説明

デングウイルス中和抗体およびその使用

本発明は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因となることなく、デングウイルス感染を中和する、抗体およびその抗原結合断片、ならびに抗体および抗原結合断片のカクテルに関する。本発明はまた、かかる抗体および抗原結合断片を産生する不死化B細胞、ならびにかかる抗体および抗原結合断片に結合するエピトープにも関する。さらに、本発明は、スクリーニング方法、ならびにデングウイルス感染の診断および治療における、抗体、抗原結合断片、およびエピトープの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年10月13日に出願された米国仮出願第61/104,911号、表題「Dengue Virus Neutralizing Antibodies and Use Thereof」に対する優先権を主張し、当該出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
デングウイルス(DENV)は、世界規模で健康を大きく脅かすヒト病原体である。このウイルスは、年間数十万のデング熱、デング出血熱、およびデングショック症候群の症例を引き起こすと推定される。フラビウイルス属のデングウイルスには、4種の密接に関連する血清型、DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4がある。これらの4種のウイルスは、撲滅および制御のあらゆる試みに首尾よく抵抗している高度に都市化した蚊の種である、ネッタイシマカの咬傷を介してヒトからヒトへと伝播する。ワクチン接種がデング熱を制御する唯一の効率的な方法であると見なされている。この目的を達成するために、いくつかの四価のデング熱候補ワクチンが、開発段階の後期にある。
【0003】
1つのデングウイルス血清型による一次感染が、同種血清型に対する生涯にわたる防御免疫を誘発する。しかしながら、異なる血清型による感染に対抗する交差防御はない。実際、1つの血清型に対抗する既存の免疫が、感染の抗体依存性増強(ADE)のために、異なる血清型によって引き起こされるデング熱感染およびデング出血熱のリスクの増加に関与する。ADEでは、前のデング熱感染によって産生された、または母親から受動的に伝達された抗体が、単核食細胞系でFc受容体担持細胞に結合する感染性免疫複合体を形成し、高効率の感染を招く。
【0004】
したがって、感染の抗体依存性増強のリスクを高めることなく、デングウイルス感染を予防するための物質および方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
要約
本発明は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因となることなく、デングウイルス感染を中和する、抗体および抗体カクテルの発見に一部基づく。したがって、本発明の一態様において、本発明は、デングウイルスを中和するヒト抗体、抗体変異体、またはその抗原結合断片を含み、本抗体、本抗体変異体、または本抗原結合断片は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因とはならない。一実施形態において、本発明は、デングウイルスを中和するヒト抗体、抗体変異体、またはその抗原結合断片を含み、本抗体、本抗体変異体、または本抗原結合断片は、Fc領域に変異を含み、この変異が抗体のFc受容体への結合を減少させる。
【0006】
本発明の別の実施形態において、本発明は、2種以上のヒト抗体、またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物を含む。これらの抗体または抗原結合断片は、各デングウイルス血清型上の少なくとも2つの明確に異なるエピトープに結合することによって、デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4を中和する。本薬学的組成物の抗体は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因とはならない。
【0007】
さらに別の実施形態において、本発明は、配列番号1〜6、17〜22、33〜38、49〜54、67〜72、83〜88、99、100、105〜110、121〜123、124、125、135〜139、149、153〜158、169〜174、185〜188、または189のうちのいずれか1つの配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)配列を含む、抗体またはその抗原結合断片を含み、本抗体は、デングウイルス感染を中和する。
【0008】
さらに別の実施形態において、本発明は、抗体またはその抗原結合断片を含み、本抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号61のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号96のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号131のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号132のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号145のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号151のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号165のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号166のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号182のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号195のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、本抗体は、デングウイルス感染を中和する。
【0009】
さらなる実施形態において、本発明は、デングウイルスを中和し得る組換え抗体、抗体変異体、またはその抗原結合断片を含む。組換え抗体、抗体変異体、または抗原結合断片は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因とはならない。
【0010】
別の態様において、本発明は、デングウイルス感染を中和する本発明の抗体または抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子を含む。さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗体を発現する細胞を含む。また別の態様において、本発明は、本発明の抗体に結合するエピトープを含む、単離または精製された免疫原性ポリペプチドを含む。
【0011】
本発明はまた、本発明の抗体、抗体変異体、もしくは抗原結合断片、本発明の核酸、または本発明の免疫原性ポリペプチドと、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体と、任意で、抗体またはその抗原結合断片の半減期を延長させるために有用な薬剤と、を含む、薬学的組成物を含む。
【0012】
本発明の別の態様において、本発明は、デングウイルス感染もしくはデングウイルス関連疾患を阻害もしくは予防する方法、またはデングウイルス感染もしくはデングウイルス関連疾患を治療する方法を提供する。本方法は、治療のために投与を必要とする患者に、治療有効量の本発明の少なくとも1つの抗体、抗体変異体、抗原結合断片、または薬学的組成物を投与することを含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、本発明は、デングウイルスに対する免疫学的応答を誘発し得るか、または示すことができるポリペプチドをスクリーニングする方法を含み、本方法は、本発明の抗体、抗体断片、または変異体を使用して、ポリペプチドライブラリーをスクリーニングすることを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様において、本発明は、抗デングウイルスワクチンの品質を監視する方法を含む。本方法は、ワクチンの抗原が、正しい構造にある特異的エピトープを含有することを確認するための、本発明の抗体、抗体変異体、またはその抗原結合断片の使用を含む。
【0015】
本発明のさらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、抗体断片、または変異体に特異的に結合するエピトープを含むワクチンを含む。
【0016】
(i)デングウイルス感染の治療のための薬物の製造における、(ii)ワクチンにおける、または(iii)デングウイルス感染の診断における、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片、本発明の核酸、本発明の免疫原性ポリペプチド、または本発明の薬学的組成物の使用もまた、本発明の範囲内であることが企図される。さらに、該ワクチンの抗原が、正しい構造にある特異的エピトープを含有することを確認することによって、抗DENVワクチンの品質を監視するための、本発明の抗体またはその抗原結合断片の使用もまた、本発明の範囲内であることが企図される。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、(i)治療における、(ii)デングウイルス感染の治療のための薬物の製造における、(iii)ワクチンとしての、または(iv)デングウイルス感染を中和することが可能なリガンドのスクリーニングにおける、使用のための、本発明のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片に特異的に結合するエピトープを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】野生型抗デングウイルス抗体を使用したデングウイルスの各血清型を用いたウイルス中和および増強アッセイにおいて、VERO細胞およびK562細胞が使用された。デングウイルスに対する抗体は、用量依存的にVERO細胞の標的ウイルスの感染を阻害する。K562細胞では、この抗体は、用量依存的な抗体依存性感染増強(ADE)に至る。
【図2】重鎖にCH2のL4AおよびL5A置換を有する抗デングウイルス抗体(LALA変異体)は、非修飾抗体と同様、VERO細胞の標的ウイルス感染を中和する。しかし、LALA変異体は、K562細胞の標的ウイルスによる抗体依存性感染増強を完全に消失した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、デングウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)の一因となることなく、デングウイルス(DENV)感染を中和する抗体および抗体カクテルの発見に基づく。本発明の一態様において、本発明は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因となることなくデングウイルスを中和する、ヒト抗体、変異体抗体、またはその抗原結合断片を含む。本抗体または抗体断片は、1種以上のデングウイルス血清型、例えば、2種、3種、または4種のすべてのデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4を中和することができる。
【0020】
本発明はまた、例えば、2種以上のヒト抗体、抗体変異体、またはその抗原結合断片を含む抗体カクテルを含む、薬学的組成物を含む。ヒト抗体、抗体断片、または変異体のカクテルを含む本発明の薬学的組成物は、4種すべてのデングウイルス血清型、すなわち、DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4を中和する。一実施形態において、抗体、抗体断片、または変異体のカクテルは、各デングウイルス血清型上の少なくとも2つの明確に異なるエピトープに結合することによって、デングウイルスを中和する。本薬学的組成物の抗体、変異体、および断片は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因とはならないことに留意されたい。一実施形態において、本カクテルは、2種の抗体またはその断片もしくは変異体を含む。別の実施形態において、本カクテルは、3種の抗体またはその断片もしくは変異体を含む。さらに別の実施形態において、本カクテルは、4種以上の抗体、例えば、4種、5種、6種、7種、または8種の抗体を含む。
【0021】
本明細書で使用される、「断片」、「抗体断片」、および「抗原結合断片」という用語は、交換可能に使用され、抗体の抗原結合活性を保持する本発明の抗体の任意の断片を意味する。例示的な抗体断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、およびscFv断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
「変異」および「置換」という用語は、交換可能に使用され、1つもしくは複数の核酸またはアミノ酸残基の変化を意味する。
【0023】
