説明

データ再生方法、データ再生装置及びデータ再生プログラム

【課題】記録媒体から読み出した圧縮オーディオデータを特殊再生する際に、不連続に読み出したデータが連結された境界データに起因するノイズの発生を完全に回避すること。
【解決手段】記録媒体に記録された圧縮オーディオデータを再生する再生装置は、記録媒体から不連続に読み出したデータを連結して特殊再生を行う際に、連結されるデータ間にダミーデータを挿入して再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮オーディオデータが記録された記録媒体から不連続にデータを読み出して特殊再生を行うデータ再生方法、データ再生装置及びデータ再生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MP3(MPEG1 Audio Layer III)フォーマットにより高圧縮したオーディオデータを再生するデータ再生装置の一部は、倍速再生等の特殊再生を行うことができる。図4は、MP3オーディオデータのデータ構造を示す図である。図4に示すように、MP3オーディオデータ1は、MP3オーディオデータ1を構成する単位データとなるフレーム2から構成されている。データ再生装置がMP3オーディオデータを通常再生する場合、データ再生装置は、MP3オーディオデータ内に存在する全てのフレームを順に再生処理する。
【0003】
図5は、従来のデータ再生装置がMP3オーディオデータを早送り再生又は早戻し再生(以下「特殊再生」という。)するときの再生データの構成を説明する図である。図5に示すように、データ再生装置がMP3オーディオデータ1を特殊再生する場合、当該データ再生装置は、MP3オーディオデータ1から一定間隔毎にセクタ単位でデータを抽出し、抽出データ3、抽出データ4、抽出データ5の順に再生することで、特殊再生を行っている。
【0004】
このような特殊再生を行うと、セクタ単位で抽出されたデータの境界に不連続に連結されるデータが存在することになる。しかし、この不連続に連結されるデータは、分断された不完全なフレームデータであるため、エラーデータと判定され、音声出力されることはない。但し、セクタ単位で抽出されたデータが連結されるとき、フレームの終端及び先端がセクタの境界と偶然一致した場合にはエラーデータとは判定されず、不連続なフレームが再生されてしまう。このため、抽出データの連結境界でノイズが発生してしまう。
【0005】
図6は、セクタ単位で抽出されたデータが連結された部分でエラーデータと判定されない境界データの一例を示す図である。図6に示すように、フレームMの終端が抽出データ3の終端に一致し、フレームNの先頭が抽出データ4の始端に一致すると、フレームMとフレームNが連結された境界データ6は完全なフレームデータと認識されるため、データ再生装置は、境界データ6をエラーデータと判定しない。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献1に開示された技術では、抽出データの連結境界にフレームの終端と始端が重ならないよう不連続にデータを取り出すことで、境界データを強制的に不完全なフレームデータとしてエラーを検出し、境界データを再生しない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−317391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術によっても、図7(a)に示すように境界データ6のデータサイズが1フレームサイズに偶然一致する場合や、図7(b)に示すように境界データ6中にシンクワードと同じパターンのデータ列(擬似シンクワード)が偶然存在していた場合には、本来エラーを検出するはずの境界データ6をエラーと認識することができず、その結果、ノイズが発生してしまう。
【0009】
本発明の目的は、記録媒体から読み出した圧縮オーディオデータを特殊再生する際に、不連続に読み出したデータが連結された境界データに起因するノイズの発生を完全に回避できるデータ再生方法、データ再生装置及びデータ再生プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、記録媒体に記録された圧縮オーディオデータを再生する再生装置が、前記記録媒体から不連続に読み出したデータを連結して特殊再生を行う際に、前記連結されるデータ間にダミーデータを挿入して再生するデータ再生方法を提供する。
【0011】
上記データ再生方法では、前記特殊再生は、早送り再生又は早戻し再生である。
【0012】
上記データ再生方法では、前記ダミーデータは、前記圧縮オーディオデータの規格における1フレームのサイズ以上のデータサイズを有する。
【0013】
上記データ再生方法では、前記ダミーデータは、任意の文字列を有する。
【0014】
