説明

データマッチング装置

【課題】同じ複数の評価項目についてそれぞれ評価値を有する2つのデータに関する適合度をより精度良く算出できるようにする。
【解決手段】同じ複数の評価項目毎に評価値を有する第1のデータおよび第2のデータからそれぞれレーダーチャートを生成し、第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積をx、第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積をy、両図形が重なる部分の面積をzとして、A=(y/x)×(z/x)なる演算によって第1のデータと第2のデータとのマッチング値Aを算出することにより、評価項目毎の評価値そのものを演算して求めた指標に基づいて2つのデータの適合度を評価していた従来技術と異なり、2つのデータについての適合度をデータの全体像を捉えて的確に評価できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データマッチング装置に関し、特に、同じ複数の評価項目についてそれぞれ評価値を有する2つのデータに関する適合度を表すマッチング値を求める技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インターネット等のネットワークを利用して、求人企業と求職者とをマッチングさせるシステムが提供されている。最も典型的なものは、仲介業者のウェブサイトに求人企業が業種、職種、勤務地、給与等の求人情報を提示し、求職者がこれを閲覧することにより、自分の希望に合うところを探し出すという仕組みのシステムである。求職者は、このシステムの機能を利用して、自分の希望に合う求人企業に応募メールを送信する。そして、求人企業は、応募メールを送信してきた求職者が自社の要望を満たす人材であるかを検討・判断する。この種のシステムにおいて、求人情報を登録した求人企業の中から求職者が自分の希望に合うところを探し出す際に、希望条件を検索キーワードとして入力して検索を行い、検索結果を閲覧できるようにしたものも存在する。
【0003】
また、求人企業が専門サイトから求人情報をサーバに登録する一方、求職者が専門サイトから履歴書情報をサーバに登録し、求人情報の各項目と履歴書情報の各項目との適合度を算出して数値化することにより、一定値以上の適合度を有する求人企業と求職者とをマッチングさせるシステムも提案されている。この種のマッチングシステムによれば、求職者が求人情報を閲覧して自分の希望に合うかどうかを検討したり、求人企業が履歴書情報を確認して自社の要望を満たす人材であるかどうかを検討したりすることなく、両者の要望に合った人材のマッチングを行うことができる。
【0004】
ところが、この種のマッチングシステムを用いても、実際に面接をしてみると要望通りの人材または企業ではなく、ミスマッチであったということが少なくない。それは、求人情報と履歴書情報だけでは、求人企業と求職者とを適切にマッチングさせるための判断材料としては不十分であるというのが1つの原因である。このような問題を解消するために、求人企業が人材に求める能力や性格などを求人情報に組み込む一方、履歴書情報の他に求職者の能力や性格などの情報を入力して両者のマッチングを図るようにしたシステムも提案されている。
【0005】
これ以外にも、ミスマッチを減らすための工夫をしたマッチングシステムが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1に記載のシステムでは、求人企業における社員および当該社員の上長による複数の診断項目(営業性格・資質に関するもの)に対する回答に基づき求人側データを作成する。一方、求職者による複数の診断項目(営業性格・資質に関するもの)に対する回答に基づき求職者側データを作成する。そして、これらのデータを照合して思考力評価と行動力評価の観点から適合度を算出するように成されている。
【0006】
特許文献2に記載のシステムでは、求職者および求人企業にそれぞれ対応する各求職者評価情報に基づき、評価項目毎に求職者の評価値と求人企業の評価値との差をとり、その絶対値を合計することによりマッチング指数を算出する。さらに、評価項目毎に求めた評価値の差の標準偏差値をマッチング優先指数として算出する。そして、マッチング指数およびマッチング優先指数に基づいてマッチング値を求めるように成されている。
【0007】