本明細書で使用される、「変異体」および「抗体変異体」という用語は、交換可能に使用され、抗体の抗原結合活性を保持する本発明の抗体の任意の変異体を意味する。変異体という用語には、変異および/または置換を含む抗体が含まれる。例示的な抗体変異体には、CH2の4、5、または両方の位置にLからAへの置換を有するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の抗体
本発明は、デングウイルスを中和するが、デングウイルス感染のADEの一因とはならない抗体を提供する。「中和抗体」は、病原体が宿主において感染を開始/および持続させる能力を中和し得るものである。本発明の抗体は、1種もしくは複数種のデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4を中和することができる。一実施形態において、本発明の抗体は、1種以上の、例えば、2種、3種、または4種のすべてのデングウイルス血清型を中和する。別の実施形態において、2種以上の抗体、抗体断片、または変異体を含む薬学的組成物は、4種すべてのデングウイルス血清型を中和することができる。さらに別の実施形態において、2種以上の抗体、抗体断片、または変異体を含む薬学的組成物は、各デングウイルス血清型上の2つの明確に異なるエピトープを標的とすることによって、デングウイルス感染を中和する。これらの抗体、抗原結合断片、および変異体は、適切な製剤化後に予防薬もしくは治療薬として、または本明細書に記載されるような診断ツールとして使用することができる。
【0025】
本発明の抗体は、モノクローナル、例えば、ヒトモノクローナル抗体、または組換え抗体であり得る。本発明はまた、本発明の抗体の断片、特に、抗体の抗原結合活性を保持する断片を提供する。特許請求の範囲を含む本明細書は、いくつかの箇所において、抗体断片(複数可)、抗体の変異体(複数可)、および/または抗体の誘導体(複数可)について明示的に言及し得るが、「抗体」または「本発明の抗体」という用語は、すべての分類の抗体、すなわち、抗体断片(複数可)、抗体の変異体(複数可)、および抗体の誘導体(複数可)を含むことを理解されたい。
【0026】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、デングウイルス感染の抗体依存性増強は、抗体のFc領域、具体的にはIgG分子の重鎖のFc領域の、宿主細胞上のFc受容体、例えば、Fcγ受容体への結合により引き起こされると考えられる。本発明は、一方で、Fc受容体(FcR)への結合を減少させた、IgG分子を含む抗体を提供する。一実施形態において、本発明の抗体は、Fc領域内に1つもしくは複数の変異を含む。変異(複数可)は、本抗体のFc受容体への結合を減少させる、いずれの変異であってもよい。一実施形態において、本発明の抗体のFc領域は、CH2の4、5、または両方の位置に置換を含む。概して、野生型IgG1およびIgG3のCH2の4位および5位のアミノ酸は、ロイシン(「L」)である。一実施形態において、本発明の抗体は、CH2の4、5、または両方の位置に、Lではないアミノ酸を含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、CH2の4、または5、あるいは両方の位置にアラニン(「A」)を含む。CH2のL4AおよびL5A置換を含む抗体は、本明細書で「LALA」変異体と称される。
【0027】
代替として、本発明は、Fc領域を含まず、したがってFcRに結合しない抗体断片を提供する。例示的な抗体断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、およびscFvが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
それぞれが重鎖に3つのCDRおよび軽鎖に3つのCDRを含む、本発明のいくつかの例示的な抗体の重鎖および軽鎖の配列が決定されている。CDRのアミノ酸の位置は、IMGT付番システムに従って定義される[1、2、3]。本発明の多くの例示的な抗体のCDR、重鎖、軽鎖の配列、ならびにこのCDR、重鎖、軽鎖をコードする核酸分子の配列を、配列表に開示する。表1は、本発明の例示的な抗体の6つのCDR、重鎖および軽鎖のそれぞれの可変領域のアミノ酸配列についての、配列番号を提供する。表2は、本発明の例示的な抗体のCDR、重鎖、および軽鎖をコードする核酸分子の配列についての、配列番号を提供する。
表1.抗体のCDR、重鎖、および軽鎖のアミノ酸配列番号
【表1】

表2.抗体のCDR、重鎖、および軽鎖の核酸配列番号
【表2】

【0029】
一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、本発明の例示的な抗体の1つもしくは複数の重鎖または軽鎖CDRを含む。例示的な実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、デングウイルス感染を中和し、配列番号1〜6、17〜22、33〜38、49〜54、67〜72、83〜88、99、100、105〜110、121〜123、124、125、135〜139、149、153〜158、169〜174、185〜188、または189のうちのいずれか1つの配列を有する少なくとも1つのCDR配列を含む。
【0030】
別の実施形態において、本発明の抗体、抗体変異体、または抗原結合断片は、配列番号1〜3、17〜19、33〜35、49〜51、67〜69、83〜85、105〜107、121〜123、135〜137、149、153〜155、169〜171、または185〜187のうちの1つもしくは複数のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、抗体変異体、または抗原結合断片は、配列番号1、17、33、49、67、83、105、121、135、149、153、169、および185からなる群から選択される重鎖CDR1と、配列番号2、18、34、50、68、84、106、122、136、154、170、および186からなる群から選択される重鎖CDR2と、配列番号3、19、35、51、69、85、107、123、137、155、171、および187からなる群から選択される重鎖CDR3と、を含む。
【0031】
例えば、本発明の抗体は、CDRH1に配列番号1、CDRH2に配列番号2、CDRH3に配列番号3;CDRH1に配列番号17、CDRH2に配列番号18、およびCDRH3に配列番号19;CDRH1に配列番号33、CDRH2に配列番号34、およびCDRH3に配列番号35;CDRH1に配列番号49、CDRH2に配列番号50、およびCDRH3に配列番号51;CDRH1に配列番号67、CDRH2に配列番号68、およびCDRH3に配列番号69;CDRH1に配列番号83、CDRH2に配列番号84、およびCDRH3に配列番号85;CDRH1に配列番号105、CDRH2に配列番号106、およびCDRH3に配列番号107;CDRH1に配列番号121、CDRH2に配列番号122、およびCDRH3に配列番号123;CDRH1に配列番号135、CDRH2に配列番号136、およびCDRH3に配列番号137;CDRH1に配列番号149、CDRH2に配列番号136、およびCDRH3に配列番号137;CDRH1に配列番号153、CDRH2に配列番号154、およびCDRH3に配列番号155;CDRH1に配列番号169、CDRH2に配列番号170、およびCDRH3に配列番号171;ならびにCDRH1に配列番号185、CDRH2に配列番号186、およびCDRH3に配列番号187を含む、重鎖を含む。
【0032】
さらに別の実施形態において、本発明の抗体、抗体変異体、または抗体断片は、配列番号4〜6、20〜22、36〜38、52〜54、70〜72、86〜88、99、100、108〜110、124、125、138、139、156〜158、172〜174、188、または189のうちの1つもしくは複数のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。さらなる実施形態において、本発明の抗体、抗体変異体、または抗体断片は、配列番号4、20、36、52、70、86、99、108、138、156、172、および188からなる群から選択される軽鎖CDR1と、配列番号5、21、37、53、71、87、109、124、157、および173からなる群から選択される軽鎖CDR2と、配列番号6、22、38、54、72、88、100、110、125、139、158、174、および189からなる群から選択される軽鎖CDR3と、を含む。
【0033】
例えば、本発明の抗体は、CDRL1に配列番号4、CDRL2に配列番号5、CDRL3に配列番号6;CDRL1に配列番号20、CDRL2に配列番号21、CDRL3に配列番号22;CDRL1に配列番号36、CDRL2に配列番号37、CDRL3に配列番号38;CDRL1に配列番号52、CDRL2に配列番号53、CDRL3に配列番号54;CDRL1に配列番号70、CDRL2に配列番号71、CDRL3に配列番号72;CDRL1に配列番号86、CDRL2に配列番号87、CDRL3に配列番号88;CDRL1に配列番号99、CDRL2に配列番号53、CDRL3に配列番号100;CDRL1に配列番号108、CDRL2に配列番号109、CDRL3に配列番号110;CDRL1に配列番号70、CDRL2に配列番号124、CDRL3に配列番号125;CDRL1に配列番号138、CDRL2に配列番号109、CDRL3に配列番号139;CDRL1に配列番号156、CDRL2に配列番号157、CDRL3に配列番号158;CDRL1に配列番号172、CDRL2に配列番号173、CDRL3に配列番号174;ならびにCDRL1に配列番号188、CDRL2に配列番号37、CDRL3に配列番号189を含む、軽鎖を含む。
【0034】
一実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−1のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−2のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−3のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−4のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−5のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−6のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−7のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。
【0035】
さらなる実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−8のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−9のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。また別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−10のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−11のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−12のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−13のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合断片は、表1に列記される抗体HMB−DV−14のすべてのCDRを含み、ヒト宿主においてデングウイルス感染を中和する。
【0036】
また別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号13、29、45、61、65、79、95、117、131、145、151、165、181、または195の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%相同であるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。さらに別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号14、30、46、62、80、96、103、118、132、146、166、182、または196の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%相同であるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0037】
さらなる実施形態において、本発明の抗体、抗体変異体、または抗体断片は、配列番号13、29、45、61、65、79、95、117、131、145、151、165、181、または195のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号14、30、46、62、80、96、103、118、132、146、166、182、または196のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0038】