本発明は、記録媒体に記録された圧縮オーディオデータを読み出すデータ読出部と、前記記録媒体から不連続に読み出したデータを連結して特殊再生を行う際に、前記連結されるデータ間にダミーデータを挿入して再生するデータ挿入部と、を備えたデータ再生装置を提供する。
【0015】
上記データ再生装置では、前記特殊再生は、早送り再生又は早戻し再生である。
【0016】
上記データ再生装置では、前記ダミーデータは、前記圧縮オーディオデータの規格における1フレームのサイズ以上のサイズを有する。
【0017】
上記データ再生装置では、前記ダミーデータは、任意の文字列を有する。
【0018】
本発明は、コンピュータを、上記データ再生装置が備える各部として機能させるためのデータ再生プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るデータ再生方法、データ再生装置及びデータ再生プログラムによれば、記録媒体から読み出した圧縮オーディオデータを特殊再生する際に、不連続に読み出したデータが連結された境界データに起因するノイズの発生を完全に回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態で説明する「特殊再生」とは、倍速再生等の早送り再生、又は早戻し再生である。
【0021】
図1は、本発明に係る一実施形態のデータ再生装置が特殊再生を行う際の再生データの構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態のデータ再生装置がMP3オーディオデータ1を特殊再生する場合、当該データ再生装置は、フレームの集合で構成されるMP3オーディオデータ1から一定間隔毎にセクタ単位でデータを抽出する。図1に示す例では、MP3オーディオデータ1から、抽出データ3、抽出データ4、抽出データ5の順にデータが抽出されている。さらに、データ再生装置は、抽出したデータの尾部にダミーデータ10を連結した後、各データを連結して、再生データ11,12,13としている。したがって、本実施形態のデータ再生装置が特殊再生時に再生するデータの境界データにはダミーデータ10が挿入されている。
【0022】
図2は、本発明に係る一実施形態のデータ再生装置によって再生されるデータの構成の一例を示す図である。図2に示すように、抽出データ3のフレームMと抽出データ4のフレームNを連結する際に、フレームMにダミーデータ10を連結することで、フレームMとダミーデータ10とフレームNが連結された境界データ14が構成される。
【0023】
ダミーデータ10は文字列0x00のデータ列であり、データサイズはMP3オーディオの規格上最大となるフレームサイズとしている。MP3オーディオデータにおけるフレームサイズは、MPEG形式や、ビットレート、サンプリング周波数に基づいて算出することができる。
【0024】
以下、フレームサイズの計算式を示す。
MPEG1のフレームサイズ=144×ビットレート/サンプリング周波数
MPEG2LSFのフレームサイズ=72×ビットレート/サンプリング周波数
【0025】
図3は、上述の計算式により算出したMP3規格におけるフレームサイズを示す表である。図3に示すビットレートの単位は[bps]、サンプリング周波数の単位は[Hz]である。図3より、1440バイトがMP3オーディオ規格上の最大フレームサイズであることがわかる。
【0026】
次に、図1を参照して、本実施形態のデータ再生装置が特殊再生を行う際のデータ再生方法について説明する。データ再生装置が備えるデータ読出部は、光ディスク等の記録媒体に記録されているMP3オーディオデータ1からセクタ単位で抽出データ3を読み出す。次に、データ再生装置が備えるデータ挿入部は、読み出した抽出データ3にダミーデータ10を連結し、再生データ11を作成する。その後、データ読出部は、セクタ単位でデータを読み飛ばし、抽出データ4を読み出す。データ挿入部は、抽出データ3と同様に、抽出データ4にダミーデータ10を連結し、再生データ12を作成する。データ読出部は、さらにセクタ単位でデータを読み飛ばし、抽出データ5を読み出す。データ挿入部は、抽出データ3,4と同様に、抽出データ5にダミーデータ10を連結し、再生データ13を作成する。
【0027】
このように、データ再生装置は、データ抽出処理、ダミーデータ10の連結処理及びデータ読み飛ばし処理を順に繰り返す。その結果、再生データ間の境界データにはダミーデータ10が必ず挿入される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のデータ再生装置及びデータ再生方法によれば、MP3オーディオデータを特殊再生する際、規格上最大のデータサイズを有するダミーデータを境界データに挿入するため、境界データのデータサイズが1フレームサイズに一致することはあり得ない。この結果、不連続に連結された境界データをエラーとして検出でき、境界データが再生されることによるノイズの発生を回避できる。したがって、高品位な再生を実現できる。