特許文献3に記載のシステムでは、仲介業者の専門サイトから求人企業が募集情報と希望情報をサーバに登録する一方、求職者が専門サイトから履歴書情報と希望情報をサーバに登録し、双方とも希望情報の中で優先したい項目に複数のランクを入力する。そして、求人企業の募集情報と求職者の希望情報とをマッチングさせて数値化する一方、求人企業の希望情報と求職者の履歴書情報とをマッチングさせて数値化して表示し、双方の数値の乖離度合いを見せることによって応募の際の判断材料に資するように成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−18274号公報
【特許文献2】特開2005−44280号公報
【特許文献3】特開2005−352925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜3を含む従来のマッチングシステムでは、求人企業および求職者のそれぞれについて複数の評価項目毎に評価値を求め、得られた各評価値から演算される演算値の大きさによって求人企業と求職者との適合度(または乖離度。以下同様)を求めていた。しかしながら、求められる適合度の精度は十分でないという問題があった。個々の評価項目毎に求めた評価値を演算して総合的な適合度を表す1つの指標を算出しているものの、その指標は、求人企業が求職者に要望する人物像と求職者の実際の人物像、あるいは、求職者が求人企業に要望する企業像と求人企業の実際の企業像とを、個々の評価項目毎に求めた評価値という点の集まりで評価したに過ぎないものだからである。
【0010】
このような問題は、求人企業と求職者との求人マッチングのみならず、ビジネスパートナー探しのビジネスマッチングや、交際相手探しの恋愛・結婚マッチングを行うシステムなどにも同様に存在する。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、同じ複数の評価項目についてそれぞれ評価値を有する2つのデータに関するの適合度をより精度良く算出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明では、同じ複数の評価項目についてそれぞれ評価値を有する第1のデータおよび第2のデータからそれぞれレーダーチャートを生成し、第1のデータから生成される第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、第2のデータから生成される第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、第1のレーダーチャートにより表わされる図形と第2のレーダーチャートにより表わされる図形とが重なる部分の面積を用いた演算によって、第1のデータと第2のデータとのマッチング値を算出する。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、評価項目毎の個別的な評価値から面積という2次元の概念を持ったレーダーチャートが生成され、2つのレーダーチャートの重なり度合いによって、マッチング対象とされる2つのデータのマッチング値が求められる。このため、評価項目毎の評価値を有するデータの全体像を面という形で捉えて2つのデータに関する適合度を評価することができる。これにより、評価項目毎の評価値そのものを演算して求めた指標に基づいて2つのデータの適合度を評価していた従来技術に比べて、同じ複数の評価項目に関する評価値を持つ2つのデータについての適合度をより精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態によるデータマッチング装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による第1のデータの一例を示す図である。
【図3】本実施形態による第2のデータの一例を示す図である。
【図4】本実施形態のマッチング値算出部によるマッチング値の算出方法を説明するための図である。
【図5】本実施形態のマッチング値算出部によるマッチング値の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるデータマッチング装置の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態では、マッチングしようとする2つの対象物のうち、一方の対象物(以下、第1の対象物という)が他方の対象物(以下、第2の対象物)に対して求める資質の要望情報を表した第1のデータと、第2の対象物の資質情報を表した第2のデータとをマッチングさせることをデータマッチングの一例として説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態によるデータマッチング装置10は、その機能構成として、第1のデータ入力部11、第2のデータ入力部12、第1のレーダーチャート生成部13、第2のレーダーチャート生成部14、マッチング値算出部15および表示部16を備えている。