さらに別の実施形態において、本発明の抗体、抗体変異体、または抗体断片は、デングウイルス感染を中和し、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号61のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号96のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号131のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号132のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号145のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号151のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号165のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号166のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号182のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号195のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0039】
鎖置換およびCDR移植のための方法は、当該技術分野においてよく知られている。元々これらの方法は、非ヒト抗体(概してマウス抗体)をヒト化するため、または非ヒト抗体と同等の生物活性を有するヒト抗体対応物を選択するために開発された。これらの方法は、非ヒト抗体のCDR、例えば、CDR3のうちの1つのみが保持され、フレームワークおよび他の2つのCDR、例えば、CDR1および2を含む、残りのV領域が順次行われるステップで個々に置換される、置換技術を含む(例えば、米国特許出願第20030166871号、Rader,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95:8910−15,1998、Steinberg,et al.,J Biol Chem 275:36073−78,2000、Rader,et al.,J Biol Chem 275:13668−76,2000)。
【0040】
また、標的抗原に対する参照抗体の結合特異性を有する抗体を作製する方法は、特許出願国際公開第WO05/069,970号に記載されている。これらの方法は、参照抗体からレシピエント抗体または抗体断片へ、参照抗体の最小必須結合特異性を移行することを含む。移行され得る領域の例には、重鎖および/もしくは軽鎖からの単一CDRセグメント、例えばCDR3セグメント、またはDセグメント、またはCDR3−FR4セグメント、または最小必須結合特異性決定因子を含む任意のCDR3−FR4セグメントの移行が含まれるが、これらに限定されない。これらの方法を使用して作製される抗体は、参照抗体の結合特異性と、しばしば親和性とを保持する。
【0041】
本発明の抗体、抗体変異体、または抗体断片は、特に、本発明の例示的な抗体の1つもしくは複数のCDR、重鎖、または軽鎖を含む抗体を含み、それらの特異性およびデングウイルス感染中和能を保持する。
【0042】
本発明の例示的な抗体には、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
HMB−DV4の変異体は、配列番号61および配列番号65に記されるアミノ酸配列を有する重鎖変異体と、配列番号62に記されるアミノ酸配列を有する軽鎖変異体とからなる。重鎖変異体をコードする核酸配列は、配列番号63および配列番号66に記される。軽鎖をコードする核酸は、配列番号64に記される。したがって、HMB−DV4変異体の重鎖(配列番号61、65)および軽鎖(配列番号62)を含む抗体は、本発明の範囲に含まれる。
【0044】
本明細書で使用される、「HMB−DV4」という用語は、HMB−DV4の任意のおよび/またはすべての変異体、例えば、配列番号61および65に相当する重鎖と、配列番号62に相当する軽鎖とを有するものを意味するために使用される。
【0045】
一実施形態において、本発明の抗体カクテルは、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14からなる群から選択される2つ以上の抗体を含む。別の実施形態において、本発明のカクテルは、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14からなる群から選択される3つの抗体を含む。さらに別の実施形態において、本発明の抗体カクテルは、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14からなる群から選択される、3つを超える、例えば、4、5、6、7、または8つの抗体を含む。例示的な実施形態において、本発明のカクテルは、HMB−DV5、HMB−DV6、およびHMB−DV8を含む。
【0046】
本発明は、本発明の抗体に結合可能なエピトープに結合する、抗体、またはその断片をさらに含む。本発明はまた、本発明の抗体と競合する抗体または抗体断片を含む。
【0047】
別の態様において、本発明はまた、軽鎖および重鎖の一部またはすべてならびに本発明の抗体のCDRをコードする核酸配列も含む。一実施形態において、本発明による核酸配列は、本発明の抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を有する核酸配列を含む。別の実施形態において、本発明の核酸配列は、本発明の抗体の重鎖CDRまたは軽鎖CDRをコードする核酸の配列を有する。例えば、本発明による核酸配列は、配列番号7〜12、23〜28、39〜44、55〜60、73〜78、89〜94、101、102、111〜116、126〜128、129、130、140〜144、150、159〜164、175〜180、および190〜194の核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%相同である配列を含む。
【0048】
遺伝暗号の冗長性に起因して、同じアミノ酸配列をコードするこれらの配列の変異体が存在するであろう。これらの変異体は本発明の範囲内に含まれる。
【0049】
変異抗体は本発明の範囲内に含まれる。したがって、本出願に列挙する配列の変異体もまた本発明の範囲内に含まれる。かかる変異体は、免疫応答の最中に生体内で、または不死化B細胞クローンを生体外で培養することで、体細胞変異が起こることにより生成される天然の変異体を含む。代替として、変異体は、上述したように遺伝暗号の縮重によって生じ得るか、または転写もしくは翻訳におけるエラーによって産生され得る。また、例えばFc領域の抗体のエフェクター機能を修飾して、抗体のFc受容体への結合を減少させるために、変異体が導入されてもよい。
【0050】
向上した親和性および/または力価を有する抗体配列のさらなる変異体は、当該技術分野において知られる方法を使用して得ることができ、本発明の範囲内に含まれる。例えば、アミノ酸置換が、さらに向上した親和性を持つ抗体を得るために使用され得る。代替として、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、抗体を産生するための発現系において翻訳の効率を向上させるために使用され得る。さらに、本発明の核酸配列のうちのいずれかに定向進化法を適用することにより、抗体特異性または中和活性のために最適化された配列を含むポリヌクレオチドも、本発明の範囲内である。
【0051】
一実施形態において、変異体抗体の配列は、本出願において列挙される配列と70%以上(すなわち、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%以上)のアミノ酸配列相同性を共有し得る。いくつかの実施形態において、かかる配列相同性は、参照配列(つまり、本出願に列挙した配列)の全長に関して算出される。いくつかのさらなる実施形態において、本明細書で言及される同一性の割合(%)は、NCBI(National Center for Biotechnology Information、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定される初期パラメータ[Blosum 62マトリックス、ギャップオープンペナルティ=11およびギャップ伸長ペナルティ=1]を使用する、BLASTバージョン2.1.3を用いて決定される。
【0052】
ベクター、例えば、本発明による核酸配列を含む発現ベクターが、本発明の範囲内にさらに含まれる。かかるベクターで形質転換された細胞も、本発明の範囲内に含まれる。かかる細胞の例には、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞、または植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、これらの細胞は、例えばヒト、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞等の哺乳類細胞である。
【0053】
本発明はまた、本発明の抗体と結合可能なエピトープに結合する、モノクローナル抗体にも関する。一実施形態において、本発明は、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14からなる群から選択されるモノクローナル抗体と結合可能なエピトープに結合する、モノクローナル抗体を含む。
【0054】
モノクローナルおよび組換え抗体は、個々のポリペプチドまたは抗体が対象とする他の抗原の識別および精製に特に有用である。本発明の抗体は、それらが、免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)において試薬として用いられ得るという点で、付加的な有用性を有する。これらの用途において、抗体は、放射性同位元素、蛍光分子、または酵素等の分析的に検出可能な試薬で標識することができる。また、これらの抗体は、抗原の分子的識別および特徴付け(エピトープマッピング)のためにも使用され得る。
【0055】
本発明の抗体は、典型的にはグリコシル化される。例えば重鎖のC2ドメインに結合したN結合グリカンは、C1qおよびFcRの結合に影響を及ぼすことができ、アグリコシル化抗体はこれらの受容体に対してより低い親和性を有する。このグリカンの構造は、活性にも影響を及ぼし得、例えば、グリカンの二分岐鎖の末端のガラクトース糖の数(0、1、または2)に依存して、補体媒介細胞死に差異が見られ得る。抗体のグリカンは、好ましくは、投与後にヒトの免疫原性応答に至らない。
【0056】
本発明の抗体は、治療部位への送達のために薬物に連結することができるか、またはデングウイルスに感染した細胞等の目的の細胞を含む部位の画像化を容易にさせるように、検出可能な標識に連結することができる。薬物および検出可能な標識に抗体を連結するための方法は、検出可能な標識を使用して画像化するための方法のように、当該技術分野において知られている。標識された抗体は、様々な標識を用いる様々なアッセイで用いることができる。本発明の抗体と目的のエピトープ(DENVエピトープ)との抗体−抗原複合体の形成の検出は、抗体に検出可能な物質を結合させることによって容易にすることができる。適切な検出手段には、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光体、化学発光物質、色素原、酵素基質または補助因子、酵素阻害薬、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、色素等の標識の使用が含まれる。適切な酵素の例には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ、適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが含まれ、発光物質の例は、ルミノールであり、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれ、適切な放射性物質の例には、125I、131I、35S、またはHが含まれる。かかる標識された試薬は、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、例えば、ELISA、蛍光免疫測定法等のよく知られる様々な測定法で使用され得る。
【0057】
本発明による抗体は、細胞毒、治療薬、または放射性金属イオンもしくは放射性同位元素等の治療部分に結合され得る。放射性同位元素の例としては、I−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212、Bi−213、Pd−109、Tc−99、In−111等が挙げられるが、これらに限定されない。かかる抗体結合体は、所与の生物学的応答を改変するために使用することができ、薬物部分は、古典的な化学治療薬に制限されると解釈されるものではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を持つタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、カリチアマイシン細菌毒素、またはジフテリア毒素等の毒素を含み得る。
【0058】