【0029】
例えば、抽出データ間に挿入するダミーデータ10のデータサイズを、MP3ストリームの規格において最大のフレームサイズとなる1440バイトとすると、固定ビットレートや可変ビットレートによらず、規格上の全てのMP3オーディオデータにおいて、特殊再生時にノイズの発生を回避できる。なお、固定ビットレートのMP3オーディオデータを特殊再生する場合には、再生するMP3オーディオデータに応じたフレームサイズを用いても良い。
【0030】
また、ダミーデータ10は文字列0x00のデータ列に限らず、MP3ストリームのフレームに存在するシンクワードに一致しない文字列データであれば任意の文字列データを用いても良い。いずれにしても、不連続に連結された境界データを再生する際に、次フレームのシンクワードの検索において偶然シンクワードを検出してしまうことを回避できる。
【0031】
なお、本実施形態のデータ再生装置によるデータ再生方法の処理手順はソフトウェアで実現され、コンピュータプログラムとして記録媒体に保存されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るデータ再生方法、データ再生装置及びデータ再生プログラムは、圧縮オーディオデータを特殊再生する再生装置及び再生方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る一実施形態のデータ再生装置が特殊再生を行う際の再生データの構成を示す図
【図2】本発明に係る一実施形態のデータ再生装置によって再生されるデータの構成の一例を示す図
【図3】MP3規格におけるフレームサイズの算出結果を示す表
【図4】MP3オーディオデータのデータ構造を示す図
【図5】従来のデータ再生装置がMP3オーディオデータを特殊再生するときの再生データの構成を説明する図
【図6】セクタ単位で抽出されたデータが連結された部分でエラーデータと判定されない境界データの一例を示す図
【図7】従来のデータ再生装置による特殊再生時にノイズが発生する境界データの構成を示す図
【符号の説明】
【0034】
1 MP3オーディオデータ
2 フレーム
3〜5 抽出データ
6 境界データ
10 ダミーデータ
11〜13 再生データ
14 境界データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された圧縮オーディオデータを再生する再生装置が、前記記録媒体から不連続に読み出したデータを連結して特殊再生を行う際に、前記連結されるデータ間にダミーデータを挿入して再生することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ再生方法であって、
前記特殊再生は、早送り再生又は早戻し再生であることを特徴とするデータ再生方法。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ再生方法であって、
前記ダミーデータは、前記圧縮オーディオデータの規格における1フレームのサイズ以上のデータサイズを有することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項4】
請求項1に記載のデータ再生方法であって、
前記ダミーデータは、任意の文字列を有することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項5】
記録媒体に記録された圧縮オーディオデータを読み出すデータ読出部と、
前記記録媒体から不連続に読み出したデータを連結して特殊再生を行う際に、前記連結されるデータ間にダミーデータを挿入して再生するデータ挿入部と、
を備えたことを特徴とするデータ再生装置。
【請求項6】
請求項5に記載のデータ再生装置であって、
前記特殊再生は、早送り再生又は早戻し再生であることを特徴とするデータ再生装置。
【請求項7】
請求項5に記載のデータ再生装置であって、
前記ダミーデータは、前記圧縮オーディオデータの規格における1フレームのサイズ以上のサイズを有することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項8】
請求項5に記載のデータ再生装置であって、
前記ダミーデータは、任意の文字列を有することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項5に記載の各部として機能させるためのデータ再生プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−294603(P2009−294603A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150699(P2008−150699)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】