【0017】
これらの各機能構成ブロック11〜16は、ハードウェア構成、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても実現することが可能である。例えばソフトウェアによって実現する場合、本実施形態のデータマッチング装置10は、実際にはコンピュータのCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。
【0018】
第1のデータ入力部11は、複数の評価項目毎に評価値を有する第1のデータを入力する。ここで、複数の評価項目は、複数の異なる資質を切り口として第2の対象物を評価するための項目である。この複数の評価項目は、第1の対象物から見た場合、第2の対象物に対して求める要望の内容を複数の異なる資質を切り口として設定するための項目となる。
【0019】
評価値は、それぞれの評価項目(資質)毎に設定した評価基準に沿って、第2の対象物に求める評価基準のクリア度合いを点数化したものである。例えば、第2の対象物が評価基準を全くクリアしていない場合を0点、完璧にクリアしている場合を満点(例えば、50点)として、それぞれの評価項目毎に評価基準のクリア度合いを点数化したものが評価値である。
【0020】
図2は、第1のデータの一例を示す図である。図2の例では、第1のデータは6個の評価項目を有し、それぞれの評価項目毎に、第1の対象物が第2の対象物に求める資質に関する評価基準のクリア度合いを50点満点で点数化した評価値が設定されている。評価値が大きい評価項目ほど、第1の対象物が第2の対象物に求める資質として重要度が高いことを示している。
【0021】
第1のデータ入力部11は、このような構成から成る第1のデータを入力するのであるが、本実施形態ではその入力方法は問わない。例えば、データマッチング装置10をインターネット(図示せず)に接続可能なように構成し、インターネット経由で外部から第1のデータを入力するようにしてもよい。また、インターネットに接続された端末装置(図示せず)に評価項目毎の評価値を入力するための入力画面を表示し、当該入力画面を通じてユーザにより付与される個々の評価値をインターネット経由で入力するようにしてもよい。あるいは、記録媒体に記憶された第1のデータを読み込むことによって入力するようにしてもよい。
【0022】
第2のデータ入力部12は、複数の評価項目毎に評価値を有する第2のデータを入力する。ここで、複数の評価項目は、第1のデータが有する複数の評価項目と同じである。ただし、この複数の評価項目は、第2の対象物から見た場合、第2の対象物自身を複数の異なる切り口から評価するための項目となる。つまり、この場合の評価値は、それぞれの評価項目毎に設定した評価基準に沿って第2の対象物を評価して点数化したものとなる。第2のデータも第1のデータと同様、第2の対象物が評価基準を全くクリアしていない場合を0点、完璧にクリアしている場合を50点満点として評価値が設定されている。
【0023】
図3は、第2のデータの一例を示す図である。図3に示すように、第2のデータも6個の評価項目を有し、それぞれの評価項目毎に、第2の対象物の資質に関する評価基準のクリア度合いを50点満点で点数化した評価値が設定されている。評価値が大きい評価項目ほど、第2の対象物がその資質をクリアしている基準が高いことを示している。
【0024】
第1のレーダーチャート生成部13は、第1のデータ入力部11により入力された第1のデータに基づいて、複数の評価項目を評価軸とする第1のレーダーチャートを生成する。第2のレーダーチャート生成部14は、第2のデータ入力部12により入力された第2のデータに基づいて、複数の評価項目を評価軸とする第2のレーダーチャートを生成する。
【0025】
マッチング値算出部15は、第1のレーダーチャート生成部13により生成された第1のレーダーチャートと、第2のレーダーチャート生成部14により生成された第2のレーダーチャートとに基づいて、第1のデータと第2のデータとのマッチング値を算出する。
【0026】
具体的には、第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積をx、第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積をy、第1のレーダーチャートにより表わされる図形と第2のレーダーチャートにより表わされる図形とが重なる部分の面積をzとした場合、マッチング値算出部15は、
A=(y/x)×(z/x) ・・・(式1)
なる演算によって第1のデータと第2のデータとのマッチング値Aを算出する。
【0027】
