮内投与によって投与した4匹のCynomologous macaquesに対して行った。等価なウイルス用量を達成するために、0.15mlのワクチンを、針なしのジェットインジェクターを使用して、3箇所の、接近して間隔を空けた部位においてIDを植え付けた(deposited)(以下の図1および図2を参照のこと)。図1は、皮内接種のために使用される皮内注射(例えば、PharmaJet(登録商標))デバイスを表す。
【0030】
図2は、PharmaJetデバイスでのワクチン接種後のCynomolgus macaquesの接種部位を図示する。動物に、同じ毛色で同じ処方物を60日後にブーストした。所定の間隔(15日目、30日目、58日目、74日目、および91日目)で血清サンプルを回収し、上記4種のデング血清型に対して指向される中和抗体の存在について試験した。PRNT(プラーク減少中和試験(抗DEN中和抗体のレベルを提供するための当該分野で公知))を、同じサンプルに対して行った。
【0031】
上記中和抗体力価は、初回投与後(図3を参照のこと)もしくは2回目の投与後(図4を参照のこと)のSC投与と比較して、ID投与後に顕著により高いことが実証された。上記部位は、同じ領域において接近して間隔を空け、各接種物は4種全てのウイルスからなるので、このワクチン送達様式は、DENVaxの単一投与に非常に似ている。図3は、58日目(初回投与の58日後)の50%PRNT幾何平均力価を図示する。図4は、74日目(60日目の2回目の投与の14日後)の50%PRNT幾何平均力価を図示する。上記図において認められ得るように、4種全てのデングウイルスに対する上記中和抗体力価は、皮下投与に対して、皮内投与後により高かった。さらに、中和抗体応答(PRNT>10として定義される「血清変換」)を示した動物の数は、ワクチンの第1の用量の後より多かった(表1を参照のこと(上記4種のデング血清型の各々に対して血清変換した動物のパーセンテージは、初回免疫および2回目の免疫後に示される))。
【0032】
表1:デング免疫後の非ヒト霊長類の血清変換
【0033】
【表1】

上記免疫した動物を、野生型デングウイルスでのチャレンジに対する防御について試験した。cynomolgus macaquesにおいて、野生型デングウイルス感染は、ウイルス複製およびウイルス血症をもたらすが、臨床的徴候はもたらさない。91日目に、2匹のサルに、DENV−1(デングウイルス血清型1)をチャレンジし、2匹のサルに、DEN−2(デングウイルス血清型2)をチャレンジした。血清サンプルを、チャレンジの11日後に、毎日回収した。デングウイルスRNAのレベルを、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応技術(q−rtPCR)によって上記サンプル中で測定し、生きているウイルスの力価を、ウイルス単離およびVero細胞上でのプラーク形成によって測定した。結果を、表2および表3に示す。91日目(チャレンジの直前(「チャレンジ前」))および105日目(チャレンジの14日後(「チャレンジ後」))のDEN−1に対する中和抗体。ウイルス血症を、生きているDEN−1ウイルスが血液サンプルから単離できた日数(「持続期間」)および各動物から単離されたピーク力価のlog10として示す。ウイルスRNAを、ウイルスRNAが上記血清サンプル中で検出できた日数(「持続期間」)および各サルにおけるピークウイルスRNAレベル(検出されたウイルスRNAゲノムの数のlog10として表される)として示す。
【0034】
表2:DEN−1でチャレンジした後の応答
【0035】
【表2】

表3:DEN−2でチャレンジした後の応答
【0036】
【表3】

チャレンジ後、上記SC免疫した動物およびID免疫した動物は、DEN−1もしくはDEN−2誘導性のウイルス血症から完全に防御された(長い持続期間の顕著なウイルス血症を示したコントロール動物と比較して)。上記ID免疫した動物の全てにおいて(しかし、上記SC免疫した動物の全てではない)、ウイルスRNA複製の非存在およびチャレンジ後の抗体力価の増加の欠如もまたあった(上記ID動物と、SC注射したCY0181、CY0172もしくは上記コントロール動物とを比較のこと)。これらデータは、防御が「滅菌(sterilizing)」であり、チャレンジ後のいかなるウイルス複製をも妨げることを示唆する。
【0037】
(実施例2)