かかる治療部分を抗体に結合させる技術はよく知られている。例えば、Arnon et al.(1985)“Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,ed.Reisfeld et al.(Alan R.Liss,Inc.),pp.243−256、ed.Hellstrom et al.(1987)“Antibodies for Drug Delivery,”in Controlled Drug Delivery,ed.Robinson et al.(2d ed;Marcel Dekker,Inc.),pp.623−653、Thorpe(1985)“Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review,”in Monoclonal Antibodies ’84:Biological and Clinical Applications,ed.Pinchera et al.pp.475−506(Editrice Kurtis,Milano,Italy,1985)、“Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,ed.Baldwin et al.(Academic Press,New York,1985),pp.303−316、およびThorpe et al.(1982)Immunol.Rev.62:119−158。
【0059】
代替として、抗体は、参考文献4に記載されるように、第2の抗体に結合させて、抗体のへテロ結合体を形成することができる。また、標識と本発明の抗体との間にリンカーを使用することもできる[5]。抗体、またはその抗原結合断片は、当該技術分野において知られる放射性ヨード、インジウム、イットリウム、または他の放射性粒子で直接標識され得る[6]。治療は、同時に投与またはその後投与される抱合抗体と非抱合抗体の治療の組み合わせからなり得る[7、8]。
【0060】
本発明の抗体はまた、固体支持体にも結合され得る。
【0061】
さらに、本発明の抗体またはその機能的抗体断片は、ポリマーへの共有結合により化学修飾することで、例えば、循環半減期を増大させることができる。ポリマーの例、およびそれらをペプチドに結合させる方法は、参考文献9〜12に示される。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリオキシエチル化されたポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)から選択され得る。PEGは、室温で水溶性であり、一般式:R(O−−CH−−CHO−Rを有し、式中、Rは、水素、またはアルキル基もしくはアルカノール基等の保護基であり得る。一実施形態において、保護基は、1から8個の炭素を有し得る。さらなる実施形態において、保護基はメチル基である。記号nは、正の整数である。一実施形態において、nは1〜1,000である。別の実施形態において、nは2〜500である。一実施形態において、PEGは、1,000〜40,000の平均分子量を有する。さらなる実施形態において、PEGは、2,000〜20,000の分子量を有する。またさらなる実施形態において、PEGは、3,000〜12,000の分子量を有する。一実施形態において、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する。別の実施形態において、PEGは、末端ヒドロキシ基を有する。さらに別の実施形態において、このヒドロキシ基は、阻害剤の遊離アミノ基と反応するように活性化された末端ヒドロキシ基である。しかしながら、反応基の型および量は、本発明の共有結合されたPEG/抗体を達成するために変化し得ることが理解される。
【0062】
本発明の抗体は、非修飾抗体と比較して、FcRnに対する抗体の結合親和性および/または血中半減期を変化させるために、重鎖のCH2もしくはCH3ドメインの特定の領域にランダムアミノ酸変異を導入することによって修飾され得る。かかる修飾の例には、アミノ酸残基250、314、および428からなる群から選択される重鎖定常領域からの少なくとも1つのアミノ酸の置換が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
また、水溶性ポリオキシエチル化ポリオールも本発明において有用である。それらは、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)等を含む。一実施形態において、POGが用いられる。いずれの理論にも拘束されるものではないが、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格は、例えば、動物およびヒトにおいて、モノ−、ジ−、トリグリセリド中に自然に発生する骨格と同じであるため、この分岐は、必ずしも体内において異質の物質であるとは見なされない。いくつかの実施形態において、POGは、PEGと同程度の分子量を有する。POGの構造は、参考文献13に示され、POG/IL−2抱合体の説明は、参考文献9に見出される。
【0064】
循環半減期を増大させるために使用され得る別の薬物送達系は、リポソームである。リポソーム送達系を調製する方法は、参考文献14、15、および16に説明されている。他の薬物送達系は、当該技術分野において知られており、例えば、参考文献17および18に記載される。
【0065】
本発明の抗体は、精製された形態で提供される。典型的には、本抗体は、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在し、例えば本組成物の90重量%未満、通常60重量%未満、さらに通常は50重量%未満が他のポリペプチドで構成される。
【0066】
本発明の抗体は、非ヒト(または異種)宿主、例えばマウスにおいて免疫原性であり得る。具体的には、これらの抗体は、非ヒト宿主において免疫原性であるが、ヒト宿主においては免疫原性でないイディオトープを有し得る。ヒト用の本発明の抗体は、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳動物等の宿主から容易に単離することができない抗体、およびヒト化によって、または異種マウスから概して得ることができない抗体を含む。
【0067】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(例えばIgA、IgG、IgM、すなわち、α、γ、またはμ重鎖)であり得るが、概してIgGである。IgGアイソタイプ内で、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスであり得る。一実施形態において、本抗体はIgG1である。本発明の抗体は、κまたはλ軽鎖を有し得る。
【0068】
DENV−中和組換えつまり改変された二重特異抗体分子またはその抗原結合断片が、本発明の範囲に包まれる。かかる抗体および断片は、第1のデングウイルス血清型上のエピトープに対する第1の結合部位と、同じデングウイルス血清型または異なる、例えば、第2、第3、もしくは第4のデングウイルス血清型上の第2のエピトープに対する第2の結合部位と、を含み得る。それぞれの結合部位の可変ドメインは、本発明の免疫グロブリンアイソタイプとして、あるいはヘテロ二量体性のFab、Fab’、F(ab’)、ScFv、または1つもしくは複数のペプチドリンカーを介してともに連結され得る二重特異性抗体として形成され得る。
【0069】
抗体の産生
本発明によるモノクローナル抗体は、当該技術分野において知られるどんな方法によっても作製可能である。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製するための、一般的な方法論がよく知られている[19、20]。好ましくは、参考文献21に記載される代替的なEBV不死化方法が使用される。
【0070】
参考文献21に記載される方法を使用して、本発明の抗体を産生する不死化B細胞は、多クローン性B細胞活性化因子の存在下においてEBVで形質転換することができる。EBVでの形質転換は標準的な技術であり、多クローン性B細胞活性化因子を含むように容易に適合することができる。
【0071】
細胞増殖および分化の付加的な刺激薬を、任意で、効率をさらに増強させるために形質転換ステップ時に添加することができる。これらの刺激薬は、IL−2およびIL−15等のサイトカインであり得る。一態様において、不死化効率をさらに向上させるために、不死化ステップの最中にIL−2が添加されるが、その使用は必須ではない。
【0072】
次いで、これらの方法を使用して産生した不死化B細胞を、当該技術分野において知られている方法を使用して培養し、抗体をそこから単離することができる。
【0073】
また本発明の抗体は、英国特許出願第0819376.5号に記載される方法を使用して、マイクロウェル培養プレートにおいて単一形質細胞を培養することによっても作製することができる。さらに、単一形質細胞の培養物から、RNAを抽出することができ、当該技術分野において知られる方法を使用して、単細胞PCRを行うことができる。この抗体のVHおよびVL領域をRT−PCRにより増幅し、配列決定を行い、発現ベクター中にクローン化し、次いで、HEK293T細胞または他の宿主細胞にトランスフェクトすることができる。発現ベクターにおける核酸のクローン化、宿主細胞のトランスフェクション、トランスフェクトした宿主細胞の培養、および産生された抗体の単離は、当業者に知られている任意の方法を使用して行うことができる。
【0074】
モノクローナル抗体は、所望される場合、濾過、遠心分離、およびHPLCまたは親和性クロマトグラフィ等の種々のクロマトグラフ法を使用してさらに精製され得る。製薬等級抗体を産生するための技術を含む、モノクローナル抗体を精製する技術は、当該技術分野において知られている。
【0075】
本発明のモノクローナル抗体の断片は、ペプシンもしくはパパイン等の酵素による消化を含む方法によって、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断によって、モノクローナル抗体から得ることができる。代替として、モノクローナル抗体の断片は、重鎖または軽鎖の配列の一部のクローニングおよび発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片を含み得る。本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖に由来する単鎖Fv断片(scFv)も包含し、例えば、本発明は、本発明の抗体のCDRを含むscFvを含む。重鎖または軽鎖単量体および二量体、ならびに単鎖抗体、例えば、重鎖および軽鎖可変ドメインがペプチドリンカーによって連結される単鎖Fvも含まれる。
【0076】
分子生物学の標準的な技術を使用して、本発明の抗体またはこの抗体の断片もしくは変異体をコードするDNA配列を調製することができる。所望のDNA配列を、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、完全にまたは部分的に合成することができる。部位特異的変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を必要に応じて使用することができる。
【0077】
任意の適切な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体分子またはその断片をコードするDNA配列の発現のために使用することができる。FabおよびF(ab’)断片、特にFv断片および単鎖抗体断片、例えば、単鎖Fv等の抗体断片の発現のために、細菌、例えば大腸菌の系、および他の微生物系が部分的に使用され得る。真核生物、例えば哺乳類の宿主細胞発現系は、完全な抗体分子を含む、より大きな抗体分子の産生のために使用され得る。適切な哺乳類宿主細胞には、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0078】
本発明はまた、本発明の抗体を産生するための工程も提供し、該工程は、本発明の抗体をコードするDNAからのタンパク質の発現をもたらすのに適した条件下で、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養するステップと、抗体分子を単離するステップと、を含む。
【0079】
抗体分子は、重鎖または軽鎖ポリペプチドのみを含み得、その場合においては、重鎖または軽鎖ポリペプチドコード配列のみを、宿主細胞をトランスフェクトするために使用する必要がある。重鎖および軽鎖の両方を含む産物を産生するために、細胞系は、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクターおよび重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターの2つのベクターをトランスフェクトされ得る。代替として、単一ベクターが使用され得、該ベクターは、軽鎖および重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0080】
代替として、本発明による抗体は、i)細胞内で本発明による核酸配列を発現するステップ、およびii)その発現された抗体産物を単離するステップによって産生され得る。加えて、この方法は、iii)抗体を精製するステップを含み得る。
【0081】
B細胞のスクリーニングおよび単離
形質転換されたB細胞を、所望の抗原特異性の抗体を産生するものに対してスクリーニングすることができ、次いで、個々のB細胞クローンは、陽性細胞から産生することができる。
【0082】
スクリーニングステップは、ELISA、組織もしくは細胞(感染細胞またはトランスフェクト細胞を含む)の染色、中和アッセイ、または所望の抗原特異性を識別するための当該技術分野において知られる多くの他の方法のうちの1つによって行われ得る。本アッセイは、単純抗原認識に基づいて選択し得るか、または、例えば、抗原結合抗体だけではなく中和抗体を選択し、標的細胞の特徴、たとえば、それらのシグナリングカスケード、それらの形、それらの増殖速度、他の細胞に影響するそれらの能力、他の細胞もしくは他の試薬または条件の変化による影響に対するそれらの応答、それらの分化状態等を変化させることができる抗体を選択する等のような、所望の機能にさらに基づいて選択され得る。
