説明

データコードの格納及び読み出しを行う方法及びデータキャリア

データコードの格納及び読み出しを行う方法及びデータキャリアであって、導電性材料の少なくとも2つのインフォメーショントラックが、少なくとも2つのインフォメーショントラックを並行して読み出すことにより、データコードを形成するクロック信号及びデータ信号を決定するように、基板に印刷される。クロック信号は、インフォメーショントラックの論理和により形成され、データコードは、クロック信号を考慮してインフォメーショントラックを解釈することにより決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に印刷された導電性材料のインフォメーショントラックを少なくとも2つ有するデータコードを格納する方法及びデータキャリアに関する。インフォメーショントラックは、データ信号及びクロック信号の両方を含む。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、2次元の導電性構造からの容量性の読み出し方法を開示する。しかしながら、この構造を読み出すには、読み出すデータキャリアのフィードレートが一定である必要があり、この方法では速度が可変である場合に確実に情報を読み出すことができない。
【0003】
下記特許文献2は、一方が純粋なデータ信号であり、他方が純粋なクロック信号である2つのインフォメーショントラックを有するデータキャリアを開示する。データ信号を含むインフォメーショントラックは、導電性が異なるラインシーケンスも含む。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0422481号明細書
【特許文献2】国際公開第06/108913号パンフレット
【0004】
本発明は、基板に印刷された導電性材料のインフォメーショントラックを少なくとも2つ有するデータコードを格納する方法及びデータキャリアの改善における課題に対処する。改善とは具体的には、基板のフィードレートが不均一、例えば、リーディングデバイスにデータキャリアを手動で挿入していても、データコードを確実に読み出すように大容量のストレージを提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1及び8の特徴による本発明によって解決される。
【0006】
データコードを格納及び読み出す本発明の方法では、導電性材料の少なくとも2つのインフォメーショントラックを基板に印刷し、少なくとも2つのインフォメーショントラックを並行に読み出すことで、データコードを形成するクロック信号及びデータ信号を決定する。ここでのクロック信号は、インフォメーショントラックの論理和により形成し、データコードは、クロック信号を考慮してインフォメーショントラックを解釈することで決定する。
【0007】
データコードを格納する本発明のデータキャリアは、基板に印刷された導電性材料の少なくとも2つのインフォメーショントラックを備える。インフォメーショントラックは、データ信号及びクロック信号の両方を含む。ここでのクロック信号は、インフォメーショントラックの論理和により形成し、データコードは、クロック信号を考慮してインフォメーショントラックを解釈することで決定する。
【0008】
特許文献2の先行技術によると、インフォメーショントラックはクロック信号にのみ設けられているが、本発明によると、全てのインフォメーショントラックをデータ信号に用いることができる。このように、2つのインフォメーショントラックにより、2倍のストレージ容量が利用可能となる。
【0009】
従属クレームの主題は、本発明の更なる実施形態である。
【0010】
好ましい例示的な実施形態によると、導電性材料は、導電性ポリマー、特にPEDOTまたはPANIを備える。インフォメーショントラックは、特にラインシーケンスを形成してよい。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によると、クロック信号は、インフォメーショントラックの論理和及び不連続部分の補間によって形成し、データコードは、クロック信号を考慮してインフォメーショントラックを解釈することで決定する。
【0012】
インフォメーショントラックがクロック信号を含むため、インフォメーショントラックが不均一なフィードレートで読み出されても、データキャリアのデータコードを正確に決定できる。
【0013】
以下では、例示的な実施形態及び図面によって、本発明の更なる利点及び構造を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リーダユニットを備えた、先行技術のデータキャリアの概略を示す。
【0015】
【図2】図1のデータキャリアにおいて、結果のデータコードと共に読み出されたインフォメーショントラックの信号波形を示す。
【0016】
【図3】リーダユニットを備えた、第1の例示的実施形態のデータキャリアの概略を示す。
【0017】
【図4】図3の例示的実施形態において、結果のデータコードと共に読み出された、インフォメーショントラックの信号波形を示す。
【0018】
【図5】リーダユニットを備えた、第2の例示的実施形態のデータキャリアの概略を示す。
【0019】
【図6】図5の例示的実施形態において、結果のデータコードと共に読み出された、インフォメーショントラックの信号波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の先行技術は、印刷された導電性材料の2つのインフォメーショントラック2及び3を有するデータキャリア1を示す。インフォメーショントラック2は、クロックトラックを形成し、インフォメーショントラック3は、データトラックを形成する。さらに、2つのインフォメーショントラックの間に基準トラック8が設けられる。全てのインフォメーショントラックは、ラインシーケンスの形状であり、インフォメーショントラック3は、バイナリコードである。
【0021】
リーダユニット4は、クロック電極5、中間電極6データ電極7を有し、データキャリアを読み出す。ここではこれらの電極が、インフォメーショントラック2(クロックトラック)、基準トラック8及びインフォメーショントラック3(データトラック)をそれぞれキャプチャするよう設けられる。読み出しは、容量性の結合で行われてよい。
【0022】
インフォメーショントラック2の読み出しには、クロック電極5及び中間電極6を用い、インフォメーショントラック3の読み出しには、データ電極7及び中間電極6を用いる。読み出し操作の間、データキャリア1は、リーダユニット4に矢印9の方向で挿入される。
【0023】
例えば、図2に示すクロック信号10及びデータ信号11は、それぞれインフォメーショントラック2及び3から可変の読み出し速度で生成される。その後、可変のクロック信号を考慮したデータ信号の正しい解釈により、バイナリデータコード12:01011101が生成される。一方で、データ信号11のみが存在し、クロックサイクルが固定であった場合には、誤ったバイナリコード:0100000110000が取得される。
【0024】
図1及び図2が示す先行技術の場合、クロックはダイレクトである。以下では、本発明によるデータ信号からのクロックリカバリを2つの例示的実施形態で詳細に説明する。