別の例において、異なる位置および異なるタイミングで送達した、最適化したDENVax処方物を、非ヒト霊長類において試験する。8匹のCynomolgus macaquesの群を、それぞれ、1×10プラーク形成単位(pfu)、1×10 pfu、1×10 pfuおよび1×10 pfuのDENVAx−1、DENVax−2、DENVax−3およびDENVax−4(5:4:5:5は省略)を含むDENVax処方物で免疫する。2用量を、0.1ml IDにおいて投与する。群を、0日目に各腕において1用量、0日目に一方の腕において1用量および7日目に他方の腕において1用量、または0日目に一方の腕において1用量および60日目に他方の腕において1用量のいずれかで免疫する。これら群を、同じ用量(5:4:5:5)を同日の0日目に3箇所の部位に、および他方の腕に60日目に3箇所の部位に受けた群と、ならびに0日目に一方の腕におよび60日目に他方の腕に単一の0.5ml SC免疫を同じ用量を受けた群と比較する。コントロール群に、ワクチン賦形剤のみ(ワクチンウイルスなし)を免疫する。免疫後、血液サンプルを0日目、7日目(ピークウイルス血症に関して)、15日目、30日目、60日目、および90日目に回収して、上記4種のデングウイルス血清型に対する中和抗体をPRNT50によって試験する。30日目、60日目、90日目に回収したPBMCをまた、ELISPOTアッセイによって、IFN−γ分泌に関してモニターする。90日目に、各群から2匹の動物に、野生型DEN−1、DEN−2、DEN−3、もしくはDEN−4のウイルスをチャレンジする。チャレンジさせた動物を、臨床的徴候および温度(1日に2回)、飼料消費の変化(1日に1回)および体重(毎週)についてモニターする。さらに、全ての動物からチャレンジ後11日間にわたって毎日採血して、ウイルス血症および血液学的パラメーターをモニターする。繰り返すと、4種全てのDENウイルスに対するPRNT応答の速度および持続期間、ならびに90日目のチャレンジ後の防御を評価する。複数部位でのおよび別個の解剖学的位置での皮内投与が、単一ボーラスとしての皮下投与より有効であり得ると考えられる。複数部位は、より多くの抗原提示細胞への上記ワクチンの曝露を提供し得る。別個の解剖学的位置は、ワクチンが複数のリンパ節へ接近することを可能にし得る。さらに、デングワクチンのブースター免疫は、マウス、霊長類およびヒト臨床試験における抗体応答の発生後に(30日間以上)投与したに過ぎなかった。この時点で、中和抗体は、生ウイルスワクチンへの応答を阻害する。初回免疫の1ヶ月後に霊長類をブーストすると、初回免疫の4ヶ月後に投与するより有効性は低いことが以前に示された。初回免疫後に循環する高レベルの同種抗体および異種抗体が、第2の用量においてウイルス複製を阻害し得ると推測された。長期化した(2ヶ月以上の)免疫は、この阻害を出し抜き(circumvent)得るが、強力な中和抗体応答の発生前のより短期間の免疫間隔での加速免疫レジメンが、有利であり得るか否かを試験しなかった。このようなより短期間のレジメンは、特定の蔓延した国(endemic countries)におけるもしくは免疫の間のデングウイルスへの曝露が、彼らを疾患のリスクに陥らせる可能性のある旅行者にとっての利点であり得る。
【0038】
(実施例3)
別の例において、2種のDENVax処方物の安全性および免疫原性を研究するヒト臨床試験を開始し、ID注射もしくはSC注射のいずれかによって、0.1mlを投与した。12個体の群に、0日目および90日目に、例えば、低用量DENVax処方物(それぞれ、DENVax−1、−2、−3および−4の8×10 pfu、5×10 pfu、1×10 pfuおよび2×10 pfu)もしくは高用量(それぞれ、DENVax−1、−2、−3および−4の2×10 pfu、5×10 pfu、1×10 pfuおよび3×10 pfu)のDENVax IDもしくはSCを免疫する。2つのコントロール群に、リン酸緩衝化生理食塩水をSCもしくはIDで注射する。患者を任意の有害な事象について、および血液学的もしくは血液化学的パラメーターの任意の顕著な変化についてモニターする。血清サンプルを回収して、周期的間隔でワクチンウイルス複製および中和抗体応答を測定する。
【0039】
(実施例4)
AG129マウスにおいて皮内投与したDENVaxの免疫原性および有効性。別の例において、2つの研究を行って、AG129マウスにおけるDENVaxの免疫原性および有効性に対して投与経路の効果を比較した。一例において、一価DENVx−4(例えば、1種のデングウイルス血清型に対するワクチン)の免疫原性を、背中の皮膚の下でのSC注射もしくは針およびシリンジを使用する足蹠へのID注射の後の中和抗体応答を測定することによって、AG129マウスにおいて比較した。8匹のAG129マウスの群に、それぞれ、50μlおよび100μl最終容積において、10 PFU/用量のキメラDENVax−4ワクチンをID注射もしくはSC注射した。初回の6週間後に、各処置群の動物に、10 PFUのDENVax−4もしくはTFAを、対応するID経路もしくはSC経路を介してブーストした。31日目および58日目にマウスから採血し、回収した血清をプールして、中和抗体応答を測定した。
【0040】
上記ID経路を介するDENVax−4の免疫は、上記SC経路を介して誘導した応答と比較して、上記ブースト後のDEN−4に対して5倍高い中和抗体応答を誘発した(例えば、図4を参照のこと)。いずれかの免疫経路によって誘発された上記抗DEN−4応答は、DEN−3に対する顕著な交差中和抗体を有したが、DEN−1もしくはDEN−2の血清型に対しては有さなかった。図4は、キメラDENVax−4でのAG129マウスの初回免疫および2回目の免疫後の中和抗体応答を示す。31日目および58日目にマウスから採血し、回収した血清をプールして、上記プラーク低下アッセイ(PRNT50)を使用して中和抗体応答を測定した。