図4および図5は、マッチング値算出部15によるマッチング値Aの算出方法を説明するための図である。図4は、第1のレーダーチャート21により表わされる図形の面積x、および第2のレーダーチャート22により表わされる図形の面積yの求め方を示す図であり、第1のレーダーチャート21と第2のレーダーチャート22とを同じ評価軸上に重ねた状態を示している。
【0028】
ここで、評価項目1と評価項目2とで挟まれた領域が第1象限、評価項目2と評価項目3とで挟まれた領域が第2象限、評価項目3と評価項目4とで挟まれた領域が第3象限、評価項目4と評価項目5とで挟まれた領域が第4象限、評価項目5と評価項目6とで挟まれた領域が第5象限、評価項目6と評価項目1とで挟まれた領域が第6象限である。
【0029】
第1のレーダーチャート21により表わされる図形(本実施形態では六角形)の面積xのうち、第1象限の面積(三角形の面積。以下、第2〜第6象限について同様)の面積をx1、第2象限の面積をx2、第3象限の面積をx3、第4象限の面積をx4、第5象限の面積をx5、第6象限の面積をx6とした場合、第1のレーダーチャート21により表わされる図形の面積xは、各象限の三角形の面積x1〜x6を合計したものとなる。以下、xを全体面積、x1〜x6を部分面積と称する。
【0030】
マッチング値算出部15は、次の(式2)に示すように、各象限に含まれる三角形の部分面積x1〜x6をそれぞれ算出するとともに、それらを合計することによって、第1のレーダーチャート21により表わされる図形の全体面積xを求める。
x=x1+x2+x3+x4+x5+x6 ・・・(式2)
【0031】
なお、第1象限に含まれる三角形の部分面積x1は、第1のデータに関する評価項目1の評価値をpx1、評価項目2の評価値をpx2とした場合、次の(式3)により求められる。
x1=px1・px2・sinθ ・・・(式3)
ここで、θは評価項目1の軸と評価項目2の軸とが成す各度であるが、第1のレーダーチャート21は正六角形であるから、θ=60°である。第2象限から第6象限に含まれる三角形の部分面積x2〜x6も同様にして求められる。
【0032】
同様に、第2のレーダーチャート22により表わされる図形(本実施形態では六角形)の面積yのうち、第1象限の面積をy1、第2象限の面積をy2、第3象限の面積をy3、第4象限の面積をy4、第5象限の面積をy5、第6象限の面積をy6とした場合、第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積yは、各象限の三角形の面積y1〜y6を合計したものとなる。以下、yを全体面積、y1〜y6を部分面積と称する。
【0033】
マッチング値算出部15は、次の(式4)に示すように、各象限に含まれる三角形の部分面積y1〜y6をそれぞれ算出するとともに、それらを合計することによって、第2のレーダーチャート22により表わされる図形の全体面積yを求める。
y=y1+y2+y3+y4+y5+y6 ・・・(式4)
【0034】
なお、第1象限に含まれる三角形の部分面積y1は、第2のデータに関する評価項目1の評価値をpy1、評価項目2の評価値をpy2とした場合、次の(式5)により求められる。
y1=py1・py2・sinθ ・・・(式5)
第2象限から第6象限に含まれる三角形の部分面積y2〜y6も同様にして求められる。
【0035】
図5は、第1のレーダーチャート21により表わされる図形と第2のレーダーチャート22により表わされる図形とが重なる部分の面積z(以下、重なり面積という)の求め方を示す図である。マッチング値算出部15は、第1のレーダーチャート21により表わされる図形の面積xや、第2のレーダーチャート22により表わされる図形の面積yと同様、個々の象限毎に、第1のレーダーチャート21により表わされる図形と第2のレーダーチャート22により表わされる図形とが重なる部分の重なり面積z1〜z6を算出し、各象限の重なり面積z1〜z6を全て合計することによって全体の重なり面積zを求める。
【0036】
各象限の重なり面積z1〜z6を求める場合、隣り合う軸の評価項目の両方において第1のデータまたは第2のデータの何れか一方の評価値が大きい場合には、第1のレーダーチャート21に関する各象限の部分面積x1〜x6と第2のレーダーチャート22に関する各象限の部分面積y1〜y2のうち小さい方の面積が、その象限の重なり面積z1〜z6となる。図5の例では、第1象限の重なり面積z1および第3象限の重なり面積z3がこのケースに該当する。ここで、第1象限では第2のレーダーチャート22の部分面積y1が第1のレーダーチャート21の部分面積x1より小さいので、y1=z1となる。第3象限はこれとは逆に、x3=z3となる。
【0037】