【0083】
陽性細胞の混合物から個々のクローンを分離するクローニングステップは、限界希釈法、顕微操作、細胞分類による単細胞沈着、または当該技術分野において知られる別の方法を使用して行うことができる。
【0084】
本発明の不死化B細胞クローンは、例えば、モノクローナル抗体源として、研究のための目的のモノクローナル抗体をコードする核酸(DNAまたはmRNA)源等として、種々の方法で使用することができる。
【0085】
本発明は、不死化Bメモリー細胞を含む組成物を提供し、該細胞は、1つもしくは複数のデングウイルス血清型を中和する抗体を産生し、該抗体は、1日当たり細胞につき5pg以上産生される。本発明はまた、不死化Bメモリー細胞のクローンを含む組成物を提供し、該クローンは、1つもしくは複数のデングウイルス血清型を中和するモノクローナル抗体を産生し、該抗体は、1日当たり細胞につき5pg以上産生される。
【0086】
本発明による例示的な不死化B細胞クローンには、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
エピトープ
上記のように、本発明の抗体は、それらが結合するエピトープをマッピングするために使用することができる。本発明の抗体によって認識されるエピトープには、いくつかの用途があり得る。精製された形態または合成形態でのエピトープおよびそのミモトープは、免疫学的応答を惹起するため(すなわち、ワクチンとして、または他の用途のために抗体を産生するため)、またはエピトープもしくはそのミモトープと免役反応する抗体を求めて患者の血清をスクリーニングするために使用することができる。一実施形態において、かかるエピトープもしくはミモトープ、またはかかるエピトープもしくはミモトープを含む抗原は、免疫反応を向上させるためのワクチンとして使用され得る。本発明の抗体および抗原結合断片はまた、ワクチンの品質を監視する方法においても使用することができる。具体的には、本抗体を使用して、ワクチン中の抗原が正しい構造にある特異的エピトープを含有していることを確認することができる。
【0088】
また、エピトープは、該エピトープに結合するリガンドのスクリーニングにおいても有用であり得る。かかるリガンドには、ラクダ、サメおよび他の種由来のものを含む抗体、抗体の断片、ペプチド、ファージディスプレイ技術の産物、アプタマー、アドネクチン、合成化合物、またはエピトープをブロックして、感染を予防することができる他のウイルスもしくは細胞タンパク質の断片が含まれるが、これらに限定されない。このようなリガンドは、本発明の範囲内に包含される。
【0089】
組換え発現
また、本発明の不死化Bメモリー細胞は、その後の組換え発現に対する抗体遺伝子のクローニングのために核酸源としても使用し得る。組換え源からの発現は、例えば、安定性、再現性、培養の容易さ等の理由で、不死化B細胞またはハイブリドーマからの発現よりも、医薬目的上より一般的である。
【0090】
したがって、本発明は、組換え細胞を調製するための方法を提供し、(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンから1つもしくは複数の核酸(例えば、重鎖および/または軽鎖遺伝子)を得るステップと、(ii)発現宿主内において目的の抗体の発現を可能にするように、その宿主に該核酸を挿入するステップとを含む。
【0091】
同様に、本発明は、組換え細胞を調製するための方法を提供し、(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンから核酸を配列決定するステップと、(ii)ステップ(i)からの配列情報を使用して、発現宿主内における目的の抗体の発現を可能にするように、その宿主内に挿入するために核酸を調製するステップとを含む。制限酵素部位を導入するため、コドン使用頻度を変更するため、転写および/もしくは翻訳制御配列を最適化するため、ならびに/またはエフェクター機能を改変するために、ステップ(i)と(ii)との間で核酸を操作することができるが、それは必要ではない。
【0092】
また、本発明は、組換え細胞を調製する方法を提供し、目的のモノクローナル抗体をコードする1つもしくは複数の核酸で宿主細胞を形質転換するステップを含み、該核酸は、本発明の不死化B細胞クローンに由来する核酸である。したがって、まず核酸を調製し、次いでそれを使用して宿主細胞を形質転換するための手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時間に行うことができる。
【0093】
次いで、本発明のこれらの組換え細胞を、発現および培養目的で使用することができる。それらは、大規模な薬剤生産のための抗体の発現に特に有用である。また、それらは、薬学的組成物の活性成分としても使用することができる。任意の適切な培養技術を使用することができ、その技術には、静置培養、ローラーボトル培養、腹水、中空糸型バイオリアクターカートリッジ、モジュラーミニファーメンター、攪拌槽、マイクロキャリア培養、セラミック中子灌流等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
B細胞から免疫グロブリン遺伝子を得る、および配列決定するための方法は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、参考文献22を参照)。
【0095】
発現宿主は、好ましくは酵母および動物細細胞を含む真核細胞、特に哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、NS0細胞、PER.C6[Crucell、参考文献23]またはHKB−11[Bayer、参考文献24および25]細胞等のヒト細胞、骨髄腫細胞[26および27]等)、ならびに植物細胞である。好適な発現宿主は、特に、それ自体ではヒトにおいて免疫原性ではない糖鎖構造を用いて、本発明の抗体をグリコシル化することができる。一実施形態において、発現宿主は、無血清培地で増殖することができる。さらなる実施形態において、発現宿主は、動物由来産物が存在しない培養物中で増殖することができる。
【0096】
発現宿主は、細胞系を得るために培養され得る。
【0097】
本発明は、目的の抗体をコードする1つもしくは複数の核酸分子(例えば重鎖および軽鎖遺伝子)を調製するための方法を提供し、該方法は、(i)本発明による不死化B細胞クローンを調製するステップと、(ii)不死化B細胞クローンから目的の抗体をコードする核酸を得るステップと、を含む。本発明はまた、目的の抗体をコードする核酸配列を得るための方法を提供し、該方法は、(i)本発明による不死化B細胞クローンを調製するステップと、(ii)目的の抗体をコードする不死化B細胞クローンからの核酸を配列決定するステップと、を含む。
【0098】
また、本発明は、目的の抗体をコードする核酸分子を調製する方法も提供し、該方法は、本発明の形質転換されたB細胞から得られたB細胞クローンから核酸を得るステップを含む。したがって、最初に、B細胞クローンを得、次いで、それから核酸を調製する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時間に行うことができる。
【0099】
本発明は、(例えば医薬用途のために)抗体を調製するための方法を提供し、該方法は、(i)1つもしくは複数の核酸(例えば重鎖および軽鎖遺伝子)を得る、および/または配列決定するステップと、(ii)ステップ(i)からの配列情報を使用して、発現宿主内での目的の抗体の発現を可能にするために、発現宿主に挿入するための核酸を調製するステップと、(iii)目的の抗体が発現される条件下で、発現宿主を培養または継代培養するステップと、任意に、(iv)目的の抗体を精製するステップと、を含む。この核酸は、目的の抗体を発現する不死化B細胞クローンから得る、および/または配列決定することができるが、そうである必要はない。一実施形態において、ステップ(i)からの核酸は、任意で、抗体のアミノ酸配列に所望の置換を導入するように修飾されてもよい。
【0100】
本発明はまた、抗体を調製する方法も提供し、該方法は、目的の抗体が発現される条件下で、発現宿主細胞集団を培養または継代培養するステップと、任意で、目的の抗体を生成するステップと、を含み、該発現宿主細胞集団は、(i)目的の抗体をコードする核酸を提供することと、(ii)目的の抗体を発現することができる発現宿主に核酸を挿入することと、(iii)該挿入された核酸を含む発現宿主を培養または継代培養して、該発現宿主細胞集団を産生することと、により、調製された。
【0101】
薬学的組成物
本発明は、本発明の抗体および/もしくは抗体断片、ならびに/またはかかる抗体をコードする核酸、ならびに/またはかかる抗体を発現する不死化B細胞、ならびに/または本発明の抗体により認識されるエピトープを含有する薬学的組成物を提供する。また、薬学的組成物は、投与を可能にするように、薬学的に許容される担体も含有し得る。この担体は、それ自体が、該組成物を受け取る個人に有害である抗体の産生を誘導すべきではなく、毒性であるべきではない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子等の大型かつ代謝速度が遅い巨大分子であり得る。
【0102】
薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、および硫酸塩等の鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩等の有機酸の塩を使用することができる。
【0103】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール等の液体をさらに含有し得る。加えて、湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝物質等の補助物質がかかる組成物中に存在し得る。かかる担体によって、患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、および懸濁液として、薬学的組成物を製剤化することが可能になる。
【0104】
本発明の範囲内で、投与形態は、例えば、注射または注入による、例えば、ボーラス投与または持続注入による非経口投与に適した形態を含み得る。製品が注射または注入のためのものである場合、それは、油性または水性ビヒクル中で懸濁液、溶液または乳濁液の形態を取り得、そしてそれは、懸濁剤、防腐剤、安定剤および/または分散剤等の製剤化剤を含有し得る。代替として、抗体分子は、適切な滅菌液で使用前に再構成される、乾燥状態であり得る。
【0105】
製剤化され次第、本発明の組成物は、対象に直接投与することができる。一実施形態において、本発明の組成物は、ヒト対象への投与に適合されることが好ましい。
【0106】
本発明の薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、局所、皮下、鼻腔内、腸内、舌下、膣内、または直腸経路を含むが、これらに限定されないあらゆる経路によって投与され得る。また、本発明の薬学的組成物を投与するためにハイポスプレーも使用され得る。典型的には、本治療用組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注入物質として調製され得る。また、注入前に、液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に適した固形も調製され得る。
【0107】
これらの組成物の直接的な送達は、概して、注射、皮下、腹腔内、静脈内、もしくは筋肉内送達によって達成されるか、または組織の間質腔に送達される。投薬治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであってもよい。既知の抗体ベースの医薬品は、例えば、医薬品を毎日、毎週、毎月等送達すべきかどうか等の投与頻度に関する手引きを提供する。また、頻度および用量は、症状の重症度にも依存し得る。
【0108】
本発明の組成物は種々の形態で調製され得る。例えば、これらの組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注入物質として調製され得る。また、注入前に、液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に適した固形も調製することができる(例えば、防腐剤を含有する滅菌水と再構成される、シナジス(Synagis(登録商標))およびハーセプチン(Herceptin(登録商標))等の凍結乾燥された組成物)。本組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クリームまたは粉末として調製され得る。本組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤もしくはカプセルとして、スプレーとして、またはシロップ(任意に、香味づけたもの)として調製され得る。本組成物は、微粉末またはスプレーを使用して、肺内投与のために例えば吸入剤として調製され得る。本組成物は、坐薬または腟坐薬として調製され得る。本組成物は、経鼻、経耳、または経眼投与のために、例えば、ドロップとして調製され得る。本組成物は、組み合わされた組成物が、患者への投与直前に再構成できるように設計されたキット形態であり得る。例えば、凍結乾燥された抗体は、滅菌水または滅菌緩衝液を有するキット形態で提供することができる。
【0109】