【0041】
ブーストしてから2週間後に、各群の動物を2つの群に分け、10PFUのDEN−1(Mochizukiウイルス株)もしくはDEN−2(New Guinea C株)ウイルスでチャレンジした。チャレンジした動物を、疾患の臨床的徴候についてモニターし、5週間にわたって生存率を記録した。上記ID経路を介して免疫したマウスは、DEN−1チャレンジ後に疾患の徴候を示さなかった(図5A)。上記SC免疫した群では、1匹のマウスのみが感染に負けたが、残りの動物は感染の明らかな徴候を何ら有さなかった(図5B)。対照的に、全てのコントロール動物は、DEN−1チャレンジ後の13日目までには感染に負けた(図5A)。DEN−2チャレンジの後、DENVax−4のみで上記SC経路を介して免疫した全ての動物は、25日目までに感染に負け、チャレンジ後17日目まで(MST=12.5日)に全て負けた上記コントロール(TFA)マウスと比較して、平均生存期間(MST)は、19.5日であった(図5B)。対照的に、ID DENVax−4免疫したマウスのうちの50%は、5週間のモニタリング期間の最後まで感染から生き延びた(図5B)。図5Aおよび図5Bは、DEN−1(a)もしくはDEN−2(b)ウイルスでのチャレンジ後のDENVax−4免疫AG129マウスの生存を示す。チャレンジした動物を、疾患の臨床的徴候についてモニターし、5週間の期間にわたって生存率を記録した。
【0042】
2つめの研究において、マウス(例えば、AG129)においてSC投与もしくはID投与した四価DENVaxワクチンの免疫原性を試験した。AG129マウスの群(6匹/群)に、上記DENVaxを、100μlもしくは50μl(最終容積)でそれぞれSC注射もしくはID注射した。マウスを、複合キメラワクチンの5:4:5:5(10 PFUのDENVax−1、−3および−4、ならびに10 PFUのDENVax−2)用量レベルでDENVaxを免疫した。全ての免疫した動物に、初回接種の42日後に、5:4:5:5 DENVaxのブースター注射を与えた。42日目および56日目に血液サンプルを回収して、各DENウイルス血清型に対する中和抗体応答を測定した。
【0043】
表4に表されるように、4種全てのDEN血清型に対する初回および2回目の中和抗体応答がともに誘導された。上記ブーストの後、上記中和抗DEN−1抗体、中和抗DEN−3抗体中和抗DEN−4抗体の力価は、上記SC免疫した動物と比較して、ID注射したマウスの群においてそれぞれ2倍、5倍および2倍増大した。DEN−2ウイルスに対する中和応答は、両方の群で匹敵した。上記SC経路を介する免疫は、DEN−1>DEN−2>DEN−3>DEN−4に対して優勢な中和抗体応答のプロフィールを生じ、それぞれ、中和力価5120、1280、640および80を生じた。ID投与後の中和抗体応答の階層は、以下のようにシフトした;DEN−1>DEN−3>DEN−2>DEN−4(中和抗体力価は、それぞれ、10240、3840、1280および160)。
【0044】
表4は、マウスのSC免疫もしくはID免疫後の、比率5:4:5:5 PFUの各複合キメラウイルス(10 PFUのDENVax−1、−3および−4、ならびに10 PFUのDENVax−2)を有する四価DENVaxの免疫原性の比較である。42日目および56日目に血液サンプルを回収して、各DENウイルス血清型に対する中和抗体応答を測定した。
表4
【0045】
【表4】

(材料および方法)
マウス:AG129マウスは、「完全な(intact)」免疫系を有する;インターフェロン(IFN)-α/βおよび-αレセプターを欠損している。デング感染が記載されてきた。他の研究:病原論、細胞親和性、およびADEが試験されてきた。このモデルは、DEN−1およびDEN−2でのチャレンジを可能にする。
【0046】
非ヒト霊長類:Cynomolgus、rhesus macaquesはウイルスを有する(ウイルス血症)が、疾患発現はない。
【0047】
本明細書で開示されかつ特許請求される組成物および方法の全ては、本開示に鑑みて、過度の実験なくして作製され得、実施され得る。上記組成物および方法は、好ましい実施形態に関連して記載されてきたが、上記組成物および方法に、ならびに本明細書に記載される方法の工程もしくは工程の順序において、本明細書の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、バリエーションが適用され得ることは、当業者に明らかである。より具体的には、化学的にかつ生理学的に関連する特定の因子が、本明細書で記載される上記因子の代わりに使用される一方で、同じもしくは類似の結果が達成される。当業者に明らかな全てのこのような類似の置換物および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、上記趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデングウイルス血清型に対する、被験体における防御を誘導するための方法であって、該方法は、デングウイルスに対する単回用量ワクチンを、皮内導入によって被験体に投与する工程、複数のデングウイルス血清型に対する、該被験体における防御を誘導する工程を包含する、方法。