一方、第2象限および第4象限から第6象限のように、隣り合う軸の評価項目のうち、一方の評価項目では第1のデータに関する評価値が大きくなり、他方の評価項目では第2のデータに関する評価値が大きくなる場合には、次のようにして重なり面積z2,z4〜z6を求める必要がある。例えば、第2象限の重なり面積z2を求める場合、レーダーチャートの軸中心点をO、第1のデータに関する評価項目2の評価値px2に対応する座標をPx2、評価項目3の評価値px3に対応する座標をPx3、第2のデータに関する評価項目2の評価値py2に対応する座標をPy2、評価項目3の評価値py3に対応する座標をPy3、第1のデータに関する2つの座標Px2,Px3を結ぶ辺a1と第2のデータに関する2つの座標Py2,Py3を結ぶ辺a2との交点をQとすれば、第2象限の重なり面積z2は、三角形OQPy2の面積と三角形OQPx3の面積との合計となる。
【0038】
ここで、軸中心点Oから交点Qまでの距離をrとした場合、第2象限の重なり面積z2は次の(式6)で表される。
z2=py2・r・sinθ1+px3・r・sinθ2 ・・・(式6)
なお、軸中心点Oと交点Qとを結ぶ直線a3と、第2象限の最外郭に相当する辺a4との交点をRとした場合、交点Rは辺a4をu1:u2に内分する内分点となる。ここで、θ1,θ2の大きさの比はu1,u2の長さの比と一致するため、θ1,θ2は次の(式7)で表すことができる。
θ1=60°・{u1/(u1+u2)}
θ2=60°・{u2/(u1+u2)} ・・・(式7)
【0039】
ここで、第2象限の重なり面積z2を求める際に必要となる変数u1,u2,rの求め方を説明する。まず、マッチング値算出部15は、軸とその長さで表されている評価値px2,px3,py2,py3をそれぞれ絶対座標Px2,Px3,Py2,Py3に変換する。例えば、評価値px2の絶対座標Px2を(Px2(x),Px2(y))で表すものとすると、評価値px2の絶対座標は次の(式8)のように表すことができる。
x2(x)=px2・cos(30°)=px2・(√3/2)
x2(y)=px2・sin(30°)=px2/2 ・・・(式8)
【0040】
残り3つの評価値px3,py2,py3の絶対座標Px3,Py2,Py3についても同様に、以下の(式9)〜(式11)のように表すことができる。
x3(x)=px3・cos(−30°)=px3・(√3/2)
x3(y)=px3・sin(−30°)=−px3/2 ・・・(式9)
y2(x)=py2・cos(30°)=py2・(√3/2)
y2(y)=py2・sin(30°)=py2/2 ・・・(式10)
y3(x)=py3・cos(−30°)=py3・(√3/2)
y3(y)=py3・sin(−30°)=−py3/2 ・・・(式11)
【0041】
次に、マッチング値算出部15は、
上記(式8)〜(式11)より、直線Px2x3を表す1次方程式と、直線Py2y3を表す1次方程式とを求める。そして、マッチング値算出部15は、これら2つの1次方程式から直線Px2x3(辺a1)と直線Py2y3(辺a2)との交点Qの座標を求める。交点Qの座標が求まることにより、軸中心点Oと交点Qとの距離rを求めることができる。さらに、マッチング値算出部15は、軸中心点Oと交点Qとを通る直線a3を表す一次方程式を求める。
ここで、マッチング値算出部15は、評価項目2の最大値と評価項目3の最大値とを通る直線a4(第2象限の最外郭に相当する辺a4)と直線a3との交点Rを求めると、u1,u2の値も求めることができる。
【0042】
以上のように、第2象限を形成している隣り合う軸の評価項目2,3のうち、一方の評価項目2では第1のデータに関する評価値px2が第2のデータに関する評価値py2よりも大きくなり、他方の評価項目3では第2のデータに関する評価値py3が第1のデータに関する評価値px3よりも大きくなる場合であっても、これらの評価値px2,px3,py2,py3さえ分かっていれば、第2象限での重なり面積z2を求めることができる。第4象限から第6象限についても同様にして重なり面積z4〜z6を求めることができる。そして、第1象限から第6象限の重なり面積z1〜z6を全て合計することにより、全体の重なり面積zを求めることが可能である。
【0043】
表示部16は、第1のレーダーチャート生成部13により生成された第1のレーダーチャート21と第2のレーダーチャート生成部14により生成された第2のレーダーチャート22とを同じ評価軸上に重ねて表示する。すなわち、図5に示したようなイメージで第1のレーダーチャート21と第2のレーダーチャート22とを重ねて表示する。また、表示部16は、第1のレーダーチャート21および第2のレーダーチャート22と共に、マッチング値算出部15により算出されたマッチング値を表示する。
