説明

データ伝送装置

【課題】データ伝送システムにおいて、伝送線路とデータ伝送装置の接続点におけるインピーダンスの不整合をなくして反射を低減し、高速でより信頼性の高い通信を行うことができるようにする。
【解決手段】絶縁部12をコンデンサ11とコモンモードチョークコイル10により構成し、ドライバ8からの送信信号および伝送線路2からの受信信号を、コンデンサ11により直流分を電気的に絶縁すると共にコモンモードチョークコイル10によりコモンモードノイズの除去を行う。本構成にすることで、データ伝送装置101,102,103・・・の入力インピーダンスを高くし、反射を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチドロップ形態のデータ伝送システムに用いられるデータ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデータ伝送システムに用いられるデータ伝送装置は、絶縁部にパルストランスを用いる構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
図4は従来のデータ伝送システムを示す概要図である。図4において、データ伝送装置101,102,103,・・・は両端に終端抵抗3,4を持つ伝送線路2に接続されており、データ伝送装置間でシリアル通信が行われている。データ伝送装置101は信号処理部6で送信データを生成しドライバ8へ出力する。ドライバ8の出力制御は送信イネーブル信号7により行う。ドライバ8からの送信信号および伝送線路2からの受信信号は、パルストランス13により直流分を電気的に絶縁されると共にコモンモードノイズの除去が行われる。他のデータ伝送装置102,103,・・・についても、データ伝送装置101と同様の構成となっている。以上のような構成で、ある伝送装置から他の伝送装置へ信号が送信されるとき、信号が接続点501,502,503,・・・を通過するたびに、インピーダンスの不整合による反射が生じる。
反射の現象は図5のような模式図で表される。送信側から接続点501,502,503,・・・を境に受信側を見たとき、伝送線路2の特性インピーダンスZ0は、伝送線路2の特性インピーダンスZ0とデータ伝送装置101,102,103,・・・の入力インピーダンスZ1の並列接続インピーダンスZ’=Z0×Z1/(Z0+Z1)へと低下し、インピーダンスの不整合が起こる。このとき反射率ρは(1)式で表される。
ρ=(Z0−Z’)/(Z0+Z’)=1/(1+2×Z1/Z0) ・・・(1)
よって(1)式より、伝送線路2の特性インピーダンスZ0に比べ、データ伝送装置101,102,103,・・・の入力インピーダンスZ1が小さい程、反射率ρは大きくなる。
【特許文献1】特公平6−59054号公報(第11頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のデータ伝送装置では、絶縁部にパルストランス13が用いられているため、パルストランスの内部損失等により、データ伝送装置101,102,103,・・・の入力インピーダンスZ1が低下するため、大きな反射が生じ、通信エラーを引き起こすという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、反射を低減し、高速でより信頼性の高い、データ伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、送受信信号のデータ処理を行う信号処理部と、前記信号処理部で生成された送信データと送信イネーブル信号を受けて信号出力するドライバと、前記ドライバから出力された送信信号および伝送線路からの受信信号の直流分を電気的に絶縁すると共にコモンモードノイズの除去を行う絶縁部と、前記伝送線路からの受信信号を前記絶縁部を介して受け前記信号処理部へ受信データを渡すレシーバと、からなるデータ伝送装置において、前記絶縁部に高インピーダンス部を設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、前記高インピーダンス部はコンデンサと、コモンモードチョークコイルと、からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1および請求項2に記載の発明によると、反射を低減することができ、高速でより信頼性の高い通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の第1実施例を示す概要図である。図1において、データ伝送装置101,102,103,・・・は両端に終端抵抗3,4を持つ伝送線路2に接続されており、データ伝送装置間でシリアル通信が行われている。
11はコンデンサで、伝送線路に接続されている。10はコモンモードチョークコイルで、コンデンサ11とドライバ8、レシーバ9に接続されている。ドライバ8およびレシーバ9は信号処理部6に接続されている。
データ伝送装置101は信号処理部6で送信データを生成しドライバ8へ出力する。ドライバ8の出力制御は送信イネーブル信号7により行う。ドライバ8からの送信信号および伝送線路2からの受信信号は、コンデンサ11により直流分を電気的に絶縁されると共にコモンモードチョークコイル12によりコモンモードノイズの除去が行われる。他のデータ伝送装置102,103,・・・についても、データ伝送装置101と同様の構成となっている。
本発明が特許文献1と異なる部分は、絶縁部12にコンデンサ11とコモンモードチョークコイル10を用いたことである。
このような構成にすることで、パルストランスを用いた場合に比べ、内部損失を低く抑えることができ、入力インピーダンスZ1が大きくなるので、(1)式より反射率ρは小さくなる。
本実施例における効果を示す実験データを図3および図4に示す。図3は従来のパルストランスを使用したデータ伝送装置についての実験システムと反射率の結果であり、図4は本発明のコモンモードチョークコイルを使用したデータ伝送装置についての実験システムと反射率の結果である。図から分かるように、データ伝送装置の接続台数にかかわらず、反射率の改善がみられた。
以上のように、反射が低減でき、高速でより信頼性の高い、データ伝送システムを構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0008】
反射を低減することによって、高速で信頼性の高い通信システムを構築することができるので、高速性およびより高い信頼性が要求されるFA分野をはじめとするあらゆる通信システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例を示す概要図
【図2】従来のパルストランスを使用した実験を示す説明図
【図3】本発明の実験を示す説明図
【図4】従来のデータ伝送システムを示す概要図
【図5】反射の現象を表した模式図
【符号の説明】
【0010】
2 伝送線路
3,4 終端抵抗
6 信号処理部
7 送信イネーブル信号
8 ドライバ
9 レシーバ
10 コモンモードチョークコイル
11 コンデンサ
12 絶縁部
13 パルストランス
101,102,103 データ伝送装置
501,502,503 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信信号のデータ処理を行う信号処理部と、前記信号処理部で生成された送信データと送信イネーブル信号を受けて信号出力するドライバと、前記ドライバから出力された送信信号および伝送線路からの受信信号の直流分を電気的に絶縁すると共にコモンモードノイズの除去を行う絶縁部と、前記伝送線路からの受信信号を前記絶縁部を介して受け前記信号処理部へ受信データを渡すレシーバと、からなるデータ伝送装置において、
前記絶縁部に高インピーダンス部を設けたことを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項2】
前記高インピーダンス部はコンデンサと、コモンモードチョークコイルと、からなることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−114947(P2006−114947A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297102(P2004−297102)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】