【0025】
データキャリア1は、図3の第1の例示的実施形態においてもまた、2つのインフォメーショントラック2及び3、さらに基準トラック8を有し、リーダユニット4の第1電極13、第2電極14及び中間電極15でこれらを読み出すことができる。
【0026】
ここでも読み出し速度が可変であると仮定すると、2つのインフォメーショントラック2及び3から図4に示すデータ信号16及び17を取得する。第1データ信号16および/または第2データ信号17の1クロックサイクル中に「1」のステートが少なくとも1回存在する場合、2つのデータ信号16及び17を論理和することでデータのクロックを再構築できる。図4に結果のクロック信号18を示す。
【0027】
結果として、2つのインフォメーショントラック2及び3により、合計3つのステート(「01」、「10」及び「11」)を区別することができる。一方で、2つのインフォメーショントラックを有する同期方法によれば、4つのステート(「00」、「01」、「10」及び「11」)を区別することができる。つまり、n本のインフォメーショントラックで、クロックリカバリを犠牲にすることなく、2−1のステートを区別することができる。これは、各クロックサイクル中にインフォメーショントラック2及び3の両方に「0」のステートが同時に存在することを排除する必要があることを意味する。
【0028】
なお、コーディングのため、第1の例示的実施形態を応用して両方のインフォメーショントラックで同時に「0」のステートを許容してよい。図5及び6から明らかなように、データ信号20及び21は、それぞれインフォメーショントラック2及び3により決定し、クロック信号22は論理和により決定する。クロック信号22は、2つのインフォメーショントラック2及び3に同時に存在する「0」のステートに起因する不連続部分25及び26を有する。これらの不連続部分は、前後のクロックパルスの補間によって補充され、結果として再構築されたクロック信号23をもたらす。
【0029】
データコード27は、2つのデータ信号20及び21と再構築されたクロック信号23とによって決定され、合計4つのステートを区別することができる。
【0030】
PEDOTまたはPANIなどの特定の導電性ポリマーは、導電性材料であるとみなしてよい。大量印刷方法、特に凸版印刷、凹版印刷、または平版印刷で導電性材料を印刷できれば、データキャリア製造の費用効率は極めて高い。複数のインフォメーショントラックは、データ信号及びクロック信号の両方を含むため、読み出し速度が可変であっても、印刷されたデータキャリアを正確に読み出すことができる。
【0031】
第2の例示的実施形態における補間が機能するには、インフォメーショントラックが特定の要件に準じる必要がある。つまり、不完全なクロック信号22の不連続部分が、補間による補充では対応不可能なほど大きくなってしまうため、インフォメーショントラックの同時の「0」のステートは、連続して任意に頻発してはならない。この要件は、印刷されたインフォメーショントラックの生成段階または個別化段階から考慮する必要がある。
【0032】
さらに、この方法では読み出し速度の最大変化量に制限がある。読み出し速度が急激に変化した場合、不連続部分においてクロックの真の特性が再構築されない場合がある。「0」のステートがどのような頻度で連続して発生してよいかの規定は、方法のアプリケーション毎に新たに確立する必要がある。これは、読み出し速度がどれだけ速く変化できるかによるところが大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データコードの格納及び読み出し方法であって、
導電性材料の少なくとも2つのインフォメーショントラック(2、3)が、前記少なくとも2つのインフォメーショントラックを並行して読み出すことで、前記データコードを形成するクロック信号(10、18、23)とデータ信号(11、16、17、20、21)とを決定するように基板に印刷されており、
前記クロック信号(18、22)は、前記インフォメーショントラック(2、3)の論理和により形成され、前記データコード(19、27)は、前記クロック信号を考慮して前記インフォメーショントラック(2、3)を解釈することにより決定される方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのインフォメーショントラック(2、3)が、前記インフォメーショントラック(2、3)の両方に「0」のステートが同時に存在することが排除されるように構築される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロック信号(23)が、前記インフォメーショントラック(2、3)の前記論理和と不連続部分の補間とにより決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インフォメーショントラック(2、3)の読み出し速度が可変である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性材料として、導電性ポリマー、特にPEDOTあるいはPANIを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性材料が大量印刷方法、特に凸版印刷、凹版印刷あるいは平板印刷で印刷される、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記インフォメーショントラック(2、3)がバイナリコードで形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
データコード(13、19、27)を格納するデータキャリア(1)であって、
基板に印刷された導電性材料の少なくとも2つのインフォメーショントラック(2、3)を有し、
前記インフォメーショントラックは、データ信号(11、16、17、20、21)及びクロック信号(10、18、23)の両方を含み、
前記クロック信号(18、22)は、前記インフォメーショントラック(2、3)の論理和によって形成され、前記データコード(19、27)は、前記クロック信号を考慮して前記インフォメーショントラック(2、3)を解釈して決定する、データキャリア。
【請求項9】
前記導電性材料は、導電性ポリマー、特にPEDOTあるいはPANIを含む、請求項8に記載のデータキャリア。
【請求項10】
前記インフォメーショントラック(2、3)がラインシーケンスで形成される、請求項8に記載のデータキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−531496(P2010−531496A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513804(P2010−513804)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055568
【国際公開番号】WO2009/000589
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】