本組成物中の有効成分が、抗体分子、抗体断片、またはその変異体および誘導体であることが理解されよう。したがって、それは、胃腸管における分解に影響されやすい。したがって、本組成物が胃腸管を用いた経路によって投与されるのであれば、本組成物は、分解から抗体を保護するが、それが胃腸管から吸収され次第、抗体を放出する薬物を含有する必要がある。
【0110】
薬学的に許容される担体についての詳細な説明は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,ISBN:0683306472において入手可能である。
【0111】
本発明の薬学的組成物は、通常、5.5から8.5の間のpHを有し、いくつかの実施形態において、6から8の間であり得、さらなる実施形態においては7であり得る。緩衝液の使用によりpHを維持することができる。本組成物は、無菌であり得るか、および/またはピロゲンを含み得ない。本組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。一実施形態において、本発明の薬学的組成物は、密封容器中に入れて供給される。
【0112】
薬学的組成物は、本発明の1つもしくは複数の抗体、および/または本発明の抗体を結合するエピトープを含むポリペプチドの治療有効量、すなわち、所望の疾患もしくは状態を治療する、寛解させる、もしくは予防するのに十分な、または検出可能な治療効果を呈するのに十分な量を含む。また、治療効果は、身体症状の軽減も含む。任意の特定の対象に対する正確な有効量は、対象のサイズおよび健康、症状の性質および程度、ならびに投与のために選択された治療薬または治療薬の組み合わせに依存する。所与の状況に対する有効量は、日常的な実験によって決定され、臨床従事者の判断内にある。本発明の目的で、有効用量は、概して、投与される個人において、約0.01mg/kgから約50mg/kg、または約0.05mg/kgから約10mg/kgの本発明の組成物である。既知の抗体ベースの医薬品は、この点における手引きを提供し、例えば、ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)は、21mg/mLの溶液の静脈内注入によって投与され、初期負荷用量は体重1kgあたり4mgであり、毎週の維持量は体重1kgあたり2mgであり、リツキサン(Rituxan)(登録商標)は、375mg/mを毎週投与される等である。
【0113】
一実施形態において、薬学的組成物は、本発明の2種以上の(例えば2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種等)抗体を含むことができる。別の実施形態において、本組成物は、2種以上(例えば2種、3種、4種、5種等)の抗体を含み、第1の抗体は第1のDENVエピトープに特異的であり、第2の抗体は第2のDENVエピトープに特異的である。さらに別の実施形態において、薬学的組成物は、本発明の3種の抗体を含む。別の実施形態において、本組成物は、2種以上のデングウイルス血清型をともに中和する、2種以上(例えば2種、3種、4種、5種等)の抗体を含む。さらに別の実施形態において、本発明の2種以上の抗体は、4種すべてのデングウイルス血清型、DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4をともに中和する。さらなる実施形態において、本発明の2種以上の抗体は、各デングウイルス血清型上の少なくとも2つの明確に異なるエピトープに結合することによって、4種のすべてのデングウイルス血清型をともに中和する。
【0114】
デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因となることなく、デングウイルスを中和する薬学的組成物において使用するための本発明の例示的な抗体には、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
一実施形態において、薬学的組成物は、本発明の2つの例示的な抗体、例えば、HMB−DV3およびHMB−DV7、HMB−DV3およびHMB−DV9、HMB−DV3およびHMB−DV12、HMB−DV3およびHMB−DV14、HMB−DV6およびHMB−DV7、HMB−DV6およびHMB−DV8を含む。別の実施形態において、薬学的組成物は、本発明の3つの例示的な抗体、例えば、HMB−DV2、HMB−DV3、およびHMB−DV6;HMB−DV2、HMB−DV6、およびHMB−DV8;HMB−DV2、HMB−DV8、およびHMB−DV9;HMB−DV2、HMB−DV8、およびHMB−DV12;HMB−DV2、HMB−DV8、およびHMB−DV14;HMB−DV5、HMB−DV6、およびHMB−DV8を含む。本明細書の教示の基づき、当業者は、薬学的組成物において使用するための抗体の他の組み合わせを決定することができる。
【0116】
一実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV1またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV2またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV3またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV4またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV5またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV6またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV7またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0117】
さらに別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV8またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV9またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV10またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV11またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV12またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV13またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、抗体HMB−DV14またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0118】
本発明の抗体は、他の治療薬、例えば化学療法化合物、放射線療法等とともに、(組み合わせてまたは別個に)投与することができる。好ましい治療化合物には、抗ウイルス化合物が含まれる。かかる併用療法は、単独で投与する場合に、個々の治療薬に対する治療効果の相加的または相乗的向上を提供する。本明細書で使用される「相乗作用」という用語は、各それぞれの活性薬剤の個々の効果の和よりも大きい2つ以上の活性薬剤の併用効果を説明するために使用する。したがって、2つ以上の薬剤の併用効果が活性または工程の「相乗的阻害」をもたらす場合、活性または工程の阻害が、各それぞれの活性薬剤の阻害効果の和よりも大きいことを意図する。本明細書で使用される「相乗的治療効果」という用語は、2つ以上の治療の組み合わせで観察された治療効果を指し、治療効果(いくつかのパラメータのいずれかによって測定されたような)は、それぞれ個々の治療で観察された個々の治療効果の和よりも大きい。
【0119】
本発明の抗体を含む本発明の組成物では、これらの抗体は、本組成物中の総タンパク質の少なくとも50重量%(例えば60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%以上)を占め得る。したがって、これらの抗体は、精製された形態である。
【0120】
本発明は、医薬品を調製する方法を提供し、該方法は、(i)本発明の抗体を調製するステップと、(ii)精製した抗体を1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と混合するステップと、を含む。
【0121】
また、本発明は、医薬品を調製する方法も提供し、該方法は、抗体を1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と混合するステップを含み、その抗体は、本発明の形質転換されたB細胞から得られたモノクローナル抗体である。したがって、まずモノクローナル抗体を得、次いで医薬品を調製する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時間に行うことができる。
【0122】
治療目的のために抗体を送達することの代替として、核酸が対象内の原位置で発現され、所望の治療効果を提供できるように、目的のモノクローナル抗体(またはその活性断片)をコードする核酸(典型的にはDNA)を対象に送達することが可能である。適切な遺伝子治療法および核酸送達ベクターは、当該技術分野において知られている。
【0123】
本発明の組成物は、免疫原性組成物であり得、いくつかの実施形態においては、DENVエピトープを含む抗原を含むワクチン組成物であってもよい。本発明によるワクチンは、予防のため(つまり、感染を防止するため)または治療のため(つまり、感染を治療するため)のいずれかであり得る。
【0124】
組成物は、特に複数回投与形式でパッケージされる場合に、抗菌薬を含み得る。組成物は、界面活性剤、例えばTween80等のTween(ポリソルベート)を含むことができる。界面活性剤は、概して低レベル、例えば0.01%以下で存在する。組成物は、浸透圧を得るためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。10±2mg/mLのNaClの濃度が典型的である。
【0125】
組成物は、特に、それらが凍結乾燥されるか、またはそれらが、凍結乾燥された材料から再構成された材料を含む場合、糖アルコール(例えばマンニトール)、または二糖(例えばスクロースまたはトレハロース)を、例えば約15〜30mg/mL(例えば25mg/mL)で含み得る。凍結乾燥のための組成物のpHは、凍結乾燥前に約6.1に調製され得る。
【0126】
また、本発明の組成物は、1つもしくは複数の免疫調節剤も含み得る。一実施形態において、免疫調節剤のうちの1つもしくは複数は、アジュバントを含む。
【0127】
医学的治療および用途
本発明の抗体、抗原結合断片、その誘導体および変異体、またはカクテル、ならびに薬学的組成物は、DENV感染の治療、DENV感染の予防、またはDENV感染の診断のために使用することができる。
【0128】
診断方法は、抗体または抗体断片を試料と接触させることを含む。かかる試料は、例えば、唾液腺、肺、肝臓,膵臓、腎臓、耳、眼、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳または皮膚から取った組織試料であり得る。また、本診断方法は、抗原/抗体複合体の検出も含む。
【0129】
したがって、本発明は、治療における使用のための(i)本発明による抗体、抗体断片、もしくはその変異体および誘導体、(ii)本発明による不死化B細胞クローン、(iii)本発明の抗体に結合する能力を持つエピトープ、または(iv)本発明の抗体に結合するエピトープに結合する能力を持つ、好ましくは抗体であるリガンドを提供する。
【0130】
また、対象を治療する方法であって、その対象に(i)本発明による抗体、抗体断片、その変異体および誘導体、または薬学的組成物、あるいはリガンド、好ましくは本発明の抗体に結合するエピトープに結合可能な抗体を投与することを含む、方法も提供される。
【0131】
本発明はまた、DENV感染の予防または治療のための薬物の製造における、(i)本発明による抗体、抗体断片、またはその変異体および誘導体、(ii)本発明による不死化B細胞クローン、(iii)本発明の抗体に結合可能なエピトープ、あるいは(iv)リガンド、好ましくは本発明の抗体に結合可能なエピトープに結合する抗体の使用を提供する。
【0132】
本発明は、DENV感染の予防または治療のための薬物として使用するための薬学的組成物を提供する。また、患者の治療および/または患者の診断のための薬物の製造における、本発明の抗体、および/またはかかる抗体が結合するエピトープを含むタンパク質の使用も提供する。また、対象、例えば、ヒト対象を治療するための方法も提供する。本方法は、対象に治療有効量の本発明の組成物を投与するステップを含む。治療処置の有効性を確認する一方法は、本発明の組成物の投与後に、疾患症状を監視するステップを包含する。治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールで実施できる。
【0133】
一実施形態において、本発明による抗体、抗体断片、抗体変異体、エピトープ、または薬学的組成物は、かかる治療を必要とする対象に投与される。かかる対象には、特にDENV感染の危険性があるか、またはDENVに感染し易い対象が含まれるが、それに限定されない。
【0134】
本発明の抗体は、受動免疫において使用することができる。本発明に記載される抗体およびその断片もしくは変異体、あるいは抗体または抗体断片もしくは変異体をコードする核酸はまた、デングウイルス感染を診断するためのキットにおいても使用することができる。
【0135】