【請求項2】
デングウイルスに対する前記ワクチンの少なくとも1回のさらなる皮内注射を投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デングウイルスに対する前記単回用量ワクチンは、1種以上のデングウイルス血清型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回のさらなる皮内注射は、前記被験体の別個の部位に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1回のさらなる皮内注射は、前記被験体への1回目の投与後30日未満に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ワクチンは、所定の比で少なくとも2種のデングウイルス血清型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ワクチンは、4種全てのデングウイルス血清型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体に少なくとも1種の免疫原性因子を投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫原性因子は、少なくとも1種のTollレセプター(TLR)リガンドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
デングウイルス血清型に対して被験体を防御するための組成物であって、該組成物は、少なくとも2種のデングウイルス血清型の所定の比の、皮内(ID)投与される単回用量組成物を含む、組成物。
【請求項11】
前記組成物は、1種以上の生弱毒化デングワクチンの10〜10pfuの範囲において皮下投与される組成物と比較して、濃度が10%以上低下している、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、4種全てのデングウイルス血清型を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記4種の血清型は、所定の比にある、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の免疫原性因子をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種のTollレセプター(TLR)リガンドもしくは他のアジュバントをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種のTollレセプターリガンドは、CpG−ODN、Poly I:C、イミキモド、インスリン由来アジュバント、Tollレセプター4リガンドであるMPL、Tollレセプター3リガンドであるポリI:U、熱不安定性エンテロトキシン、熱不安定性エンテロトキシンの非毒性変異体、およびこれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
デングワクチン組成物を被験体に投与するためのシステムであって、該システムは、デングウイルスに対するワクチン組成物および該ワクチン組成物を、被験体への非注射法によって皮内に導入し得、該デングワクチン組成物を該被験体に投与し得る装置を含む、システム。
【請求項18】
前記非注射法は、ニードルなしかつシリンジなしである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ワクチンキットであって、該キットは、
1種以上のデングウイルス血清型を含む、デングウイルスに対する少なくとも1種のワクチン組成物;および
被験体への該組成物の皮内投与を可能にする少なくとも1つの装置
を含む、キット。
【請求項20】
少なくとも1種の免疫原性因子をさらに含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
少なくとも1種のTollレセプターリガンドをさらに含む、請求項19に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−528794(P2012−528794A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513332(P2012−513332)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036726
【国際公開番号】WO2010/141386
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(509276526)インビラジェン, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】