【0044】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、マッチング対象とされる2つのデータから求めた2つのレーダーチャート21,22の重なり度合いによって、当該2つのデータのマッチング値を求めるようにしている。このため、評価項目毎の評価値を有するデータの全体像を面という形で捉えて2つのデータの適合度を評価することができる。これにより、評価項目毎の評価値そのものを演算して求めた指標に基づいて2つのデータの適合度を評価していた従来技術に比べて、適合度をより精度良く算出することができる。
【0045】
例えば、求人企業が求職者に要望する人物像を年齢、居住地、スキル、職歴、一般常識、パーソナリティなどの複数の評価項目毎に点数化した評価値により第1のデータを構成する。また、求職者自身の人物象を年齢、居住地、スキル、職歴、一般常識、パーソナリティなどの複数の評価項目毎に点数化した評価値により第2のデータを構成する。そして、このように構成した第1のデータおよび第2のデータから2つのレーダーチャートを生成し、それらの重なり度合いによってマッチング値を求める。このようにすれば、より適合度が高い求人企業と求職者とをマッチングさせることができ、求人のミスマッチを減らすことができる。
【0046】
また、ある企業がビジネスパートナーとなる企業を探すビジネスマッチングにも本実施形態のデータマッチング装置10を利用することが可能である。すなわち、ある企業がビジネスパートナーに要望する企業像を複数の評価項目毎に点数化した評価値により第1のデータを構成する。また、ビジネスパートナー候補となる企業自身の企業像を同じ複数の評価項目毎に点数化した評価値により第2のデータを構成する。そして、このように構成した第1のデータおよび第2のデータから2つのレーダーチャートを生成し、それらの重なり度合いによってマッチング値を求める。このようにすれば、より適合度が高いビジネスマッチングを実現することができる。
【0047】
この他にも、交際相手探しの恋愛・結婚マッチング、需要側と供給側の調整を行って販売や取引の仲介を行う商取引マッチングなどにも本実施形態のデータマッチング装置10を利用することが可能であり、より適合度が高いマッチングを実現することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、第1のレーダーチャート21により表わされる図形の面積x、第2のレーダーチャート22により表わされる図形の面積y、両図形の重なり面積zを個々の象限毎に算出し、個々の象限の面積を全て加算した合計の面積から全体のマッチング値を算出するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、全体のマッチング値に加え、個々の象限の面積から象限毎のマッチング値を算出するようにしても良い。
【0049】
このようにすれば、マッチング対象物を表す2つのデータについて全体像から適合度を評価することに加えて、個々の象限(具体的には、象限を形成する2つの評価項目)における部分像からも適合度を評価することができる。すなわち、全体像に加えて、マッチングに際して特に重要視したい部分像があれば、その重要度が高い部分像についても適合度を精度よく算出することができる。
【0050】
ここで、レーダーチャートを生成する際に、隣接する軸にどの評価項目を設定するかによって象限毎のマッチング値が変わるので、どの軸にどの評価項目を設定するかをユーザが操作部(図示せず)を操作して任意に変えられるようにしても良い。例えば、特に重要視したい評価項目が2つあるとき、その2つを隣接する軸に設定すれば、ユーザは、その2つの軸によって形成される象限について算出される精度の良いマッチング値をもとに、当該重要視したい部分像についての適合度を的確に把握することができる。
【0051】
また、全象限を合わせた全体のマッチング値に加え、全象限の中から特定された複数の象限の面積を加算した合計の面積から特定エリアのマッチング値を算出するようにしても良い。面積を合計する複数の象限(特定エリア)は、あらかじめ特定された固定の象限であっても良いし、ユーザが操作部(図示せず)を操作することによって任意に特定された象限であっても良い。このようにすれば、特に重要視したい評価項目が3つ以上あるときに、当該3つ以上の評価項目の評価値によって表わされる部分像についての適合度を精度良く求めることができる。
【0052】
また、上述した(式1)に代えて、次の式(12)によりマッチング値Aを算出するようにしても良い。
A=A1+A2+A3+A4+A5+A6 ・・・(式12)
A1=(y1/x1)×(z1/x1)×α1
A2=(y2/x2)×(z2/x2)×α2