本発明の抗体、例えば、モノクローナル抗体HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14に結合する能力を持つエピトープは、防御的抗DENV抗体の存在を検出することによりワクチン接種法の効率を監視するためのキットにおいて使用することができる。
【0136】
また、本発明に記載される抗体、抗体断片、またはその変異体および誘導体は、所望の免疫原性を有するワクチン製造を監視するためのキットにおいて使用することもできる。
【0137】
本発明はまた、薬学的組成物を調製する方法を提供し、該方法は、モノクローナル抗体を1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と混合するステップを含み、このモノクローナル抗体は、本発明の発現宿主から得られたモノクローナル抗体である。したがって、まずモノクローナル抗体(例えばそれを発現するおよび/またはそれを精製する)を得て、次いでそれを薬学的担体と混合する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時間に行うことができる。
【0138】
本発明の形質転換されたB細胞から始めて、培養、継代培養、クローニング、サブクローニング、配列決定、核酸調製等の種々のステップを、各ステップで任意の最適化を用い、形質転換されたB細胞によって発現される抗体を永続化させるために行うことができる。好ましい実施形態において、上記の方法は、抗体をコードする核酸に適用される最適化の技術(例えば、親和性成熟または最適化)をさらに含む。本発明は、そのようなステップ時に使用および調製されるすべての細胞、核酸、ベクター、配列、抗体等を包含する。
【0139】
これらのすべての方法において、発現宿主内で使用される核酸は、ある種の核酸配列を挿入、欠失、または修正するように、操作され得る。かかる操作からの変更には、制限酵素部位を導入するため、コドン使用頻度を変更するため、転写および/または翻訳制御配列を追加または最適化するため等の変更が含まれるが、これらに限定されない。また、コードされたアミノ酸を変化させるために、核酸を変更することも可能である。例えば、抗体のアミノ酸配列に1つもしくは複数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個等)のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を導入するために有用であり得る。このような点変異は、エフェクター機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原性等を修飾することができるか、共有結合基(例えば標識)の結合のためにアミノ酸を導入することができるか、またはタグ(例えば精製目的で)を導入することができる。変異は、特異的部位に導入することができるか、または、ランダムに、その後の淘汰(例えば、分子進化)により導入することができる。例えば、本発明の抗体のCDR領域、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域のうちのいずれかをコードする1つもしくは複数の核酸に、無作為にまたは一方向に変異を導入して、コードしたアミノ酸に異なる特性をもたらすことができる。かかる変化は反復工程の結果であり得、最初の変化は保持されて、他のヌクレオチドの位置で新しい変化が導入される。さらに、独立したステップにおいて達成される変化を組み合わすことができる。コードされたアミノ酸にもたらされる異なる特性は、親和性の増大を含むが、これに限定されない。
【0140】
一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、ならびに「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、独占的にXからなるか、または、例えばX+Y等の何らかの付加的なものを含み得る。
【0141】
「実質的に」という用語は「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない可能性がある。必要であれば、「実質的に」という用語は本発明の定義から省略されてもよい。
【0142】
数値xに関連する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0143】
本明細書で用いる「疾患」という用語は、概して、正常機能を損ない、そして、典型的には、特徴的な徴候および症状によって顕在化し、ヒトもしくは動物の正常機能を損なわせる、ヒトもしくは動物の体の、またはその一部の異常な状態をすべてが反映するという点で、「障害」および「症状」(医学的症状等の場合)という用語と変換可能であり、それらと同じ意味で使用されることが意図されている。
【0144】
本明細書で使用される、患者の「治療」への言及は、予防および予防法、ならびに療法を含むことを意図する。「患者」という用語は、ヒトを含むすべての哺乳動物を意味する。概して、患者はヒトである。
【実施例】
【0145】
実施例
以下の実施例において、本発明の例示的な実施形態を提供する。以下の実施例は、単なる例示目的として、本発明を使用する当業者の補助となるように提示される。本実施例は、本発明の範囲を多少なりとも制限することを意図するものではない。
【0146】
実施例1.不死化B細胞のクローニングおよびデングウイルスに特異的なAbの識別のためのスクリーニング
メモリー不死化B細胞をDENV免疫ドナーの血液から単離し、参考文献に記載されるようにEBVおよびCpGを使用して不死化した。簡潔に述べると、IgGメモリー不死化B細胞を、CD22ビーズを使用して単離し、その後、特異的抗体および細胞選別により、IgM、IgD、IgA不死化B細胞を除去した。CpG2006の存在下において、分類した細胞(IgG)をEBVで不死化し、同種単核細胞を照射した。SO−50メモリー不死化B細胞をそれぞれ含有する同型培養物を、いくつかの96ウェルU字形底プレートに配置した。2週間後、培養上清を収集し、免疫蛍光分析によって、血清型1、2、3、または4のDENVに感染したC6/36細胞を染色するそれらの能力、および/またはELISAによって、組換えDENV1−4 E2タンパク質に結合するそれらの能力について試験した。上清を、VERO細胞またはDC−SIGNをトランスフェクトしたRaji細胞のいずれかのDENV感染を中和するそれらの能力、およびK562細胞の感染を増強させるそれらの能力について試験した。不死化B細胞クローンを、すでに記載したように、陽性のポリクローナル培養物から単離した[28]。IgG特異的ELISAを用いて、選択されたクローンの上清中のIgG濃度を決定した。
【0147】
実施例2.不死化B細胞からのヒトmAbはデングウイルスタンパク質を認識し、感染を中和する。
ウイルス中和およびウイルス増強アッセイのために、滴定量の血清型1、2、3、または4の弱毒化DENVを、等容積の培養上清と混合した。使用したウイルスおよび感染多重度(MOI)は、rDENlΔ30(03JB186−1A+V2)MOI 0.04、rDEN2/4Δ30(04JBV351−1A−V2)MOI 0.04、rDEN3/4Δ30(DEN3#107C)MOI 0.02、rDEN4Δ30(06JBV591−V3+lAl+v2)MOI 0.04であった。室温で1時間インキュベーションした後、混合物を、96ウェルの平底プレート中の標的細胞(例えばVERO細胞、DC−SIGN−Raji細胞、またはK562細胞)に添加し、37℃で72〜96時間インキュベートした。次いで、その細胞を、デングウイルス1−4 Eタンパク質(クローン4G2)に対するマウスモノクローナル抗体、その後フルオレセイン標識ヤギ抗マウスIgで染色し、FACSによって分析した。中和力価は、DENV感染の50%減少をもたらす抗体の濃度(μg/mL)として示される。
【0148】
モノクローナル抗体によって認識される標的抗原の識別のために、デングウイルスEタンパク質ドメインIIIもしくはドメインI−IIを示す酵母は、モノクローナル抗体、その後Cy5標識ヤギ抗ヒトIgG抗体で染色し、FACSによって分析した。DENV感染細胞の可溶化液を使用して、ウエスタンブロット実験を行った。
【0149】
表3は、3つの異なる種類の抗体が識別されたことを示す。これらには、Eタンパク質のドメインIII(DIII)に特異的であるもの、Eタンパク質のドメインI−II(DI−II)に特異的であるもの、およびprMに特異的であるものが含まれる。これらの抗体は、4つの異なるDENV血清型との異なる程度の交差反応を示し、それらの抗体が結合するこれらの血清型を中和する。
表3.中和抗デングウイルス抗体の標的抗原特異性
【表3】

表4は、VERO細胞およびDC−SIGNトランスフェクトRaji細胞に対するウイルス中和アッセイの結果を示す。
表4.抗体によるデングウイルス(血清型DENV1〜DENV4)の中和
【表4】

ND:測定せず
【0150】
実施例3.Fc領域に変異を有する中和組換え抗デングウイルス抗体はK562細胞へのウイルス感染を増強させない。
デングウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)は、文献に記載されている。この特性は、臨床現場での使用に、抗デングウイルス抗体の治療有効性を制限しかねない。したがって、抗体HMB−DV−5、HMB−DV−6、およびHMB−DV−8を発現する不死化B細胞株からmRNAを単離し、オリゴ−dT特異的プライマーを使用してcDNAを合成し、重鎖および軽鎖の可変領域を配列決定し、特異的プライマーを使用して発現ベクターにクローン化した。組換え発現のために、ベクターを宿主細胞にトランスフェクトした。また、野生型IgG1抗体の組換え産生のために、部位特異的変異誘発を用いて天然ロイシンの場所にアラニンを置換することによってそれぞれの重鎖をCH2ドメインのアミノ酸4および5で変異させ、それにより各抗体のLALA変異体を作製した。組換え野生型抗体および変異抗体の両方を、発現細胞系から回収し、精製した。野生型IgG1抗デングウイルス抗体およびLALA変異体はともに、同程度、標的タンパク質に結合した(データ表示なし)。
【0151】
ウイルス中和および増強を、上記のようにVERO細胞およびK562細胞について判定した。3つの抗体はそれぞれ、明確な分子標的、ならびに血清型標的を有する(表3を参照)。図1は、非修飾組換え抗体が、用量依存的にVERO細胞の標的ウイルス感染を中和することを示す(点線)。デングウイルスによって効率的には感染されない細胞系である、K562細胞では、非修飾抗体は、中和に必要とされるものより概して高い濃度で、ウイルス感染の増強を示す(実線)。この実験を、各抗体のLALA変異体を使用して繰り返した。図2は、組換え抗デングウイルス抗体のLALA変異体のそれぞれも、用量依存的にVERO細胞上で標的ウイルスを中和したことを示す(点線)。しかしながら、LALA抗体のそれぞれは、K562細胞上で、感染の抗体依存性増強の証拠を示さなかった(実線)。用量反応が、K562細胞では、本実験で使用された抗体の濃度で平坦であり、その線は、X軸に非常に近接しているように見えることに留意されたい。
【0152】
本明細書で参照されるすべての特許および刊行物は、参照することにより、それらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0153】
本発明を実施する代替の様式が存在すること、また、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく種々の変更を行うことが可能であることに留意されたい。したがって、本実施形態は、制限的なものではなく、例示的なものとして見なされるべきであり、本発明は、本明細書に提示した詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で修正され得る。
【0154】
参考文献(その内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる)
[1]Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol.27(1):55−77.
[2]Lefranc et al.(1997)Immunology Today,18:509.
[3]Lefranc(1999)The Immunologist,7:132−136.
[4]米国特許第4,676,980号
[5]米国特許第4,831,175号
[6]米国特許第5,595,721号
[7]国際公開第00/52031号
[8]国際公開第00/52473号
[9]米国特許第4,766,106号
[10]米国特許第4,179,337号
[11]米国特許第4,495,285号
[12]米国特許第4,609,546号
[13]Knauf et al.(1988)J.Bio.Chem.263:15064−15070
[14]Gabizon et al.(1982)Cancer Research 42:4734
[15]Cafiso(1981)Biochem Biophys Acta 649:129
[16]Szoka(1980)Ann.Rev.Biophys.Eng.9:467
[17]Poznansky et al.(1980)Drug Delivery Systems(R.L.Juliano,ed.,Oxford,N.Y.)pp.253−315
[18]Poznansky(1984)Pharm Revs 36:277
[19]Kohler,G.and Milstein,C.,1975,Nature 256:495−497.
[20]Kozbar et al.1983,Immunology Today 4:72.
[21]国際公開第2004/076677号
[22]Chapter 4 of Kuby Immunology(4th edition,2000;ASIN:0716733315
[23]Jones et al.Biotechnol Prog 2003,19(l):163−8
[24]Cho et al.Cytotechnology 2001,37:23−30
[25]Cho et al.Biotechnol Prog 2003,19:229−32
[26]米国特許第5,807,715号
[27]米国特許第6,300,104号
[28]Traggiai et al.(2004)Nat Med 10(8):871−875

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デングウイルスを中和するヒト抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因とはならない、ヒト抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
デングウイルスを中和するヒト抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、Fc領域に変異を含み、前記変異は、前記抗体のFc受容体への結合を減少させる、ヒト抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体の前記Fc領域は、CH2のL4A変異、CH2のL5A変異、または両方を含む、請求項1または2に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体は、モノクローナル抗体または組換え抗体である、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体は、2種、3種、または4種の異なるデングウイルス血清型のうちの1種以上のデングウイルスを中和する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
2種以上のヒト抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物であって、前記抗体またはその抗原結合断片は、各デングウイルス血清型上の少なくとも2つの明確に異なるエピトープに結合することによって、デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4を中和し、前記抗体は、デングウイルス感染の抗体依存性増強の一因とはならない、薬学的組成物。
【請求項7】
デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3、およびDENV−4を中和する3種以上のヒト抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ、前記抗体のFc受容体への結合を減少させるFc領域内の変位を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合断片のそれぞれの前記Fc領域は、CH2のL4A変異、CH2のL5A変異、または両方を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体または組換え抗体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
配列番号1〜6、17〜22、33〜38、49〜54、67〜72、83〜88、99、100、105〜110、121〜123、124、125、135〜139、149、153〜158、169〜174、185〜188、または189のうちのいずれか1つの配列を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)配列を含む、抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、デングウイルス感染を中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号1、17、33、49、67、83、105、121、135、149、153、169、および185からなる群から選択される重鎖CDR1と、配列番号2、18、34、50、68、84、106、122、136、154、170、および186からなる群から選択される重鎖CDR2と、配列番号3、19、35、51、69、85、107、123、137、155、171、および187からなる群から選択される重鎖CDR3と、を含み、前記抗体は、デングウイルス感染を中和する、請求項1、2、または11に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項13】
配列番号4、20、36、52、70、86、99、108、138、156、172、および188からなる群から選択される軽鎖CDR1と、配列番号5、21、37、53、71、87、109、124、157、および173からなる群から選択される軽鎖CDR2と、配列番号6、22、38、54、72、88、100、110、125、139、158、174、および189からなる群から選択される軽鎖CDR3と、を含み、前記抗体は、デングウイルス感染を中和する、請求項1、2、または11に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項14】
CDRH1に配列番号1、CDRH2に配列番号2、CDRH3に配列番号3、CDRH1に配列番号17、CDRH2に配列番号18、およびCDRH3に配列番号19、CDRH1に配列番号33、CDRH2に配列番号34、およびCDRH3に配列番号35、CDRH1に配列番号49、CDRH2に配列番号50、およびCDRH3に配列番号51、CDRH1に配列番号67、CDRH2に配列番号68、およびCDRH3に配列番号69、CDRH1に配列番号83、CDRH2に配列番号84、およびCDRH3に配列番号85、CDRH1に配列番号105、CDRH2に配列番号106、およびCDRH3に配列番号107、CDRH1に配列番号121、CDRH2に配列番号122、およびCDRH3に配列番号123、CDRH1に配列番号135、CDRH2に配列番号136、およびCDRH3に配列番号137、CDRH1に配列番号149、CDRH2に配列番号136、およびCDRH3に配列番号137、CDRH1に配列番号153、CDRH2に配列番号154、およびCDRH3に配列番号155、CDRH1に配列番号169、CDRH2に配列番号170、およびCDRH3に配列番号171、ならびにCDRH1に配列番号185、CDRH2に配列番号186、およびCDRH3に配列番号187を含む重鎖を含む、請求項12に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項15】
CDRL1に配列番号4、CDRL2に配列番号5、CDRL3に配列番号6、CDRL1に配列番号20、CDRL2に配列番号21、CDRL3に配列番号22、CDRL1に配列番号36、CDRL2に配列番号37、CDRL3に配列番号38、CDRL1に配列番号52、CDRL2に配列番号53、CDRL3に配列番号54、CDRL1に配列番号70、CDRL2に配列番号71、CDRL3に配列番号72、CDRL1に配列番号86、CDRL2に配列番号87、CDRL3に配列番号88、CDRL1に配列番号99、CDRL2に配列番号53、CDRL3に配列番号100、CDRL1に配列番号108、CDRL2に配列番号109、CDRL3に配列番号110、CDRL1に配列番号70、CDRL2に配列番号124、CDRL3に配列番号125、CDRL1に配列番号138、CDRL2に配列番号109、CDRL3に配列番号139、CDRL1に配列番号156、CDRL2に配列番号157、CDRL3に配列番号158、CDRL1に配列番号172、CDRL2に配列番号173、CDRL3に配列番号174、ならびにCDRL1に配列番号188、CDRL2に配列番号37、CDRL3に配列番号189を含む軽鎖を含む、請求項13に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項16】
CDRL1に配列番号4、CDRL2に配列番号5、CDRL3に配列番号6、CDRL1に配列番号20、CDRL2に配列番号21、CDRL3に配列番号22、CDRL1に配列番号36、CDRL2に配列番号37、CDRL3に配列番号38、CDRL1に配列番号52、CDRL2に配列番号53、CDRL3に配列番号54、CDRL1に配列番号70、CDRL2に配列番号71、CDRL3に配列番号72、CDRL1に配列番号86、CDRL2に配列番号87、CDRL3に配列番号88、CDRL1に配列番号99、CDRL2に配列番号53、CDRL3に配列番号100、CDRL1に配列番号108、CDRL2に配列番号109、CDRL3に配列番号110、CDRL1に配列番号70、CDRL2に配列番号124、CDRL3に配列番号125、CDRL1に配列番号138、CDRL2に配列番号109、CDRL3に配列番号139、CDRL1に配列番号156、CDRL2に配列番号157、CDRL3に配列番号158、CDRL1に配列番号172、CDRL2に配列番号173、CDRL3に配列番号174、ならびにCDRL1に配列番号188、CDRL2に配列番号37、CDRL3に配列番号189を含む軽鎖を含む、請求項14に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項17】
配列番号13、29、45、61、65、79、95、117、131、145、151、165、181、または195のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列相同性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1、2、または11に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項18】
配列番号14、30、46、62、80、96、103、118、132、146、166、182、または196のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列相同性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1、2、または11に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号13、29、45、61、65、79、95、117、131、145、151、165、181、または195のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、前記抗体は、配列番号14、30、46、62、80、96、103、118、132、146、166、182、または196のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1、2、または11に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号61のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号96のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号117のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号131のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号132のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号145のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号151のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号165のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号166のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号182のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号195のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、前記抗体は、デングウイルス感染を中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
前記1つもしくは複数の抗体は、HMB−DV1、HMB−DV2、HMB−DV3、HMB−DV4、HMB−DV5、HMB−DV6、HMB−DV7、HMB−DV8、HMB−DV9、HMB−DV10、HMB−DV11、HMB−DV12、HMB−DV13、およびHMB−DV14からなる群から選択される、請求項1、2、6、または11に記載の抗体。
【請求項22】
前記抗体は、モノクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、またはscFvである、前述の請求項のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項23】
前述の請求項のいずれか1項に記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片は、デングウイルス感染を中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
前述の請求項のいずれか1項に記載の抗体と交差競合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片は、デングウイルス感染を中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
上記請求項のいずれか1項に記載の1つもしくは複数の抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む、核酸分子。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドの配列が、配列番号7〜12、15、16、23〜28、31、32、39〜44、47、48、55〜60、63、64、66、73〜78、81、82、89〜94、97、98、101、102、104、111〜116、119、120、126〜128、129、130、133、134、140〜143、144、147、148、150、152、159〜164、167、168、175〜180、183、184、190〜193、194、197、および198の核酸配列と少なくとも70%相同である、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を発現する、細胞。
【請求項28】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体を発現する、不死化B細胞クローン。
【請求項29】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体に結合するエピトープを含む、単離または精製された免疫原性ポリペプチド。
【請求項30】
請求項29に記載のエピトープを含む、免疫原性ポリペプチド。
【請求項31】
請求項1〜5もしくは11〜24のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体、もしくはその抗原結合断片、請求項25もしくは請求項26に記載の核酸、または請求項30に記載の免疫原性ポリペプチドと、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体と、任意で、前記抗体またはその抗原結合断片の半減期を延長させるために有用な薬剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項32】
薬学的に許容される希釈剤もしくは担体と、任意で、抗体またはその抗原結合断片の半減期を延長させるために有用な薬剤と、をさらに含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
第1のエピトープに特異的な第1の抗体またはその抗原結合断片と、第2のエピトープに特異的な第2の抗体またはその抗原結合断片と、を含む、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
デングウイルス感染またはデングウイルス関連疾患を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、請求項1〜5もしくは11〜24のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項6〜10もしくは31〜33のいずれか1項に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項35】
第2の治療薬の投与をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の治療薬は、抗ウイルス剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
デングウイルス感染またはデングウイルス関連疾患を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、第1のエピトープに特異的な、請求項1〜5または11〜24のいずれか1項に記載の第1の抗体またはその抗原結合断片と、第2の異なるエピトープに特異的な、第2の抗体またはその抗原結合断片とを投与するステップを含む、方法。
【請求項38】
デングウイルス感染またはデングウイルス関連疾患の治療方法であって、かかる治療を必要とする患者を識別するステップと、前記患者に、治療有効量の、請求項1〜5もしくは11〜24のいずれか1項に記載の精製された中和ヒトモノクローナル抗体もしくは抗体断片、または請求項6〜10もしくは31〜33のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与するステップと、を含む、方法。
【請求項39】
前記治療は、前記抗体またはその抗原結合断片のうちの2種以上の投与を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記治療は、前記抗体またはその抗原結合断片のうちの3種以上の投与を含む、請求項38に記載の方法
【請求項41】
デングウイルスに対抗する免疫学的応答を誘発することができるポリペプチドをスクリーニングする方法であって、請求項1〜5または11〜24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を使用して、ポリペプチドライブラリーをスクリーニングするステップを含む、方法。
【請求項42】
抗デングウイルスワクチンの品質を監視する方法であって、前記ワクチンの抗原が、正しい構造の特異的エピトープを含有することを確認するための、請求項1〜5または11〜24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用を含む、方法。
【請求項43】
請求項1〜5または11〜24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片に特異的に結合するエピトープを含む、ワクチン。
【請求項44】
(i)デングウイルス感染の治療のための薬物の製造における、(ii)ワクチンにおける、または(iii)デングウイルス感染の診断における、請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体、もしくはその抗原結合断片、請求項25もしくは請求項26に記載の核酸、請求項30に記載の免疫原性ポリペプチド、または請求項6〜10もしくは31〜33のいずれか1項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項45】
前記ワクチンの前記抗原が、正しい構造の特異的エピトープを含有することを確認することによって、抗デングウイルスワクチンの品質を監視するための、請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片の使用。
【請求項46】
(i)治療における、(ii)デングウイルス感染を治療するための薬物の製造における、(iii)ワクチンとして、または(iv)デングウイルス感染を中和することができるリガンドのスクリーニングにおける使用のための、請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片に特異的に結合する、エピトープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−504955(P2012−504955A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530592(P2011−530592)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007372
【国際公開番号】WO2010/043977
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511017287)インスティテュート・フォー・リサーチ・イン・バイオメディシン (4)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR RESEARCH IN BIOMEDICINE
【Fターム(参考)】