A3=(y3/x3)×(z3/x3)×α3
A4=(y4/x4)×(z4/x4)×α4
A5=(y5/x5)×(z5/x5)×α5
A6=(y6/x6)×(z6/x6)×α6
【0053】
ここで、A1〜A6は象限毎に算出したマッチング値であり、α1〜α6は各象限に対する重み付けのパラメータである。この重み付けパラメータα1〜α6は、ユーザが操作部(図示せず)を用いてデータマッチング装置10に対して任意の値を設定できるようにする。このようにすれば、特に評価として重視したい象限の重みを大きくしたり、その逆の設定をしたりすることで、評価に自由度を持たせることができる。
【0054】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 データマッチング装置
11 第1のデータ入力部
12 第2のデータ入力部
13 第1のレーダーチャート生成部
14 第2のレーダーチャート生成部
15 マッチング値算出部
16 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の評価項目毎に評価値を有する第1のデータを入力する第1のデータ入力部と、
上記複数の評価項目毎に評価値を有する第2のデータを入力する第2のデータ入力部と、
上記第1のデータ入力部により入力された上記第1のデータに基づいて、上記複数の評価項目を評価軸とする第1のレーダーチャートを生成する第1のレーダーチャート生成部と、
上記第2のデータ入力部により入力された上記第2のデータに基づいて、上記複数の評価項目を評価軸とする第2のレーダーチャートを生成する第2のレーダーチャート生成部と、
上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形と上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形とが重なる部分の面積を用いた演算によって、上記第1のデータと上記第2のデータとのマッチング値を算出するマッチング値算出部とを備えたことを特徴とするデータマッチング装置。
【請求項2】
上記マッチング値算出部は、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積をx、上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積をy、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形と上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形とが重なる部分の面積をzとして、
A=(y/x)×(z/x)
なる演算によって上記第1のデータと上記第2のデータとのマッチング値Aを算出することを特徴とする請求項1に記載のデータマッチング装置。
【請求項3】
上記マッチング値算出部は、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形と上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形とが重なる部分の面積を個々の象限毎に算出し、個々の象限の面積を全て加算した合計の面積から全体の上記マッチング値を算出するとともに、個々の象限の面積から象限毎のマッチング値を算出することを特徴とする請求項1に記載のデータマッチング装置。
【請求項4】
上記マッチング値算出部は、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形の面積、上記第1のレーダーチャートにより表わされる図形と上記第2のレーダーチャートにより表わされる図形とが重なる部分の面積を個々の象限毎に算出し、個々の象限の面積を全て加算した合計の面積から全体の上記マッチング値を算出するとともに、特定された複数の象限の面積を加算した合計の面積から特定エリアのマッチング値を算出することを特徴とする請求項1に記載のデータマッチング装置。
【請求項5】
上記第1のレーダーチャート生成部により生成された上記第1のレーダーチャートと上記第2のレーダーチャート生成部により生成された上記第2のレーダーチャートとを同じ評価軸上に重ねて表示するとともに、上記マッチング値算出部により算出されたマッチング値を表示する表示部を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のデータマッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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